説明

超砥粒砥石、砥粒コート剤、ビトリファイド砥石用超砥粒の製造方法、および、砥粒コート剤の製造方法

【課題】超砥粒の脱落が少なく耐脱落性の高い超砥粒砥石を提供する。
【解決手段】砥粒コート工程P1において、超砥粒34に酸化物微粒子分散液が塗布された状態で乾燥および焼成を行うことで複数の酸化物微粒子36が表面に固着された超砥粒34が得られ、成形工程P3においてその超砥粒34およびビトリファイドボンドを用いて成形され、焼成工程P4において焼成されることにより、超砥粒34はその表面に固着された酸化物微粒子36を介してビトリファイドボンド結合剤32に結合されているので、その超砥粒34の表面に固着された酸化物微粒子36によるアンカー効果によって、超砥粒34の脱落が少なく耐久性の高い超砥粒砥石10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超砥粒を結合剤を用いて結合させて成る超砥粒砥石、特にカムシャフトの研削や超高速研削等の高負荷研削に適した超砥粒砥石、それに用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させる砥粒コート剤、酸化物微粒子を固着させた超砥粒の製造方法、砥粒コート剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビトリファイド超砥粒砥石は、500乃至1000℃程度の焼成温度でビトリファイドボンドを溶融させることで超砥粒を結合させるため、レジンボンドを用いる場合に比較して、砥粒保持力すなわち超砥粒とビトリファイドボンドとの間の接着力が得られる。たとえば、CBN砥粒では、B元素や合成工程で添加された触媒中のK或いはNa元素等がその表面に存在することから、それらの元素がビトリファイドボンドと反応し、その化学的結合力が砥粒保持力を高めていると考えられている。
【0003】
ところで、カムシャフトの研削や超高速研削等の高負荷研削になると、未だビトリファイドボンドとCBN砥粒との間の密着力が十分ではなく、CBN砥粒の脱落が発生し易くなり、砥石寿命が十分に得られないという不都合があった。
【0004】
これに対し、CBN砥粒の表面にAl2 O3 やSiO2 等の金属酸化物皮膜を0.1〜10μm程度の厚みで被覆し、その金属酸化物皮膜を介してCBN砥粒をビトリファイドボンドに結合させるようにしたビトリファイドCBN砥石が提案されている。たとえば、特許文献1がそれである。
【特許文献1】特開平7−108461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の金属酸化物皮膜で被覆されたCBN砥粒を用いたビトリファイドCBN砥石では、CBN砥粒の脱落性はある程度改善されるものの、種々の高負荷研削に対しては未だ十分とは言えない場合があった。CBN砥粒は高硬度であると同時に高価であり、未だ切削可能であるのに脱落することで、切削加工の経済性を低下させていた。
【0006】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、超砥粒の脱落が少なく耐脱落性の高い超砥粒砥石、砥粒コート剤、ビトリファイド砥石用超砥粒の製造方法、および、砥粒コート剤の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明者等は、上記事情を背景として種々検討を重ねた結果、無機酸化物微粒子分散液を超砥粒に塗布して乾燥および焼成を施すことにより、酸化物微粒子を超砥粒の表面に被覆状態で固着することができ、その酸化物微粒子が表面に固着された超砥粒をビトリファイドボンドで結合したビトリファイド超砥粒砥石を作成して、そのビトリファイド超砥粒砥石で高負荷研削を行うと、従来よりも大幅に超砥粒の脱落性が改善されることを見いだした。本発明はこの知見に基づいて為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、超砥粒を結合剤を用いて結合させた超砥粒砥石であって、前記超砥粒は、酸化物微粒子分散液が塗布された状態で乾燥および焼成を行うことで酸化物微粒子が表面に固着され、該酸化物微粒子を介して前記結合剤により結合されていることにある。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記酸化物微粒子は、一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表されるものであることにある。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1又は2に係る発明において、前記酸化物微粒子は100nm以下の平均粒子径を有し、該酸化物微粒子により前記超砥粒の表面に形成される酸化物微粒子膜は50乃至200nmの範囲内の膜厚を有するものであることにある。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、前記結合剤はビトリファイドボンドであることにある。
【0012】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4に係る発明において、前記ビトリファイドボンドは、前記酸化物微粒子を構成するものと同様の酸化物を主成分として含むものである。
【0013】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させるために該砥粒の表面に予め塗布される砥粒コート剤であって、最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素) にて表される酸化物微粒子となるものであることにある。
