説明

超広帯域デバイスを備えるエレベータシステム

エレベータシステムは、超広帯域(UWB)技術を内蔵して、エレベータシステムの特性及び特徴を監視及び制御し、エレベータの乗員とエレベータのユーザからの入力とを感知する。UWBセンサは、解析する目的で、センサからローカルプロセッサ又はリモートプロセッサにデータ及びコマンドを通信するために、エレベータかごと通信して配置される。代替的に、UWBセンサを用いて、エレベータかご、かご駆動機構、かご制御システム、又は他の送り先にコマンドを通信する。一実施形態では、UWBセンサは、エレベータかごのドアと非常に近接して設置され、ドアの間にいる人又は物体の存在を検出する。占有センサが、エレベータかごの床、天井、又は壁に配置されて、かごの占有率を感知することができる。UWBセンサは、エレベータ呼び出しボタンの非常に近くに実装されて、エレベータ呼び出しボタン又はエレベータ乗り場に接近している乗客を追跡することもできる。別の実施形態では、UWBセンサを用いて昇降路内のエレベータかごの位置を検出及び追跡することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2005年5月13日に出願された、「ELEVATOR SYSTEM INCLUDING AN ULTRA WIDEBAND DEVICE」と題する、米国仮特許出願第60/681,100号の利益を主張するものである。その開示は参照として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
用語「超広帯域」(UWB)は、「搬送波フリー」技術、「ベースバンド」技術、又は「インパルス」技術として知られる技術を説明するのにしばしば用いられる比較的新しい用語である。基本的概念は、持続時間が数十ピコ秒(一兆分の数秒)から数ナノ秒(十億分の数秒)といった無線周波数(RF)エネルギーの短期バーストを、発生し、送信及び受信することである。これらのバーストは、RF搬送波の1周期〜数周期を表す。結果として、波形は広帯域になる場合があり、そのため、実際のRF中心周波数を求めることは難しくなり得る。したがって、用語「搬送波フリー」が用いられる。初期の信号生成方法の中には、広帯域マイクロ波アンテナの、「ベースバンド」(たとえば非RF)で早い立ち上がり時間のパルス励起を利用して、アンテナの効率的な「インパルス」応答又は「ステップ」応答を生成及び放射するものがあった。UWBシステムの中には、もはやアンテナの直接インパルス励起を利用しないものがある。なぜなら、このような手法では、放出帯域幅及び見かけ中心周波数を適切に制御できない場合があるからである。
【0003】
通常、UWB波形は、持続時間が比較的短いため、幾分独特の性質を示し得る。通信においては、たとえば、マルチユーザ・ネットワーク・アプリケーションにおいて高いデータ転送速度性能を提供するために、UWBパルスを使用することができる。レーダ用途では、UWBパルスは、非常に高いレンジ分解能並びに精密な距離測定力及び/又は位置測定力を提供することができる。たとえば、通信用途、レーダ用途、及び位置決め用途を包む多機能アーキテクチャが開発されている。
【0004】
移動環境及び屋内環境において観察されるように、この持続時間が短い波形は、マルチパス抑圧の影響が比較的少ない。マルチパス抑圧は、強い反射波(たとえば、壁、天井、乗り物、建物等からの反射波)が、ダイレクトパス信号と位相が部分的に一致しないか全く一致せずに到来するときに起こり、受信器における振幅応答が低下する。非常に短いパルスであるため、反射路信号が到来する前にダイレクトパス信号は発生して消失し、そのため抑圧は起こらない。その結果、UWBシステムは、高速移動体無線用途に特に好適である。さらに、持続時間が短い波形であるために、マルチユーザ通信のためのパケットバーストプロトコル及び時分割多元接続(TDMA)プロトコルを容易に実施することができる。
【0005】
帯域幅はパルスの持続時間に反比例するため、これらの波形のスペクトル範囲は非常に広くなり得る。結果としてのエネルギー密度(すなわち、帯域幅のヘルツ単位ごとの送信電力ワット)は非常に小さくなり得る。この小さなエネルギー密度は、低検出確率(LPD)RFシグネチャに変換可能である。LPDシグネチャは、軍事用途(たとえば秘密の通信やレーダ)などにとって特に関心のあるところであろう。しかしながら、LPDシグネチャも、近傍のシステムに対してわずかながら干渉を発生させ、また、わずかながらRFによる健康被害を発生させる恐れがある。これらは軍事用途や商業用途などにとって重大なものになり得る。
【0006】
UWB技術の他の利点として、システムがあまり複雑でないこととコストが安いことが挙げられる。UWBシステムは、わずかなRF電子部品又はマイクロ波電子部品を用いてほぼ「完全にデジタル(all-digital)」にすることができる。UWB設計では通常RFが単純であることから、これらのシステムは高度に周波数適応可能であり、RFスペクトルのいずれの帯域にも位置付け可能である。この特徴により、既存のサービスへの干渉を避けながら、利用可能なスペクトルを十分に利用することができる。
【0007】
UWB受信器の技術によって、単一のUWBエネルギーパルスを、高感度で、且つ高い干渉及び帯域内干渉の存在下で検出することが可能になる。単一パルス検出機能は、高速(数Mb/s)の、移動体無線用途にとって有利である。単一パルス検出によって、送信電力を大幅に低減することも可能になり、結果として他のシステムに対する潜在的な干渉が低減される。また、UWB検出器は、UWBパルスの前縁に応答することが可能であり、屋内の高マルチパス環境における精密な位置決め及びジオロケーションへの適用が可能になる。
【0008】
UWB送信器の設計は、周波数適応可能で帯域適応可能なアーキテクチャを提供し得る。これらのアーキテクチャは、相互干渉をもたらすことなく既存のスペクトルのユーザと共存することができ、且つ、信頼できる通信に必要とされるピーク電力レベル及び平均電力レベルを最小化するUWBシステムの開発を可能にする。しかしながら、アンテナの直接インパルス励起を利用する設計もあり、その結果、有害な干渉につながる恐れのある大量の不要な帯域外放射を発生する可能性がある。
【0009】
UWB技術の用途のほんの一例を以下に挙げる。
戦術的なハンドヘルド・ネットワークLPI/D無線
非LOS LPI/D地上波通信
LPI/D高度計/障害物回避レーダ
軍用タグ(設備及び人員の安全、後方手配)
軍用侵入検出レーダ
軍用精密ジオロケーションシステム
無人航空機(UAV)データリンク及び無人地上移動車(UGV)データリンク
近接信管
LPI/D無線内部通話装置システム
高速(20Mb/s以上)LAN/WAN
