説明

超伝導マグネット冷却システム向けのサーマルスイッチ

【課題】クライオクーラとコールドマスの間を迅速かつ自動的に熱切断及び熱接続させることが可能なシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、MRシステムのクライオクーラ(74)をコールドマスリザーバ(72)から自動的に切断するための装置及び方法を提供する。クライオクーラ・サーマルリンク(76)は、クライオクーラ(74)と熱的に接続されるように構成された第1の端部プレート(84)と、コールドマス(72)と熱的に接続されるように構成された第2の端部プレート(88)と、を含む。第1の(84)と第2の端部プレート(88)の間の空間(80)を壁によって囲繞しており、この壁は第1の端部プレート(84)に取り付けられた第1の端部(82)と、第2の端部プレート(88)に取り付けられた第2の端部(86)と、を含む。この空間(80)内に作動流体(90)が位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には超伝導マグネットシステムに関し、またさらに詳細には、超伝導マグネットシステムのクライオクーラとコールドマスリザーバの間の自動熱接続及び熱切断に関する。
【背景技術】
【0002】
AC環境で動作する例示的な超伝導マグネットシステムは、変圧器、発電機、モータ、超伝導マグネットエネルギー蓄積器(SMES)、及び磁気共鳴(MR)システムを含む。従来のMRマグネットはDCモードで動作するが、幾つかのMRマグネットはマグネットに対する傾斜漏れ磁場が高い場合に傾斜コイルからのAC磁場下で動作することがある。こうしたAC磁場はマグネット内にAC損失を生成する。説明を目的としてMRシステムの例示的な詳細に関する例証検討を提示することにする。
【0003】
人体組織などの物質を均一な磁場(偏向磁場B)にかけると、組織中のスピンの個々の磁気モーメントはこの偏向磁場と整列しようとして、この周りをラーモアの特性周波数によってランダムな秩序で歳差運動することになる。この物質や組織に、x−y平面内にありラーモア周波数に近い周波数をもつ磁場(励起磁場B)がかけられると、正味の整列モーメント(すなわち、「縦磁化」)Mは、x−y平面内に来るように回転させられ(すなわち、「傾けられ(tipped)」)、正味の横方向磁気モーメントMが生成される。励起信号Bを停止させた後、励起したスピンにより信号が放出され、さらにこの信号を受信し処理して画像を形成させることができる。
【0004】
これらの信号を用いて画像を作成する際には、磁場傾斜(G、G及びG)が利用される。典型的には、撮像しようとする領域は、使用する具体的な位置特定方法に従ってこれらの傾斜を変更させている一連の計測サイクルによりスキャンを受ける。結果として得られる受信NMR信号の組はディジタル化されかつ処理され、よく知られている多くの再構成技法のうちの1つを用いて画像が再構成される。
【0005】
MRシステムは、均一な磁場を発生させるために多くの場合複数のコイルを備える超伝導マグネットを使用するのが典型的である。これらの超伝導マグネットは液体ヘリウムによって冷却されるコールドマスの一部となっている。これらのマグネットは、液体ヘリウムによって4.2Kの温度まで冷却させるニオブ−チタン材料から製作するのが典型的である。コールドマスに対する熱負荷のためにボイルオフするヘリウムを再凝縮させるためにクライオクーラが使用されることが多い。これには、高価でありまた遠隔地域や発展途上国では利用することができない液体ヘリウムの供給を要するという欠点がある。さらに冷却システムの電源や機械に障害が起きた場合に、超伝導マグネットの動作喪失が起きるまで動作を継続するために利用可能なのはヘリウムリザーブの潜熱だけとなる。
【0006】
コールドマスはクライオクーラを用いて超伝導温度まで冷却されることが多い。クライオクーラによってデバイスのコールドマスを直接冷却するためには、このクライオクーラとコールドマスを直に熱接触状態にする必要がある。しかしクライオクーラに障害が起きた場合に、クライオクーラは室温まで急激に温度上昇することになる。クライオクーラがコールドマスと直に熱的ショート状態にあるため、コールドマスも同じく急激に温度上昇し、これによりマグネットの超伝導動作の喪失及びマグネットクエンチに繋がることになる。
【0007】
さらに場合によっては、保守や交換のためにクライオクーラを冷却システムから切断することが必要となる。このためには、冷却システムを室温まで至らせることが必要となるのが一般的である。この切断過程は、時間がかかると共に、これによりMRシステムを長時間にわたってシャットダウンさせる必要がある。このことは、計画的な修復でない場合に特に問題であり、これにより患者の処置を計画し直さねばならなくなることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、クライオクーラに障害が起きたときにクライオクーラをデバイスのコールドマスとの熱接触状態から迅速かつ自動的に切断すること、並びにクライオクーラをデバイスのコールドマスと自動的に再接続して熱的に接触させることが可能なシステム及び方法があることが望ましい。さらに、クライオクーラの保守及び/または交換のために、コールドマス全体を室温まで温度上昇させることを要することなくクライオクーラをコールドマスから一時的に切断できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の欠点を克服したMRシステムのクライオクーラをコールドマスリザーバから切断するためのシステム及び方法を提供する。クライオクーラとコールドマスリザーバの間には作動流体を有するサーマルリンクを配置させている。クライオクーラの動作時において、クライオクーラとコールドマスリザーバの間の熱的短絡の役割をする作動流体の沸騰または相変化によって熱伝達を統御している。クライオクーラの動作が停止したときに、サーマルリンク内部での熱伝達は、クライオクーラとコールドマスリザーバの間を熱的開放させる役割をする作動流体の伝導によって統御している。
