超音波探触子及びそれを用いた超音波診断装置
【課題】超音波探触子の3次元位置検出手段を着脱自在に超音波探触子に装着可能にすると共に、超音波探触子に位置検出手段を収容しても超音波探触子の操作性が低下することのない超音波探触子及びそのような超音波探触子を用いた超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波探触子は、被検体に超音波を送受波する振動子部と、振動子部を固定する探触子ヘッド部と、探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、グリップ部は、超音波探触子の3次元位置情報を検出するための位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有して成る。
【解決手段】超音波探触子は、被検体に超音波を送受波する振動子部と、振動子部を固定する探触子ヘッド部と、探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、グリップ部は、超音波探触子の3次元位置情報を検出するための位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有して成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子の3次元位置情報を検出する手段を収容して用いられる超音波探触子の構造と、その超音波探触子を備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波診断装置により取得されるリアルタイム超音波画像と、CT診断装置、MR診断装置、超音波診断装置等の画像診断装置により事前に取得された被検体のボリュームデータから超音波画像と同じ断面の断層画像と、を共に表示することにより、両画像の対応関係を容易に把握できるようにして、診断能を向上させる機能(リアルタイムバーチャルソノグラフィー(Real time Virtual Sonography;RVS))が実用化されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
具体的には、画像診断装置により被検体のボリュームデータを予め取得して記憶しておく。また、超音波診断装置の超音波探触子(以下、探触子と適宜略記する)には磁気センサ等の3次元位置検出手段を取り付けて、超音波画像を取得する断面の位置を検出できるようにする。この様な構成の下に、リアルタイムに超音波画像を取得すると共に超音波探触子の3次元位置情報を検出することで間接的に超音波画像の断面の3次元位置情報を取得する。この断面の3次元位置情報に基づいて、予め取得しておいたボリュームデータから超音波画像と同じ断面の断層画像を取得する。そして、リアルタイム超音波画像と断層画像とを表示することにより、相互の位置関係を容易に把握可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-89362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(特許文献1)に開示されている磁気センサは、超音波探触子に備え付けられているものであるが、具体的にどのように備え付けるのかは開示されていない。
【0006】
例えば、探触子ケースに位置検出手段を単純に貼り付けたのでは、位置検出手段の位置ずれによる位置検出精度の劣化をもたらすとともに、探触子の操作性を低下させてしまう。さらに、位置検出手段からの検出信号をケーブルにより超音波診断装置に伝達する場合には、そのケーブルが邪魔にならないように配慮する必要がある。
【0007】
特に、これらの操作性に関する課題は、穿刺において深刻となる。穿刺の際には、操作者は、探触子の側面に装着された穿刺ガイドに沿って穿刺針を精度良く被検体に挿入させる。そのためには、探触子の操作性を向上させて、操作者が容易に探触子の位置を精度良く所望の部位の近傍に配置させて撮影できるようにするととともに、その位置にて探触子を安定して保持できるようにする必要がある。したがって、位置検出手段とそれからのケーブルはなるべく操作の邪魔にならない様にする必要がある。しかし、特許文献1には、このような課題に対する考慮が開示されていない。
【0008】
或いは、探触子ケース内に位置検出手段を埋め込んで構成することも可能であるが、このような構成では、位置検出手段が故障した場合に、位置検出手段のみを交換することが不可能になってしまう。この場合には、探触子全体を交換せざるを得ず、操作者の経済的負担を強いてしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、超音波探触子の位置検出手段を着脱自在に超音波探触子に装着可能にすると共に、超音波探触子に位置検出手段を収容しても超音波探触子の操作性が低下することのない超音波探触子及びそのような超音波探触子を備えた超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の超音波探触子は次の様に構成される。即ち、被検体に超音波を送受波する振動子部と、振動子部を固定する探触子ヘッド部と、探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、グリップ部は、超音波探触子の3次元位置情報を検出するための位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の超音波診断装置は次の様に構成される。即ち、被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、超音波探触子で受信した超音波信号から被検体の超音波画像を取得する手段と、画像診断装置で取得された被検体のボリュームデータを記録する画像記録手段と、超音波探触子の3次元位置情報を検出する位置検出手段と、位置検出手段からの位置情報に基づいて、超音波画像の特定断層位置に対応する位置の断層画像を画像記録手段に記録されたボリュームデータから取得する手段と、を備え、超音波探触子は、被検体に超音波を送受波する振動子部と、振動子部を固定する探触子ヘッド部と、探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、グリップ部は、位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超音波探触子及びその超音波探触子を用いた超音波診断装置によれば、超音波探触子の位置検出手段を着脱自在に超音波探触子に装着できるようになる。また、超音波探触子に位置検出手段を収容しても超音波探触子の操作性が低下することなく、超音波探触子の操作性を向上させることが可能になる。そして、このような超音波探触子を備えた超音波診断装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の超音波探触子の左側面と磁気センサとセンサカバーの斜視図
【図2】本発明の一実施形態の超音波探触子の右側面と穿刺ガイドの斜視図
【図3】本発明の一実施形態の超音波探触子の正面図
【図4】本発明の一実施形態の超音波探触子にセンサカバーが装着された状態を示す図
【図5】本発明の一実施形態の超音波探触子からセンサカバーを外す際の手法を示す図
【図6】図5に示すA-A面とB-B面に関する超音波探触子の断面図を示す図
【図7】本発明の一実施形態の超音波探触子に穿刺ガイドとセンサカバーとが装着された状態を示す右側面の斜視図
【図8】本発明の一実施形態の超音波探触子に穿刺ガイドが装着された状態を示す正面図
【図9】本発明の一実施形態の超音波診断装置のブロック構成を示す図
【図10】画像表示部に表示される穿刺ガイドラインの表示形態を示す図
【図11】穿刺針の先端に第2の磁気センサを設置させる形態を示す図
【図12】画像表示部に穿刺針の針先表示を表示する表示形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の超音波探触子の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は本実施形態の超音波探触子10の左側面の斜視図であり、探触子10の3次元位置検出手段(以下、位置検出手段と適宜略記する)の収容部32と、センサカバー38の詳細を示す。図2は本実施形態の超音波探触子10の右側面の斜視図であり、グリップ部13に対する探触子ヘッド部12の突出と、穿刺ガイド20と係合する凸状係合部16を示す。図3は本実施形態の超音波探触子10の正面図である。
【0015】
図1〜図3に示すとおり、探触子10は、超音波を送受波する振動子部11と、振動子部を固定すると共に操作者が指先で把持するための探触子ヘッド部12と、手のひら或いは親指と人差し指の間の付根で把持するためのグリップ部13と、超音波を送受波して得られた超音波信号を超音波診断装置へ伝達するケーブル部14と、を有して成る。振動子部11は、圧電セラミクス等からなる振動子、或いは複数のcMUT素子を有して成る超音波振動子と、超音波振動子を覆う音響レンズとを有して成り、探触子ヘッド部12の下端に例えばコンベックス状に配置されている。尚、振動子の配列はコンベックス状に限らずリニア状、セクタ状、或いは他の配置でも良い。
【0016】
図1(a)に示す様に、グリップ部の左側面には、探触子10の3次元位置情報を検出するための位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝32が設けられている。この溝32に位置検出手段を収容し、その上から位置検出手段を覆うように着脱可能なセンサカバー38を被せる。また、探触子10の左側面では、グリップ部13が探触子ヘッド部12に対し滑らかに繋がっている。尚、図1では位置検出手段の一例として磁気センサ36を示しているが、位置検出手段は磁気センサ36に限定されることなく、赤外線や超音波等で3次元位置情報を取得できるものであればいずれでも良い。以下、磁気センサ36を位置検出手段の一例として本実施形態の超音波探触子10を説明していく。
