説明

超音波加工機の自動工具交換装置

【課題】低コストかつ小型の超音波加工機の自動工具交換装置の提供。
【解決手段】加工工具3が取り付けられる加工工具ホルダ4と、加工工具ホルダ4を保持するホルダ受け穴が複数設けられたツールストッカ5と、軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、スピンドルに形成された中空の本体スリーブの中に配置される超音波振動子と、超音波振動子に同軸上に連接され、かつ本体スリーブの内周壁に拘束固定され、超音波振動子により励起された超音波振動を、加工工具ホルダを通じて加工工具へ伝達する支持ホーンとを含む超音波スピンドルユニット2とを有し、加工工具ホルダ4は、側胴部にツールストッカ5のホルダ受け穴内で回転を拘束される回転拘束部を有し、ツールストッカ5のホルダ受け穴内に保持された状態でスピンドルの回転により支持ホーンに対してねじにより着脱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波加工機の加工工具を自動的に交換する自動工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等の工作機械には、加工工具を自動的に交換する自動工具交換装置(ATC;Automatic Tool Changer)を備えたものがある。例えば、特許文献1には、工具交換アームユニットを持たず、主軸頭のX軸方向とZ軸方向の直行二軸方向の移動位置決め動作で、主軸装着工具の主軸、工具マガジン間の工具交換を行うマシニングセンタが開示されている。
【0003】
工具交換時には、主軸頭を工具マガジン側に水平に移動させてマガジンの把持爪で現工具を把持し、主軸に対する現工具のクランプを解除し、主軸頭を上側に上昇させて現工具から離す。次いで、マガジンを旋回させて次工具を工具交換位置に移動させ、主軸頭を下側に移動して、次工具のシャンク部を主軸テーパ穴内に挿入してクランプを行い、主軸頭を反マガジン側に水平に移動させる。これにより、次工具が工具マガジンから離れ、工具交換が行われる。
【0004】
また、本出願人は、非特許文献1に記載のように、ATC対応型精密超音波加工機を開発している。このATC対応型精密超音波加工機には、独自の超音波ロータリスピンドルが搭載されており、ATCに対応するため、超音波加工工具をセットした複数の超音波アーバーをストッカーに搭載し、超音波アーバーをテーパ合わせによって交換する方式を採用している。超音波アーバーには、超音波加工工具の他、超音波振動子、超音波ホーンや電源接続部が備えられており、加工機本体の電源供給部からの給電により超音波振動子が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2829212号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岳義弘,ATC対応型40kHz精密超音波加工機の開発,セラミックス,公益社団法人日本セラミックス協会,2004年,第39巻,12月号,ページp.986−989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、ATC対応型精密超音波加工機では、超音波加工工具に超音波振動を発生させる必要があるため、超音波アーバーに超音波振動子、超音波ホーンや電源接続部等の超音波発振部が設けられている。そのため、交換用の超音波アーバーに、超音波加工工具ごとに超音波発振部が備えられることになり、超音波アーバーのコストが高くなる、また装置が大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明においては、低コストかつ小型の超音波加工機の自動工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波加工機の自動工具交換装置は、加工工具が取り付けられる加工工具ホルダと、加工工具ホルダを保持するホルダ受け穴が複数設けられたツールストッカと、軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、スピンドルに形成された中空の本体スリーブの中に配置される超音波振動子と、超音波振動子に同軸上に連接され、かつ本体スリーブの内周壁に拘束固定され、超音波振動子により励起された超音波振動を、加工工具ホルダを通じて加工工具へ伝達する支持ホーンとを含む超音波スピンドルユニットとを有し、加工工具ホルダは、側胴部にツールストッカのホルダ受け穴内で回転を拘束される回転拘束部を有し、ツールストッカのホルダ受け穴内に保持された状態でスピンドルの回転により支持ホーンに対してねじにより着脱されるものである。
