説明

超音波検査方法及び超音波検査装置

【課題】基台に対する板状部材の接着状態の不良を検査すること。
【解決手段】凹部が形成された基台301及びこの基台301の凹部に係合し当該凹部の底面に接着される板状部材を有する保持テーブル3における基台に対する板状部材の接着状態を検査する超音波検査装置1において、基台301の凹部の底面と板状部材302の被接着面との接着部位に超音波を照射し、当該接着部位からの反射エコーを測定し、上記接着部位からの反射エコーを、色情報を有する画像データに変換し、この画像データの色情報に応じて板状部材302の被接着面と基台301の凹部の底面との間の接着状態の不良を判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査方法及び超音波検査装置に関し、特に、半導体ウェーハなどの被加工物を加工する加工装置に主に使用される保持テーブルの超音波検査方法及び超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、IC、LSI等の回路が複数個形成された半導体ウェーハは、個々のチップに分割される前にその裏面を研削装置によって研削して所定の厚さに形成される。半導体ウェーハの裏面を研削する研削装置については、例えば、被加工物の着脱域と研削域とに沿って回転可能に配設されたターンテーブルと、このターンテーブルに配設され、順次、研削域に移動せしめられる複数個の保持テーブルと、研削域に配設され、研削域に位置付けられた保持テーブル上に保持された被加工物を研削する研削ホイールを備えた研削手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−86048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような研削装置において、保持テーブルは、一般的に基台とこの基台に係合する多孔質材料からなる板状部材とを有し、板状部材を基台に接着剤等により固定した状態で利用される。しかしながら、基台に対する板状部材の接着が十分でない場合には、研削加工中に基台から板状部材が剥離する事態が生じる場合があった。この場合、被加工物に対する加工精度が劣化し、被加工物を所望の厚さに形成することができないという不具合が生じ得る。
【0005】
従来、このような基台に対する板状部材の剥離を検査する手法として、所謂、音感検査が行われている。この音感検査は、セラミック製の棒状部材で基台に接着された板状部材を軽く叩き、反響する音の高低によって板状部材の接着状態を判定するものである。この音感検査においては、基台に対する板状部材の接着状態を予測することができるものの、板状部材の接着状態の不良を検査することはできない。このため、音感検査により接着状態が良好と判定された場合においても、研削加工中に基台から板状部材が剥離してしまう事態が生じている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、基台に対する板状部材の接着状態の不良を検査することができる超音波検査方法及び超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波検査方法は、凹部が形成された基台及びこの基台の凹部に係合し当該凹部の底面に接着される板状部材を有する保持テーブルにおける前記基台に対する前記板状部材の接着状態を検査する超音波検査方法であって、前記凹部の底面と前記板状部材の被接着面との接着部位に超音波を照射し、当該接着部位からの反射エコーを測定する超音波測定工程と、前記接着部位からの反射エコーを、色情報を有する画像データに変換する画像処理工程と、前記画像データの色情報に応じて前記被接着面と前記底面との間の接着状態の不良を判定する判定工程とを具備することを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、基台の凹部の底面と板状部材の被接着面との接着部位からの反射エコーが色情報を有する画像データに変換され、この画像データの色情報に応じて被接着面と凹部の底面との間の接着状態の不良が判定されることから、板状部材の被接着面と基台の凹部の底面との間の接着状態を具体的に把握することができるので、基台に対する板状部材の接着状態の不良を検査することが可能となる。
【0009】
上記超音波検査方法においては、前記判定工程において、前記被接着面の面積を複数の領域に分割し、当該領域の一定数の全域が前記画像データにおける特定の色情報で満たされた場合に前記被接着面と前記底面との間の接着状態が不良であると判定する。
【0010】
また、上記超音波検査方法においては、前記判定工程において、前記画像データにおける特定の色情報の面積が前記被接着面の面積の一定範囲を上回る場合に前記被接着面と前記底面との間の接着状態が不良であると判定する。
【0011】