【0010】
本発明の一態様では、クライオクーラ・サーマルリンクは、クライオクーラと熱的に接続されるように構成された第1の端部プレートと、コールドマスと熱的に接続されるように構成された第2の端部プレートと、を含む。第1と第2の端部プレートの間の空間を壁によって囲繞すると共に、この壁は第1の端部プレートに取り付けられた第1の端部及び第2の端部プレートに取り付けられた第2の端部を有する。このクライオクーラ・サーマルリンクはさらに、この空間内に位置決めされた作動流体を含む。
【0011】
本発明はさらに、超伝導マグネット・アセンブリコールドマスと、クライオクーラと、該コールドマスとクライオクーラの間に位置決めされたサーマルスイッチと、を含むMRIシステムを目的とする。このサーマルスイッチは、クライオクーラと熱的に接触させた第1の端部プレートと、コールドマスと熱的に接触させた第2の端部プレートと、を含む。第1の端部プレート及び第2の端部プレートにはエンクロージャを形成するように壁が接続されている。このエンクロージャ内には作動流体が包含されており、この作動流体は第1の端部プレート及び第2の端部プレートと熱的に接触させている。
【0012】
本発明はさらに、第1の端部プレートを有するクライオクーラと第2の端部プレートを有するコールドマスとの間の熱伝達を制御する方法を目的とする。本方法は、第1の端部プレートと第2の端部プレートの間にエンクロージャを形成する工程と、第1の端部プレートを第2の端部プレートに対して重力方向で上側に方向付けする工程と、エンクロージャを作動流体で満たす工程と、を含む。この作動流体は第1の端部プレート及び第2の端部プレートと熱的に接触させている。
【0013】
本発明に関する別の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面では、本発明を実施するために目下のところ企図される好ましい一実施形態を図示している。
【0015】
図1を参照すると、超伝導マグネットシステム10は一例として、交番電流(AC)環境で動作する超伝導マグネットシステムを備えている。例示的な超伝導マグネットシステムは、変圧器、発電機、モータ、超伝導マグネットエネルギー蓄積器(SMES)、及び/または磁気共鳴(MR)システムを含む。従来のMRマグネットはDCモードで動作するが、幾つかのMRマグネットはマグネットに対する傾斜漏れ磁場が高い場合に傾斜コイルからのAC磁場下で動作することがある。こうしたAC磁場はマグネット内にAC損失を生成する。説明を目的として、磁気共鳴及び/または磁気共鳴撮像(MRI)装置及び/またはシステムの例示的な詳細に関する例証検討を提示することにする。
【0016】
このシステムの動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及び表示画面16を含むオペレータコンソール12から制御を受けている。コンソール12は、オペレータが画像の作成及び表示画面16上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータシステム20は、バックプレーン20aを介して互いに連絡している多くのモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに当技術分野でフレームバッファとして知られている画像データアレイを記憶するためのメモリモジュール26が含まれる。コンピュータシステム20は、画像データ及びプログラムを記憶するためにディスク記憶装置28及び取外し可能記憶装置30とリンクしており、さらに高速シリアルリンク34を介して単独のシステム制御部32と連絡している。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0017】
システム制御部32は、バックプレーン32aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36や、シリアルリンク40を介してオペレータコンソール12に接続させたパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御部32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、各システムコンポーネントを動作させて所望のスキャンシーケンスを実行させ、発生させるRFパルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生させている。パルス発生器モジュール38は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器42と接続させている。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。また最終的には、パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48はスキャンのために患者を所望の位置に移動させるコマンドを受け取っている。
