説明

超電導マグネット装置

【課題】冷却室を小型化し、超電導マグネット装置を小型化することが可能な超電導マグネット装置を提供する。
【解決手段】メインコイル5が巻回された円筒形状のメインフォーマ13と、シールドコイル6が巻回され、メインフォーマの径方向外側を覆うようにメインフォーマ13と同芯に設けられた円筒形状のシールドフォーマ15と、シールドフォーマ15を覆うようにメインフォーマ13と同芯に設けられた円筒形状の外筒18と、メインフォーマ13と外筒18との夫々の軸方向両端部を封止することにより冷却室2を形成していると共に、メインフォーマ13とシールドフォーマ15と外筒との夫々の軸方向両端部に当接する環状の位置決め機構を同芯に備えた一対のエンドプレート14a・14bとを有している

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却媒体が収容される冷却室を有する超電導マグネット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、超電導マグネット装置は、超電導マグネットが、主に磁場空間に磁場を生成するメインフォーマに巻回されたメインコイルと、メインコイルが発生する磁場が装置外へ漏洩することを抑制するシールドフォーマに巻回されたシールドコイルから成る。このような超電導マグネットは、冷却媒体が収容される冷却室に設けられて冷却される。
【0003】
このような超電導マグネット装置として、例えば、特許文献1のようなものが知られている。特許文献1には、メインフォーマ及びシールドフォーマに夫々巻回され軸方向が実質的に水平となるように同心状に配置されたメインコイル及びシールドコイルと、これらの巻枠を支持する支持部材とが冷却室に配置された超電導マグネット装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−053241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、冷却室内で超電導マグネットを効率良く冷却するため、冷却室の外側には真空室等の断熱構造が設けられることが一般的である。この断熱構造の大きさは冷却室の大きさを基準に設計されるため、冷却室の小型化によって断熱構造を含む超電導マグネット装置を小型化することに期待が寄せられている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のようなメインコイル及びシールドコイルを夫々巻回するメインフォーマ及びシールドフォーマとこれらの巻枠を支持する支持構造とを冷却室に設ける構造では、冷却室の小型化に限界が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、冷却室を小型化し、超電導マグネット装置を小型化することが可能な超電導マグネット装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、冷却媒体が収容される冷却室を有する超電導マグネット装置であって、メインコイルが巻回された円筒形状のメインフォーマと、シールドコイルが巻回され、前記メインフォーマの径方向外側を覆うように前記メインフォーマと同芯に設けられた円筒形状のシールドフォーマと、前記シールドフォーマを覆うように前記メインフォーマと同芯に設けられた円筒形状の外筒と、前記メインフォーマと前記外筒との夫々の軸方向両端部を封止することにより前記冷却室を形成していると共に、前記メインフォーマと前記シールドフォーマと前記外筒との夫々の軸方向両端部に当接する環状の位置決め機構を同芯に備えた一対のエンドプレートとを有していることを特徴とする
【0009】
上記構成によれば、冷却媒体が収容される冷却室は、メインフォーマと外筒との隙間を一対のエンドプレートが夫々の軸方向両端部を封止することにより形成されている。これにより、メインコイルを巻回するためのメインフォーマが冷却室の径方向内側の壁面を兼ねている。従って、メインフォーマとは別に冷却室の径方向内側の壁面構造を設ける必要がなく、また、メインフォーマの支持構造が不要である。また、冷却室を封止するエンドプレートがメインフォーマ、シールドフォーマ、及び、外筒の夫々の軸方向両端部に当接して位置決めしている。従って、メインフォーマ、シールドフォーマ、及び、外筒を軸方向に支持する構造が不要である。この結果、冷却室を小型化し、超電導マグネット装置を小型化することが可能である。また、一対のエンドプレートは、円環状の位置決め機構を同芯に備え、各位置決め機構にメインフォーマとシールドフォーマと外筒とが当接される。これにより、メインフォーマとシールドフォーマと外筒との配設について容易に位置決めし、同芯とすることができる。
