説明

超音波探傷装置、超音波トランスデューサ、及び超音波探傷方法

【課題】積層部品Wの層数が増えて、積層部品Wの湾曲部Wcの肉厚が厚くなっても、積層部品Wの湾曲部Wcにおける内部欠陥の状態の検査精度を向上させることを可能にする。
【解決手段】トランスデューサ本体7は、先端側に、積層部品Wの湾曲部Wcにおける大径側の曲面に沿った側面視湾曲形状の振動面9を有し、トランスデューサ本体7の振動面9に複数の圧電振動子11が湾曲方向AD及び幅方向BDにマトリックス状に配設され、制御ユニット5は、各振動子群11Gにおいて、予め設定された送受信パターンに基づいて送信用の圧電振動子11及び受信用の圧電振動子11を幅方向BDに沿って切り替えつつ、受信用の圧電振動子11から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料からなる積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査する超音波探傷装置、及び超音波探傷装置の主要な構成要素である超音波トランスデューサ等に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料(FRP)等の複合材料からなる積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査する際には、通常、超音波を送受信する超音波トランスデューサが用いられており、この超音波トランスデューサの構成等は、次のようになる。
【0003】
即ち、超音波トランスデューサは、トランスデューサ本体を備えており、このトランスデューサ本体は、先端側に、積層部品の湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対応する側面視湾曲形状の振動面を有している。また、トランスデューサ本体の振動面には、複数の振動子がトランスデューサ本体の振動面の湾曲方向に沿って配設されおり、各振動子は、積層部品の湾曲部側に向かって超音波を送信たり又は積層部品の湾曲部側からの反射波を受信するものであって、制御ユニットに接続されている。
【0004】
従って、積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査する際には、まず、超音波トランスデューサを積層部品に対して相対的に移動させることにより、トランスデューサ本体の振動面を積層部品の湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対向させる。そして、複数の振動子から送信された超音波を積層部品の湾曲部側に入射させて、複数の振動子によって積層部品の湾曲部側から反射波を受信する。これにより、制御ユニットによって複数の振動子から受信信号(超音波トランスデューサからの探傷信号)に基づいて積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態の検査処理を行うことができ、換言すれば、積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査することができる。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−90829号公報
【特許文献2】特開平6−18488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、積層部品の層数が増えて、積層部品の湾曲部の肉厚が厚くなると、反射波の超音波強度が低くなり、超音波トランスデューサによって積層部品の湾曲部における内部欠陥による反射波を十分に検出できなくなる。一方、振動子に受信される反射波の検出感度を高めると、ノイズエコーが増大して、超音波トランスデューサから探傷信号(振動子からの受信信号)のSN比(欠陥エコーの強度とノイズエコー強度の比)が低くなる。
【0008】
つまり、積層部品の層数が増えて、積層部品の湾曲部の肉厚が厚くなると、積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態の検査精度を向上させることは困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の超音波探傷装置及び超音波トランスデューサ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、複合材料からなる積層部品の湾曲部(曲がり部)における内部欠陥の状態を検査する超音波探傷装置であって、超音波を送受信する超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサからの探傷信号(受信信号)に基づいて前記積層部品の前記湾曲部の前記内部欠陥の状態の検査処理を行う制御ユニットと、を具備し、前記超音波トランスデューサは、先端側に前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対応する側面視湾曲形状の振動面を有したトランスデューサ本体と、前記トランスデューサ本体の前記振動面に前記トランスデューサ本体の前記振動面の湾曲方向(曲がり方向)及び前記トランスデューサ本体の幅方向(換言すれば、前記接触本体の側面に直交する方向)にマトリックス状に配設され、前記積層部品の前記湾曲部側に向かって超音波を送信したり又は前記積層部品の前記湾曲部側から反射波を受信したりする複数の振動子と、を備え、前記制御ユニットは、前記幅方向に並んだ複数の前記振動子によって構成される各振動子群において、予め設定された送受信パターンに基づいて送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理(受信信号の重ね合わせ処理)を順次行うことを要旨とする。
【0011】
