説明

超音波洗浄装置

【課題】高い洗浄能力を有する超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄槽内の液体に超音波振動を印加して、洗浄槽内の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置30において、洗浄槽31に取り付けられ、入力される電気信号に基づいて機械的振動を発生させる振動子32と、振動子32へ出力する電気信号を、商用電源から入力された交流波形から生成する駆動回路34とを具備し、駆動回路34は、商用電源から入力された交流波形を整流する整流回路部40と、整流回路部40で整流された波形を平滑する平滑回路部41と、平滑回路部41で平滑された直線状の波形に対し、極性の変化が無い所定形状の波形を生成する波形生成部38と、波形生成部38によって生成された波形をスイッチングして所定の周波数を有する極性の変化がある電気信号に変換する電力増幅部42とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄槽内の液体に超音波振動を印加して、洗浄槽内の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動を洗浄槽内の液体に加えることにより、洗浄槽内の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置が、従来より良く知られている。
超音波洗浄装置では、交流電源から入力された交流電圧を、AC/DCコンバータで直流電圧に変換し、この直流電圧を所定の電圧値にした後、インバータによって所定の周波数の高周波電圧に変換される。
そして、生成された高周波の電気信号は振動子に入力される。振動子は洗浄槽に設けられており、高周波の電気信号に基づく機械的振動を生じる。これにより、洗浄槽内の液体に超音波振動が発生し、被洗浄物の洗浄が行える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−290940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来からの超音波洗浄装置では、交流電源から振動子を駆動するための高周波の電気信号を生成するのが一般的である。
ところで、超音波洗浄装置においては、汚れがこびりついているものや形状が複雑なものについては、汚れが落ちにくい場合もあり、さらに高い洗浄能力が求められているという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、高い洗浄能力を有する超音波洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる超音波洗浄装置によれば、洗浄槽内の液体に超音波振動を印加して、洗浄槽内の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置において、洗浄槽に取り付けられ、入力される電気信号に基づいて機械的振動を発生させる振動子と、振動子へ出力する電気信号を、商用電源から入力された交流波形から生成する駆動回路とを具備し、駆動回路は、商用電源から入力された交流波形を整流する整流回路部と、整流回路部で整流された波形を平滑する平滑回路部と、平滑回路部で平滑された直線状の波形に対し、極性の変化が無い所定形状の波形を生成する波形生成部と、波形生成部によって生成された波形をスイッチングして所定の周波数を有する極性の変化がある電気信号に変換する電力増幅部とが設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、例えば、平滑された波形を極性の変化が無い三角波、鋸波、あるいは正弦波を全波整流した波形などに成形し、この波形をスイッチングして極性の変化がある電気信号に変換して、この電気信号が振動子に入力される。したがって、一定振幅の超音波振動ではなく、より洗浄能力が高い振動を生じさせる電気信号を発生させることができ、洗浄能力が高い超音波洗浄装置を提供できる。
【0007】
また、前記波形生成部は、商用電源における周波数に依存せずに所定形状の波形の周波数の設定が可能であることを特徴としている。
従来であれば商用電源が50Hzまたは60Hzのいずれかによって洗浄能力が異なっていたのであるが、この構成によれば商用電源の周波数にかかわらずに振動子に入力する電気信号を生成するので、商用電源の周波数が異なる地域であっても一定の洗浄能力を確保できる。
【0008】
さらに、前記波形生成部は、商用電源から入力された波形の波高を変更可能であることを特徴としてもよい。
【0009】
なお、前記商用電源から入力された波形の力率補正をする力率補正部と、前記整流回路部と、前記平滑回路部とが一体に構成されたPFCコンバータを備えることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波洗浄装置によれば、より洗浄能力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1に、超音波洗浄装置のブロック図を示す。
