説明

起振機の位相差制御装置、および同制御方法

【課題】 公知発明(特開2002−66458号公報)に係る起振機の位相差制御技術を更に改良して、調節された位相差を自動的に保持して、起振力を一定値に維持できるようにする。
【解決手段】 油圧揺動モータ13の出力軸に直結された内軸8aは図外の固定偏心重錘と固着されており、上記油圧揺動モータ13のハウジングと一体的に連設された外管8bは図外の可動偏心重錘と同期し同相で回転する。上記の外管8bと内軸8aとの間にクラッチ機構を設ける。符号19はクラッチ固定板であって、前記の外管8bと一体に連設されており、符号20はクラッチ可動板であって、スプライン21を介して内軸8aに装着されている。上記のクラッチ機構を「接」の状態ならしめると、図外の固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差変化が阻止され、起振力が一定に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏心重錘式の起振機に係り、固定偏心重錘に対する可動偏心重錘の回転位相差を増減制御することによって起振力を調節する装置、および同方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の調節装置を備えた起振機は振動杭打抜機に賞用されている。
その理由は、起振機の回転速度を変化させることなく起振力を増減調節できるからであり、詳しくは以下の通りである。
偏心重錘式の起振機は、偏心重錘を回転させることによって振動を発生させる機器であって、発生する振動の周波数は偏心重錘の回転速度と等しい。
このため、杭打抜作業時に起振機を始動させると、偏心重錘の回転速度が次第に上昇して定格回転速度に達するまでの間に、振動数が次第に増加する。
振動数が増加する途中で、杭打抜き作業現場付近の構造物や機械類(例えばクレーンのブーム)の固有振動数と一致したとき、共振現象を生じて公害事故や破損事故を招く虞れが有る。
【0003】
こうした不具合を防止するため、固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を180度にして、起振力ゼロの状態で始動し、回転速度が増加して付近構造物等の共振周波数区域を通過した後に、前記の位相差を減少させて起振力を発生させるという工法が広く行なわれており、この工法を実施するための装置も開発されている(例えば特開2002−66458号公報)。
図2は上記公知発明の1実施形態を描いた模式的な断面図であって、同公報の図2に対応する。ただし、構成部材に付記した符号数字およびアルファベットは修正してある。
【0004】
起振機ケース7を貫通して、内軸8aと外管8bとから成る2重管8が配設されている。
上記の内軸8は回転駆動機器(例えばオイルモータ)11によって回転駆動される。
固定偏心重錘9は、上記の内軸8aに対してキーkを介して固着され、該内軸8aと同一回転速度,同一回転位相で回転する。可動偏心重錘10は、上記の内軸8aにより、ベアリングBを介して相対的回動自在に支承されている。
上記の可動偏心重錘10は、外管8bを介して可逆回動機構12のボデー12aと一体的に結合されている。
そして、該可逆回動機構12の出力軸12bは、前記の内軸8aに対して同心に、一体的に結合されている。符号18を付して示したのは、可逆回動機構12に対して作動油を送給するためのスイベルジョイントである。
【0005】
本図2に示した位相差制御装置が記載されている文献(特開2002−66458号公報)によれば、前記の可逆回動機構は油圧モータであると説明されており、その他の記載内容から推察すると、詳しくは油圧式の揺動モータである。
油圧揺動モータの模式図を図3に示す。
円筒形のハウジング1と同心に出力軸2が配置され、該出力軸2に対して対称に1対のベーン4a,4bが固着されており、該ベーン4a,4bの先端はハウジング1の内周面と密に接している。符号Tvを付して示したのはベーンの厚さ寸法(回転円弧の接線方向寸法)である。
一方、ハウジング1の内周面には、1対のブロック3a,3bが固着されていて、前記の出力軸2に対して密に接している。符号Tbを付して示したのはブロックの厚さ寸法である。
【0006】
図3において、ハウジング1aに設けられた流出入孔1aから、矢印aのように圧力油を注入するとともに、流出入孔1bを大気圧に連通させると、符号5aを付して示した密閉室の圧力が上昇し、加圧室として作用する。
上記圧力室は連通孔2aを経て、符号5bを付した密閉室に流入し、この室も加圧室として作用する。
これにより、ベーン4a,4bは加圧室側の圧力油に押されて、図の左回り(反時計)方向に回動する。
解放室6b内の作動油はベーン4aに押され、連通孔2bを経て解放室6a内に流動し、該解放室内の作動油と一緒になって流出入孔1bから矢印bのように流出する。
