超電導マグネット用の励磁電源
【課題】異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすとともに、従来よりも確実に出力を短絡させることができる回路構成を備えた超電導マグネット用の励磁電源を提供すること。
【解決手段】超電導コイル3を具備してなる超電導マグネット2を励磁する励磁電源102である。励磁電源102は、励磁電源の瞬停異常を検出した際に異常信号を出力する瞬停検出回路30と、超電導コイル3に並列配置され瞬停検出回路30からの異常信号が入力されることで超電導コイル3への出力の両端を短絡させるクランパ6と、超電導コイル3およびクランパ6に並列配置され瞬停検出回路30からの異常信号が入力されることで超電導コイル3への出力の両端を短絡させる半導体スイッチ素子20と、を備えている。
【解決手段】超電導コイル3を具備してなる超電導マグネット2を励磁する励磁電源102である。励磁電源102は、励磁電源の瞬停異常を検出した際に異常信号を出力する瞬停検出回路30と、超電導コイル3に並列配置され瞬停検出回路30からの異常信号が入力されることで超電導コイル3への出力の両端を短絡させるクランパ6と、超電導コイル3およびクランパ6に並列配置され瞬停検出回路30からの異常信号が入力されることで超電導コイル3への出力の両端を短絡させる半導体スイッチ素子20と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネット用の励磁電源に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導マグネット用励磁電源の保護回路は、超電導コイルへの出力を遮断するものと、超電導コイルへの出力を短絡するものとに大別される。励磁電源または超電導マグネットの何らかの異常が検出された場合、相互の接続を断つ(遮断する)ことは無難な保護方法である。しかしながら、大きな電流が流れているときに相互の関係(接続)を断つ(遮断する)のは危険である。ここで、特許文献1に記載された技術では、遮断器に対して並列にコンデンサを配置するなどの工夫をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−177648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それでもなお、通電中の接点を遮断するような保護方法は、大電流の制御には不向きである。大電流の制御における保護方法では、一般に、励磁電源から超電導コイルへの出力の両端を短絡させて当該励磁電源と超電導コイルとを実質的に切り離す方法が採用されている。
【0005】
ここで、超電導コイルへの出力の両端を短絡させる方法には以下のような改善すべき点がある。クエンチなどの誤検知(超電導コイルが実際にはクエンチしていないのにクエンチしているとの信号が出力されること)、一次側電源の停電などが発生した場合、励磁電源の出力の両端がいかに早く短絡するかが重要である。短絡のタイミングが遅いと、電流の急変で超電導コイルがクエンチしてしまうことがある。すなわち、クエンチなどの誤検知、一次側電源の停電などが発生した場合、超電導コイルへの出力の両端(励磁電源の出力両端)をできるだけ早く短絡させることが望ましい。
【0006】
出力を短絡させる手段としては、従来、機械式スイッチが用いられている。一般的な機械式スイッチは、異常信号が入力されてから少し時間が経過した後に作動する。作動速度の速い機械式スイッチもあるが、この作動速度の速い機械式スイッチはチャタリングの問題があり不安定さを有する。また、超電導マグネットまたは励磁電源に異常が検出された場合、超電導コイルへの出力を確実に短絡させたいが、従来は、機械式スイッチで短絡させるという一重の対策であった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすとともに、従来よりも確実に出力を短絡させることができる回路構成を備えた超電導マグネット用の励磁電源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、前記超電導マグネットまたは前記励磁電源の異常を検出した際に異常信号を出力する異常検出回路と、前記超電導コイルに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる機械式スイッチと、前記超電導コイルおよび前記機械式スイッチに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる電気式スイッチと、を備えている超電導マグネット用の励磁電源を提供する。
【0009】
電気式スイッチは瞬時に動作するので、超電導コイルへの出力の両端を短絡させる手段として機械式スイッチとともに当該電気式スイッチを用いることで、異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすことができる。また、機械式スイッチとともに電気式スイッチを用いることで、二重の保護対策となることによるシステムのロバスト性が向上する。すなわち、従来よりも確実に出力を短絡させることができる。
【0010】
また本発明において、前記異常検出回路は、前記超電導コイルへの出力を制御する制御回路に設けられ、前記機械式スイッチに異常信号を出力する第1異常検出回路と、前記第1異常検出回路とは別に設けられ、前記電気式スイッチに異常信号を出力する第2異常検出回路と、を備えているのもよい。この構成によると、2系統の異常検出回路となりロバスト性がより向上する。
【0011】
さらに本発明において、前記第2異常検出回路は、前記電気式スイッチに前記制御回路を介して異常信号を出力するように回路構成されているのもよい。
【0012】
この構成によると、機械式スイッチへの信号系統と電気式スイッチへの信号系統とを一部共通化することが可能となり簡潔な回路構成となる。
【0013】
また本発明において、前記第2異常検出回路は、さらに、前記電気式スイッチに異常信号を直接出力するように回路構成されているのもよい。
【0014】
この構成によると、電気式スイッチへの信号系統が二重になるためシステムのロバスト性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超電導コイルへの出力の両端を短絡させる電気式スイッチを機械式スイッチに並列配置することにより、異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすとともに、従来よりも確実に出力を短絡させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図2】図1に示すクランパの詳細構成図である。