超音波洗浄装置30は、洗浄用の液体と被洗浄物が浸漬される洗浄槽31を備えており、洗浄槽31の底部31aに振動子32を有している。また、超音波洗浄装置30は、振動子32を駆動するための駆動回路34を備えている。
振動子32は、駆動回路34からの電気信号が入力され、この電気信号に基づいて機械的な振動を発生させる機能を有している。
【0012】
以下、振動子32を駆動させる駆動回路34の構成について説明する。
駆動回路34は、商用電源から入力された交流100Vまたは200V(50Hzまたは60Hz)から、所定の周波数の電気信号を生成して振動子32に供給するものである。
駆動回路34には、商用電源から入力された交流100Vまたは200V(50Hzまたは60Hz)を整流する整流回路部40が設けられている。整流回路部40は、ダイオードブリッジ回路などから構成され、入力された交流を全波整流する。
【0013】
整流回路部40の後段には、平滑回路部41が設けられている。平滑回路部41は、主として大容量のコンデンサ等が採用される。平滑回路部41によって、全波整流された波形が平滑されて滑らかな直流波形となる。
【0014】
平滑回路部41の出力側には、波形生成部38が接続されている。波形生成部38は、入力された平滑後の直流波形を、様々な波形形状(極性変化が無い)に変換する機能を有している。
例えば、波形生成部38は、平滑後の波形から、三角波の波形を生成したり、鋸波の波形を生成したり、正弦波を全波整流した形状の波形を生成する。このような波形の生成には、パルス変調回路(PWM(Pulse Width Modulation)インバータ)等を採用することができる。
【0015】
さらに波形生成部38は、波形の成形の他に、周波数の変更、波高の変更などを実行できるように設けられているとよい。波形生成部38における周波数の変更および波高の変更については、上述したパルス変調回路等を採用することができる。また、波高を変更することによって、振動子32からの超音波出力の調整も可能となる。
【0016】
また、波形生成部38は、生成した波形の一部が欠けたような波形を生成可能であるとよい。例えば、図3に示すように、正弦波を全波整流した波形のうち1つの波形部分の前半を休止期間(0V)となるような波形を生成してもよい。
【0017】
このように、電力増幅部42へ入力される波形における周波数の変更、波高の変更を実施できるようにすれば、入力される商用電源の周波数や電圧値にかかわらず、安定した洗浄が可能となる。
【0018】
波形生成部38の後段には、電力増幅部42が設けられている。電力増幅部42では、整流された電圧を所定の周波数となるようにスイッチングして極性変化のある電気信号を出力する機能を有している。電力増幅部42は、後述する制御部46によってそのスイッチング周波数が制御される。
電力増幅部42の後段には、位相補正部44が設けられている。位相補正部44は、振動子32のリアクタンス成分による位相のズレを補正するものである。
【0019】
続いて、図2に基づいて、制御部46について説明する。
制御部46は、超音波洗浄装置30全体の動作を制御可能に設けられている。そして、制御部46によって、波形生成部38の制御と、振動子32の発振周波数のスイープ等の制御をすることができる。
【0020】
制御部46は、CPU48と、発振器50と、ゲートドライバ52とを備えている。CPU48は、ユーザが操作可能な操作部54に接続されており、ユーザが指定した動作を実行するように発振器50や、波形生成部38に制御信号を出力し、所定の動作を実行させる。なお、発振器50としては、DDSなどが採用される。
【0021】
なお、操作部54では、ユーザの設定で波形生成部38がどのような波形を生成するかを制御可能に設けられている。
例えば、操作部54は、三角波を生成するか、鋸波を生成するかの選択スイッチ54a、希望の周波数を設定する設定スイッチ54b、希望の波高値を設定する設定スイッチ54c、休止期間(0V期間)を設定する設定スイッチ54dが設けられていればよい。
【0022】
CPU48は、操作部54からの操作信号に基づいて、波形生成部38へ制御信号を出力する。波形生成部38では受信した制御信号に基づいて、ユーザが設定した波形の生成を実行する。
【0023】
また、CPU48は、操作部54からの操作信号に基づいて、電力増幅部42における発振周波数が操作部54で指示された周波数となるようにスイッチングを制御する。
また、操作部54が、発振周波数のスイープ範囲を設定可能となるように設けられていれば、CPU48は、発振周波数が所定の範囲内でスイープするように電力増幅部42を制御してもよい。
【0024】
なお、図2には、駆動回路34で生成される電気信号をA〜Eに示している。
交流電源から入力される交流100V(符号A)は、ほぼ正弦波であり、この正弦波が整流回路部40において、全波整流される。全波整流された波形(符号B)は平滑回路部41に入力される。
平滑回路部41では、全波整流された波形Bを大容量コンデンサによって平滑する。これにより、全波整流波形Bを、平坦な波形(符号C)に生成できる。
【0025】