本発明の超音波検査装置は、凹部が形成された基台及びこの基台の凹部に係合し当該凹部の底面に接着される板状部材を有する保持テーブルにおける前記基台に対する前記板状部材の接着状態を検査する超音波検査装置であって、前記凹部の底面と前記板状部材の被接着面との接着部位に超音波を照射し、当該接着部位からの反射エコーを測定する超音波測定手段と、前記接着部位からの反射エコーを、色情報を有する画像データに変換する画像処理手段と、前記画像データの色情報に応じて前記被接着面と前記底面との間の接着状態の不良を判定する判定手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、基台の凹部の底面と板状部材の被接着面との接着部位からの反射エコーが色情報を有する画像データに変換され、この画像データの色情報に応じて被接着面と凹部の底面との間の接着状態の不良が判定されることから、板状部材の被接着面と基台の凹部の底面との間の接着状態を具体的に把握することができるので、基台に対する板状部材の接着状態の不良を検査することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基台の凹部の底面と板状部材の被接着面との接着部位からの反射エコーが色情報を有する画像データに変換され、この画像データの色情報に応じて被接着面と凹部の底面との間の接着状態の不良が判定されることから、板状部材の被接着面と基台の凹部の底面との間の接着状態を具体的に把握することができるので、基台に対する板状部材の接着状態の不良を検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る超音波検査方法が適用される超音波検査装置の一例を示す模式図である。
【図2】上記実施の形態に係る超音波検査装置で検査される保持テーブルの分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る超音波検査装置で検査される保持テーブルの外観斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係る超音波検査装置で検査される保持テーブルの側断面図である。
【図5】上記実施の形態に係る超音波検査装置に検出される反射エコーとゲートとの関係を示すタイミングチャートである。
【図6】上記実施の形態に係る超音波検査装置で検出される反射エコーを画像処理した映像を示す図である。
【図7】上記実施の形態に係る超音波検査装置において、保持テーブルの基台に対する板状部材の接着状態の不良を判定する際の処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係る超音波検査方法について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る超音波検査方法は、被加工物としての半導体ウェーハを加工する加工装置において、半導体ウェーハを保持する保持テーブルの構成部材の接着状態を検査するものである。半導体ウェーハを加工する加工装置については、代表的なものとして、個々のチップに分割される前にその裏面を研削する研削装置や、個々のチップに分割する切削装置などが該当するが、これに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る超音波検査方法が適用される超音波検査装置1の一例を示す模式図である。図1に示すように、超音波検査装置1は、超音波センサ201を有し、これを被検体である保持テーブル3上の任意の位置に移動可能な走査装置2を備えている。この走査装置2においては、試料ステージ202に立設された一対の支柱203に3軸スキャナ204が設けられ、この3軸スキャナ204の先端に超音波センサ201が取り付けられている。3軸スキャナ204は、後述する駆動装置6から駆動力の供給を受け、図1に示すX、Y、Zの各軸方向に超音波センサ201を移動させることができる。超音波センサ201は、音響レンズを含み、その先端が保持テーブル3の表面に臨むように設置され、3軸スキャナ204により走査移動可能に構成されている。保持テーブル3は、試料ステージ202上の台座205の上に配置されている。保持テーブル3は、通常、超音波伝播媒体である水の中に配置されるが、図1においては、その構成については省略している。
【0017】
ここで、被検体である保持テーブル3の構成について図2及び図3を用いて説明する。図2及び図3は、それぞれ本実施の形態に係る超音波検査装置1で検査される保持テーブル3の分解斜視図及び外観斜視図である。図2に示すように、保持テーブル3は、上面に凹部301aを有する基台301と、この基台301の凹部301aに収納される板状部材302とから構成されている。基台301は、円盤形状を有し、その上面の略全域に円形状の凹部301aが形成されている。凹部301aの底面には、上述したような加工装置に装備される不図示の負圧発生手段に連通する吸引口301bが形成されている。ここでは、説明の便宜上、吸引口301bを1つだけ示しているが、一般的には複数の吸引口301bが形成されている。これらの吸引口301bを繋げる溝部が形成されることもある。板状部材302は、基台301の凹部301aに係合する円盤形状を有し、例えば、多孔質材料で形成される(ポーラス)。板状部材302は、接着剤等によりその下面で構成される被接着面で凹部301aの底面に接着固定される。
