説明

超音波モータ制御装置

【課題】 モータの発熱量を大きくすることなく固着現象を効果的に解消して正常に起動させることが可能な超音波モータ制御装置を提供すること。
【解決手段】 ステータ及びロータを備えてなる超音波モータを制御する超音波モータ制御装置において、通常時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する駆動回路と、上記通常時駆動電圧より高い固着時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する昇圧回路と、上記超音波モータの起動時に上記昇圧回路を適宜使用することにより上記ステータとロータの固着に起因した動作不良をなくす制御手段と、を具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波モータを制御する超音波モータ制御装置に係り、特に、起動時におけるステータとロータの固着現象に起因した動作不良を、超音波モータの発熱量を増大させることなく解消することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波モータ及びその制御を開示したものとして、例えば、特許文献1、特許文献2等がある。
【0003】
【特許文献1】特開平05−91769号公報
【特許文献2】特開2000−278968号公報
【0004】
上記特許文献1に開示されている超音波モータは、図4に示すような構成になっている。まず、上カバー101と下カバー103があり、これら上カバー101と下カバー103との間にはステータ105とロータ107が対向・配置されている。上記ステータ105は弾性体109の図中下面に圧電体111を貼り付けた構成になっている。上記ロータ107にはシャフト113が固定されている。
【0005】
上記ステータ105の圧電体111は二つの電極群に区分けされていて、それら二つの電極群に90°だけ位相がずれた2回路の高周波電圧を印加して圧電体111を振動させる。この圧電体111の振動によって弾性体109に屈曲運動が発生するとともに、その反対側の面に横波と縦波の合成された進行波が発生する。この進行波によってロータ107ひいてはシャフト113が回転駆動されることになる。
【0006】
尚、上記シャフト113の上端はスラスト軸受115によって支持されているとともにラジアルベアリング117によって支持されている。上記スラスト軸受115はスラストボール119とスラストボール受け121、123とから構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の構成によると次のような問題があった。上記ステータ105とロータ107の間に湿気等が入り込んだ場合、ステータ105とロータ107が吸着してしまって摩擦が大きくなってしまう。そのような状態で超音波モータを起動した場合摩擦力が大きいためにロータ107が正常に回転しない場合がある。これがいわゆる「固着現象」である。
このような固着現象に対しては駆動電圧を高くすることにより対処する方法が考えられているが、そのような高電圧を常時印加させた場合には発熱量が増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、モータの発熱量を大きくすることなくステータとロータの固着現象を効果的に解消して正常に起動させることが可能な超音波モータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による超音波モータ制御装置は、ステータ及びロータを備えてなる超音波モータを制御する超音波モータ制御装置において、通常時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する駆動回路と、上記通常時駆動電圧より高い固着時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する昇圧回路と、上記超音波モータの起動時に上記昇圧回路を適宜使用することにより上記ステータとロータの固着現象に起因した動作不良をなくす制御手段と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2による超音波モータ制御装置は、請求項1記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記超音波モータを上記駆動回路によって起動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に上記昇圧回路によって駆動させるものであることを特徴とするものである。
又、請求項3による超音波モータ制御装置は、請求項2記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記超音波モータを上記昇圧回路によって駆動させた後再度上記駆動回路によって駆動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に再度上記昇圧回路によって駆動させ、以下、上記ロータが回転するまで同様の処理を繰り返すものであることを特徴とするものである。
又、請求項4による超音波モータ制御装置は、請求項1記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記超音波モータを上記昇圧回路によって起動させ、その後上記駆動回路に切り替え、次いで、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に上記昇圧回路によって再度駆動させるものであることを特徴とするものである。
又、請求項5による超音波モータ制御装置は、請求項4記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記昇圧回路によって駆動させた後再度上記駆動回路によって駆動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に再度上記昇圧回路によって駆動させ、以下、上記ロータが回転するまで同様の処理を繰り返すものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本願発明の請求項1による超音波モータ制御装置は、ステータ及びロータを備えてなる超音波モータを制御する超音波モータ制御装置において、通常時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する駆動回路と、上記通常時駆動電圧より高い固着時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する昇圧回路と、上記超音波モータの起動時に上記昇圧回路を適宜使用することにより上記ステータとロータの固着に起因した動作不良をなくす制御手段と、を具備した構成になっているので、従来のように高電圧を常時印加する場合に比べて発熱量を低減させることができる。又、コストの低減を図ることができる。