【0017】
また、図2(a)に示す様に、探触子ヘッド部12は、グリップ部13に対し振動子部11の長手方向の一方(つまり右側面方向)のみに突出している。その突出した側の探触子ヘッド部12の上端からグリップ部13の側面(つまり右側面)に沿って、穿刺ガイド20を係合して固定するための凸状係合部16が形成されている。この凸状係合部16の少なくとも一方の側面には、凸状係合部16の長手方向に突起部17が形成されている。この突起部17は、凸状係合部16に係合された穿刺ガイド20を振動子部11の長手方向に位置変動しないように固定するためのものである。
【0018】
探触子ヘッド部12とグリップ部13と凸状係合部16の短手方向の形状は、探触子10の正面と平行な中心面に関して対称に形成されており、探触子ヘッド部12の短手方向の幅は、グリップ部13の短手方向の幅より小さくなっている。そのため、探触子ヘッド部12とグリップ部13の間には段差部5が形成されている。また、凸状係合部16の短手方向の幅は、探触子ヘッド部12の短手方向の幅より小さくなっている。
【0019】
グリップ部13の右側面18は、凸状係合部16が設置されない側(つまり左側面19側)に湾曲している。そして、湾曲したグリップ部13の上端に超音波診断装置に接続されて探触子10との間で超音波信号の送受を介在するケーブル14が接続されている。このケーブル14は、凸状係合部16の長手方向に対し、グリップ部13の右側面18の湾曲と連続するように斜め方向(つまり、左側面19方向であり、探触子ヘッド部の突出方向と反対方向)に引き出されている。
【0020】
グリップ部13の左側面19は、探触子ヘッド部12から滑らかに繋がる面において、人差し指と親指の付け根がフィットするような形に湾曲して凹状に形成されている。また、左側面19のケーブル14側はフラットな平面状に形成されており、そのフラットな平面の中心部に磁気センサを収容するための溝32が形成されている。グリップ部13の正面と裏面には、センサカバー38を固定するために突起部31がそれぞれ形成されている。この突起部31は、グリップ部13から半円柱状に突起しており、正面と裏面の長手方向と同じ方向に延びている。この突起部31がセンサカバー38の穴部35と係合することにより、センサカバー38がグリップ部13に着脱可能に装着される。
【0021】
磁気センサ36は、探触子10の3次元位置情報を検出するためのものであり、後述するように、RVS機能を実現するために、超音波画像の断面の3次元位置情報を間接的に取得するためのものである。また、磁気センサ36が検出する信号を超音波診断装置本体に伝達するためのケーブル37は、探触子ケーブル14に沿って配置されるようにすることにより、この磁気センサ36用ケーブル37が探触子10の操作の邪魔にならないようにすることが可能である。
【0022】
次に、センサカバー38について説明する。センサカバー38は、図1(b)に示すように平面基板30と、平面基板30の両側端に平面基板に対し直角に形成された2つの係合板33と、平面基板30の中央部の下端から係合板33と同方向に直角に形成された四角状の舌片部34とを有して、これらが一体構成されて成る。そして、センサカバー38は、平面基板30と2つの係合板33とでコ字状に形成されている。つまり、2つの係合板33は互いに対向して形成され、2つの係合板33間の幅はグリップ部13の短手方向の幅とほぼ同じである。舌片部34の幅は溝32の幅に適合するよう形成されている。
【0023】
また、2つの係合板33にはそれぞれ長方楕円形の穴部35が形成されており、グリップ部13に形成された突起部31が穴部35に入ることで、突起部31と穴部35とが係合される。このようなコ字形状のセンサカバー38が、磁気センサ36が収容される溝32を覆うようにグリップ部13に係合して装着される。なお、後述するように、センサカバー38の平面基板30の上部とグリップ部13の面との間に僅かに隙間が形成されてセンサカバー38がグリップ部に係合されるように、突起部31と穴部35が配置されている。センサカバー38が探触子10に装着された際には、舌片部34が溝32内に入り込んで磁気センサ36を下支えし、溝外にでることを防止する。探触子10にセンサカバー38が装着された状態を図4に示す。四角型の磁気センサ36が溝32内に収容された後に、センサカバー38が装着されることにより、磁気センサ36が安定して固定されるとともに、磁気センサ36が探触子10の操作の邪魔にならないので、探触子10の操作性を向上させることが可能になる。
【0024】
ここで、図5、図6を用いてセンサカバー38の脱着について説明する。図5は探触子10からセンサカバー38を外す際の手法を示すものであり、図6は、図5に示すA-A面とB-B面に関する探触子10の断面図を示すものである。図5に示すように、方向40に力を掛けてセンサカバー38が押下されると、方向41の方向に力が掛かり、センサカバー38が外れやすくなる。
【0025】
図6(a)は力が掛けられる前の図であり、図6(b)は力が掛けられた後の図である。図6(a)に示すように、センサカバー38の平面基板30の上部と探触子10のグリップ部13の面との間にわずかな隙間42が形成されるように、センサカバー38がグリップ部に係合されている。方向40に力が掛けられると平面基板30が隙間42方向に撓み、平面基板30と一体構成されている係合板33は外側に押し出される。つまり、平面基板30の撓みにより係合板33が外側に広がる。そのため、係合板33の穴部35が突起部31から外れ、方向41の方向にセンサカバー38が移動しやすくなる。この状態で操作者はセンサカバー38を容易に探触子10から外すことができる。一方、センサカバー38が探触子10に装着される際は、上記の逆であり、係合板33の穴部35が突起部31に係合されるようにセンサカバー38が広げられて探触子10に装着される。なお、センサカバー38の装着機構に関しては、上記穴部35と突起部31との係合の他に、突起部31をレール型に配置し、センサカバー38にレール溝を形成しておき、センサカバー38をスライドさせて探触子10に装着させる機構でもよい。
【0026】
次に、上記探触子10を用いて穿刺を行う場合に、この探触子10に装着されて穿刺針をガイドするための穿刺ガイド20の構造を図2と図7に基づいて説明する。図2(b)は、凸状係合部16と係合する面側から見た穿刺ガイド20の斜視図を示す。図7(a)は、穿刺ガイド20とセンサカバー38とが装着された探触子10の右側面から見た斜視図を示す。穿刺ガイド20は、図7(b)に示すような穿刺針28のアタッチメント29を固定するためのガイド本体23と、ガイド本体23の両端に設置される2本のアーム21と、2本のアーム21を連結させる連結部22とを有して成る。
【0027】
ガイド本体23は、穿刺針28を支えるためのアタッチメント29を装着するための支持台27を備えている。この支持台27は、支持棒25と支点部26により、その方向が変更可能になっている。つまり、支持台27の上端に支持棒25が設けられ、ガイド本体23の上端に支持棒25を貫通させて固定するための複数の穴部が設けられており、支持棒25を貫通させる穴部が選択されることによって、支点部26を支点にして支持台27の方向が変えられるようになっている。
【0028】
支持棒25の方向を変更可能に固定する具体的機構は次の通りである。即ち、支持棒25を貫通させる穴部に支持棒25を固定するために、支持棒25の上端には、支持棒25を引っ張るバネからなる弾性体(図示しない。) が設けられている。そして、指等で支持棒25をその軸方向に引き延ばすことにより、支持棒25が穴部から外れる。その結果、支持台27の一端が支点部26により固定されているため、その支点部26を中心にして支持棒25及び支持台27が回転できるようになるので、支持棒25及び支持台27の方向が変更可能になる。支持棒25を所望の穴部に配置して引き延ばしを解除することにより、その選択された穴部に支持棒25が固定される。このようにして、支持棒25及び支持台27の方向が変えられることによって、穿刺方向が変更可能に調整される。例えば、被検体に対し鋭角に穿刺針28を挿入させる場合には、支持棒25はグリップ部13側の穴部へ挿入されて固定される。また被検体に対し鈍角に穿刺針28を挿入させる場合には、支持棒25はグリップ部13側から遠い方の穴部へ挿入されて固定される。
【0029】
アーム21は、それぞれガイド本体23の側面の一部を支点にして回転する構造になっており、2本のアームは連結部22より連結される。連結部22は、ネジでの締め付けにより固定される。連結部22のネジは、2本のアーム21のいずれか一方に設けられており、他方のアーム21に連結部22のコの字状係合部が設けられている。ネジはアーム21を軸にして回転可能になっており、コの字状係合部にネジを固定する際、ネジを回転してコの字状係合部に係合する。穿刺ガイド20は、この2本のアームが連結部22で連結されることにより、ガイド本体23と2本のアーム21と連結部22によりロ字状に形成される。なお、この連結部22を嵌め込み式構造にして、アーム21が固定されるようにしてもよい。
【0030】
また、ガイド本体23には凹状係合部24が形成されており、凹状係合部24は凸状係合部16及びその突起部17に係合するよう形成されている。穿刺ガイド20が探触子10に装着される際、凹状係合部24は凸状係合部16をガイドにして、凸状係合部16の長手方向に挿入される。そして、穿刺ガイド20が凸状係合部16及び突起部17に係合された後、2本のアーム21が探触子ヘッド部12の外周面を取り巻いて結合されることにより、穿刺ガイド20は探触子10に固定される。その際、2本のアーム21の端面が、探触子ヘッド部12とグリップ部13間の段差部5により押さえつけられることによって、穿刺ガイド20が探触子長手方向に固定される。このように、穿刺ガイド20は、凸状係合部16及び突起部17と、探触子ヘッド部12とグリップ部13間の段差部5により、探触子10の上下方向、左右方向及び表裏方向のいずれの方向にも固定されることとなる。このように探触子10に強固に固定された穿刺ガイド20により、穿刺針の方向を安定させることができる。図8に、穿刺ガイド20を装着した場合の探触子10の正面図を示す。
