起き上り動作検出装置及び起き上り動作検出方法
【課題】ベッドに横臥する被験者の起き上り動作を正確に認識する起き上り動作検出装置及び検出方法を提供する。
【解決手段】被験者が横臥するベッドにて配置される複数のセンサ21〜25と、被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定する動作判定部43と、判定手段が判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力する処理実行部44を有する起き上り動作検出装置。
【解決手段】被験者が横臥するベッドにて配置される複数のセンサ21〜25と、被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定する動作判定部43と、判定手段が判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力する処理実行部44を有する起き上り動作検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベッドに横臥する被験者の起き上り動作を、複数のセンサにより検出する起き上り動作検出装置及び起き上り動作検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の分野においては、患者がベッドから起き上がる場合に、転倒・転落するなどの危険を伴う場合がある。このような事情から、ベッドで寝ていた患者の起き上りを検出するための装置が要望され開発されている。
特許文献1は、ベッド上の被験者の重心の位置と移動距離によって起き上りを検出する技術を開示している。
【0003】
特許文献2は、ベッド上の人の起き上りをベッドの手すりの近傍に設置したセンサからの検出ビームの反射時間の変化から起き上り動作を検出する技術を開示している。
特許文献3は、ベッド端部に設けられたベッドの手すりに加わる圧力によって起き上り動作を検出する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−20844号公報
【0005】
【特許文献2】特開2007−20845号公報
【0006】
【特許文献3】特開2007−50054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の従来技術は、被験者の重心のみで起き上り動作を判断、特許文献2の従来技術は、ベッドの手すり近傍のセンサだけで判断、特許文献3の従来技術においても、ベッド端部に設けられたベッドの手すりに加わる圧力だけで判断しており、単一のセンサの測定結果のみに基づいて単純に離床を検出する方式である。これらの方法の場合、ベッド上の患者の重心位置の変化を用いる場合、ベッドからずり落ちる動作では重心の移動量がわずかであるため、起き上り動作として検知できなかったり、手すりに取り付けたセンサを用いる場合には、例えば患者が寝ている状態で手すりをつかんだり、寝返りを打った場合などにもセンサが反応し、誤検出が発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、被験者の姿勢について正確な判断を行なうことができる起き上り動作検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための一実施形態は、
被験者が横臥するベッドにて配置される複数のセンサと、
前記被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、前記複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、前記複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とする起き上り動作検出装置である。
【発明の効果】
【0010】
ベッドに横臥した被験者の起き上り動作等の姿勢について、誤判断をすることなく正確に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(構成)
本発明の一実施形態に係る起き上り動作検出装置Aの構成について、以下に説明する。図1は、起き上り動作検出装置の構成の一例を示す説明図である。起き上り動作検出装置Aは、一例として、5種類のセンサを用い、各センサの測定値の変化に基づいて、ベッドに寝ている人(被験者、患者、被介護者)の起き上り動作を検出する装置である。起き上り動作検出装置Aは、一例として、5種類のセンサと3種類の警報装置と動作判定装置31で構成されている。
【0012】
すなわち、起き上り動作検出装置Aは、図1において、ベッドの幅方向のヘッドボード17の上部に設置した頭センサ23と、手すり12の最上面のベッド内に対して外側の両端部分に設置した手すりセンサ21と、手すりの折りたたみ部分のヒンジに設置した手すり折りたたみセンサ22と、ベッドの足元部分に設置した足元センサ25と、ベッドとは外向き方向に設置した看護師センサ24の5種類のセンサを有している。さらに、起き上り動作検出装置Aは、ベッドサイドテーブル13の上に設置したベッドサイドランプ15と、スピーカ14と、ベッドの足元付近のベッド下部に設置したフットランプ18の3種類の警報装置を有している。さらに、起き上り動作検出装置Aは、上述した5種類のセンサと3種類の警報装置を接続した一例として、マイクロコンピュータである動作判定装置31と、動作判定装置31と接続されるナースコールシステム32等の外部装置を有している。
【0013】
5種類のセンサの計測値により、ベッドに寝ている人の起き上り動作を動作判定部43で判定し、処理実行部44により、3種類の警報装置とナースコールシステム等に結果を出力する。
次に5種類のセンサについて説明する。
(1)頭センサ
図2は、頭センサの配置の一例を説明する平面図である。頭センサ23−1〜23−7は、7つの赤外線距離センサとそれらを固定するためのセンサ設置用ボード16で構成される。ベッドの高さやベッド上の人の体格に応じて、センサ設置用ボード16のボード部分全体は床面からの高さを変更可能とする。頭センサ23−1〜23−7は、ベッドのヘッドボード17の上部に設置する。赤外線距離センサである頭センサ23−1〜23−9を一平面上に(つまり、同一平面上に)図2及び図3のように配置する。このとき各頭センサ23−1〜23−9は、ベッドマット面と並行な方向成分の距離を検知可能にする。
【0014】
ベッド上の被験者Pがベッド中央部で真上に起き上り長座位の姿勢になった時に頭が反応する位置を第1の頭センサ23−1の位置とする。このときベッド上の被験者Pの左右両方の肩部が反応する位置を左右それぞれの第2の頭センサ23−2、第3の頭センサ23−3の位置とする。ベッド上の被験者Pが起き上がった時に第1の頭センサ23−1、第2の頭センサ23−2、第3の頭センサ23−3が3つ同時に反応する位置に設置する。
【0015】
第4の頭センサ23−4、第6の頭センサ23−6は、斜め方向に起き上り動作をした場合の頭部、第5の頭センサ23−5、第7の頭センサ23−7は、斜め方向に起き上り動作をした場合の肩から下の上半身を検出できる位置に設置する。頭センサ23−1〜23−7は、中央部が最も高い位置になり、両端は最も低くなる位置に設置する。7つの赤外線距離センサである頭センサ23−1〜23−7は、ヘッドボード17からベッド11上の被験者Pの体までの距離を検出する。
【0016】
また、第8の頭センサ23−8、第9の頭センサ23−9は、ベッド11上の被験者Pの上半身がベッド11上部から移動したことを検知するためのセンサである。図4は、頭センサの検知領域とベッドの関係を示す平面図である。図4のように、第8の頭センサ23−8と第9の頭センサ23−9の検知領域を互いにクロスさせ、ベッド11上の被験者Pの上半身が起き上がった場合に、第8の頭センサ23−8、第9の頭センサ23−9は、ベッド上の被験者Pの検知領域から外れるように設置する。
(2)手すりセンサ
図5は手すりの手すりセンサの構成の一例を示す説明図である。ここで、手すり12の両端に、赤外線発光部21−1と赤外線受光部21−2を取り付け、手すり12をつかむと赤外線をさえぎることにより検知できる手すりセンサ21とする。
【0017】
ベッドに手すり12,12が複数ある場合には、図6のように赤外線受光部21−1が他の手すりの赤外線を受光しないように、各赤外線発光部21−1,21−1の位置をベッド11の中心部に設置し、各赤外線受光部21−2,21−2を外側に設置する。
(3)手すり折りたたみセンサ
図7は手すりの折りたたみセンサの一例を示す説明図である。手すりを折りたたむタイプの手すり12に、手すりの折りたたみセンサ22を取り付ける。ここで、折りたたむとスイッチがONもしくはOFFになるように、手すりの折りたたみセンサ22をヒンジ部分に取り付ける。
(4)足元センサ
図8及び図9は、足元センサの取り付け位置を示す説明図である。図に示すように、足元センサ25は、ベッド11の足元であって、ベッド11から足が出ると反応する位置に設置する。
(5)看護師センサ
図10は看護師センサの検知領域を示す平面図である。看護師センサ24は、ベッド11もしくはその周辺に設置し、ベッド11のそばに人がいることを検知する。看護師センサ24は、人感センサでも赤外線センサでもよい。
【0018】
次に、3種類の警報装置とナースコールについて説明する。
