説明

超音波プローブ及び超音波診断装置

【課題】複数の超音波トランスデューサから出力される受信信号のデータ量を減少させることにより、超音波プローブと超音波診断装置本体とを接続する信号線の本数を低減したり、ワイアレス化を図る。
【解決手段】この超音波プローブは、超音波エコーを受信して受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサと、各超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号及び複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成する信号処理手段と、振幅信号及び位相信号をサンプリングすることによりサンプルデータを生成するサンプリング手段と、パラレルのサンプルデータをシリアルのサンプルデータに変換するシリアル化手段と、シリアルのサンプルデータを伝送する伝送手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信する複数の超音波トランスデューサを内蔵する超音波プローブ、及び、そのような超音波プローブを用いて超音波診断画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、被検体の内部を観察して診断を行うために、様々な撮像技術が開発されている。特に、超音波を送受信することによって被検体の内部情報を取得する超音波撮像は、リアルタイムで画像観察を行うことができる上に、X線写真やRI(radio isotope)シンチレーションカメラ等の他の医用画像技術と異なり、放射線による被曝がない。そのため、超音波撮像は、安全性の高い撮像技術として、産科領域における胎児診断の他、婦人科系、循環器系、消化器系等を含む幅広い領域において利用されている。
【0003】
超音波撮像の原理は、次のようなものである。超音波は、被検体内における構造物の境界のように、音響インピーダンスが異なる領域の境界において反射される。そこで、超音波ビームを人体等の被検体内に送信し、被検体内において生じた超音波エコーを受信して、超音波エコーが生じた反射位置や反射強度を求めることにより、被検体内に存在する構造物(例えば、内臓や病変組織等)の輪郭を抽出することができる。
【0004】
一般に、超音波診断装置においては、超音波の送受信機能を有する複数の超音波トランスデューサ(振動子)を含む超音波プローブが用いられる。超音波エコーを受信した振動子から出力される受信信号は、超音波の焦点からそれぞれの振動子までの距離の差に応じた遅延を伴うので、振動子の位置に応じた遅延をそれらの受信信号に与えた後にそれらの受信信号を加算することによって、特定の位置に焦点を結ぶビームフォーミング処理(受信フォーカス処理)が行われる。その際に、複数の受信信号が加算されるまでは、それらの受信信号は並列データとして扱われる。
【0005】
この受信フォーカス処理は、通常、ディジタル信号処理によって行われる。即ち、A/D変換された受信信号は、メモリに蓄えられた後、読み出し時刻を随時変えながら読み出され、適度に補間処理が施されて加算される。複数の受信信号が加算されると、信号のチャンネル数が1つになるので、無線通信によって信号伝送を行うことも可能となる。従って、受信フォーカス処理を行うための回路を超音波プローブの中に組み込めば、超音波プローブと超音波診断装置本体とを接続する信号線の本数を低減したり、ワイアレス化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、受信フォーカス処理においては、受信信号に与える遅延量が焦点の位置によって異なるので、メモリからの読み出し時刻の制御は極めて複雑となり、大規模な回路が必要になる。そのような回路を超音波プローブの中に組み込むと、もはや片手で容易に操作できるような実用的な大きさではなくなってしまう。
【0007】
関連する技術として、特許文献1には、高精細化に伴い振動素子数が増加しても伝送ケーブルの細径化、軽量化が可能であり、操作性の維持及び向上を行うことのできる超音波探触子を有する超音波診断装置が開示されている。この超音波診断装置は、複数の振動素子を用いて生体に対して超音波パルスの送受波を行う超音波探触子と、当該超音波探触子に伝送ケーブルを介して接続され超音波探触子から超音波パルスを送波するための送波信号の生成及び生体で反射して超音波探触子で受波した超音波パルス(エコー)に基づく受波信号から超音波画像を形成する装置本体とを含み、伝送ケーブルを介して超音波探触子と装置本体との間で受け渡しされる送波信号及び受波信号が、伝送前に各振動素子に対応して時分割的に区切られてチップ化され、各チップが、伝送ケーブル内の共用信号線を利用して順次伝送されることを特徴とする。
【0008】
しかしながら、特許文献1の超音波診断装置においては、各振動素子から出力される受波信号がそのままの帯域で伝送されるので、データ量を削減することができず、高い伝送レートが必要となる。また、受波信号が時分割によって伝送されるので、伝送後にビームフォーミング処理を確実に行えるという保証がない。
【0009】
特許文献2には、超音波プローブと装置本体との間で無線伝送を行うワイアレス超音波診断装置が開示されている。この超音波診断装置においては、超音波プローブが、複数の振動子と、それらの振動子に対応した増幅器及びA/D変換器と、ディジタルビームフォーマと、PS変換部と、制御データ挿入部と、変調器と、電力増幅器とを含んでおり、超音波プローブ内においてディジタルビームフォーミング処理が行われて整相加算データが生成され、さらに、整相加算データがパラレル/シリアル変換される。
