説明

超小型電子デバイスの性能を高めるための高速プラズモニックデバイス

本発明の種々の実施の形態はフォトニックデバイスを対象とし、該フォトニックデバイスを用いて、入射ERを収集し、表面プラズモンに変換することができる。該表面プラズモンを用いて、超小型電子デバイスの動作を助長することができる。本発明の一実施の形態において、フォトニックデバイス100が、上側表面及び下側表面を有する誘電体層104と、誘電体層の上側表面の少なくとも一部を覆う平面ナノワイヤネットワーク106とを備える。誘電体層の下側表面は、基板102の上側表面上に配置され、平面ナノワイヤネットワークは、入射電磁放射を表面プラズモンに変換するように構成され、該表面プラズモンは誘電体層の中を通り抜けて基板の少なくとも一部の中に達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はフォトニックデバイスを対象とし、詳細には、超小型電子デバイスの性能を高めるために用いられうる高速プラズマベースデバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路上の超小型電子デバイスの密度が高くなった結果として、これらのデバイスを相互接続するために用いられうる金属信号線の密度が技術的な障害になってきた。
たとえば、信号線の密度が高くなったことから、電子デバイス間の最も長い通信リンクを同期させることが難しくなり、隣接する信号線間のクロストークが問題になってきた。
結果として、信号線を介して電気信号として情報を送信するのではなく、物理学者及び技術者は、電磁放射(「ER」)内に符号化された同じ情報を、自由空間を通じて又は導波路を介して送信するために用いられうる材料及びデバイスを調査している。
ER内に符号化された情報を導波路を介して送信することは、信号線を介して電気信号を送信することよりも優れた多数の利点を有する。
第一に、導波路を介して送信されるERの場合、信号線を介して送信される電気信号の場合よりも劣化又は損失がはるかに小さい。
第二に、導波路は、信号線よりもはるかに広い帯域幅に対応するように作られうる。
たとえば、単一のCuワイヤ又はAlワイヤは単一の電気信号しか送信することができないが、単一の光ファイバは、様々に符号化された約100以上のER信号を送信するように構成されうる。
【0003】
材料科学及び半導体製造技法が進歩したことから、CMOS回路のような電子デバイスと集積されうるフォトニックデバイスを開発して、フォトニック集積回路(「PIC」)を形成することができるようになった。
用語「フォトニック」は、電磁スペクトルに及ぶ周波数を有する、古典的に特徴付けられる電磁放射、又は量子化された電磁放射で動作することができるデバイスを指している。
PICは、電子集積回路に相当するフォトニック回路であり、半導体材料のウェーハ上に実装されうる。
PICを効果的に実装するために、受動フォトニックデバイス及び能動フォトニックデバイスが必要とされる。
導波路及び減衰器が受動フォトニックデバイスの例であり、受動フォトニックデバイスは超小型電子デバイス間でのER伝搬を誘導するために用いられうる。また、光検出器が能動フォトニックデバイスの例であり、能動フォトニックデバイスは、データをER内に符号化するか、データで符号化されたERを検出するか、又はPICの或る特定の超小型電子デバイス構成要素の動作を制御するために用いられうる。
ほとんどの光検出器は、p−n接合半導体フォトダイオード又はp−i−n接合半導体フォトダイオードである。
十分なエネルギーを有するERのパルスがフォトダイオードに突き当たるとき、電子−正孔対が生成される。
その際、フォトダイオードの内部電界が、それらの電子及び正孔を、接合部空乏領域を通じて逆の方向に動かして電流を生成し、その電流を用いて、入射ERパルスの存在を確認するか、又は超小型電子デバイスの動作を制御することができる。
たとえば、超小型電子デバイスと電気的に通信するフォトダイオードを用いて、電磁放射の対応するオンパルス及びオフパルスを加えることによって、該デバイスをオン及びオフにすることができる。
しかしながら、フォトダイオードは多くの場合に高い静電容量を有し、増幅器の使用を必要とする場合があり、それによって、多種多様の超小型電子デバイス内にフォトダイオードを実装するのは現実的でなくなる場合がある。