【0010】
本発明の超音波加工機の自動工具交換装置によれば、ツールストッカのホルダ受け穴に保持された状態の加工工具ホルダに対して、支持ホーンをスピンドルにより回転させ、ねじにより着脱することができる。このとき、加工工具ホルダは、側胴部に有する回転拘束部により、ツールストッカのホルダ受け穴内で回転が拘束されるので、加工工具ホルダがスピンドルにより回転させる支持ホーンに対して連れ回りすることがなく、加工工具ホルダは支持ホーンに対して締め付けて装着、または緩められて脱離される。
【0011】
回転拘束部は、規格化されたナットの二面幅寸法に準ずる平行な二面を有することが望ましい。これにより、支持ホーンに固定された加工工具ホルダを、規格化されたナットと同様にスパナ等の工具を用いて回転拘束部の平行な二面を挟持し、回転させて、手作業により締め付け、または緩めることが可能となる。
【0012】
また、本発明の超音波加工機の自動工具交換装置は、スピンドルを回転駆動するモータであり、スピンドルの回転角度を制御して加工工具ホルダの回転角度を設定可能なモータを有することが望ましい。これにより、加工工具ホルダをツールストッカのホルダ受け穴内に戻す際に、スピンドルを回転させて加工工具ホルダの回転拘束部がツールストッカのホルダ受け穴と対応する配置となるように回転角度を設定し、ツールストッカのホルダ受け穴内へスムーズに差し込むことが可能となる。
【0013】
また、本発明の超音波加工機の自動工具交換装置は、スピンドルを回転駆動するモータであり、加工工具ホルダに加わる回転トルクを検出可能なモータを有することが望ましい。これにより、スピンドルを回転させて加工工具ホルダを支持ホーンにねじにより装着する際に、加工工具ホルダが支持ホーンに対して超音波伝達に最適な締め付けトルクにより固定することが可能となる。
【0014】
また、本発明の超音波加工機の自動工具交換装置は、ツールストッカを支持する衝撃吸収材を有することが望ましい。これにより、加工工具ホルダに支持ホーンを押し付けた際に衝撃吸収材が収縮し、加工工具ホルダが支持ホーンに押圧された状態でスピンドルを回転させ、加工工具ホルダが支持ホーンに対して締め付けられて装着される。なお、衝撃吸収材としては、スプリング、ゴムや樹脂等を用いることが可能である。
【0015】
また、超音波スピンドルユニットは、支持ホーンに対して加工工具ホルダを着脱する度に、超音波振動子により超音波振動を励起させるとともに、支持ホーンと加工工具ホルダとの接触面にエアーブローするものであることが望ましい。これにより、支持ホーンに対して加工工具ホルダを着脱する度に、支持ホーンと加工工具ホルダとの接触面に付着したごみ、油や水などを超音波振動によって振るい落とすとともに、支持ホーンと加工工具ホルダとの接触面に付着したごみ、油や水などをエアーブローによって吹き飛ばすことができる。
【発明の効果】
【0016】
(1)加工工具が取り付けられる加工工具ホルダと、加工工具ホルダを保持するホルダ受け穴が複数設けられたツールストッカと、軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、スピンドルに形成された中空の本体スリーブの中に配置される超音波振動子と、超音波振動子に同軸上に連接され、かつ本体スリーブの内周壁に拘束固定され、超音波振動子により励起された超音波振動を、加工工具ホルダを通じて加工工具へ伝達する支持ホーンとを含む超音波スピンドルユニットとを有し、加工工具ホルダは、側胴部にツールストッカのホルダ受け穴内で回転を拘束される回転拘束部を有し、ツールストッカのホルダ受け穴内に保持された状態でスピンドルの回転により支持ホーンに対してねじにより着脱される構成により、スピンドル、超音波振動子および支持ホーンを含む超音波スピンドルユニットに対し、加工工具ホルダをスピンドルの回転によりねじにより着脱し、自動的に交換することができる。これにより、加工工具ホルダは超音波振動子を備える必要がなく、低コストかつ小型の超音波加工機の自動工具交換装置を提供することができる。