【0018】
このように板状部材302が凹部301aに接着された状態において、保持テーブル3は、図3に示すように、基台301の上面と板状部材302の上面とが同一平面上に配置された円盤形状に構成されるものとなっている(図4参照)。上述したような加工装置において、半導体ウェーハは、保持テーブル3(より具体的には、板状部材302の露出面)上に載置され、基台301の吸引口301b及び板状部材302を介して発生される負圧により吸引保持されるものとなっている。本実施の形態に係る超音波検査装置1は、このように半導体ウェーハを吸引保持する保持テーブル3を検査対象とするものである。
【0019】
図1に戻り、超音波検査装置1の構成の説明を続ける。超音波測定装置4は、超音波測定手段として機能するものであり、超音波パルサ401、超音波レシーバ402及び超音波ディテクタ403を有している。超音波パルサ401は、超音波を送信するために超音波センサ201にパルス状の電圧を印加する。この電圧印加により超音波センサ201は、保持テーブル3に超音波を照射する。照射された超音波は、保持テーブル3の表面や、基台301と板状部材302との接着部位などで反射し、反射波(反射エコー)となって超音波センサ201に戻る。超音波センサ201は、この反射エコーを電圧信号に変換し、超音波レシーバ402に送る。超音波レシーバ402は、超音波センサ201から入力された電圧信号を増幅し、超音波ディテクタ403に送出する。超音波ディテクタ403は、検出対象となる反射エコーの時間指定を行うゲートを設定し、このゲート内にある反射エコーの強度を測定する。ここで、本実施の形態に係る超音波ディテクタ403においては、保持テーブル3の基台301と板状部材302との接着部位からの反射エコーを検出するゲートを設定している。超音波ディテクタ403で測定された反射エコーの強度は、測定データとして制御装置5に送出される。
【0020】
制御装置5は、装置全体の制御を行う。具体的には、駆動装置6を介して走査装置2の3軸スキャナ204を駆動し、超音波センサ201を測定ピッチにより走査移動させる。また、制御装置5は、超音波測定装置4(より具体的には、超音波ディテクタ403)を経由して得られた測定データを取り込み、画像処理装置7に送出する。さらに、制御装置5は、詳細について後述するように、画像処理装置7にて測定データから変換された画像データの色情報に応じて、保持テーブル3の板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態の不良を判定する。すなわち、制御装置5は、超音波検査装置1における判定手段を構成するものである。なお、この保持テーブル3における接着状態の不良の判定手法については後述する。
【0021】
駆動装置6は、3軸スキャナ204に内蔵される各軸のモータを動作させる。これにより、駆動装置6は、保持テーブル3の上面において、例えば、所定の測定ピッチ(例えば、数100μm〜1.0mm程度)で図1に示すX軸方向に配列された測定点と、Y軸方向に配列された測定点とに沿って超音波センサ201を走査移動させることができるものとなっている。なお、超音波センサ201の測定ピッチについては、これに限定されるものではなく、被検体である保持テーブル3の寸法等に応じて適宜変更が可能である。
【0022】
画像処理装置7は、画像処理手段として機能するものであり、制御装置5から入力された測定データを、色情報を有する画像データに変換する。そして、変換後の画像データを制御装置5に送出する。この色情報を有する画像データへの変換には、測定データに含まれる保持テーブル3からの反射エコーの強度が利用される。画像処理装置7においては、反射エコーの強度に複数の閾値を予め設定しておき、これらの閾値との比較により色情報を決定する。画像データは、このように決定される各測定点における反射エコーに応じた色情報の集合体として構成される。例えば、制御装置5から入力された測定データは、複数諧調(例えば、256諧調)のRGB情報を有する画像データに変換される。このように画像処理装置7により変換された画像データの色情報は、制御装置5にて保持テーブル3における接着状態の判定処理に利用される。
【0023】
表示装置8は、制御装置5の制御の下、画像処理装置7にて測定データから変換された画像データ、並びに、制御装置5から入力された保持テーブル3における接着状態の不良の判定結果を表示する。このように色情報を有する画像データ及び保持テーブル3における接着状態の不良の判定結果を表示装置8に表示することにより、検査者における確認作業の負担を軽減することができるものとなっている。なお、表示装置8における表示内容については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、色情報を有する画像データのみ、或いは、保持テーブル3における接着状態の不良の判定結果のみを表示するようにしても良い。
