説明

超音波プローブの位置特定方法

【課題】検体に対する超音波プローブの位置を正しく特定できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】配管20,20に対する位置がP1である球体13と、配管20,20に対する位置がP2である第2目印と、を含む被検体に超音波プローブ2から検査音波を照射して被検体の表面形状を計測する(ステップ(a))。次に、計測された配管20,20の表面形状の結果から、超音波プローブ2に対する球体13の位置p1及び球体14の位置p2を特定(ステップ(b))。次に、位置P1及び位置P1と位置p1及び位置p2を照合することで、配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を特定する(ステップ(c))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷法に用いられる超音波プローブ(又は超音波探触子)の被検体に対する位置を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷法による検査対象(被検体)として、溶接により接合された配管がある。溶接部の信頼性を評価するために、欠陥の有無や溶接形状を超音波探傷法により定期的に検査する。超音波プローブから媒質を介して超音波を照射し、被検体の中を伝播して裏面や傷部分で反射してきた超音波を超音波プローブで受信し、受信した超音波に対応した検出信号を信号処理して、欠陥の有無、溶接形状を検査する。
配管を接合する溶接部には、裏面に裏波が形成されているものがある。超音波探傷はこの裏波に対応する反射波も捉えられるが、欠陥と裏波とを区別して検査するために、裏波の形状を正しく特定する必要がある。通常、裏波の形状を検査するために、被検体に対して垂直に超音波を照射して溶接形状の検査をする「垂直法」が採用されている。この検査の際に、被検体に対して入射される超音波の入射位置制度が高いことが要求される。そのために、被検体に対する超音波プローブの位置が正しく特定される必要がある。
【0003】
特許文献1は超音波プローブの位置特定について以下のステップ1〜3からなる提案を行なっている。
ステップ1:超音波プローブを走査範囲内に置かれた水平板と対向させてから、超音波プローブを所定の角度で回転させ、その時得られる反射エコーレベルが最大となる点を探し、超音波プローブの垂直状態を検出する。
ステップ2:この垂直状態下で走査範囲内に置かれた球体の中心座標値を基準座標値として検出する。
ステップ3:この基準座標値に基づき被検体に対する超音波プローブの位置、つまり被検体と超音波プローブの相対位置を表す位置データを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−223796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、被検体が置かれる水槽内に目印となる水平板と球体を設置するものであるから、水槽に対する超音波プローブの位置を正しく特定できる。しかし、被検体が所定の位置からずれて水槽に置かれると、水平板と球体に基づいて位置データを正しく取得したところで、被検体に対する超音波プローブの位置を正しく特定することにはならない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、被検体に対する超音波プローブの位置を正しく特定できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、超音波プローブの位置を特定するための目印(平板、球体)を水槽内に設けるのではなく、被検体上の既知の位置Pに設けられた目印を超音波探傷により位置を特定する。超音波探傷により特定された目印の位置pは、超音波プローブに対する相対的な位置を示すが、実際には既知の位置Pと一致するので、位置Pと位置pを照合することで、被検体に対する超音波プローブの相対的な位置を正しく特定できることになる。
すなわち本発明は、被検体上の位置Pが既知の目印を含む被検体に超音波プローブから検査音波を照射して被検体の表面形状を計測するステップ(a)と、計測された被検体の表面形状の結果から、超音波プローブに対する目印の位置pを特定するステップ(b)と、位置Pと位置pに基づいて、被検体に対する超音波プローブの位置を特定するステップ(c)と、を備えることを特徴とする超音波プローブの位置特定方法である。
【0007】
超音波プローブの位置特定方法は、いくつかの異なる形態で実施することができる。