【0010】
また、本発明の超電導マグネット装置は、前記封止が溶接加工によって行われてもよい。
【0011】
上記構成によれば、冷却室が溶接加工により封止されるため、ネジ止め構造等が不要である。これにより、省スペース化することができ、超電導マグネット装置を小型化することが可能である。
【0012】
また、本発明の超電導マグネット装置は、前記エンドプレートの少なくとも一方は、前記シールドフォーマの軸方向両端部と当接する当接面の一部に突出する凸部が形成され、前記シールドフォーマは、前記凸部に嵌合する凹部が形成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、シールドフォーマは、エンドプレートの少なくとも何れか一方に形成された凸部に凹部が嵌合された状態で支持される。これにより、シールドフォーマが冷却室に対して周方向に回転することを防止することができる。
【0014】
また、本発明の超電導マグネット装置は、前記メインフォーマと、前記シールドフォーマと、前記エンドプレートと、前記外筒とがステンレス鋼であってもよい。
【0015】
上記構成によれば、冷却室を構成するメインフォーマ、シールドフォーマ、エンドプレート、及び、外筒、がステンレス鋼で形成されている。これにより、これらの部材の熱収縮率を同じとし、冷却等による熱収縮によって各部材間の位置関係にずれが発生することを防止することができる。その結果、メインコイル及びシールドコイルの位置ずれの発生を軽減することができる。
【0016】
また、本発明の超電導マグネット装置は、前記メインフォーマと前記シールドフォーマとの間の断面形状に沿って配設された前記超電導マグネットの制御回路基板をさらに有していてもよい。
【0017】
一般的に、シールドコイルは、メインコイルの径方向外側に発生する磁場を打ち消すために設けられ、メインフォーマとシールドフォーマとの間に空間を設ける必要がある。上記構成によれば、メインフォーマとシールドフォーマとの間の空間の断面形状に沿って、超電導マグネットの制御回路基板が設けられている。これにより、省スペース化して冷却室の大きさをさらに縮小することができ、超電導マグネット装置を小型化することができる。
【0018】
また、本発明の超電導マグネット装置は、前記外筒は、前記シールドフォーマに設けられた冷却媒体及び電流リードを外部から導入するための導入部材が遊挿状態で挿通される挿通口を有していてもよい。
【0019】
上記構成によれば、導入部材を挿通口に遊挿させることができる。これにより、冷却室の径方向について、導入部材分の長さを軽減させ冷却室の大きさをさらに縮小することができ、超電導マグネット装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、冷却室を小型化することにより、超電導マグネット装置を小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】超電導マグネット装置の全体を示す概略図である。
【図2】冷却容器の断面を示す模式図である。
【図3】冷却容器の部分断面を示す模式図である。
【図4】シールドフォーマ及びエンドプレートの図3におけるIV−IV線の部分断面を示す模式図である。
【図5】冷却容器の図2におけるV−V線断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(超電導マグネット装置)
図1は、本発明の一実施形態に係る超電導マグネット装置1の全体を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の超電導マグネット装置1は、ハウジング1aと、導入部1bと、排気部1cとを有している。
【0024】