【0031】
次に、上記超音波探触子を備えた超音波診断装置について説明する。図9は、超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。超音波診断装置は、超音波探触子10と、超音波探触子10と接続される信号処理部50と、信号処理部50と接続される画像変換部51と、画像変換部51と接続される合成部52と、合成部52と接続される画像表示部56と、各部と接続される制御部53とを有している。さらに、RVS機能を実現するために、CT診断装置やMR診断装置や超音波診断装置のいずれかの画像診断装置54で得られた被検体のボリュームデータを記録する画像記録部55と、磁場発生部57と、超音波探触子10の3次元位置情報を検出する磁気センサ36と、磁気センサ36及び磁場発生部57と接続される位置・方向解析部58と、位置・方向解析部58及び画像記録部55と接続される座標変換部59と、座標変換部59及び画像記録部55と接続される断層画像取得部60と、を有している。なお、合成部52は座標変換部59とも接続されている。
【0032】
超音波探触子10は、上述した通り、探触子10を把持するためのグリップ部13に磁気センサ36を収容する溝32を有し、被検体に超音波を送受波する探触子ヘッド部12に穿刺ガイド20を係合して装着するための凸状係合部16を備えている。信号処理部50は、超音波探触子10から受信した受波信号を増幅し、整相する等の信号処理をする。画像変換部51は、信号処理部50から出力される受波信号を超音波画像に変換するもので、所謂デジタルスキャンコンバータと呼ばれるものである。
【0033】
合成部52は、画像変換部51により変換された超音波画像と、断層画像取得部60で取得された断層画像の少なくとも一方を表す画像を生成するものである。画像表示部56は、合成部52で生成された画像を表示する。制御部53は、上記各部を制御するCPUであり、図9においては、上記各部を制御するための接続線の図示は省略されている。磁気センサ36は、3軸直交系の磁場を検出する受信器であり、3軸直交系の磁場を発生させる磁場発生部57はベットサイドに備えられている。受信機である磁気センサ36が、磁場発生部57で設定される磁場空間内で、3次元座標空間における自身(受信器)の3次元空間内での位置及び方向を直接的に検出することによって、超音波探触子10の3次元位置及び方向が間接的に取得される。
【0034】
超音波画像診断を行う場合には、操作者は、超音波探触子10を被検体に当接し、(図示しない)送波スイッチを押下して超音波信号の送受信を開始する。信号処理部50は、超音波探触子10から受信した受波信号を増幅し、整相する等の信号処理を行う。画像変換部51は、信号処理部50から出力された受波信号を超音波画像に変換する。画像表示部56は、画像変換部51で変換された超音波画像を表示する。穿刺を行う場合は、操作者は、この超音波画像により被検体の癌細胞等の患部を見つけ、穿刺針28を被検体の体表から患部へ穿刺する。この穿刺の際に、操作者は、患部の被検体の体表からの深度に応じて、前述したように、穿刺針28の挿抜方向の位置を調整する。
【0035】
さらに、RVS機能を併用して超音波画像診断及び穿刺を行う場合について説明する。RVS機能では、リアルタイムに取得されている超音波画像の3次元位置情報を取得するために、位置・方向解析部58が、磁場発生部57に磁場を発生させると共に、磁気センサ36によって検出された信号を解析して、磁場発生部57を基準とする磁気センサ36即ち超音波探触子10の3次元位置や方向を求める。次に、座標変換部59が、位置・方向解析部58で解析された超音波探触子10の3次元位置や方向から超音波画像の断面の3次元位置や方向を求め、この超音波画像の断面に対応するボリュームデータの断面の3次元位置を求める。次に、断層画像取得部60が、座標変換部59で変換されたボリュームデータの断面位置の断層画像を、ボリュームデータから再構成する。このようにして、リアルタイムに取得されている超音波画像と同じ断面の断層画像がリファレンス画像として取得される。最後に、それらリアルタイム超音波画像とリファレンス画像の少なくとも一方を、好ましくは2つの画像を並べて画像表示部56に表示する。
【0036】
以上の様にして、被検体の特定断層位置の超音波画像の表示に際して、超音波探触子10に収容された磁気センサ36の出力を用いて超音波画像の特定断層位置に対応する位置の断層画像を画像記録部55に記録されたボリュームデータから取得する。
【0037】
なお、RVS機能を実施するための前準備として次のことを事前に実施しておく。最初に、CT診断装置、MR診断装置、超音波診断装置等の画像診断装置54により被検体を撮影して、取得されたボリュームデータを画像記録部55に記憶しておく。次に、ボリュームデータの基準座標系と超音波診断装置により撮影されている被検体の基準座標系とが、共通の座標系である標準座標系に対応付けられる。そのためには、操作者は、予め取得されたボリュームデータに基づいて再構成されたリファレンス像上で基準点を設定する。操作者は、この設定された基準点に対応する被検体の位置に超音波探触子10の位置を合わせて被検体の基準点を設定する。そして、超音波探触子10の位置が磁気センサにより検出されて、ボリュームデータ上の基準点と被検体上の基準点とが対応付けられ。このようにして、被検体の基準座標系を標準座標系に対応付けると共に、ボリュームデータの基準座標系を標準座標系に対応付ける座標系対応データが作成されて記憶される。この対応付の後の超音波診断時には、磁気センサにより検出される超音波探触子の3次元位置と方向とに基づいて撮影断面の位置と方向が求められ、この撮影断面に対応するリファレンス像がボリュームデータから抽出されて超音波画像と共に表示される。
【0038】
次に、グリップ部13に第1の磁気センサ36が収容されてセンサカバー38が装着され、探触子ヘッド部12に穿刺ガイド20が装着された、図8に示すような超音波探触子10を備えた上記超音波診断装置を用いて行われる、RVS機能を併用した穿刺について説明する。穿刺の際には、穿刺ガイド20には、穿刺針28が組み込まれた穿刺アタッチメント29が装着される。
【0039】
図10は、図8に示した様な探触子10を用いてRVS機能により得られる超音波画像と断層画像とが画像表示部56に表示される表示形態を示すものである。左側の画像は画像診断装置54のボリュームデータから得られる断層画像であり、右側の画像はリアルタイムに取得される超音波画像である。超音波画像において、破線63は鈍角に穿刺針28が挿入される場合の穿刺方向を示すガイドラインであり、破線64は鋭角に穿刺針28が挿入される場合の穿刺方向を示すガイドラインである。前述した通り、ガイド本体23に支持棒25を固定するための穴部が2箇所設けられており、いずれかの穴部に支持棒25が固定されてようになっている。この2本のガイドラインは、こられの穴部の位置及び支持棒25で設定される穿刺針28の方向に対応する位置に表示される。この超音波画像上の2本のガイドラインの位置に対応するように、ボリュームデータから得られる断層画像上の同位置にガイドラインが表示される。破線61は破線63の位置に対応するガイドラインであり、破線62は破線64の位置に対応するガイドラインである。よって、超音波画像と断層画像とからなる2つの異なる画像にガイドラインが表示されることにより、操作者は、病変部の位置を特定しやすくなり、穿刺計画を容易に立案することが可能になると共に、穿刺を容易且つ正確に行うことが可能になる。
【0040】
更に、ガイドライン上に穿刺針の先端位置を示す例を説明する。そのためには、図11に示すように、穿刺針28の先端に第2の磁気センサ70が設置される。第2の磁気センサは、第1の磁気センサ36と同様に上述した3軸直交系の磁場を検出する受信器を搭載したものである。また、第2の磁気センサも位置・方向解析部58に接続されて、第1の磁気センサ36と同様に第2の磁気センサからの信号が解析される。
【0041】
最初に、センサカバー38内に設置される第1の磁気センサ36に対する第2の磁気センサ70の3次元位置を特定する方法を説明する。第2の磁気センサ70が穿刺針28の先端に固定された後、操作者は、第2の磁気センサ70をアタッチメント29に当接する位置に配置する。そして、センサカバー38内に設置される第1の磁気センサ36に対する第2の磁気センサ70の原点位置が特定されるとともに、第2の磁気センサ70の位置、角度及び穿刺針28の長さから穿刺針28の先端位置(針先)が特定される。つまり、第2の磁気センサ70の原点が特定され、原点から針先までの位置が特定される。穿刺針28が移動した距離に応じて、第2の磁気センサ70の位置も同じ距離だけ移動するので、穿刺針28の移動距離が特定される。また、穿刺針28はアタッチメント29により1次元方向にしか移動できないため、穿刺針28の移動方向も特定される。
【0042】
位置・方向解析部58と座標変換部59は、第1の磁気センサ36と第2の磁気センサ70からの検出信号に基づいて、穿刺針28の移動距離と移動方向を3次元位置座標に換算することにより、穿刺針28のガイドラインと針先の位置を特定する。そして、座標変換部59は、穿刺針28のガイドラインと針先の位置情報を合成部52に送る。合成部52は、こられの位置情報に基づき穿刺針のガイドラインと針先の位置を画像表示部56上に表示する。
【0043】
ガイドラインの表示に関しては、図10に示されるように表示される。破線62は鈍角に穿刺針28を挿入させた場合の穿刺方向を示すガイドラインであり、破線63は鋭角に穿刺針28を挿入させた場合の穿刺方向を示すガイドラインである。穿刺針28がどの角度に設定されているかは、第2の磁気センサ70をアタッチメント29に当接する位置、つまり原点位置により選定される。このように、原点位置情報から穿刺針28の角度の設定状態が特定されるため、表示画面上には選定された方の穿刺方向のみ又は2つの穿刺方向を表示させることができる。2つのの穿刺方向を表示させる場合は、選定された方の穿刺方向と他方の穿刺方向との表示態様を異ならせても良い。
