説明

超音波診断装置、及び超音波画像取得プログラム

【課題】3次元領域を複数に分けて超音波で走査し、均一な画質の超音波画像を生成する超音波診断装置を提供する。
【解決手段】送受信部3は、心電波形に基づいたトリガ信号に従って異なる3次元領域を超音波で走査し、次のトリガ信号を受けるまで同じ3次元領域を走査する。第1のゲイン調整部31は、画質調整の指示が与えられた後に取得された各3次元領域の受信信号に、第1のゲイン補正値に従ってゲイン調整を行う。第2のゲイン調整部63は、画質調整の指示が与えられる前に取得された各3次元領域のデータに、第1のゲイン補正値に基づく第2のゲイン補正値に従ってゲイン調整を行う。データ結合部61は、異なる3次元領域のデータであって、同じ時相に取得された各3次元領域のデータを結合し、画像データ生成部62は、結合されたデータに基づいて3次元画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置、及びその超音波診断装置を制御して超音波画像を取得するための超音波画像取得プログラムに関する。特に、この発明は、心電波形を利用して3次元領域を超音波で走査する超音波診断装置、及びその超音波診断装置を制御する超音波画像取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波の送受信によって取得した受信信号に対して画質調整を行う機能を有している。例えば、2次元の平面を超音波で走査し、その走査によって取得した2次元画像について画質調整を行う。画像調整の方法の1例として、受信信号に対するゲイン調整が挙げられる。
【0003】
例えば、超音波の送受信によって予め断層像データを取得しておき、その断層像データの輝度分布に基づいて、受信信号に対するゲイン補正値などの画像調整用パラメータを予め求めておく。そして、超音波によって走査を行っている最中に、操作者によって画質調整の指示が与えられると、超音波診断装置は、予め設定された画質調整用パラメータに従って、指示が与えられた以降に取得した受信信号に対して画質調整を行う。これにより、操作者の指示が与えられた以降においては、画質調整用パラメータに従って画質調整が行われた断層像データが生成される。例えば、受信信号に対するゲインを求めておき、超音波診断装置は、そのゲインに従って受信信号にゲイン調整を行うことで断層像データを生成する。
【0004】
また、超音波によって走査を行っている最中に操作者が画質調整の指示を与えると、その指示のタイミングで取得された断層像データの輝度分布に基づいて、ゲインなどの画像調整用パラメータを求める場合がある。そして、超音波診断装置は、その画質調整用パラメータに従って、指示が与えられた以降に取得した受信信号に対して画質調整を行う。これにより、操作者の指示が与えられた以降においては、画質調整用パラメータに従って画質調整が行われた断層像データが生成される。
【0005】
ところで、超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブを用いることで、3次元領域を超音波で走査し、その走査によってボリュームデータを取得することができる。そのボリュームデータは、ボリュームレンダリング処理やMPR処理(Multi Plannar Reconstruction)などの画像処理が施されることにより、3次元画像データやMPR画像データ(任意断面における画像データ)などの超音波画像データが生成される。
【0006】
例えば、心筋の動きを観察し、壁運動の異常を検出するような診断においては、超音波画像をリアルタイムに取得することが求められる。しかしながら、3次元領域を超音波で走査する場合、全体の走査領域が広がるため、超音波画像をリアルタイムに取得することが困難になる。そこで、全体の走査領域を複数の領域に分け、ECG信号をトリガ信号として各領域を走査し、その走査によって取得された信号に基づいて超音波画像データを生成する手法が提案されている(例えば特許文献1)。この手法を利用した走査方法について図7を参照して説明する。図7は、分割された走査領域を説明するための模式図である。
【0007】
図7(a)に示すように、3次元の走査領域Sを複数の領域に分割する。図7(a)に示す例においては、3次元の走査領域Sを4つの3次元領域A、B、C及びDに分割する。以下、分割された個々の3次元領域A〜Dを、サブボリュームと称することにする。図7(a)に示す例においては、4つのサブボリュームを、それぞれ、サブボリュームA、サブボリュームB、サブボリュームC、サブボリュームDとする。ここでは、サブボリュームA、B、C及びDが、A、B、C、Dの順番に1列に並ぶように全体の走査範囲を分割している。走査領域Sの分割パターンは超音波診断装置に設定されており、超音波診断装置はその分割パターンに従って、各サブボリュームを超音波で走査する。
【0008】
