説明

超電導送電ケーブルの終端接続部

【課題】 本発明の目的は、超高圧の送電線路に飛び込んでくる種々のサージ電圧や大電流により生じる磁界や誘導電圧等の電気的な影響下にあっても、誤動作を起こし難く、しかも壊れ難い液面検知手段を提供し、長期に亘って安定して必要な温度勾配性能を維持することのできる超電導送電ケーブルの終端接続部を提供することにある。
【解決手段】 超電導状態で送電を行う超電導送電ケーブルの少なくとも一端に設けられて超電導導体1に流れる電流を常温の大気中に取り出すための温度傾斜部12を備えた超電導送電ケーブルの終端接続部であって、温度傾斜部12は下部に液体冷媒層4を液体冷媒層4上に冷媒ガス層5を有する内部圧力容器21を有し、内部圧力容器21の外側面には温度センサー31が取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体窒素等の極低温液体冷媒層で冷却される超電導送電ケーブルの終端接続部に関するもので、特に前記液体冷媒層の液面検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導送電ケーブルの終端接続部は、一端が超電導送電ケーブルの導体に直接、あるいは他の接続部材を介して間接的に接続され、他端が大気中に引き出される引出し導体を備えている。
この引出し導体は、一般的にはその長手方向の一部に絶縁被覆を有する導体からなっていて、絶縁被覆が施された一端側は液体窒素等で冷却され、導体が露出されている他端側は大気中に引き出されている。
そのため、この引出し導体はその長手方向(軸方向)に亘って、液体窒素の温度、すなわち極低温から常温までの極めて大きな温度勾配を有している。
【0003】
一般的な超電導送電ケーブルの終端接続部を図2を用いて説明する。
図2は従来の一般的な超電導送電ケーブルの終端接続部の一例を示す縦断面図である。
図2が示すように、図の水平方向に布設された超電導送電ケーブルの超電導導体1は、必要により接続用導体2を介して、極低温から常温である大気中へと引き出される引出し導体3の下端に可撓性導体20により接続されている。
この引出し導体3は液体窒素のごとき液体冷媒層4や、この液体冷媒層4の上部に連なる窒素ガス等からなる冷媒ガス層5とにより構成される温度傾斜部12を通過し、さらにこの温度傾斜部12の上方に設けられ、この温度傾斜部12とフランジ6により仕切られている高電圧引出部13を通った後、その先端部は外部へと導かれている。
【0004】
前記温度傾斜部12は主として、前述した液体冷媒層4と、該液体冷媒層4の上方に形成されている冷媒ガス層5とを内部に有する内部圧力容器21と、この内部圧力容器21を覆い、内部に真空断熱層を有している外部圧力容器22とで形成されている。
また高電圧引出部13は主として、碍子7と、碍子7内に充填されている絶縁油やSFガス等からなる流体絶縁体8及び高電圧引出部13の先端に設けられている上部金具14により構成されている。
【0005】
ところで前記引出し導体3には、温度傾斜部内12に位置する部分と高電圧引出部13の下部に位置する部分に跨って、例えばエポキシ樹脂やエチレンプロピレンゴム等からなる絶縁被覆10が施されている場合が多い。そしてこの絶縁被覆10の上端より上の部分では裸の導体が露出していて、前述したようにこの裸の導体は温度傾斜部12の上方に設けられている高電圧引出部13を通過し、外部へと引き出される。符号11は、前記絶縁被覆10の両端部近傍に設けられている電界制御部材、すなわちストレスコーンである。
【0006】
符合23は、温度傾斜部12と、詳細には図示していない超電導導体1を含む超電導送電ケーブル線路側とを仕切る圧力隔壁を示している。
【0007】
ところで超電導送電ケーブルの電流を取り出し続けるためには、超電導送電ケーブル部は超電導状態を保持し続ける環境に維持し続けなければならない。そのため、例えば液体ヘリウムや液体窒素を冷却媒体として使用し、かつそれらの沸点以下に温度制御を行う必要がある。
一方、外部の変電設備等は常温であるため、冷却媒体を封じ込めた状態で冷却媒体の温度から常温に至る温度勾配が必要になる。そのため冷却媒体から常温間に、冷却媒体、具体的には液体冷媒がもはや液体ではいられなくなる気相の温度領域が必ず存在する。
【0008】
図2が示すような方法、すなわち液体冷媒層4とこの液体冷媒層4が気化してできる冷媒ガス層5とで温度勾配を作る方法では、液相と気相の境目、すなわち液体冷媒層4と冷媒ガス層5の境界となる液面(液体冷媒層4の液面)を一定に保つことが、温度勾配の性能を安定させる上で必要である。
そこで従来においては液面計を用いて液体冷媒層4の液面を検知していた(特許文献1)。
そして液体冷媒層の液面が一定になるように液体窒素や液体ヘリウム等の液体冷媒を、図2における外部圧力容器22の外側に設置したポンプ(図示しない)等を用いて供給し、液面制御をしていた。
【0009】
