説明

超音波内視鏡の処置具起上装置

【課題】挿入部の先端部分を大きくすることなく、処置具起上片を駆動するための部材が超音波内視鏡検査の際に体内粘液等で汚染されないように構成することができる超音波内視鏡の処置具起上装置を提供すること。
【解決手段】処置具起上片15に永久磁石17を固定的に取り付けると共に、永久磁石17に対向する挿入部1の先端部分の不動部3内に電磁石18を固定的に封止し、挿入部1の基端側から電磁石18への通電電流を制御して永久磁石17と電磁石18との間に生じる反発力を変化させることにより処置具起上片15を動作させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検部の断層像を得るための超音波走査部と被検部の表面の光学観察像を得るための光学観察部とが挿入部の先端部分に併設された超音波内視鏡の処置具起上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波内視鏡は一般に、光学観察部で得られる光学観察像を観察しながら挿入部の先端を体内の目標部位に誘導して、目標部位に達したらそこで超音波プローブにより臓器等の超音波断層像を得るという使い方がされるが、さらに、穿刺針等のような処置具を適切に誘導するために、挿入部の先端部分に処置具起上片が設けられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−254942
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような従来の超音波内視鏡において、処置具起上片の操作は挿入部内に挿通された操作ワイヤを介して行われるが、そのような操作ワイヤは超音波内視鏡検査の際に体内粘液等が浸入して汚染されるので、超音波内視鏡検査終了後に十分な洗浄消毒を行う必要があり保守管理が非常に面倒である。
【0004】
そこで、例えば処置具起上片を鉄等の磁性体で形成して、その処置具起上片に対向する挿入部先端の不動部分内に永久磁石を可動に配置し、挿入部の基端側に連結された操作部から操作ワイヤを進退操作して永久磁石を移動させることにより処置具起上片が動作するようにすることが考えられる。
【0005】
しかし、処置具起上片を動かすための磁力を発生する永久磁石が相当に大きなものになるだけでなく、それを処置具起上片とは別に可動に配置するためのスペースがさらに数倍の大きさ必要になってしまうので、そのような構成を超音波走査部と光学観察部とが併設された超音波内視鏡の処置具起上装置に採用すると、挿入部の先端部分が著しく大きくなって患者に与える苦痛が増大してしまう。
【0006】
そこで本発明は、挿入部の先端部分を大きくすることなく、処置具起上片を駆動するための部材が超音波内視鏡検査の際に体内粘液等で汚染されないように構成することができる超音波内視鏡の処置具起上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の超音波内視鏡の処置具起上装置は、被検部の超音波断層像を得るための超音波走査部と被検部の表面の光学観察像を得るための光学観察部とが併設された超音波内視鏡の挿入部の先端部分に、挿入部内を通過した処置具の突出方向を挿入部の基端側からの遠隔操作により制御するための処置具起上片が可動に設けられた超音波内視鏡の処置具起上装置において、処置具起上片に永久磁石を固定的に取り付けると共に、永久磁石に対向する挿入部の先端部分の不動部内に電磁石を固定的に封止し、挿入部の基端側から電磁石への通電電流を制御して永久磁石と電磁石との間に生じる反発力を変化させることにより処置具起上片を動作させるようにしたものである。
【0008】
なお、挿入部の基端に操作部が連結され、操作部に配置された操作部材の動作に対応して電磁石への通電電流の状態を制御する制御部が設けられていてもよく、その場合、操作部材が軸中心に回動自在に操作部に設けられると共に、その回動状態を検出するためのエンコーダが操作部に設けられていて、エンコーダからの検出出力が制御部に送られるようにしてもよい。
【0009】
また、処置具が沿うための処置具案内面が処置具起上片に形成されていて、電磁石が処置具案内面の裏側にあたる位置において処置具起上片に取り付けられていてもよく、その場合、永久磁石と電磁石とが、互いの磁極が対向する位置関係に配置されていて、永久磁石と電磁石とが磁力で反発し合うことにより処置具起上片が処置具を起上させる方向に移動するようにしてもよい。そして、永久磁石と電磁石とが磁力で引き付け合うことにより処置具起上片が伏臥方向に移動するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処置具起上片に永久磁石を固定的に取り付けてその永久磁石に対向する挿入部の先端部分の不動部内に電磁石を固定的に封止し、挿入部の基端側から電磁石への通電電流を制御して永久磁石と電磁石との間に生じる反発力を変化させることにより処置具起上片を動作させるようにしたことにより、挿入部の先端部分を大きくすることなく、処置具起上片を駆動するための部材が超音波内視鏡検査の際に体内粘液等で汚染されないように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
