超音波モータ
【課題】振動子が被駆動体を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供すること。
【解決手段】圧電積層体2aを有する超音波振動子2と、前記超音波振動子2に固着され且つ前記超音波振動子2を保持する保持部材3と、前記保持部材3を押圧する押圧部材9と、前記超音波振動子2との間の摩擦力により駆動される被駆動部材4と、を具備し、前記押圧部材9は丸穴部9cを有し、前記保持部材3は前記押圧部材9による押圧の方向において前記丸穴部9cと係合する円錐形状突起部3aを有し、前記丸穴部9cと前記円錐形状突起部3aとが当接することで、前記押圧部材9が、前記保持部材3及び前記超音波振動子2を介して前記被駆動部材4を押圧して、前記被駆動部材4を駆動する超音波モータ。
【解決手段】圧電積層体2aを有する超音波振動子2と、前記超音波振動子2に固着され且つ前記超音波振動子2を保持する保持部材3と、前記保持部材3を押圧する押圧部材9と、前記超音波振動子2との間の摩擦力により駆動される被駆動部材4と、を具備し、前記押圧部材9は丸穴部9cを有し、前記保持部材3は前記押圧部材9による押圧の方向において前記丸穴部9cと係合する円錐形状突起部3aを有し、前記丸穴部9cと前記円錐形状突起部3aとが当接することで、前記押圧部材9が、前記保持部材3及び前記超音波振動子2を介して前記被駆動部材4を押圧して、前記被駆動部材4を駆動する超音波モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電磁モータに比べて小型、高トルク、長ストローク、且つ高分解能の超音波モータが多く使用されてきている。
【0003】
ところで、超音波モータは、超音波振動子を被駆動部材に押し付けることで、両者間に発生する摩擦力によって前記被駆動体を駆動するモータである。そして、超音波振動子を被駆動部材に押し付ける為の押圧機構としては、例えば特許文献1に、図12に示すような押圧機構が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、振動子114と、該振動子114の下部に固定された突起113と、該突起113に当接する可動体としてのレール118と、該レール118の下面に接し、レール118を案内する回転部材112と、前記振動子114の上面に当接されるバネ部材117と、該バネ部材117と振動子114との間に設置されているゴムシート115と、前記バネ部材117及びゴムシート115を貫通して振動子114に固定される柱状止め具121と、前記バネ部材117を押圧する固定部材119とによって構成されている。
【0005】
より具体的には、前記バネ部材117は、前記ゴムシート115に接する平面部117aと、この平面部117aの両端から当該平面部117aに対して対称に延長されて形成された平面部117b,117cとを備える。そして、この平面部117b及び平面部117cにおける先端部が前記固定部材119によって押し下げられて、前記平面部117aと前記平面部117b,117cとの境界線近傍が変形させられることにより、前記平面部117aが下方(前記振動子114の方向)に押し下げられる構造となっている。
【0006】
引用文献1に開示されている押圧機構では、上述したような構造により、前記振動子114(前記突起113)を被駆動体である前記レール118に押し付ける押圧力を発生させている。
【0007】
ところで、前記バネ部材117における前記平面部117aには矩形状の貫通穴部(不図示)が設けられている。さらに、前記バネ部材117と前記振動子114との間に挟まれて設けられている前記ゴムシート115にも、同様の矩形状の貫通穴部(不図示)が設けられている。そして、前記柱状止め具121は、前記バネ部材117及び前記ゴムシート115の両者に設けられた矩形状の貫通穴部(不図示)を貫通して、前記振動子114に固定されている。
【0008】
前記柱状止め具121は、当該柱状止め具121における側面部が前記バネ部材117及び前記ゴムシート115における貫通穴部(不図示)の断面に囲まれるように設置されている。これにより、前記振動子114は、前記ゴムシート115との接触平面内における位置が規制される構造となっている。
【特許文献1】特開平10−327589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている押圧機構によれば、柱状止め具121をバネ部材117及びゴムシート115の貫通穴部(不図示)に挿入することから、前記柱状止め具121と、前記バネ部材117及び前記ゴムシート115との間には若干の隙間を設けることが必要である。
【0010】
例えば、特許文献1には具体的な記載は為されていないが、例えば軸と穴との隙間バメ(部品を相対的に動かしえる緩合)の場合、φ=3〜6mm程度の径寸法であれば最大0.125mmの隙間を設けることが推奨されている。
【0011】
なお、組立性を向上させる為には、前記隙間は大きいほうが望ましく、上述した数値よりも大きな隙間を設けることが望まれる。
【0012】
ところで、振動子を振動させて摩擦力により被駆動体を駆動させる場合においては、例えば図12に示すように振動子114は、当然被駆動体である前記レール118から反力を受けて当該レール118を駆動させる向きと逆向きに動作しようとする。
【0013】
従って、図12に示す例のように、前記ゴムシート115及び前記バネ部材117と、前記振動子114との間に隙間が存在する場合、前記ゴムシート115の弾性変形が生じたときに、この隙間の範囲内で(図12の点線で示す振動子114の位置に)、前記振動子114が動作してしまうという問題が生じる。
【0014】
そして、この振動子114が動作している間は、被駆動体である前記レール118は、前記振動子114から駆動力を受けても所望の量を動くことはできず、最悪の場合には前記レール118が全く動かない場合も発生してしまう。
【0015】
また、前記レール118が駆動開始後しばらくして前記振動子114が位置ずれした後、柱状止め具121の側面部(不図示)と、バネ部材117に設けられた矩形状の貫通穴部(不図示)の断面部(不図示)とが当接した状態となって初めて振動子114の動作が規制されるのであるが、前記レール118が逆方向に駆動する際にも同様の問題が発生する。
【0016】
仮に、前記ゴムシート115を介さずにバネ部材117で振動子114を直接押圧する構造としても、柱状止め具121の側面部(不図示)と、バネ部材117に設けられた矩形状の貫通穴部(不図示)の断面部(不図示)との当接面での摺りが発生し、同様の位置ずれが発生する。
【0017】
以上説明したように、上述した構成では、例えば所望の微小量を駆動させる際に振動子114自体が位置ずれを起こすことに起因して、駆動量が安定しないという問題がある。
【0018】
なお、仮に柱状止め具121とバネ部材117における貫通穴部(不図示)との隙間を設けないようにすることで、前記の問題を解決しようとした場合、柱状止め具121を変形させて前記貫通穴部(不図示)に挿入(すなわち圧入)することが考えられる。この場合には、貫通穴部(不図示)及び柱状止め具121の寸法管理が厳しく要求される。これらの寸法のばらつきは、前記バネ部材117の圧入方向の位置のばらつきを生じさせるからである。
【0019】
そして、このように前記バネ部材117の圧入方向における位置のばらつきが生じた場合、前記バネ部材117の組み付け時に前記固定部材119によって押し下げられて変形する量がばらつくことになり、結果として押圧作用力がばらついてしまう。
【0020】
ところで、前記バネ部材117は、図12に示すように平面部117b,117cの先端部が固定部材119にゴムシート116を介して当接している。従って、仮に柱状止め具121とバネ部材117とが隙間なく嵌め合わせられていたとしても、振動子114が被駆動体であるレール118から反力を受けた際に、バネ部材117が振動子114と一体となってレール118の動作方向と逆向きに移動しようとする為、ゴムシート116の弾性変形が生じてしまい、振動子114は位置ずれしてしまう。
【0021】
なお、前記バネ部材117を、当該バネ部材117における両端面の先端部を固定部材119にゴムシート116を介さずに当接させた場合であっても、固定部材119とバネ部材117との間で滑りが発生してしまうので、振動子114の位置ずれは生じてしまう。
【0022】
以上説明したように、特許文献1に開示されている技術では、被駆動体を数μm〜数nm安定して駆動させる微小駆動において所望の駆動量を得ることが困難である。