ベッドサイドランプ15は、図1に示すように、ランプを点灯することで、患者の起き上り動作を遅らせることを目的に設置される。スピーカ14は、問いかけることで離床までの起き上り動作を遅らせることを目的として設置される。フットランプ18は、ベッド11から足が出た際に、足元をランプで照らすことにより、夜間でも安全を確保する。ナースコールシステム32は、ナースを呼び出すための通信システムであり、インターフェースを介して、施設内の看護師が待機している部屋に呼び出し信号を供給する。
【0019】
次に、動作判定装置31の構成の一例を示す。
なお、動作判定装置31は、複数のセンサからの信号を受け、被験者Pの特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定し、判定した遷移状態に応じて出力信号を出力ものであり、このような機能をもつ装置であればよい。その装置の一例を以下に示す。
【0020】
図11は、起き上り動作検出装置における動作判定装置の構成の一例を示すブロック図である。動作判定装置31は、各センサからの信号を入力し、あらかじめ設定してあるセンサの反応条件を満たした場合に、記号列を出力するセンサ信号処理部41と、センサ信号処理部41から出力された記号列を一時的にメモリ上に保持する記号列バッファ部42と、記号列バッファ部42内の記号列によって複数の状態遷移推定部45−1〜45−Nを用いて起き上りかどうかの動作判定を行う動作判定部43と、動作判定部43の判定結果からベッドサイドランプなどの外部装置に処理結果を出力する処理実行部44と、センサ信号処理部41のデータおよび動作判定結果を記録する記録部51を有している。
【0021】
さらに、動作判定部43の複数の状態遷移推定部45−1〜45−Nからも、記号列を記号列バッファ部42に出力することが可能である。
センサ信号処理部41は、まず、各センサの信号に平滑化等のフィルタ処理をする。センサの反応が特定条件(例えば、距離がxcm以下など)になった時に、フィルタ処理されたセンサデータを、記号列として記号列バッファ部42に出力する。この記号列は、区別可能な任意の文字列とするが、この例を図13に示す。図13において、頭センサ23、手すりセンサ21、手すり折りたたみセンサ22、足元センサ25のそれぞれの出力に対する記号列の一例が示されており、図14乃至図25で示す状態遷移推定部での処理に用いられる。
【0022】
この実施形態では、頭センサ23−1〜23−7である第1センサ〜第7センサの反応した距離が100cm以下になった場合、センサ信号処理部41は、それぞれPSD_1〜PSD_8の記号列を記号列バッファ部42に出力し、100cm以上に変化した場合それぞれPSD_1_OUT〜PSD_7_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力する。この100cmという値はベッド上の被験者Pの体格によって変更可能である。従って、図3においてベッド上で長座位になった姿勢において、ヘッドボード17と被験者Pとの距離d1を設定して登録することが好適である。
【0023】
頭センサ23−8、23−9である第8センサ及び第9センサの反応した距離が55cm以上になった場合、センサ信号処理部41はそれぞれPSD_8,PSD_9の記号列を記号列バッファ部42に出力し、55cm以下に変化した場合にそれぞれPSD_8_OUT,PSD_9_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力する。この55cmという値は、図4においてベッド上で被験者Pが左右どちらの方向についても寝返りをうった姿勢において、第8センサと第9センサを互いに交差させ、共に被験者Pと反応する位置になる時の、第8センサと第9センサとベッドマットとの距離d2として設定する。
【0024】
手すりセンサ21の赤外線発光部21−1と赤外線受光部21−2が遮られた場合には、センサ信号処理部41は、TESURI_TOUCHの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
手すり12を折りたたむとセンサ信号処理部41は、TESURI_DOWNの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0025】
足元センサ25の2つの赤外線距離センサのいずれかが50cm以下になると、センサ信号処理部41はFOOT_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力する。この50cmという値はベッド上の被験者Pの体格に応じて変更可能であり、図9の距離d3の値として設定する。
【0026】
看護師センサ24において、ベッド付近に人が居るとセンサ信号処理部41はIN_NURSEの記号列を記号列バッファ部42に出力し、ベッド付近に人が居ないとOUT_NURSEの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
記号列バッファ部42は、センサ信号処理部41で出力された記号列を記憶領域に一定時間保持する。
【0027】
動作判定部43は、センサ信号処理部41で出力された記号列を遷移条件とする後述される図14乃至図25の状態遷移推定部45−1、−2、…、−12を含むN個の状態遷移推定部45−1、−2、…、45−Nによって構成される。状態遷移推定部45−1〜45−Nは、任意のスクリプト言語で記述できるものとする。状態遷移推定部45−1〜45−Nは同時並列で処理が可能とし、処理の実行の有無の選択、動作中の処理の追加・削除が可能なものとする。
【0028】
記録部51は、判定基準記録領域52と、センサデータ記録領域54と、動作判定結果記録領域55を有している。判定基準記録領域52は、センサ信号処理条件・状態遷移推定条件53の記録を保持し、起き上り動作判定処理実行中においてもセンサ信号処理部41と動作判定部43への条件変更・削除を可能とする。記録部51におけるセンサデータ記録領域54には、センサ信号処理部41から出力されるセンサ毎の状態が、センサが反応する毎に記録される。このとき、時間と対応付けて記録しても良い。時間と対応づけて記録されるセンサデータは、一定時間長のみ記録されるものとし、前に記録されたデータは時間の経過とともに削除されていくものとする。
【0029】
(起き上り動作判定処理)
上述したような構成をもつ起き上り動作検出装置Aにおいて、はじめに、起き上り動作判定処理の概要の一例を、図12のフローチャートを用いて説明する。その後、図14乃至図25が示す複数の状態遷移推定部による起き上り動作判定処理を詳細に説明する。なお、以下の図12のフローチャートの各ステップは、回路ブロックに置き換えることができ、従って、各フローチャートのステップは、全て回路ブロックに定義しなおすことが可能である。
【0030】
・起き上り動作判定処理の概要
初めに、起き上り動作検出装置Aは、上述した動作判定装置31を用いて、図12に示すフローチャートにより、以下のように起き上り動作判定処理を行なう。この場合、センサ信号処理部41、処理実行部44及び記録部51は、図11に示すように用いられるが、記号列バッファ部42及び第1状態遷移推定部45−1乃至第N状態遷移推定部45−Nは必ずしも用いられず、図12のフローチャートが示す工程を記述したコンピュータプログラムが実行可能なCPU部であればよい。
【0031】
すなわち、動作判定部43または図示しないCPU部は、はじめに、被験者Pの姿勢に応じた複数の状態遷移を定義し、その被験者Pの検出信号のパラメータを例えば記録部51の判定基準記録領域52のセンサ信号処理条件・状態遷移推定条件53等に登録する(ステップS11)。このパラメータの一例として、上述した、『図3において被験者Pがベッド11上で長座位になった姿勢におけるヘッドボード17と被験者Pとの距離d1』、『図4においてベッド上で被験者Pが左右どちらの方向についても寝返りをうった姿勢において、第8センサと第9センサを互いに交差させ、共に被験者Pと反応する位置になる時の、第8センサと第9センサとベッドマットとの距離d2』、『図9において、被験者Pがベッド11の外に足を出した場合の、足元センサ25の2つの赤外線距離センサまでの距離d3』がある。
【0032】
さらに、このパラメータは、被験者Pの敏捷性を加味し、後述する図14におけるWAITからSUCCESSまでのタイムアウトの時間、図15及び図16におけるSTARTからWAITまでのタイムアウトの時間、SUCCESSからSTARTまでのタイムアウトの時間、図17及び図18におけるWAIT_RIGHT2、WAIT_LEFT2からSUCCESSまでのタイムアウトの時間、その他、図19乃至図25における各タイムアウトの時間とすることが好適である。すなわち、被験者Pが起き上り等の行為を実践して、実測の時間をこのパラメータとすることが好適である。すなわち、このパラメータは、被験者Pが実際に起き上り動作等を行なって取得した時間データや距離データを、閾値等として用いるものである。
【0033】
次に、動作判定部43または図示しないCPU部は、例えば上述した5種類のセンサからの検出信号を取得する(ステップS12)。これは、上述したセンサ信号処理部41を介して検出信号を取得することでもよいし、上述した5種類のセンサから直接、取得して、動作判定部43または図示しないCPU部において適宜処理することも好適である。
【0034】
