説明

超音波探傷装置及び超音波探傷方法

【課題】超音波探傷検査の精度を、簡易な構成で高める。
【解決手段】超音波探傷装置1は、水槽2内に配置された載置台3、探触子41と移動手段4とを含んで構成されかつ、被検査物に対する超音波探傷検査を行う探傷手段、載置台3上の被検査物5の位置及び形状を計測する計測器51、及び、水槽2内の水位を上昇及び下降する水位昇降手段、を備える。水槽2は、水位昇降手段が水槽2内の水位を下降させることにより、気中で、被検査物5を載置台3に固定しかつ、被検査物の位置及び形状を計測器51によって計測するための据付・計測モードと、水位昇降手段が水槽2内の水位を上昇させることにより、載置台3上の被検査物5を水に浸漬し、その状態で移動手段によって探触子を移動させることにより被検査物5に対する超音波探傷検査を実行するための検査モードと、に切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、超音波探傷装置及び超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、被検査物としての半導体ICと探触子との双方を水に浸漬すると共に、その半導体ICの表面に沿って探触子を走査することによって、当該半導体ICの超音波探傷検査を行う装置が開示されている。この装置では、トレーの上に半導体ICを吸着保持した上で、そのトレーを下降して水槽内に沈めることにより、半導体ICを水に浸漬するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−212191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波探傷の検査対象として、前記特許文献1に開示されている半導体ICのような小さなものとは異なり、例えば航空機部品のような大型でかつ、三次元形状を有するような被検査物の場合には、探触子を産業用ロボット(例えば多関節ロボット)の先端に取り付けて、そのロボットにより被検査物の表面に沿って探触子を走査することを行う場合がある。一方で、そうした大型かつ複雑形状の被検査物の場合には、被検査物の形状個体差や据付位置誤差等に起因して、被検査物と探触子との相対位置関係が、規定の関係からずれてしまい、そのことが探傷結果に大きく影響を及ぼす場合がある。そこで、そうした被検査物に対する超音波探傷検査を行う場合には、被検査物を台に固定した後に、被検査物の据付位置及びその形状を形状計測器によって計測し、その計測結果に基づいて探触子を移動させること(つまり、ロボットティーチング)が考えられる。その場合に、計測器による形状計測時には、被検査物は水中から出した状態(気中)にされることから、その形状計測後に、例えば被検査物が固定された台を水槽内に沈めて、被検査物を水に浸漬することになる。ところが、台を水槽内に沈めるときに、その昇降機構のガタ等によって被検査物の位置ずれ(ロボットを基準としたときの位置ずれ)が発生する虞があり、超音波探傷検査の前に被検査物の形状計測を行ってティーチングを行ったとしても、被検査物と探傷子との相対位置関係がずれてしまい、正確な超音波探傷検査の結果が得られない虞がある。
【0005】
また、被検査物を載置する台の昇降に問題があるのであれば、水槽を上昇させることによって台上の被検査物を水に浸漬することも考えられるが、この場合は被検査物のサイズによっては水槽が大型化するため、大量の水が入った大型の水槽を昇降する機構が必要となり、装置が大掛かりになって費用及び効率の点で実用的でない。
【0006】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、超音波探傷検査の精度を、簡易な構成で高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示する超音波探傷装置及び探傷方法は、被検査物を載置する載置台や、被検査物が浸漬される水を貯留する水槽を固定して動かさず、水槽内の水位を上昇・下降することによって、被検査物を水に浸漬したり、気中に出したりするようにした。
【0008】