【0024】
印刷装置9は、制御装置5の制御の下、画像処理装置7にて測定データから変換された画像データを紙媒体に出力する。画像データが印刷された紙媒体は、例えば、スキャナ等の取込手段を装備する検査装置で取り込まれ、保持テーブル3における接着状態の不良の判定処理に供される。この場合における判定手法については、本実施の形態に係る超音波検査装置1の制御装置5における判定手法と共通化させることが可能である。このように印刷装置9で測定データから変換された画像データを紙媒体に出力する場合には、超音波検査装置1を管理する検査者と異なる第三者に保持テーブル3における接着状態の不良の判定処理を委ねることができるものとなっている。このような第三者における判定処理と、超音波検査装置1における判定処理とを照合することも可能である。この場合には、複数回に亘って保持テーブル3における接着状態の不良を判定することから、より高精度にその接着状態の不良を判定することが可能である。
【0025】
ここで、本実施の形態に係る超音波検査装置1の超音波測定装置4で得られる反射エコーの内容について図4及び図5を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係る超音波検査装置1で検査される保持テーブル3の側断面図である。図5は、本実施の形態に係る超音波検査装置1に検出される反射エコーとゲートとの関係を示すタイミングチャートである。なお、図5においては、説明の便宜上、保持テーブル3の表面からの反射エコー(E1、E3)を示している。
【0026】
図4においては、板状部材302を基台301に接着する接着剤303が適切に充填されている接着部位Aと、接着剤303が適切に充填されていない接着部位Bとに超音波を照射し、その反射エコーを検出する場合について示している。なお、ここでは、接着部位Bに接着剤303が充填されておらず、基台301の凹部301aの底面と、板状部材302の被接触面との間に空洞が形成されている場合について示している。また、図4においては、説明の便宜上、接着部位Aに超音波を照射している時点の超音波センサ201を「超音波センサ201A」と示し、接着部位Bに超音波を照射している時点の超音波センサ201を「超音波センサ201B」と示している。さらに、図4において、超音波センサ201Aから接着部位Aに向かう矢印A1は、超音波センサ201Aから照射される超音波を示し、接着部位Aから超音波センサ201Aに向かう矢印A2は、接着部位Aから戻る反射エコーを示している。同様に、超音波センサ201Bから接着部位Bに向かう矢印B1は、超音波センサ201Bから照射される超音波を示し、接着部位Bから超音波センサ201Bに向かう矢印B2は、接着部位Bから戻る反射エコーを示している。
【0027】
上述のように、超音波センサ201が保持テーブル3に超音波を照射すると、照射された超音波は、保持テーブル3の表面や、基台301と板状部材302との接着部位で反射し、反射エコーとなって超音波センサ201に戻るものとなっている。この場合、後者の反射エコーは、基台301の凹部301aの底面と、板状部材302の被接着面との間の接着状態に応じて変化する。すなわち、接着部位Aに超音波を照射する場合に検出される反射エコーと、接着部位Bに超音波を照射する場合に検出される反射エコーとは、その反射エコーの強度が異なってくる。本実施の形態に係る超音波検査装置1においては、このような基台301と板状部材302との接着状態に応じた反射エコーの強度の相違を利用して、その接着状態の不良を判定するものである。
【0028】
図5(a)においては、接着部位Aに超音波を照射した場合に検出される反射エコーの強度の一例を示しており、図5(b)においては、接着部位Bに超音波を照射した場合に検出される反射エコーの強度の一例を示している。図5(a)において、反射エコーE1は、保持テーブル3の表面からの反射エコーを示し、反射エコーE2は、接着部位Aからの反射エコーを示している。同様に、図5(b)において、反射エコーE3は、保持テーブル3の表面からの反射エコーを示し、反射エコーE4は、接着部位Bからの反射エコーを示している。図5(a)、(b)に示すように、超音波ディテクタ403においては、保持テーブル3の基台301と板状部材302との接着部位からの反射エコーを検出するゲートGを設定していることから、当該接着部位からの反射エコーのみ検出することができるものとなっている。
【0029】