次に、動作判定部43または図示しないCPU部は、複数の検出信号の反応のあった個数、反応のあった順序、反応のあった時間差に基づいて、先に定義した被験者Pの姿勢に対応した複数の状態遷移から、現在の被験者Pの状態遷移(姿勢)を決定する(ステップS13)。センサの検出信号に基づいて状態遷移を決定する手法は、設計者が任意に設定が可能である。しかし、予め被験者Pがその姿勢を繰り返しとってみて、複数の検出信号の反応のあった個数、反応のあった順序、反応のあった時間差について、統計的にデータを採取し、このデータに基づいて決定することが好適である。
【0035】
最後に、動作判定部43または図示しないCPU部は、決定した被検者の状態遷移に応じて、ナースコール等の外部装置への出力を行なう(ステップS14)。例えば、動作判定部43または図示しないCPU部は、被験者Pが起き上り動作をしているという遷移状態にあると判断すれば、看護師を呼ぶために、ナースコールステーション等に呼び出し信号を送信する。
【0036】
このように、本発明に係る起き上り動作検出装置Aは、被験者Pの姿勢に対応した複数の遷移状態を予め定義し、複数のセンサからの検出信号の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差等に基づいて、この複数の遷移状態から一つの遷移状態(姿勢)を決定し、これに応じて外部に信号を出力するものである。これにより、被験者Pに対する誤判断の少ない検出結果を得ることができる。
【0037】
・起き上り動作判定処理の詳細
次に、複数の状態遷移推定部を用いた起き上り動作判定処理の詳細を、図13乃至図25を用いて説明する。
起き上り動作判定処理は、ベッド11上で長座位になった、ベッド11上部から体が移動した、手すりをつかんだ、手すりを折りたたんだ、ベッド11から足が出た、というベッド11上の被験者Pが起き上がって離床するまでの一連の動作を、各センサの反応個数、反応順序、反応時間差に基づいて判定するものである。
【0038】
判定方法として、上半身の状態、起き上り動作順序、手すりの状態、手すりの折りたたみ状態、足元の状態、ベッドサイドの人の有無の状態を次のように状態遷移推定部45−1〜45−Nにあらかじめ定義しておく。
状態遷移推定部45−1〜45−Nは、記号列バッファ部42から受取った記号列を入力とし、受取った記号列と現在の状態に応じて、記録部51の判定基準記録領域52に格納されたセンサ信号処理条件・状態遷移推定条件53等である予め定めた遷移条件に従って状態を遷移する。また、状態遷移推定部45−1〜45−Nは、予め記号列バッファ部42に記号列を出力すると定めた状態遷移が発生した際に、発生した状態遷移に応じて予め定めた記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0039】
(1)上半身の状態、起き上り順序、手すりの状態の定義
図14は頭センサ23−1〜23−7である第1センサ〜第7センサの反応による第1状態遷移推定部45−1の処理を示したものである。ベッド11上で被験者Pが起き上り動作を開始する。第1状態遷移推定部45−1では、遷移状態は、STARTの状態にある。ベッド11上で真上に起き上り、長座位になると、頭センサ23−1〜23−3である第1センサ、第2センサ、第3センサが同時に3つ反応し、いずれも距離が100cm以下となり、センサ信号処理部41が記号列PSD_1,PSD_2,PSD_3の記号列を記号列バッファ部42に出力する。第1状態遷移推定部45−1はこの出力により、遷移状態は、状態WAITに遷移する。長座位の姿勢がこのまま0.5秒状態が続くと、遷移状態は、SUCCESSに遷移すると同時に第1状態遷移推定部45−1は、HEAD_UPの記号列を記号列バッファ部42上に出力し、遷移状態は、STARTに遷移して元に戻る。
【0040】
ベッド11上で被験者Pが真上ではない方向に向いて起き上がった場合には、頭センサ23について、第1センサ、第2センサ、第5センサのセット、第2センサ、第4センサ、第5センサのセット、第1センサ、第3センサ、第7センサのセット、第3センサ、第6センサ、第7センサのセットに含まれる3つのセンサが少なくとも1セット以上同時に反応することで、第1状態遷移推定部45−1では、遷移状態は、STARTの状態からWAITの状態に遷移し、0.5秒間保持すると、遷移状態は、SUCCESSの状態に遷移する。
【0041】
これにより、ただ手を上げたりするような、ベッド11上で起き上り動作でない動作を行った場合には、センサの配置からセンサセットに含まれる3つのセンサが同時に反応しないし、たとえ同時に反応してもその状態を0.5秒保持しなければ長座位と判定しないので、誤検知を低減することができる。
【0042】
さらに、長座位になったことを精度良く検出するために、ベッド11上で長座位になった動作と手すりをつかんだ動作が順番に起こった場合を検出することで、長座位になったと判定する。
図15は被験者Pの頭が上がった後に手すり12を触ると起きあがりと判定する第2状態遷移推定部45−2の処理を示したものである。遷移状態は、最初STARTにある状態から、HEAD_UPという記号列の入力により、状態WAITに遷移し、手すりをつかむと発生するTESURI_TOUCHという記号列の入力より状態SUCCESSに遷移して記号列WAKEUPを発生し、0.5秒後に再びSTART状態に遷移する。
【0043】
図16の第3状態遷移推定部45−3は、手すりをつかむ動作と頭が上がる動作が第2状態遷移推定部45−2の逆になったものである。
第2状態遷移推定部45−2と第3状態遷移推定部45−3にあるように、遷移状態がWAITの状態で、次の動作の記号列の入力が5秒間ない場合には、起き上り動作ではないと判定し、遷移状態は、START状態に遷移する。
【0044】
図17及び図18は、ベッド11上で被験者Pが長座位にならず(HEAD_UP検出しない)、ずるずるとベッド11下部へ移動する動作を検出する第4状態遷移推定部45−4と第5状態遷移推定部45−5の処理を示したものである。
ベッド11上で被験者Pが長座位にならず(HEAD_UP検出しない)、ずるずるとベッド11下部へ移動する場合、頭センサ23−8、23−9である第8センサ及び第9センサが一定距離以上に変化し、この時、センサ信号処理部41が記号列PSD_8,PSD_9の記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0045】
ベッド11上で被験者Pがずるずると下部へ移動を開始する。この時、第4状態遷移推定部45−4上では、遷移状態は、STARTの状態にある。
被験者Pがずるずると下部に移動し、第8センサか第9センサのいずれかが、55cmの距離になると、記号列PSD_8かPSD_9のいずれかの記号列を記号列バッファ部42に出力される。第4状態遷移推定部45−4では、遷移状態は、WAIT_RIGHTかWAIT_LEFTのいずれかの状態に遷移する。
【0046】
さらに被験者Pが下部に移動すると第8センサ及び第9センサの両方が距離55cm以上の距離となり、記号列PSD_8もしくはPSD_9のいずれかの記号列が記号列バッファ部42に出力され、第5状態遷移推定部45−5では、遷移状態は、WAIT_RIGHT2かWAIT_LEFT2の状態に遷移する。そのままの状態が1秒続くと、遷移状態は、SUCCESSの状態に遷移し、第5状態遷移推定部45−5は、ON_WAKEUP_2PSDの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0047】
ベッド11上で被験者Pが長座位にならず(HEAD_UP検出しない)、ずるずるとベッド11下部へ移動する場合には、必ず第8センサと第9センサの両方の検出信号が順番を問わず55cm以上の距離に変化する。この距離は寝返りなどの動作を行った場合でも必ず第8センサか第9センサのどちらか一方が反応する距離に設定することと、たとえ両方とも反応があった場合においても1秒その状態を保持しなければならないことで、寝返りを起き上りと誤判断することを低減することができる。
【0048】
(2)手すりの折りたたみ状態の定義
図19は手すり12を折りたたむ動作を検出する第6状態遷移推定部45−6の処理を示したものである。手すり12を折りたたむと、センサ信号処理部41が発生する記号列TESURI_DOWNによって第6状態遷移推定部45−6の遷移状態は、START状態からDOWN状態に遷移し、同時にTESURI_DOWNの記号列を記号列バッファ部42に出力し、10秒後に再びSTART状態に戻る。
【0049】
(3)足元の状態の定義
図20はベッド11から足が出る動作を検出する第7状態遷移推定部45−7の処理を示したものである。ベッド11から足が出るとセンサ信号処理部41が出力する記号列PSD_FOOTによって第7状態遷移推定部45−7の遷移状態は、START状態からSUCCESS状態に遷移し、同時にFOOT_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力し、遷移状態は、3秒後に再びSTART状態に戻る。
【0050】
(4)ベッドサイドの人の有無の状態の定義
図21はベッド11付近に看護師などの人がいるかどうかを検出する第8状態遷移推定部45−8の処理を示したものである。