【特許文献1】特開昭49−63990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら前記特許文献1に記載の液面計を用いる方法では、以下のような問題があって、液面の位置を長期に亘って正確に測定することが難しかった。
すなわち、現在一般に使用されている液面計は静電容量式等、微弱な電気信号を測定し、これで液面を検知するものである。そのためこの静電容量式液面計を超電導送電ケーブル線路のような超高圧の送電線路に用いると、送電線路に飛び込んでくる種々のサージ電圧や大電流により生じる磁界、あるいは誘導電圧等の電気的な影響により、誤動作が起き易く、最悪の場合には壊れてしまうことがある。
このように液面計が誤動作したり、壊れてしまった場合、液体冷媒層の液面位置が判らなくなり、温度勾配の性能を維持することができなくなる。
【0011】
そこで本発明の目的は、超電導送電ケーブル線路のような超高圧の送電線路に用いても、すなわち送電線路に飛び込んでくる種々のサージ電圧や大電流により生じる磁界、あるいは誘導電圧等の電気的な影響下にあっても、誤動作を起こし難く、しかも壊れ難い液面検知手段を提供し、もって長期に亘って安定して必要な温度勾配性能を維持することのできる超電導送電ケーブルの終端接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく請求項1記載の本発明の超電導送電ケーブルの終端接続部は、超電導状態で送電を行う超電導送電ケーブルの少なくとも一端に設けられて超電導導体に流れる電流を常温の大気中に取り出すための温度傾斜部を備えた超電導送電ケーブルの終端接続部であって、前記温度傾斜部は下部に液体冷媒層を該液体冷媒層上に冷媒ガス層を有する内部圧力容器を有し、該内部圧力容器の外側面には温度センサーが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0013】
このようにしてなる本請求項1記載の超電導送電ケーブルの終端接続部によれば、液面測定用センサーとして、送電線路に飛び込むサージ電圧や大電流によって生じる磁界や誘導電圧等の影響を受け難い温度センサーを用いて、液体冷媒層の液面を測定する。そのため長期間に亘って正確かつ安定して液面測定が可能になる。その結果、長期間に亘って温度勾配性能を安定して維持できる超電導送電ケーブルの終端接続部を提供することができる。
【0014】
また本発明の請求項2記載の超電導送電ケーブルの終端接続部は、請求項1記載の超電導送電ケーブルの終端接続部において、前記内部圧力容器の外側面には前記液体冷媒層の維持すべき液面位置と該維持すべき液面位置の上下方向に間隔をおいて各々温度センサーが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0015】
このように内部圧力容器の外側面の前記液体冷媒層の維持すべき液面位置と、該維持すべき液面位置の上下方向に間隔をおいて、例えば上下に少なくとも1箇所ずつ、少なくとも計3箇所の温度センサーを取り付けておくと、液体冷媒層の液面が多少変動してもその位置を正確に検知できる。よってより正確にかつ安定して温度勾配性能を維持できる超電導送電ケーブルの終端接続部を提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の超電導送電ケーブルの終端接続部によれば、超電導送電ケーブル線路のような超高圧の送電線路に用いても、送電線路に飛び込んでくる種々のサージ電圧や大電流により生じる磁界、あるいは誘導電圧等の電気的な影響を受け難く、それ故誤動作を起こし難く、しかも壊れ難い液面検知手段を用いているので、長期に亘って安定して必要な温度勾配性能を維持することのできる超電導送電ケーブルの終端接続部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を用いて本発明の超電導送電ケーブルの終端接続部の一実施例を詳細に説明することにする。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の超電導送電ケーブルの終端接続部の一実施例を示す一部拡大縦断面図である。
本発明の超電導送電ケーブルの終端接続部の主要構成要素は、前述した図2に記載のものとほとんど同じである。それ故、ここでは本発明の特徴点のみ詳しく説明し、図2に記載のものと同じ構成の部分については説明を省略することにする。
【0019】
因みに図1は、図2における内部圧力容器21内における液体冷媒層4の液面部分を拡大した一部拡大縦断面図である。
図1が示すようにこの超電導送電ケーブルの終端接続部においては、内部圧力容器21の外側の側面(以下外側面という)に3箇所、温度センサー31、32、33を取り付けてある。