【0014】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる、表面に酸化物微粒子が固着された超砥粒の製造方法であって、最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子となる酸化物微粒子分散液を前記超砥粒に塗布し、該酸化物微粒子分散液が塗布された超砥粒を乾燥および焼成することにある。
【0015】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させるための砥粒コート剤の製造方法であって、酸化物微粒子分散液を、単独で又は複数混合して得ることにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の超砥粒砥石によれば、超砥粒は、酸化物微粒子分散液が塗布された状態で乾燥および焼成を行うことで複数の酸化物微粒子が表面に固着され、その酸化物微粒子を介して前記結合剤により結合されていることから、超砥粒表面に固着された酸化物微粒子によるアンカー効果によって、その超砥粒の脱落が少なく耐久性の高い超砥粒砥石が得られる。
【0017】
また、請求項2に係る発明の超砥粒砥石によれば、前記超砥粒の表面に固着された酸化物微粒子は、一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表されるものであることから、このような金属酸化物微粒子は化学的或いは熱的にも安定であり、高負荷研削においても超砥粒の脱落が好適に防止される。
【0018】
また、請求項3に係る発明の超砥粒砥石によれば、前記酸化物微粒子は100nm以下の平均粒子径を有し、その酸化物微粒子により形成される酸化物微粒子膜は50乃至200nmの範囲内の膜厚を有するものであることから、超砥粒の表面から突き出た100nm以下の平均粒子径の酸化物微粒子によるアンカー効果によって超砥粒の耐脱落性が高められ、50乃至200nmの範囲内の膜厚の酸化物微粒子によって超砥粒の組成元素の結合剤への拡散、たとえばB元素のビトリファイドボンド中への拡散が抑制されて、超砥粒と結合剤との間の層間剥離の発生が好適に防止される。
【0019】
また、請求項4に係る発明の超砥粒砥石によれば、前記結合剤はビトリファイドボンドであることから、超砥粒の表面からビトリファイドボンド中へ突き出た複数の酸化物微粒子によるアンカー効果によって、超砥粒の脱落が少なく耐脱落性の高い超砥粒砥石が得られる。
【0020】
また、請求項5にかかる発明の超砥粒砥石によれば、前記ビトリファイドボンドは、前記酸化物微粒子を構成するものと同様の酸化物を主成分として含むものであることから、超砥粒の表面に固着された酸化物粒子とビトリファイドボンドとの間において高い結合力が得られる。
【0021】
また、請求項6にかかる発明の砥粒コート剤によれば、ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させるために該砥粒の表面に予め塗布され、乾燥および焼成が施されると、最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子が得られる。
【0022】
また、請求項7にかかる発明のビトリファイド超砥粒砥石に用いられる、表面に酸化物微粒子が固着された超砥粒の製造方法によれば、最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子となる酸化物微粒子分散液を前記超砥粒に塗布し、該酸化物微粒子分散液が塗布された超砥粒を乾燥および焼成することで、表面に酸化物微粒子が固着された超砥粒が得られる。
【0023】
また、請求項8にかかる発明のビトリファイド超砥粒砥石に用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させるための砥粒コート剤の製造方法によれば酸化物微粒子分散液を、単独で又は複数混合することにより、砥粒コート剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0025】
図1は、本発明の一実施例の製造方法によって製造された超砥粒砥石10を示す正面図である。超砥粒砥石10は、たとえば炭素鋼、アルミニウム合金などの金属製の円盤状であってその中央部に研削装置(たとえば後述の円筒研削盤12)に取り付けるための取付穴14を有する取付部16が設けられた台金18と、その台金18の回転軸心Wを曲率中心とする円弧に沿って湾曲させられた円弧板状であってその外周面にあたる研削面20とそれに対して反対側の内周面にあたる貼着面22とを有し、その貼着面22が台金18の外周面24に隙間なく貼着された複数個(本実施例では12個)のビトリファイド砥石片26とを、備えている。その大きさは用途により適宜設定されるが、本実施例の超砥粒砥石10は、たとえば、外径Dが380mmφ、取付部16を除く厚みが10mm程度の寸法に構成されたものである。
【0026】
図2は、ビトリファイド砥石片26を示す斜視図である。図1乃至図2において、ビトリファイド砥石片26は、熔融アルミナ質、炭化珪素質、またはムライト質等のセラミック質の一般砥粒がガラス質のビトリファイドボンドにより結合されて成る下地層28と、CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒等のヌープ硬度が3000以上の超砥粒がガラス質の無機結合剤により結合されて成る砥材層30とから一体的に構成されている。上記下地層28は、専ら砥材層30を機械的に支持するための基台として機能するものであり、砥材層30は、専ら被削材を研削するための砥石として機能するものである。なお、上記超砥粒には、たとえば、60メッシュ[平均粒子径250μm]乃至32000メッシュ[平均粒子径0.5μm]の範囲内の大きさのものが好適に用いられる。
【0027】