起動時に遷移状態は、STARTという状態になった後1秒後にENABLEという状態に遷移し、OUT_NURSEという記号列を記号列バッファ部42に出力する。ベッド11のそばに人がいると、看護師センサ24の反応によりセンサ信号処理部41がPSD_ROOMという記号列を記号列バッファ部42に出力することで、遷移状態は、DISABLEの状態に遷移し、IN_NURSEという記号列を記号列バッファ部42に出力する。ベッド11のそばから人が離れると、看護師センサ24の反応により、遷移状態は、センサ信号処理部41がPSD_ROOM_OUTという記号列を記号列バッファ部42に出力することでPRE_ENABLEの状態に遷移する。この状態の時に再びベッド11のそばに人が来ると遷移状態は、DISABLEの状態に戻り、3秒間ベッド11のそばに人がいないとENABLEの状態に遷移する。この3秒間という時間は変更可能なものとする。この時間設定はベッド11のそばに看護師や医師がいる場合には何らかの措置を行っており、一定時間動作が無いと考えられる上限の時間を設定する。
【0051】
図22はベッド11のそばに人がいるかいないかによって、起き上りの警報を行う第9状態遷移推定部45−9を示したものである。ベッド11上の被験者Pが長座位になったもしくは上半身がベッド11下部に移動した場合、ベッド11のそばに人が居ないと、頭センサ23の反応によってセンサ信号処理部41がWAKEUPという記号列を発生し、遷移状態は、STARTの状態からRESEND_WAKEUPの状態に遷移して、状態遷移推定部45−9は、記号列バッファ部42上にON_WAKEUPという記号列を出力する。ベッド11のそばに人がいると第8状態遷移推定部45−8により出力されたIN_NURSEという記号列により、遷移状態は、IN_NURSE_STATEの状態に遷移する。RECEND_WAKEUPの状態に遷移している場合にもIN_NURSEという記号列により、遷移状態は、IN_NURSE_STATEの状態に遷移する。ベッド11のそばに人がいなくなると第8状態遷移推定部45−8により発生されたOUT_NURSEという記号列により、遷移状態は、STARTの状態に遷移する。
【0052】
このように、第9状態遷移推定部45−9の処理によれば、ベッド11のそばに人がいる場合には警報が鳴らない仕組みが提供できる。
図23はベッド11のそばに人がいるかいないかによって手すりを折りたたんだ際の警報を行う第10状態遷移推定部45−10を示したものである。第9状態遷移推定部45−9と同様の処理を行い、ベッド11のそばに人がいる場合には警報が鳴らない仕組みを提供できる。
【0053】
図24はベッド11のそばに人がいるかいないかによってベッド11から足が出た際の警報を行う第11状態遷移推定部45−11を示したものである。第9状態遷移推定部45−9と同様の処理を行い、ベッド11のそばに人がいる場合には、たとえ、ON_FOOT_OUTを検出しても警報が鳴らない仕組みを提供できる。
【0054】
図25は音声による警報装置の制御を行う第12状態遷移推定部45−12を示したものである。音声による警報は起き上り検出時、手すりを折りたたんだ時、ベッド11から足が出た時の3つの場合に実行するが、音声が重なって再生されないように処理を行っている。例えば、ベッド11から足が出た時に足元センサ25の反応によりセンサ信号処理部41がPSD_FOOTという記号列を記号列バッファ部42に出力し、第7状態遷移推定部45−7によりFOOT_OUTという記号列が記号列バッファ部42に出力され、第11状態遷移推定部45−12によりON_FOOT_OUTという記号列が記号列バッファ部42に出力する。第12状態遷移推定部45−12はこのON_FOOT_OUTという記号列により、遷移状態は、START状態から状態PLAY_FOOT_OUTに遷移し、FOOT_OUT_SOUNDの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0055】
図11の処理実行部44がこの記号列FOOT_OUT_SOUNDを入力すると、この記号列に設定されている音声をスピーカ14から出力する。第12状態遷移推定部45−12において、遷移状態は、3秒後に再びSTART状態に遷移する。
このように、第1〜第12状態遷移推定部45−1〜45−12は、動作推定処理だけでなく警報装置の制御も可能とする。
【0056】
以上説明した第1〜第12の状態遷移推定部45−1〜45−12の構成において、起き上り動作となるWAKEUPという記号列が記号列バッファ部42上に出力されると、記録部51の動作判定結果記録領域55に動作判定結果が記録される。これと供に、処理実行部44がナースコール等の外部装置に出力し、看護師などに通知することができる。TESURI_DOWN,FOOT_OUTの記号列が記号列バッファ部42に出力された場合にも、ナースコール等へ出力することでより見逃しの少ない起き上り動作の検知が可能となる。
【0057】
記号列バッファ部42は、センサ信号処理部41および各状態遷移推定部45から記号列を受け取る。記号列バッファ部42は、記号列を受け取ると、全ての状態遷移推定部45に受け取った記号列を受け渡す。記号列バッファ部42は、全ての状態遷移推定部45に受け渡しを完了した記号列を、記号列バッファ部42から削除する。
【0058】
各状態遷移推定部45にタイムアウトを設定することで、起き上り動作を検出した後も初期状態に戻ることができる。
以上のように全体としてベッド11上の起き上り動作を複数の状態遷移推定部45の処理として記述し、同時並行的に動作させることで、複数の起き上り動作パターンに対応することが可能となり、起き上り動作でないものは検知しないことで、誤検知を減らすことができる。
【0059】
状態遷移推定部45を1つとして定義することも可能であるが、動作の定義の容易さや新たな動作パターンの追加に要する稼動の面から複数の状態遷移推定部45を有することの方が利便性が高い。
また、各状態遷移推定部45におけるタイムアウトの時間を変更するか、時間のみを変更した別の状態遷移推定部45を作成することで、起き上り動作速度の被験者Pの個人差に対応することも可能である。
【0060】
さらに、今回説明した以外の起き上り動作パターンを定義する場合には、新たな動作パターンに対する状態遷移推定部45を追加することにより対応できる。
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る起き上り動作検出装置の構成の一例を示す説明図。
【図2】同じく起き上り動作検出装置における、頭センサの配置の一例を説明する平面図。
【図3】同じく起き上り動作検出装置における、頭センサの検知領域とベッドの関係を示す断面図。
【図4】同じく起き上り動作検出装置における、頭センサの検知領域とベッドの関係を示す平面図。
【図5】同じく起き上り動作検出装置における、手すりの手すりセンサの構成の一例を示す説明図。
【図6】同じく起き上り動作検出装置における、手すりの手すりセンサの構成の一例を示す断面図。
【図7】同じく起き上り動作検出装置における、手すりの折りたたみセンサの一例を示す説明図。
【図8】同じく起き上り動作検出装置における、足元センサの構成の一例を示す断面図。
【図9】同じく起き上り動作検出装置における、足元センサの構成の一例を示す説明図。
【図10】同じく起き上り動作検出装置における、看護師センサの検知領域を示す平面図。
【図11】同じく起き上り動作検出装置における、動作判定装置の構成の一例を示すブロック図。
【図12】同じく起き上り動作検出装置における、検出処理の一例を示すフローチャート。
【図13】同じく起き上り動作検出装置における、各センサの説明図。
【図14】同じく起き上り動作検出装置における、第1の状態遷移推定部の説明図。
【図15】同じく起き上り動作検出装置における、第2の状態遷移推定部の説明図。
【図16】同じく起き上り動作検出装置における、第3の状態遷移推定部の説明図。
【図17】同じく起き上り動作検出装置における、第4の状態遷移推定部の説明図。
【図18】同じく起き上り動作検出装置における、第5の状態遷移推定部の説明図。
【図19】同じく起き上り動作検出装置における、第6の状態遷移推定部の説明図。
【図20】同じく起き上り動作検出装置における、第7の状態遷移推定部の説明図。
【図21】同じく起き上り動作検出装置における、第8の状態遷移推定部の説明図。
【図22】同じく起き上り動作検出装置における、第9の状態遷移推定部の説明図。
【図23】同じく起き上り動作検出装置における、第10状態遷移推定部の説明図。
【図24】同じく起き上り動作検出装置における、第11状態遷移推定部の説明図。
【図25】同じく起き上り動作検出装置における、第12状態遷移推定部の説明図。
【符号の説明】
【0062】
11…ベッド、12…手すり、13…ベッドサイドテーブル、14…スピーカ、15…ベッドサイドテーブル、16…センサ設置用ボード、17…ヘッドボード、18…フットランプ、21…手すりセンサ、22…手すり折りたたみセンサ、23…頭センサ、24…看護師センサ、25…足元センサ、31…起き上り動作検出装置、100…病室、101…ドア。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベッドに横臥する被験者の起き上り動作を、複数のセンサにより検出する起き上り動作検出装置及び起き上り動作検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の分野においては、患者がベッドから起き上がる場合に、転倒・転落するなどの危険を伴う場合がある。このような事情から、ベッドで寝ていた患者の起き上りを検出するための装置が要望され開発されている。
特許文献1は、ベッド上の被験者の重心の位置と移動距離によって起き上りを検出する技術を開示している。
【0003】
特許文献2は、ベッド上の人の起き上りをベッドの手すりの近傍に設置したセンサからの検出ビームの反射時間の変化から起き上り動作を検出する技術を開示している。
