説明

超音波振動子、超音波振動子の製造方法、超音波内視鏡

【課題】簡単かつ破損を防いだ構成において、放射する超音波の周波数帯域の広域化を実現することができる超音波振動子を提供する。
【解決手段】圧電素子1と、上部電極2と、音響整合層4と、下部電極3と、幅方向Xにおいて設定間隔を有して配置された、圧電素子1の音響インピーダンス以下であって、音響整合層4の音響インピーダンス以上の同じ音響インピーダンスを有する複数の柱状部7cを具備する付加部材7と、複数の柱状部7c間に充填された、柱状部7cよりも軟性な充填材8と、バッキング材9と、を具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を具備する超音波振動子、超音波振動子の製造方法、超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子から被検部位に超音波を繰り返し放射し、被検部位から反射される超音波のエコー信号を超音波振動子で受信して、被検部位の二次元的な可視像である超音波画像を表示装置の画面上に表示させることができる超音波診断装置は周知であり、種々提案されている。
【0003】
超音波振動子は、通常、単板圧電素子の上下面に電極が設けられ、音響放射面となる圧電素子の上面の電極上に音響整合層が設けられ、場合によっては、音響整合層上にレンズが設けられ、さらに圧電素子の底面に音響負荷材が設けられた構成を有しており、圧電素子の上下面の電極に外部から電圧が印加されることにより、圧電素子の振動に伴い超音波を被検部位に放射し、被検部位からの反射音波を受信して電気信号に変換する機能を有している。
【0004】
ここで、超音波振動子から放射される超音波の周波数帯域を広げる、即ち広帯域化を図ることによって、超音波画像の画質を向上させる技術が周知である。
【0005】
特許文献1には、圧電素子に複数の溝を設けることにより、超音波振動子から放射される超音波の周波数帯域の広帯域化を図る構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、単板圧電素子に、樹脂材料に対して複数の圧電材料が所定の間隔に並んで混在された複合圧電体を積層することにより、超音波振動子から放射される超音波の周波数帯域の広帯域化を図る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭56−147698号公報
【特許文献2】特開2006−320415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においては、圧電素子自体に複数の溝が形成されているため、圧電素子に電極や、音響整合層、音響負荷材を設ける際、溝によって形成された柱状の部位が破損してしまう場合があり、圧電素子の取り扱いが難しくなってしまうといった問題がある。
【0009】
また、特許文献2に開示された構成においては、複合圧電体の上下面に設けられた電極において、樹脂材料と圧電材料との線熱膨張係数の違いにより、電極に電圧を印加した後、電極の樹脂材料と圧電材料との境に接する部位が破損しやすいといった問題がある他、単板圧電素子の上面、複合圧電体の下面、単板圧電素子の下面と複合圧電体の上面との間との3つに電極を設ける必要があることから、各電極にそれぞれ配線を接続しなければならず、構造が複雑になるといった問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単かつ破損を防いだ構成において、放射する超音波の周波数帯域の広域化を実現することができる超音波振動子、超音波振動子の製造方法、超音波内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明の一態様による超音波振動子は、圧電素子と、少なくとも前記圧電素子の上面に配置された上部電極と、少なくとも前記圧電素子の底面に配置された下部電極と、前記上部電極の上面に配置された音響整合層と、前記上面と前記底面とを結ぶ高さ方向における前記圧電素子の下方において、少なくとも一部が前記下部電極に接触するよう配置された、前記圧電素子の音響インピーダンス以下であって、前記音響整合層の音響インピーダンス以上の音響インピーダンスを有する複数の柱状部を具備する付加部材と、前記複数の柱状部間に充填された、前記柱状部よりも軟性な充填材と、前記高さ方向における前記圧電素子の下方において、前記付加部材を下方から覆うよう配置されたバッキング材と、を具備している。
【0012】
また、本発明の別態様による超音波振動子は、分極処理された第1の圧電材料と、前記第1の圧電材料の上面に配置された上部電極と、前記第1の圧電材料の底面に配置された下部電極と、前記上面と前記底面とを結ぶ高さ方向における前記第1の圧電材料の下方において、少なくとも一部が前記下部電極に接触する、前記第1の圧電材料と同じ音響インピーダンスを有する第2の圧電材料と、前記第1の圧電材料及び前記第2の圧電材料の前記高さ方向に直交する幅方向の一方側の側面に設けられた、前記下部電極に電気的に接続されるとともに、第1の配線が電気的に接続される第1の側面電極と、前記第1の圧電材料及び前記第2の圧電材料の前記幅方向の他方側の側面に設けられた、前記上部電極に電気的に接続されるとともに、第2の配線が電気的に接続される第2の側面電極と、前記第2の圧電材料の底面に複数形成された凹部と、前記凹部に充填された、前記柱状部よりも軟性な充填材と、前記高さ方向における前記圧電素子の下方において、前記第1の圧電材料及び前記第2の圧電材料を下方から覆うよう配置されたバッキング材と、を具備している。
【0013】
さらに、本発明の別態様による超音波振動子の製造方法は、圧電素子の少なくとも上面に上部電極を形成するとともに、少なくとも底面に下部電極を形成する電極形成工程と、前記下部電極に、接着剤を介して前記圧電素子と同じ音響インピーダンスを有する付加部材を接着する接着工程と、前記付加部材の前記下部電極に接着された面とは反対側の面に複数の凹部を形成することにより、複数の柱状部を形成する柱状部形成工程と、を具備する。
【0014】
また、本発明の別態様による超音波内視鏡は、本発案の前記超音波振動子を具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単かつ破損を防いだ構成において、放射する超音波の周波数帯域の広域化を実現することができる超音波振動子、超音波振動子の製造方法、超音波内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施の形態の超音波振動子の構成の概略を示す断面図
【図2】図1の付加部材の構成の変形例を、圧電素子、下部電極、充填材とともに示す図
【図3】付加部材の接着工程を示す図
【図4】図3の下部電極に付加部材が貼着された後の状態を示す図
【図5】図4の付加部材に複数の柱状部を形成する柱状部形成工程を示す図
【図6】図3の接着工程前に上部電極に音響整合層を貼着する工程を示す図
【図7】第2実施の形態の超音波振動子における下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態を概略的に示す断面図
【図8】図7の柱状部及び連結部の一部を拡大して示す部分斜視図
【図9】第3実施の形態の超音波振動子における下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態を概略的に示す断面図
【図10】第4実施の形態の超音波振動子の構成を概略的に示す断面図
【図11】第5実施の形態の超音波振動子の構成を概略的に示す断面図
【図12】図11の上部電極及び下部電極に対して、上部電極と下部電極とが対向する領域のみに分極処理を施す構成を概略的に示す部分断面図
【図13】第6実施の形態の超音波振動子における下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態を概略的に示す断面図
【図14】図13の付加部材の底面において、圧電素子に対向する領域に、曲面状の凹部を設けた変形例を、下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態において概略的に示す断面図
【図15】第7実施の形態の超音波振動子における振動子ユニットを概略的に示す断面図
【図16】図15の第1の圧電材料を構成する第1のグリーンシートを概略的に示す斜視図
【図17】図16の第1のグリーンシートの上面に上部電極を形成し、底面に下部電極を形成した状態を概略的に示す斜視図
【図18】図17の第1のグリーンシートの上面に第2の圧電材料を構成する第2のグリーンシートを積層した状態を概略的に示す斜視図