高度計/障害物回避レーダ(たとえば、商用航空機)
衝突回避センサ
商用タグ(たとえば、高度道路交通システム、電子署名、スマートアプライアンス)
商用侵入検出レーダ
商用精密ジオロケーションシステム
工業用RF監視システム
【0010】
UWB技術をレーダに適用する例として以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
10ドルを超えない、単一のチップ(ASIC)上の超低電力ショートレンジ・ミニチュアレーダ
「壁を通り抜ける」人及び物体のレーダイメージング
自動車、宇宙船のドッキング、及び航空機の地上交通に関する衝突回避レーダ
近接センサ(干渉に感受性が低く、コンクリート等の材料を貫通することができるような、超音波センサ、赤外線センサ、及びドップラーセンサに対して利点がある)
モーションセンサ
高度計
液体レベルセンサ
【0011】
UWB技術をスマートタグ追跡デバイスに適用する例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
在庫追跡RFID用途
室内3D位置決めシステム
人員追跡/探知器
センサネットワーク
【0012】
UWB技術を通信に適用する例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない。
アドホック・メッシュネットワーキング
ビルの壁越しの無線通信
傍受/検出の確率が低い無線通信
レーダと通信との二用途システム
高帯域−低コストデータ通信
PAN(USB及びBluetoothを高帯域ショートレンジデジタル通信で置き換える、パーソナル・エリア・ネットワーク)
【0013】
後述で明らかになるように、UWBは以下の性質を提供し得る。
検出することが比較的困難である
他のシステムと干渉しない
ビル内環境においてマルチパスの影響を受けにくい
材料透過性がある(コンクリート、ドライウォール等)
材料特定性(UWBレーダはドップラー効果を用いず、波形は物体の位置及び密度により変わる)
周波数適応性及び帯域適応性
通信に共通のアーキテクチャ
レーダ及び位置決め(ソフトウェアにより再定義可能
低い電力消費、単三電池2つで一年間動く
わずかなRF構成要素を含む、低コスト且つほぼ「完全にデジタル」なアーキテクチャ
【0014】
UWBはRF技術であり、いかなるRF技術もそうであるように、特定の状況において既存のシステムと干渉する可能性があることに留意しなければならない。さらに、UWB放出が成され得る方法がいくつかある。これらの技法のいくつかは、他のものよりも有害な干渉を生じる傾向が強い。たとえば、アンテナの直接インパルス励起を利用するUWBシステムは、アンテナの設計帯域をはるかに上回るスペクトル範囲に拡散するエネルギーを生成し得る。(設計帯域として、VSWR帯域(たとえば、電圧定在波比が、2:1といったような或る数を下回る周波数範囲、又は、アンテナパターンのメインローブが、ピーク値から−3dBといったような或る境界内にとどまる周波数範囲を表す放射帯域)を選択し得る。)
【0015】
いくつかの技法では、アンテナからの送信に先立ってパルス整形によりUWB波形を作成する。これらの技法は、周波数と帯域との両方において制御可能であるという利点を提供し得る。また、これらの技法は、GPS用に且つ生活システムの安全のために確保されている帯域等の制限帯域以外で動作するようになっている。
【0016】
干渉可能性に影響を与えるUWB設計の他の態様は、パルスのデューティサイクル及び変調方式を含む。通常、パルスのデューティサイクルが高いほど、送信されるエネルギーの平均量は大きくなる。いくつかのUWB方式では、複数のパルスが情報の単一ビットごとに送信される。このことは、送信されるエネルギーの全体量をさらに増加させるという影響、すなわち、所与の平均エネルギーについてさらに低いデータ転送速度を設計者が受け入れざるを得なくなるという影響をもたらす恐れがある。さらに、最小パルス間ディザリングを有する高いパルス繰り返し周波数(PRF)は、このエネルギーを一組のスペクトル線にさらに集中させるという影響を有する。スペクトル線が高感度の受信器(たとえば、GPS)のパスバンド内に入る場合、波形の「帯域幅」が数百メガヘルツに及ぶとしても、結果として干渉が起こるであろう。
【0017】
「ベースバンド」アーキテクチャ(すなわち、アンテナの直接インパルス励起に依存するアーキテクチャ)において、対応する受信器の前端は通常広く開口し、RFフィルタリングは受信アンテナ自体によってのみ行われる。アンテナ自体は「帯域外」の信号及び雑音のフィルタリングをほとんど行わないか又はまったく行わなくてもよい。そのために、これらのシステムは、受信器の増幅器段階/検出器段階に先立ってさらに低域フィルタリング又はバンドパスフィルタリングを内蔵してもよい。しかしながら、干渉を除去することを助ける一方で、この受信フィルタリングもまた所望の信号からエネルギーを除去する恐れがある。このような「ベースバンド」システムもまた他の受信器との干渉を生じる傾向がある。
【0018】
受信波形が送信波形のローカルのレプリカと本質的にテンプレート一致する、「相関」受信器はまた、広帯域雑音又はインパルス干渉の影響がほとんどない。このことは、広帯域受信器の前端の任意のインパルス又は白色ガウス雑音の励起が送信波形と非常に類似の特性を有する受信波形を生み出す場合があるということによる。強力な帯域内連続波(CW)の干渉は、同様に、単に検出器に過負荷をかけることによって、そのような受信器のアーキテクチャに大きな損害をもたらし得る。
【0019】
時間ゲート相関受信器において、相関動作はパルスの持続時間にゲートコントロールされると共に到来するビットストリームと同期されるので、時間ゲート相関受信器は、UWB受信器アーキテクチャにおける帯域内干渉の影響を低減するのにきわめて効果的であろう。UWB検出器及びUWB受信器のプロセッサは、修正された一定誤警報確率(CFAR)アルゴリズムにより強力な帯域内CW干渉に対するさらなる耐性を達成し得るこのプロセス又はその変形を利用することができる。検出器によっては、整合フィルタ処理はゲート化された量子トンネルデバイスの一体化特性を用いることによりRFにおいて直接達成され得る。トンネルダイオードは、サブナノ秒信号のような、弱いエネルギーの検出に比較的感度の高いデバイスとして知られている。
【0020】
いくつかのスペクトル拡散波形(直接拡散方式DSSSであれ周波数ホッピング形式FHSSであれ)と異なり、いくつかのUWB波形の拡散帯域は直接生成される。すなわち、PNコード又はホッピング(チッピング)パターンのような別個の拡散シーケンスによる個別のビット変調なしで生成される。したがって、UWBは本質的に時間領域概念であり、この概念のもとで、フーリエ変換の時間fと周波数Fとの関係のタイムスケール特性により、短いRFパルスは直接、広帯域の瞬時帯域幅信号を生成する。