そのために、一つ目の形態は、被検体の2箇所に目印を設ける。各々を第1目印、第2目印とし、被検体に対する各々の位置をP1、P2とする。ステップ(a)では、第1目印及び第2目印を含む被検体に超音波プローブから検査音波を照射して被検体の表面形状を計測する。ステップ(b)では、計測された被検体の表面形状の結果から、超音波プローブに対する第1目印の位置p1及び第2目印の位置p2を特定する。次いで、ステップ(c)では、位置P1及び位置P1と位置p1及び位置p2に基づいて、被検体に対する超音波プローブの位置を特定する。
【0008】
一つ目の形態が、溶接部を介して突合せ端が接合された配管を超音波探傷の対象とする場合、溶接部を挟む両側に、配管の軸線方向に沿って第1目印と第2目印を設けることが好ましい。
【0009】
二つ目の形態は、目印を1箇所とするが、もう一つの目印の代替として超音波プローブの傾きsを計測する。そして、ステップ(c)において、位置P1、位置p1及び傾きsに基づいて、被検体に対する超音波プローブの位置を特定する。
【0010】
三つ目の形態は、目印を1箇所とするが、もう一つの目印の代替として超音波探傷以外の手法で被検体の表面形状を計測する。そして、ステップ(c)において、位置P1、位置p1及び超音波探傷以外の手法で計測された被検体の表面形状に基づいて、被検体に対する超音波プローブの位置を特定する。
【0011】
四つ目の形態は、目印を1箇所とするが、もう一つの目印の代替として超音波プローブの被検体上の位置P3を特定する。そして、ステップ(c)において、位置P1、位置p1及び位置P3に基づいて、被検体に対する超音波プローブの位置を特定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被検体上の既知の位置Pと超音波探傷により特定された目印の位置pを照合することで、被検体に対する超音波プローブの位置を正しく特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態において、超音波探傷装置が被検体である配管に対向して配置される様子を示す図である。
【図2】目印である球体が置かれた配管の平面図である。
【図3】第1実施形態における超音波プローブの位置特定方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態において、(a)は配管(被検体)に対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示し、(b)は超音波プローブに対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示す。
【図5】第1実施形態において、(a)は配管上の原点O、位置P1、P2をその相対的な位置関係を維持したままで図4(a)から抜き出して示した図、(b)は超音波プローブ上の原点o、位置p1、p2をその相対的な位置関係を維持したままで図4(b)から抜き出して示した図、(c)は(a)と(b)を照合した図である。
【図6】第2実施形態において、超音波探傷装置が被検体である配管に対向して配置される様子を示す図である。
【図7】第2実施形態における超音波プローブの位置特定方法の手順を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態において、(a)は配管(被検体)に対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示し、(b)は超音波プローブに対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示す。
【図9】第2実施形態において、(a)は配管上の原点O、位置P1をその相対的な位置関係を維持したままで図8(a)から抜き出して示した図、(b)は超音波プローブ上の原点o、位置p1をその相対的な位置関係を維持したままで図8(b)から抜き出して示した図、(c)は(a)と(b)を照合した図である。
【図10】第3実施形態において、超音波探傷装置が被検体である配管に対向して配置される様子を示す図である。
【図11】第3実施形態における超音波プローブの位置特定方法の手順を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態において、(a)は配管(被検体)に対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示し、(b)は超音波プローブに対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示し、(c)はレーザにより配管の表面形状を計測した結果を示す。