また、上記と反対に、流出入孔1bから圧力油を注入するとともに流出入孔1aを大気圧に連通させると、前記と反対の作用によって出力軸2が右回り(時計)方向に回動する。
【0007】
前掲の図2に示した公知発明においては、技術的範囲を広く表現するため符号12の機器を「可逆回動機構」と表現し、詳細な説明には括弧書きで(例えば油圧モータ)と述べられている。
図2において「可逆回動機構」を「油圧揺動モータ」と読み換えると、
図2のボデー12aは図3のハウジング1に対応し、
図2の出力軸12bは図3の出力軸2に対応していることが理解される。
図2に描かれている位相差調整式起振機中の可逆回動機構12を油圧揺動モータで代替し、その要部を抽出して描いたイメージ図は図4のとおりである。符号Tbはブロック15の厚さ寸法(回転円弧の接線方向寸法)であり、Tvはベーン17の厚さ寸法である。
【0008】
図4において、内軸8aが図外の回転駆動機器によって矢印θ方向に回転しているものとする。説明の便宜上、この矢印θ方向を右回り方向と呼ぶ。
油圧揺動モータ13の出力軸16は、前記の内軸8aに結合されていて、右回り方向に回転せしめられる。
(注)油圧揺動モータが特殊な使い方をされているので、構成部材の一部は、その名称と作用とが一致しなくなっている。
例えば図4に示した内軸8bに直結された出力軸16は、被動軸(ドリブンシャフト)として機能する。
【0009】
その構造から明らかなように、ハウジング14と出力軸16とは相対的に連続回転することができない(180度よりも小さい角度範囲内で往復回動できるだけである)。
従って、内軸8bと共に出力軸16が矢印θ方向に連続的に回転すると、ハウジング1も矢印θ方向(右回り)に回転し、概要的に両者の回転速度が等しい。
これに伴って、ハウジング14と一体的に結合されている外管8bも右回り方向に同期回転し、該外管8bに嵌着されている可動偏心重錘10も右回り方向に同期回転する。
その結果、内軸8aに嵌着されている固定偏心重錘9と、外管8bに嵌着されている可動偏心重錘10とが、基本的には右回りに同期回転する。
【0010】
いま、本来の用法に従ってハウジング14を静止部材と考えると、出力軸16は右回り,左回り方向に往復回動せしめられる。
また、出力軸16を基準にして考えれば、ハウジング14が左回り,右回り方向に往復回動せしめられる。
本図4の用法(特開2002−66458号公報)においては出力軸16を基準として、ハウジング14が往復回動せしめられる。
図4に描かれている構成部分が組み立てられて運転されている状態を考えると、内軸8a、及び、これに固着された固定偏心重錘9が矢印θ方向に右回り回転している。この回転系を基準として位相差制御機能を考察すると次のとおりである。
【0011】
固定偏心重錘9に対し、内軸8aを介して固着されて回転(右回り)している出力軸16に対し、可動偏心重錘10と一体的に連結されているハウジング14が右回りに回動せしめられると、可動偏心重錘10が固定偏心重錘に対して相対的に右回りする。すなわち位相が進む。
これと反対に、出力軸16に対してハウジング14が左回りに回動せしめられると、固定偏心重錘9に対して可動偏心重錘10が相対的に左回りする。すなわち、位相が遅れる。
公知の位相差制御装置(特開2002−66458号公報)においては、上述のようにして、固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差が増減制御される。
ただし、固定偏心重錘と可動偏心重錘との間に本質的な差異は無く、どちらを基準として考えるかというだけの問題である。従って、両者を相互に置換して読み換えることもできる。ただし、局所的に任意に置換できるものではなく、置換する場合には、記述されている全ての「可動偏心重錘」と、全ての「固定偏心重錘」とを相互に置換しなければならない。
【特許文献1】 特開2002−66458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図2〜図4を参照して以上に説明した公知発明に係る位相差制御装置は、偏心重錘の回転速度を変えずに固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を増減調節して起振力を調節するために創作され、今日に至るまで広く賞用されている。
現在の使用目的は主として、杭打抜作業を開始するために偏心重錘の回転駆動を始めた後、次第に回転速度を上昇させる場合、並びに、杭打抜作業を終了するために偏心重錘の回転駆動を止めた後、次第に回転速度が下降する場合に、上記回転速度が周辺構造物等の固有振動と共鳴(共振,同調と同意)する回転速度区域を『起振力ゼロの状態』で通過することである。
【0013】
ところが最近、前記の位相差制御による起振力の増減調節が、『振動・騒音公害防止』にも利用されている。その1例を以下に説明する。