【0021】
【数1】

【0022】
さらに、DSSS波形又はFHSS波形は、通常、本質的に定包絡線である。つまり、これらの波形の瞬間的な振幅は時間と共に変化しない。DSSS波形については、個別の伝送ビットはさらに分割されて、二相変調チッピング間隔になる場合がある。一方、FHSSについては、個別の伝送ビットはさらに分割されて別個の周波数変化になる場合がある。結果として、スペクトル拡散波形は均一な(100%)デューティサイクルを有し得る。すなわち、ピーク電力レベルと平均電力レベルとは等価である。一方で、UWBの場合、パルスの持続時間はパルスの相互到着時間に関してきわめて短いものになり得る。したがって、波形のデューティサイクルは通常全体に占める割合のわずかである場合があり、また、ピーク対平均比はきわめて大きなものになる場合がある。
【0023】
通信の観点から、両タイプのシステム(スペクトル拡散又はUWBのいずれか)の性能は、ビットごとの効率エネルギー対雑音スペクトル密度比Eb/Noによって求められる。No=kTeBであるので(kはボルツマン定数、Teは有効システム雑音温度、Bは瞬時帯域幅である)、帯域幅が広くなるほど、通信に必要とされるエネルギーが大きくなることがわかる。UWBシステムでは、Eb=PTであり、Pはピークパルス電力であり、Tは有効パルス持続時間である。したがって、パルスが短いほど、所与のビット誤り率(BER)性能について必要なピーク電力は大きくなる。スペクトル拡散波形では、EbはPTによっても与えられる。ここで、Tはビット持続時間を表す(すなわち、NTc、ここでNはいわゆる処理利得であり、Tcはチップ持続時間である)。このことにより、等価の平均電力レベルについて、スペクトル拡散とUWBとの両方が等価のBER性能を有することを示すことができる。
【0024】
しかしながら、UWBはスペクトル拡散に対して非常に重要な利点を有する。利点としては、(a)比較的高帯域について、実装時の複雑さが非常に小さく且つコストが非常に安いので、データスループットが高いこと、(b)BER性能がデータ転送速度の変化と無関係であること(定包絡線波形では、データ転送速度を2倍にするには、2倍のピーク電力及び平均電力が必要とされる)、(c)移動体マルチパス耐性及び二用途(たとえば、レーダと通信)への適用にとって実用的に実現可能な設計であること、を含むが、これらに限定されない。
【0025】
レーダに関しては、いくつかの従来のレーダシステムは通常、マイクロ波周波数域の放出・反射される単一周波数(狭帯域)電磁エネルギーを用いて、物体を検出し、位置を突き止め、追跡する。このような従来のシステムはバーストして連続波を送出することができる。従来のレーダシステムには、情景についてより多くの情報を得るために多重(広帯域)周波数を利用するものもある。UWBレーダシステム(マイクロパワーインパルスレーダとしても知られる)又は他のUWBセンサシステムは、比較的広い周波数帯域にわたるエネルギーを含む比較的短い電磁パルスを用い、従来のレーダシステムよりも短いレンジにある物体を検出し、それによって、より高い分解能を提供する。いくつかのUWBレーダシステムにおいては、パルスが短くなるので、帯域は広くなり、それによって、反射された物体についてより多くの情報が提供される。したがって、UWBデバイスは、物体の位置及び/又は構造的な特徴若しくは他の特徴についての精密な、ベクトルに基づく情報を提供することができる。
【0026】
さらに、短いパルス(たとえば、約1サブナノ秒)を用いることにより、比較的小さな電力で信号を生成することができる。つまり、このシステムは、システムがパルス生成する短い時間だけ電流が流れるように、たとえば電力要件が約数マイクロアンペアであるように構成することができる。ほんの一例だが、同じ単三電池対で数年間動作するUWBレーダシステムを提供することができる。
【0027】
UWBレーダシステムの構成要素として、パルス生成器を有する送信器と、パルス検出器を有する受信器と、タイミング回路と、信号プロセッサと、アンテナとを含むことができる。ほんの一例であるが、UWB送信器は、速い、広帯域レーダパルスを1秒当たり2百万の名目上の率で送出することができる。この率は意図的に雑音回路によりランダム化することができる。送信器を含む構成要素は、1兆分の50秒(50ピコ秒)という短い立ち上がり時間を有する、より短く鋭い電磁パルスを送出することができる。受信器は、パルス検出器回路を用いることができ、数センチ〜数十メートルのような所定の距離(ラウンドトリップ遅延時間)内の物体からのエコーのみを受け入れるように構成することができる。
【0028】
UWBレーダシステムは、ほんの一例であるが、約50メートルのレンジを提供することができる。全方向性アンテナでは、UWBレーダシステムはユニットの周囲の適切な半径の不可視のレーダバブル内のエコーを探すことができる。指向性アンテナを用いて、特定の方向にパルスを照射して、信号に利得を加えることができる。送信アンテナと受信アンテナとを分離して電気的な「トリップライン」を確立し、標的、侵入者、又は他の人若しくは物体がそのラインを越えると警告や他の信号のような或る事象がトリガされるようにしてもよい。
【0029】
短い低電力のパルスが結果としてUWBレーダのリターン上で測定されるエネルギーがより低くなることにつながる限りにおいては、多くのパルスが早く送信され、すべてのリターンが平均化される。上述したように、短いパルスを広帯域の周波数にわたって用いることで、比較的高い分解能及び精度を提供することができる。UWBレーダシステムはまた、他のレーダからの干渉への感受性が低い。さらに、UWBレーダのパルス送信に関連するマイクロ波電力は比較的低く(たとえば平均で数十マイクロワット)、UWBレーダは医学的にも安全である。実際、UWBレーダは、携帯電話の電力の百万分の1よりも小さい電力を放出するように作られる。
【0030】