【0010】
しかしながら、超音波プローブ内においてディジタルビームフォーミング処理を行うためには、従来の超音波診断装置におけるフロントエンド回路を超音波プローブ内にまるごと収めなくてはならず、回路規模が膨大になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−299648号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2008−18107号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、複数の超音波トランスデューサから出力される受信信号のデータ量を減少させることにより、超音波プローブと超音波診断装置本体とを接続する信号線の本数を低減したり、ワイアレス化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波プローブは、複数の駆動信号に従って超音波を送信すると共に、超音波エコーを受信して複数の受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサと、各超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号及び複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成する信号処理手段と、信号処理手段によって生成された振幅信号及び位相信号をサンプリングすることによりサンプルデータを生成するサンプリング手段と、サンプリング手段によって生成されたパラレルのサンプルデータをシリアルのサンプルデータに変換するシリアル化手段と、シリアル化手段によって変換されたシリアルのサンプルデータを伝送する伝送手段とを具備する。
【0014】
また、本発明の1つの観点に係る超音波診断装置は、本発明に係る超音波プローブと、超音波プローブから伝送されたシリアルのサンプルデータをパラレルのサンプルデータに変換し、パラレルのサンプルデータから振幅信号及び位相信号を抽出するパラレル化手段と、受信フォーカスと複数の超音波トランスデューサとの相対位置に応じて、パラレル化手段によって抽出された位相信号によって表される位相値を補正する位相補正手段と、パラレル化手段によって抽出された振幅信号によって表される振幅値と位相補正手段によって補正された位相値とに基づいて複素ベースバンド信号の実数成分及び/又は虚数成分を求める演算手段と、演算手段によって複数の超音波トランスデューサについて求められた複素ベースバンド信号の実数成分を加算することにより整相加算実数信号を生成し、及び/又は、演算手段によって複数の超音波トランスデューサについて求められた複素ベースバンド信号の虚数成分を加算することにより整相加算虚数信号を生成する加算手段とを具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1つの観点によれば、超音波プローブにおいて、各超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、さらに、複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号及び複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成し、振幅信号及び位相信号をサンプリングすることによって生成されたパラレルのサンプルデータをシリアルのサンプルデータに変換して超音波診断装置本体に伝送することにより、複数の超音波トランスデューサから出力される受信信号のデータ量を減少させて、超音波プローブと超音波診断装置とを接続する信号線の本数を低減したり、ワイアレス化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す送受信部の第1の構成例を示す図である。
【図3】図1に示す送受信部の第2の構成例を示す図である。
【図4】図3に示す直交サンプリング部の動作を説明するための波形図である。
【図5】図1に示す整相加算部の構成例を示す図である。
【図6】図5に示す整相加算部の動作を説明するための図である。
【図7】配列振動子によって超音波ビームが点Oの方向に向けて送信されたときの受信信号の様子を示す図である。
【図8】配列振動子によって超音波ビームが点Oの方向に向けて送信されたときの受信信号の様子を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態の変形例に係る超音波プローブの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この超音波診断装置は、本発明の一実施形態に係る超音波プローブ1と、超音波診断装置本体2とによって構成される。
【0018】
超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでも良いし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでも良い。図1に示すように、超音波プローブ1は、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ10と、複数チャンネルの送受信部20と、シリアル化部30と、送信制御部40と、伝送回路50とを含んでいる。
【0019】