【0044】
穿刺針28のガイドラインと針先の位置の表示に関しては、図12に示されるように表示される。左側の画像は画像診断装置54のボリュームデータから得られる断層画像であり、右側の画像は超音波画像である。右側の超音波画像において、実線72は穿刺針28を挿入させた場合の穿刺針本体、点73は穿刺針28の針先を示すものである。左側の断層画像において、実線70は穿刺針28を挿入させた場合の穿刺針本体、点71は穿刺針28の針先を示すものである。第2の磁気センサ70の位置、角度及び穿刺針28の長さから穿刺針28の先端位置(針先)が特定されて、穿刺針28の針先が表示されることにより、操作者は穿刺の推移をリアルタイムに認識させることが可能になる。したがって、超音波画像と断層画像とからなる2つの異なる画像に穿刺針28及び針先が表示されることにより、操作者は、安全に穿刺処置を行うことが可能になる。
【0045】
なお、図12に示す画像上に図10のようなガイドラインを表示させてもよい。また、第2の磁気センサ70を3軸直交系の磁場を検出する受信器としたが、センサカバー38内に設置される第1の磁気センサ36に対しての位置が特定できるものであれば何でもよい。
【0046】
以上迄が、本実施形態の超音波探触子10及びこの探触子10を備えた超音波診断装置の説明であるが、超音波探触子10の特徴的構造を纏めると次の様になる。グリップ部13の左側面に磁気センサ36を備えること。探触子ヘッド部12は、グリップ部13に対し振動子部11の長手方向の一端に突出していること。突出した側の探触子ヘッド部12の上端からグリップ部13の側面(つまり右側面)に沿って、穿刺ガイド20を係合して固定するための凸状係合部16が形成されていること。グリップ部13の右側面18は、凸状係合部16が設置されない側(左側面側)に湾曲していること。すなわち、超音波探触子10の形状を左右非対称にし、グリップ部18とケーブル14の引き出し方向が、穿刺針28をガイドする側から遠ざけるように形成されていること。これらの特徴的構造により、探触子10の3次元位置検出手段を着脱自在に探触子10に装着できるようになる。また、探触子10に位置検出手段を収容しても探触子10の操作性が低下することがない。また、穿刺針28をガイドする側の空間が広くなるので、探触子10の操作性を向上させることができる。さらに、磁気センサ36,70を備えてRVS機能と併用することにより穿刺針28のガイドラインや針先を画面上に表示させることにより、穿刺処置の安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 超音波探触子、11 振動子部、12 探触子ヘッド部、13 グリップ部、14 ケーブル部、20 穿刺ガイド、28 穿刺針、38 センサカバー、61,62,63,64 穿刺ガイドライン、70 第2の磁気センサ、71 針先、73 針先
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子の3次元位置情報を検出する手段を収容して用いられる超音波探触子の構造と、その超音波探触子を備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波診断装置により取得されるリアルタイム超音波画像と、CT診断装置、MR診断装置、超音波診断装置等の画像診断装置により事前に取得された被検体のボリュームデータから超音波画像と同じ断面の断層画像と、を共に表示することにより、両画像の対応関係を容易に把握できるようにして、診断能を向上させる機能(リアルタイムバーチャルソノグラフィー(Real time Virtual Sonography;RVS))が実用化されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
具体的には、画像診断装置により被検体のボリュームデータを予め取得して記憶しておく。また、超音波診断装置の超音波探触子(以下、探触子と適宜略記する)には磁気センサ等の3次元位置検出手段を取り付けて、超音波画像を取得する断面の位置を検出できるようにする。この様な構成の下に、リアルタイムに超音波画像を取得すると共に超音波探触子の3次元位置情報を検出することで間接的に超音波画像の断面の3次元位置情報を取得する。この断面の3次元位置情報に基づいて、予め取得しておいたボリュームデータから超音波画像と同じ断面の断層画像を取得する。そして、リアルタイム超音波画像と断層画像とを表示することにより、相互の位置関係を容易に把握可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-89362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(特許文献1)に開示されている磁気センサは、超音波探触子に備え付けられているものであるが、具体的にどのように備え付けるのかは開示されていない。
【0006】
例えば、探触子ケースに位置検出手段を単純に貼り付けたのでは、位置検出手段の位置ずれによる位置検出精度の劣化をもたらすとともに、探触子の操作性を低下させてしまう。さらに、位置検出手段からの検出信号をケーブルにより超音波診断装置に伝達する場合には、そのケーブルが邪魔にならないように配慮する必要がある。
【0007】
特に、これらの操作性に関する課題は、穿刺において深刻となる。穿刺の際には、操作者は、探触子の側面に装着された穿刺ガイドに沿って穿刺針を精度良く被検体に挿入させる。そのためには、探触子の操作性を向上させて、操作者が容易に探触子の位置を精度良く所望の部位の近傍に配置させて撮影できるようにするととともに、その位置にて探触子を安定して保持できるようにする必要がある。したがって、位置検出手段とそれからのケーブルはなるべく操作の邪魔にならない様にする必要がある。しかし、特許文献1には、このような課題に対する考慮が開示されていない。
【0008】
或いは、探触子ケース内に位置検出手段を埋め込んで構成することも可能であるが、このような構成では、位置検出手段が故障した場合に、位置検出手段のみを交換することが不可能になってしまう。この場合には、探触子全体を交換せざるを得ず、操作者の経済的負担を強いてしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、超音波探触子の位置検出手段を着脱自在に超音波探触子に装着可能にすると共に、超音波探触子に位置検出手段を収容しても超音波探触子の操作性が低下することのない超音波探触子及びそのような超音波探触子を備えた超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の超音波探触子は次の様に構成される。即ち、被検体に超音波を送受波する振動子部と、振動子部を固定する探触子ヘッド部と、探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、グリップ部は、超音波探触子の3次元位置情報を検出するための位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の超音波診断装置は次の様に構成される。即ち、被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、超音波探触子で受信した超音波信号から被検体の超音波画像を取得する手段と、画像診断装置で取得された被検体のボリュームデータを記録する画像記録手段と、超音波探触子の3次元位置情報を検出する位置検出手段と、位置検出手段からの位置情報に基づいて、超音波画像の特定断層位置に対応する位置の断層画像を画像記録手段に記録されたボリュームデータから取得する手段と、を備え、超音波探触子は、被検体に超音波を送受波する振動子部と、振動子部を固定する探触子ヘッド部と、探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、グリップ部は、位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超音波探触子及びその超音波探触子を用いた超音波診断装置によれば、超音波探触子の位置検出手段を着脱自在に超音波探触子に装着できるようになる。また、超音波探触子に位置検出手段を収容しても超音波探触子の操作性が低下することなく、超音波探触子の操作性を向上させることが可能になる。そして、このような超音波探触子を備えた超音波診断装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の超音波探触子の左側面と磁気センサとセンサカバーの斜視図
【図2】本発明の一実施形態の超音波探触子の右側面と穿刺ガイドの斜視図
【図3】本発明の一実施形態の超音波探触子の正面図
【図4】本発明の一実施形態の超音波探触子にセンサカバーが装着された状態を示す図
【図5】本発明の一実施形態の超音波探触子からセンサカバーを外す際の手法を示す図
【図6】図5に示すA-A面とB-B面に関する超音波探触子の断面図を示す図
【図7】本発明の一実施形態の超音波探触子に穿刺ガイドとセンサカバーとが装着された状態を示す右側面の斜視図
【図8】本発明の一実施形態の超音波探触子に穿刺ガイドが装着された状態を示す正面図
【図9】本発明の一実施形態の超音波診断装置のブロック構成を示す図
【図10】画像表示部に表示される穿刺ガイドラインの表示形態を示す図
【図11】穿刺針の先端に第2の磁気センサを設置させる形態を示す図
【図12】画像表示部に穿刺針の針先表示を表示する表示形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の超音波探触子の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は本実施形態の超音波探触子10の左側面の斜視図であり、探触子10の3次元位置検出手段(以下、位置検出手段と適宜略記する)の収容部32と、センサカバー38の詳細を示す。図2は本実施形態の超音波探触子10の右側面の斜視図であり、グリップ部13に対する探触子ヘッド部12の突出と、穿刺ガイド20と係合する凸状係合部16を示す。図3は本実施形態の超音波探触子10の正面図である。