ここで、本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、「内部欠陥の状態」とは、内部欠陥の有無、内部欠陥の大きさ、内部欠陥の位置等を含む意であって、「曲面に対応する側面視湾曲形状」とは、曲面に沿った側面視湾曲形状、曲面を反転させた面に沿った形状を含む意である。また、「送信用の前記振動子」とは、超音波を送信するように決定(選択)された前記振動子のことをいい、「受信用の前記振動子」とは、反射波を受信するように決定された前記振動子のことをいう。
【0012】
第1の特徴によると、前記超音波トランスデューサを前記積層部品に対して相対的に移動させることにより、前記トランスデューサ本体の前記振動面を前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対向させる。次に、前記制御ユニットによっていずれかの前記振動子群における送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記送受信パターンに基づいて前記幅方向に沿って切り替えつつ、送信用の前記振動子から送信された超音波を前記積層部品の前記湾曲部に入射させて、受信用の前記振動子によって前記積層部品の前記湾曲部側から反射波を受信する。そして、前記制御ユニットによっていずれかの前記振動子群における受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を行う。同様に、その他全ての前記振動子群においても、前記制御ユニットによって送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行う。これにより、前記制御ユニットによって前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥の状態の検査処理を行うことができ、換言すれば、前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥の状態を検査することができる。
【0013】
要するに、前記超音波トランスデューサにあっては、前記トランスデューサ本体の前記振動面に複数の前記振動子が前記湾曲方向及び前記幅方向にマトリックス状に配設されているため、前記制御ユニットによって各振動子群における送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記送受信パターンに基づいて前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行うことができる。これにより、前記積層部品の層数が増えて、前記積層部品の湾曲部の肉厚が厚くなっても、受信用の前記振動子に受信される反射波の検出感度を高く設定することなく、前記超音波トランスデューサによって前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥による反射波を十分かつ確実に検出することができる。
【0014】
本発明の第2の特徴は、複合材料からなる積層部品の湾曲部(曲がり部)における内部欠陥の状態を検査する際に用いられ、超音波を送受信する超音波トランスデューサであって、先端側に前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対応する側面視湾曲形状の振動面を有したトランスデューサ本体と、前記トランスデューサ本体の前記振動面に前記トランスデューサ本体の前記振動面の湾曲方向及び前記トランスデューサ本体の幅方向(換言すれば、前記接触子本体の側面に直交する方向)にマトリックス状に配設され、前記積層部品の前記湾曲部側に向かって超音波を送信したり又は前記積層部品の前記湾曲部側からの反射波を受信したりする複数の振動子と、を備えたことを要旨とする。
【0015】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【0016】
本発明の第3の特徴は、第2の特徴からなる超音波トランスデューサを用い、複合材料からなる積層部品の湾曲部(曲がり部)における内部欠陥の状態を検査する超音波探傷方法であって、前記超音波トランスデューサを前記積層部品に対して相対的に移動させることにより、前記トランスデューサ本体の前記振動面を前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対向させて、前記積層部品の前記湾曲部と前記超音波トランスデューサの間に音響媒体を介在させた状態の下で、前記幅方向に並んだ複数の前記振動子によって構成されるいずれかの前記振動子群において、予め設定された送受信パターンに基づいて送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、送信用の前記振動子から送信された超音波を前記積層部品の前記湾曲部に入射させて、受信用の前記振動子によって前記積層部品の前記湾曲部側から反射波を受信して、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を行い、その他全ての前記振動子群においても、送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行うことにより、前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥の状態を検査することを要旨とする。
【0017】