ハウジング1aは、外形が貫通孔1dを有した円筒形状に形成されている。貫通孔1dは、ハウジング1aにおいて同芯に形成されている。即ち、ハウジング1aと貫通孔1dとは共通の中心軸Z(図1の二点鎖線)を有している。本実施形態では、超電導マグネット装置1は、ハウジング1a下面を支持する支持機構(図示せず)を介して、中心軸Zが水平方向と平行となるように設置される。ハウジング1aは、中空にされ、該中空空間が真空にされた真空室3を形成している。ハウジング1aの真空室3には、冷却媒体(図示せず)を収容する冷却室2を形成する冷却容器12と、ハウジング1aから冷却容器12への熱浸入を軽減する遮へい板4とが配設される。このように、冷却容器12は、ハウジング1aが形成する真空室3に配設されることで、冷却容器12の断熱性が向上され、冷却容器12内における超電導マグネットの冷却効率が向上されている。
【0025】
導入部1bと排気部1cとは、外形が円柱形状を有し、ハウジング1aから鉛直上方向に突出するように並列して形成されている。即ち、導入部1bと排気部1cとは、ハウジング1aの上面においてハウジング1aの軸方向に対向するように形成されている。
【0026】
導入部1bは、内部に冷却室2と連通する連通機構を有しており、冷却媒体及び超電導マグネットへ電流を供給するための電流リード等を冷却室2に導入することを可能としている。排気部1cは、ハウジング1a内の真空室3と連通する連通機構と、該連通機構を介して真空室3を真空排気すると共に真空室3の真空状態を維持する真空排気装置とを有している(図示せず)。
【0027】
尚、以降、特記しない場合、ハウジング1aの中心軸Zが水平方向と平行、且つ、導入部1b及び排気部1cの軸方向が鉛直方向と平行に設置された超電導マグネット装置1について説明する。尚、このような設置態様に限定されず、例えば、超電導マグネット装置1は、中心軸Zが水平方向に対して傾きを有して設置されるものであってもよい。
【0028】
(遮へい板4)
ハウジング1a内に配設される遮へい板4は、同芯の二重管構造を有し、二重管構造が形成する隙間が軸方向に封止された略円筒形状を有している。遮へい板4は、貫通孔1dの径方向外側のハウジング1a内部に、中心軸Zと同芯に設置される。遮へい板4は、二重管構造の隙間に冷却容器12全体を覆うように冷却容器12を収容する。これにより、遮へい板4は、ハウジング1aの外部から冷却容器12へ侵入する熱を軽減し、冷却容器12内における超電導マグネットの冷却効率を向上させる。
【0029】
(冷却容器12)
冷却容器12は、冷却媒体が収容される冷却室2を形成する。冷却容器12は、同芯の二重管構造を有し、二重管構造が形成する隙間が軸方向に封止された略円筒形状を有している。冷却容器12は、遮へい板4の内径から径方向外側の真空室3に、中心軸Zと同芯に設置される。冷却容器12に収容される冷却媒体には、冷却容器12と同芯に巻回される超電導マグネット(メインコイル5、及び、シールドコイル6)の少なくとも一部が浸漬され、冷却される。本実施形態では、冷却媒体に液体ヘリウムを用いる。
【0030】
図2に示すように、超電導マグネット装置1は、冷却容器12がメインフォーマ13と、外筒18と、一対のエンドプレート14a・14bとを有している。また、冷却容器12内には、シールドフォーマ15と、超電導マグネットの制御回路を有するサービスプレート7、及び、冷却媒体及び超電導マグネットへ電流を供給するための電流リード(図示せず)を外部から冷却容器12内へ導入するためのコーン17とが設けられている。このような冷却容器12及び冷却容器12内の各構成について具体的に説明する。
【0031】
(メインフォーマ13)
メインフォーマ13は、円筒形状を有し、径方向内側の磁場空間に磁場を生成するメインコイル5が巻回されるようになっている。具体的に、メインフォーマ13は、円筒部13aと、フランジ部13b・13cと、メインコイル支持部13d・13eとを有している。円筒部13aは、円筒形状を有している。円筒部13aは、二重管構造を有する冷却容器12の内径側の壁面を構成する。換言すれば、円筒部13aは、冷却容器12に軸方向に貫通する貫通孔を形成する。
【0032】
フランジ部13b・13cは、円筒部13aの軸方向両端部の径方向外側に張出した円環状に形成されている。フランジ部13b・13cは、軸方向に薄肉に形成されている。フランジ部13b・13cは、エンドプレート14a・14bに接合される。これにより、フランジ部13b・13cは、エンドプレート14a・14bとで冷却容器12の軸方向端面を形成する。換言すれば、メインフォーマ13は、フランジ部13b・13cが、軸方向両端部に径方向外側に張出し、少なくとも真空室3の真空圧に対して座屈しない程度に軸方向に薄肉化され、冷却室2の軸方向両端面の少なくとも一部を形成する。