又、請求項2による超音波モータ制御装置は、請求項1記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記超音波モータを上記駆動回路によって起動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に上記昇圧回路によって駆動させるようにしているので、例えば、固着現象が発生していない場合には昇圧回路を駆動させることなく超音波モータを起動させることができ、不要な高電圧の印加がないので上記効果をさらに高めることができる。
又、請求項3による超音波モータ制御装置は、請求項2記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記超音波モータを上記昇圧回路によって駆動させた後再度上記駆動回路によって駆動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に再度上記昇圧回路によって駆動させ、以下、上記ロータが回転するまで同様の処理を繰り返すものとして構成しているので、それによって、上記効果をより高めることができる。
又、請求項4による超音波モータ制御装置は、請求項1記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記超音波モータを上記昇圧回路によって起動させ、その後上記駆動回路に切り替え、次いで、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に上記昇圧回路によって再度駆動させるものとして構成しているので、必ず、昇圧回路を起動させるので、固着現象に起因した動作不良を早期に解消することができる。
又、請求項5による超音波モータ制御装置は、請求項4記載の超音波モータ制御装置において、上記制御手段は上記昇圧回路によって駆動させた後再度上記駆動回路によって駆動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に再度上記昇圧回路によって駆動させ、以下、上記ロータが回転するまで同様の処理を繰り返すものとして構成しているので、上記効果をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、
図1及び図2を参照し本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態による超音波モータ制御装置の構成を示すブロック図である。まず、制御対象である超音波モータ1があり、この超音波モータ1は概略次のような構成になっている。まず、外筐3があり、この外筐3内にはステータ5とロータ7が対向・配置されている。上記ステータ5は弾性体9の図中上面に圧電体11を貼り付けた構成になっている。上記ロータ7にはシャフト13が固定されている。
【0012】
上記ステータ5の圧電体11は二つの電極群に区分けされていて、それら二つの電極群に90°だけ位相がずれた2回路の高周波電圧を印加して圧電体11を振動させる。この圧電体11の振動によって弾性体9に屈曲運動が発生するとともに、その反対側の面に横波と縦波の合成された進行波が発生する。この進行波によってロータ7ひいてはシャフト13が回転駆動されることになる。
【0013】
又、上記超音波モータ1にはエンコーダ15が取り付けられていて、該エンコーダ15によってロータ7及びシャフト13の回転の有無、回転数を検出するように構成されている。
【0014】
上記構成をなす超音波モータ1は制御手段21によって制御されるようになっている。上記制御手段21は次のような構成になっている。まず、CPU23があり、又、駆動回路25と昇圧回路27が設けられている。上記駆動回路25は超音波モータ1を通常時駆動電圧によって駆動させる回路である。上記通常時駆動電圧とは、
例えば、110Vrms程度の駆動電圧である。一方、上記昇圧回路27は超音波モータ1を固着時駆動電圧によって駆動させる回路である。上記固着時駆動電圧は、例えば、200Vrms程度の駆動電圧である。
【0015】
本実施の形態の場合には、超音波モータ1を起動する場合に、まず、駆動回路25によって通常時駆動電圧によって駆動させるようにしている。その後エンコーダ15によってロータ7が回転しているか否かを判別し、それによって、ステータ5とロータ7が回転との間に固着現象が発生しているか否かを判別する。仮に、固着現象が発生していると判別された場合には昇圧回路27による駆動に切り替えるようにしたものである。
【0016】
以上の構成を基に図2のフローチャートを参照してその作用を説明する。まず、ステップS1において電源を入力する。次に、ステップS2に移行して駆動回路25を動作させる。すなわち、超音波モータ1を通常時駆動電圧によって駆動させるものである。次に、ステップS3に移行して、超音波モータ1の回転の有無を判別する。超音波モータ1が回転していると判別された場合には、ステータ5とロータ7との間に固着現象が発生していないとしてそのまま駆動回路25による駆動を継続する。
【0017】
これに対して、ステップS3において、超音波モータ1が回転していないと判別された場合には、ステータ5とロータ7との間に固着現象が発生しているとしてステップS4に移行する。ステップS4では昇圧回路27による動作が実行される。つまり、駆動回路25による駆動から昇圧回路27への駆動に切り替える。つまり、通常時駆動電圧よりも高い200Vrms程度の駆動電圧によって超音波モータ1を駆動するものである。そして、予め設定された時間だけ昇圧回路25による駆動を継続した後ステップS2に戻る。
【0018】
そして、ステップS2に移行して駆動回路25による駆動に戻る。次に、ステップS3に移行して、超音波モータ1の回転の有無をチェックする。超音波モータ1が回転していると判別された場合には、ステータ5とロータ7との間に固着現象が発生していないとしてそのまま駆動回路25による駆動を継続する。これに対して、ステップS3において、超音波モータ1が回転していないと判別された場合には、ステータ5とロータ7との間に固着現象が発生しているとしてステップS4に移行する。
以下、同様の処理を繰り返すことによりステータ5とロータ7との間の固着現象を解消させるものである。