物理学者及び技術者は、或る特定の超小型電子デバイスの性能を高め、動作を助長するために用いられうるフォトニックデバイスが必要であることを認識している。
【発明の概要】
【0004】
本発明の種々の実施の形態はフォトニックデバイスを対象とし、該フォトニックデバイスを用いて、入射ERを収集し、表面プラズモンに変換することができる。
該表面プラズモンを用いて、超小型電子デバイスの性能を高め、動作を助長することができる。
本発明の一実施の形態では、フォトニックデバイスが、上側表面及び下側表面を有する誘電体層と、誘電体層の上側表面の少なくとも一部を覆う平面ナノワイヤネットワークとを備える。
誘電体層の下側表面は基板の上側表面上に配置され、平面ナノワイヤネットワークは、入射電磁放射を表面プラズモンに変換するように構成され、該表面プラズモンは誘電体層の中を通り抜けて基板の少なくとも一部の中に達する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1A】本発明の実施形態による、基板によって支持される第1のフォトニックデバイスの等角図である。
【図1B】本発明の実施形態による、図1Aに示される第1のフォトニックデバイス及び基板の組立分解等角図である。
【図2】本発明の実施形態による、誘電体層によって支持される六角形の平面ナノワイヤネットワークの平面図である。
【図3A】本発明の実施形態による、正方形の平面ナノワイヤネットワークを示す図である。
【図3B】本発明の実施形態による、五角形の平面ナノワイヤネットワークを示す図である。
【図4】本発明の実施形態による、図1に示される線4−4に沿った第1のフォトニックデバイスの断面図である。
【図5】本発明の実施形態による、レンズを有する第1のフォトニックデバイスの断面図である。
【図6A】本発明の実施形態による、図1に示される第1のフォトニックデバイスの平面ナノワイヤネットワーク上に入射する電磁放射を示す図である。
【図6B】本発明の実施形態による、図6Aに示される線6B−6Bに沿った第1のフォトニックデバイスのナノワイヤの断面図である。
【図7A】本発明の実施形態による、基板によって支持される第2のフォトニックデバイスの等角図である。
【図7B】本発明の実施形態による、図7Aに示される線7B−7Bに沿った第2のフォトニックデバイスの断面図である。
【図8】本発明の実施形態による、図7Aに示される第2のフォトニックデバイス上に入射する電磁波の電界成分を示す図である。
【図9A】本発明の実施形態による、基板によって支持される第3のフォトニックデバイスの等角図である。
【図9B】本発明の実施形態による、図9Aに示される線9B−9Bに沿った第3のフォトニックデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の種々の実施形態はフォトニックデバイスを対象とし、該フォトニックデバイスを用いて、入射ERを収集し、表面プラズモンに変換することができる。該表面プラズモンを用いて、超小型電子デバイスの性能を高め、動作を助長することができる。
これらのフォトニックデバイスのサイズは1次元、2次元及び3次元において低減され、且つ依然として相対的に大きなER捕捉断面を保持することができる。
図1Aは、本発明の実施形態による、基板102によって支持される第1のフォトニックデバイス100の等角図を示す。
フォトニックデバイス100は、誘電体層104と、誘電体層104の上側表面の少なくとも一部を覆う平面ナノワイヤネットワーク106とを備えており、オプションの反射防止コーティング108も備える場合があり、反射防止コーティング108は、平面ナノワイヤネットワーク106の、基板102と接触していない表面と、誘電体層104の、平面ナノワイヤネットワーク106によって覆われていない部分とを覆う。
オプションの反射防止コーティング108は、入射ERの或る特定の波長の反射率を下げることによって、光検出器の効率を改善しうる。
詳細には、波長λを有する入射ERの反射率を下げるために、約λ/4の厚みを有する反射防止コーティングが作られうる。
【0007】
図1Bは、本発明の実施形態による、図1Aに示されるフォトニックデバイス100及び基板102の組立分解等角図を示す。
誘電体層104が基板102及び反射防止コーティング108から切り離して示される。