【0023】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、振動子が被駆動体を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による超音波モータは、圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、圧電素子を有する超音波振動子と、前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、前記保持部材を押圧する押圧部材と、前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、を具備し、前記押圧部材は穴部を有し、前記保持部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様による超音波モータは、圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、圧電素子を有する超音波振動子と、前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、前記保持部材を押圧する押圧部材と、前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、を具備し、前記保持部材は穴部を有し、前記押圧部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、振動子が被駆動体を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る超音波モータについて、図面を参照して説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。同図に示すように、本第1実施形態に係る超音波モータ1は、超音波振動子2と、超音波振動子2を保持する保持部材3と、超音波振動子2に接触させられて超音波振動子2に対して相対的に駆動される被駆動部材4と、被駆動部材4と筐体6との間に配置される転動部材5と、筐体7と、超音波振動子2を被駆動部材4に押し付ける押圧機構8とを具備する。なお、詳細は後述するが、前記押圧機構8は、押圧部材9と、固定螺子部材10と、押圧調整用螺子部材11と、圧縮コイルバネ12とを有する。
【0029】
前記超音波振動子2は、矩形板状の圧電セラミックスシートの片側面にシート状の内部電極を設けたものを複数枚積層してなる直方体状の圧電積層体2aと、該圧電積層体2aの一側面に接着され且つ前記被駆動部材4に密着させられる2個の摩擦接触子(以下、駆動子と称する)2bとを有する。
【0030】
前記圧電積層体2aは、内部電極に所定のパターンの交番電圧が加えられることで、図2に示す縦振動及び図3に示す2次の屈曲振動が励起される。特に、2次の屈曲振動は、図3に示すように前記圧電積層体2aの長手方向に間隔をあけて、3箇所に振動の定在波の節A1,A2、A3を備える。そして、節A1と節A2との間には当該振動の定在波の腹B1が形成され、節A2と節A3との間には当該振動の定在波の腹B2が形成される。
【0031】
ここで、前記圧電積層体2aは、前記の縦振動及び屈曲振動の定在波の節A2に対応する位置において、前記保持部材3に接着剤等により固着されている。また、前記駆動子2bは、直方体のブロック状に形成されており、前記超音波振動子2における2次の屈曲振動の腹B1,B2に対応する位置に、接着剤等で固定されている。
【0032】
なお、前記保持部材3は直方体形状に形成されており、前記圧電積層体2a及び前記保持部材3を斜め上方から見た場合の斜視図である図4に示すように、前記超音波振動子2における前記圧電積層体2aの上面上に、接着剤等によって接着されて設けられている。ここで、保持部材3は、その上面平板部3b上に円錐形状の突起部である円錐形状突起部3aを備えている。
【0033】
前記転動部材5は、球体形状に形成されており、前記被駆動部材4のうち前記筐体6に対向する面に設けられた溝等に埋嵌されて挟持されている。ここで、前記被駆動部材4の移動方向の配置位置は、例えばリテーナ(不図示)等により規制されている。このような構成により、前記被駆動部材4を、前記超音波振動子2及び前記筐体6に対して相対的に駆動させることが可能となる。
【0034】
なお、前記筐体6に、前記転動部材5を案内する為の部材(例えば溝やレール等)を、設けても勿論よい。
【0035】
前記押圧部材9は平板であり、その一端部には固定螺子部材10を貫通させる為の穴部9aが形成されており、他端部には当該押圧部材9の押圧を調整する為の押圧調整用螺子部材11を貫通させるための穴部9bが形成されている。さらに、前記押圧部材9の中央部には、前記保持部材3の備える前記円錐形状突起部3aの底面の径よりも僅かに小さい径の丸穴部9cが形成されている。
【0036】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータ1の組立方法について説明する。なお、前記筐体6は、予め前記筐体7に対してビス等の手段により固定されている。
【0037】
まず、筐体6の上にリテーナ(不図示)を載置し、転動部材5を該リテーナ(不図示)における保持部に載置する。
【0038】
続いて、被駆動部材4を転動部材5の上に載置し、この被駆動部材4の上面に前記超音波振動子2における前記駆動子2bが密着するように、超音波振動子2を被駆動部材4の上に載置する。
【0039】
次に、押圧部材9が超音波振動子2の上方から筐体7の上面に載置される。この際、押圧部材9の中央部に設けられた丸穴部9cに、保持部材3における円錐形状突起部3aが挿入され、前記丸穴部9cの内周(穴の稜線)と円錐形状突起部3aの円錐面とが隙間なく当接する。
【0040】
これにより、押圧部材9の中央部の位置が押圧方向に対して規制される。このとき、押圧部材9における両端部は、筐体7の上面に対して僅かに隙間を有するように、両者の相対位置が設定されている。
【0041】
その後、固定螺子部材10が、押圧部材9における穴部9aを貫通して筐体7に締結される。これにより、超音波振動子2の長手方向における、押圧部材9の位置が固定される。従って、保持部材3の位置も同様に規制される。
【0042】
そして、押圧調整用螺子部材11が、押圧部材9における穴部9bを貫通して筐体7のネジ穴に螺合する。この際、圧縮コイルバネ12が、押圧部材9における上面と、押圧調整用螺子部材11におけるネジ頭(ワッシャでも良い)の下面11aとに挟まれた状態で組みつけられる。これにより、押圧調整用螺子部材11を締結するに従って、圧縮コイルバネ12が圧縮され、その反発力が押圧部材9の上面に作用する。
【0043】
ところで、前記押圧部材9は上述したようにその一端が固定螺子部材10によって筐体7に固定されており、この固定端を支点として他端が押圧されることにより、当該押圧部材9における中央部の丸穴部9c及び円錐形状突起部3aを介して、保持部材3に押圧力が作用する。これにより、超音波振動子2が被駆動部材4に押し付けられる押圧力が発生する。
【0044】
また、押圧調整用螺子部材11の締結量を調整することで、圧縮コイルバネ12の圧縮量を調整することができるので、押圧力を調整することが可能な押圧機構となっている。
【0045】
以上説明したように、本第1実施形態に係る超音波モータによれば、超音波振動子2が被駆動部材4を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することができる。
【0046】
すなわち、本第1実施形態によれば、超音波振動子2が振動して摩擦力により被駆動部材4を駆動している間においても、超音波振動子2の位置ずれが生じないので、被駆動部材4の精密な駆動において安定した駆動量を得ることができ、さらに組立作業も簡易であり且つ安価で精密な駆動特性を備えた超音波モータを提供することができる。
【0047】
より具体的には、本第1実施形態に係る超音波モータは次のような効果を奏する。
【0048】
まず、保持部材3における円錐形状突起部3aが押圧部材9における丸穴部9cに隙間なく当接することで、超音波振動子2が保持される。ここで、押圧部材9は、固定螺子部材10により筐体7に固定されている。
【0049】
本第1実施形態に係る超音波モータは、このような構造を採ることにより、超音波振動子2の振動に起因する摩擦力によって被駆動部材4を駆動させた場合であっても、超音波振動子2の位置ずれが生じない。従って、被駆動部材4を微小に駆動させる場合に、安定した駆動量を得ることができる。
【0050】