具体的に、超音波探傷装置は、被検査物が浸漬される水を貯留する水槽、前記水槽内に配置されて、前記被検査物が載置固定される載置台、探触子と、前記探触子を前記被検査物に対し相対移動させる移動手段と、を含んで構成されかつ、前記移動手段が前記被検査物の形状に沿うように、前記探触子を移動することによって、当該被検査物に対する超音波探傷検査を行う探傷手段、前記移動手段によって前記被検査物に対して相対移動することにより、前記載置台上の被検査物の位置及び形状を計測する計測器、及び、前記水槽内の水位を上昇及び下降する水位昇降手段、を備える。そして、前記移動手段は、前記計測器が計測した被検査物の位置及び形状に基づいて、前記探触子を移動させることにより、前記被検査物の超音波探傷検査を実行し、前記水槽は、前記水位昇降手段が前記水槽内の水位を下降させることにより、気中で、前記被検査物を前記載置台に固定しかつ、当該載置台に固定された被検査物の位置及び形状を前記計測器によって計測するための据付・計測モードと、前記水位昇降手段が前記水槽内の水位を上昇させることにより、前記載置台上の被検査物を水に浸漬し、その状態で前記移動手段によって前記探触子を移動させることにより前記被検査物に対する超音波探傷検査を実行するための検査モードと、に切り替わるように構成されている。
【0009】
この構成によると、水槽内に配置された載置台上に被検査物を固定するときや、載置台に固定された被検査物の位置及び形状を計測器によって計測するときには、水槽内の水位を相対的に低い水位に設定する(据付・計測モード)。これによって被検査物の固定及び形状等の計測は、気中で行われる。このことは、被検査物の固定作業を容易にしたり、被検査物の位置及び形状の計測精度を高めたりする上で有利である。
【0010】
そうして、被検査物の据付及び形状等の計測が完了すれば、水位昇降手段によって水槽内の水位を上昇させ、このことにより、被検査物を水に浸漬する。そうして、計測した位置及び形状に基づいて、移動手段が被検査物の形状に沿うように、探触子を移動させることで、被検査物の超音波探傷検査が実行される(検査モード)。
【0011】
このように、被検査物が気中に存在する据付・計測モードと、被検査物が水中に存在する検査モードと、を水槽内の水位を上昇及び下降させることで切り替え、被検査物が載置される載置台や水槽は動かさない。このことは、載置台や水槽を動かす機構のガタ等に起因して、被検査物の位置がずれたりすることを防止し得る。つまり、載置台に固定した被検査物の位置及び形状を計測した後、その計測した位置及び形状に基づいて探触子を移動させる超音波探傷検査が完了するまでの間で、被検査物の位置ずれ等は生じ得ないから、探触子を、計測した形状等に基づき、被検査物に対して所望の相対位置関係に位置付けて超音波探傷検査を実行することが可能になり、超音波探傷検査の精度が向上し得る。
【0012】
また、水槽内の水位を上昇・下降させるだけであるため、その構成が簡素化される。
【0013】
前記水位昇降手段は、前記水槽内に水を供給することによって前記水槽内の水位を上昇させると共に、前記水槽内の水を排出することによって前記水槽内の水位を下降させるように構成されている、としてもよい。
【0014】
こうすることで、水槽内の水位の上昇及び下降を容易に行い得る。ここで水位昇降手段は、例えば、前記水槽(検査水槽)とは別に、第2水槽を備えると共に、その検査水槽と第2水槽とを連通管で互いに連通して構成してもよい。この構成では、第2水槽内の水を連通管を通じて検査水槽に供給することによって、当該検査水槽内の水位を上昇させる(検査モード)一方、検査水槽内の水を連通管を通じて第2水槽に排出することによって、当該検査水槽内の水位を下降させる(据付・計測モード)ことが実現する。尚、水位昇降手段の構成としては、例えば水道からの水を水槽に供給するようにしてもよいし、水槽内の水を下水に排水してもよい。
【0015】
前記水位昇降手段は、前記水槽内に配置された空気溜めを備えていて、当該空気溜め内に空気を供給することによって前記水槽内の水位を上昇させると共に、前記空気溜め内の空気を排出することによって前記水槽内の水位を下降させるように構成されている、としてもよい。
【0016】
ここで空気溜めは、例えば下側が開口した容器としてもよく、水が充填している当該容器内に空気を供給したときには、容器内の水が押し出されることに伴い、水槽内の水位が上昇することになる。逆に、空気が充填している当該容器から空気を排出したときには、容器内に水が流れ込むことに伴い、水槽内の水位が下降することになる。また、空気溜めは、例えば膨張・収縮可能な袋状であってもよく、当該袋に空気を供給して袋が膨らんだときには、その分、水槽内の水位が上昇することになり、逆に、袋内の空気を排出して袋が萎んだときには、その分、水槽内の水位が下降することになる。こうして水槽内の水位の上昇及び下降を容易に行い得る。空気の供給及び排出は、水の供給及び排出と比較して短時間で行い得るから、タクトタイム及び効率の点で有利である。