また図1Bは、反射防止コーティング108内にある平面ナノワイヤネットワーク106の圧痕110も明示し、反射防止コーティング108が、平面ナノワイヤネットワーク106のナノワイヤ間の領域を充填することを示す。
【0008】
図2は、本発明の実施形態による、誘電体層104によって支持される平面ナノワイヤネットワーク106の平面図を示す。
平面ナノワイヤネットワーク106は、平面ナノワイヤネットワーク106の中心から外側に向かって放射状に広がる、概ね均等に離間される6本の放射状ナノワイヤ201〜206を備える。
放射状ナノワイヤの各対は、概ね平行な4本の横断ナノワイヤによって相互接続され、横断ナノワイヤは、同心の4つのナノワイヤ六角形を形成するように構成され、各放射状ナノワイヤはナノワイヤ六角形201〜206のそれぞれの頂点を横切る。
たとえば、横断ナノワイヤ207は放射状ナノワイヤ201及び202を相互接続し、横断ナノワイヤ207〜212は、4つの同心ナノワイヤ六角形のうちの1つを形成し、放射状ナノワイヤ201は、4つの同心ナノワイヤ六角形のそれぞれの頂点を横切る。
【0009】
本発明の他の実施形態では、正多角形を成す種々の平面ナノワイヤネットワークを構成するために、放射状ナノワイヤの数及び隣接する放射状ナノワイヤ間の角度を変更することができる。
たとえば、本発明の実施形態によれば、図3Aは、概ね均等に離間される4本のナノワイヤから形成される正方形の平面ナノワイヤネットワーク302を示し、図3Bは、概ね均等に離間される5本のナノワイヤから形成される五角形の平面ナノワイヤネットワーク304を示す。
また、本発明の他の実施形態では、不規則な形を成す平面ナノワイヤネットワークを形成するために隣接するナノワイヤ間の角度を変更することができ、隣接する放射状ナノワイヤの任意の対を相互接続する横断ナノワイヤの数を変更することができる。
【0010】
図4は、本発明の実施形態による、図1に示される線4−4に沿ったフォトニックデバイス100及び基板102の断面図を示す。
図4に示されるように、オプションの反射防止コーティング108が、平面ナノワイヤネットワーク106のナノワイヤセグメント間の空間を充填する。
本発明の他の実施形態では、より広いエリアにわたって入射する電磁放射をフォトニックデバイス100上に合焦させるために、フォトニックデバイス100の上にレンズを配置することができる。
図5は、本発明の実施形態による、フォトニックデバイス100上にレンズ502が配置されているフォトニックデバイス100の断面図を示す。
本発明の或る特定の実施形態では、レンズ502は、ホログラフィックレンズとすることができる。
【0011】
図4及び図5に示されるように、個々のナノワイヤセグメントが長方形の断面を有する平面ナノワイヤネットワークが示されてきたが、平面ナノワイヤネットワークのナノワイヤは、正方形、円形、楕円形又はより複雑な断面を有しうる。
平面ナノワイヤネットワークのナノワイヤセグメントは、数多くの異なる幅又は直径、及び縦横比又は偏心率も有しうる。
用語「ナノワイヤ」は、サブマイクロスケールワイヤ、マイクロスケールワイヤ、若しくはより大きな直径を有するワイヤを有する平面ナノワイヤネットワークのワイヤを指す場合があるか、又は複数の断面寸法が混在する平面ナノワイヤネットワークのワイヤを指す場合がある。
たとえば、横断ナノワイヤは、ナノスケール寸法を有することができ、一方、放射状ナノワイヤはマイクロスケール寸法を有する。
【0012】
平面ナノワイヤネットワークは、金属及び半導体物質から構成されうるか、又はこれらのタイプの物質の組み合わせから、及び他のタイプの物質から構成されうる。
たとえば、平面ナノワイヤネットワークは、金、銀、銅、アルミニウム、チタン、プラチナ及びそれらの合金を含む金属から形成されうる。
本発明の平面ナノワイヤネットワークは、機械的なナノインプリンティング及びリソグラフィ技法によって作られうる。
代替的には、平面ナノワイヤネットワークは化学的に合成され得、ラングミュア−ブロジェット工程を含む、1つ又は複数の処理ステップにおいて堆積されうる。
ナノワイヤを作るための他の代替の技法を用いることもできる。
したがって、図1に示されるような平面ナノワイヤネットワークは、複数の既知の工程のうちのいずれかによって作られうる。
【0013】
