説明

超仕上加工ユニット

【課題】つば付き内輪の複数のつば部(面)に対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットを提供する。
【解決手段】つば付き内輪2の複数のつば部(面)2tに対する超仕上加工を、単一の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットU2であって、つば部用砥石60aを支持するつば部加工ヘッド60と、つば部加工ヘッドを反転可能に支持し、かつ、その反転軸R回りにつば部用砥石を所望の角度で反転させる反転機構62と、反転機構を支持し、かつ、反転機構と共につば部加工ヘッドを所望の方向θに旋回させると共に、微少往復運動(オシレーション)Osさせる作動装置64とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つば付き内輪の複数のつば部(面)に対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットに関し、これにより、内輪軌道面に対する超仕上加工と同時に、複数のつば部(面)に対する超仕上加工を全自動で行うことを可能にする。
【背景技術】
【0002】
従来、つば付き内輪において、つば部(面)に対する超仕上加工と、内輪軌道面に対する超仕上加工とを同時に行うことを可能にする超仕上げ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、オシレーション機構をコンパクト化することで、装置全体の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4389554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、つば付き内輪では、例えば、単列の軌道面両側に沿って周方向に延在するつば部(面)に対する超仕上加工や、複列の軌道面相互間に沿って周方向に延在するつば部(面)の両側周面に対する超仕上加工などのように、複数個所(即ち、2ヶ所以上)に亘って超仕上加工を行う場合が想定される。
【0005】
このような場合には、1ヶ所のつば部(面)に対する超仕上加工を行った後に、別時期に、同一の超仕上げ装置で残りのつば部(面)に対する超仕上加工を行うか、或いは、当該残りのつば部(面)に対して、別工程(例えば、他の超仕上げ装置)にて超仕上加工を行うのが一般的である。
【0006】
また、つば部(面)に対する超仕上加工と、内輪軌道面に対する超仕上加工とを同時に行う場合、内輪軌道面に対する超仕上加工は、加工対象領域が広範囲に亘っているため、つば部(面)に対する超仕上加工に比べて、加工に要する時間がかかる。
【0007】
ここで、例えば、1ヶ所のつば部(面)に対する超仕上加工を行った後、別時期に、同一の超仕上げ装置で残りのつば部(面)に対する超仕上加工を行う工程に際し、両工程の間に内輪軌道面に対する超仕上加工が行われると、当該内輪軌道面に対する超仕上加工が完了するまで、残りのつば部(面)に対する超仕上加工を長時間に亘って停止(延期)しなければならない。そうなると、複数のつば部(面)に対する加工効率が低下するため、つば付き内輪の生産性を向上させるには一定の限界がある。
【0008】
また、例えば、複数の超仕上げ装置によって複数のつば部(面)に対する超仕上加工を個別に行う場合、複数のつば部(面)専用の超仕上げ装置がそれぞれ独立して必要となるため、その分だけ装置が大型化すると共に、設備投資費並びに消費電力が増加し、これにより、コンパクト化及び低コスト化並びに省エネ化には一定の限界がある。
【0009】
この場合、複数のつば部(面)専用のそれぞれの超仕上げ装置について、例えば、それぞれのつば部(面)に対する超仕上用砥石の位置決め作業などを個別に行わなければならず、超仕上加工に要する手間や時間がかかるため、超仕上加工の作業効率を向上させるには一定の限界がある。特に、多品種小ロット化が要求される製造ラインでは、上記した各作業を頻繁に繰り返さなければならなくなり、そうなると、超仕上加工の稼働率が低下してしまう。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、つば付き内輪の複数のつば部(面)に対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明は、つば付き内輪の複数のつば部に対する超仕上加工を、単一の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットであって、つば部用砥石を支持するつば部加工ヘッドと、つば部加工ヘッドを反転可能に支持し、かつ、その反転軸回りにつば部用砥石を所望の角度で反転させる反転機構と、反転機構を支持し、かつ、反転機構と共につば部加工ヘッドを所望の方向に旋回させると共に、微少往復運動させる作動装置とを備えている。
本発明において、作動装置は、駆動源によって回転可能な回転軸を有すると共に、当該回転軸の回転運動を往復運動に変換して反転機構に伝達することで、つば部加工ヘッドのつば部用砥石を微少往復運動させるオシレーション機構と、回転軸と同心に構成され、反転機構を旋回させることで、つば部加工ヘッドのつば部用砥石を所望の角度まで旋回させる旋回機構とを備えている。
本発明において、オシレーション機構は、回転軸に設けられた偏心軸部と、偏心軸部に対して相対回転可能に取り付けられ、かつ、反転機構を支持するオシレーション部とを備えており、回転軸を回転させると、その回転運動が偏心軸部からオシレーション部を介して往復運動に変換されて反転機構に伝達することで、つば部加工ヘッドのつば部用砥石を微少往復運動させる。
本発明において、旋回機構は、オシレーション機構の回転軸と同心状に回転可能で、かつ、当該回転軸とは別軸で構成された角度調整ギヤ軸部と、角度調整ギヤ軸部に連結され、オシレーション部を所望の角度まで回転させる角度調整テーブルとを備えており、角度調整ギヤ軸部を回転させると、その回転運動が角度調整テーブルからオシレーション部に伝達され、当該角度調整テーブルと共にオシレーション部を回転させることで、反転機構と共につば部加工ヘッドを所望の角度まで旋回させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、つば付き内輪の複数のつば部(面)に対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットを実現することができ、これにより、内輪軌道面に対する超仕上加工と同時に、複数のつば部(面)に対する超仕上加工を全自動で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る内外輪兼用超仕上盤の全体構成を概略的に示す平面図であって、(a)は、内輪に対する超仕上加工のセット状態を示す図、(b)は、外輪に対する超仕上加工のセット状態を示す図。
【図2】(a)は、内外輪兼用軌道輪保持機構の構成を示す平面図、(b)は、同図(a)に示す内外輪兼用軌道輪保持機構の縦断面図。
【図3】(a)は、円すい内輪の(単列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を一部拡大して示す斜視図、(b)は、円すい外輪の(単列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を一部拡大して示す斜視図。
【図4】(a)は、内輪軌道面用砥石及び外輪軌道面用砥石を備えた内外輪兼用加圧ヘッドの構成を示す部分断面図、(b)は、内輪軌道面用砥石によって円すい内輪の(単列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(c)は、外輪軌道面用砥石によって円すい外輪の(単列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図。
【図5】(a)は、内輪軌道面用砥石によって円筒内輪の(単列,複列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(b)は、内輪軌道面用砥石によって円筒内輪の(複列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(c)は、内輪軌道面用砥石によって円すい内輪の(複列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(d)は、外輪軌道面用砥石によって円筒外輪の(単列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(e)は、外輪軌道面用砥石によって円筒外輪の(単列,複列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(f)は、外輪軌道面用砥石によって円筒外輪の(複列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図、(g)は、外輪軌道面用砥石によって円すい外輪の(複列)軌道面に超仕上加工が行われている状態を示す図。
【図6】(a)は、つば部超仕上加工ユニットによって内輪つば部に超仕上加工が行われている状態を一部拡大して示す図、(b)は、内輪軌道面と内輪つば部に同時に超仕上加工が行われている状態を一部拡大して示す図。
【図7】(a)は、つば部超仕上加工ユニットを搭載する構造を示す平面図、(b)は、同図(a)のb−b線に沿う断面図、(c)は、同図(b)のc−c線に沿う断面図。
【図8】(a)は、(複列)円すい内輪の中つば部に超仕上加工が行われている状態を示す図、(b)は、(単列,複列)円筒内輪の一方側つば部に超仕上加工が行われている状態を示す図、(c)は、(単列,複列)円筒内輪の他方側つば部に超仕上加工が行われている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の内外輪兼用超仕上盤においては、内輪及び外輪に対する超仕上加工を単一(1台)の設備で自動的に行えるようにすることで、内輪に対する超仕上加工のためのセット(仕様)と、外輪に対する超仕上加工のためのセット(仕様)との切り換え(即ち、内外輪の交互加工)を全自動で行うことを可能にする技術を実現することにある。なお、以下では簡単のため、内輪に対する超仕上加工のためのセット(仕様)を「内輪用セット」、外輪に対する超仕上加工のためのセット(仕様)を「外輪用セット」という。
【0015】
かかる技術を実現するために、本発明の一実施形態に係る内外輪兼用超仕上盤は、図1(a),(b)に示すように、内輪2及び外輪4の各軌道面(即ち、内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)を限りなく平滑化させる(例えば、研削済み軌道面をさらに平らで滑らかにさせる)超仕上加工を行うための内外輪兼用軌道面超仕上加工ユニットU1と、つば付き内輪2のつば部(面)2tを限りなく平滑化させる(例えば、研削済みつば部(面)をさらに平らで滑らかにさせる)超仕上加工を行うためのつば部超仕上加工ユニットU2とを備えて構成されている。
【0016】
以下、本実施形態の内外輪兼用超仕上盤について説明するが、その説明において、「内外輪兼用軌道面超仕上加工ユニットU1」について、図1〜図5を参照して説明した後、「つば部超仕上加工ユニットU2」について、図1、図6〜図8を参照して説明する。なお、ここでは一例として、単列円すいころ軸受用のつば付き内輪2及びのつば無し外輪4を適用し、その内輪軌道面2s及び外輪軌道面4s、並びに、内輪軌道面2sに沿って延在するつば部(面)2tに超仕上加工を行う場合を想定する。
【0017】
「内外輪兼用軌道面超仕上加工ユニットU1」