【図13】第3実施形態において、(a)は超音波探傷による計測結果をレーザによる計測結果に重ね合わせる様子を示し、(b)は(a)の結果を示し、(c)は(a)と(b)を照合した図である。
【図14】第4実施形態において、超音波探傷装置が被検体である配管に対向して配置される様子を示す図である。
【図15】第4実施形態における超音波プローブの位置特定方法の手順を示すフローチャートである。
【図16】第4実施形態において、(a)は配管(被検体)に対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示し、(b)は超音波プローブに対する球体(目印)の位置を示す二次元座標を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を説明する。なお、本実施形態は、溶接された配管20,20からなる被検体を例にするが、他の被検体を対象にできることは言うまでもない。
本実施形態は、超音波探傷装置1を用いて実施される。超音波探傷装置1は、図1に示すように、超音波プローブ2と、超音波送受信制御部3と、処理部4と、表示部5と、を備えている。
【0015】
超音波探傷装置1は、溶接部10を介して突合せ溶接により接続された配管20,20を被検体とし、溶接部10の欠陥の有無、溶接形状を検査する。溶接部10は、配管20,20の表面側(配管20,20の外周面側)に余盛11が形成されており、裏面側(配管20,20の外周面側)に裏波12が形成されている。
超音波探傷装置1により配管20,20を検査する場合には、超音波プローブ2から超音波を出力すると共に反射してきた超音波を超音波プローブ2で受信し、受信した超音波に対応した検出信号を基に、溶接部10を含む配管20,20の表面、裏面の形状を可視化することで、目視により欠陥の有無、溶接形状を判定できる。ただしその前提として、配管20,20に対する超音波プローブ2の位置が特定されている必要がある。本実施形態は、配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を正しく特定する方法を提供する。
【0016】
超音波探傷装置1は、微小な超音波振動子を多数配列したフェーズドアレイ(Phased Array)型の超音波プローブ2を採用する。
超音波プローブ2は、超音波送受信制御部3からの指令に基づいて、所定の周波数の超音波を発振し、発振した超音波を配管20,20に向けて照射する。超音波の照射は、超音波送受信制御部3の指令に基づいて、各超音波振動子の駆動順序が1個ずつ又は複数個ずつ決定され、各超音波振動子は所定のタイミングで駆動されて超音波を発振させる。超音波プローブ2はまた、配管20,20から反射した超音波を受信し、受信した超音波に対応する電気信号(超音波信号)を超音波送受信制御部3へ送信する超音波受信部を有する。なお、超音波プローブ2と配管20,20の間には、水、その他の音響媒質が存在するが、図示を省略している。
【0017】
超音波送受信制御部3は、超音波プローブ2での超音波の送受信の制御として、超音波プローブ2で所定の周波数の超音波を発振させて配管20,20へ向けて送信する。一方で、超音波送受信制御部3は、超音波プローブ2から配管20,20で反射した超音波に対応する超音波信号を受信する。
【0018】
処理部4はいくつかの役割を果たす。
処理部4は、超音波送受信制御部3から超音波信号を受け取り、これを例えば開口合成法(SAFT:Synthetic Aperture Technique)により信号処理して、配管20,20の表面形状データを生成する。
また、処理部4は、配管20,20上に原点O(X=0,Y=0)を有する二次元座標系を備えている。また、処理部4は、後述する球体13,14が置かれた配管20,20上の位置P1、P2を保持する。この位置情報は、例えば図4(a)に示されるように、P1=(Xn1,Yn1)、P2=(Xn2,Yn2)とする。位置P1、P2に関する情報は、図示しない入力手段、例えばキーボードから処理部4に入力される。
さらに、処理部4は、表面形状データから、超音波プローブ2に対する球体13,14の位置p1、p2を抽出する。この位置情報は、例えば図4(b)に示されるように、p1=(xn1,yn1)、p2=(xn2,yn2)とする。
さらにまた、処理部4は、位置P1=(Xn1,Yn1)、P2=(Xn2,Yn2)と位置p1=(xn1,yn1)、p2=(xn2,yn2)を照合することにより、配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を特定する。この位置特定の詳細は後述する。
【0019】