杭打抜工事場の近傍に民家が有って、杭打抜機の起振機を定格性能で運転すると公害に関する法規制に抵触するが、起振力を定格の70%に抑制して運転すると法規制に触れない…という場合が少なくない。
このような場合、前述の位相差制御による起振力の調節機能を利用して、70%運転が行なわれる。
【0014】
図3および図4を併せて参照しつつ、前記の70%出力運転を考察すると次のとおりである。
従来においては、固定偏心重錘9に対する可動偏心重錘9の位相差を略180度にした無負荷運転と、前記位相差をゼロ(又は最小)にした全負荷運転との、いわゆるオンオフ制御であった。
この場合(従来)、ハウジングと出力軸とが相対的にストローク一杯に回動して、ベーンがブロック(3a,3b、又は15)に当接した状態、又は図外のストッパが効いている状態になっていた。
【0015】
これに比して、前記の70%出力状態では、ハウジングとベーンとの相対的な回動をストロークの途中で停止させておかねばならない。
ストッパ手段によらないで相対的回動を拘束するには(図3参照)流出入孔1a,1bの作動油流通を止めて、いわゆる『ベーンをオイルロックした状態』に保持する。
作動油の流出,流入が無ければ、加圧室5a,5bや解放室6a,6bの容積が変化せず、従ってハウジング1に対してベーン4a,4bが回動できないので、出力軸2の回動が阻止される。
【0016】
前記の流出入孔1a,1bに接続されている油圧操作弁(図外)を閉止して作動油の流動を遮断しておいても、(図3参照)ハウジング1とベーン4a,4bとの間に作動油の漏洩が有ると、出力軸2がハウジング1に対して相対的に回動する。従って起振力が変化する。
実際の作業状態においては、杭打抜機の運転者が手動操作でダイヤルを回して、振動公害,騒音公害が発生しない限度近くに設定する。
ところが前述の作動油漏洩が有るので起振力が次第に変化してしまう。このため、運転者は絶えず操作ダイヤルを操作して所望の起振力に調節しなければならない。
【0017】
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、公知発明に係る位相差制御技術を改良して、運転者の操作によって設定された起振力の大きさが、作動油漏洩の影響を受けること無く一定に保持される制御装置、及び同制御方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために創作した請求項1の発明に係る起振機の位相差制御装置は、油圧揺動モータのハウジングが、2重管の外管に接続されるとともに、該油圧揺動モータの出力軸が上記2重管の内軸に接続され、
かつ、上記の外管および内軸が、それぞれ固定偏心重錘または可動偏心重錘を取り付けられている、起振機の位相差制御装置において、
前記2重管の外管と内軸との相対的な回動を拘束したり解放したりするクラッチ機構が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明に係る起振機の位相差制御装置の構成は、前記請求項1の発明の構成要件に加えて、
前記クラッチ機構が、外軸に対して固定的に装着されたクラッチ板と、
内軸に対して相対的な回動を阻止され、軸心方向の摺動可能に装着されたクラッチ板と、
上記双方のクラッチ板を相互に圧接させたり離間させたりする駆動手段とを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明に係る起振機の位相差制御方法は、
2重管の外管が油圧揺動モータのハウジングに接続されるとともに、該油圧揺動モータの出力軸が前記2重管の内軸に接続され、
かつ、上記外管および内軸が、それぞれ固定偏心重錘または可動偏心重錘に連結されている起振機の位相差を制御して起振力を調節する方法において、
前記の外管と内軸との間にクラッチ機構を設け、該クラッチ機構を接状態ならしめることにより、外管と内軸との相対的回動を阻止して固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を一定に保ち、
前記クラッチ機構を断状態ならしめることによって外管と内軸との相対的回動を許容して前記位相差の変化を可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明装置を適用すると、クラッチ機構を断状態にして任意に位相差を制御することができ、かつ、該クラッチ機構を接状態にすると、調節された位相差がそのまま保持されて起振力が変わらない。
この機能を利用して、適宜に調節した作動状態(部分負荷率)を自動的に維持することができ、公害防止に貢献するところ多大である。
【0022】
請求項2の発明によると、前記請求項1の発明に係る位相差制御装置を小形,軽量に構成することができ、しかも作動信頼性が高く、操作が容易である。
【0023】