【図3】図1に示す半導体スイッチの詳細構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図5】図4に示す瞬停検知回路の詳細構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図7】図6に示す瞬停検知回路の詳細構成図である。
【図8】図6に示す半導体スイッチの詳細構成図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図10】図5に示した瞬停検知回路の変形例を示す図である。
【図11】図3に示した半導体スイッチの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。まず、図1〜3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る励磁電源1について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
(励磁電源の構成)
図1に示すように、励磁電源1は、超電導コイル3、保護ダイオード4,5を具備してなる超電導マグネット2を励磁するための電源である。超電導コイル3は、超電導線材が巻回されてなるものである。保護ダイオード4,5は、超電導コイル3に並列配置される。
【0019】
励磁電源1は、直流電源11、トランジスタ10、制御回路13、クランパ6(機械式スイッチ)、および半導体スイッチ素子20(電気式スイッチ)を備えている。
【0020】
(直流電源)
直流電源11は、1次側電源(交流電源)に接続された変圧器(不図示)や、変圧器の交流電力を整流し平滑した直流電流を超電導コイル3に供給するトランジスタ回路(不図示)などにより構成される。なお、直流電源11では、市販のスイッチングレギュレータなどを用いてもよい。
【0021】
(トランジスタ)
トランジスタ10は、一般的なバイポーラトランジスタを用いている。なお、電界効果トランジスタ(FET)、IGBT、MOSFETなどのパワー素子を用いてもよい。
【0022】
(制御回路)
制御回路13は、超電導コイル3への出力(直流電源11の出力)を制御する回路である。制御回路13は、直流電源11の出力電圧をコントロールし、出力電圧をマイナスまで制御できる。なお、定電圧型の制御回路13ではなく、定電流型の制御回路であってもよい。定電流型の制御回路は、超電導コイル3に流れる電流(出力電流)が一定の電流値になるように電流検出器(不図示)で検出した電流を制御する回路である。
【0023】
また、励磁電源の制御方式には様々な方式があり、図1に示したトランジスタドロッパー方式の他に、ブリッジ型、ブリッジ型でPWM制御するもの、などがある。
【0024】
(機械式スイッチ)
機械式スイッチであるクランパ6が超電導コイル3に並列接続されている。クランパ6は、電気信号経路14を介して入力された異常信号により超電導コイル3への出力の両端を短絡させるスイッチである。なお、前記した制御回路13には、超電導マグネット2(超電導コイル3)または励磁電源1の異常を検出した際に電気信号経路14に異常信号を出力する異常検出回路が組み込まれている。この異常検出回路は、公知の回路構成であって且つ容易に実現できる回路構成であるためその詳細の説明を省略することとする。
【0025】
図2に示したように、クランパ6は、接点6a、コイル6b、およびトランジスタ6cを具備してなるリレーでありB接点で構成されている。B接点とは、電気信号Lowで接点6aが閉じ、電気信号Highで接点6aが開くように構成された電気信号Lowで動作する接点である。通常時、電気信号経路14から電気信号Highが入力され、トランジスタ6cがONしていることでコイル6bが励磁されて電磁力により接点6aが開いた状態となっている。一方、電気信号経路14から異常信号(電気信号Low)が入力されると、トランジスタ6cがOFFしてコイル6bが非励磁状態となりばね力により接点6aが閉じる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。
【0026】
なお、クランパ6は、本実施形態のようにB接点で構成されてもよいし、A接点で構成されてもよい。A接点とは、電気信号Lowで接点6aが開き、電気信号Highで接点6aが閉じるように構成された電気信号Highで動作する接点である。クランパ6をA接点で構成するか、B接点で構成するか、の選択については、いずれが安全サイドと考えるか、回路構成上の事情、などで変わってくる。本実施形態は、配線の断線などがあるとコイル6bが非励磁状態となって接点6aが閉じることを安全と考えた例である。
【0027】
(電気式スイッチ)
電気式スイッチである半導体スイッチ素子20が超電導コイル3およびクランパ6に並列接続されている。半導体スイッチ素子20は、電気信号経路14から分岐する電気信号経路27を介して入力された異常信号により超電導コイル3への出力の両端を短絡させるスイッチである。
【0028】
図3に示したように、半導体スイッチ素子20は、フォトカプラ24、NチャネルパワーMOSFET21,22、およびコンデンサ25を具備してなるリレーである。なお、MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略である。半導体のうちNPN構造のものをNチャネルと呼ぶ。コンデンサ25は電界コンデンサである。
【0029】
NチャネルパワーMOSFET21に関しては、そのドレインDをソースSに対してプラス側に使用している(通常の使い方)。これに対して、NチャネルパワーMOSFET22に関しては、通常とは逆に、すなわちドレインDをソースSに対してマイナス側に使用している。この使用方法は、NチャネルパワーMOSFETが、ドレインDとソースSとを逆にしても電流を流せることを利用したものである。NチャネルパワーMOSFETは、ゲートGがソースSに対して+10VあればドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼゼロに、ゲートGがソースSに対して0VとなればドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼ無限大になるという性質がある。
【0030】