表示部5は、処理部4で生成された表面形状データに基づいて配管20,20の表面形状を表示する。表示部5は他に、配管20,20に対する球体13,14の位置情報(P1=(Xn1,Yn1)、P2=(Xn2,Yn2))、及び超音波プローブ2に対する球体13,14の位置情報(p1=(xn1,yn1)、p2=(xn2,yn2))を表示することができる。さらに表示部5は、特定された配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を表示することができる。
【0020】
<超音波プローブ2の位置特定手順>
さて、配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を特定する手順を図1〜図4を参照して説明する。
はじめに、図1、図2に示すように、被検体である配管20,20に目印となる球体13,14を置く(図3 ステップS101)。球体13,14は、溶接部10を跨いでその両側に、配管20,20の軸線C方向に沿って置かれる。溶接部10上に球体13,14を置いてもよいが、第1実施形態では溶接部10の検査結果に影響を与えないようにするために、溶接部10を跨いでその両側に球体13,14を置く。
また、超音波プローブ2からの超音波が照射される範囲に球体13,14が含まれるように球体13,14は相互の間隔が設定される。球体13,14の両者を確実に検知するためである。したがって、溶接部10の余盛11の軸線方向の寸法をL1、超音波プローブ2から配管20,20上に照射される超音波の範囲の軸線方向の寸法をL2、球体13,14の軸線方向の間隔をL3とすると、L1<L3<L2の関係が成り立つように、球体13,14が置かれる。
目印としての球体13,14は超音波の入射角度によって反射率が変化しない点で本発明にとって好ましい。ただし、本発明の目印は球体に限らず、超音波探傷装置1により識別できるのであれば、他の形状の物体を目印に用いることができる。
【0021】
次に、配管20,20に対する球体13,14の位置を特定する(図3 ステップS103)。
この位置を特定するためには、図4(a)に示すように、配管20,20上に二次元座標の原点O(X=0,Y=0)を定め、この原点を基準にした球体13,14の位置を計測すればよい。原点Oは球体13,14を置く前から、例えば、図1、図2に示すように定めておくことができる。原点は配管20,20に刻印をしておくことによって可視化できる。この原点を基準にして計測された球体13,14の位置は、図4(a)に示すように、原点Oを基準とする二次元座標上のP1(Xn1,Yn1)、P2=(Xn2,Yn2)に表される。
なお、P1(Xn1,Yn1)、P2=(Xn2,Yn2)を配管20,20上に予め定めておき、そこに球体13,14を置くことで、配管20,20に対する球体13,14の位置を特定することもできる。
【0022】
次に、超音波プローブ2を配管20,20に対向させた(図3 ステップS105)後に、超音波プローブ2から配管20,20に向けて超音波を照射することで、配管20,20の表面形状を計測する(図3 S107)。このとき、超音波プローブ2は超音波が溶接部10を漏れなく照射されるように、配管20,20の軸線方向に沿って置かれる。表面形状の計測結果は、例えば図4(b)の線図D1として得られる。線図D1は、中央が上に突となる部分が余盛11に対応し、また、余盛11を挟んだ両側の突の部分が球体13,14に対応することを示している。なお、この計測の過程で裏波12に対応する超音波を超音波プローブ2は受信するが、本実施形態はこの超音波信号を計測結果に反映する必要がない。
【0023】
次に、表面形状の計測結果(線図D1)から、超音波プローブ2に対する球体13,14の位置を特定する(図3 ステップS109)。この位置の特定は、線図D1を読み込んだ処理部4が行う。特定された位置は、図4(b)に示すように、超音波プローブ2上に原点を置く二次元座標上に、例えばp1=(xn1,yn1)、p2=(xn2,yn2)と表される。
【0024】
以上のようにして、本実施形態は、配管20,20上に原点を置く二次元座標αにおける球体13,14の位置P1、P2、及び、超音波プローブ2上に原点を置く二次元座標βにおける球体13,14の位置p1、p2を得る。位置P1と位置p1、位置P2と位置p2は実際には一致するから、位置P1と位置p1、及び、位置P2と位置p2を照合することで、二次元座標β上の位置(原点oを含む)を二次元座標α上に表すことができる。
【0025】
これを視覚的に示したのが、図5である。
図5(a)は、配管20,20上の原点O、位置P1、P2をその相対的な位置関係を維持したままで図4(a)から抜き出したものであり、図5(b)は超音波プローブ2上の原点o、位置p1、p2をその相対的な位置関係を維持したままで図4(b)から抜き出して示したものである。