特許文献3は、ベッド端部に設けられたベッドの手すりに加わる圧力によって起き上り動作を検出する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−20844号公報
【0005】
【特許文献2】特開2007−20845号公報
【0006】
【特許文献3】特開2007−50054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の従来技術は、被験者の重心のみで起き上り動作を判断、特許文献2の従来技術は、ベッドの手すり近傍のセンサだけで判断、特許文献3の従来技術においても、ベッド端部に設けられたベッドの手すりに加わる圧力だけで判断しており、単一のセンサの測定結果のみに基づいて単純に離床を検出する方式である。これらの方法の場合、ベッド上の患者の重心位置の変化を用いる場合、ベッドからずり落ちる動作では重心の移動量がわずかであるため、起き上り動作として検知できなかったり、手すりに取り付けたセンサを用いる場合には、例えば患者が寝ている状態で手すりをつかんだり、寝返りを打った場合などにもセンサが反応し、誤検出が発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、被験者の姿勢について正確な判断を行なうことができる起き上り動作検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための一実施形態は、
被験者が横臥するベッドにて配置される複数のセンサと、
前記被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、前記複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、前記複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とする起き上り動作検出装置である。
【発明の効果】
【0010】
ベッドに横臥した被験者の起き上り動作等の姿勢について、誤判断をすることなく正確に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(構成)
本発明の一実施形態に係る起き上り動作検出装置Aの構成について、以下に説明する。図1は、起き上り動作検出装置の構成の一例を示す説明図である。起き上り動作検出装置Aは、一例として、5種類のセンサを用い、各センサの測定値の変化に基づいて、ベッドに寝ている人(被験者、患者、被介護者)の起き上り動作を検出する装置である。起き上り動作検出装置Aは、一例として、5種類のセンサと3種類の警報装置と動作判定装置31で構成されている。
【0012】
すなわち、起き上り動作検出装置Aは、図1において、ベッドの幅方向のヘッドボード17の上部に設置した頭センサ23と、手すり12の最上面のベッド内に対して外側の両端部分に設置した手すりセンサ21と、手すりの折りたたみ部分のヒンジに設置した手すり折りたたみセンサ22と、ベッドの足元部分に設置した足元センサ25と、ベッドとは外向き方向に設置した看護師センサ24の5種類のセンサを有している。さらに、起き上り動作検出装置Aは、ベッドサイドテーブル13の上に設置したベッドサイドランプ15と、スピーカ14と、ベッドの足元付近のベッド下部に設置したフットランプ18の3種類の警報装置を有している。さらに、起き上り動作検出装置Aは、上述した5種類のセンサと3種類の警報装置を接続した一例として、マイクロコンピュータである動作判定装置31と、動作判定装置31と接続されるナースコールシステム32等の外部装置を有している。
【0013】
5種類のセンサの計測値により、ベッドに寝ている人の起き上り動作を動作判定部43で判定し、処理実行部44により、3種類の警報装置とナースコールシステム等に結果を出力する。
次に5種類のセンサについて説明する。
(1)頭センサ
図2は、頭センサの配置の一例を説明する平面図である。頭センサ23−1〜23−7は、7つの赤外線距離センサとそれらを固定するためのセンサ設置用ボード16で構成される。ベッドの高さやベッド上の人の体格に応じて、センサ設置用ボード16のボード部分全体は床面からの高さを変更可能とする。頭センサ23−1〜23−7は、ベッドのヘッドボード17の上部に設置する。赤外線距離センサである頭センサ23−1〜23−9を一平面上に(つまり、同一平面上に)図2及び図3のように配置する。このとき各頭センサ23−1〜23−9は、ベッドマット面と並行な方向成分の距離を検知可能にする。
【0014】
ベッド上の被験者Pがベッド中央部で真上に起き上り長座位の姿勢になった時に頭が反応する位置を第1の頭センサ23−1の位置とする。このときベッド上の被験者Pの左右両方の肩部が反応する位置を左右それぞれの第2の頭センサ23−2、第3の頭センサ23−3の位置とする。ベッド上の被験者Pが起き上がった時に第1の頭センサ23−1、第2の頭センサ23−2、第3の頭センサ23−3が3つ同時に反応する位置に設置する。
【0015】
第4の頭センサ23−4、第6の頭センサ23−6は、斜め方向に起き上り動作をした場合の頭部、第5の頭センサ23−5、第7の頭センサ23−7は、斜め方向に起き上り動作をした場合の肩から下の上半身を検出できる位置に設置する。頭センサ23−1〜23−7は、中央部が最も高い位置になり、両端は最も低くなる位置に設置する。7つの赤外線距離センサである頭センサ23−1〜23−7は、ヘッドボード17からベッド11上の被験者Pの体までの距離を検出する。
【0016】
また、第8の頭センサ23−8、第9の頭センサ23−9は、ベッド11上の被験者Pの上半身がベッド11上部から移動したことを検知するためのセンサである。図4は、頭センサの検知領域とベッドの関係を示す平面図である。図4のように、第8の頭センサ23−8と第9の頭センサ23−9の検知領域を互いにクロスさせ、ベッド11上の被験者Pの上半身が起き上がった場合に、第8の頭センサ23−8、第9の頭センサ23−9は、ベッド上の被験者Pの検知領域から外れるように設置する。
(2)手すりセンサ
図5は手すりの手すりセンサの構成の一例を示す説明図である。ここで、手すり12の両端に、赤外線発光部21−1と赤外線受光部21−2を取り付け、手すり12をつかむと赤外線をさえぎることにより検知できる手すりセンサ21とする。
【0017】
ベッドに手すり12,12が複数ある場合には、図6のように赤外線受光部21−1が他の手すりの赤外線を受光しないように、各赤外線発光部21−1,21−1の位置をベッド11の中心部に設置し、各赤外線受光部21−2,21−2を外側に設置する。
(3)手すり折りたたみセンサ
図7は手すりの折りたたみセンサの一例を示す説明図である。手すりを折りたたむタイプの手すり12に、手すりの折りたたみセンサ22を取り付ける。ここで、折りたたむとスイッチがONもしくはOFFになるように、手すりの折りたたみセンサ22をヒンジ部分に取り付ける。
(4)足元センサ
図8及び図9は、足元センサの取り付け位置を示す説明図である。図に示すように、足元センサ25は、ベッド11の足元であって、ベッド11から足が出ると反応する位置に設置する。
(5)看護師センサ
図10は看護師センサの検知領域を示す平面図である。看護師センサ24は、ベッド11もしくはその周辺に設置し、ベッド11のそばに人がいることを検知する。看護師センサ24は、人感センサでも赤外線センサでもよい。
【0018】
次に、3種類の警報装置とナースコールについて説明する。
ベッドサイドランプ15は、図1に示すように、ランプを点灯することで、患者の起き上り動作を遅らせることを目的に設置される。スピーカ14は、問いかけることで離床までの起き上り動作を遅らせることを目的として設置される。フットランプ18は、ベッド11から足が出た際に、足元をランプで照らすことにより、夜間でも安全を確保する。ナースコールシステム32は、ナースを呼び出すための通信システムであり、インターフェースを介して、施設内の看護師が待機している部屋に呼び出し信号を供給する。
【0019】
次に、動作判定装置31の構成の一例を示す。
なお、動作判定装置31は、複数のセンサからの信号を受け、被験者Pの特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定し、判定した遷移状態に応じて出力信号を出力ものであり、このような機能をもつ装置であればよい。その装置の一例を以下に示す。
【0020】
図11は、起き上り動作検出装置における動作判定装置の構成の一例を示すブロック図である。動作判定装置31は、各センサからの信号を入力し、あらかじめ設定してあるセンサの反応条件を満たした場合に、記号列を出力するセンサ信号処理部41と、センサ信号処理部41から出力された記号列を一時的にメモリ上に保持する記号列バッファ部42と、記号列バッファ部42内の記号列によって複数の状態遷移推定部45−1〜45−Nを用いて起き上りかどうかの動作判定を行う動作判定部43と、動作判定部43の判定結果からベッドサイドランプなどの外部装置に処理結果を出力する処理実行部44と、センサ信号処理部41のデータおよび動作判定結果を記録する記録部51を有している。
【0021】
さらに、動作判定部43の複数の状態遷移推定部45−1〜45−Nからも、記号列を記号列バッファ部42に出力することが可能である。