複数の超音波トランスデューサ10は、印加される複数の駆動信号に従って超音波を送信すると共に、伝搬する超音波エコーを受信して複数の受信信号を出力する。各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0020】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮により、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生し、それらの超音波の合成によって超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することによって伸縮し、電気信号を発生する。それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0021】
各チャンネルの送受信部20は、送信制御部40の制御の下で駆動信号を生成して、その駆動信号を超音波トランスデューサ10に供給すると共に、超音波トランスデューサ10から出力される受信信号に対して直交検波処理等を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、さらに、複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号及び複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成し、振幅信号及び位相信号をサンプリングして生成されたパラレルのサンプルデータをシリアル化部30に供給する。
【0022】
図2は、図1に示す送受信部の第1の構成例を示す図である。図2に示すように、各チャンネルの送受信部20は、送信回路21と、プリアンプ22と、ローパスフィルタ(LPF)23と、アナログ/ディジタル変換器(ADC)24と、直交検波処理部25と、振幅演算部26aと、位相演算部26bと、サンプリング部27a及び27bと、メモリ28a及び28bとを含んでいる。ここで、送信回路21〜位相演算部26bは、信号処理手段を構成している。
【0023】
送信回路21は、例えば、パルサによって構成されており、送信制御部40の制御の下で駆動信号を生成して、生成された駆動信号を超音波トランスデューサ10に供給する。図1に示す走査制御部140は、超音波ビームの送信方向を順次設定して走査制御信号を生成し、伝送回路60は、走査制御部140によって生成された走査制御信号を伝送回路50に伝送する。送信制御部40は、伝送回路50から供給される走査制御信号に基づいて、複数チャンネルの送信回路21の動作を制御する。
【0024】
例えば、送信制御部40は、走査制御信号によって設定された送信方向に応じて、複数の遅延パターンの中から1つのパターンを選択し、そのパターンに基づいて、複数の超音波トランスデューサ10の駆動信号にそれぞれ与えられる遅延時間を設定する。あるいは、送信制御部40は、複数の超音波トランスデューサ10から一度に送信される超音波が被検体の撮像領域全体に届くように遅延時間を設定しても良い。
【0025】
複数チャンネルの送信回路21は、送信制御部40によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数の超音波トランスデューサ10から送信される超音波が超音波ビームを形成するように複数の駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサ10に供給し、あるいは、複数の超音波トランスデューサ10から一度に送信される超音波が被検体の撮像領域全体に届くように複数の駆動信号を複数の超音波トランスデューサ10に供給する。
【0026】
プリアンプ22は、超音波トランスデューサ10から出力される受信信号(RF信号)を増幅し、LPF23は、プリアンプ21から出力される受信信号の帯域を制限することにより、A/D変換におけるエリアジングを防止する。ADC24は、LPF23から出力されるアナログの受信信号をディジタルの受信信号に変換する。例えば、超音波の周波数が5MHz程度であるとすれば、40MHzのサンプリング周波数が用いられる。その場合に、1サンプルに相当する生体内距離は約0.038mmとなるので、4096サンプルで約15.7cmの深度までのデータが得られることになる。
【0027】
受信開口における超音波トランスデューサの数を64個とし、超音波診断画像の1フレームについて100本の超音波受信ライン(音線)が必要であるとすれば、1フレームの画像を表示するために必要なデータ量は、4096×64×100≒26×10個となり、毎秒10フレームの画像を表示するためには、約260×10個/秒のデータ転送が必要となる。ここで、超音波診断画像に必要な分解能は、通常、1個のデータについて12ビット程度であるから、上記のデータを伝送するためには、約3120Mbpsの伝送ビットレートが必要となる。
【0028】
このように、RF信号のままでデータの直列化を行うと、伝送ビットレートが極めて高くなり、通信速度やメモリの動作速度がそれに追いつかない。一方、背景技術の説明において述べたように、受信フォーカス処理の後でデータの直列化を行うと、伝送ビットレートを低減することができる。しかしながら、受信フォーカス処理のための回路は、規模が大きく、超音波プローブの中に組み込むことは困難である。そこで、本実施形態においては、受信信号に対して直交検波処理等を施して受信信号の周波数帯域をベースバンド周波数帯域に落とし、さらに、複素ベースバンド信号の振幅情報及び位相情報を求めてデータの直列化を行うことにより、伝送ビットレートを低減させている。
【0029】