フォトカプラ24に電気信号経路27から異常信号が入力されると、その内部のトランジスタがONして抵抗23に電圧(例えば10V)が発生し、NチャネルパワーMOSFET21,22がONして両FETのドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼゼロになる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。
【0031】
なお、半導体スイッチ素子20において、NチャネルパワーMOSFET22を設けず、NチャネルパワーMOSFET21のみ設けた場合、構造的に内蔵するボディダイオード(寄生ダイオード)によりマイナス方向(図3において下から上への方向)は常時通となる。本実施形態では、双方向に同様に機能するように2つのNチャネルパワーMOSFET21,22を直列配置している。コンデンサ25は十分大きな容量のものを使用し、停電後にしばらくの時間、電圧が残るようにしている。なお、超電導コイル3を流れる電流が大きい場合には、NチャネルパワーMOSFET21,22を複数並列に配置して電流容量を確保する。半導体スイッチ素子20は、機械式スイッチと併用し、また、動作時間を限定することで、その放熱などを考慮する必要がなく、且つ小型の基板で形成可能である。
【0032】
また、フォトカプラ24、NチャネルパワーMOSFET21,22などを用いた半導体スイッチ素子20ではなく、PチャネルパワーMOSFETとして制御の極性を変えてもよく、さらには、他の素子を用いた電気式スイッチとしてもよい。
【0033】
(異常検出時の各スイッチの動き)
超電導マグネット2の異常検出とは、超電導コイル3にクエンチが発生してそれを検出した場合である。なお、クエンチの検出は検出感度を上げると誤検知をするが、クエンチ検出時は誤検知であるかどうか区別できないのでいずれも同じ処置となる。励磁電源1の異常検出とは、直流電源11、制御回路13などの異常を検出した場合、一次側電源の停電(特に瞬停、瞬低)を検出した場合、のいずれも含む。なお、一次側電源とは、励磁電源1を構成する直流電源11に電力を供給する(給電する)電源のことをいう。
【0034】
ここでは、クエンチを検知した場合を例にとり、異常検出時の各スイッチの動きを説明する。超電導マグネット2の異常(実際にはクエンチを誤検知)が検出されると、制御回路13により超電導コイル3への出力電流がゼロにされるとともに、クランパ6および半導体スイッチ素子20へ異常信号が出力される。クランパ6に異常信号(電気信号Low)が入力されると、トランジスタ6cがOFFしてコイル6bが非励磁状態となりばね力により接点6aが閉じる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。一方、半導体スイッチ素子20に異常信号が入力されると、抵抗23に電圧が発生し、NチャネルパワーMOSFET21,22がONして両FETのドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼゼロになる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。
【0035】
ここで、クランパ6の接点6aはばね力により閉じるので、クランパ6に異常信号が入力されてから接点6aが閉じるまでに少しの時間を要する。これに対して半導体スイッチ素子20は瞬時に動作する。超電導コイル3への出力の両端を短絡させる手段として機械式のクランパ6とともに半導体スイッチ素子20を用いることで、異常の検出からクランパ6の作動により出力が短絡する(接点6aが閉じる)までのデッドタイムをなくすことができる。また、機械式のクランパ6とともに半導体スイッチ素子20を用いることで、二重の保護対策となることによるシステムのロバスト性が向上する。すなわち、機械式のクランパ6のみを使用していた従来よりも確実に出力を短絡させることができる。
【0036】
なお、超電導コイル3への出力を短絡させた後は、実際にクエンチが発生している場合は、クエンチ状態が納まるまでそのまま待つ。一方、クエンチを誤検知したことが明らかであれば、制御回路13により直流電源11の出力電流を制御して、直流電源11の出力電流と超電導コイル3を流れる電流とを一致させてから、クランパ6の接点6aを開く(クランパ6を開く)とともにNチャネルパワーMOSFET21,22のドレインDとソースSとの間の抵抗をほぼ無限大に戻す(半導体スイッチ素子20を開く)。
【0037】
(第2実施形態)
図4,5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る励磁電源102について説明する。第1実施形態との相違は、本第2実施形態では、外付けの瞬停検出回路30を励磁電源に付加していることである。制御回路13に組み込まれクランパ6に異常信号を出力する異常検出回路が本発明における第1異常検出回路に相当し、瞬停検出回路30が本発明における第2異常検出回路に相当する。図4に示したように、半導体スイッチ素子20に制御回路13を介して瞬停検出回路30が異常信号を出力するように励磁電源102は回路構成されている。瞬停検出回路30から制御回路13へは電気信号経路35を経由して異常信号が出力される。
【0038】
(瞬停検出回路)
図5に示したように、瞬停検出回路30は、トランス31(変圧器)、フォトカプラ33、およびタイマIC34を具備してなる電気回路である。AC200Vをトランス31で降圧してフォトカプラ33に入れると、半波整流された波形パルス信号がフォトカプラ33により作られる。この波形パルス信号がタイマIC34のリセット端子に入力される。タイマIC34の時間設定を例えば20msecとしたとする。停電が起こりタイマIC34に波形パルス信号が入らなくなって20msecが経過すると、瞬停検出回路30から異常信号が電気信号経路35へ出力される。
【0039】
なお、交流入力型のフォトカプラを使用すれば全波整流された波形パルス信号となり、より正確な異常(停電)検出を行うことができる。また、トランス31を抵抗器、コンデンサに置き換えた回路としてもよい。
【0040】
本実施形態の励磁電源102によると、2つの異常検出回路を励磁電源に設けることで、2系統の異常検出回路となりロバスト性がより向上する。また、制御回路13を介して瞬停検出回路30が半導体スイッチ素子20に異常信号を出力するように回路構成されているので、クランパ6への信号系統と半導体スイッチ素子20への信号系統とを一部共通化でき簡潔な回路構成とすることができる。
【0041】
なお、外付けの第2異常検出回路としては、停電を検知する本実施形態のような瞬停検出回路30ではなく、超電導コイル3の電圧が大きくなるとメータスイッチがONするような過電圧検出回路であってもよいし、超電導コイル3のクエンチを検出するクエンチ検出回路であってもよい。