基板102は、半導体若しくは化合物半導体デバイスを表すことができるか、又はCMOSデバイスの金属構成要素を表すことができ、フォトニックデバイス100は、フォトニック特性を利用して(photonically)これらのデバイスの動作を制御するか、又は助長するために用いられうる。
たとえば、基板102は、フォトダイオードのp−n接合又はp−i−n接合を表すことができ、フォトニックデバイス100は、フォトダイオードの動作を助長するために用いられうる。
基板102は、電界効果トランジスタの金属ゲート又はコンデンサ(capacitor)の底部とすることができ、フォトニックデバイスは、電界効果トランジスタ又はコンデンサの動作を制御するために用いられうる。
【0014】
フォトニックデバイス100上に入射する電磁放射のパルスを用いて、基板102によって表されるデバイスの動作を以下のように助長することができる。
平面ナノワイヤネットワーク106上に入射し、適当な波長範囲内の波長を有する電磁放射が平面ナノワイヤネットワーク106のナノワイヤセグメントによって表面プラズモンに変換されるように、フォトニックデバイス100を構成することができる。
プラズモンは、金属内の電子プラズマ振動の量子化された状態に対応するERのモードである。
表面プラズモンは、金属の表面上に存在する電子励起のモードであり、縦及び横の両方の成分を有する。
表面プラズモンは、高密度の電界及び遅い群速度を特徴付けており、それにより、近接する電子−正孔対の生成速度を大幅に高める。
表面プラズモンは、基板102によって表される光電子デバイスのサイズを波長以下の寸法まで縮小することを可能にし、それでも、入射ERの大きな有効断面を保持できるようにする。
物理的寸法が小さくなることの1つの直接の利点は、固有静電容量が低いことであり、それにより、基板102によって表されるデバイスが、より高速に動作できるようになる。
基板102が、光検出器又は光変換器の吸収層のような、光電子デバイスのアクティブ領域であるとき、基板102の厚みを数十ナノメートルまで薄くし、且つ依然として波長厚吸収層の吸収特性を保持することができる。
基板102が薄いと、光によって生成されるキャリア(すなわち、電子及び正孔)がそれぞれの電極に、より速く達することができるようになり、それにより、内部量子効率が上がり、且つデバイスの速度が速くなる。
表面プラズモンが、基板102の内在するデバイス内に吸収されない場合には、平面ナノワイヤネットワークのナノワイヤセグメントに沿って伝搬した後に、その表面プラズモンは、平面ナノワイヤネットワークのエッジに達すると、金属内に熱として散逸される場合があるか、又は自由空間内に再放射される場合がある。
【0015】
図6Aは、本発明の実施形態による、フォトニックデバイス100の平面ナノワイヤネットワーク106上に入射する電磁放射を示す。
その電磁放射は、ナノワイヤと相互作用し、平面ナノワイヤネットワーク106及び誘電体層104の界面に沿って表面プラズモンを形成する。
その表面プラズモンは、横及び縦の両方の電磁界成分を有する。
磁界成分はその界面に対して平行であり、且つ伝搬方向に対して垂直であるのに対して、電界成分は、表面プラズモン伝搬の方向に対して平行であり、且つその界面に対して垂直である。
図6Bは、本発明の実施形態による、図6Aに示される線6B−6Bに沿ったナノワイヤ602の断面図を示す。
曲線604は、電界成分がナノワイヤ603内に入り込む範囲を表し、曲線606は、電界成分が誘電体層104の中を通り抜けて、基板102内に達する範囲を表す。
曲線604及び606は、界面608から離れるほど、電界成分が如何に指数関数的に減衰するかを示す。
【0016】
横断ナノワイヤの界面に沿って形成される表面プラズモンの一部は放射状ナノワイヤまで伝搬し、その後、矢印601〜606によって示されるように、放射状ナノワイヤに沿って、平面ナノワイヤネットワーク106の中心に向かって伝搬する。
表面プラズモン強度は、正の干渉効果に起因して、平面ナノワイヤネットワーク106の中心に向かうほど著しく大きくなり得る。
言い換えると、ナノワイヤネットワークのセグメント内で生成されるプラズモンの一部は、ネットワークの中心において同相で合算され、関連するプラズマ振動を伴う局所的に強い電界が生成される。
基板102内に電界が入り込むと、フォトニックデバイス100の下の基板102内で電子−正孔対が生成される量が増加し、且つ速度が速くなり、該生成はフォトニックデバイス100の中心の真下で最も大きくなる。