第3の特徴によると、前記超音波トランスデューサにあっては、前記トランスデューサ本体の前記振動面に複数の前記振動子が前記湾曲方向及び前記幅方向にマトリックス状に配設されているため、前述のように、前記制御ユニットによって各振動子群における送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記送受信パターンに基づいて前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を行うことができる。これにより、前記積層部品の層数が増えて、前記積層部品の湾曲部の肉厚が厚くなっても、受信用の前記振動子に受信される反射波の検出感度を高く設定することなく、前記超音波トランスデューサによって前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥による反射波を十分かつ確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記積層部品の層数が増えて、前記積層部品の湾曲部の肉厚が厚くても、前記超音波トランスデューサによって前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥による反射波を十分かつ確実に検出できるため、ノイズエコーを低減して、前記超音波トランスデューサからの探傷信号(受信用の前記振動子からの受信信号)のSN比を高めて、前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥の状態の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波探傷装置の制御ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの拡大側面図である。
【図3】図3(a)は、図4 (b)におけるIIIB-IIIB線に沿った図、図3(b)は、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサにおけるトランスデューサ本体の振動面を平面に展開した図である。
【図4】図4(a)は、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの正面図、図4(b)は、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの側面図である。
【図5】第1送受信パターンに基づく送信用の圧電振動子及び受信用の圧電振動子の切り替えについて説明する図である。
【図6】第2送受信パターンに基づく送信用の圧電振動子及び受信用の圧電振動子の切り替えについて説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る超音波探傷装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図1から図7を参照して説明する。
【0021】
図7に示すように、本発明の実施形態に係る超音波探傷装置1は、複合材料からなる積層部品Wの湾曲部(曲がり部)Wcにおける内部欠陥の状態を検査する装置であって、超音波S(図2参照)を音響媒体Mを通して送受信する超音波トランスデューサ3と、この超音波トランスデューサ3からの探傷信号に基づいて積層部品Wの湾曲部Wcの内部欠陥の状態の検査処理を行う制御ユニット5とを具備している。ここで、本発明の実施形態にあっては、積層部品Wは、繊維強化複合材料(FRP)により構成された航空機部品としてのケーシングことであって、積層部品Wの湾曲部Wcは、ケーシングのフランジの付け根部のことであって、音響媒体Mは、水等の液体又は固体である。
【0022】
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサ3の具体的な構成は、次のようになる。
【0023】
即ち、図1から図4に示すように、超音波トランスデューサ3は、トランスデューサ本体7を備えており、このトランスデューサ本体7は、先端側に、積層部品Wの湾曲部Wcにおける大径側の曲面に沿った側面視湾曲形状の振動面9を有している。なお、トランスデューサ本体7が積層部品Wの湾曲部Wcにおける大径側の曲面に沿った側面視湾曲形状の振動面9を有する代わりに、積層部品Wの湾曲部Wcにおける小径側の曲面に対応する形状であっても構わない。
【0024】
トランスデューサ本体7の振動面9には、複数(本発明の実施形態にあっては、8×8個)の圧電振動子11がトランスデューサ本体7の振動面9の湾曲方向AD及びトランスデューサ本体7の幅方向(換言すれば、トランスデューサ本体7の側面に直交する方向)BDにマトリックス状に配設されており、各圧電振動子11は、積層部品Wの湾曲部Wc側に向かって超音波Sを送信したり又は積層部品Wの湾曲部Wc側から反射波Sを受信したりするものである。また、各圧電振動子11は、コンポジット材又はセラミックス材により構成されてあって、制御ユニット5に接続されている。ここで、本発明の実施形態にあっては、幅方向BDに並んだ8個の圧電振動子11によって1つの圧電振動子群11Gが構成されており、圧電振動子群11Gの群数は8つである。
【0025】
なお、トランスデューサ本体7の内部には、複数の圧電振動子11の余分な振動を吸収するダンパー(図示省略)が設けられている。
【0026】
本発明の実施形態に係る制御ユニット5の具体的な構成は、次のようになる。
【0027】
即ち、図1に示すように、制御ユニット5は、圧電振動子11に駆動信号(送信信号)を供給する信号発生部13、及び圧電振動子11からの受信信号(超音波トランスデューサ3からの探傷信号)を増幅するレシーバー15を備えている。そして、信号発生部13及び前述の複数の圧電振動子11は、スイッチング回路17に接続されており、このスイッチング回路17は、選択した圧電振動子11と信号発生部13を接続状態と遮断状態に切り替え可能である。また、レシーバー15及び前述の複数の圧電振動子11は、信号検出回路19に接続されており、この信号検出回路19は、選択した圧電振動子11とレシーバー115を接続状態と遮断状態に切り替え可能である。