【0042】
(第3実施形態)
図6〜8を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る励磁電源103について説明する。第2実施形態との相違は、本第3実施形態では、瞬停検出回路30Aから制御回路13へ異常信号を出力するとともに、瞬停検出回路30Aから半導体スイッチ素子20Aへ異常信号を直接出力していることである。瞬停検出回路30Aから制御回路13へは電気信号経路35aを経由して異常信号が出力され、瞬停検出回路30Aから半導体スイッチ素子20Aへは電気信号経路35bを経由して異常信号が出力される。
【0043】
(瞬停検出回路)
図7に示したように、瞬停検出回路30Aは、2系統の異常信号を出力することができる回路であって、トランス31(変圧器)、フォトカプラ33,37,38、およびタイマIC34を具備してなる電気回路である。信号を異常時Highとするか正常時Highとするかについては、タイマIC34の出力の論理で決まり、いずれでも選定できるタイマICが多い。なお、瞬停検出回路30Aからさらにクランパ6へ異常信号を直接出力してもよい。
【0044】
(電気式スイッチ)
半導体スイッチ素子20Aは、電気信号経路35a、14、27からの異常信号、または電気信号経路35bからの異常信号により動作するスイッチであり、図8にその回路例を示している。フォトカプラ24またはフォトカプラ28がOFFしていると、NチャネルパワーMOSFET21,22のゲートGがソースSに対して例えば+10Vになり、NチャネルパワーMOSFET21,22がONして導通状態(短絡状態)になる。両方のフォトカプラ24,28がONであれば抵抗器29の両端に電圧が発生し、NチャネルパワーMOSFET21,22のゲートGがソースSに対して例えば+1V(ほぼゼロ)になり、NチャネルパワーMOSFET21,22がOFFして非導通状態(遮断状態)になる。なお、図8に示した回路構成は、半導体スイッチ素子20Aに入力される信号が、正常時にHigh、異常時にLowとした場合の例である。当然ながら、正常時にLow、異常時にHighという回路構成としてもよい。
【0045】
本実施形態の励磁電源103によると、制御回路13を経由させないで半導体スイッチ素子20Aに異常信号を出力する、すなわち半導体スイッチ素子20Aに異常信号を直接出力する、ための回路を加えたことで作動がより速くなる。また、半導体スイッチ素子20Aへの信号系統が二重になるため、いずれかの信号系統が故障しても作動するというロバスト性が得られる。
【0046】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係る励磁電源104を示す構成図である。図9に示したように、瞬停検出回路30Aからのみ半導体スイッチ素子20に異常信号を入力してもよい。なお、この場合も、瞬停検出回路30Aからの異常信号を制御回路13に入力することが好ましい。一次側電源の停電(特に瞬停、瞬低)信号を瞬停検出回路30Aからクランパ6に速く入力できるからである。
【0047】
(瞬停検知回路の変形例)
図5に示した瞬停検出回路30は、停電状態が解除されると異常信号も自動的に解除される回路であるが、停電状態が解除されても異常信号を保持して異常信号が勝手に解除されない回路とすることが有効な場合もある。図10に示した瞬停検出回路30Bは、停電状態が解除されても異常信号を保持して異常信号が勝手に解除されない構成の回路である。
【0048】
瞬停検出回路30Bによると、接点37cから出力される異常信号は、停電状態が解除されて異常信号がなくなっても(正常信号に戻っても)、コイル37aと接点37bとで自己保持され、外部の接点41で解除されるまで保持される。接点37cについては、A接点とするかB接点とするかが制御の論理により決定される。
【0049】
(半導体スイッチの変形例)
図11は、図3に示した半導体スイッチ素子20の変形例を示す図である。クエンチを誤検知して出力を短絡させた後や、停電(特に瞬停、瞬低)により出力を短絡させた後に、クランパ6および半導体スイッチ素子20を開く制御に関して、クランパ6および半導体スイッチ素子20のうちのどちらの回路から開くかについては、クランパ6から開く場合と、半導体スイッチ素子20から開く場合とで、それぞれに効果がある。
【0050】
図11に示した半導体スイッチ素子20Bは、当該半導体スイッチ素子20Bが開くタイミングをコントロールできるようにしたものである。NチャネルパワーMOSFET21,22の導通を制御するための制御入力信号が入力されるフォトカプラ28を付加することで半導体スイッチ素子20Bが開くタイミングをコントロールできるようにしている。なお、クランパ6を開いた後に半導体スイッチ素子20Bを開く制御とすれば、クランパ6のチャタリングを回避できる効果がある。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0052】
1、102、103、104:励磁電源
2:超電導マグネット
3:超電導コイル
6:クランパ(機械式スイッチ)
10:トランジスタ
11:直流電源
13:制御回路
20:半導体スイッチ素子(電気式スイッチ)
30:瞬停検出回路(異常検出回路)
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネット用の励磁電源に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導マグネット用励磁電源の保護回路は、超電導コイルへの出力を遮断するものと、超電導コイルへの出力を短絡するものとに大別される。励磁電源または超電導マグネットの何らかの異常が検出された場合、相互の接続を断つ(遮断する)ことは無難な保護方法である。しかしながら、大きな電流が流れているときに相互の関係(接続)を断つ(遮断する)のは危険である。ここで、特許文献1に記載された技術では、遮断器に対して並列にコンデンサを配置するなどの工夫をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−177648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それでもなお、通電中の接点を遮断するような保護方法は、大電流の制御には不向きである。大電流の制御における保護方法では、一般に、励磁電源から超電導コイルへの出力の両端を短絡させて当該励磁電源と超電導コイルとを実質的に切り離す方法が採用されている。
【0005】