【0017】
前記移動手段は、1軸以上の軸を有しかつ、前記探触子及び前記計測器がその先端に取り付けられたロボットによって構成されている、としてもよい。
【0018】
移動手段をロボットによって構成することは、被検査物が例えば3次元形状を有している場合に、当該被検査物の表面に沿うように探触子を移動させることを可能にして、被検査物を精度良く検査する上で有利になる。また、ロボット構成は、被検査物が大型であるときにも有利である。
【0019】
ここに開示する超音波探傷方法は、水槽内に配置された載置台上に、被検査物を固定する工程と、前記載置台上に固定した前記被検査物の位置及び形状を計測する工程と、前記被検査物の計測後に、前記水槽内の水位を上昇して前記被検査物を水に浸漬する工程と、前記被検査物の浸漬後に、前記計測結果に基づいて、前記被検査物の形状に沿うように探触子を移動させることによって、前記被検査物に対する超音波探傷検査を実行する工程と、を備えている。
【0020】
前述したように、被検査物の固定、及び、その固定位置及び形状の計測を行うときには、水槽内の水位を低くし、被検査物が気中にある状態で行うことにより、作業性の向上及び計測の精度向上が図られる。そうして計測が完了すれば、水槽内の水位を上昇して被検査物を水に浸漬する。このことで、被検査物の位置ずれ等を生じさせることなく、当該被検査物を水に浸漬することが可能になる。その結果、前記の形状等の計測結果に基づき、探触子を移動させて被検査物に対する超音波探傷検査を実行することで、超音波探傷検査の精度が向上し得る。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、前記の超音波探傷装置及び超音波探傷方法は、被検査物が気中に存在する据付・計測モードと、被検査物が水中に存在する検査モードと、を水槽内の水位を上昇及び下降させることで切り替え、被検査物が載置される載置台や水槽は動かさないことで、被検査物に対する据付及び形状等の計測と、被検査物に対する超音波探傷検査との間で、被検査物の位置がずれたりすることを防止し得る。その結果、簡易な構成で、超音波探傷検査の精度が向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】超音波探傷装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】水槽内の水位を昇降する構成を示す、図1のA−A断面に相当する図である。
【図3】図2とは異なる、水槽内の水位を昇降する構成を示す図である。
【図4】図2,3とは異なる、水槽内の水位を昇降する構成を示す図である。
【図5】超音波探傷検査の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、超音波探傷装置及び探傷方法の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0024】
図1は、超音波探傷装置1の全体構成を概略的に示しており、この超音波探傷装置1は、水を貯留する検査水槽2と、検査水槽2内に配置された載置台3と、その先端のハンド42に探触子41が取り付けられたロボット4と、を備えて構成されている。ここで、この超音波探傷装置1は、例えばAl合金の大型金具の鋳造品やCFRP等の複合材料製の航空機部品に対する超音波探傷検査を行う装置であり、検査対象となる航空機部品(以下、ワーク5ともいう)は、その長さ(図1における紙面左手前から右奥方向の長さ)が10mのオーダー、その幅(図1における紙面左手前から左奥方向の長さ)が1mのオーダーを有するような大型の部品であると共に、その表面が三次元的に湾曲している。一方で、ワーク5は、大型のため、たわみなどにより形状が変形する。そのため、公差を含めて、測定時の形状個体差は比較的大きい。尚、検査対象は、特に限定されるものではない。
【0025】
前記検査水槽2は、ここではワーク5の形状に対応してその一辺が他辺に比べて長い細長形状を有している。前記載置台3は、上向きに平坦な載置面31を有しており、この載置面31上に前記ワーク5が載置されると共に、図示は省略する固定手段により、動かないように固定される。載置台3は検査水槽2内で固定されており、これによって、検査水槽2も載置台3も共に移動することがなく、その構成は単純である。
【0026】
前記ロボット4は、1軸以上の軸を有するロボット、ここでは多関節ロボット4である。このロボット4は、詳細な図示は省略するが、検査水槽2の側方(図例では、後側の側方)に、検査水槽2の長手方向に沿って延びるように配置されたレール43にガイドされて、検査水槽2の長手方向に往復移動が可能に構成されている。