図1(a),(b)に示すように、内外輪兼用軌道面超仕上加工ユニットU1は、回転軸Axを中心にして軌道輪(内輪2、外輪4)を回転可能(例えば、矢印K方向に回転可能)に保持する軌道輪保持機構6と、軌道輪保持機構6によって回転可能に保持された軌道輪2,4の軌道面(内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)に超仕上加工を施す軌道面加工機構8(図3参照)とを有している。なお、図1(a)では、軌道面加工機構8に支持されている内輪軌道面用砥石8aのみを示し、図1(b)では、軌道面加工機構8に支持されている外輪軌道面用砥石8bのみを示す。
【0018】
図2(a),(b)に示すように、軌道輪保持機構6は、その回転軸Axに対して同心円状に周方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で配列され、かつ、軌道輪(内輪2、外輪4)を搭載可能な複数の軌道輪搭載用構造体10(ノーズピースともいう)と、加工対象となる軌道輪の種類に応じて、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10を同時に回転軸Axに向けて放射状(矢印S方向)に接近させ、かつ、回転軸Axから放射状(矢印S方向)に離間させることを可能にする構造体移動手段とを備えている。
【0019】
なお、軌道輪の種類とは、内輪2及び外輪4毎に割り振られている「型番」や「品番」等で分類された概念を指し、このような型番や品番等を参照することで、例えば、内輪2及び外輪4の大きさ(直径、半径、内径、外径、幅、厚さなど)や、内輪2及び外輪4の軌道面の形態(単列、複列、傾斜角度、幅、表面形状など)、或いは、つば部(面)2tの有無等を特定することができる。なお、型番や品番等は、後述するサーボモータによる位置決め制御(停止位置制御)のための入力データとして利用することができる。
【0020】
軌道輪保持機構6において、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10には、それぞれ、軌道輪(内輪2、外輪4)を搭載可能な搭載面10sが、互いに回転軸Axを直交する同一平面上に位置して設けられている。なお、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の大きさや形状、配列個数については、例えば、内外輪兼用超仕上盤の使用目的や使用環境、或いは、軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に搭載する軌道輪(内輪2、外輪4)の大きさや重量などに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0021】
また、上記した軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10及び構造体移動手段は、軌道輪保持機構6の一構成を成す回転台12上に構築されており、回転台12は、図示しない制御系で駆動制御されたベルト又はモータからの回転力により、回転軸Axを中心にして例えば矢印K方向に回転させることができるようになっている。なお、回転台12の回転開始タイミング、回転速度や回転方向は制御系で管理され、これにより、例えば後述する位置決め機構及び圧接構造26(図3(a)参照)によって軌道輪(内輪2、外輪4)を搭載面10sに位置決め圧接させた後、所定のタイミングで回転台12を自動的に回転させることができる。
【0022】
また、構造体移動手段は、ボールねじとサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。ここでは、構造体移動手段の一例として、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の移動方向Sに沿って放射状に配置された複数のボールねじ(ねじ軸14とナット16の間でボールが転がり回転する構造)と、各ねじ軸14を同時にかつ同一方向に回転させる回転機構と、回転機構を回転させるサーボモータ(図示しない)とを備えて構成されている。なお、サーボモータとしては、例えばACサーボモータ、DCサーボモータなどがあるが、ここでは一例として、ACサーボモータを適用する。
【0023】
複数のボールねじは、回転台12上に回転軸Axを中心にして放射方向Sに沿って延出した複数のボールねじ収容部18内に、1本ずつ回転可能に支持されており、それぞれのねじ軸14には、1つのナット16が螺合されている。また、各ボールねじ収容部18には、その上面に、放射方向S(即ち、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の移動方向S)に沿って穿孔されたキー溝18gが形成されており、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と各ナット16とは、それぞれ、キー溝18gに通されたボルト20によって相互に結合(連結)されている。
【0024】
また、回転機構は、回転軸Axと同軸上に回転可能に設けられた1つのメイン傘歯車22と、上記した各ねじ軸14の回転軸Ax寄りの先端部に1つずつ設けられた複数のサブ傘歯車24とを有しており、双方の傘歯車22,24は、互いに直角に歯合している。なお、メイン傘歯車22は、ACサーボモータ(図示しない)によって回転制御されるようになっている。
【0025】
この場合、ACサーボモータの回転力がメイン傘歯車22から各サブ傘歯車24を介して各ねじ軸14に伝達され、当該各ねじ軸14が同時に回転すると、これにより、各ナット16が各ねじ軸14に沿って同時に移動することで、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10を矢印S方向に沿って同時かつ同方向に移動させることができる。
【0026】
ここで、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の停止位置制御では、内輪2及び外輪4毎に割り振られている「型番」や「品番」等を制御装置(図示しない)に入力し、図示しないエンコーダ(回転検出器)によってACサーボモータの出力軸の回転位置や回転速度を検知しながら、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とを比較してフィードバック制御(位置制御や速度制御)を行う。
【0027】
このとき、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とに差がある場合、ACサーボモータを目標位置(座標)との差分を減少させる方向に動作(回転)させる。そして、かかる手順を、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の停止位置制御が行われる。なお、別の方法としてACサーボモータの現在位置情報をデジタル的に記録しておき、これに目標位置(座標)信号までの差分を与えて、その目的値に一度に到達する方法でもよい。
【0028】
この場合、ある特定の「型番」「品番」等の内輪2及び外輪4に対して、例えば交互に超仕上加工を行う場合を想定すると、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の停止位置は、内輪2を保持する第1位置(座標)と、外輪4を保持する第2位置(座標)の2箇所に限定される。このため、第1位置信号(座標)と第2位置信号(座標)との差分を無くすように、ACサーボモータを動作(回転)させることで、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10を、上記第1位置(座標)「内輪用セット」と上記第2位置(座標)「外輪用セット」とに自動的に切り換えることができる。以下、これを「ノーズピースの内外輪セット切換」という。
【0029】
図3(a)に示すように、上記した軌道輪保持機構6には、軌道輪(内輪2、外輪4)を上記した複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の各搭載面10s(図2参照)に圧接させる圧接構造26が設けられている。圧接構造26の形態としては、例えば、軌道輪(内輪2、外輪4)を各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に向けて押し付ける(押圧する)ようにして、各搭載面10sに圧接させる押圧方法や、軌道輪(内輪2、外輪4)を各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に向けて引き付ける(吸引する)ようにして、各搭載面10sに圧接させる吸引方法などを適用することができる。
【0030】
図3(a)には、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10が、内輪2を保持する位置にセットされた状態が示されている。ここでは圧接構造26の一例として、押圧方法が適用されており、当該押圧方法に係る圧接構造26(プレッシャーロール機構ともいう)は、内輪2の中空円環状の端面2a(各搭載面10sに圧接されている端面に対して内輪軌道面2sを挟んで反対側の端面:以下、内輪端面2aという)に対して垂直下方に向けて押圧力を付与することが可能な一対のロール26rを備えている。
【0031】
一対のロール26rは、1本の仮想回転軸(図示しない)を中心にして回転可能に対向し、かつ、互いに平行を成して配置されており、中空円環状を成す内輪端面2aのうち、内輪2の中心軸を通る直径方向の両側部位にそれぞれセットされるようになっている。なお、一対のロール26rを内輪端面2aの両側部位にセットする段階では、内輪2は、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10によって保持された「内輪用セット」状態にある。この場合、後述する「シュー・プッシャの内外輪セット切換」によって、内輪2は、内輪用シュー44に向けて押圧され、当該内輪用シュー44を基準に回転可能にセットされている。
【0032】
かかるセットを実現するために、圧接構造26は、それぞれのロール26rを回転可能(例えば、回転フリー)に支持する一対のロールホルダ26hを備えている。一対のロールホルダ26hは、互いに平行に延在しており、その先端部にロール26rがそれぞれ支持されている。また、一対のロールホルダ26hの基端部は、当該ロールホルダ26hを移動させて、一対のロール26rを内輪端面2aの両側部位にセットさせるための移動機構(図示しない)に接続(支持)されている。
【0033】
移動機構は、上記した「内輪用セット」状態にある内輪2の径(内輪端面2a内径、外径、内外径の平均径など)に応じて、一対のロールホルダ26hを移動(相対的に接近又は離間)させることができるようになっている。これにより、一対のロール26rの相互間距離(間隔)を内輪2の径(内輪端面2a内径、外径、内外径の平均径など)に合わせて小さくしたり大きくしたりすることができる。なお、一対のロールホルダ26hを移動させる場合、互いに平行な位置関係を維持しつつ移動させることが好ましい。
【0034】
かかる移動機構は、ボールねじ(ねじ軸とナットの間でボールが転がり回転する構造)とACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、一対のロールホルダ26hをそれぞれ個別にナットを介してねじ軸に連結させると共に、各ねじ軸にACサーボモータをそれぞれ連結させ、各ACサーボモータによって各ねじ軸を回転制御すればよい。なお、各ねじ軸の配置の姿勢は、一対のロールホルダ26hの平行な位置関係に対して、その中程の位置に、これを直交する方向に設定することが好ましい。別の捉え方をすると、各ねじ軸の配置の姿勢は、上記した一対のロール26rの1本の仮想回転軸に対して平行となるように設定することが好ましい。これにより、一対のロールホルダ26hを移動させて、一対のロール26rの相互間距離(間隔)を内輪2の径(内輪端面2a内径、外径、内外径の平均径など)に合わせて調整することができる。