図5(b)に示される原点o、位置p1、p2を、相対的な位置関係を維持したままで、図5(a)に示される位置P1、P2に位置p1、p2を一致させるように平行移動と回転を組み合わせて移動、つまり照合させる。そうすると、図5(c)に示すように、配管20,20上に原点を置く二次元座標上における移動後の原点oの位置が例えば(Xn3,Yn3)として表される。
位置(Xn3,Yn3)は、配管20,20上に原点を置く二次元座標α上における超音波プローブ2上の特定の部位についてのものであるが、超音波プローブ2の形状、寸法は既知であるから、超音波プローブ2上のいかなる部位の位置も二次元座標α上の位置、つまり配管20,20に対する位置として表すことができる。このようにして、被検体である配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を特定する(図3 ステップS111)。
【0026】
以上のようにして配管20,20に対する超音波プローブ2の位置が特定されたならば、溶接部10の検査を超音波探傷により行う。この検査は公知の手法に従って行うことができる。
【0027】
以上説明したように、第1実施形態によれば、被検体である配管20,20に置かれた目印に基づいて超音波プローブ2の位置を特定できるので、超音波プローブ2に対して被検体が置かれた状態に関わらず、被検体に対する超音波プローブ2の位置を正しく特定できる。
また、前述した本特許文献1は、水槽内に目印(水平板と球体)を設置することが必要であるために局部水浸法による超音波探傷に適用することができないのに対して、本実施形態は、被検体に目印を設けるものであるから、局部水浸法による超音波探傷にも適用できる。
【0028】
[第2実施形態]
以上説明した第1実施形態では目印として2つの球体13,14を設けたが、本発明はこれに限定されず、配管20,20に1つの目印を設けるだけでも、配管20,20に対する超音波プローブ2の正しい位置を特定できる。以下、その例を第2実施形態として説明する。
第2実施形態は、図6に示すように、1つの球体13を配管20,20上に設けるのに加えて、超音波プローブ2に傾斜角センサ6を設ける。傾斜角センサ6は、水平面に対する超音波プローブ2の傾斜角θを検出する。傾斜角センサ6で検出された傾斜角θは、処理部4に送られる。なお、球体13の代わりに球体14を設けてもよい(第3実施形態、第4実施形態も同様)。
【0029】
第2実施形態も、以下の点を除いて第1実施形態と同様の手順で超音波プローブ2の位置の特定が行われる。
図7に示すように、ステップS203において、球体13の位置P1のみが特定される。その結果は、図8(a)に示す通りである。
また、ステップS207において、表面形状を計測する際に、傾斜角センサ6で検出された超音波プローブ2の傾斜角θを検出する。処理部4はこの傾斜角θを取得する。表面形状の計測結果は、図8(b)の線図D2のように、余盛11に対応する突部、球体13に対応する突部を備える。
なお、図7に示すステップSの番号が図3と同じものは、第1実施形態と同じ処理を行うことを意味する。以下も同様である。
【0030】
計測結果から球体13の位置p1を第1実施形態と同様に特定した(図9 ステップS209)後に、以下のようにして被検体である配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を特定する(図9 ステップS211)。
図9(a)は、配管20,20上の原点O、位置P1をその相対的な位置関係を維持したままで図8(a)から抜き出して示したものであり、図9(b)は超音波プローブ2上の原点o、位置p1をその相対的な位置関係を維持したままで図8(b)から抜き出して示したものである。
図9(b)に示される原点oと位置p1を、相対的な位置関係を維持したままで、図9(a)に示される位置P1に位置p1を一致させるように平行移動させ、さらに、原点Oを中心にして原点oを傾斜角θに相当する角度だけ回転させて照合する。回転後の原点oの位置(Xn4,Yn4)は、配管20,20上に原点を置く二次元座標上における超音波プローブ2上の特定の部位の位置を示す。
【0031】
以上説明したことから明らかなように、目印(球体13)を一箇所だけに置いた場合でも、超音波プローブ2に対して被検体が置かれた状態に関わらず、被検体に対する超音波プローブ2の位置を正しく特定できる。
【0032】
[第3実施形態]
第3実施形態も、配管20,20には1つの目印(球体13)を設けることで、配管20,20に対する超音波プローブ2の正しい位置を特定する方法に関する。
