説明

超音波流量計及び流体減圧装置

【課題】ノイズ発生源を有した管路に対する配置の自由度を高めることが可能な超音波流量計及び流体減圧装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の超音波流量計10は、流体が流れる管路90の軸方向と交差した方向で対向するように1対の計測用超音波センサ20A,20Bを配置すると共に、管路90の中心軸J1に対して受波側の計測用超音波センサ20Aと軸対称となる位置にノイズキャンセル用超音波センサ30Aを設け、受波側の計測用超音波センサ20Aが計測用超音波を受波している期間中にノイズキャンセル用超音波センサ30Aが超音波を受波して出力する受波信号を、受波側の計測用超音波センサ20Aが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を受波側の計測用超音波センサ20Aの受波信号からキャンセルする差動増幅回路51を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計及び流体減圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の超音波流量計としては、管路の軸方向と斜めに交差する方向で対向するように配置された1対の計測用超音波センサ間で計測用超音波を送受波して流体の流量を計測するものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】松山 裕著、「実用流量測定」、第1版、財団法人省エネルギーセンター、1999年6月15日、p.78,79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波成分を含んだノイズ(以下、「超音波ノイズ」という)の発生源を有する管路に、上述した従来の超音波流量計を設置する場合には、流体を伝搬した超音波ノイズが計測用超音波に重畳することを回避するために、超音波流量計をノイズ発生源から十分に離して配置する必要があり、配置の自由度が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ノイズ発生源を有した管路に対する配置の自由度を高めることが可能な超音波流量計及び流体減圧装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る超音波流量計は、流体が流れる管路の軸方向と交差した方向で対向するように1対の計測用超音波センサを配置し、それら1対の計測用超音波センサの間で計測用超音波を送受波して流体の流量を計測する超音波流量計において、管路の中心軸に対して受波側の計測用超音波センサと軸対称となる位置にノイズキャンセル用超音波センサを設け、受波側の計測用超音波センサが計測用超音波を受波している期間中にノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号を、受波側の計測用超音波センサが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を受波側の計測用超音波センサの受波信号からキャンセルするノイズキャンセル処理部を備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の超音波流量計において、受波側の計測用超音波センサとノイズキャンセル用超音波センサとを同一仕様にしたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明に係る超音波流量計は、流体が流れる管路の軸方向と交差した方向で対向するように第1と第2の計測用超音波センサを設けて、それら第1と第2の計測用超音波センサの間で計測用超音波を送受波し、流体の流れに沿った順方向における伝搬時間と、流体の流れに逆らった逆方向における伝搬時間との差に基づいて流体の流量を計測する超音波流量計において、管路の中心軸に対して第1の計測用超音波センサと軸対称となる位置に第1のノイズキャンセル用超音波センサを設けると共に、管路の中心軸に対して第2の計測用超音波センサと軸対称となる位置に第2のノイズキャンセル用超音波センサを設け、第1の計測用超音波センサが計測用超音波を受波している期間中に第1のノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号を、第1の計測用超音波センサが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を第1の計測用超音波センサの受波信号からキャンセルすると共に、第2の計測用超音波センサが計測用超音波を受波している期間中に第2のノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号を、第2の計測用超音波センサが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を第2の計測用超音波センサの受波信号からキャンセルするノイズキャンセル処理部を備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明に係る流体減圧装置は、請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の超音波流量計と、超音波流量計に直列接続されて管路を流れる流体を減圧して送出する減圧手段とを備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1の発明によれば、ノイズキャンセル用超音波センサは、管路の軸方向と斜めに交差した方向で対向するように配置された1対の計測用超音波センサのうち、管路の中心軸に対して受波側の計測用超音波センサと軸対称な位置に配置されているので、ノイズキャンセル用超音波センサが、1対の計測用超音波センサ間で送受波される計測用超音波を直接受波することを防止することができる。