直交検波処理部25は、受信信号に対して直交検波処理を施し、複素ベースバンド信号(I信号及びQ信号)を生成する。図2に示すように、直交検波処理部25は、ミキサ(掛算回路)25a及び25bと、ローパスフィルタ(LPF)25c及び25dとを含んでいる。ミキサ25aが、ADC24によってディジタル信号に変換された受信信号に局部発振信号cosωtを掛け合わせて、LPF25cが、ミキサ25aから出力される信号にローパスフィルタ処理を施すことにより、実数成分を表すI信号が生成される。一方、ミキサ25bが、ADC24によってディジタル信号に変換された受信信号に位相をπ/2だけ回転させた局部発振信号sinωtを掛け合わせて、LPF25dが、ミキサ25bから出力される信号にローパスフィルタ処理を施すことにより、虚数成分を表すQ信号が生成される。
【0030】
振幅演算部26aは、直交検波処理部25によって生成された複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号を生成する。ここで、第i番目の超音波トランスデューサから出力される受信信号に基づいて得られる複素ベースバンド信号を構成するI信号及びQ信号をそれぞれR(i)及びI(i)とすると、複素ベースバンド信号の振幅A(i)は、次式(1)によって表される。
A(i)=(R(i)+I(i)1/2 ・・・(1)
【0031】
また、位相演算部26bは、直交検波処理部25によって生成された複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成する。ここで、第i番目の超音波トランスデューサから出力される受信信号に基づいて得られる複素ベースバンド信号を構成するI信号及びQ信号をそれぞれR(i)及びI(i)とすると、複素ベースバンド信号の位相φ(i)は、次式(2)によって表される。
φ(i)=arctan(I(i)/R(i)) ・・・(2)
【0032】
現在最も広く用いられている12ビットAD変換器の場合には、直交検波後の演算語長も12ビットとするのが妥当である。従って、I信号及びQ信号がシリアル化されるとしたら、I信号とQ信号とを合わせて24ビットのデータ量が必要になる。一方、振幅信号のデータ量は、式(1)によればI信号及びQ信号の21/2倍となるから、13ビットあれば十分である。
【0033】
位相情報のデータ量については、2πにおける位相情報をどれだけの分解能で取得するかに依存する。位相情報の分解能は、時間分解能に相当するから、従来の整相加算と比較すれば、送受信される超音波の周波数に対して、その周期の1/16程度あれば十分である。そうだとすると、位相情報のデータ長は4ビットでも足りることになる。仮に、位相情報のデータ長を6ビットにすれば、通常の整相加算に比べて4倍の精度で位相制御が行えることになる。
【0034】
その場合でも、振幅信号のデータ長と位相信号のデータ長とを合わせて19ビットであり、I信号及びQ信号をシリアル化する場合と比較してデータ量の削減を行うことができる。振幅情報と位相情報とを用いるデータのシリアル化においては、対象とする機器の性能規模に応じて、それぞれに最適なデータ語長を選定することができる。
【0035】
サンプリング部27aは、振幅演算部26aによって生成された振幅信号をサンプリング(再サンプリング)する。また、サンプリング部27bは、位相演算部26bによって生成された振幅信号をサンプリング(再サンプリング)する。これにより、2チャンネルのサンプルデータが生成される。生成された2チャンネルのサンプルデータは、メモリ28a及び28bにそれぞれ格納される。
【0036】
図3は、図1に示す送受信部の第2の構成例を示す図である。図3に示す第2の構成例においては、図2に示す第1の構成例におけるミキサ25a及び25bの替わりに直交サンプリング部25eが設けられている。
【0037】
図4は、図3に示す直交サンプリング部の動作を説明するための波形図である。直交サンプリング部25eは、ADC24によってディジタル信号に変換された受信信号をcosωtの位相に同期してサンプリングして第1の信号系列を生成すると共に、受信信号をsinωtの位相に同期してサンプリングして第2の信号系列を生成する。
【0038】
さらに、LPF25cが、直交サンプリング部25eから出力される第1の信号系列にローパスフィルタ処理を施すことにより、実数成分を表すI信号が生成され、LPF25dが、直交サンプリング部25eから出力される第2の信号系列にローパスフィルタ処理を施すことにより、虚数成分を表すQ信号が生成される。これにより、図2に示すミキサ25a及び25bを省略することができる。
【0039】
再び図1を参照すると、シリアル化部30は、複数チャンネルの送受信部20によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。例えば、シリアル化部30は、64個の超音波トランスデューサから出力される64個の受信信号に基づいて得られる128チャンネルのパラレルのサンプルデータを、1〜4チャンネルのシリアルのサンプルデータに変換する。これにより、超音波トランスデューサの数と比較して、伝送チャンネル数が大幅に低減される。
【0040】
伝送回路50は、超音波診断装置本体2から走査制御信号を受信して、受信した走査制御信号を送信制御部40に出力すると共に、シリアル化部30によって変換されたシリアルのサンプルデータを超音波診断装置本体2に送信する。超音波プローブ1と超音波診断装置本体2との間の信号伝送は、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等の通信方式を用いて、有線又は無線で行われる。ASK又はPSKを用いる場合には、1系統で1チャンネルのシリアルデータを伝送することが可能であり、QPSKを用いる場合には、1系統で2チャンネルのシリアルデータを伝送することが可能であり、16QAMを用いる場合には、1系統で4チャンネルのシリアルデータを伝送することが可能である。