被検部の超音波断層像を得るための超音波走査部と被検部の表面の光学観察像を得るための光学観察部とが併設された超音波内視鏡の挿入部の先端部分に、挿入部内を通過した処置具の突出方向を挿入部の基端側からの遠隔操作により制御するための処置具起上片が可動に設けられた超音波内視鏡の処置具起上装置において、処置具起上片に永久磁石を固定的に取り付けると共に、永久磁石に対向する挿入部の先端部分の不動部内に電磁石を固定的に封止し、挿入部の基端側から電磁石への通電電流を制御して永久磁石と電磁石との間に生じる反発力を変化させることにより処置具起上片を動作させる。
【実施例】
【0012】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は超音波内視鏡の全体構成を示しており、可撓性の挿入部1の先端部分に遠隔操作により屈曲するように湾曲部2が設けられ、その湾曲部2の先端に先端部本体3が連結されている。
【0013】
挿入部1の最先端部分である先端部本体3の先側半部は被検部の超音波断層像を得るための超音波走査部3aになっていて、先端部本体3の後側半部は被検部の表面の光学観察像を得るための光学観察部3bになっている。Uは超音波走査部3aによる超音波走査範囲、Vは光学観察部3bによる光学観察範囲である。
【0014】
挿入部1内には、処置具類を通すための処置具挿通チャンネル4が全長にわたって挿通配置されていて、その入口は挿入部1の基端に連結された操作部5と挿入部1との連結部付近に配置され、出口は先端部本体3の光学観察部3bに設けられている。Aは、先端部本体3からの処置具の突出方向である。
【0015】
そのような処置具挿通チャンネル4の出口部分には、処置具挿通チャンネル4内を通過した処置具の突出方向を制御するための後述する処置具起上片が配置されていて、その処置具起上片の動作を遠隔的に制御する起上片操作レバー6が、軸中心に回動自在に操作部5に配置されている。7は、湾曲部2の屈曲操作を行うための湾曲操作ノブである。
【0016】
図4は先端部本体3部分の斜視図であり、11は、超音波走査部3aの側面に配置されたコンベックスタイプの超音波プローブである。ただし、本発明はどのようなタイプの超音波プローブが用いられた超音波内視鏡にも適用することができる。
【0017】
光学観察部3bの先端部分に形成された斜面には光学観察のための光像を取り入れる観察窓12と照明光を放射する照明窓13とが並んで配置されており、観察窓12内には対物光学系等が配置され、照明窓13内には照明用ライトガイドファイババンドルの射出端部が配置されている。
【0018】
14は、処置具挿通チャンネル4の出口にあたる処置具突出口であり、観察窓12と並んで光学観察部3bの斜面に形成されている。そして、例えば内視鏡用注射具等のような処置具50が処置具挿通チャンネル4に通された時にその先端部分の突出方向を制御するための処置具起上片15が、処置具突出口14内に配置されている。
【0019】
処置具起上片15は、その部分の側面断面を図示する図1に示されるように、先端部本体3に取り付けられた支軸16を中心に回動することができるように処置具突出口14内に配置されていて、処置具が沿うための処置具案内面15aの裏側にあたる位置に永久磁石17が固着されている。
【0020】
永久磁石17は、処置具起上片15に形成された凹部内にぴったりと嵌め込まれた状態に固着されているが、処置具案内面15aが形成されている側を処置具起上片15の上面側とすると、永久磁石17はN極又はS極の何れか一方の極が処置具起上片15の裏面側に露出する向きに取り付けられ、それに対向する位置に電磁石18が配置されている。
【0021】
電磁石18は、先端部本体3の外表面に露出しない状態に光学観察部3b内に固定的に封止されている。なお、「封止」とは先端部本体3の外部に対して封止された位置に配置されている意味であって、先端部本体3の内部においては適宜の状態に配置して差し支えない。
【0022】
そのような電磁石18は、永久磁石17に対して強い磁界を作用させるために出来る限り永久磁石17に近い位置になるように位置取りされて、一方の磁極が永久磁石17の磁極と対向する状態に配置されている。
【0023】
そして、電磁石18に駆動電流を供給するためのリード線19が挿入部1内に挿通配置されている。なお、先端部本体3の光学観察部3bを磁性体材料で形成しておけば、電磁石18で発生する磁界が永久磁石17に対して少ないロスで伝達される。
【0024】
このように構成された超音波内視鏡の処置具起上装置においては、永久磁石17と電磁石18とが磁力によって反発し合う状態に電磁石18に通電すると、その反発力により、処置具起上片15が、図2に示されるように電磁石18から遠ざかる方向に支軸16を中心に回動して処置具を起上させる方向に移動する。そして、永久磁石17と電磁石18とが磁力によって引き付け合う状態に電磁石18に通電すると、処置具起上片15が、図1に示されるように伏臥方向に移動する。
【0025】
図5は、操作部5側から電磁石18に送られる通電電流を制御するための制御部分の構成を示しており、起上片操作レバー6にはその回転位置を検出するためのエンコーダ20が併設されている。エンコーダ20としては、電気抵抗式、電気接点式、光検出式など公知のどのようなタイプのものを用いてもよい。
【0026】