【図19】図18の第1のグリーンシートに第2のグリーンシートが積層された圧電素子ユニットの幅方向の一方側及び他方側を切断した状態を概略的に示す斜視図
【図20】図19の圧電素子ユニットの幅方向の一方側及び他方側に側面電極を形成した状態を概略的に示す斜視図
【図21】圧電素子ユニットに、音響整合層ユニットを貼着し、振動子ユニットを形成した状態を概略的に示す断面図
【図22】アレイ状の超音波振動子における振動子ユニットを示す斜視図
【図23】図22の付加部材の底面に、奥行き方向に沿って複数の凹部をダイシングソーブレードにより形成した状態を示す斜視図
【図24】図23の凹部に充填材を充填した状態を示す断面図
【図25】図24の付加部材、圧電素子、第1の音響整合層に対して、複数の凹部に直交する複数の溝を幅方向に形成した状態を示す斜視図
【図26】図25の振動子ユニットを折り曲げた状態を、図25中のIIXVIの方向からみた側面図
【図27】図24の付加部材、圧電素子、第1の音響整合層に対して、複数の凹部に90°以外の角度を有して交差する複数の溝を幅方向に形成した状態を示す斜視図
【図28】図27の付加部材を、図27中のIIXVIII方向からみた上面図
【図29】図28の1つの柱状部を拡大して示す斜視図
【図30】超音波内視鏡の外観を示す図
【図31】図30の超音波内視鏡の挿入部の先端部に設けられた超音波振動部を拡大して示す斜視図
【図32】図31中のIIIXII-IIIXII線に沿った超音波振動部の断面図
【図33】図31中のIIIXIII-IIIXIII線に沿う超音波振動部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態の超音波振動子の構成の概略を示す断面図、図2は、図1の付加部材の構成の変形例を、圧電素子、下部電極、充填材とともに示す図である。
【0018】
図1に示すように、超音波振動子100は、後述する高さ方向Zに振動することにより、超音波を高さ方向Zにおける超音波放射方向ZUに放射するとともに、被検部位から反射された音波を受信する単板圧電素子1をハウジング10内において具備している。尚、圧電素子1は、圧電材料、例えばセラミックを焼成することにより形成されている。また、ハウジング10は、絶縁部材から構成されている。
【0019】
ハウジング10内において、分極処理が施された圧電素子1の上面1jに、上部電極2が設けられているとともに、底面1tに、下部電極3が設けられている。
【0020】
尚、上部電極2と下部電極3とは、圧電素子1に対して、図示しないコントローラから後述する第1の配線13を介して送信されたパルス電圧を印加することにより圧電素子1を振動させるものである。また、上面1jは、圧電素子1の音響放射面を構成している。さらに、上部電極2はGND電極を構成しているとともに、下部電極3はプラス電極を構成している。
【0021】
また、ハウジング10内において、上面1jと底面1tとを結ぶ高さ方向Zにおいて、上部電極2の上方、具体的には、上部電極2の上面に、第1の音響整合層4が設けられているとともに、第1の音響整合層4の上面に、第2の音響整合層5が設けられている。
【0022】
さらに、第2の音響整合層5の上面に、音響レンズ6が設けられている。尚、超音波振動子100において、第1の音響整合層4、第2の音響整合層5、音響レンズ6は必ずしも必要では無いが、本実施の形態においては、第1の音響整合層4、第2の音響整合層5、音響レンズ6が設けられている場合を例に挙げている。
【0023】
また、ハウジング10内において、上部電極2の上面において、第1の音響整合層4が設けられていない部位に、第2の配線14の一端が電気的に接続される上部電極接続部12が設けられている。配線13,14は図示しない振動子駆動装置に接続されている。
【0024】
さらに、ハウジング10内において、下部電極3の高さ方向Zの下方、具体的には、下部電極3の底面に、圧電素子1の振動に伴い、圧電素子1とともに高さ方向Zに振動する付加部材7が、後述する接着剤16(図3参照)を介して下部電極3に接触するよう接着されている。尚、付加部材7は、下部電極3の底面において、高さ方向Zに直交する幅方向Xの中央に位置している。
【0025】
付加部材7は、圧電素子1を構成する圧電材料と同じ音響インピーダンスを有する圧電材料か、圧電素子1の音響インピーダンス以下であって、圧電素子と接する音響整合層4以上の音響インピーダンスを有する材料のいずれかにより構成されている。
【0026】
例えば、付加部材7は、圧電素子1を構成する圧電材料と同じ材料であるセラミック等から構成されている。尚、圧電素子1と付加部材7とが同じ材料から構成されておれば、圧電素子1と付加部材7との界面において、音響インピーダンスの差によって生じる音波の反射が起こらないことから、超音波振動子100の感度を向上させることができる。
【0027】
また、付加部材7は、分極処理が施されていないことにより、非圧電性を有した状態で下部電極3の下面に固定されている。これは、付加部材7に分極処理が施されていないとともに、付加部材7を構成する圧電材料が圧電素子1を構成する圧電材料と同じだと、付加部材7の表面、具体的には、付加部材7の底面7tや、後述する凹部7hの底面7hm等に不要な電位が溜まらないことから、付加部材7が構造体としてのみ振動に関与するようになるため、圧電素子1の振動を阻害しないためである。さらに、分極処理が施されていないと、付加部材7に内部応力が発生しないため、形状、構造が安定し、コストダウンを図ることができるためである。
また付加部材は、圧電素子と同じ材料である必要はなく、振動が圧電素子から伝えやすい材料であればよく、例えば、セラミック、金属、樹脂材料などが挙げられる。より具体的には、アルミナ、ジルコニア、ジュラルミン、アルミ、ガラス、MgO−Al−SiO系セラミックス、エポキシ樹脂に金属等の粉体を混合した材料が挙げられる。
【0028】
付加部材7は、高さ方向Zに細長であってかつ幅方向Xに設定間隔を有して設けられた複数の柱状部7cと、各柱状部7cの高さ方向Zの下部電極3側の端部7ctを幅方向Xに沿って連結する複数の連結部7rとを具備して主要部が構成されていることにより、高さ方向Zの断面形状が櫛状を有している。即ち、幅方向Xにおける各柱状部7c間には、それぞれ凹部7hが形成されている。
【0029】
尚、図2に示すように、付加部材7は、複数の柱状部7cのみから構成されていても構わない。この場合、各柱状部7cの端部7ctは、例えば既知のp−MUTによって下部電極3に固定される。
【0030】
また、凹部7hには、柱状部7cよりも軟性な、付加部材7の振動効率を向上させる充填材8が充填されている。尚、充填材8としては、柔らかいエポキシ樹脂や、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、凹部7hには、充填材8の代わりに、後述するバッキング材9が充填されていても構わない。
【0031】
付加部材7は、複数の柱状部7c及び複数の凹部7hを有することにより、高さ方向Zにおける厚みが、幅方向Xにおいて異なる形状を有している。即ち、複数の柱状部7cと複数の連結部7rとでは、高さ方向Zにおける厚みが異なる。
【0032】
このことから、圧電素子1の振動に伴って、複数の柱状部7c及び複数の連結部7rが高さ方向Zに振動する際、付加部材7の複数の柱状部7cが設けられた部位は、圧電素子1の高さ方向Zの厚みZ10と複数の柱状部7cの高さ方向Zの厚みZ12との合計厚みにより、連結部7rよりも低周波の振動を励起する。
【0033】
また、付加部材7の複数の連結部7rが設けられた部位は、圧電素子1の高さ方向Zの厚みZ10と、厚みZ12よりも小さい複数の連結部7rの高さ方向Zの厚みZ11との合計厚みにより、柱状部7cよりも高周波の振動を励起する。
【0034】
即ち、付加部材7は、圧電素子1から放射される超音波の周波数帯域を広域化させることができる。
【0035】
尚、本実施の形態においては、付加部材7は、高さ方向Zに直交する幅方向Xにおける幅X1が、圧電素子1の幅方向Xの幅X2よりも小さくなるよう形成されている(X1<X2)。
【0036】
これは、付加部材7の幅X1が圧電素子1の幅X2よりも小さく形成されていると、超音波振動子100において、付加部材7が設けられた領域が圧電素子1の幅方向Xの中央に発生し、幅方向Xにおける付加部材7の両脇は付加部材7が設けられていない領域となることから、中央の領域は、付加部材7によって感度が向上し、付加部材7が設けられていない両端の領域は、感度が相対的に低下するため、両端の領域から、超音波放射方向ZUとは異なる方向に超音波が漏れる既知のサイドローブが発生し難くなり、音場が改善するためである。
【0037】