UWBモーションセンサはリターン信号を捕捉する際にレンジゲーティング技法を使用することができる。この技法のもとで、UWBデバイスはそれぞれの送信パルス後の狭い時間窓において発生する信号のみをサンプリングすることができ、レンジゲートを提供する。遅延時間が、空間のレンジに対応するそれぞれの送信パルスの後に選択されるのであれば、受信器の「ゲート」はその遅延の後に開き、直後に閉まる。このようなゲーティングは、望まない信号を受信する可能性を低減させることができる。UWB受信器は送信パルスごとに1つの遅延時間又はレンジゲートのみを測定するように構成することができる。センサは、固定レンジで開始し、その後そのレンジで平均レーダ反射率の任意の変化を感知することにより動作することができる。システムは、小さなレンジゲート(デバイスからターゲットまでの固定距離に対応する)内のリターンパルスのみが測定されるように構成される。システムはまた、ゲート幅(サンプリング時間)がパルス長に基づいて固定され、一方遅延時間(レンジ)が検出感度と同じように調整可能に構成することができる。数千パルスを平均化することで、一回の測定における信号対雑音比を改善することができ、それにより雑音が低減され、感度は向上する。平均化された信号の選択された閾値が動きを感知して、警告や信号のようなスイッチ又は事象をトリガすることができる。平均化されたサンプリングゲート出力における変化は、特定のレンジでのレーダ反射率の変化、すなわちモーションを表すことができる。もちろん、モーションもまたUWBシステムで追跡され得る。
【0031】
上述したように、パルス間の時間量が2MHz付近で変化するように、雑音源を意図的にUWBレーダシステムのタイミング回路に加えてもよい。このようにパルス繰り返しレートをランダム化すること、及びそのランダム時間における数千のサンプルを平均化することは、いくつかの理由から望ましい。第一に、ラジオ局及び/又はテレビ局の高調波からの干渉は、そうでなければ擬似警報をトリガしかねない。ランダム化によって、干渉は効率的に平均化されてゼロになる。第二に、複数のUWBユニットのそれぞれがランダムにコードされて一意である場合には、それらのUWBユニットを、互いに干渉しあうことなく1つの近傍において作動させることができる。言い換えると、それぞれのユニットがパターンを作成し、そのパターンは作成したユニットによってのみ認識可能である。UWBセンサのアレイ間の干渉も、時間分割多重化により低減又は防止可能である。第三に、ランダム化することにより、センサの放出スペクトルが拡散されて、UWB信号はバックグラウンドノイズに類似し、他のセンサでは感知するのが難しい。UWBセンサからの放出は、従来のRF受信器及びアンテナではたった3m離れただけで実質的に検出不可能である。ランダム化されたパルス繰り返しの他の利点は、当業者には明らかであろう。
【0032】
UWBセンサデバイスはいくつかのレンジゲートを巡回することができる。遅延時間は、それぞれのパルスでゆっくりと掃引されるか又は変更され(たとえば毎秒約40の掃引)、レーダ情報の持続的な追跡で検出バブル(detection bubble)を効率的に埋める。言い換えると、サンプルは、異なる時間で又はデバイスからの異なる距離で入手される。その結果は、物体の距離に相関され得る全てのリターンパルスの「等価時間」記録である。等価時間エコーパターンはオシロスコープ上で表示されるか、又はコンピュータに読み込まれてもよい。
【0033】
標的エリアの前線でレンジファインダーを動かすことによって、又は、レンジファインダーの静止アレイを用いることによってイメージを形成するために、等価時間サンプリングを用いることもできる。垂直トレースは、標的エリア沿いの異なる位置からのリターン信号として提供される。標的エリア内への多くの個別の垂直ビューが並べて積み重ねられ、標的エリアの断面図をモデルに再構築することが可能になる。画像再構築のアルゴリズムを用いることで、標的エリア内の物体の位置がわかる。このような技法を用いて、標的エリアの完全な3Dビュー又は3Dモデルを描画することができる。ほんの一例として、このような技法を用いて、コンクリート中に埋め込まれている鉄筋や導管等の画像を提供することにより、コンクリートの床を点検することができる。
【0034】
また、UWBシステムは、種々の材料を透過すること、すなわち「透視する」ことが可能である。これらの材料は、ゴム、ガラス、水、氷、泥、コンクリート、プラスチック、木、壁、コンクリート、人体組織等を含むが、これらには限定されない。このような透過力があるため、UWBデバイスを容易に隠すことが可能になる。UWB信号の所与の材料を透過する特性は、材料の電気伝導率の関数である。たとえば、UWBデバイスは、コンクリートを透過するよりも厚い金属を透過するほうがより困難である。
【0035】
UWB技術のさらなる利点として、はっきりと画定され且つ調整可能な動作範囲、及び/又は、調整可能な感度がある。これらにより、誤った読み取りや警告を低減することができる。いくつかのユニットをユニット間で干渉を起こすことなく同時に動作させることができる。ランダム化された放出により、UWBデバイスの検出は困難になり得る。UWBデバイスもまた他のデバイスに干渉の影響を与えないように構成することができる。他のデバイスには、他のUWBデバイスと非UWBデバイスとが含まれる。センサ技術として、UWBは、モーション検出若しくは近接度、距離測定、マイクロ波画像形成、通信、又は種々の他の用途を提供することができる。他のセンサ技術と比較した場合、UWBセンサは、温度、光、天候、電磁干渉、又は他の環境条件によって生み出される悪影響への感受性を弱くすることができる。
【0036】
また、UWB信号をワイヤ又は他の中実の導管に沿って送信することができる。たとえば、UWB信号を金属ワイヤに沿って送信して、計量棒の頂点から液面までの反射電磁パルスの伝送時間を測定することによって、「電子式計量棒」を提供することができる。
【0037】
UWBデバイスの使用に関する一例(水栓を開閉するための非接触スイッチ)が、米国特許出願公開第2002/0171056号に開示されている。その開示は参照により本明細書に援用される。
【0038】
UWBデバイスの一例として、Freescale Semiconductor, Inc.(テキサス州、オースティン)のXS110がある。Freescale社のXS110超広帯域(UWB)ソリューションは、ダイレクトシーケンス超広帯域(DS−UWB)を実装する完全無線接続性及びIEEE(登録商標)802.15.3メディアアクセス制御(MAC)プロトコルを提供することができる。チップセットは、110Mbpsより速いデータ転送速度で、ストリーミングビデオ、ストリーミングオーディオ、及び高速データ転送などの用途を比較的低い電力消費レベルでサポートすることができる。高速データ転送速度に加えて、XS110は、移動体無線接続性のためのアドホック・ネットワーキングと共にピアツーピアもサポートすることができる。XS110は、高利得(20dB)設定と低利得(0dB)設定の両方及び5.6dBの高利得雑音数値を有する低雑音増幅器(LNA)を、トランジスタベースのパルスによりUWB信号を生成するRF送受信器とを一体化するRF前端送受信器チップを備え、ベースバンド速度で動作するネットワークを形成する。