平滑回路部41から出力された波形Cは、波形生成部38へ入力される。
本実施形態における波形生成部38では、全波整流波形を平坦にした波形Cを、例として三角波(符号D)に生成する。ここで生成される三角波は、極性を越えた変化はなく、電圧が正の部分のみで変化するような波形である。
【0026】
三角波Dは電力増幅部42に入力される。電力増幅部42では、制御部46で制御された周波数で三角波Dをスイッチングし、振動子32に入力させる高周波の電気信号Eを生成する。
この例で示されるように、本発明では、高周波の電気信号を生成する電力増幅部42では、様々な形状の波形が入力され、この波形に基づいた高周波の電気信号Eが生成される。このため、振動子32に入力される電気信号は一定の電圧ではなく、電圧が種々の値に変化しているので、超音波振動に変化をつけることができる。このため、より高い洗浄能力とすることができる。
【0027】
波形生成部38が生成する波形の他の例を図4に示す。
図4の(a)では鋸波を示している。また、(b)では、正弦波を全波整流した形状の波形を示している。
このような波形に、さらに図3に示したような休止期間(0V)の期間を形成するようにしてもよい。
【0028】
本発明の超音波洗浄装置の駆動回路の他の実施形態を、図5に示す。
なお、上述した実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では、商用電源から入力された交流波形の力率補正をする力率補正部と、整流回路部と、平滑回路部とが一体に形成されたPFC(Power Factor Correction)コンバータ45が設けられている。
【0029】
PFCコンバータ45は、入力された交流電圧の力率を補正(改善)して一定の直流電圧を出力する。PFCコンバータ45は、ダイオードブリッジ回路、コイル、パワーMOSFET、ダイオードおよび制御用ICなどから構成される。
【0030】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の超音波洗浄装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御部のブロック図である。
【図3】波形生成部が生成する波形のうち、休止期間がある波形の一例を示す説明図である。
【図4】波形生成部が生成する波形の他の例を示す説明図である。
【図5】駆動回路の他の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
30 超音波洗浄装置
31 洗浄槽
31a 底部
32 振動子
34 駆動回路
38 波形生成部
40 整流回路部
41 平滑回路部
42 電力増幅部
44 位相補正部
45 PFCコンバータ
46 制御部
50 発振器
52 ゲートドライバ
54 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽内の液体に超音波振動を印加して、洗浄槽内の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置において、
洗浄槽に取り付けられ、入力される電気信号に基づいて機械的振動を発生させる振動子と、
振動子へ出力する電気信号を、商用電源から入力された交流波形から生成する駆動回路とを具備し、
駆動回路は、
商用電源から入力された交流波形を整流する整流回路部と、
整流回路部で整流された波形を平滑する平滑回路部と、
平滑回路部で平滑された直線状の波形に対し、極性の変化が無い所定形状の波形を生成する波形生成部と、
波形生成部によって生成された波形をスイッチングして所定の周波数を有する極性の変化がある電気信号に変換する電力増幅部とが設けられていることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記波形生成部は、商用電源における周波数に依存せずに所定形状の波形の周波数の設定が可能であることを特徴とする請求項1記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記波形生成部は、商用電源から入力された波形の波高を変更可能であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記商用電源から入力された波形の力率補正をする力率補正部と、前記整流回路部と、前記平滑回路部とが一体に構成されたPFCコンバータを備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の超音波洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−89037(P2010−89037A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263425(P2008−263425)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(391015926)千代田電機工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】