【0033】
尚、「真空圧に対して座屈しない程度」とは、メインフォーマ13、外筒18、及び、エンドプレート14a・14bによって冷却容器12が形成され、冷却室2が大気圧にされた冷却容器12がハウジング1aに収容されて真空圧が外部から付加された状態において、冷却容器12のメインフォーマ13が真空圧に対して座屈しない強度に形成されていることを意味する。また、真空室3の真空圧は、中真空又は高真空の圧力範囲にされるものであるが、これに限定されず、特定の用途の要件に応じて、低真空又は高真空以上であってもよい。
【0034】
メインコイル支持部13d・13eは、円筒部13aの軸方向中央に対向して配設される。メインコイル支持部13d・13eは、径方向外側に張出した円環状に形成されている。フランジ部13b・13c、及び、メインコイル支持部13d・13eは、円筒部13aと同芯に形成されている。
【0035】
このように、メインフォーマ13は、円筒形状であることに限定されず、一部に円筒形状部を有していればよい。
【0036】
メインコイル5は、円筒部13aの径方向外側であって、軸方向に対向するフランジ部13b及びメインコイル支持部13dの間と、軸方向に対向するメインコイル支持部13d及びメインコイル支持部13eの間と、軸方向に対向するメインコイル支持部13e及びフランジ部13cの間との夫々に、円筒部13aの周方向に巻回される。即ち、メインコイル5は、円筒部13a、フランジ部13b・13c、及び、メインコイル支持部13d・13eによって位置決めされる。
【0037】
(シールドフォーマ15)
シールドフォーマ15は、円筒形状を有し、メインコイル5が発生する磁場が超電導マグネット装置1の径方向外側へ漏洩することを抑制するシールドコイル6が巻回されるようになっている。シールドフォーマ15は、メインフォーマ13の径方向外側を覆うようにメインフォーマ13と同芯に設けられている。具体的に、シールドフォーマ15は、円筒部15aと、フランジ部15b・15cと、シールドコイル支持部15d・15eとを有している。円筒部15aは、円筒形状を有し、メインフォーマ13の径方向外側を覆うように配設される。即ち、円筒部15aは、メインフォーマ13のフランジ部13b・13c、及び、メインコイル支持部13d・13eの外径よりも大きい径を有していると共に、これらの径方向外側に配設される。円筒部15aは、メインフォーマ13よりも軸方向に短く形成されている。
【0038】
フランジ部15b・15cは、円筒部15aの軸方向両端部の径方向外側に張出した円環状に形成されている。シールドコイル支持部15d・15eは、円筒部15aの軸方向中央に対向して、径方向外側に張出した円環状に形成されている。フランジ部15b・15c、及び、シールドコイル支持部15d・15eは、円筒部15aと同芯に形成されている。
【0039】
このように、シールドフォーマ15は、円筒形状であることに限定されず、一部に円筒形状部を有していればよい。
【0040】
シールドコイル6は、円筒部15aの径方向外側であって、軸方向に対向するフランジ部15b及びシールドコイル支持部15dの間と、軸方向に対向するシールドコイル支持部15e及びフランジ部15cの間との夫々に、円筒部15aの周方向に巻回される。即ち、シールドコイル6は、円筒部15a、フランジ部15b・15c、及び、シールドコイル支持部15d・15eによって位置決めされる。
【0041】
円筒部15aの軸方向へ隣り合うフランジ部15b及びシールドコイル支持部15dの頭頂部には、コーン17を支持するための板状のコーン支持台19が軸方向に設置されている。コーン17は、円筒形状を有し、軸方向が鉛直方向となるようにコーン支持台19の上部に配設される。
【0042】
(外筒18)
外筒18は、円筒形状を有している。外筒18は、シールドフォーマ15を覆うようにメインフォーマ13と同芯に設けられている。具体的に、外筒18は、シールドフォーマ15のフランジ部15b・15c、及び、シールドコイル支持部15d・15eの外径よりも大きい径を有していると共に、これらの径方向外側に配設される。外筒18は、シールドフォーマ15よりも軸方向に長く形成されている。また、外筒18は、メインフォーマ13よりも軸方向に短く形成されている。外筒18は、二重管構造を有する冷却容器12の外径側の壁面を構成する。