図3は、ビトリファイド砥石構造により構成された上記砥材層30の断面構成の一例であって、その内部におけるビトリファイドボンド32と超砥粒34との結合状態を説明する模式図である。図3において、ビトリファイドボンド32の表面には、酸化物微粒子36により構成される酸化物微粒子膜38により表面が固着状態で覆われている。この酸化物微粒子膜38は、後述のように、無機酸化物の微粒子が分散された酸化物微粒子分散液が塗布された状態で乾燥および焼成を行うことで形成される。なお、図3の砥材層30の断面において、40は気孔である。
【0028】
図4は、上記超砥粒砥石10の製造方法の一例の要部を説明する工程図である。図4において、先ず、砥粒コート工程P1では、たとえばCBN砥粒である超砥粒34に対して無機酸化物微粒子を含む酸化物微粒子分散液を塗布し、その無機酸化物分散液が表面に塗布された超砥粒34を乾燥し、焼成することにより、多数の酸化物微粒子36がほぼ隙間無く一面にすなわち膜状に固着された酸化物微粒子膜38が超砥粒34の表面に形成される。
【0029】
図5乃至図8は、上記砥粒コート工程P1を実施するための相互に異なる4つの方法、すなわち砥粒コート剤( 液) 1を作成し、それを用いて超砥粒34の表面にジルコニア微粒子を固着する方法、砥粒コート剤2を作成し、それを用いて超砥粒34の表面にシリカ微粒子を固着する方法、砥粒コート剤3を作成し、それを用いて超砥粒34の表面にチタニア微粒子を固着する方法、砥粒コート剤4を作成し、それを用いて超砥粒34の表面にジルコニア微粒子を固着する方法の内容をそれぞれ詳しく説明している。
【0030】
図5に示す砥粒コート工程では、キレート処理工程P11aにおいて、アセチルアセトンでテトラブトキシジルコニウムのキレート処理を行う。このキレート処理により、密着性或いは固着性に寄与するアルキル基が残されて維持される。続く、加水分解工程P12aにおいて、そのキレート処理物1molに対して、H2 Oとして4molの塩酸酸性のイオン交換水を投入することで、アルコキシドが加水分解されて微粒子が生成される。次いで、攪拌工程P13aにおいて、10時間以上攪拌することにより、最終組成がジルコニアとなる酸化物微粒子分散液である砥粒コート剤1を作成する。この砥粒コート剤1には、微細なジルコニア粒子が分散した状態で含まれる。そして、塗布工程P14aにおいて、20g程度の上記砥粒コート剤1にたとえば#80( 180μm) 程度のCBN砥粒40gを浸漬し、濾過することでコーティングする。そして、乾燥・焼成工程P15aにおいて、120℃で60分の乾燥を行った後、500℃の温度にて30分の大気中焼成を施すことで、無機酸化物微粒子であるジルコニアが固着し、そのジルコニアにより膜状に構成された酸化物微粒子膜38により強固に被覆されたCBN砥粒が得られる。無機酸化物微粒子を単に分散させた分散液では、超砥粒の表面に固着できないが、上記キレート処理により、密着性或いは固着強度を高めるためのアルキル基が残されていることから、超砥粒34の表面にジルコニア微粒子が強固に固着される。
【0031】
図6に示す砥粒コート工程では、酸化物微粒子分散液( A)調整工程P11bにおいて、焼成後の組成割合がSiO2 75〜100重量%、ZrO2 0〜15重量%、B2 O3 0〜15重量%であり、且つ、総酸化物重量濃度が1.0〜15重量%に調整された、金属アルコキシド縮合により得られた、酸化物微粒子分散液( A)が作成される。次いで、混合工程P12bにおいて、20nm程度のシリカ微粒子を含むシリカゾル液( B)を、必要に応じてイソプロピルアルコールと共に、上記酸化物微粒子分散液( A)に対して投入し、その酸化物微粒子分散液( A)中のSiO2 :シリカゾル液( B)中のSiO2 =1:1〜1:3となるように混合し、砥粒コート剤2を作成する。そして、塗布工程P13bにおいて、前記塗布工程P14aと同様に、20g程度の上記砥粒コート剤2にたとえば#80( 180μm) 程度のCBN砥粒40gを浸漬し、濾過することでコーティングする。そして、乾燥・焼成工程P14bにおいて、前記乾燥・焼成工程P15aと同様に、120℃で60分の乾燥を行った後、500℃の温度にて30分の大気中焼成を施すことで、酸化物微粒子であるシリカが固着し、そのシリカにより膜状に構成された酸化物微粒子膜38により強固に被覆されたCBN砥粒が得られる。酸化物微粒子を単に分散させた分散液では、超砥粒の表面に固着できないが、上記酸化物微粒子分散液( A)調整工程P11bで調整された酸化物微粒子分散液( A)により、密着性或いは固着強度を高めるためのアルコキシドのアルキル基が調整されていることから、超砥粒34の表面にシリカ微粒子が強固に固着される。
【0032】
図7に示す砥粒コート工程では、酸化物微粒子分散液( A)調整工程P11cにおいて、焼成後の組成割合がSiO2 75〜100重量%、ZrO2 0〜15重量%、B2 O3 0〜15重量%、Al2 O3 0〜5重量%であり、且つ、総酸化物重量濃度が1.0〜15重量%に調整された、金属アルコキシド縮合により得られた、酸化物微粒子分散液( A)が作成される。次いで、混合工程P12cにおいて、20nm程度の酸化チタンTiO2 微粒子を含む市販のTiO2 分散液( B)を、必要に応じてイソプロピルアルコールと共に、上記酸化物微粒子分散液( A)に対して投入し、その酸化物微粒子分散液( A)中のSiO2 :TiO2 分散液( B)中のTiO2 =1:1〜1:3となるように混合し、砥粒コート剤3を作成する。そして、塗布工程P13cにおいて、前記塗布工程P14aと同様に、20g程度の上記砥粒コート剤3にたとえば#80( 180μm) 程度のCBN砥粒40gを浸漬し、濾過することでコーティングする。そして、乾燥・焼成工程P14cにおいて、前記乾燥・焼成工程P15aと同様に、120℃で60分の乾燥を行った後、500℃の温度にて30分の大気中焼成を施すことで、酸化物微粒子であるTiO2 微粒子が固着し、そのTiO2 微粒子により膜状に構成された酸化物微粒子膜38により強固に被覆されたCBN砥粒が得られる。酸化物微粒子を単に分散させた分散液では、超砥粒の表面に固着できないが、上記酸化物微粒子( A)調整工程P11cで調整された酸化物微粒子分散液( A)により、密着性或いは固着強度を高めるためのアルコキシドのアルキル基が調整されていることから、超砥粒34の表面にチタニア微粒子が強固に固着される。