請求項3の発明方法を適用すると、小形,軽量の機器によって、起振機の起振力変化を防止することもでき、起振力調節を任意に行なうこともできる。
その結果、起振力の大小を最適状態(例えば公害を発生させない範囲内の上限)に調節して、その最適調節状態を自動的に維持することができ、公害防止と省力化とを両立させて建設産業の発展に貢献するところ多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明に係る起振機の位相差制御装置の実施形態の模式図である。
符号13を付して示したのは、位相差制御のための可逆回動機構としての油圧揺動モータである。
油圧揺動モータ(可逆回動機構)を位相差制御に用いた公知発明(特開2002−64458号公報)においては、図2に例示したように可逆回動機構のボデー(外筐)が回転部材である。
図1において、図示されている符号13の部分は油圧揺動モータのハウジング(外筐)であり、外管8bと一体的に結合されている。
上記の外管8bと内軸8aとは既述のとおり回転部材である。
一方、符号18を付して示した機器は、内軸8a内に穿たれた油孔(図示省略)に圧力油を供給しているスイベルジョイントであって、その外筐は静止部材である。ここに静止部材とは、起振機のケース(図2において符号7の部材)に対して一体的に結合されているという意味である。
【0025】
図1を参照して本発明の実施形態を説明するにあたって、
符号13を付して描かれている部材(油圧揺動モータ)が回転部材であること、及び、
符号18を付して描かれている部材(スイベルジョイント)が静止部材であること、を再確認いただきたい。
内軸8a,外管8bは、もとより回転部材である。
符号19を付して示した部材、及び符号20を付して示した部材はクラッチ板である。
通常のクラッチ機構における1対のクラッチ板は回転動力を与えるドライブプレート(駆動板)と、回転動力を与えられるドリブンプレート(被動板)とに区分されるが、本発明においては駆動側,被動側という意識は無い。図2を参照して先に述べたように、可動偏心重錘10は可逆回動機構(具体的には油圧揺動モータ)によって回転駆動されているから、固定偏心重錘や可動偏心重錘に対し、クラッチ機構を介して回転動力を伝達するという考えは無い。
【0026】
図1(本発明)に描かれている構成部分は、図2(公知発明)に鎖線で囲んで示した部分Iに対応している。
両図を対照すると、図1に描かれている油圧揺動モータ13が回転部材であること、及び、内軸8a,外管8bが回転部材であること、並びに、スイベルジョイント18が静止部材であるという関係が、いっそう明確に理解されよう。
共に回転部材である内軸8aと外管8bとに、それぞれクラッチ板20とクラッチ板19とが取り付けられている。
【0027】
クラッチ板19は外管8bに対して一体に連設されているのでクラッチ固定板と呼び、
クラッチ板20は内軸8aに対して、スプライン21を介して相対的回動不能に、かつ軸心方向摺動可能に装着されている。これをクラッチ可動板と呼ぶ。
上記のクラッチ可動板20をクラッチ固定板19に向けて押し付けるための駆動手段として、クラッチシリンダ23が複数個設置される。本実施形態においては、内軸8aの中心線Xに関して対称に3個配設した。図には2個が現れ、1個は隠れている。
本実施形態においては、クラッチ機構の駆動手段であるクラッチシリンダ23を、静止部材であるスイベルジョイント18に取り付けて支持した。本発明を実施する際、上記クラッチシリンダをスイベルジョイント以外の静止部材に取り付けることもできる。
【0028】
静止部材に取り付けられている複数個のクラッチシリンダ23によって、回転部材であるクラッチ可動板20を押圧するため、スラストベアリング22とクラッチ押圧板25とが設けられている。
クラッチ押圧板25は、複数個(本例では3個)のクラッチシリンダ23の押圧力を受け、「X軸方向の合力」としてスラストベアリング22に伝動する。スラストベアリング22は、静止部材であるクラッチ押圧板25から受けた押圧力を、回転部材であるクラッチ可動板20に伝動し、該クラッチ可動板20をクラッチ固定板19に向けて押し付け、クラッチ機構を接状態ならしめて、内軸8aと外管8bとの相対的な回動を阻止する。
【0029】
これによって、内軸8aに取り付けられている固定偏心重錘9(図2参照)と、外管8bに取り付けられている可動偏心重錘10との位相差が固定される。
固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差が固定されると、固定偏心重錘と可動偏心重錘との総合偏心モーメント量が不変となり、起振力が一定に保たれる(詳しくは、偏心重錘の回転速度が変わらない限り起振力が一定に維持される)。
クラッチシリンダ23によるクラッチ押圧板25の押圧を解除して、クラッチ可動板20とクラッチ固定板19との押圧を解消させると、外管8bと内軸8aとの相対的回動の拘束が解除される。これにより、図2に表されている位相差制御装置本来の機能が発揮され、回転速度と無関係に起振力を増減制御し得るようになる。