また、本第1実施形態に係る超音波モータは、従来の超音波モータと比較して、組立が容易であるという利点を有する。
【0051】
例えば特許文献1には、押圧機構の組立方法及び固定方法については何ら開示されていないが、その組み立ての際にはバネ部材117における平面部117b,117cを自然状態から押し下げて変形させながら、振動子114と固定部材119との間に配置させる必要がある。なお、固定部材119を前もって組みつけてある場合は、振動子114と固定部材119との隙間に、バネ部材117を変形させながら挿入し、且つ矩形状の貫通穴部を予め振動子114に固定された柱状止め具121に挿入させなければならない。そして、このような組み立て方法は現実的ではない。
【0052】
つまり、特許文献1に開示されている押圧機構を組み立てる際には、振動子114にゴムシート115及びバネ部材117を、柱状止め具121に矩形状の穴部を挿入して載置させた後に、固定部材119を組み付けることになる。ここで、バネ部材117における平面部117b,117cの先端部と固定部材119とを当接させ、固定部材119を押さえつけながら案内部材(不図示)に連結させる必要があり、非常に困難な作業となることは容易に想像できる。
【0053】
一方、本第1実施形態に係る超音波モータの組み立てにおいては、上述したように各部材を単純に順次載置していき、最後に固定螺子部材10及び押圧調整用螺子部材11により締結等して固定すれば良い。つまり、各部材の載置及び締結を、一方向のみから作業することができるので非常に組立容易性が良好である。
【0054】
なお、前記駆動子2bは、例えば耐熱性熱可塑性樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)をベースにチタン酸カリウムのフィラーを20〜30%wt充填すると共に、その他炭素繊維、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)も混合した複合樹脂材により構成する。
【0055】
また、前記被駆動部材4は、例えば内部に鉄を含む珪酸マグネシウム(2MgO・SiO2)により構成し、前記駆動子2bと接触する面の表面粗さをRa0.2μm以下となるようにラップ研磨加工する。
【0056】
そして、前記圧電積層体2aの振動を減衰させずに確実に前記被駆動部材4へ伝達する為に、例えば、前記駆動子2bは前記圧電積層体2aの端面から0.7mm以下の高さとする。なお、該高さは望ましくは0.4mmである。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る超音波モータについて、図5及び図6を参照して説明する。なお、本第2実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0058】
本第2実施形態においては、前記保持部材3を、図5及び図6に示すような構成とする。図5は、本第2実施形態に係る超音波モータにおける保持部材3の形状を示す斜視図である。図6は、本第2実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。
【0059】
すなわち、本第2実施形態において前記保持部材3は、上面平板部3bが圧電積層体2aの厚さ方向(積層方向)における両側に均等にはみ出しており、且つ該はみ出した両端部には圧電積層体2aの側面部に密着する二つの側面平板部3cが設けられている。さらに、これら二つの側面平板部3cには、圧電積層体2aの厚さ方向に突出する円柱形状の突起部である円柱形状突起部3dが設けられている。なお、前記上面平板部3b上には、当然円錐状の前記円錐形状突起部3aが設けられている。
【0060】
一方、前記筐体7には、前記円柱形状突起部3dの径より若干広い径を有する溝部7aが形成されている。なお、その他の部材に関しては前記第1実施形態において説明した通りである。
【0061】
上述した構成の超音波モータ1において、超音波振動子2に接着された保持部材3の円柱形状突起部3dは、前記筐体7の溝部7aに挿入されて案内されることにより、超音波振動子2の長手方向に関する概略の位置が決められる。
【0062】
なお、押圧部材9が筐体7に固定される際に、押圧部材9における丸穴部9cの位置が、保持部材3における円錐形状突起部3aの真上の位置となるように、筐体7における前記溝部7aを設ける位置を決定することで、当該超音波モータを容易に組みつけることができるという効果を更に得ることができる。
【0063】
ここで、本第2実施形態においては、筐体7における溝部7aは案内機構として作用するのみであり、保持機構としては前記第1実施形態と同様、押圧部材9における丸穴部9cと、保持部材の円錐形状突起部3aとが隙間なく当接することによって超音波振動子2が保持される構成となっている。
【0064】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様、被駆動部材4を駆動している間に超音波振動子2の位置ずれが生じることなく、被駆動部材4を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することができる。
【0065】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る超音波モータについて、図7を参照して説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。なお、本第3実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第2実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0066】
本第3実施形態においては、前記保持部材3は、前記上面平板部3bに前記円錐形状突起部3aの代わりに円柱形状突起部3dが設けられている。
【0067】
また、押圧部材9の中央部に形成されているテーパー穴部9dは、超音波振動子2に対向する面である一方面においては前記円柱形状突起部3dの円柱の径よりも大きい径として形成され、前記一方面とは逆側の面である他方面に近づく程、その径が小さくなっていく(円柱状である前記円柱形状突起部3dの径よりも小さい径になっていく)テーパー穴として形成されている。
【0068】
より具体的には、このテーパー穴として形成されている前記テーパー穴部9dは、図7に示すように、その内周の略円錐面(穴の稜線)が前記保持部材3における前記円柱形状突起部3dと当接して前記超音波振動子2が保持されるように形成されている。
【0069】
なお、前記第1実施形態及び前記第2実施形態においては、前記丸穴部9cにおける内周(穴の稜線)と前記円錐形状突起部3aの円錐面とが当接することで、超音波振動子2が保持されていた。
【0070】
上述したような構造によって、本第3実施形態においては、前記第1実施形態及び前記第2実施形態と同様、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0071】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、前記第1実施形態及び前記第2実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0072】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る超音波モータについて、図8を参照して説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。なお、本第4実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第3実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0073】
本第4実施形態において前記保持部材3は、前記上面平板部3b上に、半球状の突起部である半球突起部3eが例えば接着固定されて設けられている。
【0074】
一方、前記押圧部材9の中央部には、前記第3実施形態に係る超音波モータと同様、上述したテーパー穴部9dが形成されている。
【0075】
そして、このテーパー穴部9dは、図8に示すように、その内周の略円錐面(穴の稜線)が前記保持部材3における前記半球突起部3eと当接して前記超音波振動子2が保持されるように形成されている。
【0076】