【0033】
図8に示す砥粒コート工程では、酸化物微粒子分散液( A)調整工程P11dにおいて、焼成後の組成割合がSiO2 75〜100重量%、ZrO2 0〜15重量%、B2 O3 0〜15重量%、Al2 O3 0〜5重量%であり、且つ、総酸化物重量濃度が1.0〜15重量%に調整された、金属アルコキシド縮合により得られた、酸化物微粒子分散液( A)が作成される。次いで、混合工程P12dにおいて、ジルコニアスラリー( B)を、必要に応じてイソプロピルアルコールと共に、上記酸化物微粒子分散液( A)に対して投入し、その酸化物微粒子分散液( A)中のSiO2 :ジルコニアスラリー( B)中のZrO2 =1:1〜1:3となるように混合し、砥粒コート剤4を作成する。そして、塗布工程P13dにおいて、前記塗布工程P14aと同様に、20g程度の上記砥粒コート剤4にたとえば#80( 180μm) 程度のCBN砥粒40gを浸漬し、濾過することでコーティングする。そして、乾燥・焼成工程P14dにおいて、前記乾燥・焼成工程P15aと同様に、120℃で60分の乾燥を行った後、500℃の温度にて30分の大気中焼成を施すことで、酸化物微粒子であるジルコニア微粒子が固着し、そのジルコニア微粒子により膜状に構成された酸化物微粒子膜38により強固に被覆されたCBN砥粒が得られる。酸化物微粒子を単位分散させた分散液では、超砥粒の表面に固着できないが、上記酸化物微粒子分散液( A)調整工程P11dで調整された酸化物微粒子分散液( A)により、密着性或いは固着強度を高めるためのアルコキシドのアルキル基が調整されていることから、超砥粒34の表面にジルコニア微粒子が強固に固着される。
【0034】
図4に戻って、原料調合工程P2では、ビトリファイド砥石片26の原料である砥粒として上記砥粒コート工程P1で得られた酸化物微粒子が固着されたCBN砥粒34と、ZrO2 −B2 O3 系、B2 O3 −Al2 O3 −SiO2 系、LiO−Al2 O3 −SiO2 系などのガラス質の無機結合剤(ビトリファイドボンド)と、成形時においてある程度の相互粘結力を発生させるためのデキストリンなどの成形用バインダー( 粘結剤或いは糊量)と、必要に応じて適宜混入される有機物あるいは無機バルーンなどの気孔形成剤とを、砥材層30および下地層28毎に予め設定された割合で秤量して、それぞれ混合する。なお、上記気孔形成剤は、必ずしも用いられなくてよく、本実施例では、たとえば砥材層30用には以下の表1に示す割合、下地層28用には以下の表2に示す割合の原料を用いる。
【0035】
[表1]
原材料名 割合
CBN砥粒 (#80/100) 50容量部
ビトリファイドボンド 20容量部
糊量 6容量部
【0036】
[表2]
原材料名 割合
球状ムライト 35容量部
電溶ムライト 14容量部
ビトリファイドボンド 20容量部
糊量 6容量部
【0037】
次いで、成形工程P3では、所定の成形金型の成形キャビティー内に上記混合された砥材層30用の原料および下地層28用の原料を順次充填し、加圧することにより、図2に示す形状の成形体を成形する。次いで、焼成工程P4では、上記成形体をたとえば1000℃以下の温度で5時間焼成することにより、たとえば長さが40mm、幅が10.4mm、厚みが7.4mmのビトリファイド砥石片26を作製する。上記焼成により、原料に含まれる粘結剤等の有機物が消失させられるとともに無機結合剤が熔融させられ、その後固まった無機結合剤によって砥粒が相互に結合される。これにより、作製されたビトリファイド砥石片26には、超砥粒が無機結合剤により結合された多数の連続気孔を有する多孔質のビトリファイド砥石組織が形成される。
【0038】
次いで、貼着工程P5では、予め作製された台金18の外周面24にビトリファイド砥石片26をたとえばエポキシ樹脂接着剤等を用いて隙間無なく貼着する。次いで、仕上げ工程P6では、上記ビトリファイド砥石片26が貼着された台金18すなわち超砥粒砥石10の表面をドレッシング工具や切削工具を用いて、その超砥粒砥石10の外径寸法Dやその外径寸法Dの真円度、および厚み寸法などを整える。なお、ビトリファイド砥石片26は、焼成工程P3を終えた時点において上記の削り代だけ大きい所定の寸法となるように作製する。以上の各工程を経ることによって、図1に示すような、超砥粒が無機結合剤により結合されたビトリファイド砥石片26が台金18の外周面24に貼着された超砥粒砥石10が製造される。
【0039】
図9は、上記製造された超砥粒砥石10の使用状態の一例を示す図であって、上記超砥粒砥石10が装着された円筒研削盤12により被削材(カムシャフト)104を研削している状態を要部を切り欠いて示した側面図である。図7において、円筒研削盤12は、基台であるベッド106と、そのベッド106の上に設けられ図示しない心押台の心押軸との間で楕円型カム形状の被削材104を挟持して紙面に垂直な軸心W2まわりに回転駆動する主軸を有する主軸台108と、サーボモータ110により一対のレール112に沿って軸心W2と平行な方向に移動可能且つサーボモータ114により一対のレール116に沿って軸心W2に直行する方向Yに移動可能なテーブル120と、そのテーブル120の上に設けられモータ122によりプーリー124、ベルト126、およびプーリー128を介して紙面に垂直な軸心W3まわりに回転駆動させられる回転主軸130を備える砥石台132と、図示しないポンプにより供給されるクーラント(兼研削液)が所定の圧力で噴射させられる一対のノズル134、136とを、備えている。超砥粒砥石10は、自身の回転軸心Wと上記軸心W3を一致させた状態で回転主軸130に取り付けられている。この円筒研削盤12による研削加工は、一方のノズル134から回転している超砥粒砥石10と被削材104との間の研削点Pにクーラントが供給されるとともに他方のノズル136から超砥粒砥石10の研削面20にクーラントが噴射されながら、砥石台132が被削材104に向かって方向Yに移動されることによって、回転する超砥粒砥石10の研削面20により被削材104が研削されるようになっている。この際、超砥粒砥石10には、ノズル136により研削点Pから超砥粒砥石10の回転方向Rと逆方向の離れた位置でクーラントが吹き付けられることにより研削面20が洗浄されるようになっている。