また、下部電極3の底面において、付加部材7が非接触の領域に、第1の配線13の一端が電気的に接続される下部電極接続部11が設けられている。尚、第1の配線13の他端は、例えば超音波観測装置から延出された信号ケーブル90(図30参照)に接続されている。
【0038】
下部電極接続部11は、信号ケーブル90、第1の配線13を介して送信されたパルス電圧を下部電極3に伝達するとともに、圧電素子1からの受信信号を、第1の配線13を介して信号ケーブル90へと伝達するものである。
【0039】
さらに、ハウジング10内において、下部電極3よりも高さ方向Zの下方に、不要な超音波を減衰させるバッキング材9が、付加部材7、下部電極接続部11を覆うように設けられている。
【0040】
尚、バッキング材9は、ハウジング10に対して、圧電素子1に付加部材7、音響整合層4、5が固定された振動子ユニット150を固定するものとしても機能する。
【0041】
次に、超音波振動子100の製造方法について、図3〜図6を用いて説明する。図3は、付加部材の接着工程を示す図、図4は、図3の下部電極に付加部材が貼着された後の状態を示す図、図5は、図4の付加部材に複数の柱状部を形成する柱状部形成工程を示す図、図6は、図3の接着工程前に上部電極に音響整合層を貼着する工程を示す図である。
【0042】
超音波振動子100を製造する際は、先ず、圧電素子1の圧電材料を焼成した後、上面1jに上部電極2を形成し、底面1tに下部電極3を形成する電極形成工程を行う。
【0043】
次いで、図3、図4に示すように、下部電極3または付加部材7に、接着剤16を塗布して、接着剤16を介して下部電極3の上述した位置に対して付加部材7を高さ方向Zの上下方向から加圧して接着する接着工程を行う。尚、接着剤16としては、エポキシ接着剤等が挙げられる。
【0044】
また、接着工程においては、必要により付加部材7と圧電素子1とを、下部電極3の面内方向に微少に動かすことによって、接着剤16による接着層を、例えば30μm以下の薄い層にする。
【0045】
尚、接着層を薄い層に形成するのは、接着層が厚いと、接着層において上述した音波の反射が起こりやすく、また、接着層において特に高周波領域の音の減衰が起こりやすくなることから、振動子特性の低下を引き起こすためである。
【0046】
また、接着層を薄くするには、圧電素子1と付加部材7とを強く加圧する必要がある。尚、接着後は、加圧状態を保持したまま加熱を行い、接着状態を固定する。
【0047】
次いで、図5に示すように、付加部材7の下部電極3に接着された面とは高さ方向Zにおける反対側の面7tに、例えばダイシングソーブレード17を用いて、幅方向Xに設定間隔を有するよう、高さ方向Zに所定の深さを有する複数の凹部7hを形成して、上述した複数の柱状部7cを形成する柱状部形成工程を行う。
【0048】
尚、柱状部形成工程を、下部電極3に対して付加部材7を貼着した後に行ったのは、貼着前に付加部材7に柱状部形成工程を行ってしまうと、上述したように接着層を薄くするために強く加圧した際、既に付加部材7に複数の凹部7hが形成されていると、加圧により、複数の柱状部7cが破損してしまう可能性が高くなるためである。
【0049】
よって、柱状部形成工程は、接着工程後に行うことにより、接着層の厚みを十分薄くすることができるとともに、付加部材7の破損を防止することができる。
【0050】
尚、柱状部形成工程において、図5に示すように、幅方向Xの中央に位置する連結部7rの充填材8に接する面、即ち凹部7hの底面7hmのほうが、幅方向Xの一端側及び他端側に位置する連結部7rの充填材8に接する面、即ち凹部7hの底面7hmよりも圧電素子1側に凹んで位置している(Z1<Z2<Z3)。
【0051】
言い換えれば、幅方向Xの中央に位置する凹部7hのほうが、幅方向Xの一端側及び他端側に位置する凹部7hよりも高さ方向Zに深く形成されている。
【0052】
これは、上述したように、連結部7rの高さ方向における厚みが薄い方が、高周波の強い振動を励起でき、厚みが厚い方が、低周波の強い振動を励起できることから、幅方向Xの一端側及び他端側に位置する凹部7hを、幅方向Xの中央に位置する凹部7hよりも高さ方向Zに浅く形成することにより、超音波振動子100の両端の領域から、上述したサイドローブが発生し難くなり、音場が改善するためである。
【0053】
尚、図示しないが、凹部7hの深さを、幅方向Xにおいてランダムに形成すると、超音波振動子100の周波数帯域が向上する。
【0054】
柱状部形成工程後は、上部電極2に、第2の音響整合層5と第1の音響整合層4とから構成された音響整合層ユニット130を、第1の音響整合層4が上部電極2に接触するよう接着固定し、第2の音響整合層5に音響レンズ6を設け、下部電極接続部11に第1の配線13を電気的に接続するとともに、上部電極接続部12に第2の配線14を電気的に接続して振動子ユニット150を製造し、最後に、ハウジング10内に、振動子ユニット150を、バッキング材9を介して接着固定することにより、超音波振動子100を製造する。
【0055】
尚、図6に示すように、上部電極2に対する第1の音響整合層4の接着剤19を介した接着は、下部電極3に付加部材7を接着する接着工程前に行うことが望ましい。
【0056】
これは、下部電極3に付加部材7を貼着し、付加部材7に複数の凹部7hを形成してから上部電極2に音響整合層ユニット130を貼着すると、上部電極2に対する音響整合層ユニット130の接着も加圧して行うことから、上述と同様に、加圧時に、凹部7hによって形成された複数の柱状部7cが破損してしまう可能性が高くなるためである。
【0057】
即ち、下部電極3に付加部材7を接着する前に、上部電極2に対して音響整合層ユニット130を接着する工程を行うと、付加部材7に複数の凹部7hを形成する前に、音響整合層ユニット130を、上部電極2に対して十分加圧して接着することができることから、接着剤19による接着層を、上述と同様に十分薄くすることができるため、上述した音波の反射を防ぐことができ、超音波振動子100の感度を向上させることができるためである。
【0058】
このように、本実施の形態においては、圧電素子1の底面1tに形成された下部電極3に、圧電素子1と同じ音響インピーダンスを有するとともに非圧電性を有する、圧電素子1とともに高さ方向Zに振動する付加部材7が設けられていると示した。
【0059】
また、付加部材7は、圧電素子1の振動に伴って、複数の柱状部7c及び複数の連結部7rが高さ方向Zに振動する際、複数の柱状部7cは、圧電素子1の高さ方向Zの厚みZ10と複数の柱状部7cの高さ方向Zの厚みZ12との合計厚みにより、連結部7rよりも低周波の強い振動を励起し、複数の連結部7rは、圧電素子1の高さ方向Zの厚みZ10と、厚みZ12よりも小さい複数の連結部の高さ方向Zの厚みZ11との合計厚みにより、柱状部7cよりも高周波の強い振動を励起すると示した。
【0060】
このことによれば、複合圧電体を圧電素子に積層したり、圧電素子自体に複数の凹部を形成したりすることなく、圧電素子1に付加部材7を貼着するのみの簡単な構成によって、圧電素子1から放射される超音波の周波数帯域を広域化させることができることから、簡単かつ圧電素子1の破損を防いだ構成において、放射する超音波の周波数帯域の広域化を実現することができる超音波振動子100、超音波振動子100の製造方法を提供することができる。
【0061】
(第2実施の形態)
図7は、本実施の形態の超音波振動子における下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態を概略的に示す断面図、図8は、図7の柱状部及び連結部の一部を拡大して示す部分斜視図である。
【0062】
この第2実施の形態の超音波振動子の構成は、上述した図1〜図6に示した第1実施の形態の超音波振動子と比して、付加部材に形成された複数の凹部の底面が曲率を有する面に形成されている点が異なる。よって、この相違点のみを説明し、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0063】
図7、図8に示すように、付加部材7において、連結部7rの充填材8に接する面である複数の凹部7hの底面7hmは、各柱状部7c間を、幅方向Xにおいて曲率を有して連結する形状に形成されている。
【0064】
尚、底面7hmは、図7に示すように、先端にR面17rを有するダイシングソーブレード17によって付加部材7に複数の凹部7hが形成されることにより、曲率を有する形状に形成される。尚、その他の構成は、上述した第1実施の形態と同様である。
【0065】