【0011】
また、管路の内面で反射した計測用超音波の反射波が、ノイズキャンセル用超音波センサにて受波されたとしても、その受波タイミングは、受波側の計測用超音波センサが送波側の計測用超音波センサから直接、計測用超音波を受波している期間よりも遅くなる。
【0012】
つまり、受波側の計測用超音波センサが計測用超音波を受波している期間中にノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号は、受波側の計測用超音波センサが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分である。従って、受波側の計測用超音波センサの受波信号から、計測用超音波の成分をキャンセルすることなく、超音波ノイズの成分をキャンセルすることができる。
【0013】
これにより、超音波流量計をノイズ発生源に対して従来よりも近づけて配置することが可能となり、ノイズ発生源を有した管路に対する超音波流量計の配置の自由度を高めることが可能になる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、ノイズキャンセル用超音波センサと受波側の計測用超音波センサとを同一仕様にしたので、これらセンサで同一の超音波ノイズのみを受波したときの出力(受波信号)のばらつきを抑えることができる。よって、受波側の計測用超音波センサの受波信号から、超音波ノイズの成分を容易にキャンセルすることができる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、第1と第2の計測用超音波センサは、管路の軸方向と斜めに交差した方向で対向するように配置され、第1の計測用超音波センサと軸対称な位置に第1のノイズキャンセル用超音波センサが配置されると共に、第2の計測用超音波センサと軸対称な位置に第2のノイズキャンセル用超音波センサが配置されているので、それら第1及び第2のノイズキャンセル用超音波センサが、第1と第2の計測用超音波センサ間で送受波される計測用超音波を直接受波することを防止することができる。
【0016】
また、管路の内面で反射した計測用超音波の反射波が、受波側となった第1の計測用超音波センサに対して軸対称な位置に配置された第1のノイズキャンセル用超音波センサにて受波されたとしても、その受波タイミングは、受波側の第1の計測用超音波センサが送波側の第2の計測用超音波センサから直接、計測用超音波を受波している期間よりも遅くなる。
【0017】
同様に、管路の内面で反射した計測用超音波の反射波が、受波側となった第2の計測用超音波センサに対して軸対称な位置に配置された第2のノイズキャンセル用超音波センサにて受波されたとしても、その受波タイミングは、受波側の第2の計測用超音波センサが送波側の第1の計測用超音波センサから直接、計測用超音波を受波している期間よりも遅くなる。
【0018】
つまり、第1の計測用超音波センサが受波器となった場合に、その第1の計測用超音波センサが計測用超音波を受波している期間中に第1のノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号は、第1の計測用超音波センサが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分である。また、第2の計測用超音波センサが受波器となった場合に、その第2の計測用超音波センサが計測用超音波を受波している期間中に第2のノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号は、第2の計測用超音波センサが計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分である。従って、第1と第2の計測用超音波センサの何れが受波側になったとしても、その受波側の計測用超音波センサの受波信号から、計測用超音波の成分をキャンセルすることなく、超音波ノイズの成分をキャンセルすることができる。
【0019】
これにより、超音波流量計をノイズ発生源に対して従来よりも近づけて配置することが可能となり、ノイズ発生源を有した管路に対する超音波流量計の配置の自由度を高めることが可能になる。
【0020】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、超音波流量計を請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の構成としたことで、受波側の計測用超音波センサの受波信号から、減圧手段によって発生する超音波ノイズをキャンセルすることが可能となり、超音波流量計と減圧手段とを従来よりも接近させて配置したコンパクトな流体減圧装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波流量計が接続された管路の概念図
【図2】超音波流量計の側断面図
【図3】制御処理部のブロック図
【図4】受波回路の回路図
【図5】(A)計測用超音波と超音波ノイズとが重畳した波形、(B)超音波ノイズの波形、(C)計測用超音波の波形