【0019】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、従来のようにステータ5とロータ7との間の固着現象を解消させるために常時高電圧を印加させた場合には発熱量が大きくなってしまうとともにコストの上昇を来たしていたが、本実施の形態の場合には、必要に応じて昇圧回路27を起動させる構成になっているので、発熱量を抑制させることができる。
又、昇圧回路27を常時駆動させるわけではないのでコストの低減を図ることができる。具体的にはコントローラが小型化されるものである。
【0020】
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。前記第1の実施の形態の場合には、まず、駆動回路25によって超音波モータ1を起動させるように構成していたが、この第2の実施の形態の場合には、最初から昇圧回路27によって超音波モータ1を起動させようとするものである。以下、順次説明する。
【0021】
まず、ステップS11において電源を入力する。次いで、ステップS12に移行して、昇圧回路27によって超音波モータ1を起動する。予め設定された時間だけ昇圧回路27による駆動を継続した後ステップS13に移行して駆動回路25による駆動に切り替える。そして、次に、ステップS14に移行して、超音波モータ1の回転の有無をチェックする。超音波モータ1が回転していると判別された場合には、ステータ5とロータ7との間に固着現象が発生していないとしてそのまま駆動回路25による駆動を継続する。これに対して、超音波モータ1が回転していないと判別された場合には、ステータ5とロータ7との間に固着現象が発生しているとしてステップS12に戻る。
以下、同様の処理を繰り返す。
【0022】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができるとともに、起動初期時に必ず昇圧回路27を起動させるようにしているので、仮に、固着現象が発生している場合にはこれを早期に解消することができる。
【0023】
尚、本発明は前記第1、第2の実施の形態に限定されるものではない。
まず、超音波モータ自体の構成はこれを特に限定するものではなく、様々なタイプの超音波モータに適用可能である。
駆動回路25の駆動電圧値、昇圧回路27の駆動電圧値、昇圧回路27による駆動時間等については適宜設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は超音波モータを制御する超音波モータ制御装置に係り、特に、起動時におけるステータとロータの固着現象に起因した動作不良を解消することができるように工夫したものに関し、例えば、各種アクチュエータに組み込まれる超音波モータの制御に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、超音波モータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、超音波モータ制御装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す図で、超音波モータ制御装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図4】従来例を示す図で、超音波モータの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 超音波モータ
3 外筐
5 ステータ
7 ロータ
9 弾性体
11 圧電体
13 シャフト
21 制御手段
23 CPU
25 駆動回路
27 昇圧回路
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びロータを備えてなる超音波モータを制御する超音波モータ制御装置において、
通常時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する駆動回路と、上記通常時駆動電圧より高い固着時駆動電圧によって上記超音波モータを駆動する昇圧回路と、上記超音波モータの起動時に上記昇圧回路を適宜使用することにより上記ステータとロータの固着現象に起因した動作不良をなくす制御手段と、を具備したことを特徴とする超音波モータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波モータ制御装置において、
上記制御手段は上記超音波モータを上記駆動回路によって起動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に上記昇圧回路によって駆動させるものであることを特徴とする超音波モータ制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波モータ制御装置において、
上記制御手段は上記超音波モータを上記昇圧回路によって駆動させた後再度上記駆動回路によって駆動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に再度上記昇圧回路によって駆動させ、以下、上記ロータが回転するまで同様の処理を繰り返すものであることを特徴とする超音波モータ制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の超音波モータ制御装置において、
上記制御手段は上記超音波モータを上記昇圧回路によって起動させ、その後上記駆動回路に切り替え、次いで、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に上記昇圧回路によって再度駆動させるものであることを特徴とする超音波モータ制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の超音波モータ制御装置において、
上記制御手段は上記昇圧回路によって駆動させた後再度上記駆動回路によって駆動させ、上記ロータが回転したか否かを判別し、回転していないと判別された場合に再度上記昇圧回路によって駆動させ、以下、上記ロータが回転するまで同様の処理を繰り返すものであることを特徴とする超音波モータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−154352(P2008−154352A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339337(P2006−339337)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】