【0035】
更に、移動機構は、上記した「内輪用セット」状態にある内輪2の幅(内輪端面の相互間距離、別の捉え方をすると、軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の搭載面10sから内輪端面2aまでの高さ)に応じて、一対のロールホルダ26hを移動(縦型の内外輪兼用超仕上盤では上下動)させることができるようになっている。これにより、一対のロール26rを内輪2(内輪端面2a)に対して接近させたり離間させたりすることができる。なお、一対のロールホルダ26hを移動させる場合、互いに平行な位置関係を維持しつつ移動させることが好ましい。
【0036】
かかる移動機構は、ボールねじ(ねじ軸とナットの間でボールが転がり回転する構造)とACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、一対のロールホルダ26hの基端部を、上下方向に延在させたねじ軸に対してナットを介して連結させ、ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。これにより、一対のロールホルダ26hを上下に移動させて、一対のロール26rを内輪2に接近させ、内輪端面2aの両側部位に位置決めさせることができる。
【0037】
この場合、上記した移動機構において、一対のロール26rを内輪端面2aの両側部位にセットするまでのプロセスは、内輪2の径に合わせて一対のロール26rの相互間距離(間隔)を調整した後、当該ロール26rを内輪端面2aの両側部位に位置決めするようにしてもよいし、これとは逆に、一対のロール26rを内輪端面2aの両側部位の近傍領域(例えば、当該両側部位の内側近傍領域、又は、外側近傍領域)に位置決めした後、内輪2の径に合わせて一対のロール26rの相互間距離(間隔)を調整するようにしてもよい。
【0038】
いずれのプロセスを経た場合であっても、その後の手順では、内輪端面2aの両側部位にセットされた一対のロール26rによって、当該内輪端面2aに対して垂直下方に向けて押圧力が付与される。かかる手順を実行するために、圧接構造26には、押圧力付与機構が設けられている。なお、押圧力付与機構としては、一対のロール26rを内輪端面2aに対して垂直下方に向けて移動させることができるものであればよい。
【0039】
例えば、上記した一対のロールホルダ26hの中程に、これを直交して設けられているねじ軸を支点にした「てこの原理」に基づいて、一対のロールホルダ26hの基端部を垂直上方に移動させることで、当該支点を中心にして、一対のロールホルダ26hの先端部を垂直下方に移動させることができ、一対のロール26rを内輪端面2aに対して垂直下方に向けて移動させることができる。これにより、内輪2を複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の各搭載面10s(図2参照)に圧接させることができる。
【0040】
このように、圧接構造26によって内輪2を各搭載面10sに圧接させることで、内輪2は、圧接構造26と複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10との間に挟持された状態となり、これにより、内輪2は、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体となって回転可能となる。なお、上記では、圧接構造26と内輪2との関係について説明したが、外輪4(図3(b)参照)も同様であり、上記した圧接構造26と同様のプロセスを適用することで、一対のロール26rを外輪端面4a(図3(b)参照)の両側部位にセットし、これにより、外輪4を複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の各搭載面10sに圧接させることができる。
【0041】
ここで、一対のロール26rを内輪端面2a及び外輪端面4aの両側部位にセットする際において、一対のロールホルダ26hの停止位置制御(換言すると、一対のロール26rの停止位置制御ともいう)では、内輪2及び外輪4毎に割り振られている「型番」や「品番」等を制御装置(図示しない)に入力し、図示しないエンコーダ(回転検出器)によって、上記したそれぞれのACサーボモータの出力軸の回転位置や回転速度を検知しながら、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とを比較してフィードバック制御(位置制御や速度制御)を行う。
【0042】
このとき、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とに差がある場合、上記したACサーボモータを目標位置(座標)との差分を減少させる方向に動作(回転)させる。そして、かかる手順を、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、一対のロールホルダ26hの停止位置制御が行われる。なお、別の方法として、上記したACサーボモータの現在位置情報をデジタル的に記録しておき、これに目標位置(座標)信号までの差分を与えて、その目的値に一度に到達する方法でもよい。
【0043】
この場合、ある特定の「型番」「品番」等の内輪2及び外輪4に対して、例えば交互に超仕上加工を行う場合を想定すると、一対のロールホルダ26hの停止位置は、一対のロール26rを内輪端面2aの両側部位にセットする第1位置(座標)と、一対のロール26rを外輪端面4aの両側部位にセットする第2位置(座標)の2箇所に限定される。このため、第1位置信号(座標)と第2位置信号(座標)との差分を無くすように、ACサーボモータを動作(回転)させることで、一対のロール26rを、上記第1位置(座標)「内輪用セット」と上記第2位置(座標)「外輪用セット」とに自動的に切り換えることができる。以下、これを「プレッシャーロールの内外輪セット切換」という。
【0044】
図3(a),(b)に示すように、上記した軌道輪保持機構6によって回転可能に保持された軌道輪2,4の軌道面(内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)は、続いて、軌道面加工機構8によって超仕上加工が施される。この場合、軌道面加工機構8は、内輪軌道面用砥石8a及び外輪軌道面用砥石8bの双方を共に支持する軌道面用砥石ホルダHa,Hbと、軌道面(内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)に対する超仕上加工に際し、軌道面用砥石ホルダHa,Hbを所望の方向に移動させると共に、所望の角度に旋回させることが可能なホルダ移動旋回手段28とを備えている。
【0045】
軌道面(内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)に対する超仕上加工では、上記した一対のロール26rによって各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体となっている内輪2(又は、外輪4)を、回転台12の回転に伴って所定方向Kに回転させた状態で、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して垂直方向から内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を所定の圧力Fa,Fb(図1(a),(b)参照)で押し付けつつ、オシレーション(微少往復運動)させながら内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に沿ってトラバースする処理が行われる。
【0046】
かかる超仕上加工においては、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を超仕上加工開始位置にセットする処理が行われる。ここで、超仕上加工開始位置とは、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)が垂直方向に位置決めされた位置を想定する。この場合、軌道輪(内輪2、外輪4)の「型番」「品番」等に応じて、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)の形状や傾斜角度、或いは、広さなどが特定されるため、それに合わせて、当該内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対する内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)の姿勢や位置を調整する必要がある。
【0047】
ホルダ移動旋回手段28には、かかる調整を行うための構成が設けられている。
その一例として、ホルダ移動旋回手段28は、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体となっている内輪2(又は、外輪4)を横切る方向Xに移動可能な移動体(図示しない)上に、θ方向に回転可能な回転ホルダ30、並びに、Z方向に移動可能なスライダ32を搭載して構成されている。この場合、回転ホルダ30の回転軸(図示しない)は、上記した軌道輪保持機構6(回転台12)の回転軸Axに直交する方向に設定されている。また、スライダ32は、回転ホルダ30上に搭載されており、そのスライド方向Zは、回転ホルダ30の回転軸に直交する方向に設定されている。
【0048】
かかるホルダ移動旋回手段28は、ボールねじ(ねじ軸とナットの間でボールが転がり回転する構造)とACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、移動体の場合は、X方向に配置したねじ軸にナットを介して移動体を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。また、回転ホルダ30の場合は、その回転軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによって回転軸を回転制御すればよい。更に、スライダ32の場合は、Z方向に配置したねじ軸にナットを介してスライダ32を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。
【0049】
この場合、上記したホルダ移動旋回手段28において、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を超仕上加工開始位置にセットするまでのプロセスは、任意に設定することができる。その一例として、移動体をX方向に移動させて内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体となっている内輪2(又は、外輪4)に接近させる。次に、回転ホルダ30をθ方向に所定角度だけ回転させる。このときの回転角度は、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)の傾斜角度に基づいて調整する。続いて、スライダ32をZ方向にスライドさせて、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対向配置させる。
【0050】