また、XS110は、多重前方エラー訂正(FEC)オプション、高速収集、及び素早い追跡力を有するUWBベースバンド機能及びアナログ・デジタル変換器(ADC)機能を一体化するベースバンドプロセッサチップを備える。また、XS110は、新たなTDMAベースのIEEE802.15.3プロトコルに基づいてストリーミングメディアアプリケーションをサポートする、シングルチップ媒体アクセスコントローラを備える。さらに、XS110は、一般的なFR4回路基盤材料の単一の金属層上にエッチングされている、1インチ(2.54cm)×1インチ(2.54cm)の平面的な設計である1つのアンテナを有する。XS110の他の特徴として、以下の点が挙げられる。すなわち、29Mbps、57Mbps、86Mbps、及び114Mbpsのデータ転送速度、IEEE802.15.3ストリーミングメディアプロトコルのサポート、ワイヤ状高解像度ビデオアプリケーションを可能にすること、750mW〜3.3Vの電力消費、IEEE802.11b/a/g、Bluetooth(商標)技術、全地球測位システム(GPS)及び合衆国の無線システムと共存すること、低価格の0.18μmのCMOS技術及びSiGe技術を用いて作られていることである。
【0039】
UWB技術の使用に関する他の例としては、UWBローカライザがある。ローカライザは、戦略的に設置されて道標(signpost)の無線ネットワークを構築することができる。ローカライザを用いて、様々な状況にある人々を見つけることもできる。たとえば、炎上する建物内にいる消防士、窮地にある警察官、スキー場の斜面で負傷しているスキーヤー、遠隔地にいる負傷したハイカー、又はショッピングモールや遊園地で迷子になっている子供等が挙げられる。ローカライザをテレビ、オーブン、照明等の家庭電化製品と組み合わせて、住人たちの所在や住人たちの生活時間における所在を知ることによって適切な製品を作動させるスマートホームが可能になり得る。家の持ち主が取っ手に近づくと開くキーレスロック、又は人が部屋に近づくとその人のプロフィールに合わせて照明、温度、音楽の音量を調整する部屋といった通常の家庭における制御機能は自動化することができる。ローカライザは、ペット、カーパース、手荷物等の個人の持ち物を見つけるために用いることもできる。ローカライザは、小売品の上や中に設置されること等により、リアルタイムでの在庫追跡を可能にする。システムとリンクしたローカライザは、購買パターンや在庫レベルに関する情報を更新して提供することができる。ローカライザは、RFID在庫システムと異なり、或るコンテナの内容物を近傍のコンテナの内容物と差別化できるように仮想的境界を作成することができる。
【0040】
ローカライザは、ユビキタスなモバイルインターネットデバイスの「きめ細かい」無線ネットワークのための技術を可能にしている。次世代インターネットによって、消費者の家庭や職場は、日用品の外見を持つ人工知能を有する使用人であふれるであろう。その役目は、消費者の要求を読み取って応答すること、そして、可能な限りさりげなく行動することである。ローカライザは周囲に張り巡らされたセンサやエフェクタを用いて、直接的且つ直感的にインターネットと人間との対話を仲介することができる。ユビキタス且つモバイルであるために、これらの「スマートな物(smart things)」は無線であると共に正確な相対的位置を特定することが可能であろう。
【0041】
エレベータシステムにおける超広帯域デバイス
UWB技術により、エレベータシステム分野は革新の機会を得ている。ほんの一例であるが、UWB技術は特に下記のエレベータシステムの用途に用いることができる。すなわち、ドアエッジ検出システム、占有センサシステム、ホールセンサ又は人の追跡システム、非接触型の設備又はボタン、及びかご位置システムである。しかしながら、以下の例のいずれか又はすべてにおいて、ドップラーベースのデバイスを、UWBデバイスの代替、UWBデバイスへの追加、及び/又はUWBデバイスの変形として用いることができることを理解されたい。
【0042】
エレベータシステムにおけるUWBデバイスの一般的な使用
以下の例のいくつかは、エレベータシステムの特性や特徴、エレベータの乗員、及びエレベータのユーザによる入力を検出する目的のために、エレベータシステムにおいてUWBデバイスを使用することに関するが、UWBデバイスを用いてエレベータシステム内で種々の他の目的及び機能を果たしてもよいことを理解されたい。ほんの一例として、エレベータシステムは、データやコマンド等を通信する目的のためにUWBを使用することができる。たとえば、UWBを用いて、解析及び/又はロギングの目的でセンサからローカルプロセッサ又はリモートプロセッサへデータ通信することができる。UWBを用いて、解析及び/又はロギングに応答する目的でユーザ入力デバイスからローカルプロセッサ又はリモートプロセッサへコマンドを通信することができる。UWBを用いて、ローカルシステム又はリモートシステムから、エレベータかご、かご駆動機構、かご制御システム、又は他の送り先にコマンドを通信することもできる。UWBを介した送信元及び/又はUWBを介した送信先は、エレベータかご内、エレベータかご上、エレベータかご外、又は任意の他の場所にあってもよい。さらに、送信元/送信先は、UWBデバイス、非UWBデバイス、又は任意の他種のデバイス(それらの組み合わせを含む)であってもよい。所望であれば、エレベータシステムは、通信ネットワークを構築するために、複数のUWB中継器を備えていてもよい。このような中継器は、専用中継器か、又は他の目的を果たすデバイスの一部であってもよい。一実施形態では、複数のUWB中継器がエレベータシャフト内に配置される。UWBをエレベータシステムにおいて通信目的で使用できる他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0043】
UWB通信デバイス又はUWB通信ネットワークを含むUWBデバイスは、比較的高い電気伝導率を有する材料の信号透過に関して困難に直面する場合がある。ほんの一例として、UWBセンサがエレベータかごの金属壁の外側に設置されてエレベータかご内部にあるものを検出又は測定するように構成される場合、センサから送信されるか又はセンサに返信される信号は金属壁から悪影響を受ける恐れがある。このような影響が対処される必要がある場合や望ましくない場合、この影響は、UWB信号の通路に悪影響を与えている材料に「窓」を設けることによって対処可能である。たとえば、限定するものではないが、センサに隣接するエレベータかごの壁に開口を形成してもよい。開口は開いたままでもよく、又はプラスチック若しくは別の材料のような材料で塞いでもよい。もちろん、この例では、このような開口はエレベータかごの内部まで完全に達している必要はない。センサ付近のかごの内壁が木を含む場合、信号は大きな悪影響に直面することなく木を通過することができる。したがって、センサはかごの乗員の視界から隠されたままにすることができる。比較的高い電気伝導率を有する材料において直面するあらゆる悪影響に対処するために「窓」を組み込むさらに他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0044】