【0027】
探触子41は、ここでは、水に漬けられた状態で探傷を行う水浸型の探触子であり、ロボット4の先端(ハンド42)に取り付けられている。この構成により探触子41は、ロボット4がレール43に沿って往復移動することと、その多関節ロボット4が、ワーク5の表面に対する探触子41の位置や角度等を適宜変化させることによって、3次元的に湾曲するワーク5の表面に沿うように移動をする。こうして、当該ワーク5に対する超音波探傷検査が実施される。
【0028】
このロボット4のハンド42にはまた、載置台3に固定されたワーク5の位置及び形状を計測するための、例えば2次元レーザーセンサからなる形状計測器51が取り付けられている。この計測器51は、前記の探触子41と同様に、ロボット4がレール43に沿って往復移動することと、その多関節ロボット4が、ワーク5の表面に対する形状計測器51の位置を適宜変化させることによって、載置台3上に据え付けられたワーク5の位置及び形状を計測する。計測結果は、図外のロボット制御装置に送られ、ティーチングに利用される。つまり、前記ロボット4は、形状計測器51によって計測したワーク5の位置及び形状に基づいて探触子41を移動させて、ワーク5に対する超音波探傷検査を実行する。こうすることによって、前述したように、大型の航空機部品等においては、その形状個体差や、載置台3におけるワーク5の取付位置誤差等に起因して、ワーク5と探触子41との相対位置(距離及び角度)が規定値よりもずれてしまい、そのことが検査結果に影響する場合があるところ、ワーク5毎に据付位置及び形状を計測し、それに基づいて探触子41を移動させることにより、ワーク5と探触子41との相対位置を、確実に規定の状態にして、検査結果の精度を高め得る。
【0029】
この超音波探傷装置1では、図2に模式的に示すように、前記の検査水槽2とは別に、第2水槽6を有しており、検査水槽2と第2水槽6とは、連通管61を介して互いに連通している。連通管61の途中にはポンプ62が配設されており、このポンプ62を駆動することによって、第2水槽6から検査水槽2に水を供給したり、検査水槽2から、第2水槽6に水を排出したりすることが可能になる。尚、図示は省略するが、検査水槽2及び第2水槽6の間は、実際には、それぞれポンプが介設された供給管及び排出管の2つの管によって互いに連通させて、供給管においては第2水槽6から検査水槽2に向かって水を流し、排出管においては検査水槽2から第2水槽6に向かって水を流すように構成すればよい。
【0030】
この第2水槽6、連通管61及びポンプ62は、検査水槽2の水位を上昇及び下降させる水位昇降機構を構成しており、図2(a)に示すように、検査水槽2の水位が相対的に低く、載置台3上のワーク5が水から出ている状態(気中にある状態)から、図2(b)に示すように、ポンプ62を駆動して、第2水槽6から連通管61を介して検査水槽2に水を供給することで検査水槽2の水位を相対的に高くして、載置台上のワーク5が水に浸漬している状態に切り替えることが可能である。尚、図2(b)に示す載置台3上のワーク5が水に浸漬している状態から、ポンプ62を駆動して、検査水槽2の水を連通管61を介して第2水槽6に排出することにより、図2(a)に示すように、載置台3上のワーク5を気中にある状態に戻すことが可能である。
【0031】
尚、ここでは検査水槽2と第2水槽6との間で、水を移送することにより、検査水槽2の水位を昇降させるようにしているが、代替構成として、例えば検査水槽2に対して水道の水を供給して検査水槽2の水位を上昇させると共に、検査水槽2内の水を下水に排水することによって検査水槽2の水位を下降させるようにしてもよい。
【0032】
図3は、図2とは異なる構成の水位昇降機構を模式的に示している。この水位昇降機構は、検査水槽2内に設置した空気溜め63を有している。空気溜め63は、下向きに開口した硬質の容器からなり、この空気溜め63には、給排管64を介して検査水槽2の外部に設置されたコンプレッサ65が接続されている。尚、図中の、載置台3を挟んだ両側に配置された2つの空気溜め63は、図示は省略するが、互いに連通している。図3(a)に示すように、空気溜め63内には水が充填していて、検査水槽2の水位が相対的に低く、載置台3上のワーク5が気中にある状態から、図3(b)に示すように、コンプレッサ65を駆動して、給排管64を介して空気溜め63に空気を供給して充満させることで、空気溜め63内の水が追い出されることに伴い、検査水槽2の水位が高くなる。そうして、載置台3上のワーク5が水に浸漬している状態に切り替えることが可能になる。尚、図3(b)に示す載置台3上のワーク5が水に浸漬している状態から、空気溜め63内の空気を排出して、空気溜め63内に水を充填することにより、図3(a)に示すように、載置台3上のワーク5を気中にある状態に戻すことが可能である。尚、この構成においても、空気溜め63に対して、空気供給管と空気排出管との2つの管を接続して、それぞれの管を通じて、空気の供給及び排出をするようにしてもよい。