そして、このようなプロセスを、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を超仕上加工開始位置にセットすることができる。この場合、超仕上加工(オシレーション、トラバース)において、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対する圧力Fa,Fb(図1(a),(b)参照)の向きが、上記した軌道輪保持機構6(回転台12)の回転軸Axを通る径方向に一致するように、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を超仕上加工開始位置にセットすることが好ましい。
【0051】
ここで、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を超仕上加工開始位置にセットする際において、ホルダ移動旋回手段28の停止位置制御(換言すると、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)の停止位置制御ともいう)では、内輪2及び外輪4毎に割り振られている「型番」や「品番」等を制御装置(図示しない)に入力し、図示しないエンコーダ(回転検出器)によって、上記したそれぞれのACサーボモータの出力軸の回転位置や回転速度を検知しながら、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とを比較してフィードバック制御(位置制御や速度制御)を行う。
【0052】
このとき、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とに差がある場合、上記したACサーボモータを目標位置(座標)との差分を減少させる方向に動作(回転)させる。そして、かかる手順を、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、ホルダ移動旋回手段28の停止位置制御が行われる。なお、別の方法として、上記したACサーボモータの現在位置情報をデジタル的に記録しておき、これに目標位置(座標)信号までの差分を与えて、その目的値に一度に到達する方法でもよい。
【0053】
この場合、ある特定の「型番」「品番」等の内輪2及び外輪4に対して、例えば交互に超仕上加工を行う場合を想定すると、ホルダ移動旋回手段28の停止位置は、内輪軌道面2sに対して内輪軌道面用砥石8aを超仕上加工開始位置にセットする第1位置(座標)と、外輪軌道面4sに対して外輪軌道面用砥石8bを超仕上加工開始位置にセットする第2位置(座標)の2箇所に限定される。このため、第1位置信号(座標)と第2位置信号(座標)との差分を無くすように、ACサーボモータを動作(回転)させることで、内輪軌道面2sに対して内輪軌道面用砥石8aが超仕上加工開始位置にセットされる位置「内輪用セット」(図3(a))と、外輪軌道面4sに対して外輪軌道面用砥石8bが超仕上加工開始位置にセットされる位置「外輪用セット」(図3(b))とに自動的に切り換えることができる。以下、これを「超仕上加工開始位置の内外輪セット切換」という。
【0054】
続いて、上記した超仕上加工開始位置セットが完了した後、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して垂直方向から内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を所定の圧力Fa,Fb(図1(a),(b)参照)で押し付ける処理が行われる。なお、かかる処理は、回転台12の回転に伴って内輪2(又は、外輪4)を所定方向Kに回転させた後に行ってもよいし、或いは、内輪2(又は、外輪4)を所定方向Kに回転させると同時、又は、回転させる前に行ってもよい。
【0055】
いずれの場合でも、上記した押し付け処理を行うために、上記したスライダ32の端部には、内外輪兼用の砥石押付手段34(即ち、加圧ヘッド34)が設けられている。この場合、当該加圧ヘッド34には、上記した軌道面用砥石ホルダHa,Hbが所定方向に移動可能に保持されている。そして、当該加圧ヘッド34には、軌道面用砥石ホルダHa,Hbを所定方向に移動させることで、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に所定の圧力Fa,Fb(図1(a),(b)参照)で押し付ける構成が施されている。
【0056】
図4(a)に示すように、加圧ヘッド34には、上記した軌道面用砥石ホルダHa,Hbが両側に振り分けて、かつ、互いに対向する位置関係を成して配置されている。図面では一例として、図面向かって左側に、内輪軌道面用砥石8aを支持する軌道面用砥石ホルダHa(以下、内輪軌道面用砥石ホルダHaという)が配置され、これに対し、図面向かって右側に、外輪軌道面用砥石8bを支持する軌道面用砥石ホルダHb(以下、外輪軌道面用砥石ホルダHbという)が配置されている。
【0057】
また、加圧ヘッド34には、一対の案内シャフト36a,36bが互いに平行に設けられており、当該案内シャフト36a,36bは、平行状態を維持しつつ同方向に沿って移動可能に構成配置されている。また、一対の案内シャフト36a,36bの両側には、内輪軌道面用砥石ホルダHaと外輪軌道面用砥石ホルダHbと取り付けられている。この場合、内輪軌道面用砥石ホルダHaに支持された内輪軌道面用砥石8aと、外輪軌道面用砥石ホルダHbに支持された外輪軌道面用砥石8bとは、同一平面上において、互いに同一方向に沿って1列に並んだ位置関係に配置構成されている。
【0058】
ここで、一対の案内シャフト36a,36bを一方向にスライドさせると、これに伴って、内輪軌道面用砥石ホルダHa及び外輪軌道面用砥石ホルダHbが同方向に同時に移動することで、内輪軌道面用砥石8a及び外輪軌道面用砥石8bを同方向に同時に移動(スライド)させることができる。これに対し、一対の案内シャフト36a,36bを他方向にスライドさせると、これに伴って、内輪軌道面用砥石ホルダHa及び外輪軌道面用砥石ホルダHbが同方向に同時に移動することで、内輪軌道面用砥石8a及び外輪軌道面用砥石8bを同方向に同時に移動(スライド)させることができる。
【0059】
また、加圧ヘッド34には、一対の案内シャフト36a,36b相互間に、これら案内シャフト36a,36bと平行に加圧ピストンが構築されている。加圧ピストンは、加圧ヘッド34に構築されたシリンダ38内を往復運動するピストン本体40と、ピストン本体40の両側から延出した2本のピストンロッド42a,42bとを備えている。2本のピストンロッド42a,42bは、上記した一対の案内シャフト36a,36bと平行に延出しており、一方のピストンロッド42aは、内輪軌道面用砥石ホルダHaに連結され、他方のピストンロッド42bは、外輪軌道面用砥石ホルダHbに連結されている。
【0060】
シリンダ38内には、ピストン本体40の両側に蓄圧室(以下、左チャンバ38a、右チャンバ38bという)が構成されており、圧縮空気供給源(図示しない)から左チャンバ38a又は右チャンバ38bのいずれか一方に圧縮空気を送り込むことで、ピストン本体40を移動させることができる。図面では一例として、右チャンバ38bに圧縮空気を送り込んでいる状態が示されており、このとき、ピストン本体40が左チャンバ38a方向に移動することで、2本のピストンロッド42a,42bが同方向に移動する。これにより、当該ピストンロッド42a,42bに連結されている内輪軌道面用砥石ホルダHa及び外輪軌道面用砥石ホルダHbを、上記した一対の案内シャフト36a,36bによってガイドしつつ、同方向に同時に移動させることができる。
【0061】
このような加圧ヘッド34によれば、上記した超仕上加工開始位置セットが完了し、続いて押し付け処理を行う際に、右チャンバ38b(又は、左チャンバ38a)に圧縮空気を送り込むことで、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して垂直方向から内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を所定の圧力Fa,Fbで押し付けることができる(図4(b),(c))。このとき、圧力Fa,Fbの向きは、上記した「超仕上加工開始位置の内外輪セット切換」により、上記した軌道輪保持機構6(回転台12)の回転軸Axを通る径方向に一致するようにセットされている(図1(a),(b)参照)。
【0062】
そして、当該セット状態において、内輪2(又は、外輪4)を所定方向Kに回転させている間に、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して垂直方向から内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を所定の圧力Fa,Fbで押し付けつつ、オシレーション(微少往復運動)Osさせながら内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に沿ってトラバースTrする処理(超仕上加工)が行われる(図4(b),(c))。
【0063】
なお、超仕上加工に際し、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)によって内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)を高精度かつ高精細に平滑化するために、内輪軌道面用砥石8aの砥面Saは、丸味を帯びた凹面状に、一方、外輪軌道面用砥石8bの砥面Sbは、丸味を帯びた凸面状にそれぞれ構成することが好ましい。
【0064】
また、超仕上加工に際し、加圧ヘッド34によって、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に圧力Fa,Fbで押し付けるタイミングは、例えば内輪軌道面用砥石8aを使用する場合、シリンダ38の左チャンバ38aに圧縮空気を送り込み、内輪軌道面用砥石ホルダHaと共に内輪軌道面用砥石8aをバック(後退)させた状態で、内輪軌道面2sに対する超仕上加工開始位置にセットし、そのとき、右チャンバ38bに圧縮空気を送り込むことで、内輪軌道面用砥石8aを内輪軌道面2sに圧力Faで押し付ければよい。なお、外輪軌道面用砥石8bを使用する場合には、上記とは逆のプロセスを実行すればよい。
【0065】
ところで、軌道面(内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)に対する超仕上加工では、その加工精度を一定にかつ高く維持するために、内輪2(又は、外輪4)を、内輪用シュー44に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44を基準に回転させることが好ましい。そのためには、上記した「ノーズピースの内外輪セット切換」の際、内輪2(又は、外輪4)の中心軸を、上記した軌道輪保持機構6の回転軸Axに対して一定距離だけ一定方向にずらす(偏心させる)ように、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の各搭載面10s(図2参照)に搭載させる必要がある。
【0066】
そこで、図1(a),(b)に示すように、本実施形態の内外輪兼用超仕上盤は、軌道輪保持機構6の両側に回転軸Axを直交する方向に沿って対向配置され、かつ、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に搭載させる軌道輪(内輪2、外輪4)の位置を調整し、当該軌道輪(内輪2、外輪4)をシュー44,46に向けて押圧させるための一対の位置決め機構(内輪用位置決め機構、外輪用位置決め機構)を有している。