センサ信号処理部41は、まず、各センサの信号に平滑化等のフィルタ処理をする。センサの反応が特定条件(例えば、距離がxcm以下など)になった時に、フィルタ処理されたセンサデータを、記号列として記号列バッファ部42に出力する。この記号列は、区別可能な任意の文字列とするが、この例を図13に示す。図13において、頭センサ23、手すりセンサ21、手すり折りたたみセンサ22、足元センサ25のそれぞれの出力に対する記号列の一例が示されており、図14乃至図25で示す状態遷移推定部での処理に用いられる。
【0022】
この実施形態では、頭センサ23−1〜23−7である第1センサ〜第7センサの反応した距離が100cm以下になった場合、センサ信号処理部41は、それぞれPSD_1〜PSD_8の記号列を記号列バッファ部42に出力し、100cm以上に変化した場合それぞれPSD_1_OUT〜PSD_7_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力する。この100cmという値はベッド上の被験者Pの体格によって変更可能である。従って、図3においてベッド上で長座位になった姿勢において、ヘッドボード17と被験者Pとの距離d1を設定して登録することが好適である。
【0023】
頭センサ23−8、23−9である第8センサ及び第9センサの反応した距離が55cm以上になった場合、センサ信号処理部41はそれぞれPSD_8,PSD_9の記号列を記号列バッファ部42に出力し、55cm以下に変化した場合にそれぞれPSD_8_OUT,PSD_9_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力する。この55cmという値は、図4においてベッド上で被験者Pが左右どちらの方向についても寝返りをうった姿勢において、第8センサと第9センサを互いに交差させ、共に被験者Pと反応する位置になる時の、第8センサと第9センサとベッドマットとの距離d2として設定する。
【0024】
手すりセンサ21の赤外線発光部21−1と赤外線受光部21−2が遮られた場合には、センサ信号処理部41は、TESURI_TOUCHの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
手すり12を折りたたむとセンサ信号処理部41は、TESURI_DOWNの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0025】
足元センサ25の2つの赤外線距離センサのいずれかが50cm以下になると、センサ信号処理部41はFOOT_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力する。この50cmという値はベッド上の被験者Pの体格に応じて変更可能であり、図9の距離d3の値として設定する。
【0026】
看護師センサ24において、ベッド付近に人が居るとセンサ信号処理部41はIN_NURSEの記号列を記号列バッファ部42に出力し、ベッド付近に人が居ないとOUT_NURSEの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
記号列バッファ部42は、センサ信号処理部41で出力された記号列を記憶領域に一定時間保持する。
【0027】
動作判定部43は、センサ信号処理部41で出力された記号列を遷移条件とする後述される図14乃至図25の状態遷移推定部45−1、−2、…、−12を含むN個の状態遷移推定部45−1、−2、…、45−Nによって構成される。状態遷移推定部45−1〜45−Nは、任意のスクリプト言語で記述できるものとする。状態遷移推定部45−1〜45−Nは同時並列で処理が可能とし、処理の実行の有無の選択、動作中の処理の追加・削除が可能なものとする。
【0028】
記録部51は、判定基準記録領域52と、センサデータ記録領域54と、動作判定結果記録領域55を有している。判定基準記録領域52は、センサ信号処理条件・状態遷移推定条件53の記録を保持し、起き上り動作判定処理実行中においてもセンサ信号処理部41と動作判定部43への条件変更・削除を可能とする。記録部51におけるセンサデータ記録領域54には、センサ信号処理部41から出力されるセンサ毎の状態が、センサが反応する毎に記録される。このとき、時間と対応付けて記録しても良い。時間と対応づけて記録されるセンサデータは、一定時間長のみ記録されるものとし、前に記録されたデータは時間の経過とともに削除されていくものとする。
【0029】
(起き上り動作判定処理)
上述したような構成をもつ起き上り動作検出装置Aにおいて、はじめに、起き上り動作判定処理の概要の一例を、図12のフローチャートを用いて説明する。その後、図14乃至図25が示す複数の状態遷移推定部による起き上り動作判定処理を詳細に説明する。なお、以下の図12のフローチャートの各ステップは、回路ブロックに置き換えることができ、従って、各フローチャートのステップは、全て回路ブロックに定義しなおすことが可能である。
【0030】
・起き上り動作判定処理の概要
初めに、起き上り動作検出装置Aは、上述した動作判定装置31を用いて、図12に示すフローチャートにより、以下のように起き上り動作判定処理を行なう。この場合、センサ信号処理部41、処理実行部44及び記録部51は、図11に示すように用いられるが、記号列バッファ部42及び第1状態遷移推定部45−1乃至第N状態遷移推定部45−Nは必ずしも用いられず、図12のフローチャートが示す工程を記述したコンピュータプログラムが実行可能なCPU部であればよい。
【0031】
すなわち、動作判定部43または図示しないCPU部は、はじめに、被験者Pの姿勢に応じた複数の状態遷移を定義し、その被験者Pの検出信号のパラメータを例えば記録部51の判定基準記録領域52のセンサ信号処理条件・状態遷移推定条件53等に登録する(ステップS11)。このパラメータの一例として、上述した、『図3において被験者Pがベッド11上で長座位になった姿勢におけるヘッドボード17と被験者Pとの距離d1』、『図4においてベッド上で被験者Pが左右どちらの方向についても寝返りをうった姿勢において、第8センサと第9センサを互いに交差させ、共に被験者Pと反応する位置になる時の、第8センサと第9センサとベッドマットとの距離d2』、『図9において、被験者Pがベッド11の外に足を出した場合の、足元センサ25の2つの赤外線距離センサまでの距離d3』がある。
【0032】
さらに、このパラメータは、被験者Pの敏捷性を加味し、後述する図14におけるWAITからSUCCESSまでのタイムアウトの時間、図15及び図16におけるSTARTからWAITまでのタイムアウトの時間、SUCCESSからSTARTまでのタイムアウトの時間、図17及び図18におけるWAIT_RIGHT2、WAIT_LEFT2からSUCCESSまでのタイムアウトの時間、その他、図19乃至図25における各タイムアウトの時間とすることが好適である。すなわち、被験者Pが起き上り等の行為を実践して、実測の時間をこのパラメータとすることが好適である。すなわち、このパラメータは、被験者Pが実際に起き上り動作等を行なって取得した時間データや距離データを、閾値等として用いるものである。
【0033】
次に、動作判定部43または図示しないCPU部は、例えば上述した5種類のセンサからの検出信号を取得する(ステップS12)。これは、上述したセンサ信号処理部41を介して検出信号を取得することでもよいし、上述した5種類のセンサから直接、取得して、動作判定部43または図示しないCPU部において適宜処理することも好適である。
【0034】
次に、動作判定部43または図示しないCPU部は、複数の検出信号の反応のあった個数、反応のあった順序、反応のあった時間差に基づいて、先に定義した被験者Pの姿勢に対応した複数の状態遷移から、現在の被験者Pの状態遷移(姿勢)を決定する(ステップS13)。センサの検出信号に基づいて状態遷移を決定する手法は、設計者が任意に設定が可能である。しかし、予め被験者Pがその姿勢を繰り返しとってみて、複数の検出信号の反応のあった個数、反応のあった順序、反応のあった時間差について、統計的にデータを採取し、このデータに基づいて決定することが好適である。
【0035】
最後に、動作判定部43または図示しないCPU部は、決定した被検者の状態遷移に応じて、ナースコール等の外部装置への出力を行なう(ステップS14)。例えば、動作判定部43または図示しないCPU部は、被験者Pが起き上り動作をしているという遷移状態にあると判断すれば、看護師を呼ぶために、ナースコールステーション等に呼び出し信号を送信する。
【0036】
このように、本発明に係る起き上り動作検出装置Aは、被験者Pの姿勢に対応した複数の遷移状態を予め定義し、複数のセンサからの検出信号の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差等に基づいて、この複数の遷移状態から一つの遷移状態(姿勢)を決定し、これに応じて外部に信号を出力するものである。これにより、被験者Pに対する誤判断の少ない検出結果を得ることができる。
【0037】
・起き上り動作判定処理の詳細
次に、複数の状態遷移推定部を用いた起き上り動作判定処理の詳細を、図13乃至図25を用いて説明する。
起き上り動作判定処理は、ベッド11上で長座位になった、ベッド11上部から体が移動した、手すりをつかんだ、手すりを折りたたんだ、ベッド11から足が出た、というベッド11上の被験者Pが起き上がって離床するまでの一連の動作を、各センサの反応個数、反応順序、反応時間差に基づいて判定するものである。
【0038】