【0015】
図1〜図3に示すとおり、探触子10は、超音波を送受波する振動子部11と、振動子部を固定すると共に操作者が指先で把持するための探触子ヘッド部12と、手のひら或いは親指と人差し指の間の付根で把持するためのグリップ部13と、超音波を送受波して得られた超音波信号を超音波診断装置へ伝達するケーブル部14と、を有して成る。振動子部11は、圧電セラミクス等からなる振動子、或いは複数のcMUT素子を有して成る超音波振動子と、超音波振動子を覆う音響レンズとを有して成り、探触子ヘッド部12の下端に例えばコンベックス状に配置されている。尚、振動子の配列はコンベックス状に限らずリニア状、セクタ状、或いは他の配置でも良い。
【0016】
図1(a)に示す様に、グリップ部の左側面には、探触子10の3次元位置情報を検出するための位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝32が設けられている。この溝32に位置検出手段を収容し、その上から位置検出手段を覆うように着脱可能なセンサカバー38を被せる。また、探触子10の左側面では、グリップ部13が探触子ヘッド部12に対し滑らかに繋がっている。尚、図1では位置検出手段の一例として磁気センサ36を示しているが、位置検出手段は磁気センサ36に限定されることなく、赤外線や超音波等で3次元位置情報を取得できるものであればいずれでも良い。以下、磁気センサ36を位置検出手段の一例として本実施形態の超音波探触子10を説明していく。
【0017】
また、図2(a)に示す様に、探触子ヘッド部12は、グリップ部13に対し振動子部11の長手方向の一方(つまり右側面方向)のみに突出している。その突出した側の探触子ヘッド部12の上端からグリップ部13の側面(つまり右側面)に沿って、穿刺ガイド20を係合して固定するための凸状係合部16が形成されている。この凸状係合部16の少なくとも一方の側面には、凸状係合部16の長手方向に突起部17が形成されている。この突起部17は、凸状係合部16に係合された穿刺ガイド20を振動子部11の長手方向に位置変動しないように固定するためのものである。
【0018】
探触子ヘッド部12とグリップ部13と凸状係合部16の短手方向の形状は、探触子10の正面と平行な中心面に関して対称に形成されており、探触子ヘッド部12の短手方向の幅は、グリップ部13の短手方向の幅より小さくなっている。そのため、探触子ヘッド部12とグリップ部13の間には段差部5が形成されている。また、凸状係合部16の短手方向の幅は、探触子ヘッド部12の短手方向の幅より小さくなっている。
【0019】
グリップ部13の右側面18は、凸状係合部16が設置されない側(つまり左側面19側)に湾曲している。そして、湾曲したグリップ部13の上端に超音波診断装置に接続されて探触子10との間で超音波信号の送受を介在するケーブル14が接続されている。このケーブル14は、凸状係合部16の長手方向に対し、グリップ部13の右側面18の湾曲と連続するように斜め方向(つまり、左側面19方向であり、探触子ヘッド部の突出方向と反対方向)に引き出されている。
【0020】
グリップ部13の左側面19は、探触子ヘッド部12から滑らかに繋がる面において、人差し指と親指の付け根がフィットするような形に湾曲して凹状に形成されている。また、左側面19のケーブル14側はフラットな平面状に形成されており、そのフラットな平面の中心部に磁気センサを収容するための溝32が形成されている。グリップ部13の正面と裏面には、センサカバー38を固定するために突起部31がそれぞれ形成されている。この突起部31は、グリップ部13から半円柱状に突起しており、正面と裏面の長手方向と同じ方向に延びている。この突起部31がセンサカバー38の穴部35と係合することにより、センサカバー38がグリップ部13に着脱可能に装着される。
【0021】
磁気センサ36は、探触子10の3次元位置情報を検出するためのものであり、後述するように、RVS機能を実現するために、超音波画像の断面の3次元位置情報を間接的に取得するためのものである。また、磁気センサ36が検出する信号を超音波診断装置本体に伝達するためのケーブル37は、探触子ケーブル14に沿って配置されるようにすることにより、この磁気センサ36用ケーブル37が探触子10の操作の邪魔にならないようにすることが可能である。
【0022】
次に、センサカバー38について説明する。センサカバー38は、図1(b)に示すように平面基板30と、平面基板30の両側端に平面基板に対し直角に形成された2つの係合板33と、平面基板30の中央部の下端から係合板33と同方向に直角に形成された四角状の舌片部34とを有して、これらが一体構成されて成る。そして、センサカバー38は、平面基板30と2つの係合板33とでコ字状に形成されている。つまり、2つの係合板33は互いに対向して形成され、2つの係合板33間の幅はグリップ部13の短手方向の幅とほぼ同じである。舌片部34の幅は溝32の幅に適合するよう形成されている。
【0023】
また、2つの係合板33にはそれぞれ長方楕円形の穴部35が形成されており、グリップ部13に形成された突起部31が穴部35に入ることで、突起部31と穴部35とが係合される。このようなコ字形状のセンサカバー38が、磁気センサ36が収容される溝32を覆うようにグリップ部13に係合して装着される。なお、後述するように、センサカバー38の平面基板30の上部とグリップ部13の面との間に僅かに隙間が形成されてセンサカバー38がグリップ部に係合されるように、突起部31と穴部35が配置されている。センサカバー38が探触子10に装着された際には、舌片部34が溝32内に入り込んで磁気センサ36を下支えし、溝外にでることを防止する。探触子10にセンサカバー38が装着された状態を図4に示す。四角型の磁気センサ36が溝32内に収容された後に、センサカバー38が装着されることにより、磁気センサ36が安定して固定されるとともに、磁気センサ36が探触子10の操作の邪魔にならないので、探触子10の操作性を向上させることが可能になる。
【0024】
ここで、図5、図6を用いてセンサカバー38の脱着について説明する。図5は探触子10からセンサカバー38を外す際の手法を示すものであり、図6は、図5に示すA-A面とB-B面に関する探触子10の断面図を示すものである。図5に示すように、方向40に力を掛けてセンサカバー38が押下されると、方向41の方向に力が掛かり、センサカバー38が外れやすくなる。
【0025】
図6(a)は力が掛けられる前の図であり、図6(b)は力が掛けられた後の図である。図6(a)に示すように、センサカバー38の平面基板30の上部と探触子10のグリップ部13の面との間にわずかな隙間42が形成されるように、センサカバー38がグリップ部に係合されている。方向40に力が掛けられると平面基板30が隙間42方向に撓み、平面基板30と一体構成されている係合板33は外側に押し出される。つまり、平面基板30の撓みにより係合板33が外側に広がる。そのため、係合板33の穴部35が突起部31から外れ、方向41の方向にセンサカバー38が移動しやすくなる。この状態で操作者はセンサカバー38を容易に探触子10から外すことができる。一方、センサカバー38が探触子10に装着される際は、上記の逆であり、係合板33の穴部35が突起部31に係合されるようにセンサカバー38が広げられて探触子10に装着される。なお、センサカバー38の装着機構に関しては、上記穴部35と突起部31との係合の他に、突起部31をレール型に配置し、センサカバー38にレール溝を形成しておき、センサカバー38をスライドさせて探触子10に装着させる機構でもよい。
【0026】
次に、上記探触子10を用いて穿刺を行う場合に、この探触子10に装着されて穿刺針をガイドするための穿刺ガイド20の構造を図2と図7に基づいて説明する。図2(b)は、凸状係合部16と係合する面側から見た穿刺ガイド20の斜視図を示す。図7(a)は、穿刺ガイド20とセンサカバー38とが装着された探触子10の右側面から見た斜視図を示す。穿刺ガイド20は、図7(b)に示すような穿刺針28のアタッチメント29を固定するためのガイド本体23と、ガイド本体23の両端に設置される2本のアーム21と、2本のアーム21を連結させる連結部22とを有して成る。
【0027】
ガイド本体23は、穿刺針28を支えるためのアタッチメント29を装着するための支持台27を備えている。この支持台27は、支持棒25と支点部26により、その方向が変更可能になっている。つまり、支持台27の上端に支持棒25が設けられ、ガイド本体23の上端に支持棒25を貫通させて固定するための複数の穴部が設けられており、支持棒25を貫通させる穴部が選択されることによって、支点部26を支点にして支持台27の方向が変えられるようになっている。
【0028】
支持棒25の方向を変更可能に固定する具体的機構は次の通りである。即ち、支持棒25を貫通させる穴部に支持棒25を固定するために、支持棒25の上端には、支持棒25を引っ張るバネからなる弾性体(図示しない。) が設けられている。そして、指等で支持棒25をその軸方向に引き延ばすことにより、支持棒25が穴部から外れる。その結果、支持台27の一端が支点部26により固定されているため、その支点部26を中心にして支持棒25及び支持台27が回転できるようになるので、支持棒25及び支持台27の方向が変更可能になる。支持棒25を所望の穴部に配置して引き延ばしを解除することにより、その選択された穴部に支持棒25が固定される。このようにして、支持棒25及び支持台27の方向が変えられることによって、穿刺方向が変更可能に調整される。例えば、被検体に対し鋭角に穿刺針28を挿入させる場合には、支持棒25はグリップ部13側の穴部へ挿入されて固定される。また被検体に対し鈍角に穿刺針28を挿入させる場合には、支持棒25はグリップ部13側から遠い方の穴部へ挿入されて固定される。