小さな空間体積において生じる、この生成レベルの増加及び速度の上昇は、基板102によって表される、小さな静電容量のフォトダイオード、電界効果トランジスタのゲート又はコンデンサの動作を助長する。
【0017】
本発明の他の実施形態では、フォトニックデバイス100の平面ナノワイヤネットワーク、誘電体層及びオプションの反射防止コーティングを、中心付近に配置される一対の小さな金属電極を有する二次誘電体格子によって置き換えることができる。
図7Aは、本発明の実施形態による、基板102によって支持される第2のフォトニックデバイス700の等角図である。
フォトニックデバイス700は、フォトニック格子702と、第1の電極704及び第2の電極706と、電極704と電極706との間に挟まれるER吸収材料708とを備える。
フォトニック格子702は、概ね規則的に離間される正方形の穴から成る格子を含み、それらの穴はフォトニック格子スラブの厚みに及ぶ。
たとえば、穴710はフォトニック格子スラブの厚みに及ぶ。
図7Bは、本発明の実施形態による、図7Aに示される線7B−7Bに沿ったフォトニックデバイス700の断面図を示す。
図7Bに示されるように、フォトニック格子702は、基板102の上側表面によって支持され、電極704及び706は、フォトニック格子702の厚みに及ぶように構成される。
本発明の実施形態は、図7に示されるような正方形格子構成に配列される正方形の穴には限定されない。
それらの穴は、長方形、円形、楕円形又は任意の他の形状とすることができ、フォトニック格子702内に入射する電磁放射を捕捉し、集中させるのに適している任意の2次元格子構成に配列することができる。
【0018】
ER吸収材料708は、SiOを注入された半導体又は化合物半導体のような、半導体、化合物半導体又は多孔質ナノ材料から構成することができる。
電極704及び706は、金、銀、銅、アルミニウム、チタン、プラチナ、それらの合金、半導体、化合物半導体、又は導電性有機材料から構成することができる。
それらの電極は、所望の波長範囲内の局在プラズモン共鳴を示し、電極と吸収材料708との間のギャップ内に強い電界成分を有する。
フォトニック格子702は、単一の誘電体、半導体又は化合物半導体から構成されうる。
フォトニック格子のために選択される材料のタイプは、必要とされるフォトニック格子の寸法及び構成に依拠する場合があるか、伝搬方向
【0019】
【数1】

【0020】
及び偏波のような、電磁放射の入射ビームに関連するモードパラメータに依拠する場合があるか、又は入射電磁放射の周波数又は波長範囲に依拠する場合がある。
たとえば、フォトニック格子は、SiO、Al、Si、誘電体ポリマー、半導体、化合物半導体、又は任意の他の適当な材料から構成されうる。
化合物半導体は、二元、三元又は四元のII−VI半導体化合物又はIII−V半導体化合物でありうる。
たとえば、フォトニック格子702は、いずれもII−VI半導体化合物であるZnTe若しくはCdSeのいずれか、又はいずれもIII−V半導体化合物であるGaAs若しくはInPのいずれかから構成されうる。
フォトニック格子は、2つ以上の層から構成され得、各層は、異なる誘電体、半導体又は半導体化合物材料から構成される場合がある。
たとえば、フォトニック格子702は、AlGaAsの2つの層の間に挟まれる単一のGaAs層から構成される場合がある。
【0021】
フォトニック格子スラブは、分子ビームエピタキシ又は化学気相堆積(chemical vapor deposition)を用いて形成されうる。
穴の格子は、多数の既知のリソグラフィ技法及びエッチング技法のうちの1つを用いて形成されうる。
たとえば、穴の格子は、反応性イオンエッチング、集束イオンビームミリング、化学支援イオンビームエッチング、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ及びナノインプリンティングリソグラフィを用いてスラブ内に形成され得、それらは全て当該技術分野において既知であり、必要とされる穴のサイズ及び形状に、且つスラブ材料に基づいて選択される場合がある。
それらの穴は空気穴であり得、又はフォトニック格子とは異なる誘電率(dielectric constant)を有する誘電体、半導体又は半導体化合物材料で埋め戻されうる。
それらの穴は、物理気相堆積技法又は化学気相堆積技法を用いて、材料で充填されうる。