【0040】
以上のように構成された超砥粒砥石10のビトリファイド砥石片26の砥材層30は、前述のように、ジルコニア微粒子、シリカ微粒子、チタニア微粒子等の酸化物微粒子36から成る酸化物微粒子膜38が表面に強固に固着された超砥粒34がビトリファイドボンド32により結合されることにより構成されているので、その超砥粒34の表面において突き出す細かな酸化物微粒子36のアンカー効果と、上記酸化物微粒子膜38による超砥粒34の構成元素たとえば硼素Bのビトリファイドボンド32中への拡散の抑制効果とによって、超砥粒34の保持力が高められ、その超砥粒34の脱落が少なく超砥粒砥石10の耐久性が高められる。以下において、本出願人等が行った研削性能評価試験1、研削性能評価試験2、砥粒表面観察試験、砥粒濡れ性試験について、それぞれ説明する。
【0041】
[ 研削性能評価試験1]
表面に酸化物微粒子膜を固着させた超砥粒を用いたビトリファイド砥石( 実施例砥石)を以下に示す条件で製作し、その研削性能評価を以下に示す条件で、表面に酸化物微粒子膜を固着させない( 表面処理のない) 超砥粒を用いた以外は同様の条件で製作した比較例砥石と対比して行った。
【0042】
( 実施例砥石および比較例砥石の製作条件)
以下の材料を用いて前述の原料調合工程P2、成形工程P3、焼成工程P4と同様の条件を用いて、寸法205mmφ×13mmT×76.2mmH(3x)の実施例砥石および比較例砥石をそれぞれ製作した。
・砥石スペック 砥粒:CBN#80、集中度200、結合度M
・砥石構造 砥粒率:50%、ボンド率:18%、気孔率:32%
・結合剤 ZrO2 −B2 O3 系ビトリファイドボンド( 結晶化ガラス)・砥粒 酸化物微粒子が表面に固着されない未処理の砥粒
・砥粒 ジルコニア( ZrO2 )微粒子が表面に固着された砥粒
【0043】
( 実施例砥石および比較例砥石の研削試験条件)
以下の条件で研削を実行したときの消費電力値、ワークの面粗度、砥石磨耗量をそれぞれ測定し、それぞれから評価を行った。図10、図11、図12は、上記研削性能評価試験1の結果を示している。●印は酸化物微粒子が表面に固着されない未処理の砥粒を用いた比較例砥石の値を、■印はジルコニア( ZrO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石の値をそれぞれ示している。

・研削盤 日立製作所製の平面研削盤GHLB306−4
・砥石寸法 205mmφ×13mmT×76.2mmH(3x)
・被削材 工具鋼SKD11(100mm×10mm×T)
・切込み 片側5μm/1パス
・送り速度 20mm/min
・研削液 ノリタケクールSEC−700
・ドレス 50mmφシープナーを用いた2μm/切込
【0044】
図10は、比較例砥石と実施例砥石とを用いた研削において、被削材の研削量mmと、そのときに実施例砥石又は比較例砥石を回転駆動する研削盤のモータの消費電力値kwとの関係を、それぞれ示している。同じ研削量を得るために消費電力値が低い方が、切れ味が良いことを示す。図10によれば、ジルコニア( ZrO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石の方が、消費電力値が少なく、切れ味がよい。図11は、比較例砥石と実施例砥石とを用いた研削において、被削材の研削量mmと、そのときに実施例砥石又は比較例砥石により研削された被削材の面粗度Raとの関係を、それぞれ示している。図11によれば、ジルコニア( ZrO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石の方が、いずれの研削量においても良好な( 小さい) 面粗度Raが得られる。図12は、比較例砥石と実施例砥石とを用いた研削において、被削材の研削量mmと、そのときに用いられた実施例砥石又は比較例砥石の磨耗量μmとの関係を、それぞれ示している。図12によれば、ジルコニア( ZrO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石は、比較例砥石に比較して、初期磨耗量はやや多いものの、研削量が5mmを超えると少なくなってトータルの磨耗量が少なく、高い砥粒保持力が得られている。以上のことから、ジルコニア( ZrO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石によれば、切れ味が向上し、砥石磨耗も少なく、良好な研削性能が得られる。
【0045】
[ 研削性能評価試験2]
研削性能評価試験1と比較して、ビトリファイドボンドがとしてSiO2 −B2 O3 系ビトリファイドボンド( 結晶化なし)が用いられ、酸化物微粒子としてシリカ( SiO2 )微粒子が用いられている点は相違するが、他の条件は同様である。また、実施例砥石および比較例砥石の研削試験条件は、研削性能評価試験1と同様である。その研削試験条件で研削を実行したときの消費電力値、ワークの面粗度、砥石磨耗量をそれぞれ測定し、それぞれから評価を行った。図13、図14、図15は、上記研削性能評価試験2の結果を示している。◆印は酸化物微粒子が表面に固着されない未処理の砥粒を用いた比較例砥石の値を、▲印はシリカ( SiO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石の値をそれぞれ示している。
【0046】