そして、超音波診断装置は、図7(b)に示すように、サブボリューム単位で走査を行い、その走査で取得したデータを結合することで、走査領域Sの全体の画像データを生成する。例えば、超音波診断装置は、サブボリュームA、B、C、及びDの順番で、順次、各サブボリュームを走査し、その走査で取得した各サブボリュームのデータを結合することで、走査領域Sの全体の画像データを生成する。そして、被検体の心電波形を取得し、ECG信号をトリガ信号として各サブボリュームを走査する。以下、ECG信号を利用した走査方法について説明する。
【0009】
心電波形を用いて走査を行う場合、心電計により被検体の心電波形を取得し、例えば、心電波形のR波が検出された時にECGトリガ信号を生成して超音波診断装置に出力する。超音波診断装置がそのECGトリガ信号を受けるたびに、異なるサブボリュームを超音波で走査して、各サブボリュームのデータを取得する。
【0010】
例えば、超音波診断装置が第1のECGトリガ信号Iを受けると、その信号に従って超音波プローブにより走査を開始する。そして、超音波診断装置は、第1のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、サブボリュームAの走査を行う。例えば、1心拍中に同じサブボリュームの走査を4回行い、時相が異なるデータA1、A2、A3及びA4を取得する。
【0011】
次に、第2のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、超音波診断装置は、サブボリュームBを走査し、各時相においてデータB1、B2、B3及びB4を取得する。同様に、第3のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、超音波診断装置は、サブボリュームCを走査し、各時相においてデータC1、C2、C3及びC4を取得する。さらに、第4のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、超音波診断装置は、サブボリュームDを走査し、各時相においてデータD1、D2、D3及びD4を取得する。このように、超音波診断装置は、ECGトリガ信号に応じて、異なるサブボリュームを超音波で走査して、各サブボリュームのデータを取得する。
【0012】
そして、超音波診断装置は、異なるサブボリュームを走査することで取得したデータであって、同じ時相に取得したデータ同士を結合して、全体の走査領域Sに対応する1つのデータを生成する。具体的には、超音波診断装置は、異なるサブボリュームのデータであって、同じ時相に取得したデータA1、B1、C1及びD1を結合して、関心領域全体のデータを生成する。同様に、各時相におけるサブボリュームのデータを結合することにより、各時相における関心領域全体のデータを生成する。超音波診断装置は、関心領域全体のデータに対してボリュームレンダリングなどの画像処理を施すことにより、3次元画像データなどの超音波画像データを生成する。
【0013】
さらに、第5のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、超音波診断装置は、再びサブボリュームAを走査し、各時相においてデータA5、A6、A7及びA8を取得する。このように、新たなデータが取得されると、超音波診断装置は、サブボリュームAのデータを更新し、データA5、B1、C1及びD1を結合して関心領域全体のデータを生成する。そして、そのデータに基づいて3次元画像データを生成する。すなわち、サブボリュームAについては、ボリュームデータA1に代えてボリュームデータA5を用いて全体のデータを生成する。そして、順次、各サブボリュームのデータを更新して新たな3次元画像データを生成していく。
【0014】
以上のように取得される3次元画像に対しても、2次元画像に対して行われている自動画質調整を行うことで、画質調整に関する操作性を簡便化したいという要望がある。
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,544,175号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した画質調整機能においては、所望のタイミングで画質調整の指示が与えられると、その指示が与えられた以降に取得された受信信号に対して、画質調整用パラメータに従った画質調整が行われる。しかしながら、指示が与えられる以前に取得された受信信号には、その画質調整用パラメータに従った画質調整は行われていなかった。
【0017】
ECG信号を利用してサブボリュームを走査し、各サブボリュームの走査で取得したデータを結合して走査領域全体のデータを生成する手法においては、複数の心拍に亘って走査を行う必要がある。上述した例では、走査領域全体のデータを生成するために、4心拍に亘って走査を行う必要がある。
【0018】
従って、複数の心拍に亘って走査を行うことで生成された走査領域全体のデータにおいては、画質調整の指示が与えられた後に取得されたデータと、その指示が与えられる前に取得されたデータが混在することになる。すなわち、走査領域全体のデータは、画質調整用パラメータに従った画質調整が行われたデータと、その画質調整が行われていないデータが混在することになる。その結果、走査領域全体のデータに基づく超音波画像には、部分的に画質が異なってしまう問題があった。