【0018】
パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に加えられる。各傾斜増幅器は、収集する信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜を生成させるように全体を番号50で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜磁場コイルアセンブリ50は、偏向マグネット54及び全身用RFコイル56を含むマグネットアセンブリ52の一部を形成している。システム制御部32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64をコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても独立したRFコイル(例えば、表面コイル)を使用することが可能となる。
【0019】
RFコイル56により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御部32内のメモリモジュール66に転送される。未処理のk空間データのアレイをメモリモジュール66内に収集し終わると1回のスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データアレイの形に配置し直しており、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイプロセッサ68に入力される。この画像データはシリアルリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、コンピュータシステム20において画像データはディスク記憶装置28内などの記憶装置内に格納される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、取外し可能記憶装置30上などの長期記憶内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0020】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による図1の超伝導マグネットシステム10向けの冷却システム70を表している。マグネットアセンブリ52(図1)は超伝導マグネットシステム10のためのコールドマス72を備える。クライオクーラ74は、コールドマス72を極低温まで冷却するために冷却システム70の動作時にサーマルリンク76を介してコールドマス72と熱的に接続させている。好ましい一実施形態では、サーマルバスバー78によってサーマルリンク76をコールドマス72と熱的に接続させている。
【0021】
サーマルリンク76は、第1の端部82の位置で凝縮器プレート84により封止されかつ第2の端部86の位置で蒸発器プレート88により封止された低熱伝導係数エンクロージャ80を含む。エンクロージャ80は低い熱伝導係数を有すると共に、ステンレス鋼などの断熱性物質から製作した壁が薄い円筒とし、これにより凝縮器プレート84と蒸発器プレート88の間のエンクロージャ80を通じた熱伝導を最小限にすることが好ましい。エンクロージャ80はクライオクーラ74が動作している間に凝縮器プレート84と蒸発器プレート88の間の相変化を介して熱を転送する作動流体90によって満たされている。作動流体90はコールドマス72の所望動作温度及びクライオクーラ74の動作温度に基づいて選択し得ることが企図される。例えば、2〜5Kのクライオクーラ動作ではヘリウムが、14〜24Kのクライオクーラ動作では水素が、25〜32Kのクライオクーラ動作ではネオンが、また65〜95Kのクライオクーラ動作では窒素を選択することができる。凝縮器プレート84及び蒸発器プレート88は、銅などの高熱伝導率物質から製作されることが好ましく、また高い熱伝導係数を有している。
【0022】
図3は、通常の冷却動作の間におけるサーマルリンク76の熱力学サイクル動作を表している。クライオクーラ74は、凝縮器プレート84を蒸発器プレート88の温度未満でかつ作動流体90の凝縮温度未満のある温度に維持している。凝縮器プレート84は蒸発器プレート88に対して重力方向で上側に配置されている。作動流体90(凝縮物とするか液体94とする)が作動流体90の沸騰温度より高い温度を有する蒸発器プレート88と接触状態に至ったときに流体蒸発92が生じる。これにより作動流体90が蒸気すなわち気体状態96に変換される。気体状態96の作動流体90は凝縮器プレート84と接触状態に至る。
【0023】
端部プレート84は蒸発器プレート88の温度未満でかつ作動流体90の凝縮温度未満のある温度に維持されているため、気体状態96の流体は凝縮器プレート84上で液体94まで凝縮する。蒸発器プレート88に対して重力方向で上側に配置されている液体94は、フロー98となってエンクロージャ80に沿って下って蒸発器プレート88に戻る。液体94はさらに、凝縮器プレート84から蒸発器プレート88まで滴り落ちることがある。
【0024】