接着部位Aからの反射エコーE2と、接着部位Bからの反射エコーE4とは、境界面を形成する媒質が相違することから、反射エコーの強度が変化することとなる。すなわち、接着部位Aにおいては、板状部材302と接着剤303や、基台301と接着剤303により境界面が形成される一方、接着部位Bにおいては、空洞部(保持テーブル3が水の中に配置された場合は水で満たされる)と基台301や、空洞部と板状部材302や空洞部と接着剤303により境界面が形成される。ここでは、空洞部が介在する接着部位Bからの反射エコーE4の強度の方が、接着部位Aからの反射エコーE2の強度よりも強くなるものとする。超音波ディテクタ403は、超音波センサ201における各測定点において、このような反射エコーの強度を含む測定データを制御装置5に送出する。この測定データは、画像処理装置7に送出され、例えば、保持テーブル3上の全ての測定点における測定データが蓄積された後、色情報を有する画像データに変換される。なお、色情報を有する画像データに変換するタイミングについては、一定数の測定点における測定データが蓄積された後であっても良い。
【0030】
画像処理装置7においては、例えば、検出された反射エコーの強度と、図5に示す閾値S1、S2との比較により色情報が決定される。例えば、反射エコーの強度が閾値S1よりも小さい場合には、その測定点における色情報が「青色」に決定される。また、反射エコーの強度が閾値S1よりも大きく、閾値S2よりも小さい場合には、その測定点における色情報が「黄色」に決定される。さらに、反射エコーの強度が閾値S2よりも大きい場合には、その測定点における色情報が「赤色」に決定される。ここでは、2つの閾値S1、S2に基づいて画像データにおける色情報を決定する場合について示しているが、閾値の値及び数については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0031】
以下、このように青色、黄色及び赤色に色情報が決定された場合の画像データの一例について示す。図6(a)、(b)は、保持テーブル3からの全ての測定点における反射エコーに応じて変換された画像データの一例を示す図である。図6(a)、(b)に示すように、画像処理装置7により変換された色情報を有する画像データにおいては、保持テーブル3の周縁部に配置された、基台301に対応する部分311が青色とされ、基台301と板状部材302との接着状態が良好な部分(以下、「接着良好部分」という)312が黄色とされ、接着状態が不良な部分(以下、「接着不良部分」という)313が赤色とされる。すなわち、図6(a)に示す画像データにおいては、基台301と板状部材302との接着部位における右方側部分が広範囲に亘って接着不良部分を構成し、図6(b)に示す画像データにおいては、基台301と板状部材302との接着部位における中央位置よりも僅かに右方側部分の一部が接着不良部分を構成していることが分かる。
【0032】
このように変換された色情報を有する画像データは、制御装置5に送出され、基台301に対する板状部材302の接着状態の不良が判定される。ここで、制御装置5における基台301に対する板状部材302の接着状態の不良の判定手法について説明する。本実施の形態に係る超音波検査装置1においては、観点の異なる2つの判定手法(第1、第2の判定手法)を用いる。第1の判定手法は、基台301と板状部材302との接着部位の面積(以下、「接着部位全面積」という)における接着不良部分の割合から基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定するものである。第2の判定手法は、基台301と板状部材302との接着部位に集中的に接着不良部分が存在する箇所の有無から基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定するものである。ここでは、第1、第2の判定手法の説明にそれぞれ図6(a)、(b)に示す画像データを用いるものとする。なお、以下に説明する制御装置5における判定手法は一例を示すものであり、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。また、これらの判定手法で採用される閾値についても、特定の値に限定されるものではなく、任意の閾値に置換することや一定の幅をもたせることが可能である。
【0033】
第1の判定手法においては、接着部位全面積を予め記憶しておき、画像処理装置7から取り込んだ画像データにおける赤色で示される接着不良部分の面積が接着部位全面積の一定範囲を上回る場合に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態が不良であると判定される。例えば、第1の判定手法においては、接着不良部分の面積が接着部位全面積の50%の範囲を上回る場合に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態が不良であると判定される。第1の判定手法においては、接着部位全面積と赤色で示される接着不良部分の面積との比較によって板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態の不良を判定できるので、比較的簡単な処理で基台301の凹部301aの底面との間の接着状態を検査することが可能となる。
【0034】
