説明

超音波発生装置

【課題】超音波発生時の周波数に影響されることなくケーブル及び振動子の正確な接続異常を検出する超音波発生装置を提供する。
【解決手段】超音波を発生する振動子31が接続されるケーブルCと、所望の高周波信号を発振してケーブルに供給する発振器12と、高周波信号の電流値を測定する測定部24と、振動子に超音波を発生させる際は所定の周波数をもった高周波信号を発振器に発振させ、予め振動子とケーブルに対して共振周波数fを検出して記憶し、振動子およびケーブルの異常を検出する際は記憶された共振周波数fをもった高周波信号を発振器で発振させてケーブルに供給し、このときの電流値が規定値以上である場合ケーブルの断線または振動子の接続不良と判定するべく制御する制御部11をもつ超音波発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発振器と超音波を発生する振動子をケーブルに接続してケーブルの接続異常を検出する超音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、超音波技術が発達し普及してきており、多くの分野において、様々な形態で応用された技術が知られている。このような超音波技術や高周波技術の応用例の一つとして、洗浄液のなかに被洗浄物をおいて超音波を与えることで超音波洗浄装置として適用される場合がある。
【0003】
特許文献1は、共振周波数が振動板の全部位で一定に保つことで、被洗浄物に対して、均一な精密洗浄を行なうことができる超音波洗浄装置を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、高周波技術を用いる発振器により、超音波を発生する振動子をケーブルに接続してケーブルの接続異常を検出する超音波発生装置の問題については何ら示されていない。すなわち、従来の超音波発生装置では、負荷となる振動子固有の共振周波数に周波数を合わせているため、出力周波数を可変することはなく、周波数の条件を限定した整合回路を設け、ケーブルの特性インピーダンスをマッチングさせた状態に調整して製品として提供していた。そのため、インピーダンスのミスマッチによる信号の反射が発生せず、どのような条件でも出力電流を測定することでケーブルおよび振動子の異常を検出することができた。
【0006】
しかし、振動子の共振周波数での出力周波数に限定しない、広範な周波数で使用可能な超音波発生装置では、設定周波数によってはミスマッチのためケーブル長による共振の影響が生じ、等価的に電流が流れない切断に見える周波数や短絡に見える周波数が現れ、電流をモニタするだけでは負荷の状態を検出することができない場合が発生する。例えば、ケーブル長は10mでは1/4波長が約5MHzで共振点となり、1MHz以上で振幅位相に影響が出はじめ、容量性の振動子が負荷となるとさらに共振周波数がさがり正確な測定が困難になる。
【0007】
本発明は、超音波発生時の周波数に影響されることなくケーブル及び振動子の正確な接続異常を検出する超音波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決する一実施形態は、
超音波を発生する振動子(31)が接続されるケーブル(C)と、
高周波信号を発振して前記ケーブルに供給する発振器(12)と、
前記ケーブルに供給される高周波信号の電流値を測定する測定部(24)と、
前記振動子に超音波を発生させる際は所定の周波数をもった前記高周波信号を発振器に発振させ、前記振動子およびケーブルの異常を検出する際は、予め前記振動子と前記ケーブルに対して共振周波数(f)を検出して記憶しておき、この共振周波数をもった高周波信号を前記発振器で発振させて前記ケーブルに供給し、このときの前記測定部が測定した電流値が規定値以上である場合、前記ケーブルの断線または前記振動子の接続不良と判定するべく制御する制御部(11)を具備することを特徴とする超音波発生装置。
【発明の効果】
【0009】
発振器から与えられる発振信号が低い周波数の場合、『正常時』と『ケーブルの断線および振動子の接続不良時』において電流変化は微小となり負荷の有無を検出することが難しいため、振動子とケーブルの固有の共振周波数fで電流の変化を検出する。共振周波数fでは電流値が少なくなり、この結果、断線や振動子の破壊があった場合、電流変化が大きくなるため、確実にケーブルの断線や振動子の接続不良を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波発生装置の構成を示すシステム図。
【図2】同じく超音波発生装置の発振器の構成の一例を示すブロック図。
【図3】同じく超音波発生装置におけるケーブルの断線および振動子の接続不良検出の問題を説明する説明図。
【図4】同じく超音波発生装置におけるケーブルの短絡時の問題を説明する説明図。
【図5】同じく超音波発生装置におけるケーブルの判断処理の一例を示すフローチャート。
【図6】同じく超音波発生装置におけるケーブルの接続異常を検出する手順を説明する説明図。
【図7】同じく超音波発生装置におけるケーブルの接続異常を検出する手順を説明する説明図。
【図8】同じく超音波発生装置におけるケーブルの接続異常を検出する手順を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る超音波発生装置1の構成の一例を示している。全体の動作を制御する制御装置11と、高周波信号を発振する発振器12と、発振器12と振動子31を接続する所定の長さを持つケーブルCと、ケーブルCに接続され高周波信号によって一定の超音波を発生させる振動子31を有している。この超音波発生装置1は、発生した超音波を洗浄液32に伝達することができる。
【0012】
また、この際の発振器12は、図2に示すように、制御装置11からの指示信号を受けて発振器12の動作を制御する制御部23と、制御部23からの制御信号を受けて複数種類の周波数の高周波信号を生成して出力する発振部22と、発振部22から供給された高周波信号を受け、ここを通過する電流値を測定する電流測定部24を有する。
【0013】
上記のような構成をもつ超音波発生装置1は、ケーブルの短絡、断線および振動子の接続不良を検出するために、超音波発生の運用時において、内蔵の電流測定部24で出力電流を測定し、検出した値により動作の良否を判定する。
しかし、図3のグラフが示すように、ケーブルの断線および振動子の接続不良の検出において、負荷の振動子31は容量性の高インピーダンスであるため、丸で囲んだ低い周波数においては、『正常時』と『ケーブルの断線および振動子の接続不良時』の差は微小な電流変化となり、負荷の有無を検出することが難しくなる。すなわち、ケーブルが長くなり、振動子の容量成分に比べケーブルの容量成分が大きくなると、断線しても容量変化は微小であり、電流変化も微小となるため断線かどうかの判定が困難になる。