上述したような構造によって、本第4実施形態においては、前記第1実施形態乃至前記第3実施形態と同様、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0077】
以上説明したように、本第4実施形態によれば、前記第1実施形態乃至前記第3実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0078】
なお、本第4実施形態に係る超音波モータに関して、例えば次のような変形例が考えられる。
【0079】
[第1変形例]
例えば、前記押圧部材9に形成されている前記テーパー穴部9dの代わりに、図9に示すように、当該穴部の径が一定である丸穴部9cを形成しても勿論よい。なお、この丸穴部9cの径は、当該丸穴部9cの内周(穴の稜線)と前記保持部材3に設けられている半球状の前記半球突起部3eとが当接するような径である。
【0080】
この場合、前記丸穴部9cの内周(穴の稜線)と、半球状の前記半球突起部3eとが当接することで、前記超音波振動子2が保持される。つまり、上述したような構造によって、本第1変形例においては、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0081】
以上説明したように、本第1変形例によれば、前記第4実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0082】
[第2変形例]
さらに、次のような変形例も考えられる。
【0083】
すなわち、図10に示すように前記押圧部材9における中央部に、穴部の代わりに半球状の突起部9eが、前記超音波振動子2に対向するように設けられている。なお、この突起部9eは、押圧部材9とは別体の半球状の部材を、押圧部材9に例えば接着固定により設けてもよいし、押圧部材9の中央部を絞り加工等で半球状に突出させて設けても勿論よい。一方、前記保持部材3には、円錐状の穴部である円錐穴部3fが設けられている。
【0084】
より具体的には、図10に示すように、前記保持部材3に設けられている前記円錐穴部3fの内周の円錐面(穴の稜線)が、前記押圧部材9に設けられている前記突起部9eに当接して前記超音波振動子2が保持されるように、前記円錐穴部3f及び前記突起部9eが形成されている。
【0085】
上述したような構造によって、本第2変形例においては、前記第4実施形態と同様、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0086】
このような構造により、前記押圧部材9に設けられている半球状の前記突起部9eが、前記保持部材3に設けられている円錐状の前記円錐穴部3fに当接することで、前記超音波振動子2が保持される。
【0087】
以上説明したように、本第2変形例によれば、前記第4実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0088】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態に係る超音波モータについて、図11を参照して説明する。なお、本第5実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0089】
本第5実施形態において前記押圧部材9は、前記押圧調整用螺子部材11が貫通する箇所の近傍領域が図11に示すようにクランク形状に屈曲されている。換言すれば、前記押圧部材9は、図11に示すように、前記押圧調整用螺子部材11が貫通する箇所の近傍領域において、クランク形状を呈する屈曲構造9Aを備えている。
【0090】
一方、このような形状の押圧部材9に対応して、筐体7も、前記押圧部材9のクランク形状に対応した段差構造7Aを備えている。
【0091】
本第5実施形態では、押圧力を発生させる前記圧縮コイルバネ12及び前記押圧調整用螺子部材11が、前記段差構造7A及び前記屈曲構造9Aが設けられたことによって生じる、前記押圧部材9による押圧方向に凹んだ領域に収容される為、押圧方向における部材配置の省スペース化が実現する。
【0092】
なお、本第5実施形態は、前記第1実施形態乃至前記第4実施形態の何れにも適用できることは勿論である。
【0093】
以上説明したように、本第5実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する上に、省スペースな超音波モータを提供することができる。
【0094】
以上、第1実施形態乃至第5実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0095】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図2】圧電積層体の縦振動を示す図。
【図3】圧電積層体の屈曲振動を示す図。
【図4】圧電積層体及び保持部材の形状を示す斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る超音波モータにおける保持部材の形状を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図9】本発明の第4実施形態の第1変形例に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図10】本発明の第4実施形態の第2変形例に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図11】本発明の第5実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図12】超音波振動子を被駆動部材に押し付ける為の従来の押圧機構を示す図。
【符号の説明】
【0097】
1…超音波モータ、 2…超音波振動子、 2a…圧電積層体、 3…保持部材、 3a…円錐形状突起部、 3b…上面平板部、 3c…側面平板部、 3d…円柱形状突起部、 3e…半球突起部、 3f…円錐穴部、 4…被駆動部材、 5…転動部材、 6…筐体、 7…筐体、 7a…溝部、 7A…段差構造、 8…押圧機構、 9…押圧部材、 9a…丸穴部、 9b…穴部、 9c…丸穴部、 9d…テーパー穴部、 9e…突起部、 9A…屈曲構造、 10…固定螺子部材、 11…押圧調整用螺子部材、 11a…下面、 12…圧縮コイルバネ、 17…バネ部材、 21…止め具、 112…回転部材、 113…突起、 114…振動子、 115…ゴムシート、 116…ゴムシート、 117…バネ部材、 117a…平面部、 117b…平面部、 117c…平面部、 118…レール、 119…固定部材、 121…止め具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電磁モータに比べて小型、高トルク、長ストローク、且つ高分解能の超音波モータが多く使用されてきている。
【0003】
ところで、超音波モータは、超音波振動子を被駆動部材に押し付けることで、両者間に発生する摩擦力によって前記被駆動体を駆動するモータである。そして、超音波振動子を被駆動部材に押し付ける為の押圧機構としては、例えば特許文献1に、図12に示すような押圧機構が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1には、振動子114と、該振動子114の下部に固定された突起113と、該突起113に当接する可動体としてのレール118と、該レール118の下面に接し、レール118を案内する回転部材112と、前記振動子114の上面に当接されるバネ部材117と、該バネ部材117と振動子114との間に設置されているゴムシート115と、前記バネ部材117及びゴムシート115を貫通して振動子114に固定される柱状止め具121と、前記バネ部材117を押圧する固定部材119とによって構成されている。
【0005】
より具体的には、前記バネ部材117は、前記ゴムシート115に接する平面部117aと、この平面部117aの両端から当該平面部117aに対して対称に延長されて形成された平面部117b,117cとを備える。そして、この平面部117b及び平面部117cにおける先端部が前記固定部材119によって押し下げられて、前記平面部117aと前記平面部117b,117cとの境界線近傍が変形させられることにより、前記平面部117aが下方(前記振動子114の方向)に押し下げられる構造となっている。
【0006】
引用文献1に開示されている押圧機構では、上述したような構造により、前記振動子114(前記突起113)を被駆動体である前記レール118に押し付ける押圧力を発生させている。
【0007】