一方、第2の判定手法においては、接着部位全面積を方形状の複数領域に分割し(図6(b)に示す分割領域DA)、これらの分割領域DAの一定数の全域が、接着不良部分を示す赤色で満たされている場合に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態が不良であると判定される。分割領域DAは、例えば、直径300〜320mmの板状部材302に対して、一辺が10〜20mm程度、さらに好ましくは14mm程度の正方形状に設定されるが、これらの寸法及び形状についてはこれに限定されるものではない。例えば、第2の判定手法においては、分割領域DAの1つの全域が赤色で満たされている場合に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態が不良であると判定される。第2の判定処理においては、接着部位全面積を複数領域に分割した分割領域DAにおける接着不良部分の発生を基準に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態の不良を判定できるので、第1の判定手法に比べてより高精度に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態を検査することが可能となる。
【0035】
制御装置5においては、これらの第1、第2の判定手法の両方に従って基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定し、いずれか一方の判定手法において接着状態の不良を検出した場合には、その保持テーブルを不具合品と判定する。第1の判定処理のみに従って基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定する場合には、接着部位全面積における接着不良部分の全体的な割合では良品と判定されるものであっても、集中的に接着不良部分が存在し、その接着不良部分を起点に不具合が生じ得る可能性が高い保持テーブル3を見落とす可能性がある。一方、第2の判定処理のみに従って基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定する場合には、集中的に接着不良部分が存在せず、特に接着状態が弱い部分が無かったとしても、全体として接着不良部分が存在し、長期間使用することによって基台301と板状部材302との接着状態を維持できなくなる可能性が高い保持テーブル3を見落とす可能性がある。このため、制御装置5においては、観点の異なる2つの判定手法に従って保持テーブル3における接着状態を検査することで、漏れなく不具合品としての保持テーブル3を検出することが可能となる。
【0036】
次に、本実施の形態に係る超音波検査装置1において、保持テーブル3の基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定する際の処理について図7を用いて説明する。図7は、本実施の形態に係る超音波検査装置1において、保持テーブル3の基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定する際の処理を説明するためのフロー図である。なお、図7においては、保持テーブルからの反射エコーに応じた画像データと共に、判定結果を表示装置8に表示する場合のフローについて示している。
【0037】
例えば、本実施の形態に係る超音波検査装置1の試料テーブル202に被検体である保持テーブル3が載置され、不図示の操作手段から検査の開始が指示されると、図7に示すフローが実行される。具体的には、操作手段から検査の開始が指示されると、制御装置5により駆動装置6を介して、3軸スキャナ204に取り付けられた超音波センサ201を所望の測定点に対応する位置に駆動する駆動処理が行われる(ステップ(以下「ST」と略す)101)。なお、検査の開始が指示された時点においては、超音波センサ201が検査の初期位置に駆動される。このとき、超音波センサ201は、図1に示すZ軸方向(すなわち、保持テーブル3に対向する距離)の位置調整が行われる。
【0038】
駆動処理により所望の測定点に対応する位置に超音波センサ201が駆動されると、制御装置5により超音波測定装置4を介して、保持テーブル3の当該測定点における反射エコーの強度を測定する超音波測定処理が行われる(ST102)。この超音波測定処理においては、上述したように、超音波測定装置4により超音波センサ201から超音波を保持テーブル3に照射させる一方、保持テーブル3からの反射エコーに応じた電圧信号を受信し、保持テーブル3の基台301と板状部材302との接着部位からの反射エコーの強度が測定される。測定された当該測定点における反射エコーの強度は、測定データとして制御装置5に送出される。なお、この超音波測定処理は、超音波測定工程に対応する。
【0039】
