説明

超音波センサの冷却装置

【課題】 超音波センサを簡単な構成で、良好に冷却できるようにする。
【解決手段】 高温の被検査体1に超音波を発振して劣化状態を検査する超音波センサ4と、この超音波センサ4を冷却する自励振動ヒートパイプ6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高温配管の劣化状態を検出する超音波センサの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の超音波センサは、高温配管の外側面部に設けられるため、熱害を受け易い(例えば、特許文献1参照)。このため、超音波センサの検出性能が短期間で低下し、交換が必要となり、不経済的なものとなっていた。
【0003】
そこで、超音波センサを例えば、冷却水などで冷却することにより、熱害を受けないようにすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−354281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波センサを冷却水などで冷却した場合には、構成的に複雑化するという問題があった。
【0006】
そこで、3mm程度以下のヒートパイプ、所謂マイクロヒートパイプや、自励振動ヒートパイプを用いて冷却することが考えられるが、冷却効果の点でマイクロヒートパイプには課題が残る。
【0007】
本発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、簡単な構成で、高い冷却効果を得ることができるようにした超音波センサの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、高温の被検査体に超音波を発振して劣化状態を検査する超音波センサと、この超音波センサを冷却する自励振動ヒートパイプとを具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、高温の被検査体に超音波を発振して劣化状態を検査する超音波センサと、この超音波センサを冷却する自励振動ヒートパイプと、前記被検査体の熱を駆動源として回転し、前記自励振動ヒートパイプを冷却するパイプ冷却手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構成で、高い冷却効果を得ることができる超音波センサの冷却装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態である超音波センサの冷却装置を示す構成図。
【図2】図1の超音波センサの取付構造を示す図。
【図3】図1のセンサ保護部材の温度分布を示す図。
【図4】図1の自励振動ヒートパイプの温度変化を示すグラフ図。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す図。
【図7】本発明の第4の実施形態を示す図。
【図8】本発明の第5の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態である超音波センサの冷却装置を示す構成図である。
【0014】
図中1は、被検査体としての高温配管で、この高温配管1内には例えば高温蒸気が流通されるようになっている。高温配管1の外周側部は断熱材2によって被覆されている。断熱材2には穴部3が形成され、この穴部3内に超音波センサ4が挿入されている。
【0015】
超音波センサ4は、超音波を発生させて高温配管1に伝播させ、高温配管1から戻ってくる反射波により高温配管1の減肉量や、傷の有無などを検出するものである。
【0016】
上記超音波センサ4は、円筒状のセンサ保護部材5内に収納されている。センサ保護部材5内面の半径は30mm程度とされ、底部の厚みは30mm以下が許容される。センサ保護部材5の材質としては、熱伝導率の低いセラミックス(アルミナ、チタン酸バリウム)や、SUSなどが用いられる。なお、センサ保護部材5の外周面と上記穴部3の内周面との間に隙間を形成しないように、穴部3の内径は、極力小さくされている。
【0017】
また、センサ保護部材5は、図2に示すように、高温配管1に取り付けられている。即ち、センサ保護部材5の外側面部には取付部7が設けられ、この取付部7がインコネル製のスタッドボルト8とナット9とにより高温配管1に固定されている。これにより、センサ保護部材5は、高温配管1に向かって押し付けられ、その底面部を密着させている。
【0018】
センサ保護部材5の底面周縁部には切欠部5aが形成され、センサ保護部材5は、その切欠部5aを除いて超音波の発振に必要なエリヤのみを高温配管1に密着させている。切欠部5aは高温配管1に対し平行に形成されて離間され、高温配管1の熱をセンサ保護部材5に極力伝達させないようになっている。
【0019】
また、図1に示すように、センサ保護部材5の外側面部には、自励振動ヒートパイプ6の下部側、即ち加熱部がロウ付け、或いは溶接により取り付けられている。自励振動ヒートパイプ6の上部側、即ち冷却部(放熱部ともいう)は、穴部3から上方へ向かって延出されている。
【0020】
自励振動ヒートパイプ6は、1本の細管およびその細管に封入された流体とで構成される。流体としては、例えば、ダウサムAが用いられる。細管はセンサ保護部材5の外側面部に接する位置と、上方に離間する位置との間を往復する状態に巻回されつつ、その巻回がセンサ保護部材5の外側面部に沿って螺旋状に繰り返される形状を有している。
【0021】
細管の各巻回部分は、センサ保護部材5の外側面部に接する部分が加熱部、センサ保護部材5の外側面部から上方に離間する部分が冷却部となる。細管内の流体はそれぞれ表面張力によって形成された液状体および蒸気泡からなり、これら液状体および蒸気泡が管軸方向に分布している。細管としては、エンドレスの細管を用いているが、両端がそれぞれ閉じた非エンドレスの細管を用いてもよい。
【0022】
なお、上記した高温配管1が傾斜状態に配設された場合には、超音波センサ4も傾斜し、自励振動ヒートパイプ6の各巻回部分のうち、加熱部が上方で冷却部が下方となる位置関係になる場合には、少なくとも1つの巻回部分に、逆止弁を設ける必要がある。
【0023】
即ち、加熱部が上方で冷却部が下方となる位置関係を持つ巻回部分では、冷却部で凝縮して加熱部の方向(昇り方向)に向かう液状体の流れに対し、重力が加わる。この重力による液状体の落下を抑えるために逆止弁を設ける。
【0024】