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図5に基づいて説明する。図1における符号90は、流体(ガス又は液体)を供給するための管路であり、その管路90内を、図示しない供給源から供給された流体が流れている。管路90の途中には、供給源から供給された流体を所定の二次圧に減圧して送出する公知な減圧手段80(例えば、減圧弁、ガバナ等)が備えられ、その減圧手段80の下流側に本発明に係る超音波流量計10が接続されている。ここで、減圧手段80は超音波ノイズを発生する「ノイズ発生源」であり、その超音波ノイズは、管路90内の流体を伝搬媒体とした疎密波(縦波)となって管路90内を上流側及び下流側に直進する。なお、バルブやオリフィス等の絞り部やブロワも、超音波ノイズを発生する「ノイズ発生源」となり得る。
【0023】
図2に示すように超音波流量計10は計測管11を有し、この計測管11が管路90の途中に接続されて管路90の一部を構成している。本実施形態では、計測管11を含む管路90の内部流路が断面円形となっているが、内部流路が断面矩形であってもよい。
【0024】
計測管11には、その軸方向と斜めに交差した方向で対向するように同一仕様(具体的には、形状、構造、材質、特性が同一)の1対の計測用超音波センサ20A,20Bが配設されている。以下、計測用超音波センサ20A,20Bを区別する場合は、適宜、上流側に配置された方を「上流側」又は「第1」の計測用超音波センサ20Aといい、下流側に配置された方を「下流側」又は「第2」の計測用超音波センサ20Bという。
【0025】
計測管11には、計測用超音波センサ20A,20Bを固定するための1対のセンサ固定部12,12が形成されている。センサ固定部12,12は、計測管11の軸方向の両端位置でかつ、周方向において互いに180度離れた2位置に設けられており、例えば、計測管11の内壁面を陥没させて形成されている。なお、計測管11の管壁を軸方向に対して斜めに貫通した貫通孔をセンサ固定部12,12としてもよい。
【0026】
計測用超音波センサ20A,20Bは、それぞれセンサ固定部12,12に嵌合固定されており、これら1対の計測用超音波センサ20A,20Bの間で、計測用超音波が送受波される。1対の計測用超音波センサ20A,20Bの間における計測用超音波の伝搬経路L1と管路90(計測管11)の中心軸J1は所定角度θ1で斜めに交差しており、計測用超音波は、計測管11の内壁面で反射することなく直接、1対の計測用超音波センサ20A,20B間で送受波される。そして、流体の流れに沿った順方向における計測用超音波の伝搬時間と、流れに逆らった逆方向における計測用超音波の伝搬時間との差に基づいて、計測管11を通過する流体の流量が計測可能となっている。
【0027】
ところで、計測管11には、1対の計測用超音波センサ20A,20Bとは別に、1対のノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bが備えられている。このうち第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aは、管路90(計測管11)の中心軸J1に対して第1の計測用超音波センサ20Aと軸対称な位置に配置され、第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bは、管路90(計測管11)の中心軸J1に対して第2の計測用超音波センサ20Bと軸対称な位置に配置されている。
【0028】
計測管11に対するノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bの固定構造は、計測用超音波センサ20A,20Bの固定構造と同じである。即ち、ノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bは、計測管11の内壁面を陥没させた1対のセンサ固定部13,13に嵌合固定されて、管路90の軸方向と斜めに交差した方向で対向するように(詳細には、ノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bを結ぶ線分と計測管11の中心軸J1とが所定角度θ1で斜めに交差するように)配置されている。
【0029】
上記のような配置としたことで、中心軸J1に対して軸対称な位置関係にある第1の計測用超音波センサ20Aと第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aは、ノイズ発生源である減圧手段80からの距離が等しくなり、第2計測用超音波センサ20Bと第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bは、減圧手段80からの距離が等しくなる。また、1対のノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bは、1対の計測用超音波センサ20A,20B間で送受波される計測用超音波の指向性の範囲から完全に外れるので、計測用超音波を直接受波することを防止することができる。
【0030】
中心軸J1に対して軸対称な位置関係にある第1の計測用超音波センサ20Aと第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aとは同一仕様(具体的には、形状、構造、材質、特性が同一)であり、第2の計測用超音波センサ20Bと第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bとは同一仕様となっている。ここで、上記したように1対の計測用超音波センサ20A,20Bは同一仕様であるので、本実施形態では、計測用超音波センサ20A,20Bとノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bの4つ全てが同一仕様となっている。