ところで、前記バネ部材117における前記平面部117aには矩形状の貫通穴部(不図示)が設けられている。さらに、前記バネ部材117と前記振動子114との間に挟まれて設けられている前記ゴムシート115にも、同様の矩形状の貫通穴部(不図示)が設けられている。そして、前記柱状止め具121は、前記バネ部材117及び前記ゴムシート115の両者に設けられた矩形状の貫通穴部(不図示)を貫通して、前記振動子114に固定されている。
【0008】
前記柱状止め具121は、当該柱状止め具121における側面部が前記バネ部材117及び前記ゴムシート115における貫通穴部(不図示)の断面に囲まれるように設置されている。これにより、前記振動子114は、前記ゴムシート115との接触平面内における位置が規制される構造となっている。
【特許文献1】特開平10−327589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている押圧機構によれば、柱状止め具121をバネ部材117及びゴムシート115の貫通穴部(不図示)に挿入することから、前記柱状止め具121と、前記バネ部材117及び前記ゴムシート115との間には若干の隙間を設けることが必要である。
【0010】
例えば、特許文献1には具体的な記載は為されていないが、例えば軸と穴との隙間バメ(部品を相対的に動かしえる緩合)の場合、φ=3〜6mm程度の径寸法であれば最大0.125mmの隙間を設けることが推奨されている。
【0011】
なお、組立性を向上させる為には、前記隙間は大きいほうが望ましく、上述した数値よりも大きな隙間を設けることが望まれる。
【0012】
ところで、振動子を振動させて摩擦力により被駆動体を駆動させる場合においては、例えば図12に示すように振動子114は、当然被駆動体である前記レール118から反力を受けて当該レール118を駆動させる向きと逆向きに動作しようとする。
【0013】
従って、図12に示す例のように、前記ゴムシート115及び前記バネ部材117と、前記振動子114との間に隙間が存在する場合、前記ゴムシート115の弾性変形が生じたときに、この隙間の範囲内で(図12の点線で示す振動子114の位置に)、前記振動子114が動作してしまうという問題が生じる。
【0014】
そして、この振動子114が動作している間は、被駆動体である前記レール118は、前記振動子114から駆動力を受けても所望の量を動くことはできず、最悪の場合には前記レール118が全く動かない場合も発生してしまう。
【0015】
また、前記レール118が駆動開始後しばらくして前記振動子114が位置ずれした後、柱状止め具121の側面部(不図示)と、バネ部材117に設けられた矩形状の貫通穴部(不図示)の断面部(不図示)とが当接した状態となって初めて振動子114の動作が規制されるのであるが、前記レール118が逆方向に駆動する際にも同様の問題が発生する。
【0016】
仮に、前記ゴムシート115を介さずにバネ部材117で振動子114を直接押圧する構造としても、柱状止め具121の側面部(不図示)と、バネ部材117に設けられた矩形状の貫通穴部(不図示)の断面部(不図示)との当接面での摺りが発生し、同様の位置ずれが発生する。
【0017】
以上説明したように、上述した構成では、例えば所望の微小量を駆動させる際に振動子114自体が位置ずれを起こすことに起因して、駆動量が安定しないという問題がある。
【0018】
なお、仮に柱状止め具121とバネ部材117における貫通穴部(不図示)との隙間を設けないようにすることで、前記の問題を解決しようとした場合、柱状止め具121を変形させて前記貫通穴部(不図示)に挿入(すなわち圧入)することが考えられる。この場合には、貫通穴部(不図示)及び柱状止め具121の寸法管理が厳しく要求される。これらの寸法のばらつきは、前記バネ部材117の圧入方向の位置のばらつきを生じさせるからである。
【0019】
そして、このように前記バネ部材117の圧入方向における位置のばらつきが生じた場合、前記バネ部材117の組み付け時に前記固定部材119によって押し下げられて変形する量がばらつくことになり、結果として押圧作用力がばらついてしまう。
【0020】
ところで、前記バネ部材117は、図12に示すように平面部117b,117cの先端部が固定部材119にゴムシート116を介して当接している。従って、仮に柱状止め具121とバネ部材117とが隙間なく嵌め合わせられていたとしても、振動子114が被駆動体であるレール118から反力を受けた際に、バネ部材117が振動子114と一体となってレール118の動作方向と逆向きに移動しようとする為、ゴムシート116の弾性変形が生じてしまい、振動子114は位置ずれしてしまう。
【0021】
なお、前記バネ部材117を、当該バネ部材117における両端面の先端部を固定部材119にゴムシート116を介さずに当接させた場合であっても、固定部材119とバネ部材117との間で滑りが発生してしまうので、振動子114の位置ずれは生じてしまう。
【0022】
以上説明したように、特許文献1に開示されている技術では、被駆動体を数μm〜数nm安定して駆動させる微小駆動において所望の駆動量を得ることが困難である。
【0023】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、振動子が被駆動体を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による超音波モータは、圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、圧電素子を有する超音波振動子と、前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、前記保持部材を押圧する押圧部材と、前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、を具備し、前記押圧部材は穴部を有し、前記保持部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様による超音波モータは、圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、圧電素子を有する超音波振動子と、前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、前記保持部材を押圧する押圧部材と、前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、を具備し、前記保持部材は穴部を有し、前記押圧部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、振動子が被駆動体を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る超音波モータについて、図面を参照して説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。同図に示すように、本第1実施形態に係る超音波モータ1は、超音波振動子2と、超音波振動子2を保持する保持部材3と、超音波振動子2に接触させられて超音波振動子2に対して相対的に駆動される被駆動部材4と、被駆動部材4と筐体6との間に配置される転動部材5と、筐体7と、超音波振動子2を被駆動部材4に押し付ける押圧機構8とを具備する。なお、詳細は後述するが、前記押圧機構8は、押圧部材9と、固定螺子部材10と、押圧調整用螺子部材11と、圧縮コイルバネ12とを有する。
【0029】
前記超音波振動子2は、矩形板状の圧電セラミックスシートの片側面にシート状の内部電極を設けたものを複数枚積層してなる直方体状の圧電積層体2aと、該圧電積層体2aの一側面に接着され且つ前記被駆動部材4に密着させられる2個の摩擦接触子(以下、駆動子と称する)2bとを有する。
【0030】
前記圧電積層体2aは、内部電極に所定のパターンの交番電圧が加えられることで、図2に示す縦振動及び図3に示す2次の屈曲振動が励起される。特に、2次の屈曲振動は、図3に示すように前記圧電積層体2aの長手方向に間隔をあけて、3箇所に振動の定在波の節A1,A2、A3を備える。そして、節A1と節A2との間には当該振動の定在波の腹B1が形成され、節A2と節A3との間には当該振動の定在波の腹B2が形成される。
【0031】
ここで、前記圧電積層体2aは、前記の縦振動及び屈曲振動の定在波の節A2に対応する位置において、前記保持部材3に接着剤等により固着されている。また、前記駆動子2bは、直方体のブロック状に形成されており、前記超音波振動子2における2次の屈曲振動の腹B1,B2に対応する位置に、接着剤等で固定されている。