低コンダクタンスのエンクロージャ80内では、クライオクーラ74の通常動作の間に作動流体90の連続した大量フローが蒸発器プレート88から凝縮器プレート84に進みまた再度戻されるサイクルである上述した熱力学サイクルが動作する。上述の熱力学サイクルを通じて液体94を気体状態96に変化させることによる場合、作動流体90には、流体蒸発92中における気体状態96への変化を受けるために分子引力に打ち克つエネルギーが必要である。一定温度において作動流体90を液体94から気体状態96に変化させさらにこれを再度元に戻するのに要するエネルギー量は気化潜熱と呼ばれている。したがってこの作動流体90は、超伝導マグネットシステム10の通常動作中にクライオクーラ74の動作によってコールドマス72からのエネルギーをサーマルリンク76を通じて抽出している効率の良い熱伝達媒質の役割をする。
【0025】
図3に関連して記載した熱力学サイクルの動作は、クライオクーラ74のデバイス障害あるいは定期なメンテナンスや交換のための運用からの切り離しに由来して中断または停止されることがある。この動作停止によってクライオクーラ74は凝縮器プレート84の温度を作動流体90の凝縮温度未満に維持できなくなる。こうした中断中にサーマルリンク76は、クライオクーラ74をコールドマス72から自動的に熱的に切断する(これについては、図4に関連して以下で記載することにする)。シャットダウン後にクライオクーラ74を起動させた時点で、クライオクーラ74は凝縮器プレート84の温度を作動流体90の凝縮温度未満のある温度に導き、この時点で上述した熱力学サイクルが自動的に再開されると共に、クライオクーラ74とコールドマス72の間での相変化熱伝達による熱接続が再度確立されることになる。
【0026】
ここで図4を参照すると、クライオクーラ74動作が停止すると、凝縮器プレート84の温度は蒸発器プレート88の温度を超えたある温度まで上昇する。正常動作から温度がこのように反転すると、上述した熱力学サイクルが停止し相変化熱伝達が実質的に止まることになる。したがって、蒸発器プレート88はコールドマス72の温度に追従することになり、また凝縮器プレート84は室温まで温度上昇する傾向となる。
【0027】
この作動流体90の温度は、低コンダクタンスエンクロージャ80の内部で作動流体90が蒸発器プレート88の位置で最も低温であり凝縮器プレート84の方向に向かって温度が高くなるような層状をなすことになる。したがって、相変化熱伝達の休止によって凝縮器プレート84と蒸発器プレート88の間の熱伝達が低減されることになる。熱伝達は、気体体積100を通過する伝導と低コンダクタンスエンクロージャ80を通過する伝導という並列の経路に限定されることがない。気体体積100の熱伝導率が低くかつ低コンダクタンスエンクロージャ80のコンダクタンスが低いため、サーマルリンク76における熱伝達が実質的に休止し、クライオクーラ74とコールドマス72は実質的に熱的に切断されることになる。この方式によれば、熱が非動作のクライオクーラ74からコールドマス72に転送されるため、超伝導温度でのマグネットアセンブリ52の動作を可能にするライドスルー時間(ride−through time)が短くならない。当業者であればサーマルリンク76の上述の動作は自動式であって移動性の機械部品なしに実施されることを理解されよう。
【0028】
本発明は、コールドマスデバイスからのクライオクーラの自動サーマル切断を提供する。クライオクーラの動作が休止すると、サーマルリンク内部での相変化熱伝達が休止し、これにより実質的にライドスルー時間中の熱伝達が最小限となると共にマグネットの連続した動作が可能となる。低コンダクタンスエンクロージャ及び作動流体に対する適当な設計による選択によって、クライオクーラの予定しない停電によって生じる超伝導マグネットクエンチの回数を低減することができる。さらに超伝導マグネットシステムは、クライオクーラの定期的なメンテナンスや修復のためにクライオクーラが喪失状態になる期間を短く維持することができる。
【0029】
したがってクライオクーラ・サーマルリンクは、クライオクーラと熱的に接続されるように構成された第1の端部プレートと、コールドマスと熱的に接続されるように構成された第2の端部プレートと、を含む。第1と第2の端部プレートの間の空間を壁によって囲繞すると共に、この壁は第1の端部プレートに取り付けられた第1の端部及び第2の端部プレートに取り付けられた第2の端部を有する。このクライオクーラ・サーマルリンクはさらに、この空間内に位置決めされた作動流体を含む。
【0030】
本発明はさらに、超伝導マグネット・アセンブリコールドマスと、クライオクーラと、該コールドマスとクライオクーラの間に位置決めされたサーマルスイッチと、を含むMRIシステムを目的とする。このサーマルスイッチは、クライオクーラと熱的に接触させた第1の端部プレートと、コールドマスと熱的に接触させた第2の端部プレートと、を含む。第1の端部プレート及び第2の端部プレートにはエンクロージャを形成するように壁が接続されている。このエンクロージャ内には作動流体が包含されており、この作動流体は第1の端部プレート及び第2の端部プレートと熱的に接触させている。
【0031】
本発明はさらに、第1の端部プレートを有するクライオクーラと第2の端部プレートを有するコールドマスとの間の熱伝達を制御する方法を目的とする。本方法は、第1の端部プレートと第2の端部プレートの間にエンクロージャを形成する工程と、第1の端部プレートを第2の端部プレートに対して重力方向で上側に方向付けする工程と、エンクロージャを作動流体で満たす工程と、を含む。この作動流体は第1の端部プレート及び第2の端部プレートと熱的に接触させている。