判定方法として、上半身の状態、起き上り動作順序、手すりの状態、手すりの折りたたみ状態、足元の状態、ベッドサイドの人の有無の状態を次のように状態遷移推定部45−1〜45−Nにあらかじめ定義しておく。
状態遷移推定部45−1〜45−Nは、記号列バッファ部42から受取った記号列を入力とし、受取った記号列と現在の状態に応じて、記録部51の判定基準記録領域52に格納されたセンサ信号処理条件・状態遷移推定条件53等である予め定めた遷移条件に従って状態を遷移する。また、状態遷移推定部45−1〜45−Nは、予め記号列バッファ部42に記号列を出力すると定めた状態遷移が発生した際に、発生した状態遷移に応じて予め定めた記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0039】
(1)上半身の状態、起き上り順序、手すりの状態の定義
図14は頭センサ23−1〜23−7である第1センサ〜第7センサの反応による第1状態遷移推定部45−1の処理を示したものである。ベッド11上で被験者Pが起き上り動作を開始する。第1状態遷移推定部45−1では、遷移状態は、STARTの状態にある。ベッド11上で真上に起き上り、長座位になると、頭センサ23−1〜23−3である第1センサ、第2センサ、第3センサが同時に3つ反応し、いずれも距離が100cm以下となり、センサ信号処理部41が記号列PSD_1,PSD_2,PSD_3の記号列を記号列バッファ部42に出力する。第1状態遷移推定部45−1はこの出力により、遷移状態は、状態WAITに遷移する。長座位の姿勢がこのまま0.5秒状態が続くと、遷移状態は、SUCCESSに遷移すると同時に第1状態遷移推定部45−1は、HEAD_UPの記号列を記号列バッファ部42上に出力し、遷移状態は、STARTに遷移して元に戻る。
【0040】
ベッド11上で被験者Pが真上ではない方向に向いて起き上がった場合には、頭センサ23について、第1センサ、第2センサ、第5センサのセット、第2センサ、第4センサ、第5センサのセット、第1センサ、第3センサ、第7センサのセット、第3センサ、第6センサ、第7センサのセットに含まれる3つのセンサが少なくとも1セット以上同時に反応することで、第1状態遷移推定部45−1では、遷移状態は、STARTの状態からWAITの状態に遷移し、0.5秒間保持すると、遷移状態は、SUCCESSの状態に遷移する。
【0041】
これにより、ただ手を上げたりするような、ベッド11上で起き上り動作でない動作を行った場合には、センサの配置からセンサセットに含まれる3つのセンサが同時に反応しないし、たとえ同時に反応してもその状態を0.5秒保持しなければ長座位と判定しないので、誤検知を低減することができる。
【0042】
さらに、長座位になったことを精度良く検出するために、ベッド11上で長座位になった動作と手すりをつかんだ動作が順番に起こった場合を検出することで、長座位になったと判定する。
図15は被験者Pの頭が上がった後に手すり12を触ると起きあがりと判定する第2状態遷移推定部45−2の処理を示したものである。遷移状態は、最初STARTにある状態から、HEAD_UPという記号列の入力により、状態WAITに遷移し、手すりをつかむと発生するTESURI_TOUCHという記号列の入力より状態SUCCESSに遷移して記号列WAKEUPを発生し、0.5秒後に再びSTART状態に遷移する。
【0043】
図16の第3状態遷移推定部45−3は、手すりをつかむ動作と頭が上がる動作が第2状態遷移推定部45−2の逆になったものである。
第2状態遷移推定部45−2と第3状態遷移推定部45−3にあるように、遷移状態がWAITの状態で、次の動作の記号列の入力が5秒間ない場合には、起き上り動作ではないと判定し、遷移状態は、START状態に遷移する。
【0044】
図17及び図18は、ベッド11上で被験者Pが長座位にならず(HEAD_UP検出しない)、ずるずるとベッド11下部へ移動する動作を検出する第4状態遷移推定部45−4と第5状態遷移推定部45−5の処理を示したものである。
ベッド11上で被験者Pが長座位にならず(HEAD_UP検出しない)、ずるずるとベッド11下部へ移動する場合、頭センサ23−8、23−9である第8センサ及び第9センサが一定距離以上に変化し、この時、センサ信号処理部41が記号列PSD_8,PSD_9の記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0045】
ベッド11上で被験者Pがずるずると下部へ移動を開始する。この時、第4状態遷移推定部45−4上では、遷移状態は、STARTの状態にある。
被験者Pがずるずると下部に移動し、第8センサか第9センサのいずれかが、55cmの距離になると、記号列PSD_8かPSD_9のいずれかの記号列を記号列バッファ部42に出力される。第4状態遷移推定部45−4では、遷移状態は、WAIT_RIGHTかWAIT_LEFTのいずれかの状態に遷移する。
【0046】
さらに被験者Pが下部に移動すると第8センサ及び第9センサの両方が距離55cm以上の距離となり、記号列PSD_8もしくはPSD_9のいずれかの記号列が記号列バッファ部42に出力され、第5状態遷移推定部45−5では、遷移状態は、WAIT_RIGHT2かWAIT_LEFT2の状態に遷移する。そのままの状態が1秒続くと、遷移状態は、SUCCESSの状態に遷移し、第5状態遷移推定部45−5は、ON_WAKEUP_2PSDの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0047】
ベッド11上で被験者Pが長座位にならず(HEAD_UP検出しない)、ずるずるとベッド11下部へ移動する場合には、必ず第8センサと第9センサの両方の検出信号が順番を問わず55cm以上の距離に変化する。この距離は寝返りなどの動作を行った場合でも必ず第8センサか第9センサのどちらか一方が反応する距離に設定することと、たとえ両方とも反応があった場合においても1秒その状態を保持しなければならないことで、寝返りを起き上りと誤判断することを低減することができる。
【0048】
(2)手すりの折りたたみ状態の定義
図19は手すり12を折りたたむ動作を検出する第6状態遷移推定部45−6の処理を示したものである。手すり12を折りたたむと、センサ信号処理部41が発生する記号列TESURI_DOWNによって第6状態遷移推定部45−6の遷移状態は、START状態からDOWN状態に遷移し、同時にTESURI_DOWNの記号列を記号列バッファ部42に出力し、10秒後に再びSTART状態に戻る。
【0049】
(3)足元の状態の定義
図20はベッド11から足が出る動作を検出する第7状態遷移推定部45−7の処理を示したものである。ベッド11から足が出るとセンサ信号処理部41が出力する記号列PSD_FOOTによって第7状態遷移推定部45−7の遷移状態は、START状態からSUCCESS状態に遷移し、同時にFOOT_OUTの記号列を記号列バッファ部42に出力し、遷移状態は、3秒後に再びSTART状態に戻る。
【0050】
(4)ベッドサイドの人の有無の状態の定義
図21はベッド11付近に看護師などの人がいるかどうかを検出する第8状態遷移推定部45−8の処理を示したものである。
起動時に遷移状態は、STARTという状態になった後1秒後にENABLEという状態に遷移し、OUT_NURSEという記号列を記号列バッファ部42に出力する。ベッド11のそばに人がいると、看護師センサ24の反応によりセンサ信号処理部41がPSD_ROOMという記号列を記号列バッファ部42に出力することで、遷移状態は、DISABLEの状態に遷移し、IN_NURSEという記号列を記号列バッファ部42に出力する。ベッド11のそばから人が離れると、看護師センサ24の反応により、遷移状態は、センサ信号処理部41がPSD_ROOM_OUTという記号列を記号列バッファ部42に出力することでPRE_ENABLEの状態に遷移する。この状態の時に再びベッド11のそばに人が来ると遷移状態は、DISABLEの状態に戻り、3秒間ベッド11のそばに人がいないとENABLEの状態に遷移する。この3秒間という時間は変更可能なものとする。この時間設定はベッド11のそばに看護師や医師がいる場合には何らかの措置を行っており、一定時間動作が無いと考えられる上限の時間を設定する。
【0051】
図22はベッド11のそばに人がいるかいないかによって、起き上りの警報を行う第9状態遷移推定部45−9を示したものである。ベッド11上の被験者Pが長座位になったもしくは上半身がベッド11下部に移動した場合、ベッド11のそばに人が居ないと、頭センサ23の反応によってセンサ信号処理部41がWAKEUPという記号列を発生し、遷移状態は、STARTの状態からRESEND_WAKEUPの状態に遷移して、状態遷移推定部45−9は、記号列バッファ部42上にON_WAKEUPという記号列を出力する。ベッド11のそばに人がいると第8状態遷移推定部45−8により出力されたIN_NURSEという記号列により、遷移状態は、IN_NURSE_STATEの状態に遷移する。RECEND_WAKEUPの状態に遷移している場合にもIN_NURSEという記号列により、遷移状態は、IN_NURSE_STATEの状態に遷移する。ベッド11のそばに人がいなくなると第8状態遷移推定部45−8により発生されたOUT_NURSEという記号列により、遷移状態は、STARTの状態に遷移する。
【0052】
このように、第9状態遷移推定部45−9の処理によれば、ベッド11のそばに人がいる場合には警報が鳴らない仕組みが提供できる。