【0041】
超音波プローブ1の電源電圧は、超音波プローブ1と超音波診断装置本体2との間の信号伝送が有線で行われる場合には超音波診断装置本体2から供給され、超音波プローブ1と超音波診断装置本体2との間の信号伝送が無線で行われる場合にはバッテリー等によって供給される。超音波プローブ1の電源電圧を超音波診断装置本体2から供給する場合には、超音波プローブ1と超音波診断装置本体2との間に接続される信号線を利用してファントム給電を行っても良い。
【0042】
以上において、直交検波処理部25(図2)、振幅演算部26a(図2)、位相演算部26b(図2)、サンプリング部27a及び27b(図2)、直交サンプリング部25e(図3)、LPF25c及び25d(図3)、及び、シリアル化部30は、ディジタル回路によって構成しても良いし、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(プログラム)とによって構成しても良い。あるいは、直交検波処理部25をアナログ回路によって構成することにより、ADC24を省略しても良い。その場合には、サンプリング部27a及び27bによって、複素ベースバンド信号のA/D変換が行われる。
【0043】
一方、図1に示す超音波診断装置本体2は、伝送回路60と、パラレル化部70と、整相加算部80と、Bモード画像信号生成部90と、表示部100と、操作部110と、制御部120と、格納部130と、走査制御部140とを有している。
【0044】
伝送回路60は、超音波プローブ1からシリアルのサンプルデータを受信する。パラレル化部70は、伝送回路60によって受信されたシリアルのサンプルデータをパラレルのサンプルデータに変換し、パラレルのサンプルデータから、複数の超音波トランスデューサ10から出力される複数の受信信号に基づいて得られた複数の振幅信号及び複数の位相信号を抽出して、それらを整相加算部80に供給する。走査制御部140は、超音波エコーの受信方向を順次設定して、整相加算部80を制御する。
【0045】
図5は、図1に示す整相加算部の構成例を示す図である。図5に示すように、整相加算部80は、位相補正部81と、位相補正値テーブル82と、複数チャンネルの遅延I信号演算部83と、複数チャンネルの遅延Q信号演算部84と、遅延I信号加算部85と、遅延Q信号加算部86とを含んでいる。
【0046】
位相補正部81は、位相補正値テーブル82に格納されている位相補正値を用いることにより、受信フォーカスと複数の超音波トランスデューサとの相対位置に応じて、パラレル化部70によって抽出された位相信号によって表される位相値を補正する。遅延I信号演算部83は、パラレル化部70によって抽出された振幅信号によって表される振幅値と位相補正部81によって補正された位相値とに基づいて、遅延された複素ベースバンド信号の実数成分(遅延I信号)を求める。また、遅延Q信号演算部84は、パラレル化部70によって抽出された振幅信号によって表される振幅値と位相補正部81によって補正された位相値とに基づいて、遅延された複素ベースバンド信号の虚数成分(遅延Q信号)を求める。
【0047】
遅延I信号加算部85は、複数チャンネルの遅延I信号演算部83によって複数の超音波トランスデューサについてそれぞれ求められた遅延I信号を加算することにより、整相加算実数信号(整相加算I信号)を生成する。また、遅延Q信号加算部86は、複数チャンネルの遅延Q信号演算部84によって複数の超音波トランスデューサについてそれぞれ求められた遅延Q信号を加算することにより、整相加算虚数信号(整相加算Q信号)を生成する。
【0048】
図6は、図5に示す整相加算部の動作を説明するための図である。図6においては、1つの超音波トランスデューサに対応する1チャンネル分の信号処理が示されている。
位相補正値テーブル82には、受信フォーカスと複数の超音波トランスデューサとの幾何学的な相対位置に応じて、位相信号によって表される位相値θを補正するための位相補正値φが格納されている。位相補正部81は、走査制御部11において設定された受信方向に応じて位相補正値テーブル82から位相補正値φを読み出し、位相信号によって表される位相値θから位相補正値φを減算することにより、補正位相値(θ−φ)を求める。これは、位相補正値φに相当する時間だけ複素ベースバンド信号を遅延させることに相当する。
【0049】
遅延I信号演算部83は、振幅信号によって表される振幅値Aと位相補正部81によって補正された位相値(θ−φ)とに基づいて、遅延された複素ベースバンド信号の実数成分(遅延I信号)であるA・cos(θ−φ)を求める。また、遅延Q信号演算部84は、振幅信号によって表される振幅値Aと位相補正部81によって補正された位相値(θ−φ)とに基づいて、遅延された複素ベースバンド信号の虚数成分(遅延Q信号)であるA・sin(θ−φ)を求める。
【0050】
再び図5を参照すると、遅延I信号加算部85は、複数チャンネルの遅延I信号演算部83によって複数の超音波トランスデューサについてそれぞれ求められた遅延I信号を加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた整相加算I信号が生成される。また、遅延Q信号加算部86は、複数チャンネルの遅延Q信号演算部84によって複数の超音波トランスデューサについてそれぞれ求められた遅延Q信号を加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた整相加算Q信号が生成される。
【0051】