【0043】
また、外筒18には、コーン17が遊挿状態で挿通される挿通口18aが上部に形成されている。換言すれば、外筒18は、シールドフォーマ15に設けられた冷却媒体及び電流リードを外部から導入するためのコーン17が遊挿状態で挿通される挿通口18aを有している。挿通口18aは、導入部1bに連通される。
【0044】
このように、コーン17を挿通口18aに遊挿させることができる。これにより、冷却室2の径方向について、コーン17分の長さを軽減させ冷却室2の大きさをさらに縮小することができ、超電導マグネット装置1を小型化することができる。
【0045】
(エンドプレート14a・14b)
エンドプレート14a・14bは、メインフォーマ13と外筒18との夫々の軸方向両端部を液密状態で封止することにより冷却室2を形成している。具体的に、エンドプレート14a・14bは、内径と外径とが同芯の円環形状に形成されている。エンドプレート14a・14bは、メインフォーマ13とシールドフォーマ15とを挟持するように、軸方向に対向して配置される。メインフォーマ13は、シールドフォーマ15よりも軸方向に長いため、エンドプレート14a・14bは、軸方向に屈曲して形成されている。即ち、エンドプレート14a・14bは、メインフォーマ13が当接される径方向内側部分が、シールドフォーマ15が当接される径方向外側部分よりも、軸方向真空室3に突出するように屈曲されている。
【0046】
エンドプレート14a・14bは、内径側の端部がメインフォーマ13のフランジ部13b・13cの外径側の端部と溶接により接合され、接合箇所を液密状態で封止するようになっている。また、エンドプレート14a・14bは、外径側の端部が外筒18の軸方向端部と溶接により接合され、接合箇所を液密状態で封止するようになっている。これにより、メインフォーマ13と外筒18とエンドプレート14a・14bとで冷却室2を形成し、冷却媒体を収容可能にしている。
【0047】
このように、冷却媒体が収容される冷却室2は、メインフォーマ13と外筒18との隙間を一対のエンドプレート14a・14bが夫々の軸方向両端部を液密状態に封止することにより形成されている。これにより、メインコイル5を巻回するためのメインフォーマ13が冷却室2の径方向内側の壁面を兼ねている。従って、メインフォーマ13とは別に冷却室2の径方向内側の壁面構造を設ける必要がなく、また、メインフォーマ13を径方向に支持する構造が不要である。また、冷却室2を封止するエンドプレート14a・14bがメインフォーマ13、シールドフォーマ15、及び、外筒18に当接して位置決めしている。従って、メインフォーマ13、シールドフォーマ15、及び、外筒18を軸方向に支持する構造が不要である。この結果、冷却室2を小型化し、超電導マグネット装置1を小型化することが可能である。
【0048】
また、一対のエンドプレート14a・14bは、円環状の位置決め機構を同芯に備え、各位置決め機構にメインフォーマ13とシールドフォーマ15と外筒18とが当接される。これにより、メインフォーマ13とシールドフォーマ15と外筒18との配設について容易に位置決めし、同芯とすることができる。
【0049】
尚、メインフォーマ13と、シールドフォーマ15と、エンドプレート14a・14bと、外筒18とはステンレス鋼で形成されている。本実施形態では、ステンレス鋼として、JISに規定されるSUS304Lを用いる。また、溶接時の溶加材としては、SUS308Lを用いる。これにより、これらの部材の熱収縮率を同じとし、冷却等による熱収縮によって各部材間の位置関係にずれが発生することを防止することができる。その結果、メインコイル5及びシールドコイル6の位置ずれの発生を軽減することができる。
【0050】
このように、冷却室2が溶接加工により液密状態で封止されている。従って、封止するためのネジ止め構造等が不要となっている。これにより、省スペース化することができ、超電導マグネット装置1を小型化することが可能である。
【0051】
また、上述のように、メインフォーマ13の一対のフランジ部13b・13cは、メインフォーマ13が真空圧に対して座屈しない程度に薄肉化されている。これにより、フランジ部13b・13cは、伝熱断面積が小さくなり、フランジ部の径方向外側端部からの熱に対するフランジ部の熱伝導率を小さくすることができる。この結果、メインフォーマ13をエンドプレート14a・14bで封止する際の溶接によってメインコイル5へ伝達される熱を軽減することができる。