ここで、超電導コイルへの出力の両端を短絡させる方法には以下のような改善すべき点がある。クエンチなどの誤検知(超電導コイルが実際にはクエンチしていないのにクエンチしているとの信号が出力されること)、一次側電源の停電などが発生した場合、励磁電源の出力の両端がいかに早く短絡するかが重要である。短絡のタイミングが遅いと、電流の急変で超電導コイルがクエンチしてしまうことがある。すなわち、クエンチなどの誤検知、一次側電源の停電などが発生した場合、超電導コイルへの出力の両端(励磁電源の出力両端)をできるだけ早く短絡させることが望ましい。
【0006】
出力を短絡させる手段としては、従来、機械式スイッチが用いられている。一般的な機械式スイッチは、異常信号が入力されてから少し時間が経過した後に作動する。作動速度の速い機械式スイッチもあるが、この作動速度の速い機械式スイッチはチャタリングの問題があり不安定さを有する。また、超電導マグネットまたは励磁電源に異常が検出された場合、超電導コイルへの出力を確実に短絡させたいが、従来は、機械式スイッチで短絡させるという一重の対策であった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすとともに、従来よりも確実に出力を短絡させることができる回路構成を備えた超電導マグネット用の励磁電源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、前記超電導マグネットまたは前記励磁電源の異常を検出した際に異常信号を出力する異常検出回路と、前記超電導コイルに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる機械式スイッチと、前記超電導コイルおよび前記機械式スイッチに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる電気式スイッチと、を備えている超電導マグネット用の励磁電源を提供する。
【0009】
電気式スイッチは瞬時に動作するので、超電導コイルへの出力の両端を短絡させる手段として機械式スイッチとともに当該電気式スイッチを用いることで、異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすことができる。また、機械式スイッチとともに電気式スイッチを用いることで、二重の保護対策となることによるシステムのロバスト性が向上する。すなわち、従来よりも確実に出力を短絡させることができる。
【0010】
また本発明において、前記異常検出回路は、前記超電導コイルへの出力を制御する制御回路に設けられ、前記機械式スイッチに異常信号を出力する第1異常検出回路と、前記第1異常検出回路とは別に設けられ、前記電気式スイッチに異常信号を出力する第2異常検出回路と、を備えているのもよい。この構成によると、2系統の異常検出回路となりロバスト性がより向上する。
【0011】
さらに本発明において、前記第2異常検出回路は、前記電気式スイッチに前記制御回路を介して異常信号を出力するように回路構成されているのもよい。
【0012】
この構成によると、機械式スイッチへの信号系統と電気式スイッチへの信号系統とを一部共通化することが可能となり簡潔な回路構成となる。
【0013】
また本発明において、前記第2異常検出回路は、さらに、前記電気式スイッチに異常信号を直接出力するように回路構成されているのもよい。
【0014】
この構成によると、電気式スイッチへの信号系統が二重になるためシステムのロバスト性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超電導コイルへの出力の両端を短絡させる電気式スイッチを機械式スイッチに並列配置することにより、異常の検出から機械式スイッチの作動により出力が短絡するまでのデッドタイムをなくすとともに、従来よりも確実に出力を短絡させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図2】図1に示すクランパの詳細構成図である。
【図3】図1に示す半導体スイッチの詳細構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図5】図4に示す瞬停検知回路の詳細構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図7】図6に示す瞬停検知回路の詳細構成図である。
【図8】図6に示す半導体スイッチの詳細構成図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る励磁電源を示す構成図である。
【図10】図5に示した瞬停検知回路の変形例を示す図である。
【図11】図3に示した半導体スイッチの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。まず、図1〜3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る励磁電源1について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
(励磁電源の構成)
図1に示すように、励磁電源1は、超電導コイル3、保護ダイオード4,5を具備してなる超電導マグネット2を励磁するための電源である。超電導コイル3は、超電導線材が巻回されてなるものである。保護ダイオード4,5は、超電導コイル3に並列配置される。
【0019】
励磁電源1は、直流電源11、トランジスタ10、制御回路13、クランパ6(機械式スイッチ)、および半導体スイッチ素子20(電気式スイッチ)を備えている。
【0020】
(直流電源)
直流電源11は、1次側電源(交流電源)に接続された変圧器(不図示)や、変圧器の交流電力を整流し平滑した直流電流を超電導コイル3に供給するトランジスタ回路(不図示)などにより構成される。なお、直流電源11では、市販のスイッチングレギュレータなどを用いてもよい。
【0021】
(トランジスタ)
トランジスタ10は、一般的なバイポーラトランジスタを用いている。なお、電界効果トランジスタ(FET)、IGBT、MOSFETなどのパワー素子を用いてもよい。
【0022】
(制御回路)
制御回路13は、超電導コイル3への出力(直流電源11の出力)を制御する回路である。制御回路13は、直流電源11の出力電圧をコントロールし、出力電圧をマイナスまで制御できる。なお、定電圧型の制御回路13ではなく、定電流型の制御回路であってもよい。定電流型の制御回路は、超電導コイル3に流れる電流(出力電流)が一定の電流値になるように電流検出器(不図示)で検出した電流を制御する回路である。
【0023】
また、励磁電源の制御方式には様々な方式があり、図1に示したトランジスタドロッパー方式の他に、ブリッジ型、ブリッジ型でPWM制御するもの、などがある。