【0028】
具体的には、図5に示すように、スイッチング回路17は、予め設定された第1送受信パターンに基づいて各圧電振動子群11Gにおける送信用の圧電振動子11を幅方向BDに沿って8段階に分けて切り替えるようになっている。同様に、信号検出回路19は、第1送受信パターンに基づいて各圧電振動子群11Gにおける受信用の圧電振動子11を幅方向BDに沿って8段階に分けて切り替えることができるようになっている。また、第1送受信パターンに基づく代わりに、図6に示すように、予め設定された第2送受信パターンに基づいて各圧電振動子群11Gにおける送受信用の圧電振動子11(送信用の圧電振動子11及び受信用の圧電振動子11)を幅方向BDに沿って8段階に分けて切り替えるようにしても構わない。なお、第2送受信パターンに基づく場合において、送信用の圧電振動子11は、トランスデューサ本体7の振動面9における幅方向BDの中間領域内に位置してあって、受信用の圧電振動子11は、送信用の圧電振動子11を幅方向BDの両側から挟むようになっている。
【0029】
レシーバー15には、信号処理部21が接続されており、この信号処理部21は、各圧電振動子群11Gにおいて、受信用の圧電振動子11から受信信号(受信用の圧電振動子11からの受信信号を増幅した増幅信号)に基づいて開口合成法による処理(受信信号の重ね合わせ処理)を順次行うものである。また、開口合成法による処理にあっては、超音波トランスデューサ3と積層部品Wの湾曲部Wcとの位置関係、超音波トランスデューサ3の探傷周波数、積層部品W及び音響媒体Mにおける音速等が用いられる。更に、信号処理部21には、信号処理部21による処理結果(開口合成像等)とトランスデューサ3の位置情報を結合して表示する表示部(図示省略)が接続されている。
【0030】
続いて、本発明の実施形態に係る超音波探傷方法について作用を含めて説明する。
【0031】
超音波トランスデューサ3を積層部品Wに対して相対的に移動させることにより、トランスデューサ本体7の振動面9を積層部品Wの湾曲部Wcにおける大径側の曲面に対向させる。次に、積層部品Wの湾曲部Wcと超音波トランスデューサ3の間に音響媒体Mを介在させた状態の下で、スイッチング回路17及び信号検出回路19によっていずれかの圧電振動子群11Gにおける送受信用の圧電振動子11を第1送受信パターン又は第2送受信パターンに基づいて幅方向BDに沿って8段階又は4段階に切り替えつつ(図5及び図6参照)、送信用の圧電振動子11から送信された超音波Sを積層部品Wの湾曲部Wcに入射させて、受信用の圧電振動子11によって積層部品Wの湾曲部Wc側から反射波Sを受信する(図2参照)。そして、信号処理部21によっていずれかの圧電振動子群11Gにおける受信用の圧電振動子11から受信信号に基づいて開口合成法による処理を行う。同様に、その他全ての圧電振動子群11Gにおいても、スイッチング回路17及び信号検出回路19によって送受信用の圧電振動子11を第1送受信パターン又は第2送受信パターンに基づいて幅方向BDに沿って8段階又は4段階に切り替えつつ、信号処理部21によって受信用の圧電振動子11から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行う。これにより、積層部品Wの湾曲部Wcにおける円周方向の一部の領域について、制御ユニット5によって内部欠陥の状態(内部欠陥の有無、内部欠陥の大きさ、内部欠陥の位置等)の検査処理(探傷処理)を行うことができ、換言すれば、内部欠陥の状態を検査(探傷)することができる。
【0032】
積層部品Wの湾曲部Wcにおける円周方向の一部の検査領域について、内部欠陥の状態を検査した後に、超音波トランスデューサ3を積層部品Wに対して相対的に円周方向へ移動させつつ、前述のような処理を継続することにより、積層部品Wの湾曲部Wcにおける円周方向の全領域について、内部欠陥の状態を検査することができる。
【0033】
要するに、トランスデューサ本体7の振動面9に複数の圧電振動子11が湾曲方向AD及び幅方向BDにマトリックス状に配設されているため、スイッチング回路17及び信号検出回路19によって各圧電振動子群11Gにおける送受信用の圧電振動子11を幅方向BDに沿って切り替えつつ、信号処理部21によって各圧電振動子群11Gにおける受信用の圧電振動子11から受信信号に基づいて開口合成法による処理を行うことができる。これにより、積層部品Wの層数が増えて、積層部品Wの湾曲部Wcの肉厚が厚くなっても、受信用の圧電振動子11に受信される反射波Sの検出感度を高く設定することなく、超音波トランスデューサ3によって積層部品Wの湾曲部Wcにおける内部欠陥による反射波Sを十分かつ確実に検出することができる。
【0034】
従って、本発明の実施形態によれば、積層部品Wの層数が増えて、積層部品Wの湾曲部Wcの肉厚が厚くなっても、ノイズエコーを低減して、超音波トランスデューサ3からの探傷信号(受信用の圧電振動子11からの受信信号)のSN比を高めて、積層部品Wの湾曲部Wcにおける内部欠陥の状態の検査精度(探傷精度)を向上させることができる。
【0035】
特に、図6に示すように、第2送受信パターンに基づく場合には、超音波トランスデューサ3による検査範囲(探傷範囲)を限定して、反射波Sの受信に適した受信用の圧電振動子11からの受信信号に基づいて開口合成法による処理を行うことができ、積層部品Wの湾曲部Wcにおける内部欠陥の状態の検査精度をより向上させることができる。
【0036】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0037】
AD 湾曲方向
BD 幅方向
M 音響媒体
S 超音波(反射波)
W 積層部品
Wc 湾曲部
1 超音波探傷装置
3 超音波トランスデューサ
5 制御ユニット
7 トランスデューサ本体
9 振動面
11 圧電振動子