【0030】
実際の杭打抜作業における起振機の位相差制御装置の作動状態を考察すると、
固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を変化させるのは、運転開始時と運転終了時との比較的短時間であって、その他の期間はほとんど変化させない。
このため、クラッチ固定板19に対するクラッチ可動板20の押圧力を解除しなければならない時間は、運転時間中の僅少時間である。すなわち運転時間中の大部分は、位相差を一定に保っている。
こうした考察に基づいて本実施形態は、クラッチシリンダ23内にスプリング手段を設けて、油圧力を与えられない状態では常時伸長するようになっている。すなわち、クラッチ機構が常時接状態に保たれるようになっている。
従って、内軸8aと外管8bとの位相差が常時的に拘束されて一定に保たれ、起振力が一定に保たれる。
【0031】
図示を省略するが、図1の実施形態と異なる実施形態として、摩擦クラッチを電磁クラッチその他の方式のクラッチで代替することもできる。
また、外見的に認識できない形状の外管8bを構成することもできる。すなわち、図1に符号sを付して示した面をクラッチ固定板として利用しても同様の作用,効果を得ることができる。本発明において外管とは、可動偏心重錘と同期し、同相で回転する伝動部材をいう。なお、上記の可動偏心重錘は、先に段落0011で説明したように、固定偏心重錘と置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 本発明に係る位相差制御装置の1実施形態における要部を模式的に描いた部分断面図である。
【図2】 公知発明(特開2002−66458号公報)に係る位相差制御装置の実施形態を描いた断面図である。
【図3】 公知の油圧式揺動モータの構造機能を説明するために示した模式的な断面図である。
【図4】 前掲の図2に示した公知発明に係る位相差制御装置の要部を抽出して描いた分解斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
8…2重管
8a…内軸
8b…外管
9…固定偏心重錘
10…可動偏心重錘
13…油圧揺動モータ
14…ハウジング
15…ブロック
16…出力軸
17…ベーン
18…スイベルジョイント
19…クラッチ固定板
20…クラッチ可動板
21…スプライン
22…スラストベアリング
23…クラッチシリンダ(クラッチ駆動手段)
25…クラッチ押圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧揺動モータのハウジングが、2重管の外管に接続されるとともに、該油圧揺動モータの出力軸が上記2重管の内軸に接続され、
かつ、上記の外管および内軸が、それぞれ固定偏心重錘または可動偏心重錘を取り付けられている、起振機の位相差制御装置において、
前記2重管の外管と内軸との相対的な回動を拘束したり解放したりするクラッチ機構が設けられていることを特徴とする、起振機の位相差制御装置。
【請求項2】
前記クラッチ機構が、外軸に対して固定的に装着されたクラッチ板と、
内軸に対して相対的な回動を阻止され、軸心方向の摺動可能に装着されたクラッチ板と、
上記双方のクラッチ板を相互に圧接させたり離間させたりする駆動手段とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載した起振機の位相差制御装置。
【請求項3】
2重管の外管が油圧揺動モータのハウジングに接続されるとともに、該油圧揺動モータの出力軸が前記2重管の内軸に接続され、
かつ、上記外管および内軸が、それぞれ固定偏心重錘または可動偏心重錘に連結されている起振機の位相差を制御して起振力を調節する方法において、
前記の外管と内軸との間にクラッチ機構を設け、該クラッチ機構を接状態ならしめることにより、外管と内軸との相対的回動を阻止して固定偏心重錘と可動偏心重錘との位相差を一定に保ち、
前記クラッチ機構を断状態ならしめることによって外管と内軸との相対的回動を許容して前記位相差の変化を可能にすることを特徴とする、起振機の位相差制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291773(P2009−291773A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171547(P2008−171547)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(391002122)調和工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】