【0022】
一般的に、フォトニック格子の動作機構は誘導共鳴(guided resonance)現象に依拠する。
これらの誘導共鳴は、フォトニック格子スラブ内に強く閉じ込められ、低い反射指数(index)の穴によって生成される周期的な指数(index)コントラストが位相整合機構を提供し、それにより、入射光を閉じ込められたモードに結合できるようにすると共に、誘導モードが自由空間に散乱できるようにし、その共鳴に限られた寿命を与える。
誘導共鳴の共鳴周波数及び寿命は、フォトニック格子の構造によって決定され、それは個々の光学特性を設計するための大きな自由度を与える。
以下は、フォトニック格子の動作に関する一般的な説明であり、フォトニック格子上に入射する電磁放射が、単一の入射電磁波の電界成分に関して表される。
【0023】
図8は、本発明の実施形態による、フォトニックデバイス700のフォトニック格子702上に入射する電磁波の電界成分を示す。
図8では、軸804〜806はそれぞれデカルト座標軸
【0024】
【数2】

【0025】
を表す。
その電磁波は関連する波数ベクトルを有する。
【0026】
【数3】

【0027】
ただし、kは入射電磁波802の波数であり、パラメータθ及びφは電磁波の入射角である。
入射電磁波は典型的には、フォトニック格子702を透過する。
しかしながら、特定の偏波及び波長λの入射電磁波毎に、該電磁波がフォトニック格子702を透過しない関連する一対の入射角θ及びφが存在する。
代わりに、これらの電磁波はフォトニック格子の格子構造と結合し、フォトニック格子のxy平面内に周波数共鳴モードを有する。
入射電磁波がフォトニック格子702の平面に対して垂直に(normal)向けられる(すなわち、極角φが「0」である)とき、方位角θの変化は、入射電磁波とフォトニック格子との結合に影響を及ぼさない。
一方、入射電磁波がフォトニック格子702の平面に対して垂直に向けられないとき、フォトニック格子702が入射電磁波802に対して透過性である多数の入射角θ及びφが存在する。
たとえば、フォトニック格子702上に入射する、特定の偏波及び波長λを有する電磁波802を考える。
入射電磁波802は入射角θ及びφを有し、その入射角の場合に、入射電磁波802はフォトニック格子702のxy平面内で共鳴周波数fを有するものと仮定する。
θ及びφ以外の入射角を有する電磁波は、フォトニック格子702を透過する。
フォトニック格子702は、電磁波のためのブラッグ反射体としての役割を果たし、フォトニック格子702は、波数ベクトル角θ及びφを有するこの電磁波に対して透過性ではない。
波数ベクトル角θ及びφを有する電磁波は、フォトニック格子702に吸収され、その中で循環する。
この共鳴現象は、入射電磁波802と、フォトニック格子702が対応することができる電磁放射モードとの間の結合の結果である。
【0028】
共鳴周波数、すなわち共鳴fは、電磁波が最も大きな振幅Amax又は振動エネルギーEmax(≒Amax)で振動する周波数である。
共鳴周波数fは、誘電率ε、格子定数、穴幅及びフォトニック格子702の厚みによって決定される。
品質係数(「Q値」)は、フォトニック格子の共鳴の鋭さを定量的に評価する1つの方法である。
Q値は、ERが吸収又は放射される前に、そのERが共鳴状態のままでいられる長さの基準である。
Q値は、系が振動する周波数と、系がエネルギーを損失する速度とを比較する。
相対的に大きなQ値は、系の共鳴周波数に対してエネルギー散逸の速度が低いことを示す。
一般的に、Q値は以下の式によって表すことができる。
【0029】
【数4】

【0030】
ただし、Δfは、物理系の振動エネルギーがfにおける最大振動エネルギーEmaxの少なくとも半分である周波数範囲である。
【0031】
フォトニック格子702の動作に戻ると、適当な入射角及び波長を有する入射電磁放射を選択して、フォトニック格子702との共鳴を引き起こすことができる。
この電磁放射は、フォトニック格子702内に捕捉され、集中するようになり、その電磁放射は、ER吸収材料708によって吸収されるのに相対的に長い時間を有し、捕捉されたERは、2つの金属電極704及び706と吸収材料708との間でギャッププラズモンを効率的に励起することができる。