【0032】
本発明を好ましい実施形態に関して記載してきたが、明示的に記述した以外に等価、代替及び修正が可能であり、これらも添付の特許請求の範囲の域内にあることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明と一緒に使用できるMR撮像システムのブロック概要図である。
【図2】本発明の一実施形態によるクライオクーラシステムの一部のブロック概要図である。
【図3】クライオクーラシステムを動作状態とした図2のサーマルリンクを表した図である。
【図4】クライオクーラシステムの動作を停止させた後の図2のサーマルリンクを表した図である。
【符号の説明】
【0034】
10 MRシステム
12 オペレータコンソール
13 キーボードその他の入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 単独のコンピュータシステム
20a バックプレーン
22 画像プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
28 ディスク記憶装置
30 取外し可能記憶装置
32 単独のシステム制御部
32a バックプレーン
34 高速シリアルリンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 シリアルリンク
42 傾斜増幅器組
44 生理学的収集制御器
46 スキャン室インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 傾斜コイルアセンブリ全体
52 マグネットアセンブリ
54 偏向マグネット
56 全身用RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
70 冷却システム
72 コールドマス
74 クライオクーラ
76 サーマルリンク
78 サーマルバスバー
80 低熱伝導係数エンクロージャ
82 第1の端部
84 凝縮器プレート
86 第2の端部
88 蒸発器プレート
90 作動流体
92 流体蒸発
94 液体
96 蒸気
98 フロー
100 気体体積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオクーラ(74)と熱的に接続されるように構成された第1の端部プレート(84)と、
コールドマス(72)と熱的に接続されるように構成された第2の端部プレート(88)と、
前記第1の端部プレート(84)と前記第2の端部プレート(88)の間の空間(80)を囲繞している壁であって、第1の端部プレート(84)に取り付けられた第1の端部(82)及び第2の端部プレート(88)に取り付けられた第2の端部(86)とを有する壁と、
前記空間(80)内に位置決めされた作動流体(90)と、
を備えるクライオクーラ・サーマルリンク(76)。
【請求項2】
前記第1の端部プレート(84)は前記第2の端部プレート(88)に対して重力方向で上側に位置決めされている、請求項1に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項3】
前記第1の端部プレート(84)の温度は前記第2の端部プレート(88)の温度未満である、請求項2に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項4】
前記第1の端部プレート(84)の温度は前記作動流体(90)の凝縮温度未満である、請求項3に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項5】
前記第1の端部プレート(84)上に作動流体(90)の凝縮物を形成させて有する請求項4に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項6】
前記第2の端部プレート(88)の温度は前記作動流体(90)の沸騰温度を超えている、請求項3に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項7】
前記第1の端部プレート(84)の温度は前記第2の端部プレート(88)の温度を超えている、請求項2に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項8】
前記作動流体(90)の温度は前記空間内で層別になっている、請求項7に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項9】
前記空間(80)を囲繞している壁の熱伝導係数は前記第1の端部プレート(84)と前記第2の端部プレート(88)のうちの一方の熱伝導係数未満である、請求項1に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。
【請求項10】
前記作動流体(90)は、ヘリウム、水素、ネオン及び窒素のうちの1つである、請求項1に記載のクライオクーラ・サーマルリンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−96097(P2008−96097A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−200391(P2007−200391)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】