【0032】
なお、前記保持部材3は直方体形状に形成されており、前記圧電積層体2a及び前記保持部材3を斜め上方から見た場合の斜視図である図4に示すように、前記超音波振動子2における前記圧電積層体2aの上面上に、接着剤等によって接着されて設けられている。ここで、保持部材3は、その上面平板部3b上に円錐形状の突起部である円錐形状突起部3aを備えている。
【0033】
前記転動部材5は、球体形状に形成されており、前記被駆動部材4のうち前記筐体6に対向する面に設けられた溝等に埋嵌されて挟持されている。ここで、前記被駆動部材4の移動方向の配置位置は、例えばリテーナ(不図示)等により規制されている。このような構成により、前記被駆動部材4を、前記超音波振動子2及び前記筐体6に対して相対的に駆動させることが可能となる。
【0034】
なお、前記筐体6に、前記転動部材5を案内する為の部材(例えば溝やレール等)を、設けても勿論よい。
【0035】
前記押圧部材9は平板であり、その一端部には固定螺子部材10を貫通させる為の穴部9aが形成されており、他端部には当該押圧部材9の押圧を調整する為の押圧調整用螺子部材11を貫通させるための穴部9bが形成されている。さらに、前記押圧部材9の中央部には、前記保持部材3の備える前記円錐形状突起部3aの底面の径よりも僅かに小さい径の丸穴部9cが形成されている。
【0036】
以下、本第1実施形態に係る超音波モータ1の組立方法について説明する。なお、前記筐体6は、予め前記筐体7に対してビス等の手段により固定されている。
【0037】
まず、筐体6の上にリテーナ(不図示)を載置し、転動部材5を該リテーナ(不図示)における保持部に載置する。
【0038】
続いて、被駆動部材4を転動部材5の上に載置し、この被駆動部材4の上面に前記超音波振動子2における前記駆動子2bが密着するように、超音波振動子2を被駆動部材4の上に載置する。
【0039】
次に、押圧部材9が超音波振動子2の上方から筐体7の上面に載置される。この際、押圧部材9の中央部に設けられた丸穴部9cに、保持部材3における円錐形状突起部3aが挿入され、前記丸穴部9cの内周(穴の稜線)と円錐形状突起部3aの円錐面とが隙間なく当接する。
【0040】
これにより、押圧部材9の中央部の位置が押圧方向に対して規制される。このとき、押圧部材9における両端部は、筐体7の上面に対して僅かに隙間を有するように、両者の相対位置が設定されている。
【0041】
その後、固定螺子部材10が、押圧部材9における穴部9aを貫通して筐体7に締結される。これにより、超音波振動子2の長手方向における、押圧部材9の位置が固定される。従って、保持部材3の位置も同様に規制される。
【0042】
そして、押圧調整用螺子部材11が、押圧部材9における穴部9bを貫通して筐体7のネジ穴に螺合する。この際、圧縮コイルバネ12が、押圧部材9における上面と、押圧調整用螺子部材11におけるネジ頭(ワッシャでも良い)の下面11aとに挟まれた状態で組みつけられる。これにより、押圧調整用螺子部材11を締結するに従って、圧縮コイルバネ12が圧縮され、その反発力が押圧部材9の上面に作用する。
【0043】
ところで、前記押圧部材9は上述したようにその一端が固定螺子部材10によって筐体7に固定されており、この固定端を支点として他端が押圧されることにより、当該押圧部材9における中央部の丸穴部9c及び円錐形状突起部3aを介して、保持部材3に押圧力が作用する。これにより、超音波振動子2が被駆動部材4に押し付けられる押圧力が発生する。
【0044】
また、押圧調整用螺子部材11の締結量を調整することで、圧縮コイルバネ12の圧縮量を調整することができるので、押圧力を調整することが可能な押圧機構となっている。
【0045】
以上説明したように、本第1実施形態に係る超音波モータによれば、超音波振動子2が被駆動部材4を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することができる。
【0046】
すなわち、本第1実施形態によれば、超音波振動子2が振動して摩擦力により被駆動部材4を駆動している間においても、超音波振動子2の位置ずれが生じないので、被駆動部材4の精密な駆動において安定した駆動量を得ることができ、さらに組立作業も簡易であり且つ安価で精密な駆動特性を備えた超音波モータを提供することができる。
【0047】
より具体的には、本第1実施形態に係る超音波モータは次のような効果を奏する。
【0048】
まず、保持部材3における円錐形状突起部3aが押圧部材9における丸穴部9cに隙間なく当接することで、超音波振動子2が保持される。ここで、押圧部材9は、固定螺子部材10により筐体7に固定されている。
【0049】
本第1実施形態に係る超音波モータは、このような構造を採ることにより、超音波振動子2の振動に起因する摩擦力によって被駆動部材4を駆動させた場合であっても、超音波振動子2の位置ずれが生じない。従って、被駆動部材4を微小に駆動させる場合に、安定した駆動量を得ることができる。
【0050】
また、本第1実施形態に係る超音波モータは、従来の超音波モータと比較して、組立が容易であるという利点を有する。
【0051】
例えば特許文献1には、押圧機構の組立方法及び固定方法については何ら開示されていないが、その組み立ての際にはバネ部材117における平面部117b,117cを自然状態から押し下げて変形させながら、振動子114と固定部材119との間に配置させる必要がある。なお、固定部材119を前もって組みつけてある場合は、振動子114と固定部材119との隙間に、バネ部材117を変形させながら挿入し、且つ矩形状の貫通穴部を予め振動子114に固定された柱状止め具121に挿入させなければならない。そして、このような組み立て方法は現実的ではない。
【0052】
つまり、特許文献1に開示されている押圧機構を組み立てる際には、振動子114にゴムシート115及びバネ部材117を、柱状止め具121に矩形状の穴部を挿入して載置させた後に、固定部材119を組み付けることになる。ここで、バネ部材117における平面部117b,117cの先端部と固定部材119とを当接させ、固定部材119を押さえつけながら案内部材(不図示)に連結させる必要があり、非常に困難な作業となることは容易に想像できる。
【0053】
一方、本第1実施形態に係る超音波モータの組み立てにおいては、上述したように各部材を単純に順次載置していき、最後に固定螺子部材10及び押圧調整用螺子部材11により締結等して固定すれば良い。つまり、各部材の載置及び締結を、一方向のみから作業することができるので非常に組立容易性が良好である。
【0054】
なお、前記駆動子2bは、例えば耐熱性熱可塑性樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)をベースにチタン酸カリウムのフィラーを20〜30%wt充填すると共に、その他炭素繊維、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)も混合した複合樹脂材により構成する。
【0055】
また、前記被駆動部材4は、例えば内部に鉄を含む珪酸マグネシウム(2MgO・SiO2)により構成し、前記駆動子2bと接触する面の表面粗さをRa0.2μm以下となるようにラップ研磨加工する。
【0056】
そして、前記圧電積層体2aの振動を減衰させずに確実に前記被駆動部材4へ伝達する為に、例えば、前記駆動子2bは前記圧電積層体2aの端面から0.7mm以下の高さとする。なお、該高さは望ましくは0.4mmである。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る超音波モータについて、図5及び図6を参照して説明する。なお、本第2実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0058】
本第2実施形態においては、前記保持部材3を、図5及び図6に示すような構成とする。図5は、本第2実施形態に係る超音波モータにおける保持部材3の形状を示す斜視図である。図6は、本第2実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。
【0059】
すなわち、本第2実施形態において前記保持部材3は、上面平板部3bが圧電積層体2aの厚さ方向(積層方向)における両側に均等にはみ出しており、且つ該はみ出した両端部には圧電積層体2aの側面部に密着する二つの側面平板部3cが設けられている。さらに、これら二つの側面平板部3cには、圧電積層体2aの厚さ方向に突出する円柱形状の突起部である円柱形状突起部3dが設けられている。なお、前記上面平板部3b上には、当然円錐状の前記円錐形状突起部3aが設けられている。