現在の測定点における超音波測定処理が終了すると、制御装置5により保持テーブル3上の全ての測定点に対する走査が終了したかが判定される(ST103)。ここで、保持テーブル3上の全ての測定点とは、図1に示すX軸方向に配列された全ての測定点、Y軸方向に配列された全ての測定点をいう。全ての測定点に対する走査が終了していない場合には、処理がST101に戻され、再び駆動処理、超音波測定処理が実行されることとなる。このST101〜ST103の処理は、全ての測定点に対する走査が終了するまで繰り返される。
【0040】
そして、ST101〜ST103を繰り返すうちに、ST103で全ての測定点に対する走査が終了したと判定されると、制御装置5により画像処理装置7を介して、反射エコーの強度を、色情報を有する画像データに変換する画像変換処理が行われる(ST104)。画像変換処理においては、例えば、図5に示した閾値S1、S2に従って、各測定点における反射エコーに対応する色情報が決定され、この色情報の集合体である画像データに測定データが変換されることとなる。この画像変換後の画像データは、制御装置5に送出される。なお、この画像変換処理は、画像処理工程に対応する。
【0041】
画像変換後の画像データを取り込むと、制御装置5において、当該画像データの色情報に応じて基台301の凹部301aの底面と、板状部材302の被接着面との間の接着状態の不良を判定する判定処理が行われる(ST105)。判定処理においては、上述した第1、第2の判定処理のいずれかが選択される。また、これらの第1、第2の判定処理を組み合わせても良い。この判定処理により、基台301の凹部301aの底面と、板状部材302の被接着面との間の接着状態の不良が具体的に把握されることとなる。なお、この判定処理は、判定工程に対応する。
【0042】
判定処理が行われた後、制御装置5により表示装置8を介して、ST104の画像変換処理で得られた画像データ、並びに、ST105の判定処理により得られた判定結果を表示する表示処理が行われる(ST106)。この場合、例えば、画像データとして、図6(a)に示すような色情報を有する画像データが表示されると共に、判定結果として、基台301の凹部301aの底面と、板状部材302の被接着面との間の接着状態の不良が発生している旨のメッセージが表示される。なお、判定結果の内容については、このようなメッセージに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、接着状態の不良の割合を表示したり、「接着OK」、「接着NG」などの情報のみを表示したりすることも可能である。なお、この表示処理は、画像データ及び判定結果を表示手段に出力する出力工程に対応する。
【0043】
なお、保持テーブルからの反射エコーに応じた画像データを紙媒体に印刷し、この紙媒体を取り込んで他の検査装置で保持テーブル3における接着状態の不良を判定する場合には、上述したST104の画像変換処理に続いて、画像変換された画像データを紙媒体に印刷出力する出力工程が行われる一方、他の検査装置でこの紙媒体を取り込む取込工程と、ST105の判定処理と同等の判定処理とが行われることで実現される。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る超音波検査方法においては、保持テーブル3の基台301の凹部301aの底面と、板状部材302の被接着面との接着部位からの反射エコーを、色情報を有する画像データに変換し、この画像データの色情報に応じて被接着面と凹部301aの底面との間の接着状態の不良を判定するようにしたことから、板状部材302の被接着面と基台301の凹部301aの底面との間の接着状態を具体的に把握することができるので、基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を検査することが可能となる。
【0045】
例えば、本実施の形態に係る超音波検査方法においては、第1の判定手法において、画像データにおける赤色で示される接着不良部分の面積が接着部位全面積の一定範囲を上回る場合に板状部材302の被接着面と基台301の凹部301aの底面との間の接着状態が不良であると判定していることから、接着部位全面積と赤色で示される接着不良部分の面積との比較によって板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態の不良を判定できるので、比較的簡単な処理で基台301の凹部301aの底面との間の接着状態を検査することができるものとなっている。
【0046】
また、本実施の形態に係る超音波検査方法においては、第2の判定手法において、接着部位全面積を複数領域に分割した分割領域DAの1つの全域が赤色で満たされている場合に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態が不良であると判定していることから、分割領域DAにおける接着不良部分の発生を基準に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態の不良を判定できるので、第1の判定手法に比べてより高精度に板状部材302の被接着面と、基台301の凹部301aの底面との間の接着状態を検査することができるものとなっている。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0048】