【0033】
図4は、図3とは異なる構成の空気溜め66を模式的に示している。この空気溜め66は、軟質のエアバッグからなり、膨張及び収縮することが可能である。この空気溜め66も、前記と同様に、給排管64を介してコンプレッサ65に接続されている。また、図中の、載置台3を挟んだ両側に配置された2つの空気溜め66は、図示は省略するが、互いに連通している。図4(a)に示すように、空気溜め66が萎んでいて、検査水槽2の水位が相対的に低く、載置台3上のワーク5が気中にある状態から、図4(b)に示すように、コンプレッサ65を駆動して、給排管64を介して空気溜め66に空気を供給することにより、空気溜め66が膨らむ。この空気溜め66が膨らんだ分だけ、検査水槽2の水位が高くなって、載置台3上のワーク5が水に浸漬している状態に切り替えることが可能になる。尚、図4(b)に示す載置台3上のワーク5が水に浸漬している状態から、空気溜め66内の空気を排出して、空気溜め66を収縮させることにより、図4(a)に示すように、載置台3上のワーク5を気中にある状態に戻すことが可能である。尚、この構成においても、空気溜め66に対して、空気供給管と空気排出管との2つの管を接続して、それぞれの管を通じて、空気の供給及び排出をするようにしてもよい。
【0034】
図3,4に示すように、空気の供給及び排出を行うことによって水位を上昇及び下降させる構成は、水を供給及び排出する構成と比較したときに、短時間で水位を上昇及び下降させることが可能である。このため、タクトタイム及び効率の点で有利な構成である。
【0035】
図5は、この超音波探傷装置1を用いた超音波探傷検査の手順を示している。先ず、ステップS1では、ワーク5を載置台3上に載置し、これを固定する。このときには、検査水槽2の水位は相対的に低位置に設定されており、これにより、ワーク5の固定(据付)作業は、容易に行い得る。
【0036】
続くステップS2では、ロボット4に取り付けた計測器51を用い、前述したように、そのロボット4によって、計測器51をワーク5に対し相対移動させることで、載置台3に据え付けられたワーク5の位置及び形状を計測する。そうして、ワーク5の形状等の計測が完了すれば、続くステップS3で、ロボットティーチングを行う。
【0037】
ステップS4では、検査水槽2の水位を上昇し、それによってワーク5を水に浸漬する。そうしてステップS5で、ステップS3でのティーチングに基づいて、ロボット4が水に浸漬している探触子41を移動(ワーク5に対する角度変化を含む)させて、ワーク5の超音波探傷検査を実施する。検査が完了すれば、ステップS6で検査水槽2の水位を低下して、ワーク5を気中に戻し、ステップS7でワーク5を載置台3から取り外して、超音波探傷検査が終了することになる。
【0038】
このように、この超音波探傷装置1によると、検査水槽2の水位を昇降可能に構成し、それによって、ワーク5が気中にある状態、つまり据付・計測モードと、ワーク5が水中にある状態、つまり検査モードと、を切り替え得るようにしたから、ワーク5の据付・計測時から、ワーク5に対する超音波探傷検査を行うまでの間にワーク5は全く移動をしない。より詳細には、ワーク5が載置された載置台3の移動も行われない。このため、ワーク5の、ロボット4に対する位置ずれ等は生じないから、ワーク5の形状等の計測結果に基づくティーチングに従って探触子41を移動させることにより、ワーク5と探触子41との相対関係を、確実に規定の関係にした状態でワーク5に対する超音波探傷検査を行われる。その結果、検査精度が向上し得る。
【0039】
また、検査水槽2内の水位を上昇・下降させるだけで、前述したように、載置台3や検査水槽2は固定したままであるため、これらを移動させる機構等は不要であり、超音波探傷装置1の構成が簡易になる。
【0040】