【0067】
一対の位置決め機構(即ち、内輪用位置決め機構、又は、外輪用位置決め機構)は、それぞれ、超仕上加工に際し、内輪2(又は、外輪4)の外径面を支持する構成として兼用される内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)と、内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)に向けて内輪2(又は、外輪4)を押圧する内輪用位置決めプッシャ48(又は、外輪用位置決めプッシャ50)と、各シュー44,46及び各位置決めプッシャ48,50を内輪2(又は、外輪4)に向けて接近させ、かつ、内輪2(又は、外輪4)から離間させることを可能にする位置決め機構移動手段(即ち、内輪用位置決め機構移動手段、又は、外輪用位置決め機構移動手段)とを備えている。
【0068】
かかる構成によれば、加工対象となる軌道輪が内輪2の場合、一方の外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50を内輪2から離間(後退)させると共に、他方の内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48を内輪2に向けて接近(前進)させ、他方の内輪用位置決めプッシャ48によって内輪2を他方の内輪用シュー44に当て付けることで、内輪2を、内輪用シュー44に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44を基準に回転可能にセットさせることができる(図1(a)、図3(a)参照)。なお、図3(a)では、内輪用位置決めプッシャ48が省略されている。
【0069】
一方、加工対象となる軌道輪が外輪4の場合、他方の内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48を外輪4から離間(後退)させると共に、一方の外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50を外輪4に向けて接近(前進)させ、一方の外輪用位置決めプッシャ50によって外輪4を一方の外輪用シュー46に当て付けることで、外輪4を、外輪用シュー46に向けて押圧させ、当該外輪用シュー46を基準に回転可能にセットさせることができる(図1(b)、図3(b)参照)。なお、図3(b)では、外輪用位置決めプッシャ50が省略されている。
【0070】
まず、内輪用位置決め機構において、内輪用シュー44には、当該内輪用シュー44を矢印X1方向に沿って移動させて内輪2に接近させた状態で、内輪2の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、内輪2の外径面(内輪軌道面2s、又は、つば部(面)2t)に当て付いて、当該内輪2と共に回転する一対の内輪用ロール44rが設けられている。一対の内輪用ロール44rは、内輪用シュー44の移動方向X1を横断(直交)する方向に沿って対向配置され、かつ、軌道輪保持機構6の回転軸Axに対して対称となる位置関係に設定されている。
【0071】
また、一対の内輪用ロール44rは、それぞれ、内輪用ロールホルダ44hによって回転可能(例えば、回転フリー)に支持されている。そして、各内輪用ロールホルダ44hには、内輪2に対する内輪用ロール44rの高さ位置、径方向位置をそれぞれ調整し、内輪2の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、一対の内輪用ロール44rを正確に内輪2の外径面に当て付けることを可能にする調整機構が設けられている。
【0072】
高さ位置とは、内輪2が軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の搭載面10s(図2参照)に搭載された状態において、搭載面10sから内輪端面2aまでの高さ(幅)を想定する。また、径方向位置とは、軌道輪保持機構6の回転軸Axを通って規定される径方向に沿って、内輪2の外径面と内輪用ロール44rとの間の距離(間隔)を想定する。なお、各内輪用ロール44rの高さ位置、径方向位置は、内輪用シュー44を動作させる前に予め調整され、その調整された状態に維持されるものとする。
【0073】
ここで、高さ位置の調整機構として、例えば図3(a)に示すように、各内輪用ロールホルダ44hの端面(内輪2に対向する側面)に上下方向に延出させたアリ溝44gをそれぞれ形成すると共に、内輪用ロール44rを回転可能に保持したホゾ部材44pを各アリ溝44gに挿入し、当該アリ溝44gに沿って各ホゾ部材44pを移動させることで、内輪2に対する各内輪用ロール44rの高さ位置を調整することができる。この場合、移動させた各ホゾ部材44pを位置決め固定するための位置決め固定構造をそれぞれ設けることが好ましい。図面では、位置決め固定構造の一例として、ネジ止め構造44sが示されているが、これ以外の方法でもよい。
【0074】
また、径方向位置の調整機構として、例えば、回転軸Axを通って規定される径方向に沿って、内輪用シュー44に一対のガイド溝(図示しない)を形成すると共に、各内輪用ロールホルダ44hの一部を各ガイド溝に挿入(係合)し、当該ガイド溝に沿って各内輪用ロールホルダ44hを矢印44T方向(図1(b)参照)に移動させることで、内輪2に対する各内輪用ロール44rの径方向位置を調整することができる。この場合、移動させた各内輪用ロールホルダ44hを位置決め固定するための位置決め固定構造をそれぞれ設けることが好ましい。なお、位置決め固定構造の一例として、ネジ止め構造(図示しない)を適用することができるが、これ以外の方法でもよい。
【0075】
次に、内輪用位置決め機構において、内輪用位置決めプッシャ48は、当該内輪用位置決めプッシャ48を矢印E1方向に沿って移動させて内輪2に接近させた状態で、内輪2の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、当該内輪2の外径面に当て付いて当該内輪2と共に回転するロールとして構成されている。この場合、内輪2に対する超仕上加工時においては、上記した内輪軌道面用砥石8aが内輪軌道面2sに圧接しているため、内輪用位置決めプッシャ(ロール)48は、これを回避(オフセット)した位置で、内輪2の外径面に当て付けられるように設定されている。
【0076】
また、内輪用位置決めプッシャ(ロール)48は、プッシャ支持部材52によって回転可能(例えば、回転フリー)に支持されており、当該プッシャ支持部材52は、プッシャ位置調整部54によって、矢印E1方向に沿って伸縮可能に保持されている。特に図示しないが、プッシャ位置調整部54は、プッシャ支持部材52を移動(上下動)させることで、内輪2に対する内輪用位置決めプッシャ(ロール)48の高さ位置を調整し、内輪2の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、内輪用位置決めプッシャ(ロール)48を正確に内輪2の外径面に当て付けることを可能にする調整機構(図示しない)が設けられている。なお、調整機構は、周知の技術をそのまま利用すれば足りるため、その説明は省略する。また、内輪用位置決めプッシャ(ロール)48の高さ位置は、当該プッシャ48を動作させる前に予め調整され、その調整された状態に維持されるものとする。
【0077】
そして、内輪用位置決め機構において、内輪用位置決め機構移動手段は、ボールねじ(ねじ軸とナットの間でボールが転がり回転する構造)とACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、内輪用シュー44の場合は、矢印X1方向に沿って配置したねじ軸にナットを介して内輪用シュー44を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。また、内輪用位置決めプッシャ48の場合は、矢印E1方向に沿って配置したねじ軸にナットを介してプッシャ支持部材52を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。
【0078】
この場合、上記した内輪用位置決め機構移動手段において、内輪2の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、内輪2を、内輪用シュー44に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44を基準に回転させるように(換言すると、内輪2の中心軸を、上記した軌道輪保持機構6の回転軸Axに対して一定距離だけ一定方向にずらす(偏心させる)ように)、内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48をセットするまでのプロセスは、任意に設定することができる。
【0079】
一例として、プッシャ支持部材52をE1方向に移動させて内輪用位置決めプッシャ48を、上記した複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の各搭載面10s(図2参照)に搭載されている内輪2に接近させ、その外径面に当接させることで、内輪2の中心軸と軌道輪保持機構6の回転軸Axとの間のおおよその位置決めを行う。これと同時或いはその後所定のタイミングで、内輪用シュー44を矢印X1方向に移動させて一対の内輪用ロール44rを当該内輪2に接近させ目標位置に固定する。そして、これと同時或いはその後所定のタイミングで、プッシャ支持部材52を矢印E1方向に移動させて内輪用位置決めプッシャ48を内輪用シュー44に接近させることで、内輪2を内輪用シュー44に向けて押圧する。
【0080】
そして、このようなプロセスを、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、内輪2を、内輪用シュー44に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44を基準に回転させるように、内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48をセットすることができる。なお、上記したようなセットプロセスが行われている間、外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50は内輪2から離間(後退)させておく。
【0081】
一方、外輪用位置決め機構において、外輪用シュー46には、当該外輪用シュー46を矢印X2方向に沿って移動させて外輪4に接近させた状態で、外輪4の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、外輪4の外径面(外輪軌道面4s)に当て付いて、当該外輪4と共に回転する一対の外輪用ロール46rが設けられている。一対の外輪用ロール46rは、外輪用シュー46の移動方向X2を横断(直交)する方向に沿って対向配置され、かつ、軌道輪保持機構6の回転軸Axに対して対称となる位置関係に設定されている。
【0082】
また、一対の外輪用ロール46rは、それぞれ、外輪用ロールホルダ46hによって回転可能(例えば、回転フリー)に支持されている。そして、各外輪用ロールホルダ46hには、外輪4に対する外輪用ロール46rの高さ位置、径方向位置をそれぞれ調整し、外輪4の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、一対の外輪用ロール46rを正確に外輪4の外径面に当て付けることを可能にする調整機構が設けられている。
【0083】