【0029】
アーム21は、それぞれガイド本体23の側面の一部を支点にして回転する構造になっており、2本のアームは連結部22より連結される。連結部22は、ネジでの締め付けにより固定される。連結部22のネジは、2本のアーム21のいずれか一方に設けられており、他方のアーム21に連結部22のコの字状係合部が設けられている。ネジはアーム21を軸にして回転可能になっており、コの字状係合部にネジを固定する際、ネジを回転してコの字状係合部に係合する。穿刺ガイド20は、この2本のアームが連結部22で連結されることにより、ガイド本体23と2本のアーム21と連結部22によりロ字状に形成される。なお、この連結部22を嵌め込み式構造にして、アーム21が固定されるようにしてもよい。
【0030】
また、ガイド本体23には凹状係合部24が形成されており、凹状係合部24は凸状係合部16及びその突起部17に係合するよう形成されている。穿刺ガイド20が探触子10に装着される際、凹状係合部24は凸状係合部16をガイドにして、凸状係合部16の長手方向に挿入される。そして、穿刺ガイド20が凸状係合部16及び突起部17に係合された後、2本のアーム21が探触子ヘッド部12の外周面を取り巻いて結合されることにより、穿刺ガイド20は探触子10に固定される。その際、2本のアーム21の端面が、探触子ヘッド部12とグリップ部13間の段差部5により押さえつけられることによって、穿刺ガイド20が探触子長手方向に固定される。このように、穿刺ガイド20は、凸状係合部16及び突起部17と、探触子ヘッド部12とグリップ部13間の段差部5により、探触子10の上下方向、左右方向及び表裏方向のいずれの方向にも固定されることとなる。このように探触子10に強固に固定された穿刺ガイド20により、穿刺針の方向を安定させることができる。図8に、穿刺ガイド20を装着した場合の探触子10の正面図を示す。
【0031】
次に、上記超音波探触子を備えた超音波診断装置について説明する。図9は、超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。超音波診断装置は、超音波探触子10と、超音波探触子10と接続される信号処理部50と、信号処理部50と接続される画像変換部51と、画像変換部51と接続される合成部52と、合成部52と接続される画像表示部56と、各部と接続される制御部53とを有している。さらに、RVS機能を実現するために、CT診断装置やMR診断装置や超音波診断装置のいずれかの画像診断装置54で得られた被検体のボリュームデータを記録する画像記録部55と、磁場発生部57と、超音波探触子10の3次元位置情報を検出する磁気センサ36と、磁気センサ36及び磁場発生部57と接続される位置・方向解析部58と、位置・方向解析部58及び画像記録部55と接続される座標変換部59と、座標変換部59及び画像記録部55と接続される断層画像取得部60と、を有している。なお、合成部52は座標変換部59とも接続されている。
【0032】
超音波探触子10は、上述した通り、探触子10を把持するためのグリップ部13に磁気センサ36を収容する溝32を有し、被検体に超音波を送受波する探触子ヘッド部12に穿刺ガイド20を係合して装着するための凸状係合部16を備えている。信号処理部50は、超音波探触子10から受信した受波信号を増幅し、整相する等の信号処理をする。画像変換部51は、信号処理部50から出力される受波信号を超音波画像に変換するもので、所謂デジタルスキャンコンバータと呼ばれるものである。
【0033】
合成部52は、画像変換部51により変換された超音波画像と、断層画像取得部60で取得された断層画像の少なくとも一方を表す画像を生成するものである。画像表示部56は、合成部52で生成された画像を表示する。制御部53は、上記各部を制御するCPUであり、図9においては、上記各部を制御するための接続線の図示は省略されている。磁気センサ36は、3軸直交系の磁場を検出する受信器であり、3軸直交系の磁場を発生させる磁場発生部57はベットサイドに備えられている。受信機である磁気センサ36が、磁場発生部57で設定される磁場空間内で、3次元座標空間における自身(受信器)の3次元空間内での位置及び方向を直接的に検出することによって、超音波探触子10の3次元位置及び方向が間接的に取得される。
【0034】
超音波画像診断を行う場合には、操作者は、超音波探触子10を被検体に当接し、(図示しない)送波スイッチを押下して超音波信号の送受信を開始する。信号処理部50は、超音波探触子10から受信した受波信号を増幅し、整相する等の信号処理を行う。画像変換部51は、信号処理部50から出力された受波信号を超音波画像に変換する。画像表示部56は、画像変換部51で変換された超音波画像を表示する。穿刺を行う場合は、操作者は、この超音波画像により被検体の癌細胞等の患部を見つけ、穿刺針28を被検体の体表から患部へ穿刺する。この穿刺の際に、操作者は、患部の被検体の体表からの深度に応じて、前述したように、穿刺針28の挿抜方向の位置を調整する。
【0035】
さらに、RVS機能を併用して超音波画像診断及び穿刺を行う場合について説明する。RVS機能では、リアルタイムに取得されている超音波画像の3次元位置情報を取得するために、位置・方向解析部58が、磁場発生部57に磁場を発生させると共に、磁気センサ36によって検出された信号を解析して、磁場発生部57を基準とする磁気センサ36即ち超音波探触子10の3次元位置や方向を求める。次に、座標変換部59が、位置・方向解析部58で解析された超音波探触子10の3次元位置や方向から超音波画像の断面の3次元位置や方向を求め、この超音波画像の断面に対応するボリュームデータの断面の3次元位置を求める。次に、断層画像取得部60が、座標変換部59で変換されたボリュームデータの断面位置の断層画像を、ボリュームデータから再構成する。このようにして、リアルタイムに取得されている超音波画像と同じ断面の断層画像がリファレンス画像として取得される。最後に、それらリアルタイム超音波画像とリファレンス画像の少なくとも一方を、好ましくは2つの画像を並べて画像表示部56に表示する。
【0036】
以上の様にして、被検体の特定断層位置の超音波画像の表示に際して、超音波探触子10に収容された磁気センサ36の出力を用いて超音波画像の特定断層位置に対応する位置の断層画像を画像記録部55に記録されたボリュームデータから取得する。
【0037】
なお、RVS機能を実施するための前準備として次のことを事前に実施しておく。最初に、CT診断装置、MR診断装置、超音波診断装置等の画像診断装置54により被検体を撮影して、取得されたボリュームデータを画像記録部55に記憶しておく。次に、ボリュームデータの基準座標系と超音波診断装置により撮影されている被検体の基準座標系とが、共通の座標系である標準座標系に対応付けられる。そのためには、操作者は、予め取得されたボリュームデータに基づいて再構成されたリファレンス像上で基準点を設定する。操作者は、この設定された基準点に対応する被検体の位置に超音波探触子10の位置を合わせて被検体の基準点を設定する。そして、超音波探触子10の位置が磁気センサにより検出されて、ボリュームデータ上の基準点と被検体上の基準点とが対応付けられ。このようにして、被検体の基準座標系を標準座標系に対応付けると共に、ボリュームデータの基準座標系を標準座標系に対応付ける座標系対応データが作成されて記憶される。この対応付の後の超音波診断時には、磁気センサにより検出される超音波探触子の3次元位置と方向とに基づいて撮影断面の位置と方向が求められ、この撮影断面に対応するリファレンス像がボリュームデータから抽出されて超音波画像と共に表示される。
【0038】
次に、グリップ部13に第1の磁気センサ36が収容されてセンサカバー38が装着され、探触子ヘッド部12に穿刺ガイド20が装着された、図8に示すような超音波探触子10を備えた上記超音波診断装置を用いて行われる、RVS機能を併用した穿刺について説明する。穿刺の際には、穿刺ガイド20には、穿刺針28が組み込まれた穿刺アタッチメント29が装着される。
【0039】
図10は、図8に示した様な探触子10を用いてRVS機能により得られる超音波画像と断層画像とが画像表示部56に表示される表示形態を示すものである。左側の画像は画像診断装置54のボリュームデータから得られる断層画像であり、右側の画像はリアルタイムに取得される超音波画像である。超音波画像において、破線63は鈍角に穿刺針28が挿入される場合の穿刺方向を示すガイドラインであり、破線64は鋭角に穿刺針28が挿入される場合の穿刺方向を示すガイドラインである。前述した通り、ガイド本体23に支持棒25を固定するための穴部が2箇所設けられており、いずれかの穴部に支持棒25が固定されてようになっている。この2本のガイドラインは、こられの穴部の位置及び支持棒25で設定される穿刺針28の方向に対応する位置に表示される。この超音波画像上の2本のガイドラインの位置に対応するように、ボリュームデータから得られる断層画像上の同位置にガイドラインが表示される。破線61は破線63の位置に対応するガイドラインであり、破線62は破線64の位置に対応するガイドラインである。よって、超音波画像と断層画像とからなる2つの異なる画像にガイドラインが表示されることにより、操作者は、病変部の位置を特定しやすくなり、穿刺計画を容易に立案することが可能になると共に、穿刺を容易且つ正確に行うことが可能になる。
【0040】
更に、ガイドライン上に穿刺針の先端位置を示す例を説明する。そのためには、図11に示すように、穿刺針28の先端に第2の磁気センサ70が設置される。第2の磁気センサは、第1の磁気センサ36と同様に上述した3軸直交系の磁場を検出する受信器を搭載したものである。また、第2の磁気センサも位置・方向解析部58に接続されて、第1の磁気センサ36と同様に第2の磁気センサからの信号が解析される。
【0041】