【0031】
図3には、超音波流量計10における制御処理部40(図1参照)の詳細が示されている。同図を参照しつつ、本実施形態の超音波流量計10の動作について説明する。
【0032】
コントロール部41は、送受切替スイッチ42,43を制御して、まずは図3に示すように、上流側の計測用超音波センサ20Aを送波回路44に接続しかつ、下流側の計測用超音波センサ20Bを受波回路50に接続した状態にしてから、送波回路44及びクロックカウンタ45に送波指令信号aを出力する。すると、送波回路44が上流側の計測用超音波センサ20Aを駆動し、計測用超音波が上流側の計測用超音波センサ20Aから下流側の計測用超音波センサ20Bに向けて発信されると同時に、クロックカウンタ45が基準クロック発生部47から入力したクロックパルスbに基づいて時間計測を開始する。
【0033】
上流側の計測用超音波センサ20Aから発信された計測用超音波は、管路90を斜めに横切って下流側の計測用超音波センサ20Bにて直接受波される。計測用超音波センサ20Bにて受波された超音波は電気信号に変換されて受波回路50に入力し、受波回路50は受波信号cを受信波検知部46に出力する。受信波検知部46は、受波信号cを検知(詳細には、受波信号cにおける特定番目の波、例えば第3波のゼロクロスポイントを検知)すると受信波検知信号dをクロックカウンタ45に出力する。受信波検知信号dの入力によってクロックカウンタ45はカウントを停止して、そのカウント値(即ち、超音波の伝搬時間)をコントロール部41に出力し、0リセットされる。
【0034】
コントロール部41にカウント値が入力すると、送波回路44は、上流側の計測用超音波センサ20Aを駆動停止し、次にコントロール部41から出力される送波指令信号aの待ち状態になる。また、この間にコントロール部41が送受切替スイッチ42,43を駆動し、送波回路44を下流側の計測用超音波センサ20Bに接続し、受波回路50を上流側の計測用超音波センサ20Aに接続する。
【0035】
その後、コントロール部41は、送波回路44に送波指令信号aを出力する。これにより、今度は、計測用超音波の送波方向を逆向きにして上記と同様の処理が行われる。そして、コントロール部41において、流体の流れに対する順方向と逆方向の両方向で計測されたクロックカウンタ45のカウント値の逆数差(伝搬時間の逆数差)が求められ、これに基づいて計測管11を流れる流体の流速が算出される。また、この流速に、計測管11の断面積を乗じて流量が算出される。
【0036】
ところで本実施形態では、1対のノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bがコントロール部41の制御によって選択的に受波回路50に接続される。例えば、下流側の第2の計測用超音波センサ20Bから上流側の第1の計測用超音波センサ20Aに向けて超音波を送波するとき、コントロール部41は、センサ切替スイッチ48を駆動して、第1の計測用超音波センサ20Aと中心軸J1に対して軸対称の位置にある第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aを受波回路50に接続する。このとき、第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bは受波回路50から切り離される。そして、受波回路50に接続された第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aは、第1(受波側)の計測用超音波センサ20Aが計測用超音波を受波している期間中、超音波を受波する。
【0037】
このとき、第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aは、1対の計測用超音波センサ20A,20B間で送受波される計測用超音波を直接受波することはない。仮に、計測管11の内壁面で反射した計測用超音波の反射波が、第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aにて受波されたとしても、その受波タイミングは、第1(受波側)の計測用超音波センサ20Aが第2(送波側)の計測用超音波センサ20Bから直接、計測用超音波を受波している期間よりも遅くなる。つまり、第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aは、第1(受波側)の計測用超音波センサ20Aが計測用超音波と共に受波する超音波ノイズを選択的に受波することになる。
【0038】
上流側の第1の計測用超音波センサ20Aから下流側の第2の計測用超音波センサ20Bに向けて超音波を送波する場合もこれと同様である。即ち、第2の計測用超音波センサ20Bが受波回路50に接続されると、その第2(受波側)の計測用超音波センサ20Bと軸対称の位置関係にある第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bも受波回路50に接続される。このとき、第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aは、受波回路50から切り離される。そして、受波回路50に接続された第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bは、第2(受波側)の計測用超音波センサ20Bが計測用超音波を受波している期間中、超音波を受波する。