( 実施例砥石および比較例砥石の製作条件)
以下の材料を用いて前述の原料調合工程P2、成形工程P3、焼成工程P4と同様の条件を用いて、寸法205mmφ×13mmT×76.2mmH(3x)の実施例砥石および比較例砥石をそれぞれ製作した。
・砥石スペック 砥粒:CBN#80、集中度200、結合度M
・砥石構造 砥粒率:50%、ボンド率:18%、気孔率:32%
・結合剤 SiO2 −B2 O3 系ビトリファイドボンド( 結晶化なし)
・砥粒 酸化物微粒子が表面に固着されない未処理の砥粒
・砥粒 シリカ( SiO2 )微粒子が表面に固着された砥粒
【0047】
図13は、比較例砥石と実施例砥石とを用いた研削において、被削材の研削量mmと、そのときに実施例砥石又は比較例砥石を回転駆動する研削盤のモータの消費電力値kwとの関係を、それぞれ示している。同じ研削量を得るために消費電力値が低い方が、切れ味が良いことを示す。図13によれば、シリカ( SiO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石の方が、消費電力値が少なく、切れ味がよい。図14は、比較例砥石と実施例砥石とを用いた研削において、被削材の研削量mmと、そのときに実施例砥石又は比較例砥石により研削された被削材の面粗度Raとの関係を、それぞれ示している。図14によれば、シリカ( SiO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石と比較例砥石とは、相互に同等の良好な( 小さい) 面粗度Raが得られる。図15は、比較例砥石と実施例砥石とを用いた研削において、被削材の研削量mmと、そのときに用いられた実施例砥石又は比較例砥石の磨耗量μmとの関係を、それぞれ示している。図15によれば、シリカ( SiO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石と比較例砥石とは、同等の磨耗量が得られている。以上のことから、シリカ( SiO2 )微粒子が表面に固着された砥粒を用いた実施例砥石によれば、切れ味が向上し、砥石としても良好な研削性能が得られる。
【0048】
[ 砥粒表面観察試験]
図6に示す工程と同様の工程を用いて、砥粒コート剤2を作成するとともに、その砥粒コート剤2を用いてCBN砥粒に表面にシリカ( SiO2 )微粒子を表面に固着させ、そのCBN砥粒の表面を60000倍で電子顕微鏡写真を撮影した。図16は、その表面状態を示している。また、図5に示す工程と同様の工程を用いて、砥粒コート剤1を作成するとともに、その砥粒コート剤1を用いて#80のダイヤモンド砥粒の表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させ、そのダイヤモンド砥粒の表面を60000倍で電子顕微鏡写真を撮影した。図17は、その表面状態を示している。図16では、CBN砥粒の表面に、比較的均一な大きさすなわち数十nmφ程度のシリカ( SiO2 )微粒子が緻密に固着されていることが観察される。図17では、ダイヤモンド砥粒の表面に、比較的均一な大きさすなわち数十nmφ程度のジルコニア( ZrO2 )微粒子が緻密に固着されていることが観察される。
【0049】
[ 砥粒濡れ性試験]
図5に示す工程と同様の工程を用いて、砥粒コート剤1を作成するとともに、その砥粒コート剤1を用いて#80のCBN砥粒の表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させることにより、表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させたCBN砥粒を用意するとともに、酸化物微粒子膜を表面に固着させない( 表面処理のない) CBN砥粒とを用意した。次いで、前記ZrO2 −B2 O3 系ビトリファイドボンドを40乃至60μm程度の厚みに塗布した基板を用意し、その基板の上に上記表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させたCBN砥粒と、酸化物微粒子膜を表面に固着させない( 表面処理のない) CBN砥粒とを、所定の密度でそれぞれ載置した状態で前記焼成工程P4と同様の条件で焼成を行った後、表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させたCBN砥粒と溶融したビトリファイドボンドとの間の濡れ状態と、酸化物微粒子膜を表面に固着させないCBN砥粒と溶融したビトリファイドボンドとの間の濡れ状態と、それぞれ観察した。図18は、表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させたCBN砥粒と溶融したビトリファイドボンドとの間の濡れ状態を示す、200倍の電子顕微鏡写真を示し、図19は、酸化物微粒子膜を表面に固着させないCBN砥粒と溶融したビトリファイドボンドとの間の濡れ状態を示す、200倍の電子顕微鏡写真を示している。図19に示されるように、酸化物微粒子膜を表面に固着させないCBN砥粒からはB元素がビトリファイドボンド中へ拡散し、B元素の高濃度領域ではガラスの溶融が促進されるので、CBN砥粒がほぼ埋没した状態が観察されるのに対し、図18に示されるように、表面にジルコニア( ZrO2 )微粒子を表面に固着させたCBN砥粒では、その多数のジルコニア微粒子により形成された酸化物微粒子膜が形成されて上記B元素の拡散が抑制されるので、そのCBN砥粒の表面とビトリファイドボンドとの間の濡れが観察されない。
【0050】
上述のように、本実施例の超砥粒砥石10によれば、砥粒コート工程P1において、超砥粒34に酸化物微粒子分散液が塗布された状態で乾燥および焼成を行うことで複数の酸化物微粒子36が表面に固着された超砥粒34が得られ、成形工程P3においてその超砥粒34およびビトリファイドボンドを用いて成形され、焼成工程P4において焼成されることにより、超砥粒34はその表面に固着された酸化物微粒子36を介してビトリファイドボンド結合剤32に結合されているので、その超砥粒34の表面に固着された酸化物微粒子36によるアンカー効果によって、超砥粒34の脱落が少なく耐久性の高い超砥粒砥石10が得られる。