最初に、センサカバー38内に設置される第1の磁気センサ36に対する第2の磁気センサ70の3次元位置を特定する方法を説明する。第2の磁気センサ70が穿刺針28の先端に固定された後、操作者は、第2の磁気センサ70をアタッチメント29に当接する位置に配置する。そして、センサカバー38内に設置される第1の磁気センサ36に対する第2の磁気センサ70の原点位置が特定されるとともに、第2の磁気センサ70の位置、角度及び穿刺針28の長さから穿刺針28の先端位置(針先)が特定される。つまり、第2の磁気センサ70の原点が特定され、原点から針先までの位置が特定される。穿刺針28が移動した距離に応じて、第2の磁気センサ70の位置も同じ距離だけ移動するので、穿刺針28の移動距離が特定される。また、穿刺針28はアタッチメント29により1次元方向にしか移動できないため、穿刺針28の移動方向も特定される。
【0042】
位置・方向解析部58と座標変換部59は、第1の磁気センサ36と第2の磁気センサ70からの検出信号に基づいて、穿刺針28の移動距離と移動方向を3次元位置座標に換算することにより、穿刺針28のガイドラインと針先の位置を特定する。そして、座標変換部59は、穿刺針28のガイドラインと針先の位置情報を合成部52に送る。合成部52は、こられの位置情報に基づき穿刺針のガイドラインと針先の位置を画像表示部56上に表示する。
【0043】
ガイドラインの表示に関しては、図10に示されるように表示される。破線62は鈍角に穿刺針28を挿入させた場合の穿刺方向を示すガイドラインであり、破線63は鋭角に穿刺針28を挿入させた場合の穿刺方向を示すガイドラインである。穿刺針28がどの角度に設定されているかは、第2の磁気センサ70をアタッチメント29に当接する位置、つまり原点位置により選定される。このように、原点位置情報から穿刺針28の角度の設定状態が特定されるため、表示画面上には選定された方の穿刺方向のみ又は2つの穿刺方向を表示させることができる。2つのの穿刺方向を表示させる場合は、選定された方の穿刺方向と他方の穿刺方向との表示態様を異ならせても良い。
【0044】
穿刺針28のガイドラインと針先の位置の表示に関しては、図12に示されるように表示される。左側の画像は画像診断装置54のボリュームデータから得られる断層画像であり、右側の画像は超音波画像である。右側の超音波画像において、実線72は穿刺針28を挿入させた場合の穿刺針本体、点73は穿刺針28の針先を示すものである。左側の断層画像において、実線70は穿刺針28を挿入させた場合の穿刺針本体、点71は穿刺針28の針先を示すものである。第2の磁気センサ70の位置、角度及び穿刺針28の長さから穿刺針28の先端位置(針先)が特定されて、穿刺針28の針先が表示されることにより、操作者は穿刺の推移をリアルタイムに認識させることが可能になる。したがって、超音波画像と断層画像とからなる2つの異なる画像に穿刺針28及び針先が表示されることにより、操作者は、安全に穿刺処置を行うことが可能になる。
【0045】
なお、図12に示す画像上に図10のようなガイドラインを表示させてもよい。また、第2の磁気センサ70を3軸直交系の磁場を検出する受信器としたが、センサカバー38内に設置される第1の磁気センサ36に対しての位置が特定できるものであれば何でもよい。
【0046】
以上迄が、本実施形態の超音波探触子10及びこの探触子10を備えた超音波診断装置の説明であるが、超音波探触子10の特徴的構造を纏めると次の様になる。グリップ部13の左側面に磁気センサ36を備えること。探触子ヘッド部12は、グリップ部13に対し振動子部11の長手方向の一端に突出していること。突出した側の探触子ヘッド部12の上端からグリップ部13の側面(つまり右側面)に沿って、穿刺ガイド20を係合して固定するための凸状係合部16が形成されていること。グリップ部13の右側面18は、凸状係合部16が設置されない側(左側面側)に湾曲していること。すなわち、超音波探触子10の形状を左右非対称にし、グリップ部18とケーブル14の引き出し方向が、穿刺針28をガイドする側から遠ざけるように形成されていること。これらの特徴的構造により、探触子10の3次元位置検出手段を着脱自在に探触子10に装着できるようになる。また、探触子10に位置検出手段を収容しても探触子10の操作性が低下することがない。また、穿刺針28をガイドする側の空間が広くなるので、探触子10の操作性を向上させることができる。さらに、磁気センサ36,70を備えてRVS機能と併用することにより穿刺針28のガイドラインや針先を画面上に表示させることにより、穿刺処置の安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 超音波探触子、11 振動子部、12 探触子ヘッド部、13 グリップ部、14 ケーブル部、20 穿刺ガイド、28 穿刺針、38 センサカバー、61,62,63,64 穿刺ガイドライン、70 第2の磁気センサ、71 針先、73 針先
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送受波する振動子部と、前記振動子部を固定する探触子ヘッド部と、前記探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備えた超音波探触子において、
前記グリップ部は、前記超音波探触子の3次元位置情報を検出するための第1の位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記探触子ヘッド部は、前記グリップ部に対して前記振動子部の長手方向の前記溝の無い方の側に突出していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
請求項2記載の超音波探触子において、
前記探触子ヘッド部の前記溝の有る方の側は、前記グリップ部と滑らかに連結していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項2記載の超音波探触子において
前記探触子ヘッド部の短手方向の幅は、前記グリップ部の短手方向の幅より狭く形成されているとともに、前記探触子ヘッド部と前記グリップ部との境界には段差が設けられていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項5】
請求項2記載の超音波探触子において、
前記グリップ部の前記突出方向側の面は、前記突出方向と反対方向に湾曲していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項6】
請求項5記載の超音波探触子において、
前記グリップ部に接続されるケーブルは、前記探触子ヘッド部の突出方向と反対方向に引き出されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項7】
請求項2記載の超音波探触子において、
前記グリップ部には、前記溝内に収容された前記第1の位置検出手段を覆う着脱可能なカバーが装着されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項8】
請求項7記載の超音波探触子において、
前記カバーは、前記溝内に収容された前記第1の位置検出手段を覆う平面基板と、前記平面基板の両端に前記グリップ部と係合する係合板と、を有し、
前記グリップ部は、前記係合板と係合するカバー係合部を有していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項9】
請求項8記載の超音波探触子において、
前記カバーは、前記平面基板と前記グリップ部との間に隙間が形成されるように前記グリップ部に係合され、
前記係合板と前記カバー係合部とは、前記平面基板の押下による変形に基づく前記係合板の広がりにより分離されるように係合されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項10】
請求項7記載の超音波探触子において、
前記探触子ヘッド部の前記突出方向側の上端には、穿刺ガイドと係合して該穿刺ガイドを保持するための凸状係合部を備えていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項11】
請求項10記載の超音波探触子において、
前記凸状係合部の少なくとも一方の側面には、前記穿刺ガイドを前記振動子部の長手方向に固定するための突起部が形成されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項12】
請求項11記載の超音波探触子において、
前記穿刺ガイドは、前記探触子ヘッド部の凸状係合部及び前記突起部と係合する凹状係合部を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項13】
請求項12記載の超音波探触子において、前記穿刺ガイドは、
前記探触子ヘッド部の周囲に取り巻いて該穿刺ガイドを前記探触子ヘッド部に固定するためのアーム部を有し、
前記凸状係合部と係合すると共に、前記探触子ヘッド部の周囲に取り巻いたアーム部が前記探触子ヘッド部と前記グリップ部との段差により押さえられて探触子長手方向に固定されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項14】
請求項10記載の超音波探触子において、
前記穿刺ガイドは、穿刺針を支えるためのアタッチメントを着脱可能に装着するための支持台を備えていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項15】
請求項14記載の超音波探触子において、
前記穿刺ガイドは、前記支持台の方向を変えるための支持棒の配置角度を変更可能に固定するための複数の穴部を備えていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項16】
被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、
前記超音波探触子で受信した超音波信号から前記被検体の超音波画像を取得する手段と、
画像診断装置で取得された前記被検体のボリュームデータを記録する画像記録手段と、
前記超音波探触子の3次元位置情報を検出する第1の位置検出手段と、