11G 圧電振動子群
13 信号発生部
15 レシーバー
17 スイッチング回路
19 信号検出回路
21 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料からなる積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査する超音波探傷装置であって、
超音波を送受信する超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサからの探傷信号に基づいて前記積層部品の前記湾曲部の前記内部欠陥の状態の検査処理を行う制御ユニットと、を具備し、
前記超音波トランスデューサは、
先端側に前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対応する側面視湾曲形状の振動面を有したトランスデューサ本体と、
前記トランスデューサ本体の前記振動面に前記トランスデューサ本体の前記振動面の湾曲方向及び前記トランスデューサ本体の幅方向にマトリックス状に配設され、前記積層部品の前記湾曲部側に向かって超音波を送信したり又は前記積層部品の前記湾曲部側から反射波を受信したりする複数の振動子と、を備え、
前記制御ユニットは、
前記幅方向に並んだ複数の前記振動子によって構成される各振動子群において、予め設定された送受信パターンに基づいて送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行うことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
送信用の前記振動子は、前記トランスデューサ本体の前記振動面における前記幅方向の中間領域内に位置してあって、受信用の前記振動子は、送信用の前記振動子を前記幅方向の両側から挟むようになっていることを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
複合材料からなる積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査する際に用いられ、超音波を送受信する超音波トランスデューサであって、
先端側に前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対応する側面視湾曲形状の振動面を有したトランスデューサ本体と、
前記トランスデューサ本体の前記振動面に前記トランスデューサ本体の前記振動面の湾曲方向及び前記トランスデューサ本体の幅方向にマトリックス状に配設され、前記積層部品の前記湾曲部側に向かって超音波を送信したり又は前記積層部品の前記湾曲部側からの反射波を受信したりする複数の振動子と、を備えたことを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波トランスデューサを用い、複合材料からなる積層部品の湾曲部における内部欠陥の状態を検査する超音波探傷方法であって、
前記超音波トランスデューサを前記積層部品に対して相対的に移動させることにより、前記トランスデューサ本体の前記振動面を前記積層部品の前記湾曲部における大径側の曲面又は小径側の曲面に対向させて、
前記積層部品の前記湾曲部と前記超音波トランスデューサの間に音響媒体を介在させた状態の下で、前記幅方向に並んだ複数の前記振動子によって構成されるいずれかの前記振動子群において、予め設定された送受信パターンに基づいて送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、送信用の前記振動子から送信された超音波を前記積層部品の前記湾曲部に入射させて、受信用の前記振動子によって前記積層部品の前記湾曲部側から反射波を受信して、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を行い、
その他全ての前記振動子群においても、送信用の前記振動子及び受信用の前記振動子を前記幅方向に沿って切り替えつつ、受信用の前記振動子から受信信号に基づいて開口合成法による処理を順次行うことにより、前記積層部品の前記湾曲部における前記内部欠陥の状態を検査することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項5】
送信用の前記振動子は、前記トランスデューサ本体の前記振動面における前記幅方向の中間領域内に位置してあって、受信用の前記振動子は、送信用の前記振動子を前記幅方向の両側から挟むようになっていることを特徴とする請求項4に記載の超音波探傷方法。
【請求項6】
前記積層部品は、繊維強化複合材料により構成された航空機部品であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の超音波探傷方法。
【請求項7】
前記音響媒体は、液体であることを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の超音波探傷方法。
【請求項8】
前記音響媒体は、固体であることを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれかの請求項に記載の超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−88282(P2012−88282A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237649(P2010−237649)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(505204114)東芝電力検査サービス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】