図23はベッド11のそばに人がいるかいないかによって手すりを折りたたんだ際の警報を行う第10状態遷移推定部45−10を示したものである。第9状態遷移推定部45−9と同様の処理を行い、ベッド11のそばに人がいる場合には警報が鳴らない仕組みを提供できる。
【0053】
図24はベッド11のそばに人がいるかいないかによってベッド11から足が出た際の警報を行う第11状態遷移推定部45−11を示したものである。第9状態遷移推定部45−9と同様の処理を行い、ベッド11のそばに人がいる場合には、たとえ、ON_FOOT_OUTを検出しても警報が鳴らない仕組みを提供できる。
【0054】
図25は音声による警報装置の制御を行う第12状態遷移推定部45−12を示したものである。音声による警報は起き上り検出時、手すりを折りたたんだ時、ベッド11から足が出た時の3つの場合に実行するが、音声が重なって再生されないように処理を行っている。例えば、ベッド11から足が出た時に足元センサ25の反応によりセンサ信号処理部41がPSD_FOOTという記号列を記号列バッファ部42に出力し、第7状態遷移推定部45−7によりFOOT_OUTという記号列が記号列バッファ部42に出力され、第11状態遷移推定部45−12によりON_FOOT_OUTという記号列が記号列バッファ部42に出力する。第12状態遷移推定部45−12はこのON_FOOT_OUTという記号列により、遷移状態は、START状態から状態PLAY_FOOT_OUTに遷移し、FOOT_OUT_SOUNDの記号列を記号列バッファ部42に出力する。
【0055】
図11の処理実行部44がこの記号列FOOT_OUT_SOUNDを入力すると、この記号列に設定されている音声をスピーカ14から出力する。第12状態遷移推定部45−12において、遷移状態は、3秒後に再びSTART状態に遷移する。
このように、第1〜第12状態遷移推定部45−1〜45−12は、動作推定処理だけでなく警報装置の制御も可能とする。
【0056】
以上説明した第1〜第12の状態遷移推定部45−1〜45−12の構成において、起き上り動作となるWAKEUPという記号列が記号列バッファ部42上に出力されると、記録部51の動作判定結果記録領域55に動作判定結果が記録される。これと供に、処理実行部44がナースコール等の外部装置に出力し、看護師などに通知することができる。TESURI_DOWN,FOOT_OUTの記号列が記号列バッファ部42に出力された場合にも、ナースコール等へ出力することでより見逃しの少ない起き上り動作の検知が可能となる。
【0057】
記号列バッファ部42は、センサ信号処理部41および各状態遷移推定部45から記号列を受け取る。記号列バッファ部42は、記号列を受け取ると、全ての状態遷移推定部45に受け取った記号列を受け渡す。記号列バッファ部42は、全ての状態遷移推定部45に受け渡しを完了した記号列を、記号列バッファ部42から削除する。
【0058】
各状態遷移推定部45にタイムアウトを設定することで、起き上り動作を検出した後も初期状態に戻ることができる。
以上のように全体としてベッド11上の起き上り動作を複数の状態遷移推定部45の処理として記述し、同時並行的に動作させることで、複数の起き上り動作パターンに対応することが可能となり、起き上り動作でないものは検知しないことで、誤検知を減らすことができる。
【0059】
状態遷移推定部45を1つとして定義することも可能であるが、動作の定義の容易さや新たな動作パターンの追加に要する稼動の面から複数の状態遷移推定部45を有することの方が利便性が高い。
また、各状態遷移推定部45におけるタイムアウトの時間を変更するか、時間のみを変更した別の状態遷移推定部45を作成することで、起き上り動作速度の被験者Pの個人差に対応することも可能である。
【0060】
さらに、今回説明した以外の起き上り動作パターンを定義する場合には、新たな動作パターンに対する状態遷移推定部45を追加することにより対応できる。
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る起き上り動作検出装置の構成の一例を示す説明図。
【図2】同じく起き上り動作検出装置における、頭センサの配置の一例を説明する平面図。
【図3】同じく起き上り動作検出装置における、頭センサの検知領域とベッドの関係を示す断面図。
【図4】同じく起き上り動作検出装置における、頭センサの検知領域とベッドの関係を示す平面図。
【図5】同じく起き上り動作検出装置における、手すりの手すりセンサの構成の一例を示す説明図。
【図6】同じく起き上り動作検出装置における、手すりの手すりセンサの構成の一例を示す断面図。
【図7】同じく起き上り動作検出装置における、手すりの折りたたみセンサの一例を示す説明図。
【図8】同じく起き上り動作検出装置における、足元センサの構成の一例を示す断面図。
【図9】同じく起き上り動作検出装置における、足元センサの構成の一例を示す説明図。
【図10】同じく起き上り動作検出装置における、看護師センサの検知領域を示す平面図。
【図11】同じく起き上り動作検出装置における、動作判定装置の構成の一例を示すブロック図。
【図12】同じく起き上り動作検出装置における、検出処理の一例を示すフローチャート。
【図13】同じく起き上り動作検出装置における、各センサの説明図。
【図14】同じく起き上り動作検出装置における、第1の状態遷移推定部の説明図。
【図15】同じく起き上り動作検出装置における、第2の状態遷移推定部の説明図。
【図16】同じく起き上り動作検出装置における、第3の状態遷移推定部の説明図。
【図17】同じく起き上り動作検出装置における、第4の状態遷移推定部の説明図。
【図18】同じく起き上り動作検出装置における、第5の状態遷移推定部の説明図。
【図19】同じく起き上り動作検出装置における、第6の状態遷移推定部の説明図。
【図20】同じく起き上り動作検出装置における、第7の状態遷移推定部の説明図。
【図21】同じく起き上り動作検出装置における、第8の状態遷移推定部の説明図。
【図22】同じく起き上り動作検出装置における、第9の状態遷移推定部の説明図。
【図23】同じく起き上り動作検出装置における、第10状態遷移推定部の説明図。
【図24】同じく起き上り動作検出装置における、第11状態遷移推定部の説明図。
【図25】同じく起き上り動作検出装置における、第12状態遷移推定部の説明図。
【符号の説明】
【0062】
11…ベッド、12…手すり、13…ベッドサイドテーブル、14…スピーカ、15…ベッドサイドテーブル、16…センサ設置用ボード、17…ヘッドボード、18…フットランプ、21…手すりセンサ、22…手すり折りたたみセンサ、23…頭センサ、24…看護師センサ、25…足元センサ、31…起き上り動作検出装置、100…病室、101…ドア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が横臥するベッドにて配置される複数のセンサと、
前記被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、前記複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、前記複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力する出力手段(44)と、
を具備することを特徴とする起き上り動作検出装置。
【請求項2】
被験者が横臥するベッドに複数のセンサを配置し、
前記被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、
前記複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、前記複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定し、
前記判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力することを特徴とする起き上り動作検出方法。
【請求項1】
被験者が横臥するベッドにて配置される複数のセンサと、
前記被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、前記複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、前記複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力する出力手段(44)と、
を具備することを特徴とする起き上り動作検出装置。
【請求項2】
被験者が横臥するベッドに複数のセンサを配置し、
前記被験者の特定の姿勢を意味する複数の遷移状態を定義し、
前記複数のセンサから供給される複数の検出信号の中の反応があった個数、反応があった順序、反応があった時間差の少なくとも一つに基づいて、前記複数の遷移状態の中から一つの遷移状態を判定し、
前記判定した遷移状態に応じて、出力信号を出力することを特徴とする起き上り動作検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2009−297148(P2009−297148A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153145(P2008−153145)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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