【0024】
(機械式スイッチ)
機械式スイッチであるクランパ6が超電導コイル3に並列接続されている。クランパ6は、電気信号経路14を介して入力された異常信号により超電導コイル3への出力の両端を短絡させるスイッチである。なお、前記した制御回路13には、超電導マグネット2(超電導コイル3)または励磁電源1の異常を検出した際に電気信号経路14に異常信号を出力する異常検出回路が組み込まれている。この異常検出回路は、公知の回路構成であって且つ容易に実現できる回路構成であるためその詳細の説明を省略することとする。
【0025】
図2に示したように、クランパ6は、接点6a、コイル6b、およびトランジスタ6cを具備してなるリレーでありB接点で構成されている。B接点とは、電気信号Lowで接点6aが閉じ、電気信号Highで接点6aが開くように構成された電気信号Lowで動作する接点である。通常時、電気信号経路14から電気信号Highが入力され、トランジスタ6cがONしていることでコイル6bが励磁されて電磁力により接点6aが開いた状態となっている。一方、電気信号経路14から異常信号(電気信号Low)が入力されると、トランジスタ6cがOFFしてコイル6bが非励磁状態となりばね力により接点6aが閉じる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。
【0026】
なお、クランパ6は、本実施形態のようにB接点で構成されてもよいし、A接点で構成されてもよい。A接点とは、電気信号Lowで接点6aが開き、電気信号Highで接点6aが閉じるように構成された電気信号Highで動作する接点である。クランパ6をA接点で構成するか、B接点で構成するか、の選択については、いずれが安全サイドと考えるか、回路構成上の事情、などで変わってくる。本実施形態は、配線の断線などがあるとコイル6bが非励磁状態となって接点6aが閉じることを安全と考えた例である。
【0027】
(電気式スイッチ)
電気式スイッチである半導体スイッチ素子20が超電導コイル3およびクランパ6に並列接続されている。半導体スイッチ素子20は、電気信号経路14から分岐する電気信号経路27を介して入力された異常信号により超電導コイル3への出力の両端を短絡させるスイッチである。
【0028】
図3に示したように、半導体スイッチ素子20は、フォトカプラ24、NチャネルパワーMOSFET21,22、およびコンデンサ25を具備してなるリレーである。なお、MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略である。半導体のうちNPN構造のものをNチャネルと呼ぶ。コンデンサ25は電界コンデンサである。
【0029】
NチャネルパワーMOSFET21に関しては、そのドレインDをソースSに対してプラス側に使用している(通常の使い方)。これに対して、NチャネルパワーMOSFET22に関しては、通常とは逆に、すなわちドレインDをソースSに対してマイナス側に使用している。この使用方法は、NチャネルパワーMOSFETが、ドレインDとソースSとを逆にしても電流を流せることを利用したものである。NチャネルパワーMOSFETは、ゲートGがソースSに対して+10VあればドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼゼロに、ゲートGがソースSに対して0VとなればドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼ無限大になるという性質がある。
【0030】
フォトカプラ24に電気信号経路27から異常信号が入力されると、その内部のトランジスタがONして抵抗23に電圧(例えば10V)が発生し、NチャネルパワーMOSFET21,22がONして両FETのドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼゼロになる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。
【0031】
なお、半導体スイッチ素子20において、NチャネルパワーMOSFET22を設けず、NチャネルパワーMOSFET21のみ設けた場合、構造的に内蔵するボディダイオード(寄生ダイオード)によりマイナス方向(図3において下から上への方向)は常時通となる。本実施形態では、双方向に同様に機能するように2つのNチャネルパワーMOSFET21,22を直列配置している。コンデンサ25は十分大きな容量のものを使用し、停電後にしばらくの時間、電圧が残るようにしている。なお、超電導コイル3を流れる電流が大きい場合には、NチャネルパワーMOSFET21,22を複数並列に配置して電流容量を確保する。半導体スイッチ素子20は、機械式スイッチと併用し、また、動作時間を限定することで、その放熱などを考慮する必要がなく、且つ小型の基板で形成可能である。
【0032】
また、フォトカプラ24、NチャネルパワーMOSFET21,22などを用いた半導体スイッチ素子20ではなく、PチャネルパワーMOSFETとして制御の極性を変えてもよく、さらには、他の素子を用いた電気式スイッチとしてもよい。
【0033】
(異常検出時の各スイッチの動き)
超電導マグネット2の異常検出とは、超電導コイル3にクエンチが発生してそれを検出した場合である。なお、クエンチの検出は検出感度を上げると誤検知をするが、クエンチ検出時は誤検知であるかどうか区別できないのでいずれも同じ処置となる。励磁電源1の異常検出とは、直流電源11、制御回路13などの異常を検出した場合、一次側電源の停電(特に瞬停、瞬低)を検出した場合、のいずれも含む。なお、一次側電源とは、励磁電源1を構成する直流電源11に電力を供給する(給電する)電源のことをいう。
【0034】
ここでは、クエンチを検知した場合を例にとり、異常検出時の各スイッチの動きを説明する。超電導マグネット2の異常(実際にはクエンチを誤検知)が検出されると、制御回路13により超電導コイル3への出力電流がゼロにされるとともに、クランパ6および半導体スイッチ素子20へ異常信号が出力される。クランパ6に異常信号(電気信号Low)が入力されると、トランジスタ6cがOFFしてコイル6bが非励磁状態となりばね力により接点6aが閉じる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。一方、半導体スイッチ素子20に異常信号が入力されると、抵抗23に電圧が発生し、NチャネルパワーMOSFET21,22がONして両FETのドレインDとソースSとの間の抵抗がほぼゼロになる。これにより、超電導コイル3への出力の両端が短絡する。