この3箇所の温度センサーの取り付け位置は、温度センサー31が、液体ヘリウム、あるいは液体窒素等液体冷媒層4の維持すべき液面30の位置にほぼ一致して取り付けられていて、残りの2個の温度センサー32、33は前者が温度センサー31の上方に、後者が温度センサー31の下方に取り付けられている。
【0020】
前記温度センサー31と温度センサー32、33の間隔は内部圧力容器21の大きさ(容量)等勘案して、また種々実験して決めればよい。
この実施例では、液面位置にほぼ一致して設けられている温度センサー31を中心に上下に1箇所ずつ、計3箇所に取り付けているが、内部圧力容器21の容量が大きく、液体冷媒層4の液面30の位置が送電中あまり変動しない超電導送電ケーブルの終端接続部においては、温度センサー31のみ設けておけば足りる場合もある。
【0021】
逆に内部圧力容器21の容量が小さかったり、液体冷媒供給用のポンプの容量が大きくて、液面30の位置の変動が大きいと予想される場合には、図1のように維持すべき液面30の位置を中心に上下方向に温度センサーを3箇所取り付けたり、あるいは3箇所以上、例えばより互いの温度センサーの間隔を狭くして5箇所あるいは7箇所、あるいはそれ以上取り付けてもよい。
【0022】
尚、温度センサー31を内部圧力容器21の周方向同一高さに、例えば角度90度毎に4個取り付けた場合でも、温度センサー31の取り付け箇所は1箇所、と表現することにする。それ故、図1において、温度センサー31、32、33を各々周方向同一高さに角度90度空けて4個ずつ取り付けたとしても、温度センサーは3箇所取り付けた、ということにする。
因みにこの実施例では、温度センサー31、32、33を各々その周方向同一高さに角度を90度空けながら4個ずつ取り付けた。もちろん一個ずつでも、あるいは同一高さでかつ対向する位置に2個ずつ装着してもなんら問題ない。
【0023】
ところで使用する温度センサーとしては、例えば熱電対や白金抵抗体型の温度センサー等が使用できる。
【0024】
このように内部圧力容器21の外側面に取り付けた各温度センサー31、32及び33により、内部圧力容器21の側面温度を測定する。もし温度センサーの位置が液面より下にある場合には、温度センサーが検知する温度は液体冷媒層4の沸点以下の温度となる。一方液面より上に位置する温度センサーの検知する温度は液体冷媒層4の沸点以上の温度となる。各温度センサー31、32、33が捕らえる温度を連続的にみていれば、液体冷媒層4の液面位置を連続的に検知することが可能となる。
【0025】
ところで従来使用されている液面計を本願発明の温度センサーと併用してもよい。少なくとも温度センサーを併用しておけば液面計が誤動作したり壊れたりしても、温度センサーで充分にバックアップできる。また予め併用して使用する液面計と温度センサーの関係を、実験により調べて校正曲線を作っておけば、より精度よく液面検知を行うこともできる。
【0026】
このように本発明によれば、超電導送電ケーブルの終端接続部の内部圧力容器内に貯蔵されている液体冷媒層の液面を温度センサーを用いて検知する場合には、サージ電圧や誘導電圧の影響を受けることがほとんどないため、サージ電圧や誘導電圧の影響で誤動作したり、壊れたりすることがなくなる。その結果、長期間に亘って安定して所望する温度勾配性能を保持する、すなわち信頼性の高い超電導送電ケーブルの終端接続部を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の超電導送電ケーブルの終端接続部の要部拡大縦断面図である。
【図2】本発明に係る一般的な超電導送電ケーブルの終端接続部の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
3 引出し導体
4 液体冷媒層
5 冷媒ガス層
12 温度傾斜部
13 高電圧引出部
21 内部圧力容器
30 液面
31、32、33 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導状態で送電を行う超電導送電ケーブルの少なくとも一端に設けられて超電導導体に流れる電流を常温の大気中に取り出すための温度傾斜部を備えた超電導送電ケーブルの終端接続部であって、前記温度傾斜部は下部に液体冷媒層を該液体冷媒層上に冷媒ガス層を有する内部圧力容器を有し、該内部圧力容器の外側面には温度センサーが取り付けられていることを特徴とする超電導送電ケーブルの終端接続部。
【請求項2】
前記内部圧力容器の外側面には前記液体冷媒層の維持すべき液面位置と該維持すべき液面位置の上下方向に間隔をおいて各々温度センサーが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の超電導送電ケーブルの終端接続部。

【図1】
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【図2】
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