【0017】
(2)回転拘束部が規格化されたナットの二面幅寸法に準ずる平行な二面を有することにより、自動工具交換装置により自動的に交換された加工工具ホルダを、スパナ等の工具を用いて手作業により容易に交換することが可能となる。
【0018】
(3)スピンドルを回転駆動するモータであり、スピンドルの回転角度を制御して加工工具ホルダの回転角度を設定可能なモータを有することにより、加工工具ホルダをツールストッカのホルダ受け穴内に戻す際に、スピンドルを回転させて加工工具ホルダの回転拘束部がツールストッカのホルダ受け穴と対応する配置となるように回転角度を設定し、ツールストッカのホルダ受け穴内へスムーズに差し込むことが可能となる。
【0019】
(4)スピンドルを回転駆動するモータであり、加工工具ホルダに加わる回転トルクを検出可能なモータを有することにより、スピンドルを回転させて加工工具ホルダを支持ホーンにねじにより装着する際に、加工工具ホルダが支持ホーンに対して超音波伝達に最適な締め付けトルクにより固定することが可能となる。
【0020】
(5)ツールストッカを支持する衝撃吸収材を有することにより、衝撃吸収材により加工工具ホルダが支持ホーンに押圧された状態でスピンドルを回転させ、加工工具ホルダをスムーズに装着することが可能となる。
【0021】
(6)超音波スピンドルユニットが、支持ホーンに対して加工工具ホルダを着脱する度に、超音波振動子により超音波振動を励起させるとともに、支持ホーンと加工工具ホルダとの接触面にエアーブローするものであることにより、支持ホーンに対して加工工具ホルダを着脱する度に、支持ホーンと加工工具ホルダとの接触面を清浄して、支持ホーンに加工工具ホルダを装着する際にその接触面にごみ、油や水などが介在しないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態における超音波加工機の正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】図1の超音波スピンドルユニットの要部断面図である。
【図6】加工工具ホルダを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は別の例を示す断面図、(d)はさらに別の例を示す断面図である。
【図7】ホルダ受けを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は図6の(c)に対応するホルダ受け穴の断面形状を示す図、(d)は図6の(d)に対応するホルダ受け穴の断面形状を示す図である。
【図8】加工工具ホルダの脱離手順を示す説明図である。
【図9】加工工具ホルダの装着手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の実施の形態における超音波加工機の正面図、図2は図1の右側面図、図3は図1の平面図、図4は図1のA−A断面図、図5は図1の超音波スピンドルユニットの要部断面図、図6は加工工具ホルダを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B断面図、図7はホルダ受けを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0024】
図1〜図4において、本発明の実施の形態における超音波加工機の自動工具交換装置1は、図3に示すX軸、図2に示すY軸およびZ軸の3軸方向に移動可能な超音波スピンドルユニット2、加工工具3が取り付けられ、超音波スピンドルユニット2の先端に着脱される加工工具ホルダ4や、複数の加工工具ホルダ4を保持するツールストッカ5等を有する。
【0025】
図5に示すように、超音波スピンドルユニット2は、中空円筒状のハウジング10内に、モータ11および駆動機構12によりZ軸方向の1軸線回りに回転駆動されるスピンドル13が軸受14を介して組み込まれている。モータ11は、スピンドル13の回転角度を制御可能なものである。また、モータ11には、その回転トルクを検出可能なセンサを備えている。