このような構成によれば、複数の柱状部7cは、図8に示すように、高さ方向Zにおいて、下部電極3側に向かう程、幅方向Xにおいて幅広となっていくことから(X4<X5<X6)、複数の柱状部7cの下部電極3に近接する部位の機械的強度が向上し、該部位が、上述した第1実施の形態よりも破損し難くなる他、図8に示すように、各柱状部7cに対して、幅方向X及び、高さ方向Z及び幅方向Xに直交する奥行き方向Yに倒れる方向Mの振動が発生し難くなり、高さ方向Zに振動しやすくなることから、超音波振動子100における振動子感度が向上する。尚、その他の効果は、上述した第1実施の形態と同様である。
【0066】
(第3実施の形態)
図9は、本実施の形態の超音波振動子における下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態を概略的に示す断面図である。
【0067】
この第3実施の形態の超音波振動子の構成は、上述した図1〜図6に示した第1実施の形態の超音波振動子、図7、図8に示した第2実施の形態の超音波振動子と比して、付加部材7において、幅方向Xの中央に位置する柱状部7cの幅が、幅方向Xの一方側及び他方側に位置する柱状部7cの幅よりも狭い点が異なる。よって、この相違点のみを説明し、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0068】
図9に示すように、付加部材7の複数の柱状部7cにおいて、幅方向Xの中央に位置する柱状部7cの幅は、幅方向Xの一方側及び他方側に位置する柱状部7cの幅よりも小さく形成されている(X10<X11<X12)。
【0069】
言い換えれば、幅方向Xの中央に位置する凹部7hの幅は、幅方向Xの一方側及び他方側に位置する凹部7hの幅よりも小さく形成されている(X15<X16<X17)。尚、その他の構成は、上述した第1、第2実施の形態と同じである。
【0070】
このような構成によれば、上述したサイドローブが低減するため、超音波振動子100の性能を向上させることができる。尚、その他の効果は、上述した第1、第2実施の形態と同じである。
【0071】
(第4実施の形態)
図10は、本実施の形態の超音波振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【0072】
この第4実施の形態の超音波振動子の構成は、上述した図1、図2に示した第1実施の形態、図7、図8に示した第2実施の形態の超音波振動子、図9に示した第3実施の形態の超音波振動子と比して、上部電極2に対して、第2の配線14が圧電素子1の底面1tにて電気的に接続されている点が異なる。よって、この相違点のみを説明し、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0073】
上述した第1実施の形態においては、上部電極2に対して、第2の配線14は、上部電極2の上面に設けられた上部電極接続部12を介して電気的に接続されていると示した。
【0074】
ところが、この構成では、上部電極接続部12に対して第2の配線14の一端側を、構造上接続し難いといった問題があった。
【0075】
そこで、本実施の形態においては、図10に示すように、圧電素子1の底面1tにおいて、下部電極3が設けられている領域及び付加部材7が設けられている領域とは異なる幅方向の一方側の領域に、上部電極2を、圧電素子1の上面1jから幅方向Xの一方側の側面1sを介して引き出し、この底面1tに引き出した部位に上部電極引き出し部30を設け、上部電極引き出し部30に第2の配線14を電気的に接続する構成とした。尚、その他の構成は、上述した第1、第2実施の形態と同様である。
【0076】
このような構成によれば、上面1j側に、上部電極2に対する第2の配線14の接続部が無くなることから、図10に示すように、上部電極2の上面全体に第1の音響整合層4を接着することができるため、超音波振動子100の性能を向上させることができる他、第1実施の形態と同様に、上部電極引き出し部30、下部電極接続部11を、付加部材7が設けられた領域よりも幅方向Xの一方側及び他方側に設けることができるため、配線の配置に伴う超音波振動子の感度低下が受け難くなる。
【0077】
尚、その他の効果は、上述した第1、第2実施の形態と同様である。
【0078】
(第5実施の形態)
図11は、本実施の形態の超音波振動子の構成を概略的に示す断面図、図12は、図11の上部電極及び下部電極に対して、上部電極と下部電極とが対向する領域のみに分極処理を施す構成を概略的に示す部分断面図である。
【0079】
この第5実施の形態の超音波振動子の構成は、上述した図9に示した第4実施の形態の超音波振動子と比して、上部電極2及び下部電極3に対して、上部電極2と下部電極3とが対向する領域のみに分極処理が施されている点が異なる。よって、この相違点のみを説明し、第4実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0080】
図11に示すように、上部電極2が、上面1jから側面1sを介して底面1tまで引き出された構成において、上部電極2及び下部電極3に対して、上部電極2と下部電極3とが対向する領域H、即ち、高さ方向Zの音響レンズ6側から平面視した状態において、上部電極2及び下部電極3の付加部材7に重畳する領域のみに、図12に示すよう電源34を用いて分極処理を行い、上部電極2及び下部電極3の領域Hのみが分極された構成を有していても構わない。尚、その他の構成は、上述した第4実施の形態と同様である。
【0081】
このような構成によれば、圧電素子1は、付加部材7が貼着された領域のみが高さ方向Zに振動することから、付加部材7が貼着された領域に対して両端の領域の振動が抑制されるため、上述したサイドローブの発生を抑制することができる。尚、その他の効果は、上述した第4実施の形態と同様である。
【0082】
(第6実施の形態)
図13は、本実施の形態の超音波振動子における下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態を概略的に示す断面図である。
【0083】
この第6実施の形態の超音波振動子の構成は、上述した図1〜図6に示した第1実施の形態の超音波振動子、図7、図8に示した第2実施の形態の超音波振動子、図9に示した第3実施の形態の超音波振動子、図10に示した第4実施の形態の超音波振動子、図11、図12に示した第5実施の形態の超音波振動子と比して、付加部材7が、幅方向Xに圧電素子1よりも幅広に形成されている点と、付加部材7のバッキング材9に接する面において、下部電極3に第1の配線13が電気的に接続され、上部電極2に第2の配線14が電気的に接続されている点が異なる。
【0084】
よって、この相違点のみを説明し、第1〜第5実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0085】
図13に示すように、圧電素子1の上面1jに形成された上部電極2は、幅方向Xの一方側の側面1saまで引き出されて形成されている。尚、上部電極2は、上面1jにおいて、幅方向Xの他方側には形成されていなことから、下部電極3とは電気的に接続されていない。
【0086】
また、圧電素子1の底面1tに形成された下部電極3は、幅方向Xの他方側の側面1sbまで引き出されて形成されている。尚、下部電極3は、底面1tにおいて、幅方向Xの一方側には形成されていないことから、上部電極2とは電気的に接続されていない。
【0087】
また、本実施の形態においては、付加部材7は、複数の柱状部7cや複数の連結部7rの他、複数の柱状部7cよりも幅方向Xの一方側及び他方側に延出して位置する延在部位7e1、7e2を具備している。よって、付加部材7の幅方向Xの幅X7は、圧電素子1の幅方向Xの幅X2よりも、延在部位7e1、7e2の分だけ大きく形成されている(X2<X7)。
【0088】
さらに、一方側の延在部位7e1における上面7j、側面7sa、バッキング材9に接する面となる底面7tに、電極42が形成されており、他方側の延在部位7e2における上面7j、側面7sb、底面7tにも電極43が形成されている。
【0089】
尚、電極43は、幅方向Xにおいて、複数の柱状部7cや複数の連結部7rが形成された領域の上面7jにも形成されている。
【0090】
また、上部電極2と電極42とは、延在部位7e1の上面7jと圧電素子1の側面1saとの間において、導電性接着剤35が用いられて電気的に接続されているともに、下部電極3と電極43とは、延在部位7e2の上面7jと圧電素子1の側面1sbとの間において、導電性接着剤36が用いられて電気的に接続されている。
【0091】
このことにより、延在部位7e2の底面7tには、下部電極3が引き出された、第1の配線13が電気的に接続される下部電極引き出し部44が設けられているとともに、延在部位7e1の底面7tには、上部電極2が引き出された、第2の配線14が電気的に接続される上部電極引き出し部45が設けられている。
【0092】