UWBデバイスのエレベータシステム用途によっては、一個のUWBデバイスが監視するよう構成されたエリア又は満足に監視することができるエリアよりも、大きなエリアを監視することが望ましい場合がある。このような状況では、UWBデバイスをトラック又はUWBデバイスを動かすための他の手段に取り付ける等して、UWBデバイスを可動にすることができる。代替的に、UWBデバイスのアレイを提供してもよい。UWBデバイスのアレイを用いる場合、レンジゲーティングによりアレイのデバイスが互いに干渉しあう可能性を低下させることができる。別の代替形態として、UWBデバイスはエリア全体を監視するように調整されるか又は再構成されてもよい。このような調整は、定期的、ランダム、又は手動といったように、動的であることは理解されよう。UWBデバイス(複数可)の監視エリアを制御するさらに他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0045】
一個のUWBデバイス又はUWBセンサの使用に関する以下の例のいずれにおいても、二つ以上のUWBデバイス又はUWBセンサを用いることができることも理解されたい。したがって、本明細書で用いられる場合、「UWBセンサ」、「UWBデバイス」、及びそれらの変形といった用語は、複数を含むものとして解釈されるべきである。さらに、「UWBセンサ」、「UWBデバイス」、「UWBレーダ」等の用語は交換可能なものとして解釈されるべきである。これらの用語はデバイス、プロセッサ、システム、及びUWBデバイスに結合されるか又はUWBデバイスと通信する他の構造を含むものとして解釈されるべきである。
【0046】
ドアエッジ検出器
一実施形態では、UWBセンサは1つ又は複数のエレベータドアのドアエッジ検出器として用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
従来のエレベータかごには、エレベータドアが閉まるときにドアの間に人や物が存在しないかを検出するためのアクチュエータ機構を使用しているものがある。このようなアクチュエータは、エレベータドアの間に立っている人に、アクチュエータ機構が接触するという望ましくない結果をもたらす場合がある。したがって、検出されるものとの物理的な接触を必要とせずにエレベータドアの間の人や物の存在を検出するように動作可能な検出器を提供することが望ましい場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本例では、UWBセンサを用いて、エレベータドアの間の人や物体、又はエレベータドアのエッジ付近の人や物体、又は開いているドアに向かう方向ベクトル上を動いている人や物体の存在を検出する。この実施形態では、UWBセンサは、そのような人や物体の存在を示す信号(たとえば、「赤い光」信号)をロジックに通信する。当該ロジックは、その信号に応答してドアが閉まるのを防ぐように構成されている。人や物体がもはやドアの間には位置しない場合、UWBデバイスは信号を送るのをやめ、ロジックはドアが完全に閉まるのを許可する。さらに別の実施形態では、UWBセンサは、ドアの間又はドアのエッジ付近に人も物体も位置しない場合にのみ特定の信号(たとえば、「緑の光」信号)を通信する。この実施形態では、UWBセンサはこの信号を受信している場合にのみドアを閉めるように構成されているロジックと通信している。この実施形態は、たとえば、開いているエレベータドアのそばを歩く人と、開いているエレベータドアに向かって歩く人とを区別することができる。物体のサイズ及び材料の検出、又は任意の他の考察は、閉まろうとするドアを再度開けるかより長い時間開いた状態で待つか否かを決定する助けとなり得る。このような考慮は、代替的に又は付加的に他の決定に影響を及ぼし得る。ドアエッジ検出のためにUWBデバイスを使用するさらに他の変形例は、当業者には明らかであろう。
【0049】
占有センサ
一実施形態では、占有センサは、容積負荷計量を用いるUWBデバイスを含む。従来の負荷計量デバイスには、空のかごの重さと内部に乗客及び物体を積載しているかごの重さとの差を測定するものがある。このようなデバイスを用いるシステムでは、最大積載量に達する前に、かごが容積で完全積載になってしまう場合がある。たとえば、いくつかの大きな箱を運んでいる人によって、エレベータかごの最大搬送重量に達することなくかごの空間を満たしてしまう場合がある。エレベータかごの内部空間のマップ又はモデルを作り上げる際の容積負荷計量プロセッサによる3D情報収集のために、UWBレーダを用いてもよい。UWBレーダを用いることで、カメラと機械視覚処理とを用いることの不利益を克服して、容積容量を決定することができる。カメラ上で見られる画像に影響する環境の変化という課題を克服するために、従来の機械視覚システムは多くの技法を使用している。UWBは、変化する反射率、暗い光、やわらかい光、強い光、床の上のごみ、湿気又は床のワックスにより変化する反射率、湿気又は汚れによるレンズの見えにくさといった変数の影響を受けにくい。
【0050】
別の実施形態では、UWBデバイスを用いてエレベータかご内の乗員の数を検出する。UWBデバイス及び/又はUWBデバイスと通信するデバイスを用いて、エレベータかご内の乗員の数をカウント及び/又は追跡することができる。呼び出しボタン(hall call)によってエレベータが警備中の階への運転を要求された場合、UWBデバイスは空のかごが警備中の階へ確実に送られるようにし、それによって、警備中の階に安全検査を受けていない人が送られることを回避する。
【0051】
一実施形態では、1つ又は複数のUWBセンサがエレベータかごの床下に配置される。センサは、たとえば足や車椅子の車輪など、乗員が存在するしるしを、床を介して検出して乗員の存在を検出するように構成される。センサ又はセンサと通信するデバイスは、任意の適切な基準(複数可)に基づいて乗員が存在するしるしと乗員ではない物体(たとえば、かばん、箱等)のしるしとを区別するように構成されるロジックやアルゴリズムを含んでもよい。このような基準は、限定される必要はないが、検出される物体のサイズ、形、材料の種類、密度、電気伝導率その他の性質や特徴(それらの組み合わせを含む)を含み得る。
【0052】