上記した構成において、高温蒸気の熱を受けて温度上昇する高温配管1の熱は、センサ保護部材5を介して超音波センサ4に伝わるとともに、自励振動ヒートパイプ6の加熱部に伝わる。自励振動ヒートパイプ6の加熱部に伝わった熱は、その加熱部から蒸発潜熱として流体に伝わり、その流体を伝わって冷却部に運ばれ、凝縮潜熱となって気中に放出される。この放熱に伴い、冷却部が冷え、その冷熱が流体を伝わって加熱部に運ばれる。
【0025】
このとき、自励振動ヒートパイプ6の流体には、加熱部での蒸発作用および冷却部での凝縮作用により、加熱部と冷却部との間を揺れ動く自励的な振動いわゆる自励振動が生じる。すなわち、加熱部で生じる蒸気泡は冷却部へと流れ、冷却部で生じる液状体は加熱部へと流れる。この場合、加熱部から冷却部に向かう蒸気泡の流れ方向はその加熱部から冷却部を見た一方向および他方向においてランダムであり、冷却部から加熱部に向かう液状体の流れ方向もその冷却部から加熱部を見た一方向および他方向においてランダムである。
【0026】
この流体の自励振動によって加熱部から冷却部への熱輸送が継続し、センサ保護部材5の熱が効率よく気中に放出され、超音波センサ4が冷却されることになる。
【0027】
図3は、センサ保護部材5の冷却時における温度分布を示すものである。
【0028】
センサ保護部材5の高温配管1との接触面の温度Thが600℃のとき、センサ保護部材5の内底面部の温度が452〜506℃で、内周面部の温度が304〜350℃となっている。これにより、超音波センサ4の底面温度が略450〜500℃となり、高温配管1の温度Th(600℃)よりも、100℃以上低下されることが分かる。なお、自励振動ヒートパイプ6の放熱量Qは147Wで、自励振動ヒートパイプ6のセンサ保護部材5との接触面温度Tcは300℃となっている。
【0029】
図4は自励振動ヒートパイプ6の温度変化を示すグラフ図である。
【0030】
図中a線は加熱部の温度変化、b線は細管の温度変化、c線は冷却部の温度変化、d線は外気の温度変化を示している。
【0031】
上記したように、この実施の形態によれば、自励振動ヒートパイプ6によって超音波センサ4を冷却するため、簡単な構成で、高い冷却効果を得ることができ、超音波センサ4の寿命を長期化できる利点がある。
【0032】
また、断熱材2の穴部3の内径は、センサ保護部材5との間に隙間を形成しないように、極力小さくするため、隙間からの放熱を低減でき、断熱材2の断熱効果を良好に維持できる。
【0033】
さらに、センサ保護部材5の底面周縁部に切欠部5aを形成し、この切欠部5aを高温配管1から離間させるため、センサ保護部材5の底面全体を高温配管1に接触する場合と比較して高温配管1からセンサ保護部材5への伝熱量を低減でき、超音波センサ4の冷却効果を高めることができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態を示すものである。
【0035】
上記第1の実施の形態では、自励振動ヒートパイプ6の放熱部を互いに近接する状態で平行に配置したが、第2の実施の形態では、自励振動ヒートパイプ6の放熱部を互いに外方に向かって離間するように配置している。
【0036】
この第2の実施の形態によれば、自励振動ヒートパイプ6のそれぞれの巻回部分の放熱部の相互間に十分な放熱空間を確保することができ、放熱部から気中への放熱効率に優れ、冷却効果を高めることができる利点がある。
【0037】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態を示すものである。
【0038】
上記第1の実施の形態では、断熱材2の穴部3の内径を狭くして断熱材2の断熱効果を高めるようにしたが、第3の実施の形態では、断熱材2の穴部3の上面開口部を蓋部2aによりできる限り閉塞して断熱材2の断熱効果を高めるようにしている。
【0039】
(第4の実施の形態)
図7は、第4の実施の形態を示すものである。
【0040】
上記第1の実施の形態では、センサ保護部材5の下面部に切欠部5aを高温配管1の外側面に対し平行に形成したが、第4の実施の形態では、センサ保護部材5の下面部の切欠部5aをテーパ状に形成している。
【0041】
(第5の実施の形態)
図8は、第5の実施の形態を示すものである。
【0042】
この第5の実施の形態では、自励振動ヒートパイプ6を冷却するためのパイプ冷却装置11を備えている。
【0043】
パイプ冷却装置11は、高温配管1の外側面部に設けられる熱電発電モジュール12と、この熱電発電モジュール12に電気的に接続される冷却ファン13とによって構成されている。冷却ファン13は、自励振動ヒートパイプ6の冷却部側に対向されている。
【0044】
熱電発電モジュール12は、高温配管1の熱により発電して冷却ファン13を回転させて自励振動ヒートパイプ6の冷却部側を冷却する。
【0045】
この第5の実施の形態によれば、自励振動ヒートパイプ6の冷却部を経済的に冷却して自励振動ヒートパイプ6の冷却能力を向上できる利点がある。
【0046】
なお、上記した実施の形態では、センサ保護部材5の外側面部に、自励振動ヒートパイプ6を取り付けたが、これに限られることなく、超音波センサ4の外側面部に自励振動ヒートパイプ6を直接、取り付けるようにしてもよい。
【0047】
また、各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…高温配管(被検査体)、4…超音波センサ、5…センサ保護部材、6…自励振動ヒートパイプ、11…パイプ冷却装置(パイプ冷却手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の被検査体に超音波を発振して劣化状態を検査する超音波センサと、
この超音波センサを冷却する自励振動ヒートパイプと
を具備することを特徴とする超音波センサの冷却装置。
【請求項2】
高温の被検査体に超音波を発振して劣化状態を検査する超音波センサと、
この超音波センサを冷却する自励振動ヒートパイプと、
前記被検査体の熱を駆動源として回転し、前記自励振動ヒートパイプを冷却するパイプ冷却手段と
を具備することを特徴とする超音波センサの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−145404(P2012−145404A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3113(P2011−3113)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(390013815)学校法人金井学園 (20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】