図10、図11に示されるように、第3実施形態においても、傾斜角センサ6による傾斜角θの検知を除いて、第2実施形態と同様の手順を実施する。したがって、配管20,20に球体13を置いて超音波探傷により表面形状を計測した結果、その結果に基づく超音波プローブ2に対する球体13の位置の特定が得られることを第3実施形態は前提とする。
【0033】
第3実施形態は、超音波探傷により配管20,20の表面形状を計測するのと同じ範囲を、超音波探傷とは異なる他の表面形状計測方法、例えばレーザビームLBを用いた表面形状計測法により計測する(図10(b)、図11 ステップS310)。計測結果は、例えば図12(c)に線図D3として示す通りである。なお、図12(a)、(b)は、各々図8(a)、(b)と同じ計測結果(1つの球体13)を示している。
【0034】
超音波探傷による計測結果及びレーザによる計測結果が揃ったならば、両者を比較することで被検体である配管20,20に対する超音波プローブ2の位置を特定する(図11 ステップS311)。比較は、以下のように行なう。
図13(a)に示すように、超音波探傷による計測結果(線図D2,図12(b))を、レーザによる計測結果(線図D3,図12(c))に重ね合わせる。その際、球体13に対応する突部分を一致させるように平行移動させるとともに、一致させた突部分を中心に超音波探傷による計測結果を回転させる。このとき、超音波プローブ2上の原点oと位置p1の相対的な位置関係は維持される。その結果は、図13(b)に示す通りである。次いで、図13(b)に示される原点oと位置p1の相対的な位置関係を維持したままで、図12(a)に示される位置P1に位置p1を一致させるように平行移動させる。図13(c)に示されるように、移動後の原点oの位置(Xn5,Yn5)は、配管20,20上に原点を置く二次元座標上における超音波プローブ2上の特定の部位の位置を示す。
【0035】
以上説明したことから明らかなように、目印(球体13)を一箇所だけに置いた場合でも、超音波プローブ2に対して被検体が置かれた状態に関わらず、被検体に対する超音波プローブ2の位置を正しく特定できる。
【0036】
[第4実施形態]
次に、局部水浸法による超音波探傷に本発明を適用する例を第4実施形態として説明する。
図14に示されるように、局部水浸法は、音響媒質が充填されたケース7の中の所定位置に超音波プローブ2が配置される。そして、超音波探傷を行なう際に、このケース7を被検体である配管20,20に接触させる。なお、第4実施形態も、配管20,20に設置するのは1つの球体13とする点で第2実施形態、第3実施形態と同じであり、ケース7の位置を特定することの手順を除くと、第2実施形態と同様の手順を実施する(図15)。
【0037】
第4実施形態は、ケース7が配管20,20に接触する(図15 ステップS405)部位の位置P3を特定する(図15 ステップS407)。これは、球体13の位置の特定と同様に行えばよい。なお、特定された位置P3を(Xn3,Yn3)とする。この位置P3(Xn3,Yn3)は、配管20,20上に原点Oを置く二次元座標上に示されるものであり、第1実施形態の球体14を代替するものと捉えることができる。したがって、配管20,20上に原点Oがある二次元座標において、位置P1(Xn1,Yn1)と位置P3(Xn3,Yn3)が既知となる。この位置関係を図16(a)に示す。
一方で、超音波プローブ2上に原点Oを置く二次元座標上の球体13の位置p1(xn1,yn1)が得られることは第1実施形態などで説明した通りであり、図16(b)に再掲する。また、配管20,20に接触するケース7の部位の超音波プローブ2に対する位置は予め計測できるから既知であり、それをp3(Xn3,Yn3)として図16(b)に示すように加える。
【0038】
後は第1実施形態と同様に、図16(b)に示される原点o、位置p1及び位置p4を、相対的な位置関係を維持したままで、図16(a)に示される位置P1、P3に位置p1、p4を一致させるように平行移動と回転を組み合わせて移動させる。そうすると、配管20,20上に原点を置く二次元座標上におけるケース7上の特定の位置を得ることができる。ケース7内おける超音波プローブ2の位置は既知であるから、配管20,20上に原点を置く二次元座標上における超音波プローブ2の位置を特定できる。
【0039】
以上、第1実施形態〜第4実施形態で示したように、本実施形態によると、配管20,20に対する超音波プローブ2の正しい位置、換言すると超音波探傷における正しい計測位置を特定することができるので、後に行なわれる実際の超音波探傷による配管20,20(溶接部10)の検査を適切に行なうことができる。