さらに別の実施形態では、1つ又は複数のUWBセンサが、エレベータかごの天井に、又は天井の上に配置される。この実施形態では、センサは、たとえば乗員の頭を検出することによって乗員の存在を検出するように構成されている。さらに代替形態として、UWBセンサをエレベータかごの壁上、壁中、又は壁外に設置して、乗員の存在を検出してもよい。もちろん、UWBセンサをエレベータかごの上、中又は周囲の任意の適切な場所(複数可)に設置して乗員の存在を検出してもよい。
【0053】
さらに別の実施形態では、1つ又は複数のUWBセンサが、乗員のバイオメトリクスを検出又は測定することによって乗員の存在を検出するように構成される。たとえば、UWBセンサは人間の心拍を検出するように構成することができる。センサは、感知された心拍データを乗員の数に変換するように構成することができる。別の例として、UWBセンサは呼吸を検出するように構成することができる。センサは感知された呼吸データを乗員の数に変換するように構成することができる。乗員の存在を検出、測定、及び/又は監視する目的で検出するようにUWBセンサを構成する、他の生体計測の特徴及び現象は、当業者には明らかであろう。
【0054】
別の実施形態では、占有センサはエレベータかごのドアの中、ドアの上、又はドアに隣接して設置されるUWBデバイスを含む。この実施形態では、UWBデバイスはかごに出入りする人を検出する。ほんの一例として、このようなデバイスはドアの一方の側に設置されているUWB送信器と、ドアの他方の側に設置されているUWB受信器とを含む。したがって、UWBデバイスは「トリップ・ライン」型の構成を含むことができる。かごに出入りする人々の関数として占有率を測定するようにUWBデバイスを使用又は構成する他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0055】
前述の占有センサの実施形態(それらの変形例も含む)のうちのいずれも、他のセンサと共に用いることができることは理解されよう。たとえば、UWBベースの占有センサは従来の重量センサと共に用いることができる。さらに他の組み合わせを用いることができる。
【0056】
所望であれば、UWBセンサは、かごの内容物の2Dマップ又は3Dモデルを提供することができる。もちろん、このようなモデリング又はレンダリングが所望である場合、UWBセンサから獲得されたデータを撮像プログラムにより処理して、有意の画像を生成することができる。UWBセンサで少なくともn個の部分において獲得される占有データを獲得及び/又は用いる適切な方法は、当業者には明らかであろう。
【0057】
ホールセンサ又は人の追跡
一実施形態では、ホールセンサ又は人の追跡デバイスは、近接センサを含むUWBデバイスを含む。ホールセンサ又は人の追跡デバイスは方向ベクトルに沿って人をカウントするように構成されている。
【0058】
ほんの一例として、UWBデバイス又はUWBシステムは、エレベータシステムがエレベータに近づいているのは誰かを「認識する」ように構成することができる。システムは、エレベータかごに対して、人を検索するよう命令し、かごはその人がかごに乗り込む前に、その人がどの階に行きたいかを知ることができる。こうして、その人はボタンを押す必要もそれ以外の方法でコマンドを出す必要もなく、目的地に運ばれていく。たとえば、システムは、その人を特定するデータに基づいて、近づいてくる人が働いている階を示すデータベースを参照し、その人をその階に運ぶコマンドをエレベータかごに出す。システムは、UWBローカライザ又はその人に関連付けられている他のデバイスの存在に基づいて(たとえば、その人が持ち運んでいるカード等に基づいて)、人を認識(すなわち、その人の識別情報を検出)することができる。または、システムは、任意の他の基準に基づいて、又は任意の他の手段を介して、人を認識してもよい。ローカライザを検出することによって、システムはエレベータの外にいる人の存在を検出することができる。または、UWBモーションセンサを用いることによって、システムはエレベータの外にいる人の存在を検出してもよい。エレベータの外又は他の場所でも人の存在及び/又は識別情報を検出することができるさらに別の方法は、このような検出を介して獲得されたデータを用いることができる方法が明らかであるのと同様に、当業者には明らかであろう。
【0059】
もちろん、UWBデバイスを有するエレベータシステムが、推測した行き先に自動的に乗客を運ぶように構成されている場合、それぞれのかごは、通常は行かない階に乗員が行こうとしているような場合に、推察された行き先のコマンドを取り消すことができるボタンや他の手段をさらに有してもよい。
【0060】
ローカライザがエレベータシステムにおいて用いられる限り、このようなローカライザを用いて、乗員がある階でエレベータから出ることを防止したり許可したりすることができる。たとえば、ある階へのアクセスが制限されている場合、ローカライザは、任意の乗員のその階へのアクセス許可を示すデータを含むことができる。ローカライザ又はUWB技術の他の形態(manifestation)がエレベータシステムに関してセキュリティデバイスとして用いられることができる他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0061】
別の実施形態では、UWBセンサは廊下にいる人又はエレベータに近づいてくる人の存在を検出する。このような検出に応答して、エレベータシステムは対応する階においてその人を乗せるためにかごを送る。かごがその階にすでに位置している場合、エレベータシステムはその人がかごに入れるようドアを開ける。もちろん、これらの実施形態は様々に変形される。
【0062】
別の実施形態では、UWBセンサを用いて、押されたか又は別の方法で作動/起動されたホールボタンの背後にいる人の数を検出することによって、エレベータかごを至急配送するよう助けることができる。ディスパッチャは、1つの作動/起動されたボタンに対して一人が待っている場合と、大勢の人々が待っている場合とで異なる数のかご(複数可)の呼び出しを決定することができる。
【0063】
別の実施形態では、多くのエレベータがVIPサービスのような安全な呼び出しボタンを備える。第1の人物により入力された安全な呼び出しボタンは、第2の人物が安全な呼び出しに「便乗すること」を防止するのを助けるUWBセンサによって支援される。ホールセンサは1人の人物が安全な呼び出しを待っているか否かを判断することができ、その後安全な呼び出しのためにかごが準備されるのを監視することができる。第2の人物が第1の人物に続いて呼び出されたエレベータに乗ろうとする場合、UWBセンサは安全な呼び出しを無効にする信号を送信することができる。
【0064】
もちろん、これらの実施形態は多数の変形例の対象となる。
【0065】
非接触型の設備又はボタン