尚、前記の構成では、探傷子41の移動を、多関節ロボット4によって行っているが、ロボット4の構成は特に限定されるものではない。ワーク5の形状等を考慮して、超音波探傷検査が可能なように、探傷子41をワーク5に対して相対的に移動させることができる範囲で、適宜の構成を採用すればよい。探傷子41の移動手段は、ロボットに限定されるものでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、ここに開示した超音波探傷装置及び探傷方法は、簡易な構成で、精度良く超音波探傷検査を行うことができるから、特に超音波探傷検査の実行前に、被検査物の位置及び/又は形状を計測してロボットティーチングを行うと共に、その被検査物を水に浸漬した状態で超音波探傷検査を行う場合に有効であり、例えば航空機部品等の、各種部品等の超音波探傷検査に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 超音波探傷装置
2 検査水槽(水槽)
3 載置台
4 ロボット(移動手段)
41 探触子
5 ワーク(被検査物)
51 計測器
61 連通管(水位昇降手段)
62 ポンプ(水位昇降手段)
63 空気溜め(水位昇降手段)
64 給排管(水位昇降手段)
65 コンプレッサ(水位昇降手段)
66 空気溜め(水位昇降手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物が浸漬される水を貯留する水槽、
前記水槽内に配置されて、前記被検査物が載置固定される載置台、
探触子と、前記探触子を前記被検査物に対し相対移動させる移動手段と、を含んで構成されかつ、前記移動手段が前記被検査物の形状に沿うように、前記探触子を移動することによって、当該被検査物に対する超音波探傷検査を行う探傷手段、
前記移動手段によって前記被検査物に対して相対移動することにより、前記載置台上の被検査物の位置及び形状を計測する計測器、及び、
前記水槽内の水位を上昇及び下降する水位昇降手段、を備え、
前記移動手段は、前記計測器が計測した被検査物の位置及び形状に基づいて、前記探触子を移動させることにより、前記被検査物の超音波探傷検査を実行し、
前記水槽は、
前記水位昇降手段が前記水槽内の水位を下降させることにより、気中で、前記被検査物を前記載置台に固定しかつ、当該載置台に固定された被検査物の位置及び形状を前記計測器によって計測するための据付・計測モードと、
前記水位昇降手段が前記水槽内の水位を上昇させることにより、前記載置台上の被検査物を水に浸漬し、その状態で前記移動手段によって前記探触子を移動させることにより前記被検査物に対する超音波探傷検査を実行するための検査モードと、に切り替わるように構成されている超音波探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記水位昇降手段は、前記水槽内に水を供給することによって前記水槽内の水位を上昇させると共に、前記水槽内の水を排出することによって前記水槽内の水位を下降させるように構成されている超音波探傷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記水位昇降手段は、前記水槽内に配置された空気溜めを備えていて、当該空気溜め内に空気を供給することによって前記水槽内の水位を上昇させると共に、前記空気溜め内の空気を排出することによって前記水槽内の水位を下降させるように構成されている超音波探傷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波探傷装置において、
前記移動手段は、1軸以上の軸を有しかつ、前記探触子及び前記計測器がその先端に取り付けられたロボットによって構成されている超音波探傷装置。
【請求項5】
水槽内に配置された載置台上に、被検査物を固定する工程と、
前記載置台上に固定した前記被検査物の位置及び形状を計測する工程と、
前記被検査物の形状計測後に、前記水槽内の水位を上昇して前記被検査物を水に浸漬する工程と、
前記被検査物の浸漬後に、前記計測結果に基づいて、前記被検査物の形状に沿うように探触子を移動させることによって、前記被検査物に対する超音波探傷検査を実行する工程と、を備えている超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64645(P2011−64645A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217580(P2009−217580)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】