高さ位置とは、外輪4が軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の搭載面10s(図2参照)に搭載された状態において、搭載面10sから外輪端面4aまでの高さ(幅)を想定する。また、径方向位置とは、軌道輪保持機構6の回転軸Axを通って規定される径方向に沿って、外輪4の外径面と外輪用ロール46rとの間の距離(間隔)を想定する。なお、各外輪用ロール46rの高さ位置、径方向位置は、外輪用シュー46を動作させる前に予め調整され、その調整された状態に維持されるものとする。
【0084】
ここで、高さ位置の調整機構として、例えば図3(b)に示すように、各外輪用ロールホルダ46hの端面(外輪4に対向する側面)に上下方向に延出させたアリ溝46gをそれぞれ形成すると共に、外輪用ロール46rを回転可能に保持したホゾ部材46pを各アリ溝46gに挿入し、当該アリ溝46gに沿って各ホゾ部材46pを移動させることで、外輪4に対する各外輪用ロール46rの高さ位置を調整することができる。この場合、移動させた各ホゾ部材46pを位置決め固定するための位置決め固定構造をそれぞれ設けることが好ましい。図面では、位置決め固定構造の一例として、ネジ止め構造46sが示されているが、これ以外の方法でもよい。
【0085】
また、径方向位置の調整機構として、例えば、回転軸Axを通って規定される径方向に沿って、外輪用シュー46に一対のガイド溝(図示しない)を形成すると共に、各外輪用ロールホルダ46hの一部を各ガイド溝に挿入(係合)し、当該ガイド溝に沿って各外輪用ロールホルダ46hを矢印46T方向(図1(a)参照)に移動させることで、外輪4に対する各外輪用ロール46rの径方向位置を調整することができる。この場合、移動させた各外輪用ロールホルダ46hを位置決め固定するための位置決め固定構造をそれぞれ設けることが好ましい。なお、位置決め固定構造の一例として、ネジ止め構造(図示しない)を適用することができるが、これ以外の方法でもよい。
【0086】
次に、外輪用位置決め機構において、外輪用位置決めプッシャ50は、当該外輪用位置決めプッシャ50を矢印E2方向に沿って移動させて外輪4に接近させた状態で、外輪4の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、当該外輪4の外径面に当て付いて当該外輪4と共に回転するロールとして構成されている。
【0087】
また、外輪用位置決めプッシャ(ロール)50は、プッシャ支持部材56によって回転可能(例えば、回転フリー)に支持されており、当該プッシャ支持部材56は、プッシャ位置調整部58によって、矢印E2方向に沿って伸縮可能に保持されている。特に図示しないが、プッシャ位置調整部58は、プッシャ支持部材56を移動(上下動)させることで、外輪4に対する外輪用位置決めプッシャ(ロール)50の高さ位置を調整し、外輪4の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、外輪用位置決めプッシャ(ロール)50を正確に外輪4の外径面に当て付けることを可能にする調整機構(図示しない)が設けられている。なお、調整機構は、周知の技術をそのまま利用すれば足りるため、その説明は省略する。また、外輪用位置決めプッシャ(ロール)50の高さ位置は、当該プッシャ50を動作させる前に予め調整され、その調整された状態に維持されるものとする。
【0088】
そして、外輪用位置決め機構において、外輪用位置決め機構移動手段は、ボールねじ(ねじ軸とナットの間でボールが転がり回転する構造)とACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、外輪用シュー46の場合は、矢印X2方向に沿って配置したねじ軸にナットを介して外輪用シュー46を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。また、外輪用位置決めプッシャ50の場合は、矢印E2方向に沿って配置したねじ軸にナットを介してプッシャ支持部材56を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。
【0089】
この場合、上記した内輪用位置決め機構移動手段において、外輪4の位置決め時並びにその後の超仕上加工時に、外輪4を、外輪用シュー46に向けて押圧させ、当該外輪用シュー46を基準に回転させるように(換言すると、外輪4の中心軸を、上記した軌道輪保持機構6の回転軸Axに対して一定距離だけ一定方向にずらす(偏心させる)ように)、外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50をセットするまでのプロセスは、任意に設定することができる。
【0090】
一例として、プッシャ支持部材56をE2方向に移動させて外輪用位置決めプッシャ50を、上記した複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10の各搭載面10s(図2参照)に搭載されている外輪4に接近させ、その外径面に当接させることで、外輪4の中心軸と軌道輪保持機構6の回転軸Axとの間のおおよその位置決めを行う。これと同時或いはその後所定のタイミングで、外輪用シュー46を矢印X2方向に移動させて一対の外輪用ロール46rを当該外輪4に接近させ目標位置に固定する。そして、これと同時或いはその後所定のタイミングで、プッシャ支持部材56を矢印E2方向に移動させて外輪用位置決めプッシャ50を外輪用シュー46に接近させることで、外輪4を外輪用シュー46に向けて押圧する。
【0091】
そして、このようなプロセスを、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、外輪4を、外輪用シュー46に向けて押圧させ、当該外輪用シュー46を基準に回転させるように、外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50をセットすることができる。なお、上記したようなセットプロセスが行われている間、内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48は外輪4から離間(後退)させておく。
【0092】
ここで、内輪2(又は、外輪4)を、内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)を基準に回転させるように、内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)、及び、内輪用位置決めプッシャ48(又は、外輪用位置決めプッシャ50)をセットする際において、上記した位置決め機構移動手段(即ち、内輪用位置決め機構移動手段、又は、外輪用位置決め機構移動手段)の停止位置制御では、内輪2及び外輪4毎に割り振られている「型番」や「品番」等を制御装置(図示しない)に入力し、図示しないエンコーダ(回転検出器)によって、上記したそれぞれのACサーボモータの出力軸の回転位置や回転速度を検知しながら、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とを比較してフィードバック制御(位置制御や速度制御)を行う。
【0093】
このとき、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とに差がある場合、上記したACサーボモータを目標位置(座標)との差分を減少させる方向に動作(回転)させる。そして、かかる手順を、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、上記した位置決め機構移動手段の停止位置制御が行われる。なお、別の方法として、上記したACサーボモータの現在位置情報をデジタル的に記録しておき、これに目標位置(座標)信号までの差分を与えて、その目的値に一度に到達する方法でもよい。
【0094】
この場合、ある特定の「型番」「品番」等の内輪2及び外輪4に対して、例えば交互に超仕上加工を行う場合を想定すると、上記した位置決め機構移動手段の停止位置は、内輪2を、内輪用シュー44に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44を基準に回転させるように、内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48をセットする第1位置(座標)と、外輪4を、外輪用シュー46に向けて押圧させ、当該外輪用シュー46を基準に回転させるように、外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50をセットする第2位置(座標)の2箇所に限定される。
【0095】
このため、第1位置信号(座標)と第2位置信号(座標)との差分を無くすように、ACサーボモータを動作(回転)させることで、内輪2を、内輪用シュー44に向けて押圧させ、当該内輪用シュー44を基準に回転させるように、内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48がセットされる位置「内輪用セット」(図1(a)、図3(a))と、外輪4を、外輪用シュー46に向けて押圧させ、当該外輪用シュー46を基準に回転させるように、外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50がセットされる位置「外輪用セット」(図1(b)、図3(b))とに自動的に切り換えることができる。以下、これを「シュー・プッシャの内外輪セット切換」という。
【0096】
以上、内外輪兼用超仕上盤の内外輪兼用軌道面超仕上加工ユニットU1によれば、内輪2及び外輪4に対する超仕上加工を単一(1台)の設備で自動的に行えるようにすることで、内輪2に対する超仕上加工のためのセット(仕様)と、外輪4に対する超仕上加工のためのセット(仕様)との切り換え(即ち、内外輪2,4の交互加工)を全自動で行うことを可能にする技術を実現することができる。
【0097】
具体的には、軌道輪(内輪2、外輪4)の軌道面(内輪軌道面2s、外輪軌道面4s)に対する超仕上加工に際し、「ノーズピースの内外輪セット切換」により、複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10を、内輪2を保持するセットと、外輪4を保持するセットとに自動的に切り換えることができる。これにより、内輪2(又は、外輪4)を当該各搭載面10sに対して自動的に搭載させることができる(図2(a),(b))。
【0098】
これに同期(追従)して、「シュー・プッシャの内外輪セット切換」により、内輪用シュー44及び内輪用位置決めプッシャ48、並びに、外輪用シュー46及び外輪用位置決めプッシャ50を、内輪用シュー44に内輪2を押圧させた状態で回転させるセットと、外輪用シュー46に外輪4を押圧させた状態で回転させるセットとに自動的に切り換えることができる。これにより、上記した複数の軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10上における内輪2(又は、外輪4)の内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)に対する位置合わせ(芯出し)を自動的に行うことができる(図1(a),(b))。
【0099】
これに同期(追従)して、「プレッシャーロールの内外輪セット切換」により、一対のロール26rを、内輪2を各搭載面10sに圧接させるセットと、外輪4を各搭載面10sに圧接させるセットとに自動的に切り換えることができる。これにより、内輪2(又は、外輪4)は、各搭載面10sに自動的に圧接され、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体となって回転可能となる(図3(a),(b))。