【0052】
(位置決め機構)
ここで、エンドプレート14a・14bが有する位置決め機構について説明する。図3は、メインフォーマ13、シールドフォーマ15、及び、外筒18と、エンドプレート14bとの当接箇所を示す部分断面を示す模式図である。尚、エンドプレート14aについては、エンドプレート14bと同様であるため説明を省略する。
【0053】
エンドプレート14a・14bは、メインフォーマ13とシールドフォーマ15と外筒18との夫々の軸方向両端部に当接する環状の位置決め機構を同芯に備えている。メインフォーマ13とシールドフォーマ15と外筒18とを位置決めする位置決め機構の夫々について具体的に説明する。
【0054】
先ず、メインフォーマ13の位置決めについて説明する。図3に示すように、メインフォーマ13の軸方向両端部がエンドプレート14bの内径側端部に当接することにより、位置決めが行われるようになっている。具体的に、エンドプレート14bは、切欠端部141を有している。切欠端部141は、円環形状のエンドプレート14bの内径側の端部であり、冷却室2側にエンドプレート14bと同芯の円環状の切欠を有している。フランジ部13cの外径側の端部は、切欠端部141の切欠に嵌合状態で当接するようになっている。これにより、メインフォーマ13とエンドプレート14bとが同芯に固定されるようになっている。さらに、一対のエンドプレート14a・14bによって、メインフォーマ13が挟持されるように接合されることにより、エンドプレート14a・14bとメインフォーマ13との軸方向の位置関係が固定されるようになっている。
【0055】
次に、外筒18の位置決めについて説明する。図3に示すように、外筒18の軸方向両端部にエンドプレート14bの外周面142が当接することにより、位置決めが行われるようになっている。外周面142は、エンドプレート14bの径方向外側の端面であり、径が外筒18の内径に略一致して形成される。従って、エンドプレート14bが外筒18に嵌合され、外周面142が外筒18の径方向内側の端面に当接するようになっている。これにより、エンドプレート14bと外筒18とが同芯とされる。
【0056】
次に、シールドフォーマ15の位置決めについて説明する。図3に示すように、シールドフォーマ15の軸方向両端部に、エンドプレート14bの軸方向冷却室2側の端面が当接することにより、位置決めが行われるようになっている。具体的に、エンドプレート14bは、屈曲面143を有している。屈曲面143は、エンドプレート14bの軸方向冷却室2側端面であり、軸方向に屈曲されている。フランジ部15cは、軸方向の真空室3側の端面が、径方向外側の領域において突出して円環形状を形成する当接面151を有している。屈曲面143は、この当接面151に嵌合するように形成されている。従って、屈曲面143は、当接面151に嵌合状態で当接するようになっている。これにより、エンドプレート14bとシールドフォーマ15とが同芯とされる。
【0057】
このように、エンドプレート14a・14bには、切欠端部141、外周面142、及び、屈曲面143が円環状に同芯に形成されている。これらが、位置決め機構として夫々メインフォーマ13、外筒18、及び、シールドフォーマ15に当接することにより、位置関係を同芯に位置決めすることができるようになっている。
【0058】
また、図3及び図4に示すように、エンドプレート14a・14bの少なくとも一方(本実施形態では、エンドプレート14bのみ)は、シールドフォーマ15の軸方向両端部と当接する屈曲面143の一部に突出する凸部144が形成され、シールドフォーマ15は、凸部144に嵌合する凹部152が形成されている。具体的に、エンドプレート14bは、シールドフォーマ15と当接する屈曲面143において、軸方向冷却室2側に突出し、径方向に延在する凸部144を有している。また、シールドフォーマ15は、屈曲面143に当接する当接面151において、凸部144に嵌合する凹部152を有している。
【0059】
このように、シールドフォーマ15は、エンドプレート14bに形成された凸部144に凹部152が嵌合された状態で支持される。これにより、シールドフォーマ15は、冷却室2に対する周方向への回転が、凸部144によって防止される。
【0060】
(サービスプレート7)