【0060】
一方、前記筐体7には、前記円柱形状突起部3dの径より若干広い径を有する溝部7aが形成されている。なお、その他の部材に関しては前記第1実施形態において説明した通りである。
【0061】
上述した構成の超音波モータ1において、超音波振動子2に接着された保持部材3の円柱形状突起部3dは、前記筐体7の溝部7aに挿入されて案内されることにより、超音波振動子2の長手方向に関する概略の位置が決められる。
【0062】
なお、押圧部材9が筐体7に固定される際に、押圧部材9における丸穴部9cの位置が、保持部材3における円錐形状突起部3aの真上の位置となるように、筐体7における前記溝部7aを設ける位置を決定することで、当該超音波モータを容易に組みつけることができるという効果を更に得ることができる。
【0063】
ここで、本第2実施形態においては、筐体7における溝部7aは案内機構として作用するのみであり、保持機構としては前記第1実施形態と同様、押圧部材9における丸穴部9cと、保持部材の円錐形状突起部3aとが隙間なく当接することによって超音波振動子2が保持される構成となっている。
【0064】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様、被駆動部材4を駆動している間に超音波振動子2の位置ずれが生じることなく、被駆動部材4を安定して微小駆動させることができる超音波モータを提供することができる。
【0065】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る超音波モータについて、図7を参照して説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。なお、本第3実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第2実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0066】
本第3実施形態においては、前記保持部材3は、前記上面平板部3bに前記円錐形状突起部3aの代わりに円柱形状突起部3dが設けられている。
【0067】
また、押圧部材9の中央部に形成されているテーパー穴部9dは、超音波振動子2に対向する面である一方面においては前記円柱形状突起部3dの円柱の径よりも大きい径として形成され、前記一方面とは逆側の面である他方面に近づく程、その径が小さくなっていく(円柱状である前記円柱形状突起部3dの径よりも小さい径になっていく)テーパー穴として形成されている。
【0068】
より具体的には、このテーパー穴として形成されている前記テーパー穴部9dは、図7に示すように、その内周の略円錐面(穴の稜線)が前記保持部材3における前記円柱形状突起部3dと当接して前記超音波振動子2が保持されるように形成されている。
【0069】
なお、前記第1実施形態及び前記第2実施形態においては、前記丸穴部9cにおける内周(穴の稜線)と前記円錐形状突起部3aの円錐面とが当接することで、超音波振動子2が保持されていた。
【0070】
上述したような構造によって、本第3実施形態においては、前記第1実施形態及び前記第2実施形態と同様、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0071】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、前記第1実施形態及び前記第2実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0072】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る超音波モータについて、図8を参照して説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図である。なお、本第4実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第3実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0073】
本第4実施形態において前記保持部材3は、前記上面平板部3b上に、半球状の突起部である半球突起部3eが例えば接着固定されて設けられている。
【0074】
一方、前記押圧部材9の中央部には、前記第3実施形態に係る超音波モータと同様、上述したテーパー穴部9dが形成されている。
【0075】
そして、このテーパー穴部9dは、図8に示すように、その内周の略円錐面(穴の稜線)が前記保持部材3における前記半球突起部3eと当接して前記超音波振動子2が保持されるように形成されている。
【0076】
上述したような構造によって、本第4実施形態においては、前記第1実施形態乃至前記第3実施形態と同様、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0077】
以上説明したように、本第4実施形態によれば、前記第1実施形態乃至前記第3実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0078】
なお、本第4実施形態に係る超音波モータに関して、例えば次のような変形例が考えられる。
【0079】
[第1変形例]
例えば、前記押圧部材9に形成されている前記テーパー穴部9dの代わりに、図9に示すように、当該穴部の径が一定である丸穴部9cを形成しても勿論よい。なお、この丸穴部9cの径は、当該丸穴部9cの内周(穴の稜線)と前記保持部材3に設けられている半球状の前記半球突起部3eとが当接するような径である。
【0080】
この場合、前記丸穴部9cの内周(穴の稜線)と、半球状の前記半球突起部3eとが当接することで、前記超音波振動子2が保持される。つまり、上述したような構造によって、本第1変形例においては、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0081】
以上説明したように、本第1変形例によれば、前記第4実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0082】
[第2変形例]
さらに、次のような変形例も考えられる。
【0083】
すなわち、図10に示すように前記押圧部材9における中央部に、穴部の代わりに半球状の突起部9eが、前記超音波振動子2に対向するように設けられている。なお、この突起部9eは、押圧部材9とは別体の半球状の部材を、押圧部材9に例えば接着固定により設けてもよいし、押圧部材9の中央部を絞り加工等で半球状に突出させて設けても勿論よい。一方、前記保持部材3には、円錐状の穴部である円錐穴部3fが設けられている。
【0084】
より具体的には、図10に示すように、前記保持部材3に設けられている前記円錐穴部3fの内周の円錐面(穴の稜線)が、前記押圧部材9に設けられている前記突起部9eに当接して前記超音波振動子2が保持されるように、前記円錐穴部3f及び前記突起部9eが形成されている。
【0085】
上述したような構造によって、本第2変形例においては、前記第4実施形態と同様、超音波振動子2を位置ずれなく保持することができる。
【0086】
このような構造により、前記押圧部材9に設けられている半球状の前記突起部9eが、前記保持部材3に設けられている円錐状の前記円錐穴部3fに当接することで、前記超音波振動子2が保持される。
【0087】
以上説明したように、本第2変形例によれば、前記第4実施形態に係る超音波モータと同様の効果を奏する超音波モータを提供することができる。
【0088】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態に係る超音波モータについて、図11を参照して説明する。なお、本第5実施形態に係る超音波モータの特徴部に焦点を当てる為に、前記第1実施形態に係る超音波モータとの相違点のみを説明する。
【0089】
本第5実施形態において前記押圧部材9は、前記押圧調整用螺子部材11が貫通する箇所の近傍領域が図11に示すようにクランク形状に屈曲されている。換言すれば、前記押圧部材9は、図11に示すように、前記押圧調整用螺子部材11が貫通する箇所の近傍領域において、クランク形状を呈する屈曲構造9Aを備えている。
【0090】
一方、このような形状の押圧部材9に対応して、筐体7も、前記押圧部材9のクランク形状に対応した段差構造7Aを備えている。
【0091】