【0039】
また、第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bは、1対の計測用超音波センサ20A,20B間で送受波される計測用超音波を、直接受波することはない。仮に、計測管11の内壁面で反射した計測用超音波の反射波が、第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bにて受波されたとしても、その受波タイミングは、第2(受波側)の計測用超音波センサ20Bが第1(送波側)の計測用超音波センサ20Aから直接、計測用超音波を受波している期間よりも遅くなる。つまり、第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bは、第2(受波側)の計測用超音波センサ20Bが計測用超音波と共に受波する超音波ノイズを選択的に受波することになる。
【0040】
図4には受波回路50が詳細に示されている。受波回路50は、差動増幅回路51と反転増幅回路52とから構成され、差動増幅回路51の出力端子が、反転増幅回路52の反転入力端子に接続されている。差動増幅回路51の反転入力端子には、計測用超音波センサ20A(20B)が超音波を受波して出力する受波信号(以下、「計測用受波信号」という)が入力し、差動増幅回路51の非反転入力端子には、ノイズキャンセル用超音波センサ30A(30B)が超音波を受波して出力する受波信号(以下、「ノイズ受波信号」という)が入力する。
【0041】
ここで、差動増幅回路51の反転入力端子に入力する計測用受波信号(図5(A)参照)は、送波側の計測用超音波センサ20B(20A)が発信した計測用超音波(図5(C)参照)の成分と、減圧手段80で発生した超音波ノイズ(図5(B)参照)の成分とが重畳した信号となる。これに対し、差動増幅回路51の非反転入力端子に入力するノイズ受波信号は、受波側の計測用超音波センサ20B(20A)が計測用超音波を受波している期間中に、ノイズキャンセル用超音波センサ30B(30A)が超音波ノイズ(図5(B)参照)を選択的に受波して出力した信号なので、差動増幅回路51は、計測用超音波の成分と超音波ノイズの成分とを含む計測用受波信号から、超音波ノイズの成分だけをキャンセルして出力する。そして、ノイズキャンセルされた信号は、反転増幅回路52にて所定のゲインで増幅された後、受波信号cとして受信波検知部46に出力される(図3参照)。なお、差動増幅回路51は、本発明の「ノイズキャンセル処理部」に相当する。
【0042】
このように、本実施形態によれば、第1と第2の計測用超音波センサ20A,20Bは、管路90の軸方向と斜めに交差した方向で対向するように配置されており、管路90の中心軸J1に対して第1の計測用超音波センサ20Aと軸対称な位置に第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aが配置され、中心軸J1に対して第2の計測用超音波センサ20Bと軸対称な位置に第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bが配置されているので、それら第1と第2のノイズキャンセル用超音波センサ30A,30Bが、第1と第2の計測用超音波センサ20A,20B間で送受波される計測用超音波を直接受波することを防止することができる。
【0043】
仮に、管路90の内面で反射した計測用超音波の反射波が、受波側の計測超音波センサ20A(20B)と軸対称な位置に配置されたノイズキャンセル用超音波センサ30A(30B)にて受波されたとしても、その受波タイミングは、受波側の計測用超音波センサ20A(20B)が送波側の計測用超音波センサ20B(20A)から直接、計測用超音波を受波している期間よりも遅くなる。
【0044】
つまり、受波側の計測用超音波センサ20A(20B)が計測用超音波を受波している期間中に、その計測用超音波センサ20A(20B)と軸対称な位置に配置されたノイズキャンセル用超音波センサ30A(30B)が超音波を受波して出力する受波信号は、受波側の計測用超音波センサ20A(20B)が計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分である。従って、受波側の計測用超音波センサ20A(20B)の受波信号から、計測用超音波の成分をキャンセルすることなく、超音波ノイズの成分をキャンセルすることができる。
【0045】
これにより、超音波流量計10をノイズ発生源(減圧手段80)に対して従来よりも近づけて配置することが可能となり、ノイズ発生源を有した管路90に対する超音波流量計10の配置の自由度を高めることが可能になる。
【0046】
また、中心軸J1に対して軸対称の位置に配置された第1のノイズキャンセル用超音波センサ30Aと第1の計測用超音波センサ20Aとを同一仕様とし、第2のノイズキャンセル用超音波センサ30Bと第2の計測用超音波センサ20Bとを同一仕様としたので、中心軸J1に対して軸対称の位置に配置された計測用超音波センサとノイズキャンセル用超音波センサとで同一の超音波ノイズのみを受波したときの出力(受波信号)のばらつきを抑えることができる。よって、受波側の計測用超音波センサの受波信号から、超音波ノイズの成分を容易にキャンセルすることができる。
【0047】
さらに、減圧手段80(例えば、ガバナ)と超音波流量計とを直列接続して、例えば、超音波流量計により計測された流速に基づいて減圧手段80を駆動制御するようにした流体減圧装置を製造する場合に、本実施形態の超音波流量計10を採用すれば、超音波流量計10と減圧手段80とを従来よりも接近させて配置したコンパクトな流体減圧装置を提供することが可能となる。