【0014】
この現象を回避するために、本発明の一実施形態である超音波発生装置1においては、後述するように、ケーブルの断線および振動子の接続不良が発生した場合、予め測定した振動子とケーブルの固有の共振周波数fで電流の変化を検出することとした。振動子31とケーブルCの共振周波数fでは電流が少なくなり、断線や振動子の破壊があった場合、電流変化が大きくなるため確実に検出することができる。すなわち、共振周波数fで規定値より電流が大きい場合、断線と判定する。
【0015】
一方、ケーブル短絡の検出は、図4に示すように、単純に短絡による出力電流の規定値以上の増大を検出することで判定する。ケーブル長が長く、運用している周波数が高い場合、図4に示すように、『正常時』と『ケーブル短絡時』との各電流値は、ケーブルのインダクタンス成分や反射によるケーブルの共振の影響により、電流が流れにくくなり、ケーブルが短絡していても出力電流が流れない場合が生じ、短絡かどうかの判定が高い周波数の領域では困難となる。この現象を回避するために、後述するように、ケーブル短絡の検出は、ケーブルの影響を受けにくい十分低い周波数の出力信号を用いて電流測定部24において出力電流を測定することで判定することとする。
【0016】
次に、本発明の一実施形態である超音波発生装置における判定処理の具体的な実施形態を図5のフローチャートを用いて以下に詳細に説明する。
制御装置11および制御部23は、まず、運用開始前にケーブルおよび振動子に異常が無い状態で出力周波数を一定の範囲内で変動させて、最も出力電流が少ない周波数を調査し、振動子31とケーブルCの固有の共振点である共振周波数fを決定して制御部23の記憶領域に記録する。次に、周波数fの高周波信号を用いて超音波発生を行なっている運用時において、図6に示すように、外部の制御装置11から発振器12がケーブル異常検出の命令を受信すると(ステップS11)、制御部23は運用時の高周波信号の周波数fを可変範囲内で最も低い周波数fMINに変更して(ステップS12)、電流測定部24で出力電流を測定する(ステップS13)。そして、制御装置11および制御部23は、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以下であるかどうか判断し(ステップS14)、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以下でない場合(ステップS14のNo)、ケーブルCが短絡状態であると判定して(ステップS22)、出力を停止する(ステップS24)。
【0017】
しかし、制御装置11および制御部23は、ステップS14において、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以下であると判断すると短絡状態ではないと判定して(ステップS14のYes)、ステップS15に進む。
制御装置11および制御部23は、図7のように出力周波数を、正常な状態で最も出力電流が大きい周波数fMAXに変更し(ステップS15)、電流測定部24で出力電流を測定する(ステップS16)。そして、制御装置11および制御部23は、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以上であるかどうか判断し(ステップS17)、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以上でない場合(ステップS17のNo)、ケーブルCが断線および振動子31の接続不良であると判定して(ステップS23)、出力を停止する(ステップS24)。
【0018】
しかし、制御装置11および制御部23は、ステップS17において、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以上であると判断するとケーブルCが断線および振動子の接続不良ではないと判定して(ステップS17のYes)、ステップS18に進む。
【0019】
制御装置11および制御部23は、ステップS18において、図7のように出力周波数を制御部23の記憶領域に記録されている最も出力電流が少なくなる共振周波数fに変更して、電流測定部24で出力電流を測定し、振動子とケーブルの固有の共振点の周波数である共振周波数fで出力電流が規定値以下であるかどうかを判断する(ステップS20)。制御装置11および制御部23は、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以下ではないと判定した場合(ステップS20のNo)、ケーブルCが断線および振動子31の接続不良であると判定して(ステップS23)、出力を停止する(ステップS24)。
【0020】
しかし、制御装置11および制御部23は、ステップS20において、電流測定部24で測定した出力電流の値が規定値以下であると判断するとケーブルCが断線および振動子の接続不良はなく正常であると判断し、図8に示すように、発振器12での高周波信号を正常動作で運用する元の周波数fに戻して正常動作に復帰する(ステップS21)。
【0021】
本発明に係る一実施形態の超音波発生装置は、上述したように、周波数と検出結果の性質を踏まえたうえで、発振器12において高周波信号の周波数を適切な周波数に切り替えたうえで動作不良を検出することで、確実な検出結果を得ることができる。
【0022】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1…超音波発生装置、11…制御装置、12…発振器、22…発振部、23…制御部、24…電流測定部、31…振動子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生する振動子が接続されるケーブルと、
高周波信号を発振して前記ケーブルに供給する発振器と、
前記ケーブルに供給される高周波信号の電流値を測定する測定部と、
前記振動子に超音波を発生させる際は所定の周波数をもった前記高周波信号を発振器に発振させ、前記振動子およびケーブルの異常を検出する際は、予め前記振動子と前記ケーブルに対して共振周波数を検出して記憶しておき、この共振周波数をもった高周波信号を前記発振器で発振させて前記ケーブルに供給し、このときの前記測定部が測定した電流値が規定値以上である場合、前記ケーブルの断線または前記振動子の接続不良と判定するべく制御する制御部を具備することを特徴とする超音波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−83699(P2011−83699A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238475(P2009−238475)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】