本第5実施形態では、押圧力を発生させる前記圧縮コイルバネ12及び前記押圧調整用螺子部材11が、前記段差構造7A及び前記屈曲構造9Aが設けられたことによって生じる、前記押圧部材9による押圧方向に凹んだ領域に収容される為、押圧方向における部材配置の省スペース化が実現する。
【0092】
なお、本第5実施形態は、前記第1実施形態乃至前記第4実施形態の何れにも適用できることは勿論である。
【0093】
以上説明したように、本第5実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する上に、省スペースな超音波モータを提供することができる。
【0094】
以上、第1実施形態乃至第5実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0095】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図2】圧電積層体の縦振動を示す図。
【図3】圧電積層体の屈曲振動を示す図。
【図4】圧電積層体及び保持部材の形状を示す斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る超音波モータにおける保持部材の形状を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図9】本発明の第4実施形態の第1変形例に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図10】本発明の第4実施形態の第2変形例に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図11】本発明の第5実施形態に係る超音波モータの構成を示す断面概略図。
【図12】超音波振動子を被駆動部材に押し付ける為の従来の押圧機構を示す図。
【符号の説明】
【0097】
1…超音波モータ、 2…超音波振動子、 2a…圧電積層体、 3…保持部材、 3a…円錐形状突起部、 3b…上面平板部、 3c…側面平板部、 3d…円柱形状突起部、 3e…半球突起部、 3f…円錐穴部、 4…被駆動部材、 5…転動部材、 6…筐体、 7…筐体、 7a…溝部、 7A…段差構造、 8…押圧機構、 9…押圧部材、 9a…丸穴部、 9b…穴部、 9c…丸穴部、 9d…テーパー穴部、 9e…突起部、 9A…屈曲構造、 10…固定螺子部材、 11…押圧調整用螺子部材、 11a…下面、 12…圧縮コイルバネ、 17…バネ部材、 21…止め具、 112…回転部材、 113…突起、 114…振動子、 115…ゴムシート、 116…ゴムシート、 117…バネ部材、 117a…平面部、 117b…平面部、 117c…平面部、 118…レール、 119…固定部材、 121…止め具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、
圧電素子を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を押圧する押圧部材と、
前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、
を具備し、
前記押圧部材は穴部を有し、前記保持部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、
前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記突起部は円錐形状又は半球形状であり、前記穴部は丸穴であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記突起部は円柱形状又は半球形状であり、前記穴部は円錐形状の開口又は窪みであることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、
圧電素子を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を押圧する押圧部材と、
前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、
を具備し、
前記保持部材は穴部を有し、前記押圧部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、
前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする超音波モータ。
【請求項5】
前記突起部は円錐形状又は半球形状であり、前記穴部は丸穴であることを特徴とする請求項4に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記突起部は円柱形状又は半球形状であり、前記穴部は円錐形状の開口又は窪みであることを特徴とする請求項4に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記押圧部材は、当該超音波モータの筐体に対して、少なくとも一箇所において固定され且つ少なくとも一箇所において加圧されることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の超音波モータ。
【請求項1】
圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、
圧電素子を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を押圧する押圧部材と、
前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、
を具備し、
前記押圧部材は穴部を有し、前記保持部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、
前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記突起部は円錐形状又は半球形状であり、前記穴部は丸穴であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記突起部は円柱形状又は半球形状であり、前記穴部は円錐形状の開口又は窪みであることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
圧電素子に縦振動と屈曲振動とを同時に発生させることで楕円振動を発生させ、該楕円振動により駆動力を得て被駆動部材を駆動する超音波モータにおいて、
圧電素子を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子に固着され且つ前記超音波振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を押圧する押圧部材と、
前記超音波振動子との間の摩擦力により駆動される被駆動部材と、
を具備し、
前記保持部材は穴部を有し、前記押圧部材は前記押圧部材による押圧の方向において前記穴部と係合する突起部を有し、
前記穴部と前記突起部とが当接することで、前記押圧部材が、前記保持部材及び前記超音波振動子を介して前記被駆動部材を押圧して、前記被駆動部材を駆動することを特徴とする超音波モータ。
【請求項5】
前記突起部は円錐形状又は半球形状であり、前記穴部は丸穴であることを特徴とする請求項4に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記突起部は円柱形状又は半球形状であり、前記穴部は円錐形状の開口又は窪みであることを特徴とする請求項4に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記押圧部材は、当該超音波モータの筐体に対して、少なくとも一箇所において固定され且つ少なくとも一箇所において加圧されることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の超音波モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−306907(P2008−306907A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154550(P2007−154550)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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