【0019】
そのため、超音波画像全体の画質を均一に調整するためには、各サブボリュームに対する走査を最初からやり直す必要があった。また、全てのサブボリュームのデータが更新されるまで走査を継続し、全てのサブボリュームのデータが更新されるまで待つ必要があった。
【0020】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、3次元領域を複数の領域に分けて走査する超音波診断装置において、均一な画質の超音波画像データを生成することが可能な超音波診断装置、及びその超音波診断装置を制御して超音波画像データを取得するための超音波画像取得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1記載の発明は、心電波形に基づいたトリガ信号を受けるたびに異なる3次元領域を超音波で走査し、次のトリガ信号を受けるまで同じ3次元領域を走査して各3次元領域のデータを取得し、画質調整の指示を受けた場合、その画質調整の指示を受けた後においては、予め設定された第1の画質調整条件に従って画質調整が行われた各3次元領域のデータを取得するスキャン手段と、前記画質調整の指示を受ける前に取得された各3次元領域のデータに対して、前記第1の画質調整条件に基づく第2の画質調整条件に従った画質調整を行い、互いに異なる3次元領域のデータであって、同じ時相に取得された各3次元領域のデータを結合して超音波画像データを生成する画像処理手段と、を有することを特徴とする超音波診断装置である。
また、請求項3に記載の発明は、コンピュータに、心電波形に基づいたトリガ信号を受けるたびに異なる3次元領域をスキャン手段に超音波で走査させ、次のトリガ信号を受けるまで同じ3次元領域を前記スキャン手段に走査させて各3次元領域のデータを取得させ、画質調整の指示を受けた場合、その画質調整の指示を受けた後においては、予め設定された第1の画質調整条件に従って画質調整が行われた各3次元領域のデータを前記スキャン手段に取得させる制御機能と、前記画質調整の指示を受ける前に取得された各3次元領域のデータに対して、前記第1の画質調整条件に基づく第2の画質調整条件に従った画質調整を行い、互いに異なる3次元領域のデータであって、同じ時相に取得された各3次元領域のデータを結合して超音波画像データを生成する画像処理機能と、を実行させることを特徴とする超音波画像取得プログラムである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、画質調整の指示が与えられた後に取得されたデータに第1の画質調整条件に従った画質調整を行う。さらに、その指示が与えられる前に取得されたデータに、第1の画質調整条件に基づく第2の画質調整条件に従った画質調整を行う。そのことにより、画質調整の指示の前後に取得されたデータを結合した場合であっても、画質が均一の超音波画像データを生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【0024】
超音波プローブ2は、超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブからなり、3次元的に超音波を送信して反射波を受信することで、放射状に広がる形状の3次元データをエコー信号として受信する。また、2次元アレイプローブの代わりに、1次元アレイプローブを超音波プローブ2に用いても良い。例えば、超音波振動子が所定方向(走査方向)に配列され、超音波振動子を走査方向に直交する方向(揺動方向)に機械的に揺動可能な1次元アレイプローブを用いても良い。
【0025】
送受信部3は送信部と受信部とを備え、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させ、超音波プローブ2が受信したエコー信号を受信する。
【0026】
送受信部3の送信部は、図示しないクロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えている。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0027】
送受信部3の送信部は、制御部9から出力された制御信号に従って、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させる。その制御信号には、超音波プローブ2による走査領域を示すスキャン条件などが含まれ、送信部はそのスキャン条件に従って超音波プローブによって走査する。例えば、送信部は、制御部9から、走査領域を複数に分割する分割パターンなどのスキャン条件を含む制御信号を受け、その制御信号に従って、所望の走査領域を複数の領域(サブボリューム)に分けて、各サブボリュームを超音波プローブ2によって走査する。
【0028】