【0100】
これに同期(追従)して、「超仕上加工開始位置の内外輪セット切換」により、内輪軌道面用砥石8a及び外輪軌道面用砥石8bを、内輪軌道面2sの超仕上加工開始位置に向けて移動旋回させるセットと、外輪軌道面4sの超仕上加工開始位置に向けて移動旋回させるセットとに自動的に切り換えることができる。これにより、内輪2(又は、外輪4)の内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)の超仕上加工開始位置に対して、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を自動的にセットさせることができる(図3(a),(b))。
【0101】
これに同期(追従)して、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体となっている内輪2(又は、外輪4)を、回転台12の回転に伴って所定方向Kに回転させた状態で、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して垂直方向から内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)を所定の圧力Fa,Fbで押し付けつつ、オシレーション(微少往復運動)Osさせながら内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に沿ってトラバースTrする処理を行うことができる(図4(b),(c))。
【0102】
このとき、内輪軌道面用砥石8a(又は、外輪軌道面用砥石8b)と、内輪用シュー44の一対の内輪用ロール44r(又は、外輪用シュー46の一対の内輪用ロール46r)とは、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に作用する内輪軌道面用砥石8aの圧力Fa(又は、外輪軌道面用砥石8bの圧力Fb)を打ち消し合う位置関係にある。
【0103】
この状態において、回転中の内輪2(又は、外輪4)は、常時、内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)に向けて押圧されることとなる。これにより、内輪2(又は、外輪4)を、内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)を基準に回転させることができるため、内輪軌道面2s(又は、外輪軌道面4s)に対して極めて高精度に超仕上加工を施すことができる。
【0104】
これによれば、内輪2及び外輪4に対する超仕上加工を単一(1台)の設備で自動的に行えるようにしたことにより、従来のような内輪軌道面専用の超仕上加工設備と、外輪軌道面専用の超仕上加工設備とをそれぞれ独立して設ける必要がないため、その分だけ設置スペースを確保する必要がなくなると共に、設備投資費並びに消費電力を低減させることができる。これにより、従来に比べて大幅な低コスト化及び省スペース化並びに省エネ化を達成することができる。
【0105】
更に、内輪2に対する超仕上加工のためのセット(仕様)と、外輪4に対する超仕上加工のためのセット(仕様)との切り換え(即ち、内外輪2,4の交互加工)を全自動で行うことを可能にしたことにより、例えば内輪2及び外輪4を保持するための保持部材の位置合わせ作業や、内輪軌道面2s及び外輪軌道面4sに対する超仕上用砥石8a,8bの位置決め作業などが一切不要となり、その結果、超仕上加工に要する手間や時間を大幅に省くことができる。このため、超仕上加工の作業効率を飛躍的に向上させることが可能となり、特に、上記した内外輪兼用超仕上盤を多品種小ロット化が要求される製造ラインに導入することで、超仕上加工の稼働率アップに大きく貢献することができる。
【0106】
なお、上記した実施形態では、単列円すいころ軸受用のつば付き内輪2及びのつば無し外輪4を適用し、その内輪軌道面2s及び外輪軌道面4sに超仕上加工を行う場合を想定したが、これに限定されることはなく、つば部(面)2tを有する複列の円筒及び円すい内輪2(図5(a)〜(c))や、その他の各種外輪軌道面4sを有する外輪4(図5(d)〜(g))にも、同様に、超仕上加工を行うことができることは言うまでもない。特に、複列の内外輪2,4(図5(b),(c),(f),(g))の超仕上加工もワンチャックで行うことができるため、加工効率を飛躍的に向上させることができる。
【0107】
また、上記した実施形態では、「プレッシャーロールの内外輪セット切換」において、一対のロール26rによって内輪2(又は、外輪4)を各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10と一体化させるようにしたが、これに代えて例えば、軌道輪保持機構6の一構成を成す回転台12をマグネットチャックとして構成すると共に、各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10を導電性材料で構成する。そして、当該マグネットチャックの磁気作用によって、導電性を有する内輪2(又は、外輪4)を各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に吸着させて一体化させるようにしてもよい。この場合、当該マグネットチャックと一対のロール26rとを併用してもよい。なお、マグネットチャックにより内輪2(又は、外輪4)を各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に吸着させる場合(即ち、内輪用シュー44(又は、外輪用シュー46)を用いない場合)、内輪2(又は、外輪4)の中心軸と軌道輪保持機構6の回転軸Axとを一致させるように、当該内輪2(又は、外輪4)を各軌道輪搭載用構造体(ノーズピース)10に搭載させる。
【0108】
「つば部超仕上加工ユニットU2」
図1(a)に示すように、本実施形態のつば部超仕上加工ユニットU2は、つば付き内輪2の複数のつば部(面)2t(同図では、1つのつば部(面)2tを示す)に対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にするように構成されている。これにより、上記した内輪軌道面2sに対する超仕上加工と同時に、各つば部(面)2tに対する超仕上加工を全自動で行うことを可能にしている。
【0109】
図1(a)、図6(a),(b)、図7(a),(b)に示すように、つば部超仕上加工ユニットU2は、1個のつば部用砥石60aを支持するつば部加工ヘッド60と、つば部加工ヘッド60を反転可能に支持し、かつ、その反転軸R回りにつば部用砥石60aを所望の角度で反転させる反転機構62と、反転機構62を支持し、かつ、反転機構62と共につば部加工ヘッド60を所望の方向θに旋回させると共に、微少往復運動(オシレーション)Osさせる作動装置64とを備えている。
【0110】
作動装置64は、駆動源Mによって回転可能な回転軸66(図7(b)参照)を有すると共に、当該回転軸66の回転運動を往復運動に変換して反転機構62に伝達することで、つば部加工ヘッド60のつば部用砥石60aを微少往復運動させるオシレーション機構68と、回転軸66と同心に構成され、反転機構62を旋回させることで、つば部加工ヘッド60のつば部用砥石60aを所望の角度まで旋回させる旋回機構70とを備えている。
【0111】
オシレーション機構68は、回転軸66に一体的に設けられ、その回転中心が回転軸66の回転中心から偏心している(ずれている)偏心軸部66p(図7(b)参照)と、偏心軸部66pに対して相対回転可能に取り付けられ、かつ、反転機構62を支持するオシレーション部68pとを備えている。
【0112】
旋回機構70は、オシレーション機構68の回転軸66と同心状に回転可能で、かつ、当該回転軸66とは別軸で構成された角度調整ギヤ軸部72と、角度調整ギヤ軸部72に連結され、オシレーション部68pを所望の角度まで回転させる角度調整テーブル74とを備えている。
【0113】
この場合、角度調整ギヤ軸部72は、回転軸66の外周に沿って同心に設けられた中空のスピンドル軸76(図7(b)参照)と、スピンドル軸76の外周に沿って同心に固定された中空円環状の角度調整ギヤ78(図7(b)参照)とを備えて構成されている。また、上記した角度調整テーブル74は、角度調整ギヤ78に固定されており、当該角度調整ギヤ78と共に、スピンドル軸76と同心に回転するようになっている。
【0114】
なお、回転軸66とスピンドル軸76との間には、複数(図面では一例として、2つ)の軸受80(図7(b)参照)が介在されており、これら軸受80によって、回転軸66とスピンドル軸76とは相対回転可能に位置決めされている。また、スピンドル軸76は、その外周に設けられた複数(図面では一例として、2つ)の軸受82(図7(b)参照)を介して固定ハウジング84(図7(b)参照)内に回転可能に位置決めされており、固定ハウジング84には、上記した駆動源Mが搭載されている。
【0115】
図7(b),(c)に示すように、オシレーション機構68において、上記したオシレーション部68pと偏心軸部66pとは、軸受86を介して相対回転可能に連結されている。また、オシレーション部68pは、後述するACサーボモータによって、上記した角度調整ギヤ軸部72(具体的には、角度調整テーブル74が固定された角度調整ギヤ78)に歯合した歯車機構88(後述する)を回転制御することで、所望の角度に保持されるようになっている。このため、当該オシレーション部68pは、上記した回転軸66と共に偏心回転する偏心軸部66pと連れ回りすることはない。
【0116】
これにより、駆動源Mによって回転軸66を回転させると、その回転運動が偏心軸部66pからオシレーション部68pを介して往復運動に変換されて反転機構62に伝達することで、つば部加工ヘッド60のつば部用砥石60aを微少往復運動(オシレーション)Osさせることができる。なお、図7(c)には、オシレーション部68pの構成が示されているが、回転軸66の回転運動を偏心軸部66pからオシレーション部68pを介して往復運動に変換できるものであれば、当該オシレーション部68pは、図7(c)に示された構成に限定されることはなく、これ以外の構成としてもよい。
【0117】
そして、角度調整ギヤ軸部72(即ち、角度調整ギヤ78)を回転させると、その回転運動が角度調整テーブル74からオシレーション部68pに伝達され、当該角度調整テーブル74と共にオシレーション部68pを回転させることで、反転機構62と共につば部加工ヘッド60を所望の角度θまで旋回させることができる。
【0118】
ここで、角度調整ギヤ78を角度調整テーブル74と共に回転させて、つば部加工ヘッド60を所望の角度θまで旋回させる動作は、当該角度調整ギヤ78に歯合している歯車機構88と、ACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、歯車機構88の回転軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによって回転軸を回転制御すればよい。これにより、つば部加工ヘッド60を所望の角度θまで旋回させることができる。
【0119】
このようなつば部超仕上加工ユニットU2は、矢印Z方向に移動可能なZ軸テーブル90に搭載されており、上記した固定ハウジング84はこれに搭載されている駆動源Mと共に、当該Z軸テーブル90上に固定されている。更に、Z軸テーブル90は、矢印X方向に移動可能なX軸テーブル92に搭載されている。これによれば、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92をそれぞれ所望の距離(位置)まで移動させることで、つば部加工ヘッド60を所望方向に所望量(距離)だけ移動させることができる。