例えば、上記実施の形態に係る超音波検査方法においては、制御装置5が、第1、第2の判定手法を両方に従って基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定する場合について説明しているが、制御装置5における接着状態の不良の判定については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、第1、第2の判定手法のいずれかに従って基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定するようにしても良い。このように変更した場合においても、基台301に対する板状部材302の接着状態の不良に起因する保持テーブル3の不具合品を検出することが可能である。しかしながら、より高精度な不具合品の検出を実現する場合には、上記実施の形態に従って基台301に対する板状部材302の接着状態の不良を判定することが好ましい。
【0049】
また、上記実施の形態に係る超音波検査方法においては、板状部材302として、多孔質材料で形成される場合について例示しているが、保持テーブル3が備える板状部材302の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、ガラス材料で形成される板状部材302を備えるようにしても良い。このように板状部材302の構成を変更する場合にも、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、基台に対する板状部材の接着状態の不良を検査することができるという効果を有し、特に、半導体ウェーハなどの被加工物を所定位置に保持する保持テーブルを装備した加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 超音波検査装置
2 走査装置
201 超音波センサ
202 試料テーブル
203 支柱
204 3軸スキャナ
205 台座
3 保持テーブル
301 基台
301a 凹部
301b 吸引口
302 板状部材
303 接着剤
4 超音波測定装置
401 超音波パルサ
402 超音波レシーバ
403 超音波ディテクタ
5 制御装置
6 駆動装置
7 画像処理装置
8 表示装置
9 印刷装置
E1〜E4 反射エコー
S1、S2 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された基台及びこの基台の凹部に係合し当該凹部の底面に接着される板状部材を有する保持テーブルにおける前記基台に対する前記板状部材の接着状態を検査する超音波検査方法であって、
前記凹部の底面と前記板状部材の被接着面との接着部位に超音波を照射し、当該接着部位からの反射エコーを測定する超音波測定工程と、前記接着部位からの反射エコーを、色情報を有する画像データに変換する画像処理工程と、前記画像データの色情報に応じて前記被接着面と前記底面との間の接着状態の不良を判定する判定工程とを具備することを特徴とする超音波検査方法。
【請求項2】
前記判定工程において、前記被接着面の面積を複数の領域に分割し、当該領域の一定数の全域が前記画像データにおける特定の色情報で満たされた場合に前記被接着面と前記底面との間の接着状態が不良であると判定することを特徴とする請求項1記載の超音波検査方法。
【請求項3】
前記判定工程において、前記画像データにおける特定の色情報の面積が前記被接着面の面積の一定範囲を上回る場合に前記被接着面と前記底面との間の接着状態が不良であると判定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の超音波検査方法。
【請求項4】
凹部が形成された基台及びこの基台の凹部に係合し当該凹部の底面に接着される板状部材を有する保持テーブルにおける前記基台に対する前記板状部材の接着状態を検査する超音波検査装置であって、
前記凹部の底面と前記板状部材の被接着面との接着部位に超音波を照射し、当該接着部位からの反射エコーを測定する超音波測定手段と、前記接着部位からの反射エコーを、色情報を有する画像データに変換する画像処理手段と、前記画像データの色情報に応じて前記被接着面と前記底面との間の接着状態の不良を判定する判定手段とを具備することを特徴とする超音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−53126(P2011−53126A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203349(P2009−203349)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】