このように、位相値θを補正することにより、直交検波等によって得られた複素ベースバンド信号に対し、データ補間処理を行うことなく、従来よりも連続的な遅延量を用いて高精度の整相加算を行う受信フォーカス処理を実現することができる。また、整相加算回路を簡略化できると共に、自由度の高いフォーカス設定が可能となる。
【0052】
再び図1を参照すると、Bモード画像信号生成部90は、遅延I信号加算部85によって生成された整相加算I信号、及び/又は、遅延Q信号加算部86によって生成された整相加算Q信号に基づいて、超音波診断画像を表すBモード画像信号を生成する。ここで、Bモードとは、超音波エコーの振幅を輝度に変換して2次元断層画像を表示するモードのことである。Bモード画像信号生成部90は、振幅値演算部91と、STC(sensitivity time control)部92と、DSC(digital scan converter:ディジタル・スキャン・コンバータ)93とを含んでいる。
【0053】
振幅値演算部91は、整相加算I信号と整相加算Q信号との自乗和の平方根を求めることにより、整相加算された複素ベースバンド信号の振幅値を表す整相加算信号を生成する。STC部92は、整相加算部80によって生成された整相加算信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。
【0054】
DSC93は、STC部92によって補正された整相加算信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。表示部100は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、Bモード画像信号生成部90によって生成されたBモード画像信号に基づいて超音波診断画像を表示する。
【0055】
あるいは、画像信号生成部70は、整相加算I信号と整相加算Q信号との内の一方に基づいて画像信号を生成することも可能であり、その場合には、振幅値演算部91を省略すると共に、遅延Q信号演算部84及び遅延Q信号加算部86を省略しても良いし、あるいは、遅延I信号演算部83及び遅延I信号加算部85を省略しても良い。
【0056】
制御部120は、操作部110を用いたオペレータの操作に従って、走査制御部140等を制御する。本実施形態においては、パラレル部70、整相加算部80、Bモード画像信号生成部90、制御部120、及び、走査制御部140が、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(プログラム)とによって構成されるが、それらをディジタル回路やアナログ回路で構成しても良い。上記のソフトウェア(プログラム)は、格納部130に格納される。格納部130における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることができる。
【0057】
ここで、本発明の原理について、図7及び図8を参照しながら詳しく説明する。
図7及び図8は、配列振動子によって超音波ビームが点Oの方向に向けて送信されたときの受信信号の様子を示す図である。図7において、振動子p〜pの上にあるマトリックスは、ディジタル化された受信信号を示すものとする。各振動子の上の列は、その振動子からの時刻tにおける受信信号を示している。例えば、ある時刻において中央の振動子pが点Oからの超音波エコーを受信した場合に、その受信信号は、eの位置に保存される。それと同じタイミングにおいて受信された両端の振動子p及びpからの受信信号は、それぞれe及びeの位置に保存される。
【0058】
しかしながら、それらの受信信号は、点Oよりも近距離からの超音波エコーを表しており、点Oからの超音波エコーは、それぞれ時間t及びtだけ遅れて到達し、図7においては、それぞれe'及びe'の位置に保存されることになる。このとき、点Oが振動子pの直下であればt=tであるから、e'及びe'の位置も同じになる。従来のビームフォーミングにおいては、eの位置における受信信号を実際に時間tだけ遅延させて、e'及びe'の位置における受信信号と加算する方法が採られる。
【0059】
図8において、振動子p1によるe1の位置における受信信号e(nT)が式(3)で示されるものとする。
e(nT)=A(nT)・exp{j(2πfnT+θ)} ・・・(3)
ここで、A(nT)は、点Oからの超音波エコーの信号強度であり、nTは、サンプリング間隔がTのサンプリングレートでAD変換されたn番目のデータであることを示す。この受信信号は、送信周波数fに対して時間nTに相当するだけの位相回転を有しており、θは、深度に応じた位相の初期値である。ここで、同じ時刻に受信した他の振動子による受信信号e(nT)は、式(4)で示される。
(nT)=A(nT+t(i,n))
・exp{j(2πf(nT+t(i,n))+θ)}・・・(4)
【0060】
この受信信号e(nT)は、時間tに相当する深さからの信号であるから、点Oよりも深い点O'からの受信信号である。例えば、図8において、振動子pによる受信信号を考えると、eの位置における受信信号と比較して、時刻が(t−t)だけ先行していることになる。この時間差は、振動子の位置と受信時刻とによって表されるので、t(i,n)で示すことができる。また、t(i,n)は、音源と振動子との幾何学的な相対位置から算出することができる。従来方式のビームフォーミングにおいては、この時間差t(i,n)の分だけ受信信号e(nT)を遅延させることによって、受信信号e(nT)を受信信号e(nT)と同相の信号とし、それらを加算することによって整相加算が行われる。
【0061】