次に、サービスプレート7について説明する。サービスプレート7は、超電導マグネットの制御回路を有する制御回路基板である。この制御回路は、メインコイル5及びシールドコイル6の保護回路等を有している。図5に示すように、サービスプレート7は、メインフォーマ13とシールドフォーマ15との間の断面形状に沿って配設されている。
【0061】
具体的に、サービスプレート7は、メインフォーマ13のメインコイル支持部13d・13eに径方向に配設されたロッドを介して下面が支持されている。そして、サービスプレート7は、該支持箇所が上面からナットで螺合されることによりメインフォーマ13に固定されている。図5に示すように、サービスプレート7は、径方向の断面が、冷却容器12の軸を中心とした円軌跡に沿った形状に形成されると共に、メインフォーマ13とシールドフォーマ15との間に配置されている。
【0062】
シールドコイル6は、メインコイル5の径方向外側に発生する磁場を打ち消すために設けられ、メインフォーマ13とシールドフォーマ15との間に空間を設ける必要がある。このように、メインフォーマ13とシールドフォーマ15との間に必要な空間の断面形状に沿って、超電導マグネットの制御回路基板であるサービスプレート7が設けられている。この結果、省スペース化して冷却室2の大きさをさらに縮小することができ、超電導マグネット装置1を小型化することができる。
【0063】
(組み立て)
次に、超電導マグネット装置1における冷却容器12の組み立て方法について説明する。先ず、メインフォーマ13とシールドフォーマ15との夫々に対して、図2に示すように超電導マグネットが巻回される。具体的には、メインコイル5がメインフォーマ13のフランジ部13b及びメインコイル支持部13dの間と、メインコイル支持部13d及びメインコイル支持部13eの間と、メインコイル支持部13e及びフランジ部13cの間との夫々に、周方向に巻回される。また、シールドコイル6がシールドフォーマ15のフランジ部15b及びシールドコイル支持部15dの間と、シールドコイル支持部15e及びフランジ部15cの間との夫々に、周方向に巻回される。
【0064】
次に、メインフォーマ13にサービスプレート7が固定され、シールドフォーマ15にコーン17を設けたコーン支持台19が固定される。そして、メインフォーマ13、シールドフォーマ15、及び、外筒18が、エンドプレート14bの位置決め機構に当接されて位置決めされる(図3参照)。これにより、メインフォーマ13、シールドフォーマ15、及び、外筒18が、互いに同芯となる。このとき、シールドフォーマ15は、エンドプレート14bの凸部144(図3及び図4参照)によって周方向の位置決めがなされる。尚、メインコイル5を構成する線材の両端部は、シールドフォーマ15に径方向に貫通された貫通孔(図示せず)を介して、シールドフォーマ15の径方向外側に挿通される。そして、メインコイル5、及び、シールドコイル6は、線材の両端部がサービスプレート7に結線される。
【0065】
そして、メインフォーマ13及び外筒18とエンドプレート14bとの仮溶接が行われた後、エンドプレート14aがメインフォーマ13、シールドフォーマ15及び外筒18に当接されて、メインフォーマ13、シールドフォーマ15、外筒18及びエンドプレート14a・14bの全体の位置決めが行われる。そして最終的にメインフォーマ13及び外筒18とエンドプレート14a・14bとの溶接が行われる。
【0066】
このように、メインフォーマ13、及び、シールドフォーマ15を支持するエンドプレート14a・14bが冷却容器12の外壁を兼ねているため、冷却容器12を構成する部材が減少される。これにより、組み立ての工数が軽減されコストを軽減することができる。
【0067】
(動作)
このように組み立てられた冷却容器12が組み込まれた超電導マグネット装置1の動作について説明する。超電導マグネット装置1の超電導マグネットは、冷却容器12の冷却室2に収容された液体ヘリウムにより冷却され、励磁されることによる温度上昇が防止される。上述のように、メインフォーマ13、外筒18、及び、エンドプレート14aが、冷却室2の壁面を兼ねているため、冷却室をこれらとは別の構成により形成する場合と比較して小型化されている。従って、同じ液体ヘリウムの量であっても冷却室2内の液体ヘリウムの超電導マグネットに対する液面高さを上昇させることができる。これにより、このような冷却室2は、超電導マグネットが液体ヘリウムに接触する表面積を増加させるため、超電導マグネットを効率良く冷却することができる。