【0026】
スピンドル13は、下端が開放された中空円筒形の本体スリーブ15と、本体スリーブ15の中に配置される超音波振動子16と、超音波振動子16の下端に超音波振動子16と同軸上に連接され、本体スリーブ15の内周壁に拘束固定される支持ホーン17とを備える。
【0027】
超音波振動子16は、セラミックス製の圧電素子16aを正負の電極プレート16b,16cの間に挟持し、その下端部分を、超音波振動を増幅させる質点として機能する出力部16dとしたものである。この超音波振動子16は、電極プレート16b,16cに電源供給部17から通電がなされることにより、圧電素子16aが作動して、出力部16dに、その軸線方向を振動方向とする20kHz〜100kHzの超音波振動が励起される。そして、スピンドル13の本体スリーブ15内においては、超音波振動子16および支持ホーン17が同軸上で連接配置されているため、出力部16dに励起された超音波振動は、支持ホーン17を経由して加工工具ホルダ4へ伝達される。
【0028】
支持ホーン17は、例えば、ステンレス鋼を素材とする一体成形品であり、超音波振動子16と同軸上に連接される中実円柱状の本体17aと、本体17aの外周面の上下中央部に鍔状に形成された基部17bと、基部17bの外周を軸線方向の一方(加工工具ホルダ4側)に延設された弾性を有する円筒状の緩衝スリーブ17cと、緩衝スリーブ17cの加工工具ホルダ4側の端部に形成された軸接フランジ17dとを有している。支持ホーン17は、軸接フランジ17dによって本体スリーブ15に固定される。また、本体17aの軸線上の下端部には、加工工具ホルダ4を取り付けるための雌ねじ部18が形成されている。なお、本実施形態において、支持ホーン17は、超音波振動子16により印加されるある特定の長さに設定されている。また、基部17bは軸線方向の位置が変位しないノード位置に形成されている。
【0029】
図6(a)に示すように、加工工具ホルダ4は、例えば、ステンレス鋼を素材とする一体成形品であり、ある特定の長さの本体4aを有し、本体4aの上半分の側胴部に1/4波長の長さの回転拘束部4bが形成され、本体4aの軸線上の上端部に支持ホーン17の雌ねじ部18に締結される雄ねじ部4cが形成され、本体17aの軸線上の下端部に加工工具3が挿入される工具挿入部4dが形成されたものである。
【0030】
回転拘束部4bは、図6(b)に示すようにJIS(日本工業規格)やISO(国際標準化機構)等において規格化されたナットと同様の略正六角柱状に形成されており、スパナ等の工具を用いて挟持し、回転させることができるようになっている。なお、回転拘束部4bは略正六角柱状である必要はないが、規格化されたナットの二面幅寸法に準ずる二面を少なくとも備えていることが望ましい。なお、回転拘束部4bの形状は、加工工具ホルダ4の回転が拘束されればどのような形状でも良い。例えば、図6(c)および(d)に示すような断面形状とすることが可能である。
【0031】
図1、図3および図4に示すように、ツールストッカ5は、Z軸方向を中心に回転する回転テーブル5aを有し、所定の同一回転半径上に複数のホルダ受け6を備えている。それぞれのホルダ受け6は、図7(a),(b)に示すように、加工工具ホルダ4を保持するホルダ受け穴6aを備えている。ホルダ受け穴6aは、保持した加工工具ホルダ4が回転しないように加工工具ホルダ4の回転拘束部4bに対応する形状となっており、回転拘束部4bの断面形状が前述の図6(c)および(d)の場合、対応する形状は図7(c)および(d)に示すような形状となる。また、ホルダ受け6は、スプリング、ゴムや樹脂等の衝撃吸収材7によって回転テーブル5a上に支持されている。
【0032】
次に、上記構成の超音波加工機の自動工具交換装置1による加工工具の交換動作について説明する。図8は加工工具ホルダの脱離手順を示す説明図、図9は加工工具ホルダの装着手順を示す説明図である。
【0033】
加工工具の交換動作は、まず、図8の(a)に示すように、超音波スピンドルユニット2をツールストッカ5の上方の加工工具の交換位置まで移動する。このとき、ツールストッカ5の回転テーブル5aを回転して、脱離する加工工具ホルダ4を収納するホルダ受け6を加工工具の交換位置へ配置する。また、モータ11によりスピンドル13を回転させて加工工具ホルダ4を回転させ、加工工具ホルダ4の回転拘束部4bがホルダ受け穴6aに嵌まるように回転角度を設定する。