ベースバンド方式においては、受信信号を直交検波することによって、受信信号をベースバンドのI信号及びQ信号に変換する。式(3)及び式(4)によって表される受信信号は、ベースバンドに変換されて、式(5)及び式(6)によって表される。
E(nT)=e(nT)・exp{−j(2πfnT)}
=A(nT)・exp{−jθ} ・・・(5)
(nT)=e(nT)・exp{−j(2πfnT)}
=A(nT+t(i,n))・exp{j(2πft(i,n)+θ)}・・・(6)
【0062】
ここで、t(i,n)>nTのときには、サンプル点nを変更することによって、t(i,n)<nTの状態にすることができる。例えば、t(i,n)=mT+tと置くことが可能であるから、E(nT)において、n番目のデータの替わりにm番目のデータを用いる。この意味するところは、メモリにおいて異なる深さに相当するデータを用いるということであり、ここで、t<Tである。このとき、再サンプルする前であれば、T<1/(2f)であるから、2πf<πになる。これは、T以上の遅延は異なるサンプル点データを用いることによって補正が可能であり、T以下の遅延tについてのみ補正を行えば良いことを示している。このことから、式(6)は、式(7)で置き換えることができる。
(nT)=A(mT+t)・exp{j(2πf+θ)} ・・・(7)
【0063】
ここで、tが十分に小さいことを考慮すると、A(nT+t)は、分解能以下と考えられるから、A(nT)で置き換えても差し支えない。簡単のために、式(8)及び式(9)に示すように置き換えを行う。ただし、An及びθnは、それぞれ直交検波後の振幅と位相である。
A(nT)=A(mT+t)=An ・・・(8)
2πf+θ=θn ・・・(9)
【0064】
従って、式(7)の信号を時間tだけ遅延させるということは、即ち、時間tに相当するだけ位相を戻すことに相当する。従って、I信号及びQ信号は、それぞれ式(10)及び式(11)によって求めることができる。
Rn=An・cos{θn−φ(i,n)} ・・・(10)
In=An・sin{θn−φ(i,n)} ・・・(11)
ただし、φ(i,n)は、式(12)で示され、音源と振動子との幾何学的な相対位置から算出できる。
φ(i,n)=2πft(i,n) ・・・(12)
【0065】
式(10)及び式(11)で得られたI信号及びQ信号は、振動子の数だけ加算することによって、式(13)及び式(14)に示すように、整相加算された情報Rn及びInを得ることができる。
【数1】

画像表示に当たっては、例えば、整相加算された式(13)及び式(14)に基づいて、式(15)に示すように振幅値Vnを算出すれば良い。
【数2】

【0066】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。図9は、本発明の一実施形態の変形例に係る超音波プローブの構成を示すブロック図である。図9に示す超音波プローブ1aにおいては、図1に示す超音波プローブ1に対し、超音波プローブに設けられている複数の超音波トランスデューサ10と送受信部20との間の接続関係を切り換える切換回路11が追加されている。
【0067】
一般に、リニアスキャン方式やコンベックススキャン方式の超音波プローブにおいては、送受信における開口が順次切り換えられながら被検体の走査が行われる。超音波プローブ1aに設けられている超音波トランスデューサの数をNとし、同時に使用される超音波トランスデューサの数をMとすると(M<N)、切換回路11は、N個の超音波トランスデューサの内からM個の超音波トランスデューサを選択し、選択されたM個の超音波トランスデューサをM個の送受信部20にそれぞれ接続する。これにより、図1に示す超音波プローブ1と比較して、送受信部20の数を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波診断画像を生成する超音波診断装置において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 超音波プローブ
2 超音波診断装置本体
10 超音波トランスデューサ
11 切換回路
20 送受信部
21 送信回路
22 プリアンプ
23 LPF
24 ADC
25 直交検波処理部
25a、25b ミキサ
25c、25d LPF
25e 直交サンプリング部
26a 振幅演算部
26b 位相演算部
27a、27b サンプリング部
28a、28b メモリ
30 シリアル化部
40 送信制御部
50、60 伝送回路
70 パラレル化部
80 整相加算部
90 Bモード画像信号生成部
91 振幅値演算部
92 STC部
93 DSC
100 表示部
110 操作部
120 制御部
130 格納部
140 走査制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動信号に従って超音波を送信すると共に、超音波エコーを受信して複数の受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサと、
各超音波トランスデューサから出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号及び複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成する信号処理手段と、
前記信号処理手段によって生成された振幅信号及び位相信号をサンプリングすることによりサンプルデータを生成するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によって生成されたパラレルのサンプルデータをシリアルのサンプルデータに変換するシリアル化手段と、