【0035】
ここで、クランパ6の接点6aはばね力により閉じるので、クランパ6に異常信号が入力されてから接点6aが閉じるまでに少しの時間を要する。これに対して半導体スイッチ素子20は瞬時に動作する。超電導コイル3への出力の両端を短絡させる手段として機械式のクランパ6とともに半導体スイッチ素子20を用いることで、異常の検出からクランパ6の作動により出力が短絡する(接点6aが閉じる)までのデッドタイムをなくすことができる。また、機械式のクランパ6とともに半導体スイッチ素子20を用いることで、二重の保護対策となることによるシステムのロバスト性が向上する。すなわち、機械式のクランパ6のみを使用していた従来よりも確実に出力を短絡させることができる。
【0036】
なお、超電導コイル3への出力を短絡させた後は、実際にクエンチが発生している場合は、クエンチ状態が納まるまでそのまま待つ。一方、クエンチを誤検知したことが明らかであれば、制御回路13により直流電源11の出力電流を制御して、直流電源11の出力電流と超電導コイル3を流れる電流とを一致させてから、クランパ6の接点6aを開く(クランパ6を開く)とともにNチャネルパワーMOSFET21,22のドレインDとソースSとの間の抵抗をほぼ無限大に戻す(半導体スイッチ素子20を開く)。
【0037】
(第2実施形態)
図4,5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る励磁電源102について説明する。第1実施形態との相違は、本第2実施形態では、外付けの瞬停検出回路30を励磁電源に付加していることである。制御回路13に組み込まれクランパ6に異常信号を出力する異常検出回路が本発明における第1異常検出回路に相当し、瞬停検出回路30が本発明における第2異常検出回路に相当する。図4に示したように、半導体スイッチ素子20に制御回路13を介して瞬停検出回路30が異常信号を出力するように励磁電源102は回路構成されている。瞬停検出回路30から制御回路13へは電気信号経路35を経由して異常信号が出力される。
【0038】
(瞬停検出回路)
図5に示したように、瞬停検出回路30は、トランス31(変圧器)、フォトカプラ33、およびタイマIC34を具備してなる電気回路である。AC200Vをトランス31で降圧してフォトカプラ33に入れると、半波整流された波形パルス信号がフォトカプラ33により作られる。この波形パルス信号がタイマIC34のリセット端子に入力される。タイマIC34の時間設定を例えば20msecとしたとする。停電が起こりタイマIC34に波形パルス信号が入らなくなって20msecが経過すると、瞬停検出回路30から異常信号が電気信号経路35へ出力される。
【0039】
なお、交流入力型のフォトカプラを使用すれば全波整流された波形パルス信号となり、より正確な異常(停電)検出を行うことができる。また、トランス31を抵抗器、コンデンサに置き換えた回路としてもよい。
【0040】
本実施形態の励磁電源102によると、2つの異常検出回路を励磁電源に設けることで、2系統の異常検出回路となりロバスト性がより向上する。また、制御回路13を介して瞬停検出回路30が半導体スイッチ素子20に異常信号を出力するように回路構成されているので、クランパ6への信号系統と半導体スイッチ素子20への信号系統とを一部共通化でき簡潔な回路構成とすることができる。
【0041】
なお、外付けの第2異常検出回路としては、停電を検知する本実施形態のような瞬停検出回路30ではなく、超電導コイル3の電圧が大きくなるとメータスイッチがONするような過電圧検出回路であってもよいし、超電導コイル3のクエンチを検出するクエンチ検出回路であってもよい。
【0042】
(第3実施形態)
図6〜8を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る励磁電源103について説明する。第2実施形態との相違は、本第3実施形態では、瞬停検出回路30Aから制御回路13へ異常信号を出力するとともに、瞬停検出回路30Aから半導体スイッチ素子20Aへ異常信号を直接出力していることである。瞬停検出回路30Aから制御回路13へは電気信号経路35aを経由して異常信号が出力され、瞬停検出回路30Aから半導体スイッチ素子20Aへは電気信号経路35bを経由して異常信号が出力される。
【0043】
(瞬停検出回路)
図7に示したように、瞬停検出回路30Aは、2系統の異常信号を出力することができる回路であって、トランス31(変圧器)、フォトカプラ33,37,38、およびタイマIC34を具備してなる電気回路である。信号を異常時Highとするか正常時Highとするかについては、タイマIC34の出力の論理で決まり、いずれでも選定できるタイマICが多い。なお、瞬停検出回路30Aからさらにクランパ6へ異常信号を直接出力してもよい。
【0044】
(電気式スイッチ)
半導体スイッチ素子20Aは、電気信号経路35a、14、27からの異常信号、または電気信号経路35bからの異常信号により動作するスイッチであり、図8にその回路例を示している。フォトカプラ24またはフォトカプラ28がOFFしていると、NチャネルパワーMOSFET21,22のゲートGがソースSに対して例えば+10Vになり、NチャネルパワーMOSFET21,22がONして導通状態(短絡状態)になる。両方のフォトカプラ24,28がONであれば抵抗器29の両端に電圧が発生し、NチャネルパワーMOSFET21,22のゲートGがソースSに対して例えば+1V(ほぼゼロ)になり、NチャネルパワーMOSFET21,22がOFFして非導通状態(遮断状態)になる。なお、図8に示した回路構成は、半導体スイッチ素子20Aに入力される信号が、正常時にHigh、異常時にLowとした場合の例である。当然ながら、正常時にLow、異常時にHighという回路構成としてもよい。
【0045】
本実施形態の励磁電源103によると、制御回路13を経由させないで半導体スイッチ素子20Aに異常信号を出力する、すなわち半導体スイッチ素子20Aに異常信号を直接出力する、ための回路を加えたことで作動がより速くなる。また、半導体スイッチ素子20Aへの信号系統が二重になるため、いずれかの信号系統が故障しても作動するというロバスト性が得られる。
【0046】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係る励磁電源104を示す構成図である。図9に示したように、瞬停検出回路30Aからのみ半導体スイッチ素子20に異常信号を入力してもよい。なお、この場合も、瞬停検出回路30Aからの異常信号を制御回路13に入力することが好ましい。一次側電源の停電(特に瞬停、瞬低)信号を瞬停検出回路30Aからクランパ6に速く入力できるからである。