このように構成された超音波振動子を形成する際は、先ず、上部電極2及び下部電極3が上述の位置に形成された圧電素子1の下部電極3側に、電極42、電極43が上述した位置に形成された付加部材7を接着固定する。
【0093】
次いで、上部電極2に付加部材7の電極42を、導電性接着剤35を介して電気的に接続するとともに、下部電極3に、付加部材7の電極43を、導電性接着剤36を介して電気的に接続する。
【0094】
その後、圧電素子1の上部電極2側に、音響整合層ユニット130が接着された後、付加部材7の底面7tに、複数の凹部7hを第1実施の形態と同様に形成する。
【0095】
その後、下部電極引き出し部44に、第1の配線13を、半田等を用いて電気的に接続するとともに、上部電極引き出し部45に、第2の配線14を、半田等を用いて電気的に接続する。
【0096】
次いで、ハウジング10(図1参照)に、バッキング材9を充填し、その後、ハウジング10内において、振動子ユニット150を、バッキング材9に付加部材7の底面7tが接するよう貼着する。
【0097】
最後に、第2の音響整合層5上に、音響レンズ6を形成し、超音波振動子100は形成される。
【0098】
尚、音響レンズ6の形成は、第1の配線13、第2の配線14の接続前であっても構わない。また、ハウジング10内のバッキング材9上に、振動子ユニット150を載置する前に、付加部材7の各凹部7h内に、充填材8を充填すると、凹部7hに対する充填剤8の充填状況が確認できるため、超音波振動子100の信頼性がより向上する。
【0099】
このような構成、製造方法によれば、付加部材7の底面7tにおいて、第1の配線13、第2の配線14の接続が行われるため、該接続の際、圧電素子1に対して、半田付けの際の熱負荷を与えることが無いことから、半田付けに起因する圧電素子1の熱劣化、熱応力による劣化を無くすことができるため、より超音波振動子100の信頼性が向上する。尚、その他の効果は、上述した第1〜第5実施の形態と同じである。
【0100】
尚、以下、変形例を、図14を用いて示す。図14は、図13の付加部材の底面において、圧電素子に対向する領域に、曲面状の凹部を設けた変形例を、下部電極及び上部電極が形成された圧電素子に付加部材が貼着された状態において概略的に示す断面図である。
【0101】
上述した第1〜第6実施の形態においては、付加部材7の底面7tに、複数の凹部7hが幅方向Xに沿って設定間隔に形成されていることにより、複数の柱状部7cが幅方向Xにおいて設定間隔を有して形成されていると示した。
【0102】
これに限らず、図14に示すように、付加部材7の底面7tの、例えば圧電素子1に対向する領域に、幅方向Xの中央領域ほど高さ方向Zの厚みが薄く、中央領域から幅方向Xの一方側及び他方側に向かうに従い高さ方向Zの厚みが増えていく曲面状の凹部7pが形成されていても構わない。
【0103】
尚、曲面状の凹部7pに限定されず、幅方向Xの中央領域ほど高さ方向Zの厚みが薄く、中央領域から幅方向Xの一方側及び他方側に向かうに従い高さ方向Zの厚みが増えていく形状であれば、段差や、既知のプラノコンケイブ形状であっても構わない。尚、その他の構成は、上述した第1〜第6実施の形態と同じである。
【0104】
このような構成によれば、圧電素子1の振動に伴い、付加部材7が振動した際、上述した第1〜第6実施の形態と同様に、中央領域の高さ方向Zの厚みが薄いことから、付加部材7の中央領域からは高周波の強い振動を励起でき、延在部位7e1、7e2からは、高さ方向Zの厚みが厚いため、低周波の強い振動を励起できることから、幅方向Xに分布を持つ振動の発生を、圧電素子単板を用いて容易に作成することが可能となる。尚、その他の効果は、上述した第1〜第6実施の形態と同じである。
【0105】
(第7実施の形態)
図15は、本実施の形態の超音波振動子における振動子ユニットを概略的に示す断面図である。
【0106】
この第7実施の形態の超音波振動子の構成は、上述した図1〜図6に示した第1実施の形態の超音波振動子、図7、図8に示した第2実施の形態の超音波振動子、図9に示した第3実施の形態の超音波振動子、図10に示した第4実施の形態の超音波振動子、図11、図12に示した第5実施の形態の超音波振動子、図13に示した第6実施の形態の超音波振動子と比して、圧電素子と付加部材とが、圧電素子ユニットとして一体的に形成されている点が異なる。
【0107】
よって、この相違点のみを説明し、第1〜第6実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0108】
図15に示すように、本実施の形態においては、圧電素子1と付加部材7とは圧電素子ユニット25として一体的に形成されている。
【0109】
具体的には、圧電素子ユニット25は、分極処理が施された第1の圧電材料21と、第1の圧電材料21の上面21jにおいて、幅方向Xの一方側を除く領域に設けられた上部電極22と、第1の圧電材料21の底面21tにおいて、幅方向Xの他方側を除く領域に設けられた下部電極23と、第1の圧電材料21の高さ方向Zの下方において底面21tに接触する、第1の圧電材料と同じ音響インピーダンスを有する第2の圧電材料24と、圧電素子ユニット25における幅方向Xの一方側の側面に形成された、下部電極23と電気的に接続された第1の側面電極26と、圧電素子ユニット25における幅方向Xの他方側の側面に形成された、上部電極22と電気的に接続された第2の側面電極27とを具備して主要部が構成されている。尚、第1の側面電極26には、第1の配線13が電気的に接続されているとともに、第2の側面電極27には、第2の配線14が電気的に接続されている。
【0110】
また、圧電素子ユニット25の上部電極22側の面25j、具体的には、第1の圧電材料21の上面21jには、音響整合層ユニット130が貼着され、振動子ユニット150’を構成しており、圧電素子ユニット25の面25jとは高さ方向Zに反対側の面25t、具体的には、第2の圧電材料24の底面24tには、幅方向Xに設定間隔を有して複数の凹部25hが形成されていることにより、複数の柱状部25c、複数の連結部25rが形成されている。
【0111】
尚、図示しないが、複数の凹部25hには、上述した充填材8が充填されている。また、図示しないが、面25tの下方には、上述した第1〜第6実施の形態同様、バッキング材9が位置している。尚、その他の構成は、上述した第1〜第6実施の形態と同じである。
【0112】
次に、本実施の形態の超音波振動子の製造方法について、上述した図15と、図16〜図21を用いて説明する。
【0113】
図16は、図15の第1の圧電材料を構成する第1のグリーンシートを概略的に示す斜視図、図17は、図16の第1のグリーンシートの上面に上部電極を形成し、底面に下部電極を形成した状態を概略的に示す斜視図、図18は、図17の第1のグリーンシートの上面に第2の圧電材料を構成する第2のグリーンシートを積層した状態を概略的に示す斜視図である。
【0114】
また、図19は、図18の第1のグリーンシートに第2のグリーンシートが積層された圧電素子ユニットの幅方向の一方側及び他方側を切断した状態を概略的に示す斜視図、図20は、図19の圧電素子ユニットの幅方向の一方側及び他方側に側面電極を形成した状態を概略的に示す斜視図、図21は、圧電素子ユニットに、音響整合層ユニットを貼着し、振動子ユニットを形成した状態を概略的に示す断面図である。
【0115】
先ず、図16に示すように、第1の圧電材料を構成する第1のグリーンシート21を作製する。その後、図17に示すように、第1のグリーンシート21の高さ方向Zの上面21jに、幅方向Xの一方側の領域を除いて、奥行き方向Yに沿って上部電極22を形成するとともに、底面21tに、幅方向Xの他方側の領域を除いて、奥行き方向Yに沿って下部電極23を形成する。
【0116】
次いで、図18に示すように、第1のグリーンシート21の下部電極23側の底面21tに、第2の圧電材料を構成する第2のグリーンシート24を形成して、圧電素子ユニット25を形成する。
【0117】
その後、圧電素子ユニット25を焼成した後、図19に示すように、圧電素子ユニット25の幅方向Xの一方側及び他方側を図18の奥行き方向に沿った点線Dに沿って切断し、圧電素子ユニット25の幅方向Xの幅を調整する。その結果、図19に示すように、圧電素子ユニット25の一方側の側面には、奥行き方向Yに沿って下部電極23が露出する。
【0118】
次いで、図20に示すように、圧電素子ユニット25の一方側の側面に、第1の側面電極26を、スパッタ、焼き付け等によって形成する。その結果、一方側の側面に露出されている下部電極23と第1の側面電極26とは電気的に接続される。
【0119】