【0068】
一方、超電導マグネットに対する液面高さが定められている場合、冷却室2が小型化されているため、使用する液体ヘリウムが減少される。これにより、コストを軽減することができる。
【0069】
(変形例)
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0070】
例えば、本実施形態において、サービスプレート7は、断面が円軌跡に沿った形状に形成されているものであるが、これに限定されない。例えば、サービスプレートの断面が、メインフォーマとシールドフォーマとの間の断面形状に沿って屈曲する形状に形成されているものであってもよい。
【0071】
また、エンドプレート14bに形成されたシールドフォーマ15の周方向への回転を規制する凸部144は、エンドプレート14bの軸方向に突出して径方向に延在するものであるが、これに限定されない。例えば、シールドフォーマ15の周方向への回転を規制するエンドプレート14bの構造は、径方向に突出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 超電導マグネット装置
1a ハウジング
1b 導入部
1c 排気部
1d 貫通孔
2 冷却室
3 真空室
4 遮へい板
5 メインコイル
6 シールドコイル
7 サービスプレート
12 冷却容器
13 メインフォーマ
13a 円筒部
13b・13c フランジ部
13d・13e メインコイル支持部
14a・14b エンドプレート
15 シールドフォーマ
15a 円筒部
15b・15c フランジ部
15d・15e シールドコイル支持部
17 コーン
18 外筒
18a 挿通口
19 コーン支持台
141 切欠端部(位置決め機構)
142 外周面(位置決め機構)
143 屈曲面(位置決め機構)
144 凸部
151 当接面
152 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体が収容される冷却室を有する超電導マグネット装置であって、
メインコイルが巻回された円筒形状のメインフォーマと、
シールドコイルが巻回され、前記メインフォーマの径方向外側を覆うように前記メインフォーマと同芯に設けられた円筒形状のシールドフォーマと、
前記シールドフォーマを覆うように前記メインフォーマと同芯に設けられた円筒形状の外筒と、
前記メインフォーマと前記外筒との夫々の軸方向両端部を封止することにより前記冷却室を形成していると共に、前記メインフォーマと前記シールドフォーマと前記外筒との夫々の軸方向両端部に当接する環状の位置決め機構を同芯に備えた一対のエンドプレートと
を有していることを特徴とする超電導マグネット装置。
【請求項2】
前記封止が溶接加工によって行われることを特徴とする請求項1に記載の超電導マグネット装置。
【請求項3】
前記エンドプレートの少なくとも一方は、前記シールドフォーマの軸方向両端部と当接する当接面の一部に突出する凸部が形成され、
前記シールドフォーマは、前記凸部に嵌合する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導マグネット装置。
【請求項4】
前記メインフォーマと、前記シールドフォーマと、前記エンドプレートと、前記外筒とがステンレスであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の超電導マグネット装置。
【請求項5】
前記メインフォーマと前記シールドフォーマとの間の断面形状に沿って配設された前記超電導マグネットの制御回路基板をさらに有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の超電導マグネット装置。
【請求項6】
前記外筒は、前記シールドフォーマに設けられた冷却媒体及び電流リードを外部から導入するための導入部材が遊挿状態で挿通される挿通口を有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の超電導マグネット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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