【0047】
(瞬停検知回路の変形例)
図5に示した瞬停検出回路30は、停電状態が解除されると異常信号も自動的に解除される回路であるが、停電状態が解除されても異常信号を保持して異常信号が勝手に解除されない回路とすることが有効な場合もある。図10に示した瞬停検出回路30Bは、停電状態が解除されても異常信号を保持して異常信号が勝手に解除されない構成の回路である。
【0048】
瞬停検出回路30Bによると、接点37cから出力される異常信号は、停電状態が解除されて異常信号がなくなっても(正常信号に戻っても)、コイル37aと接点37bとで自己保持され、外部の接点41で解除されるまで保持される。接点37cについては、A接点とするかB接点とするかが制御の論理により決定される。
【0049】
(半導体スイッチの変形例)
図11は、図3に示した半導体スイッチ素子20の変形例を示す図である。クエンチを誤検知して出力を短絡させた後や、停電(特に瞬停、瞬低)により出力を短絡させた後に、クランパ6および半導体スイッチ素子20を開く制御に関して、クランパ6および半導体スイッチ素子20のうちのどちらの回路から開くかについては、クランパ6から開く場合と、半導体スイッチ素子20から開く場合とで、それぞれに効果がある。
【0050】
図11に示した半導体スイッチ素子20Bは、当該半導体スイッチ素子20Bが開くタイミングをコントロールできるようにしたものである。NチャネルパワーMOSFET21,22の導通を制御するための制御入力信号が入力されるフォトカプラ28を付加することで半導体スイッチ素子20Bが開くタイミングをコントロールできるようにしている。なお、クランパ6を開いた後に半導体スイッチ素子20Bを開く制御とすれば、クランパ6のチャタリングを回避できる効果がある。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0052】
1、102、103、104:励磁電源
2:超電導マグネット
3:超電導コイル
6:クランパ(機械式スイッチ)
10:トランジスタ
11:直流電源
13:制御回路
20:半導体スイッチ素子(電気式スイッチ)
30:瞬停検出回路(異常検出回路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、
前記超電導マグネットまたは前記励磁電源の異常を検出した際に異常信号を出力する異常検出回路と、
前記超電導コイルに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる機械式スイッチと、
前記超電導コイルおよび前記機械式スイッチに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる電気式スイッチと、
を備えることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記異常検出回路は、
前記超電導コイルへの出力を制御する制御回路に設けられ、前記機械式スイッチに異常信号を出力する第1異常検出回路と、
前記第1異常検出回路とは別に設けられ、前記電気式スイッチに異常信号を出力する第2異常検出回路と、
を備えることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項3】
請求項2に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記第2異常検出回路は、前記電気式スイッチに前記制御回路を介して異常信号を出力することを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項4】
請求項3に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記第2異常検出回路は、さらに、前記電気式スイッチに異常信号を直接出力することを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項1】
超電導コイルを具備してなる超電導マグネットを励磁する励磁電源であって、
前記超電導マグネットまたは前記励磁電源の異常を検出した際に異常信号を出力する異常検出回路と、
前記超電導コイルに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる機械式スイッチと、
前記超電導コイルおよび前記機械式スイッチに並列配置され、前記異常検出回路からの異常信号が入力されることで当該超電導コイルへの出力の両端を短絡させる電気式スイッチと、
を備えることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記異常検出回路は、
前記超電導コイルへの出力を制御する制御回路に設けられ、前記機械式スイッチに異常信号を出力する第1異常検出回路と、
前記第1異常検出回路とは別に設けられ、前記電気式スイッチに異常信号を出力する第2異常検出回路と、
を備えることを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項3】
請求項2に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記第2異常検出回路は、前記電気式スイッチに前記制御回路を介して異常信号を出力することを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【請求項4】
請求項3に記載の超電導マグネット用の励磁電源において、
前記第2異常検出回路は、さらに、前記電気式スイッチに異常信号を直接出力することを特徴とする、超電導マグネット用の励磁電源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−235574(P2012−235574A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101241(P2011−101241)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(502147465)ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(502147465)ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
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