また、図20に示すように、圧電素子ユニット25の他方の側面に、第2の側面電極27を、スパッタ、焼き付け等によって形成する。その結果、第1の側面電極27は、上部電極22と、第1のグリーンシート21の上面21jにおいて電気的に接続される。
【0120】
その後、図21に示すように、圧電素子ユニット25の上部電極22側の面に、音響整合層ユニット130を貼着し、次いで、図15に示すように、圧電素子ユニット25の面25tに、幅方向Xに沿って設定間隔を有する複数の凹部25hを形成することにより、複数の柱状部25c、連結部25rを形成する。
【0121】
最後に、第1の側面電極26に、半田等により第1の配線13を電気的に接続し、第2の側面電極27に、半田等により第2の配線14を電気的に接続して振動子ユニット150’を形成する。尚、その後の工程は、上述した第1実施の形態と同じである。
【0122】
このような構成によれば、第1の圧電材料21と第2の圧電材料24との間に接着層が無いことから、接着層による音波の上述した反射を無くすことができるため、超音波振動子100の感度を向上させることができる。尚、その他の効果は、上述した第1〜第6実施の形態と同じである。
【0123】
(第8実施の形態)
図22は、アレイ状の超音波振動子における振動子ユニットを示す斜視図、図23は、図22の付加部材の底面に、奥行き方向に沿って複数の凹部をダイシングソーブレードにより形成した状態を示す斜視図である。
【0124】
また、図24は、図23の凹部に充填材を充填した状態を示す断面図、図25は、図24の付加部材、圧電素子、第1の音響整合層に対して、複数の凹部に直交する複数の溝を幅方向に形成した状態を示す斜視図、図26は、図25の振動子ユニットを折り曲げた状態を、図25中のIIXVIの方向からみた側面図である。
【0125】
この第8実施の形態の超音波振動子の構成は、図10に示した第4実施の形態の超音波振動子と比して、超音波振動子がアレイ状に形成されている点が異なる。即ち、超音波振動子がアレイ状である以外は、第4実施の形態の超音波振動子の構成と同じであるため、その説明は省略する。
【0126】
図25に示すように、本実施の形態の超音波振動子200における振動子ユニット250の圧電素子51、第1の音響整合層54、第2の音響整合層55、付加部材57は、第4実施の形態の圧電素子1、第1の音響整合層4、第2の音響整合層5、付加部材7よりも幅方向X及び奥行き方向Yにそれぞれ大きく形成された大板から構成されているとともに、幅方向X及び奥行き方向Yに複数の柱状部57c、圧電素子51、第1の音響整合層54がアレイ状に形成されている構成を有している。
【0127】
尚、その他の各部材間の大きさ、配置関係は、上述した第4実施形態の超音波振動子100と同じであるため、その説明は省略する。
【0128】
次に、本実施の形態の超音波振動子200の製造方法について説明する。
先ず、図22に示すように、図10の超音波振動子100と同じ位置に、上部電極52、下部電極53が形成された圧電素子51の上面51jに、音響整合層ユニット230を貼着するとともに、圧電素子51の底面51tの幅方向Xの中央に、付加部材57を貼着して振動子ユニット250を形成する。
【0129】
次いで、図23に示すように、ダイシングソーブレード60を用いて、付加部材57の底面57tに対して、幅方向Xに設定間隔を有するとともに、互いに幅方向Xに平行となるよう、奥行き方向Yの一端57y1から他端57y2まで貫通する複数の凹部57hを形成する。尚、図23においては、凹部57hの底面57hmは、曲率を有する形状に形成されているが、この形状に限定されない。
【0130】
その後、図24に示すように、各凹部57hに、付加部材57よりも軟性な、上述した充填材8と同じ構成を有する充填材58を充填する充填材充填工程を行う。尚、各凹部57hには、第1〜第7実施の形態と同様に、バッキング材9を充填しても構わない。また、凹部57hに充填材58やバッキング材9を充填するのは、図25に示すように後述するエレメント単位に分割する際、各柱状部57cの割れを防止するためである。
【0131】
次いで、図25に示すように、付加部材57、圧電素子51、第1の音響整合層54に対して、高さ方向Zに貫通するように、奥行き方向Yに設定間隔を有するとともに奥行き方向において互いに平行な複数本の溝63を、複数の凹部57hに直交するよう再度、ダイシングソーブレード60を用いて幅方向Xに沿って一方側から他方側に形成する溝形成工程を行う。尚、溝63は、第2の音響整合層55には形成しない。その結果、付加部材7において、幅方向X及び奥行き方向Yに、複数の柱状部57c、圧電素子51、第1の音響整合層54がアレイ状に形成される。
【0132】
その後、図26に示すように、複数の溝63を起点として、振動子ユニット250を、奥行き方向Y及び幅方向Xの中央を、高さ方向Zの下方に押圧して、奥行き方向Yに沿って円弧状に、所定の角度曲げる曲げ工程を行う。尚、所定の角度曲げられることにより、コンベックス型の超音波振動子となる。
【0133】
尚、曲げ工程は、複数の溝63を起点として、振動子ユニット250を、一端57y1と他端57y2が当接するよう、奥行き方向Yにおいて周状に曲げる工程であっても構わない。尚、周状に曲げられることにより、ラジアル型の超音波振動子となる。
【0134】
その後、図10に示すようによう、複数の柱状部57cの幅方向Xに沿った行単位(エレメント)において、下部電極53に電気的に接続された各下部電極接続部11(図10参照)に、第1の配線をそれぞれ電気的に接続する。
【0135】
具体的には、図25においては、10個、複数の柱状部57cのエレメントが形成されていることから、エレメント毎に、10個の下部電極接続部11に、10本の第1の配線がそれぞれ個別に接続される。
【0136】
また、GND電極となる上部電極52に対しては、各エレメントに設けられた上部電極引き出し部30(図10参照)は、エレメント単位で上部電極52に第2の配線14を接続する必要は無く、全エレメントを、一括配線により、上部電極52に電気的に接続すれば良い。
【0137】
この具体的な方法としては、各エレメントの圧電素子51の上部電極52に、予め半田等により共通端子を電気的に接続しておく手法や、導電性接着剤を用いて、各エレメントの圧電素子51の上部電極52を、奥行き方向Yに沿って電気的に接続する手法等が挙げられる。
【0138】
最後に、配線後、ハウジング10内に、バッキング材9を介して図26に示す曲げられた圧電素子51に、振動子ユニット250を載置し、その後、第2の音響整合層55上に音響レンズ6を形成することにより、超音波振動子200は形成される。
【0139】
このような構成によれば、複数の柱状部57c、圧電素子51、第1の音響整合層54がアレイ状に設けられた超音波振動子200であっても、付加部材57は、上述した付加部材7と同様に機能することから、上述した第4実施の形態の超音波振動子100と同様の効果を得ることができる。
【0140】
また、本実施の形態においては、複数の凹部57hを、幅方向Xに平行に形成していることにより、上述した各エレメント単位において、振動特性のバラツキを抑えることができることから、より性能の良い均質な超音波振動子200を形成することができる。尚、その他の効果は、上述した第4実施の形態と同様である。
【0141】
(第9実施の形態)
図27は、図24の付加部材、圧電素子、第1の音響整合層に対して、複数の凹部に90°以外の角度を有して交差する複数の溝を幅方向に形成した状態を示す斜視図、図28は、図27の付加部材を、図27中のIIXVIII方向からみた上面図、図29は、図28の1つの柱状部を拡大して示す斜視図である。
【0142】
この第9実施の形態の製造方法は、上述した図22〜図26に示した第8実施の形態の超音波振動子の製造方法と比して、付加部材、圧電素子、第1の音響整合層に対して、複数の凹部に90°以外の角度を有して交差する複数の溝を幅方向に形成する点が異なる。その結果、形成される各柱状部の形状が異なる。
【0143】
よって、この相違点のみを説明し、第8実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0144】
本実施の形態においては、図27に示すように、図24に示す付加部材57、圧電素子51、第1の音響整合層54に対して、高さ方向Zに貫通するように、奥行き方向Yに設定間隔を有する複数本の溝63’を、図28に示すように、複数の凹部57hに対して90°以外の角度θを有して交差するよう、ダイシングソーブレード60を用いて幅方向Xに沿って形成する。
【0145】
具体的には、複数本の溝63’は、図28に示すように、Xa方向に向かうに従い、Yb方向に傾く、それぞれ奥行き方向Yに平行な溝63’aと、Xa方向に向かうに従い、Ya方向に傾く、それぞれ奥行き方向Yに平行な溝63’bとから構成されており、奥行き方向Yに沿って、溝63a’、溝63b’、溝63a’、溝63b’・・・と交互に形成する。尚、複数の凹部57hに対する溝63a’、63b’の交差角度θは同じである。尚、本実施の形態においても、溝63’は、第2の音響整合層55には形成しない。