【0034】
そして、超音波スピンドルユニット2を下降させ、同図(b)に示すように、加工工具ホルダ4をホルダ受け6のホルダ受け穴6a内に挿入する。次に、同図(c)に示すように、モータ11によりスピンドル13を支持ホーン17の雌ねじ部18のねじが緩む方向に回転させながら超音波スピンドルユニット2を上昇させ、同図(d)に示すように、支持ホーン17の雌ねじ部18を加工工具ホルダ4の雄ねじ部4cから脱離する。このとき、加工工具ホルダ4はその回転拘束部4bがホルダ受け穴6aにより拘束されるので、ホルダ受け穴6a内で回転することがない。そして、同図(e)に示すように、モータ11(スピンドル13)の回転を停止して、超音波スピンドルユニット2を上昇させる。
【0035】
次いで、図9の(a)に示すように、ツールストッカ5の回転テーブル5aを回転し、次に装着する加工工具ホルダ4を収納するホルダ受け6を、超音波スピンドルユニット2の下方へ配置する。そして、同図(b)に示すように、支持ホーン17が加工工具ホルダ4に当接し、衝撃吸収材7を収縮させて所定量沈み込むまで、超音波スピンドルユニット2を下降させる。
【0036】
次に、同図(c)に示すように、衝撃吸収材7により加工工具ホルダ4が支持ホーン17に押圧された状態で、モータ11によりスピンドル13を支持ホーン17の雄ねじ部18のねじが締まる方向に回転させ、支持ホーン17の雌ねじ部18を加工工具4の雄ねじ部4cに締結する。このとき、加工工具ホルダ4は、ねじの締結に伴い、同図(d)に示すようにホルダ受け穴6a内から上昇していく。また、加工工具ホルダ4はその回転拘束部4bがホルダ受け穴6aにより拘束されるので、ホルダ受け穴6a内で回転することがない。
【0037】
そして、モータ11により加工工具ホルダ4に加わる回転トルクが所定量となったことが検出されると、モータ11(スピンドル13)の回転を停止して、同図(e)に示すように、超音波スピンドルユニット2を上昇させる。
【0038】
以上のように、本実施形態における超音波加工機の自動工具交換装置1によれば、ツールストッカ5のホルダ受け穴6aに保持された状態の加工工具ホルダ4に対して、支持ホーン17をスピンドル13により回転させることで、加工工具3とともに加工工具ホルダ4を超音波スピンドルユニット2からねじにより着脱し、自動的に交換することができる。このとき、加工工具ホルダ4は、側胴部に有する回転拘束部4bにより、ツールストッカ5のホルダ受け穴6a内で回転が拘束されるので、加工工具ホルダ4がスピンドル13により回転させる支持ホーン17に対して連れ回りすることがなく、加工工具ホルダ4は支持ホーン17に対して締め付けて装着、または緩められて脱離される。
【0039】
また、本実施形態における自動工具交換装置1では、加工工具ホルダ4の回転拘束部4bが規格化されたナットの二面幅寸法に準ずる平行な二面を有するので、支持ホーン17に固定された加工工具ホルダ4を、規格化されたナットと同様にスパナ等の工具を用いて回転拘束部4bの平行な二面を挟持し、回転させて、手作業により締め付け、または緩めることが可能である。すなわち、自動工具交換装置1により自動的に交換された加工工具ホルダ4を、スパナ等の工具を用いて手作業により容易に交換することが可能となっている。
【0040】
また、本実施形態における自動工具交換装置1では、スピンドル13を回転駆動するモータ11が、スピンドル13の回転角度を制御して加工工具ホルダ4の回転角度を設定可能であるため、加工工具ホルダ4をツールストッカ5のホルダ受け穴6a内に戻す際に、スピンドル13を回転させて加工工具ホルダ4の回転拘束部4bがツールストッカ5のホルダ受け穴6aと対応する配置となるように回転角度を設定して、ツールストッカ5のホルダ受け穴6a内へスムーズに差し込むことが可能となっている。
【0041】