前記第1の位置検出手段からの位置情報に基づいて、前記超音波画像の特定断層位置に対応する位置の断層画像を前記画像記録手段に記録されたボリュームデータから取得する手段と、を備えた超音波診断装置において、
前記超音波探触子は、被検体に超音波を送受波する振動子部と、前記振動子部を固定する探触子ヘッド部と、前記探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、
前記グリップ部は、前記第1の位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項17】
請求項16記載の超音波診断装置において、
前記超音波探触子に装着された穿刺ガイドのガイドにより前記被検体に挿入される穿刺針に第2の位置検出手段を備えていることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項18】
請求項16記載の超音波診断装置において、
前記超音波画像と前記断層画像の少なくとも一方を表示する表示手段を有し、
前記表示手段は、前記第1の位置検出手段と前記第2の位置検出手段からの位置情報に基づいて、前記穿刺針の移動に追従して該穿刺針の通過位置を表すガイドラインを前記超音波画像と前記断層画像の少なくとも一方に重ね合わせて表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項19】
請求項18記載の超音波診断装置において、
前記表示手段は、前記穿刺針の移動に追従して前記穿刺針の先端位置を前記超音波画像と前記断層画像の少なくとも一方に重ね合わせて表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項20】
請求項18記載の超音波探触子において、
直交3軸方向に変化する磁場発生手段を備え、
前記第1の位置検出手段と前記第2の位置検出手段は、前記3次元位置を検出する磁気センサであることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
被検体に超音波を送受波する振動子部と、前記振動子部を固定する探触子ヘッド部と、前記探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備えた超音波探触子において、
前記グリップ部は、前記超音波探触子の3次元位置情報を検出するための第1の位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記探触子ヘッド部は、前記グリップ部に対して前記振動子部の長手方向の前記溝の無い方の側に突出していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
請求項2記載の超音波探触子において、
前記探触子ヘッド部の前記溝の有る方の側は、前記グリップ部と滑らかに連結していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項2記載の超音波探触子において
前記探触子ヘッド部の短手方向の幅は、前記グリップ部の短手方向の幅より狭く形成されているとともに、前記探触子ヘッド部と前記グリップ部との境界には段差が設けられていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項5】
請求項2記載の超音波探触子において、
前記グリップ部の前記突出方向側の面は、前記突出方向と反対方向に湾曲していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項6】
請求項5記載の超音波探触子において、
前記グリップ部に接続されるケーブルは、前記探触子ヘッド部の突出方向と反対方向に引き出されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項7】
請求項2記載の超音波探触子において、
前記グリップ部には、前記溝内に収容された前記第1の位置検出手段を覆う着脱可能なカバーが装着されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項8】
請求項7記載の超音波探触子において、
前記カバーは、前記溝内に収容された前記第1の位置検出手段を覆う平面基板と、前記平面基板の両端に前記グリップ部と係合する係合板と、を有し、
前記グリップ部は、前記係合板と係合するカバー係合部を有していることを特徴とする超音波探触子。
【請求項9】
請求項8記載の超音波探触子において、
前記カバーは、前記平面基板と前記グリップ部との間に隙間が形成されるように前記グリップ部に係合され、
前記係合板と前記カバー係合部とは、前記平面基板の押下による変形に基づく前記係合板の広がりにより分離されるように係合されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項10】
請求項7記載の超音波探触子において、
前記探触子ヘッド部の前記突出方向側の上端には、穿刺ガイドと係合して該穿刺ガイドを保持するための凸状係合部を備えていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項11】
請求項10記載の超音波探触子において、
前記凸状係合部の少なくとも一方の側面には、前記穿刺ガイドを前記振動子部の長手方向に固定するための突起部が形成されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項12】
請求項11記載の超音波探触子において、
前記穿刺ガイドは、前記探触子ヘッド部の凸状係合部及び前記突起部と係合する凹状係合部を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項13】
請求項12記載の超音波探触子において、前記穿刺ガイドは、
前記探触子ヘッド部の周囲に取り巻いて該穿刺ガイドを前記探触子ヘッド部に固定するためのアーム部を有し、
前記凸状係合部と係合すると共に、前記探触子ヘッド部の周囲に取り巻いたアーム部が前記探触子ヘッド部と前記グリップ部との段差により押さえられて探触子長手方向に固定されることを特徴とする超音波探触子。
【請求項14】
請求項10記載の超音波探触子において、
前記穿刺ガイドは、穿刺針を支えるためのアタッチメントを着脱可能に装着するための支持台を備えていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項15】
請求項14記載の超音波探触子において、
前記穿刺ガイドは、前記支持台の方向を変えるための支持棒の配置角度を変更可能に固定するための複数の穴部を備えていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項16】
被検体に超音波を送受信する超音波探触子と、
前記超音波探触子で受信した超音波信号から前記被検体の超音波画像を取得する手段と、
画像診断装置で取得された前記被検体のボリュームデータを記録する画像記録手段と、
前記超音波探触子の3次元位置情報を検出する第1の位置検出手段と、
前記第1の位置検出手段からの位置情報に基づいて、前記超音波画像の特定断層位置に対応する位置の断層画像を前記画像記録手段に記録されたボリュームデータから取得する手段と、を備えた超音波診断装置において、
前記超音波探触子は、被検体に超音波を送受波する振動子部と、前記振動子部を固定する探触子ヘッド部と、前記探触子ヘッド部に連結するグリップ部と、を備え、
前記グリップ部は、前記第1の位置検出手段を取り外し可能に収容するための溝を有していることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項17】
請求項16記載の超音波診断装置において、
前記超音波探触子に装着された穿刺ガイドのガイドにより前記被検体に挿入される穿刺針に第2の位置検出手段を備えていることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項18】
請求項16記載の超音波診断装置において、
前記超音波画像と前記断層画像の少なくとも一方を表示する表示手段を有し、
前記表示手段は、前記第1の位置検出手段と前記第2の位置検出手段からの位置情報に基づいて、前記穿刺針の移動に追従して該穿刺針の通過位置を表すガイドラインを前記超音波画像と前記断層画像の少なくとも一方に重ね合わせて表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項19】
請求項18記載の超音波診断装置において、
前記表示手段は、前記穿刺針の移動に追従して前記穿刺針の先端位置を前記超音波画像と前記断層画像の少なくとも一方に重ね合わせて表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項20】
請求項18記載の超音波探触子において、
直交3軸方向に変化する磁場発生手段を備え、
前記第1の位置検出手段と前記第2の位置検出手段は、前記3次元位置を検出する磁気センサであることを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−251165(P2011−251165A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179279(P2011−179279)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【分割の表示】特願2007−538745(P2007−538745)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【分割の表示】特願2007−538745(P2007−538745)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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