エンコーダ20によって検出された起上片操作レバー6の回転位置情報は外部に設けられた制御部21に送られ、制御部21において、エンコーダ20からの入力信号に対応して電磁石18の駆動回路22に制御信号が送られる。
【0027】
この実施例においては、例えば起上片操作レバー6がニュートラル位置(N)にある時は電磁石18への通電電流がゼロになり、そこから起上片操作レバー6を押し下げる方向に移動させると、その移動角度に比例する大きさの電流が電磁石18と永久磁石17とを磁力で反発させるように駆動回路22から電磁石18に出力されてマキシマム位置(M)で最大電流値になり、図6に示されるように、処置具50の起上角度が最大になる。
【0028】
そして、起上片操作レバー6をニュートラル位置(N)から逆方向に押し上げたリバース位置(R)に移動させると、電磁石18と永久磁石17とを磁力で引き付け合わせるように電流が駆動回路22から電磁石18に出力されて、処置具50の腰が弱い場合でも図7に示されるように処置具起上片15が伏臥状態に戻って処置具50の起上角度が最小になる。なお、このような制御を行うための回路(又は、ソフトウェア)は極めて容易なもので足りるので、制御部21の細部の説明は省略する。
【0029】
このように構成された超音波内視鏡の処置具起上装置においては、処置具起上片15を駆動するための電磁石18及びリード線19が先端部本体3内に封止されていて超音波内視鏡検査の際に体内粘液等で汚染されず、電磁石18は固定的に配置されていて可動ではないので、先端部本体3を大きくすることなくコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の超音波内視鏡の処置具起上装置の側面部分断面図である。
【図2】本発明の実施例の超音波内視鏡の処置具起上装置の異なる状態の側面部分断面図である。
【図3】本発明の実施例の超音波内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図4】本発明の実施例の超音波内視鏡の挿入部先端の斜視図である。
【図5】本発明の実施例の超音波内視鏡の処置具起上装置の制御のための構成部分の略示図である。
【図6】本発明の実施例の超音波内視鏡の処置具起上装置の処置具の起上状態が最大角度にされた状態の側面部分断面図である。
【図7】本発明の実施例の超音波内視鏡の処置具起上装置の処置具の起上状態が最小角度にされた状態の側面部分断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 挿入部
3 先端部本体(不動部)
3a 超音波走査部
3b 光学観察部
5 操作部
6 起上片操作レバー
11 超音波プローブ
12 観察窓
13 照明窓
14 処置具突出口
15 処置具起上片
16 支軸
17 永久磁石
18 電磁石
19 リード線
20 エンコーダ
21 制御部
22 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検部の超音波断層像を得るための超音波走査部と上記被検部の表面の光学観察像を得るための光学観察部とが併設された超音波内視鏡の挿入部の先端部分に、上記挿入部内を通過した処置具の突出方向を上記挿入部の基端側からの遠隔操作により制御するための処置具起上片が可動に設けられた超音波内視鏡の処置具起上装置において、
上記処置具起上片に永久磁石を固定的に取り付けると共に、上記永久磁石に対向する上記挿入部の先端部分の不動部内に電磁石を固定的に封止し、上記挿入部の基端側から上記電磁石への通電電流を制御して上記永久磁石と上記電磁石との間に生じる反発力を変化させることにより上記処置具起上片を動作させるようにしたことを特徴とする超音波内視鏡の処置具起上装置。
【請求項2】
上記挿入部の基端に操作部が連結され、上記操作部に配置された操作部材の動作に対応して上記電磁石への通電電流の状態を制御する制御部が設けられている請求項1記載の超音波内視鏡の処置具起上装置。
【請求項3】
上記操作部材が軸中心に回動自在に上記操作部に設けられると共に、その回動状態を検出するためのエンコーダが上記操作部に設けられていて、上記エンコーダからの検出出力が上記制御部に送られる請求項2記載の超音波内視鏡の処置具起上装置。
【請求項4】
上記処置具が沿うための処置具案内面が上記処置具起上片に形成されていて、上記電磁石が上記処置具案内面の裏側にあたる位置において上記処置具起上片に取り付けられている請求項1、2又は3記載の超音波内視鏡の処置具起上装置。
【請求項5】
上記永久磁石と上記電磁石とが、互いの磁極が対向する位置関係に配置されていて、上記永久磁石と上記電磁石とが磁力で反発し合うことにより上記処置具起上片が上記処置具を起上させる方向に移動する請求項1、2、3又は4記載の超音波内視鏡の処置具起上装置。
【請求項6】
上記永久磁石と上記電磁石とが磁力で引き付け合うことにより上記処置具起上片が伏臥方向に移動する請求項5記載の超音波内視鏡の処置具起上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−61220(P2007−61220A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248521(P2005−248521)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】