【0051】
また、本実施例の超砥粒砥石10によれば、超砥粒34の表面に固着された酸化物微粒子36は、一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表されるものであることから、このような金属酸化物微粒子は化学的或いは熱的にも安定であり、高負荷研削においても超砥粒34の脱落が好適に防止される。
【0052】
また、本実施例の超砥粒砥石10によれば、超砥粒34の表面に固着された酸化物微粒子36は、100nm以下の平均粒子径を有し、その酸化物微粒子36により形成される酸化物微粒子膜38は50乃至200nmの範囲内の膜厚を有するものであることから、超砥粒34の表面から突き出た100nm以下の平均粒子径の酸化物微粒子36によるアンカー効果によって超砥粒34の耐脱落性が高められ、50乃至200nmの範囲内の膜厚の酸化物微粒子38によって超砥粒34の組成元素の結合剤32への拡散、たとえばB元素のビトリファイドボンド中への拡散が抑制されて、超砥粒34と結合剤32との間の層間剥離の発生が好適に防止される。
【0053】
また、本実施例の超砥粒砥石10によれば、結合剤32はビトリファイドボンドであることから、超砥粒34の表面からビトリファイドボンド中へ突き出た複数の酸化物微粒子36によるアンカー効果によって、超砥粒34の脱落が少なく耐脱落性の高い超砥粒砥石10が得られる。
【0054】
また、本実施例の超砥粒砥石10によれば、結合剤32としてのビトリファイドボンドは、酸化物微粒子36を構成するものと同様の酸化物を主成分として含むものであることから、超砥粒34の表面に固着された酸化物粒子36とビトリファイドボンドとの間において高い結合力が得られる。たとえば、酸化物粒子36がシリカ( SiO2 )微粒子であれば、結合剤32としてSiO2 −B2 O3 系ビトリファイドボンドが用いられ、酸化物粒子36がジルコニア( ZrO2 )微粒子であれば、結合剤32としてZrO2 −B2 O3 系ビトリファイドボンドが用いられる。
【0055】
また、本実施例の砥粒コート剤1、2、3、4によれば、超砥粒砥石10に用いられる超砥粒34の表面に酸化物微粒子36を固着させるためにその砥粒34の表面に予め塗布され、乾燥および焼成が施されると、最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子36が得られる。
【0056】
また、本実施例の超砥粒砥石10に用いられる、表面に酸化物微粒子36が固着された超砥粒34の製造方法によれば、最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子36となる酸化物微粒子分散液( 砥粒コート剤1、2、3、4) を前記超砥粒34に塗布し、その酸化物微粒子分散液が塗布された超砥粒34を乾燥し且つ焼成することで、表面に酸化物微粒子36が固着された超砥粒34が得られる。
【0057】
また、本実施例の超砥粒砥石10に用いられる、超砥粒34の表面に酸化物微粒子36を固着させるための砥粒コート剤の製造方法によれば、一般式M(OR)n(MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素、Rはアルキル基) で表される、金属アルコキシドを出発原料とし、加水分解法で得られた縮重合物若しくは酸化物微粒子を含む酸化物微粒子分散液を、単独で又は複数混合することにより、砥粒コート剤1、2、3、4が得られる。
【0058】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0059】
たとえば、前述の実施例において、超砥粒34の表面に固着された酸化物微粒子膜38を構成する酸化物微粒子36として、ジルコニア微粒子、シリカ微粒子、チタニア微粒子が用いられていたが、アルミナ微粒子などの他の金属酸化物微粒子であってもよい。
【0060】
また、前述の実施例において、超砥粒34としてCBN砥粒が用いられていたが、ダイヤモンド砥粒であっても差し支えない。また、結合剤32としてビトリファイドボンドが用いられていたが、樹脂ボンドであってもよい。樹脂ボンドであっても、超砥粒34の表面に固着された酸化物微粒子36のアンカー効果によって、同様に超砥粒34の保持力が高められる。
【0061】
また、前述の実施例において、超砥粒砥石10の台金18に貼り着けられたビトリファイド砥石片26の砥材層30が、表面に酸化物微粒子36が固着された超砥粒34が結合剤32により結合されたビトリファイド超砥粒砥石に対応していたが、下地層28を備えないものや、砥材層30が円周方向に連続して備えるものや、全体としてカップ状を成すものなど、他の形式のビトリファイド超砥粒砥石であってもよい。また、上記台金18は、金属たとえば炭素鋼、アルミニウム合金などから成り、この構成は高速回転にも耐え得る強度を備えるために好ましいが、これに限られず、たとえば合成樹脂、繊維強化樹脂、あるいはビトリファイド砥石から成るものであってもよい。
【0062】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施例の製造方法によって製造された超砥粒砥石を示す正面図である。
【図2】図1のビトリファイド砥石片を示した斜視図である。
【図3】図1の超砥粒砥石を構成するビトリファイド砥石片の砥材層30内の構成を拡大して説明する模式図である。
【図4】超砥粒砥石の製造方法の要部を説明する工程図である。
【図5】図4の砥粒コート工程を詳しく説明する工程の一例を示す図である。
【図6】図4の砥粒コート工程を詳しく説明する工程の他の例を示す図である。