【0040】
以上説明した実施形態では、溶接部10を備えた配管20,20を被検体としたが、これに限らず超音波探傷で検査される被検体に本発明を広く適用することができる。
また、以上説明した実施形態では、フェーズドアレイ型の超音波プローブ2を用いたが、単一の超音波振動子からなるシングルプローブを用いることができる。この場合には、シングルプローブを走査することで、必要な検査領域に漏れなく超音波を照射する。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 超音波探傷装置
2 超音波プローブ
3 超音波送受信制御部
4 処理部
5 表示部
6 傾斜角センサ
7 ケース
10 溶接部
11 余盛
12 裏波
13,14 球体
20 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体上の位置Pが既知の目印を含む被検体に超音波プローブから検査音波を照射して被検体の表面形状を計測するステップ(a)と、
計測された前記被検体の表面形状の結果から、前記超音波プローブに対する前記目印の位置pを特定するステップ(b)と、
前記位置Pと前記位置pに基づいて、前記被検体に対する前記超音波プローブの位置を特定するステップ(c)と、
を備えることを特徴とする超音波プローブの位置特定方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)は、前記被検体に対する位置がP1である第1目印と、前記被検体に対する位置がP2である第2目印と、を含む前記被検体に前記超音波プローブから前記検査音波を照射して被検体の表面形状を計測し、
前記ステップ(b)は、計測された前記被検体の表面形状の結果から、前記超音波プローブに対する第1目印の位置p1及び第2目印の位置p2を特定し、
前記ステップ(c)は、前記位置P1及び位置P2と位置p1及び位置p2に基づいて、前記被検体に対する前記超音波プローブの位置を特定する、
請求項1に記載の超音波プローブの位置特定方法。
【請求項3】
前記被検体が、溶接部を介して突合せ端が接合された配管であり、
前記溶接部を挟む両側に、前記配管の軸線方向に沿って前記第1目印と前記第2目印を設ける、
請求項2に記載の超音波プローブの位置特定方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)は、前記被検体に対する位置がP1である第1目印を含む前記被検体に前記超音波プローブから前記検査音波を照射して被検体の表面形状を計測し、
前記ステップ(b)は、計測された前記被検体の表面形状の結果から、前記超音波プローブに対する第1目印の位置p1を特定し、
前記ステップ(c)は、前記位置P1と位置p1及び計測された前記超音波プローブの傾きsに基づいて、前記被検体に対する前記超音波プローブの位置を特定する、
請求項1に記載の超音波プローブの位置特定方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)は、前記被検体に対する位置がP1である第1目印を含む前記被検体に前記超音波プローブから前記検査音波を照射して被検体の表面形状を計測し、
前記ステップ(b)は、計測された前記被検体の表面形状の結果から、前記超音波プローブに対する第1目印の位置p1を特定し、
前記ステップ(c)は、前記位置P1と位置p1及び超音波探傷以外の手法で計測された前記被検体の表面形状に基づいて、前記被検体に対する前記超音波プローブの位置を特定する、
請求項1に記載の超音波プローブの位置特定方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)は、前記被検体に対する位置がP1である第1目印を含む前記被検体に前記超音波プローブから前記検査音波を照射して被検体の表面形状を計測し、
前記ステップ(b)は、計測された前記被検体の表面形状の結果から、前記超音波プローブに対する第1目印の位置p1を特定し、
前記ステップ(c)は、前記位置P1と位置p1及び前記超音波プローブの前記被検体上の位置P3に基づいて、前記被検体に対する前記超音波プローブの位置を特定する、
請求項1に記載の超音波プローブの位置特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−61238(P2013−61238A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199804(P2011−199804)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】