送受信部3の受信部は、第1のゲイン調整部31(プリアンプ回路)、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。第1のゲイン調整部31(プリアンプ回路)は、制御部9から出力される第1のゲイン補正値に従って、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する(第1のゲイン調整)。なお、第1のゲイン補正値については後述する。
【0029】
A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。なお、この送受信部3によって加算処理された信号を「RFデータ(生データ)」と称する場合がある。送受信部3は、RFデータを信号処理部4に出力する。
【0030】
この実施形態では、心電計を用いて被検体の心電波形(ECG信号)を取得し、制御部9が超音波診断装置1の外部からECGトリガ信号を受信し、その信号に応じて送受信部3による超音波の送受信を制御する。例えば、R波が検出された際にECGトリガ信号を発生する信号発生器を設け、そのECGトリガ信号を制御部9に出力する。制御部9は、ECGトリガ信号に応じて送受信部3による超音波の送受信を制御する。また、心電波形(ECG信号)を制御部9に入力し、制御部9がR波を検出しても良い。この場合、制御部9は、R波の検出に応じて送受信部3による超音波の送受信を制御する。
【0031】
制御部9の設定条件記憶部94には、スキャン条件が記憶されている。スキャン条件には、例えば、3次元の走査領域の分割パターン、3次元領域であるサブボリュームの範囲、超音波を送信する深さ、走査線密度、及び並列同時受信数などが含まれる。制御部9は、設定条件記憶部94から分割パターンなどのスキャン条件を読み込み、そのスキャン条件を制御信号に含ませて送受信部3に出力する。送受信部3は、分割パターンなどを含んだ制御信号に従って、各サブボリュームを超音波プローブ2によって走査する。
【0032】
ここで、超音波プローブ2と送受信部3が走査する3次元の走査領域、及び走査のタイミングについて説明する。送受信部3は制御部9の制御の下、ECGトリガ信号を利用して、各サブボリュームを走査する。例えば、図7(a)に示すように、送受信部3は制御部9の制御の下、3次元の走査領域Sを4つのサブボリュームA、B、C及びDに分割し、図7(b)に示すように、各サブボリュームを順番に走査する。この実施形態では、送受信部3は、サブボリュームA、B、C及びDが、サブボリュームA、サブボリュームB、サブボリュームC、サブボリュームDの順番に1列に並ぶように全体の走査領域Sを等分割して走査を行う。これにより、サブボリュームAの隣がサブボリュームBになる。また、サブボリュームBの隣であって、サブボリュームAの反対側がサブボリュームCになる。また、サブボリュームCの隣であって、サブボリュームBの反対側がサブボリュームDになる。
【0033】
そして、全体の走査領域Sを複数の3次元領域(サブボリューム)に分割した上で、被検体の心電波形を取得し、ECG信号をトリガ信号として各サブボリュームを走査する。
【0034】
以下、ECG信号を利用した走査方法について図2を参照して説明する。図2は、ECGトリガ信号に応じて各時相において取得されたデータと、そのデータの結合を説明するための模式図である。心電計により被検体の心電波形(ECG信号)が取得され、例えば、R波が検出されると、ECGトリガ信号が生成されて制御部9に出力される。例えば図2に示すように、第1のECGトリガ信号Iが制御部9に出力され、制御部9がそのECGトリガ信号Iを受信すると、送受信部3に対してビームフォーミングに必要な遅延パターンなどの制御信号を出力する。その制御信号には、上述したように、走査領域Sの分割パターンやサブボリュームの範囲などのスキャン条件が含まれている。
【0035】
具体的には、第1のECGトリガ信号Iに対応する心拍では、制御部9は、サブボリュームAを走査するために、サブボリュームAの領域を示す情報を上記制御信号に含ませて送受信部3に出力する。送受信部3はその制御信号に従って、超音波プローブ2によってサブボリュームAを走査することで、サブボリュームAの受信信号を取得する。
【0036】
例えば、第1のECGトリガ信号Iに対応した心拍で、送受信部3はサブボリュームAを4回走査する。そして、図2に示すように、送受信部3は、1心拍中に時相が異なる受信信号A1、A1、A3及びA4を取得する。
【0037】
ここで、サブボリュームを1回走査するために必要な走査時間をΔtとする。また、制御部9が第1のECGトリガ信号Iを受けた時相をtとし、その時相tで走査を開始して取得した受信信号を受信信号A1とする。その受信信号A1を取得した後、時相tで走査を開始して取得した受信信号を受信信号A2とする。その受信信号A2を取得した後、時相tで走査を開始して取得した受信信号を受信信号A3とする。その受信信号A3を取得した後、時相tで走査を開始して取得した受信信号を受信信号A4とする。つまり、送受信部3は、時相t〜時相tの間(=Δt)で受信信号A1を取得し、時相t〜時相tの間(Δt)で受信信号A2を取得し、時相t〜時相tの間で受信信号A3を取得し、時相t〜時相tの間(Δt)で受信信号A4を取得する。以上のように、送受信部3は、第1のECGトリガ信号Iに対応した1心拍中では、受信信号A1、A2、A3及びA4を取得する。