ギャッププラズモンに関連する電界成分は、電極704及び706と吸収材料708との間の領域において非常に強く、図6を参照しながら上記で説明されたように電子−正孔対の形成を引き起こす。
電子及び正孔は、電極704と706との間の短い距離(約10〜50nm)しか進まない。
それゆえ、そのデバイスの量子効率は高く、速度は速いはずである。
【0032】
図9Aは、本発明の実施形態による、基板102によって支持される第3のフォトニックデバイス900の等角図を示す。
フォトニックデバイス900は、4つの同心リング901〜904、並びに2つの電極704と706との間に挟まれるER吸収材料708を含む中央領域905から構成される。
図9Bは、本発明の実施形態による、図9Aに示される線9B−9Bに沿ったフォトニックデバイス900の断面図を示す。
図9Bは、同心リング901と902との間のギャップ906のような、同心リング901〜904間のギャップを明示する。
本発明の実施形態は、同心リング901〜904を有するフォトニックデバイス900には限定されない。
本発明の他の実施形態では、必要とされるフォトニックデバイスの種類及び形状に応じて、同心楕円が用いられうる。
【0033】
フォトニックデバイス900は、単一の誘電体、半導体、又は半導体化合物材料から構成されうる。
フォトニック格子のために選択される材料のタイプは、必要とされるフォトニックデバイスの寸法及び構成に依拠する場合があるか、又は伝搬方向
【0034】
【数5】

【0035】
及び偏波のような、電磁放射の入射ビームに関連するモードパラメータに依拠する場合があるか、又は入射電磁放射の周波数又は波長範囲に依拠する場合がある。
そのフォトニックデバイスは、分子ビームエピタキシ又は化学気相堆積を用いて、最初に材料のスラブを堆積することによって形成されうる。
同心リング901〜904及び中央領域905間のギャップは、多数の既知のリソグラフィ技法及びエッチング技法のうちの1つを用いて形成されうる。
たとえば、ギャップは、反応性イオンエッチング、集束イオンビームミリング、化学支援イオンビームエッチング、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ及びナノインプリンティングリソグラフィを用いてスラブ内に形成され得、それらは全て当該技術分野において既知であり、必要とされる穴のサイズ及び形状に、且つスラブ材料に基づいて選択される場合がある。
それらのギャップは空気ギャップであり得、又は同心リング901〜904とは異なる誘電率を有する誘電体、半導体又は半導体化合物材料で埋め戻されうる。
それらのギャップは、物理気相堆積技法又は化学気相堆積技法を用いて、材料で充填されうる。
【0036】
適当な入射角及び波長を有する入射電磁放射を選択して、フォトニックデバイス900との共鳴を引き起こすことができる。
フォトニック格子702と同様に、この電磁放射は、フォトニックデバイス900内に捕捉され、集中するようになる。
ER吸収材料702が、電極704及び706上の表面プラズモンの形成を支援する。
電極704及び706と基板102との間の界面に形成される表面プラズモンは、図6を参照しながら上記で説明されたように、基板102内の電子−正孔対の形成を助長する。
【0037】
これまでの説明は、本発明を完全に理解してもらうために、説明の目的上、特定の用語を用いた。
しかしながら、本発明を実践するために具体的な細部が不要であることは、当業者には明らかであろう。
本発明の具体的な実施形態のこれまでの説明は、例示し、説明するために提示される。
それらは、本発明を余す所なく述べることも、開示されるのと全く同じ形に限定することも意図していない。
上記の教示に鑑みて、数多くの変更及び変形が可能であることは明らかである。
それらの実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最もわかりやすく説明し、それにより、当業者が本発明及び種々の実施形態を、検討される特定の使用に適合するように種々の変更を加えて最大限に利用できるようにするために図示及び説明される。
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって規定されることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
100 フォトニックデバイス
102 基板
104 誘電体層