前記シリアル化手段によって変換されたシリアルのサンプルデータを伝送する伝送手段と、
を具備する超音波プローブ。
【請求項2】
前記超音波プローブに設けられている複数の超音波トランスデューサと前記信号処理手段との間の接続関係を切り換える切換回路をさらに具備する、請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記信号処理手段が、
各超音波トランスデューサから出力される受信信号を増幅するプリアンプと、
前記プリアンプから出力される受信信号の帯域を制限するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタから出力されるアナログの受信信号をディジタルの受信信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、
前記アナログ/ディジタル変換器によって変換されたディジタルの受信信号に対して直交検波処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成する直交検波処理手段と、
前記直交検波処理手段によって生成された複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号を生成する振幅演算手段と、
前記直交検波処理手段によって生成された複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成する位相演算手段と、
を含む、請求項1又は2記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記信号処理手段が、
各超音波トランスデューサから出力される受信信号を増幅するプリアンプと、
前記プリアンプから出力される受信信号の帯域を制限するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタから出力されるアナログの受信信号をディジタルの受信信号に変換するアナログ/ディジタル変換器と、
前記アナログ/ディジタル変換器によって変換されたディジタルの受信信号に対して直交サンプリング処理を施すことにより第1の信号系列及び第2の信号系列を生成する直交サンプリング手段と、
前記直交サンプリング手段によって生成された第1及び第2の信号系列の帯域をそれぞれ制限することにより複素ベースバンド信号を生成するローパスフィルタ手段と、
前記ローパスフィルタ手段によって生成された複素ベースバンド信号の振幅を表す振幅信号を生成する振幅演算手段と、
前記ローパスフィルタ手段によって生成された複素ベースバンド信号の位相を表す位相信号を生成する位相演算手段と、
を含む、請求項1又は2記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記信号処理手段が、前記複数の超音波トランスデューサに複数の駆動信号をそれぞれ供給する複数の送信回路をさらに含む、請求項3又は4記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記伝送手段が、前記シリアル化手段によって変換されたシリアルのサンプルデータを無線で送信する、請求項1〜5のいずれか1項記載の超音波プローブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の超音波プローブと、
前記超音波プローブから伝送されたシリアルのサンプルデータをパラレルのサンプルデータに変換し、パラレルのサンプルデータから振幅信号及び位相信号を抽出するパラレル化手段と、
受信フォーカスと前記複数の超音波トランスデューサとの相対位置に応じて、前記パラレル化手段によって抽出された位相信号によって表される位相値を補正する位相補正手段と、
前記パラレル化手段によって抽出された振幅信号によって表される振幅値と前記位相補正手段によって補正された位相値とに基づいて複素ベースバンド信号の実数成分及び/又は虚数成分を求める演算手段と、
前記演算手段によって前記複数の超音波トランスデューサについて求められた複素ベースバンド信号の実数成分を加算することにより整相加算実数信号を生成し、及び/又は、前記演算手段によって前記複数の超音波トランスデューサについて求められた複素ベースバンド信号の虚数成分を加算することにより整相加算虚数信号を生成する加算手段と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項8】
前記演算手段が、前記パラレル化手段によって抽出された振幅信号によって表される振幅値と前記位相補正手段によって補正された位相値とに基づいて複素ベースバンド信号の実数成分及び虚数成分を求め、
前記加算手段が、前記演算手段によって前記複数の超音波トランスデューサについて求められた複素ベースバンド信号の実数成分を加算することにより整相加算実数信号を生成すると共に、前記演算手段によって前記複数の超音波トランスデューサについて求められた複素ベースバンド信号の虚数成分を加算することにより整相加算虚数信号を生成する、請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記加算手段によって求められた整相加算実数信号と整相加算虚数信号との自乗和の平方根に基づいて、超音波診断画像を表す画像信号を生成する画像信号生成手段をさらに具備する、請求項8記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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