【0120】
ここで、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92をそれぞれ所望の距離(位置)まで移動させる動作は、ボールねじ(ねじ軸とナットの間でボールが転がり回転する構造)とACサーボモータとの組み合わせによって実現することが可能である。特に図示しないが例えば、Z軸テーブル90の場合は、矢印Z方向に沿って配置したねじ軸にナットを介してZ軸テーブル90を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。また、X軸テーブル92の場合は、矢印X方向に沿って配置したねじ軸にナットを介してX軸テーブル92を連結させると共に、ねじ軸にACサーボモータを連結させ、当該ACサーボモータによってねじ軸を回転制御すればよい。
【0121】
この場合、上記した角度調整テーブル74によるつば部加工ヘッド60の旋回制御、及び、上記したZ軸テーブル90及びX軸テーブル92によるつば部加工ヘッド60の移動制御を、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、例えば図6(b)に示すように、つば部超仕上加工ユニットU2を、上記した内外輪兼用軌道面超仕上加工ユニットU1と干渉しない位置にセットすることができ、これにより、つば部加工ヘッド60に支持されているつば部用砥石60aを、内輪2のつば部(面)2tにセットすることができる。
【0122】
ここで、つば部用砥石60aを内輪2のつば部(面)2tにセットする際において、上記した角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置制御では、つば付き内輪2の種類毎に割り振られている「型番」や「品番」等を制御装置(図示しない)に入力し、図示しないエンコーダ(回転検出器)によって、上記した各ACサーボモータの出力軸の回転位置や回転速度を検知しながら、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とを比較してフィードバック制御(位置制御や速度制御)を行う。
【0123】
このとき、現在位置(座標)信号と目標位置(座標)信号とに差がある場合、上記したACサーボモータを目標位置(座標)との差分を減少させる方向に動作(回転)させる。そして、かかる手順を、最終的に目標値に到達するか、許容範囲に入るまで繰り返すことで、角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置制御が行われる。なお、別の方法として、上記したACサーボモータの現在位置情報をデジタル的に記録しておき、これに目標位置(座標)信号までの差分を与えて、その目的値に一度に到達する方法でもよい。
【0124】
かかる停止位置制御が完了すると、つば部用砥石60aが、内輪2のつば部(面)2tにセットされ、その状態で、上記したオシレーション機構68を動作、具体的には、駆動源Mによって回転軸66を回転させて、その回転運動を偏心軸部66pからオシレーション部68pを介して往復運動に変換して反転機構62に伝達し、つば部加工ヘッド60のつば部用砥石60aを微少往復運動(オシレーション)Osさせることで、上記した内輪軌道面2sに対する超仕上加工が行われている場合でも、これと同時に、つば部(面)2tに対する超仕上加工を行うことができる。
【0125】
また、本実施形態のつば部超仕上加工ユニットU2は、つば部加工ヘッド60を反転可能に支持し、かつ、その反転軸R回りにつば部用砥石60aを所望の角度で反転させる反転機構62を備えているため、複数のつば部(面)2tに対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にしている。
【0126】
例えば、図8(a)に示すように、複列円すい内輪2において、2つのつば面2tが周方向に沿って中央に対向配置されている場合、上記した角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置制御を行って、つば部用砥石60aを一方側のつば面2tにセットし、つば部用砥石60aを微少往復運動(オシレーション)Osさせて、当該つば面2tに対する超仕上加工を行う。
【0127】
これに連続して、再び、上記した角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置制御を行って、つば部用砥石60aを他方側のつば面2tにセットする際(或いは、セットする前に予め)、反転機構62によってつば部加工ヘッド60を反転させ、その反転軸R回りにつば部用砥石60aを180°反転させる。これにより、当該つば部用砥石60aによって、他方のつば面2tに対する超仕上加工を行うことができる。
【0128】
また、図8(b)に示すように、単列(複列)円筒内輪2において、2つのつば面2tが周方向に沿って両側に対向配置されている場合、上記した角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置制御を行って、つば部用砥石60aを一方側のつば面2tにセットし、つば部用砥石60aを微少往復運動(オシレーション)Osさせて、当該つば面2tに対する超仕上加工を行う。
【0129】
これに連続して、図8(c)に示すように、再び、上記した角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置制御を行って、つば部用砥石60aを他方側のつば面2tにセットする際(或いは、セットする前に予め)、反転機構62によってつば部加工ヘッド60を反転させ、その反転軸R回りにつば部用砥石60aを180°反転させる。これにより、当該つば部用砥石60aによって、他方のつば面2tに対する超仕上加工を行うことができる。
【0130】
この場合、ある特定の「型番」「品番」等の内輪2の2つのつば面2tに対して、連続して超仕上加工を行う場合を想定すると、上記した角度調整テーブル74、Z軸テーブル90及びX軸テーブル92の停止位置は、つば部用砥石60aを一方側のつば面2tにセットする第1位置(座標)と、つば部用砥石60aを他方側のつば面2tにセットする第2位置(座標)の2箇所に限定される。このため、第1位置信号(座標)と第2位置信号(座標)との差分を無くすように、ACサーボモータを動作(回転)させることで、つば部用砥石60aを、上記第1位置(座標)と上記第2位置(座標)とに自動的に切り換えることができる。
【0131】
以上、内外輪兼用超仕上盤のつば部超仕上加工ユニットU2によれば、つば付き内輪2の複数のつば部(面2t)に対する超仕上加工を、単一(1台)の設備で同時期に一括して自動的に行うことができ、これにより、内輪軌道面2sに対する超仕上加工と同時に、複数のつば部(面)2tに対する超仕上加工を全自動で行うことが可能となる。
【0132】
これによれば、複数のつば部(面2t)に対する超仕上加工を単一(1台)の設備で自動的に行えるようにしたことにより、従来のような複数のつば部(面)専用の超仕上げ装置をそれぞれ独立して設ける必要がないため、その分だけ装置を小型化することができると共に、設備投資費並びに消費電力を低減させることができる。これにより、大幅な低コスト化並びに省エネ化を達成することができる。
【0133】
更に、内輪軌道面2sに対する超仕上加工と同時に、複数のつば部(面)2tに対する超仕上加工を全自動で行えるようにしたことにより、複数のつば部(面2t)に対する加工効率を高めることができるため、つば付き内輪2の生産性を飛躍的に向上させることができる。
【0134】
更にまた、一方側のつば面2tに対するつば部用砥石60aのセットと、他方側のつば面2tに対するつば部用砥石60aのセットとの切り換えを、同時期に一括して全自動で行うことを可能にしたことにより、例えば、複数のつば面2tに対するつば部用砥石60aの位置決め作業などが一切不要となり、その結果、超仕上加工に要する手間や時間を大幅に省くことができる。このため、超仕上加工の作業効率を飛躍的に向上させることが可能となり、特に、上記した内外輪兼用超仕上盤を多品種小ロット化が要求される製造ラインに導入することで、超仕上加工の稼働率アップに大きく貢献することができる。
【0135】
また更に、つば部加工ヘッド60のつば部用砥石60aを微少往復運動(オシレーション)させるための回転軸66と、つば部加工ヘッド60のつば部用砥石60aを旋回させるためのスピンドル軸76とを別軸で構成すると共に、回転軸66を回転させる駆動源Mを固定ハウジング84を介してZ軸テーブル90に固定したことにより、スピンドル軸76の旋回運動によって、例えば駆動源Mの動力ケーブル(図示しない)がねじられたり、これにより駆動源Mが故障したりするといったような不具合の発生を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0136】
2 つば付き内輪
2t つば部(面)
60 つば部加工ヘッド
60a つば部用砥石
62 反転機構
64 作動装置
U2 超仕上加工ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つば付き内輪の複数のつば部に対する超仕上加工を、単一の設備で同時期に一括して自動的に行うことを可能にする超仕上加工ユニットであって、
つば部用砥石を支持するつば部加工ヘッドと、
つば部加工ヘッドを反転可能に支持し、かつ、その反転軸回りにつば部用砥石を所望の角度で反転させる反転機構と、
反転機構を支持し、かつ、反転機構と共につば部加工ヘッドを所望の方向に旋回させると共に、微少往復運動させる作動装置とを備えていることを特徴とする超仕上加工ユニット。
【請求項2】
作動装置は、
駆動源によって回転可能な回転軸を有すると共に、当該回転軸の回転運動を往復運動に変換して反転機構に伝達することで、つば部加工ヘッドのつば部用砥石を微少往復運動させるオシレーション機構と、
回転軸と同心に構成され、反転機構を旋回させることで、つば部加工ヘッドのつば部用砥石を所望の角度まで旋回させる旋回機構とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の超仕上加工ユニット。
【請求項3】
オシレーション機構は、
回転軸に設けられた偏心軸部と、
偏心軸部に対して相対回転可能に取り付けられ、かつ、反転機構を支持するオシレーション部とを備えており、
回転軸を回転させると、その回転運動が偏心軸部からオシレーション部を介して往復運動に変換されて反転機構に伝達することで、つば部加工ヘッドのつば部用砥石を微少往復運動させることを特徴とする請求項2に記載の超仕上加工ユニット。
【請求項4】
旋回機構は、
オシレーション機構の回転軸と同心状に回転可能で、かつ、当該回転軸とは別軸で構成された角度調整ギヤ軸部と、
角度調整ギヤ軸部に連結され、オシレーション部を所望の角度まで回転させる角度調整テーブルとを備えており、
角度調整ギヤ軸部を回転させると、その回転運動が角度調整テーブルからオシレーション部に伝達され、当該角度調整テーブルと共にオシレーション部を回転させることで、反転機構と共につば部加工ヘッドを所望の角度まで旋回させることを特徴とする請求項2又は3に記載の超仕上加工ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−171078(P2012−171078A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38156(P2011−38156)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】