【0038】
次に、第2のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、送受信部3は制御部9の制御の下、サブボリュームBを走査し、各時相において受信信号B1、B2、B3及びB4を取得する。同様に、第3のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、送受信部3は制御部9の制御の下、サブボリュームCを走査し、各時相において受信信号C1、C2、C3及びC4を取得する。さらに、第4のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、送受信部3は制御部9の制御の下、サブボリュームDを走査し、各時相において受信信号D1、D2、D3及びD4を取得する。そして、第5のECGトリガ信号Iに対応した心拍では、送受信部3は制御部9の制御の下、再びサブボリュームAを走査し、各時相において受信信号A5、A6、A7及びA8を取得する。
【0039】
以上のように、制御部9は、新たなECGトリガ信号を受信するたびに、送受信部3に異なるサブボリュームを超音波で走査させ、各サブボリュームの受信信号を取得させる。すなわち、制御部9が新たなECGトリガ信号を受信するまで、送受信部3は同じサブボリュームを走査し続ける。そして、制御部9が新たなECGトリガ信号を受信すると、送受信部3は別のサブボリュームを走査する。
【0040】
なお、超音波プローブ2と送受信部3がこの発明の「スキャン手段」の1例に相当する。
【0041】
信号処理部4は、Bモード処理部やCFM処理部などを備えて構成されている。Bモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は送受信部3から出力された受信信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。Bモード処理部によって処理が施された後のデータを、「ベクタデータ」と称することとする。また、CFM処理部は、動いている血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。
【0042】
記憶部5は、メモリやハードディスクなどの記憶装置で構成され、信号処理部4により生成されたベクタデータを記憶する。この実施形態では、全体の走査領域Sを4つのサブボリュームに分けて、サブボリュームごとに走査を行っているため、各サブボリュームのベクタデータが記憶部5に記憶される。
【0043】
画像処理部6は、データ結合部61、画像データ生成部62、及び第2のゲイン調整部63を備えている。そして、画像処理部6は、各サブボリュームのベクタデータを記憶部5から読み出して、それらを結合し、結合されたデータに基づいて3次元画像データを生成する。
【0044】
データ結合部61は、互いに異なるサブボリュームを走査することで取得されたベクタデータであって、同じ時相に取得されたベクタデータを記憶部5から読み出して結合する。すなわち、データ結合部61は、異なる心拍に取得されたベクタデータであって、同じ時相に取得されたベクタデータを記憶部5から読み出して結合する。この結合によって、全体の走査領域Sを表す1つのベクタデータが生成される。
【0045】
例えば図2に示すように、データ結合部61は、時相t〜時相tの間に取得されたベクタデータA1、B1、C1及びD1を記憶部5から読み出して結合することで、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。このように、データ結合部61は、互いに異なるサブボリュームA、B、C及びDを走査することで取得されたベクタデータであって、同じ時相t〜時相tの間に取得されたベクタデータA1、B1、C1及びD1を結合することで、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。そして、データ結合部61は、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを画像データ生成部62に出力する。
【0046】
同様に、データ結合部61は、時相t〜時相tの間に取得されたベクタデータA2、B2、C2及びD2を記憶部5から読み出して結合することで、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。時相t〜時相t、及び、時相t〜時相tについても、データ結合部61は、互いに異なるサブボリュームを走査することで取得されたベクタデータであって、同じ時相に取得されたベクタデータを記憶部5から読み出して結合することにより、各時相における走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。そして、データ結合部61は、各時相における走査領域Sの全体のベクタデータを画像データ生成部62に出力する。