【0146】
その結果、付加部材7において、幅方向X及び奥行き方向Yに、複数の柱状部57c’がアレイ状に形成される。
【0147】
よって、図29に示すように、1つの柱状部57c’は、奥行き方向Yの幅が、幅方向Xにおいて異なる形状に形成されている(Y1<Y2<Y3)。尚、各柱状部57c’は、図29に示す構成を有するとともに、柱状部57c’毎に、幅方向X、奥行き方向Yの大きさが異なっている。
【0148】
このような構成によれば、上述した第2実施の形態と同様に、各柱状部57c’に対して、幅方向X及び奥行き方向Yに倒れる方向Mの振動が発生し難くなり、高さ方向Zに振動しやすくなることから、超音波振動子200における振動子感度が向上する。
【0149】
また、柱状部57c’毎に、幅方向X、奥行き方向Yの大きさが異なることから、倒れ方向Mの振動が、柱状部57c’毎に異なることから、複数の柱状部57c’全体でみた場合、方向Mへの共振周波数がブロードとなるため、方向Mへ振動し難くなることから、高さ方向Zに振動しやすくなるため、超音波振動子200における振動子感度が向上する。尚、その他の効果は、上述した第8実施の形態と同様である。
【0150】
尚、上述したような、第1〜第7実施の形態における超音波振動子100、第8、第9実施の形態における超音波振動子200は、例えば超音波内視鏡に設けられる。以下、ラジアル型の超音波振動子200が設けられた超音波内視鏡の構成を図30〜図33を用いて説明する。
【0151】
図30は、超音波内視鏡の外観を示す図、図31は、図30の超音波内視鏡の挿入部の先端部に設けられた超音波振動部を拡大して示す斜視図、図32は、図31中のIIIXII-IIIXII線に沿った超音波振動部の断面図、図33は、図31中のIIIXIII-IIIXIII線に沿う超音波振動部の断面図である。
【0152】
超音波内視鏡80は、被検体内に挿入される細長な挿入部82と、この挿入部82の挿入方向Sの基端に設けられた操作部83と、操作部83から延出された可撓性を有するユニバーサルコード84と、該ユニバーサルコード84の延出端に設けられたコネクタ85とにより主要部が構成されている。
【0153】
コネクタ85に、光源コネクタ85aと、電気コネクタ85bと、超音波コネクタ85cと、吸引口金85dと、送気送水口金85eとが設けられている。
【0154】
光源コネクタ85aに、照明光を供給する光源装置が着脱自在になっているとともに、電気コネクタ85bに、信号ケーブルを介して各種の信号処理等を行うビデオプロセッサが着脱自在となっている。
【0155】
また、超音波コネクタ85cに、超音波観測装置に接続される超音波ケーブル87を介して超音波観測装置が着脱自在となっているともに、吸引口金85dに、吸引チューブを介して吸引ポンプが着脱自在であり、さらに、送気送水口金85eに、送気・送水チューブを介して送水タンクが着脱自在となっている。
【0156】
挿入部82は、挿入方向Sの先端側から順に、先端部82aと、例えば上下方向及び左右方向に湾曲自在に構成された湾曲部82bと、長尺でかつ可撓性を有する可撓管部82cとが連設されて構成されている。
【0157】
また、図示しないが、先端部82aの外周側面における設定位置に、照明用レンズや、観察用レンズ、チャンネル開口等が設けられている。さらに、先端部82a内には、観察用レンズによって観察された像を撮像する撮像ユニットが設けられている。
【0158】
先端部82aの照明用レンズ、観察用レンズ、チャンネル開口よりも、挿入方向Sの先端側の位置に、超音波振動部86が設けられている。
【0159】
超音波振動部86は、図30、図31に示すように、例えば円筒状のポリエチレンから構成された先端が閉塞されたキャップ86c内に、上述した超音波振動子200を具備している。
【0160】
超音波振動子200は、図32に示すように、付加部材57の奥行き方向Yの一端57y1と他端57y2とが当接するよう円筒状に巻回されたラジアルタイプの超音波振動子となっている。
【0161】
尚、上述した第9実施の超音波振動子200においては、一端57y1と他端57y2とは、幅方向Xに沿って、複数の凹部57hと所定の角度を有して交差するよう斜めになっているが、このような構成であっても、幅方向Xに沿う一端57y1と他端57y2とは奥行き方向Yに平行に位置しているため、巻回したとしても、一端57y1と他端57y2との当接面を、きれいに合わせることができ、円筒状に形成することができる。
【0162】
また、付加部材57の挿入方向Sにおける各端面57sa、57sbに、リング状の支持部材88が接着固定されている。支持部材88は、音響レンズ56に付与される外力に対して超音波振動子200の強度を保つ機能を有している。尚、各端面57sa、57sbが用いられて支持部材88に対する付加部材57の位置決めが行われることにより、容易に超音波振動子200を組み立てることができる。
【0163】
さらに、支持部材88の径方向Kの内周面側には、挿入方向Sにおける断面がT字状の支持部材89が挿通されており、支持部材89内に、図30に示すように、コネクタ85の超音波コネクタ85cから、ユニバーサルコード84、操作部83、挿入部82内を先端部82aまで挿通された信号ケーブル90が嵌入されている。
【0164】
また、超音波振動子200において、上部電極52の上部電極引き出し部30は、第2の配線14を介して支持部材89に接続され、支持部材89を介してケーブル90のGND配線と接続されている。下部電極53の下部電極接続部11に一端が接続された第1の配線13の他端は、支持部材89に電気的に接続されており、支持部材89と信号ケーブル90とが配線99によって電気的に接続されていることにより、下部電極53は、信号ケーブル90に電気的に接続されている。
【0165】
以上説明したように、超音波振動子200は、キャップ86c内に固定される。尚、キャップ86c内に設けられる超音波振動子は、第1〜第7実施の形態に示した超音波振動子100であっても良いことは勿論の他、ラジアル型の超音波振動子に限らず、コンベックス型の超音波振動子であっても構わないことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0166】
1…圧電素子
1j…上面
1s…側面
1sa…側面
1sb…側面
1t…底面
2…上部電極
3…下部電極
4…第1の音響整合層
5…第2の音響整合層
6…音響レンズ
7…付加部材
7c…柱状部
7ct…端部
7e1…延在部位
7e2…延在部位
7h…凹部
7hm…底面
7j…上面
7p…凹部
7r…連結部
7sa…側面
7sb…側面
7t…底面
8…充填材
9…バッキング材
10…ハウジング
11…下部電極接続部
12…上部電極接続部
13…第1の配線
14…第2の配線
16…接着剤
17…ダイシングソーブレード
17r…R面
19…接着剤
21…圧電材料
21j…上面
21t…底面
22…上部電極
23…下部電極
24…圧電材料
24t…底面
25…圧電素子ユニット
25c…柱状部
25h…凹部
25j…上面
25r…連結部
25t…底面
26…第1の側面電極
27…第2の側面電極
30…上部電極引き出し部
34…電源
35…導電性接着剤
36…導電性接着剤
42…電極
43…電極
44…下部電極引き出し部
45…上部電極引き出し部
51…圧電素子
51j…上面
51t…底面
52…上部電極
53…下部電極
54…第1の音響整合層
55…第2の音響整合層
56…音響レンズ
57…付加部材
57c…柱状部
57h…凹部
57hm…底面
57sa…各端面
57t…底面
57y1…一端
57y2…他端
58…充填材
60…ダイシングソーブレード
63…溝
63’…溝
63a’ …溝
63b’…溝
80…超音波内視鏡
82…挿入部
82a…先端部
82b…湾曲部
82c…可撓管部
83…操作部
84…ユニバーサルコード
85…コネクタ
85a…光源コネクタ
85b…電気コネクタ
85c…超音波コネクタ
85d…吸引口金
85e…送気送水口金
86…超音波振動部
86c…キャップ
87…超音波ケーブル
88…支持部材
89…支持部材
90…信号ケーブル
91…ハウジング
99…配線
100…超音波振動子
130…音響整合層ユニット
150…振動子ユニット
150’…振動子ユニット
200…超音波振動子
230…音響整合層ユニット
250…振動子ユニット
D…点線
H…領域
K…径方向
M…倒れ方向
S…挿入方向
X…幅方向
Y…奥行き方向
Z…高さ方向
ZU…超音波放射方向