106 平面ナノワイヤネットワーク
108 反射防止コーティング
201〜206 放射状ナノワイヤ
207〜212 横断ナノワイヤ
502 レンズ
700 フォトニックデバイス
702 フォトニック格子
704 第1の電極
706 第2の電極
708 ER吸収材料
710 穴
900 フォトニックデバイス
901〜904 同心リング
905 中央領域
906 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニックデバイス(100)であって、
上側表面及び下側表面を有する誘電体層(104)であって、該誘電体層の前記下側表面は基板(102)の上側表面上に配置される、誘電体層と、
前記誘電体層の前記上側表面の少なくとも一部を覆い、入射電磁放射を、前記誘電体層の中を通り抜けて前記基板の少なくとも一部の中に達する表面プラズモンに変換するように構成される平面ナノワイヤネットワーク(106)と
を備えるフォトニックデバイス。
【請求項2】
前記平面ナノワイヤネットワーク(106)の上側表面及び側面と、前記誘電体層(104)の少なくとも一部とを覆う反射防止コーティング(108)
をさらに備える請求項1に記載のフォトニックデバイス。
【請求項3】
前記平面ナノワイヤネットワーク(106)は、
複数の放射状ナノワイヤ(201〜206)であって、各ナノワイヤラジアルバーが前記平面ナノワイヤネットワークの中央領域から外側に向かって延在する、複数の放射状ナノワイヤと、
複数の横断ナノワイヤ(207〜212)であって、各ナノワイヤクロスバーが2つの隣接するナノワイヤラジアルバーを接続する、複数の横断ナノワイヤと
をさらに備える
請求項1に記載のフォトニックデバイス。
【請求項4】
前記ナノワイヤラジアルバー及び前記ナノワイヤクロスバーは、入射電磁放射を表面プラズモンに変換するために、概ね多角形の構成又は任意の他の適当な構成を形成するように配列される
請求項3に記載のフォトニックデバイス。
【請求項5】
前記基板(102)は、
コンデンサの底部、
電界効果トランジスタのゲート、
フォトダイオード、
光変換器、及び
表面プラズモンによって変更されるコンダクタンスを有する任意の適当な材料
のうちの1つをさらに含む
請求項1に記載のフォトニックデバイス。
【請求項6】
フォトニックデバイス(700)であって、
基板の上側表面上に配置されるフォトニック格子(702)であって、特定の波長範囲にわたる入射電磁放射を該フォトニック格子内に集中させるように構成される複数の開口部(710)を有するフォトニック格子と、
前記フォトニック格子内に埋め込まれる少なくとも2つの電極(704、706)と、
前記フォトニック格子内に集中する電磁放射が前記少なくとも2つの電極上で表面プラズモンに変換されるように、前記少なくとも2つの電極間に配置される電磁放射吸収材料(708)であって、該表面プラズモンは前記基板の少なくとも一部の中に達することができる、電磁放射吸収材料と
を備えるフォトニックデバイス。
【請求項7】
前記フォトニック格子(702)は
誘電体材料のスラブ
をさらに備える
請求項6に記載のフォトニックデバイス。
【請求項8】
前記複数の開口部(710)は、
前記フォトニック格子を通って延在する複数の概ね規則的に離間される穴
をさらに含む
請求項6に記載のフォトニックデバイス。
【請求項9】
前記複数の開口部(710)は、
誘電体材料の同心リング間に複数の概ね均等に離間される開口部
をさらに含む
請求項6に記載のフォトニックデバイス。
【請求項10】
前記電磁放射吸収材料(708)は、
半導体と、
化合物半導体と、
多孔質ナノ材料と、
有機材料と
をさらに含む
請求項6に記載のフォトニックデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2011−501433(P2011−501433A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529941(P2010−529941)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/011783
【国際公開番号】WO2009/051732
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】