当業者は、ユーザが設備又はボタンに物理的に接触する必要なく、ユーザが動作させることができる設備又はボタンを提供することが望ましいことであると理解するであろう。ほんの一例として、このような接触は、ボタンがウィルスや細菌を媒介することが懸念される場合に望ましくない。一実施形態では、非接触型の設備又はボタンが物体の方向ベクトル及びサイズを検出するように構成されているUWBデバイスを含む。
【0066】
UWBレーダは、物体の方向ベクトル及びサイズを検出し、ウィルスの伝播が懸念される病院及び公共空間又は他の場所で有用であろう。材料識別などの技法によって誤った物体検出を減らすことが可能である。完全にデジタルなミニチュアUWBレーダは、エレベータの押しボタンの内部に埋め込み可能である。上ボタン/下ボタン等の複数のボタンが、非常に近接している別個のUWBレーダで動作することができる。ビーム特性を変更することにより、ボタンのレーダは、そのボタンのすぐ前にある円錐に狭く集束することができる。低コスト要件及び低電力要件は、この技術をエレベータの用途に適したものにし得る。従来の非接触型スイッチ及びボタンに用いられている技術では、光、熱、水の飛沫、汚れ、及び他の原因からの干渉を解決するのが難しい。UWBはこれらの干渉の影響を受けにくい。UWB通信を付加することは、昇降路内部又は他の場所に位置する無線送受信器へのボタンの通信デバイスとしても役立ち得る。従来の無線送信器はビル壁の材料を透過することができず、エレベータの昇降路内部に到達するための配線が必要であった。レーダ及び通信デバイスとしてUWBを二つ使用することによって、ボタンデバイスを同じシリコン上の近接センサと無線通信デバイスとの組み合わせに縮小することができる。UWBローカライザは、UWBレーダボタンと共に用いられて、ある人の手がボタンに近づけられるとその人を識別し、その人が通行権を有するはずの、ロックされた警備階のフロアボタンのロックを解除することができる。UWB技術が非接触型の設備又はボタンの用途で実施され得る他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0067】
別個の送信器と受信器とを利用するUWBデバイスを用いて、パルスを同時に受信及び送信すると共に反射を探索することにより、指などを検出することができる。指などからの反射パターンを記憶して、到来する信号と素早く比較することができる。
【0068】
別の実施形態では、4つのUWBデバイスをボタンパネルの四隅に配置し、プロセッサを用いて4つの信号を統合し、パネル前の物体のイメージマップ又はモデルを構築する。複数の画像を用いて、方向ベクトルと起動させるボタンとの選択を決定することができる。
【0069】
UWB技術を用いる非接触型の設備又はボタンのさらに他の実施形態は、本明細書に含まれている図面に示されている。
【0070】
UWB技術を非接触型の設備又はボタンの用途で実施することができる他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0071】
かごの場所
エレベータかごの位置を検出及び/又は追跡することは望ましい。ほんの一例として、このような位置検出は停止時に乗り場に着床させるのに、又は他の種々の目的に有用である。エレベータかごの位置を検出するためのいくつかの技法は、米国特許第6,651,028号に開示されている。その開示は本明細書に参照として援用される。UWB技術を使用してこのような検出及び/又は追跡を提供することができる種々の方法がある。このようなUWBベースのシステムは、米国特許第6,651,028号に開示されているシステムに対していくつかの有利な点を提供することができる。
【0072】
一実施形態では、1つ又は複数のUWBセンサがかごの上又は中に設けられて、かごの位置を検出することができる。この実施形態では、かごの位置は、壁、天井、及び/又はエレベータシャフトの床の上又は中にある1つ又は複数の参照点又はデバイスを参照するセンサによって求めることができる。別の実施形態では、UWBデバイスは高度計を備え、高さの関数としてかごの位置を検出する。さらに別の実施形態では、UWBデバイスはエレベータシャフトの底部を参照してかごの位置を検出する。さらに別の実施形態では、UWBデバイスはエレベータシャフトの頂部を参照してかごの位置を検出する。かごの位置を検出するためにUWBデバイスをかごの中又は上に設けることに加えて、又はその代替形態として、UWBデバイスをエレベータシャフト内に設けてかごの位置を検出してもよい。このようなデバイス(複数可)は、シャフトの頂部、底部、及び/又はシャフトの壁上に配置することができる。適切な変形形態は、当業者には明らかであろう。
【0073】
かごの位置を検出するように構成される任意のUWBデバイスを用いてかごの速度などの性質を検出することも可能であることも理解されたい。
【0074】
結論
本発明の種々の実施形態及び概念が示され説明されてきたが、本明細書に記載された方法及びシステムのさらなる適応は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者による適切な変更によって達成することができる。このような可能性のある代替形態、変更形態、及び変形形態のうちのいくつかが言及されてきたが、前述の教示に照らして、他の形態も当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】UWB技術を用いる非接触型の設備又はボタンの実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの占有センサシステムであって、
エレベータかごと、
前記エレベータかごの内部と通信して配置される1つ又は複数のUWBセンサであって、該1つ又は複数のUWBセンサのうち少なくとも1つは、前記エレベータかご内の乗員のバイオメトリクスを感知し測定することによって、該乗員の存在を検出するようになっている、1つ又は複数のUWBセンサと
を備える、エレベータの占有センサシステム。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−540302(P2008−540302A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526925(P2008−526925)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018351
【国際公開番号】WO2008/013515
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503200512)ティッセン エレベーター キャピタル コーポレーション (18)
【Fターム(参考)】