θ…交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
少なくとも前記圧電素子の上面に配置された上部電極と、
前記上部電極の上面に配置された音響整合層と、
少なくとも前記圧電素子の底面に配置された下部電極と、
前記上面と前記底面とを結ぶ高さ方向における前記圧電素子の下方において、少なくとも一部が前記下部電極に接触するよう配置された、前記圧電素子の音響インピーダンス以下であって、前記音響整合層の音響インピーダンス以上の音響インピーダンスを有する複数の柱状部を具備する付加部材と、
前記複数の柱状部間に充填された、前記柱状部よりも軟性な充填材と、
前記高さ方向における前記圧電素子の下方において、前記付加部材を下方から覆うよう配置されたバッキング材と、
を具備していることを特徴とする超音波振動子。
【請求項2】
前記付加部材の音響インピーダンスは、前記圧電素子の音響インピーダンスと同じであることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項3】
前記付加部材は、前記圧電素子の基材となる圧電材料と同じ圧電材料から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項4】
前記付加部材は、分極処理が施されていないことにより、非圧電性を有することを特徴とする請求項3に記載の超音波振動子。
【請求項5】
前記付加部材は、前記複数の柱状部において、前記下部電極側の前記高さ方向の各端部が前記高さ方向に直交する幅方向において連結されていることにより、前記高さ方向の断面形状が櫛状を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項6】
前記付加部材において、前記各柱状部の前記各端部を前記幅方向において連結する各部位の前記充填材に接する面は、各柱状部間を、曲率を有して連結する形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の超音波振動子。
【請求項7】
前記付加部材の前記高さ方向に直交する幅方向の幅は、前記圧電素子の前記幅方向の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項8】
前記付加部材は、前記複数の柱状部と、前記複数の柱状部よりも前記幅方向における一方側及び他方側に位置する延在部位とを具備し、
前記延在部位における前記一方側の前記バッキング材に接する面に、第1の配線が電気的に接続される前記下部電極が引き出された下部電極引き出し部が設けられており、
前記延在部位における前記他方側の前記バッキング材に接する面に、第2の配線が電気的に接続される前記上部電極が引き出された上部電極引き出し部が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の超音波振動子。
【請求項9】
前記付加部材は、前記圧電素子の下方において、前記高さ方向に直交する幅方向の中央に位置しているとともに、前記下部電極における前記付加部材が非配置の領域に、第1の配線が電気的に接続される下部電極接続部が設けられており、
前記圧電素子の前記底面において、前記下部電極が非配置の領域に、第2の配線が電気的に接続される前記上部電極が引き出された上部電極引き出し部が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項10】
前記上部電極及び前記下部電極に対して、前記上部電極と前記下部電極とが対向する領域のみに分極処理が施されていることを特徴とする請求項9に記載の超音波振動子。
【請求項11】
前記付加部材において、前記各柱状部の前記各端部を前記幅方向において連結する各部位の前記充填材に接する面は、前記幅方向において、一方側及び他方側に位置する面よりも中央に位置する面のほうが、前記圧電素子側に凹んで位置していることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項12】
前記複数の柱状部において、前記高さ方向に直交する幅方向の中央に位置する前記柱状部の前記幅方向の幅は、前記幅方向の一方側及び他方側に位置する前記柱状部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項13】
前記各柱状部は、前記高さ方向と前記高さ方向に直交する幅方向との両方向に直交する奥行き方向の奥行きが、前記幅方向において異なる形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項14】
前記上部電極の前記高さ方向の上方に、少なくとも一部が前記上部電極に接触する音響整合層が配置されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項15】
分極処理された第1の圧電材料と、
前記第1の圧電材料の上面に配置された上部電極と、
前記第1の圧電材料の底面に配置された下部電極と、
前記上面と前記底面とを結ぶ高さ方向における前記第1の圧電材料の下方において、少なくとも一部が前記下部電極に接触する、前記第1の圧電材料と同じ音響インピーダンスを有する第2の圧電材料と、
前記第1の圧電材料及び前記第2の圧電材料の前記高さ方向に直交する幅方向の一方側の側面に設けられた、前記下部電極に電気的に接続されるとともに、第1の配線が電気的に接続される第1の側面電極と、
前記第1の圧電材料及び前記第2の圧電材料の前記幅方向の他方側の側面に設けられた、前記上部電極に電気的に接続されるとともに、第2の配線が電気的に接続される第2の側面電極と、
前記第2の圧電材料の底面に複数形成された凹部と、
前記凹部に充填された、前記柱状部よりも軟性な充填材と、
前記高さ方向における前記圧電素子の下方において、前記第1の圧電材料及び前記第2の圧電材料を下方から覆うよう配置されたバッキング材と、
を具備していることを特徴とする超音波振動子。
【請求項16】
圧電素子の少なくとも上面に上部電極を形成するとともに、少なくとも底面に下部電極を形成する電極形成工程と、
前記下部電極に、接着剤を介して前記圧電素子と同じ音響インピーダンスを有する付加部材を接着する接着工程と、
前記付加部材の前記下部電極に接着された面とは反対側の面に複数の凹部を形成することにより、複数の柱状部を形成する柱状部形成工程と、
を具備することを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【請求項17】
前記電極形成後、前記接着工程の前に、前記上部電極に音響整合層を接着する工程をさらに具備していることを特徴とする請求項16に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項18】
前記柱状部形成工程は、前記付加部材に対して、前記複数の凹部を、設定間隔を有して前記高さ方向及び前記高さ方向に直交する前記幅方向の両方向に直交する奥行き方向に、前記奥行き方向の一端から他端まで形成する工程であり、
前記柱状部形成工程後、前記凹部に前記奥行き方向に沿って、前記柱状部よりも軟性な充填材を充填する充填材充填工程と、
少なくとも前記付加部材、前記圧電素子に対して前記高さ方向に貫通するよう、前記奥行き方向に設定間隔を有して複数本溝を形成する溝形成工程と、
前記溝を起点として、前記付加部材、前記圧電素子、前記音響整合層を、前記奥行き方向及び前記幅方向の中央を前記高さ方向の下方に押圧して、前記奥行き方向に沿って曲げる曲げ工程と、
を具備することを特徴とする請求項17に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項19】
前記溝形成工程は、前記凹部に対して直交するよう溝を形成する工程であることを特徴とする請求項18に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項20】
前記溝形成工程は、前記凹部に対して、90°以外の角度を有して交差するよう溝を形成する工程であることを特徴とする請求項18に記載の超音波振動子の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の前記超音波振動子を具備していることを特徴とする超音波内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−235925(P2012−235925A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107422(P2011−107422)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】