【図7】図4の砥粒コート工程を詳しく説明する工程の他の例を示す図である。
【図8】図4の砥粒コート工程を詳しく説明する工程の他の例を示す図である。
【図9】図1のビトリファイド超砥粒砥石ホイールの使用状態の一例を示す図であって、超砥粒砥石が装着された円筒研削盤により被削材(カムシャフト)を研削している状態を要部を切り欠いて示した側面図である。
【図10】図4と同様の工程を経て得られた、ジルコニア微粒子が固着された超砥粒を含む超砥粒砥石の切れ味を評価するために測定された、研削量に対する消費電力値を示す図である。
【図11】図4と同様の工程を経て得られた、ジルコニア微粒子が固着された超砥粒を含む超砥粒砥石の研削面を評価するために測定された、研削量に対する面粗度Raを示す図である。
【図12】図4と同様の工程を経て得られた、ジルコニア微粒子が固着された超砥粒を含む超砥粒砥石の耐久性を評価するために測定された、研削量に対する砥石磨耗量を示す図である。
【図13】図4と同様の工程を経て得られた、シリカ微粒子が固着された超砥粒を含む超砥粒砥石の切れ味を評価するために測定された、研削量に対する消費電力値を示す図である。
【図14】図4と同様の工程を経て得られた、シリカ微粒子が固着された超砥粒を含む超砥粒砥石の研削面を評価するために測定された、研削量に対する面粗度Raを示す図である。
【図15】図4と同様の工程を経て得られた、シリカ微粒子が固着された超砥粒を含む超砥粒砥石の耐久性を評価するために測定された、研削量に対する砥石磨耗量を示す図である。
【図16】図6と同様の工程を経て得られた、CBN砥粒の表面に固着されたシリカ微粒子を示すために撮影された、60000倍の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図17】図5と同様の工程を経て得られた、ダイヤモンド砥粒の表面に固着されたジルコニア微粒子を示すために撮影された、60000倍の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図18】図5と同様の工程を経て得られた、ジルコニア微粒子が固着されたCBN砥粒のビトリファイドボンドに対する濡れ性を示すために撮影された、200倍の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図19】図18と対比するために、酸化物微粒子が固着されていないCBN砥粒のビトリファイドボンドに対する濡れ性を示すために撮影された、200倍の電子顕微鏡写真を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10:超砥粒砥石
26:ビトリファイド砥石片
30:砥材層( ビトリファイド超砥粒砥石)
32:結合剤( ビトリファイドボンド)
34:超砥粒( CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒)
36:酸化物微粒子
38:酸化物微粒子膜
40:気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超砥粒を結合剤を用いて結合させた超砥粒砥石であって、
前記超砥粒は、酸化物微粒子分散液が塗布された状態で乾燥および焼成を行うことで酸化物微粒子が表面に固着され、該酸化物微粒子を介して前記結合剤により結合されていることを特徴とする超砥粒砥石。
【請求項2】
前記酸化物微粒子は、一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表されるものである請求項1の超砥粒砥石。
【請求項3】
前記酸化物微粒子は100nm以下の平均粒子径を有し、該酸化物微粒子により前記超砥粒の表面に形成される酸化物微粒子膜は50乃至200nmの範囲内の膜厚を有するものである請求項1又は2の超砥粒砥石。
【請求項4】
前記結合剤はビトリファイドボンドである請求項1乃至3のいずれか1の超砥粒砥石。
【請求項5】
前記ビトリファイドボンドは、前記酸化物微粒子を構成するものと同様の酸化物を主成分として含むものである請求項4の超砥粒砥石。
【請求項6】
ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させるために該砥粒の表面に予め塗布される砥粒コート剤であって、
最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子となる砥粒コート剤。
【請求項7】
ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる、表面に酸化物微粒子が固着された超砥粒の製造方法であって、
最終組成が一般式MO( MはSi、Zr、Ti、Al、Bから選ばれた少なくとも1つの元素、Oは酸素) にて表される酸化物微粒子となる酸化物微粒子分散液を前記超砥粒に塗布し、該酸化物微粒子分散液が塗布された超砥粒を乾燥および焼成することを特徴とするビトリファイド砥石用超砥粒の製造方法。
【請求項8】
ビトリファイド超砥粒砥石に用いられる超砥粒の表面に酸化物微粒子を固着させるための砥粒コート剤の製造方法であって、
酸化物微粒子分散液を、単独で又は複数混合して得ることを特徴とする砥粒コート剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−12545(P2010−12545A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174005(P2008−174005)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000111410)株式会社ノリタケスーパーアブレーシブ (73)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【出願人】(391003598)富士化学株式会社 (40)
【Fターム(参考)】