【0048】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0049】
(1)上記実施形態では、1対の計測用超音波センサ20A,20Bの間で計測用超音波を相互に送受波して流量を計測するように構成されていたが、高精度な流量計測が要求されない場合には、1対の計測用超音波センサ20A,20Bの一方を送波専用、他方を受波専用にして、一方向でのみ計測用超音波を送受波して流量を計測するようにしてもよい。この場合には、受波専用の計測用超音波センサと中心軸J1に対して軸対称な位置にのみノイズキャンセル用超音波センサを配置すればよい。
【0050】
(2)上記実施形態において、超音波流量計10はノイズ発生源(減圧手段80)の下流側に配置されていたが、ノイズ発生源の上流側に配置した場合でも上記実施形態と同等の効果を奏する。
【0051】
(3)上記実施形態では、管路90の中心軸J1に対して軸対称な位置に配置された計測用超音波センサ20A(20B)とノイズキャンセル用超音波センサ30A(30B)とを同一仕様としていたが、これら同一仕様のセンサ間の個体差を原因とする出力(受波信号)のばらつきを補正するための補正手段を設けてもよい。
【0052】
(4)さらに、上記補正手段により、センサの仕様の差異を原因とする出力(受波信号)のばらつきを補正可能とした場合は、管路90の中心軸J1に対して軸対称な位置に配置された計測用超音波センサ20A(20B)とノイズキャンセル用超音波センサ30A(30B)の仕様の一部が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 超音波流量計
11 計測管
20A 第1の計測用超音波センサ
20B 第2の計測用超音波センサ
30A 第1のノイズキャンセル用超音波センサ
30B 第2のノイズキャンセル用超音波センサ
50 受波回路
51 差動増幅回路(ノイズキャンセル処理部)
80 減圧手段
90 管路
J1 管路の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管路の軸方向と交差した方向で対向するように1対の計測用超音波センサを配置し、それら1対の計測用超音波センサの間で計測用超音波を送受波して前記流体の流量を計測する超音波流量計において、
前記管路の中心軸に対して受波側の前記計測用超音波センサと軸対称となる位置にノイズキャンセル用超音波センサを設け、
前記受波側の計測用超音波センサが前記計測用超音波を受波している期間中に前記ノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号を、前記受波側の計測用超音波センサが前記計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を前記受波側の計測用超音波センサの前記受波信号からキャンセルするノイズキャンセル処理部を備えたことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記受波側の計測用超音波センサと前記ノイズキャンセル用超音波センサとを同一仕様にしたことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
流体が流れる管路の軸方向と交差した方向で対向するように第1と第2の計測用超音波センサを設けて、それら第1と第2の計測用超音波センサの間で計測用超音波を送受波し、前記流体の流れに沿った順方向における伝搬時間と、前記流体の流れに逆らった逆方向における伝搬時間との差に基づいて前記流体の流量を計測する超音波流量計において、
前記管路の中心軸に対して前記第1の計測用超音波センサと軸対称となる位置に第1のノイズキャンセル用超音波センサを設けると共に、前記管路の中心軸に対して前記第2の計測用超音波センサと軸対称となる位置に第2のノイズキャンセル用超音波センサを設け、
前記第1の計測用超音波センサが前記計測用超音波を受波している期間中に前記第1のノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号を、前記第1の計測用超音波センサが前記計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を前記第1の計測用超音波センサの前記受波信号からキャンセルすると共に、前記第2の計測用超音波センサが前記計測用超音波を受波している期間中に前記第2のノイズキャンセル用超音波センサが超音波を受波して出力する受波信号を、前記第2の計測用超音波センサが前記計測用超音波と共に超音波ノイズを受波して出力する受波信号中のノイズ成分として取得し、そのノイズ成分を前記第2の計測用超音波センサの前記受波信号からキャンセルするノイズキャンセル処理部を備えたことを特徴とする超音波流量計。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載の超音波流量計と、
前記超音波流量計に直列接続されて前記管路を流れる流体を減圧して送出する減圧手段とを備えたことを特徴とする流体減圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173025(P2012−173025A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32856(P2011−32856)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】