また、本実施形態における自動工具交換装置1では、スピンドル13を回転駆動するモータ11が、加工工具ホルダ4に加わる回転トルクを検出可能であるため、スピンドル13を回転させて加工工具ホルダ4を支持ホーン17にねじにより装着する際に、加工工具ホルダ4が支持ホーン17に対して超音波伝達に最適な締め付けトルクにより固定することが可能となっている。
【0042】
また、超音波スピンドルユニット2は、支持ホーン17に対して加工工具ホルダ4を着脱する度に、超音波振動子16により超音波振動を励起させるとともに、支持ホーン17と加工工具ホルダ4との接触面にエアーブローする構成とすることが可能である。これにより、支持ホーン17に対して加工工具ホルダ4を着脱する度に、支持ホーン17と加工工具ホルダとの接触面に付着したごみ、油や水などを超音波振動によって振るい落とすことができる。また、支持ホーン17と加工工具ホルダ4との接触面にエアーブローすることで、この接触面に付着したごみ、油や水などを吹き飛ばすことができる。これにより、支持ホーン17に対して加工工具ホルダ4を着脱する度に、支持ホーン17と加工工具ホルダ4との接触面を清浄して、支持ホーン17に加工工具ホルダ4を装着する際にその接触面にごみ、油や水などが介在しないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の超音波加工機の自動工具交換装置は、超音波加工を行う加工工具を自動的に交換する装置として有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 自動工具交換装置
2 超音波スピンドルユニット
3 加工工具
4 加工工具ホルダ
5 ツールストッカ
10 ハウジング
11 モータ
12 駆動機構
13 スピンドル
14 軸受
15 本体スリーブ
16 超音波振動子
16a 圧電素子
17 支持ホーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工具が取り付けられる加工工具ホルダと、
加工工具ホルダを保持するホルダ受け穴が複数設けられたツールストッカと、
軸線回りに回転駆動されるスピンドルと、前記スピンドルに形成された中空の本体スリーブの中に配置される超音波振動子と、前記超音波振動子に同軸上に連接され、かつ前記本体スリーブの内周壁に拘束固定され、前記超音波振動子により励起された超音波振動を、前記加工工具ホルダを通じて前記加工工具へ伝達する支持ホーンとを含む超音波スピンドルユニットとを有し、
前記加工工具ホルダは、側胴部に前記ツールストッカのホルダ受け穴内で回転を拘束される回転拘束部を有し、前記ツールストッカのホルダ受け穴内に保持された状態で前記スピンドルの回転により前記支持ホーンに対してねじにより着脱されるものであることを特徴とする超音波加工機の自動工具交換装置。
【請求項2】
前記回転拘束部は、規格化されたナットの二面幅寸法に準ずる平行な二面を有する請求項1記載の超音波加工機の自動工具交換装置。
【請求項3】
前記スピンドルを回転駆動するモータであり、前記スピンドルの回転角度を制御して前記加工工具ホルダの回転角度を設定可能なモータを有する請求項1または2に記載の超音波加工機の自動工具交換装置。
【請求項4】
前記スピンドルを回転駆動するモータであり、前記加工工具ホルダに加わる回転トルクを検出可能なモータを有する請求項1から3のいずれかに記載の超音波加工機の自動工具交換装置。
【請求項5】
前記ツールストッカを支持する衝撃吸収材を有する請求項1から4のいずれかに記載の超音波加工機の自動工具交換装置。
【請求項6】
前記超音波スピンドルユニットは、前記支持ホーンに対して前記加工工具ホルダを着脱する度に、前記超音波振動子により超音波振動を励起させるとともに、前記支持ホーンと前記加工工具ホルダとの接触面にエアーブローするものである請求項1から5のいずれかに記載の超音波加工機の自動工具交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39627(P2013−39627A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176216(P2011−176216)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(390017776)株式会社岳将 (10)
【Fターム(参考)】