【0047】
そして、第5のECGトリガ信号Iに対応した心拍において、送受信部3によってサブボリュームAのベクタデータA5、A6、A7及びA8が取得されると、データ結合部61は、サブボリュームAのデータを更新し、ベクタデータA5、B1、C1及びD1を結合して、同じ時相における走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。すなわち、サブボリュームAについては、ベクタデータA1に代えてベクタデータA5を用いて全体のベクタデータを生成する。そして、データ結合部61は、順次、各サブボリュームのベクタデータを更新して新たなデータを生成していく。
【0048】
画像データ生成部62は、直交座標系で表される画像を得るために、ベクタデータを直交座標系で表されるボクセルデータに変換する(スキャンコンバージョン処理)。そして、画像データ生成部62は、そのボクセルデータにボリュームレンダリングやMPR処理などの画像処理を施すことにより、3次元画像データやMPR画像データ(任意の断面における画像データ)などの超音波画像データを生成する。
【0049】
第2のゲイン調整部63は、制御部9から出力される第2のゲイン補正値に従って、各サブボリュームのベクタデータに対してゲイン調整を行う(第2のゲイン調整)。第2のゲイン調整部63は、画質調整の指示が与えられた後に取得されたベクタデータに対してゲイン調整を行う。例えば、第2のゲイン調整部63は、第2のゲイン補正値に従って、画質調整の指示が与えられた後に取得されたベクタデータの輝度値を変える。第2のゲイン補正値と、第2のゲイン調整部63による処理については後述する。
【0050】
なお、画像処理部6は、図示しないCPUと、ROM、RAMなどの記憶部を備えて構成されている。記憶部には、画像処理部6の機能を実行するための画像処理プログラムが記憶されている。この画像処理プログラムには、データ結合部61の機能を実行するためのデータ結合プログラム、画像データ生成部62の機能を実行するための画像生成プログラム、及び、第2のゲイン調整部63の機能を実行するためのゲイン調整プログラムが含まれている。そして、CPUがその画像処理プログラムを実行することにより、記憶部5から異なる時相に取得されたベクタデータを読み込んで結合し、さらに、ボリュームレンダリングなどの画像処理を施すことで3次元画像データなどの超音波画像データを生成する。また、CPUがゲイン調整プログラムを実行することにより、ベクタデータに対してゲイン調整を行う。
【0051】
表示処理部7は、画像処理部6から出力された3次元画像データに基づく3次元画像などの超音波画像を表示部81に表示させる。
【0052】
ユーザインターフェース(UI)8は、表示部81と操作部82を備えている。表示部81は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタからなり、断層像、3次元画像又は血流情報などを表示する。操作部82は、ジョイスティックやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチ、各種ボタン、キーボード又はTCS(Touch Command Screen)などで構成されている。操作者は操作部82を用いて、自動画質調整の指示を与えたり、スキャン条件を入力したりすることができる。例えば操作部82に自動画質調整の指示を与えるためのボタンを設置しておき、操作者は所望のタイミングでそのボタンを押下することで自動画質調整の指示を与える。操作部82で入力されたスキャン条件は、制御部9に送られ、設定条件記憶部94に記憶される。そして、制御部9は、設定条件記憶部94に記憶されているスキャン条件に従って超音波診断装置1の各部を制御する。
【0053】
制御部9は、演算部91と設定条件記憶部94を備え、超音波診断装置1の各部の動作を制御する。設定条件記憶部94には、上述したように、走査領域Sの分割パターンや、各サブボリュームの大きさなどを示すスキャン条件が記憶されている。
【0054】
演算部91は、第1のゲイン補正値算出部92と第2のゲイン補正値算出部93を備えている。第1のゲイン補正値算出部92は、信号処理部4によって処理されたベクタデータに基づいて、送受信部3内で実施されるゲイン調整用の補正値を求める。
【0055】
ここで、第1のゲイン補正値算出部92による処理内容について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、超音波画像の輝度値の分布を示す図である。図4は、ゲイン補正値の分布を示す図である。なお、説明を簡便にするために、図3には、2次元画像である断層像の輝度値の分布を示し、図4には、断層像に対するゲイン補正値の分布を示している。
【0056】
操作者が操作部82を用いて、超音波画像に対する自動画質調整の指示を与えると、その指示は制御部9に出力される。制御部9は自動画質調整の指示を受けて、送受信部3を制御して、走査領域Sの全体を走査させる。例えば、送受信部3は制御部9の制御の下、走査領域Sの全体を1回走査する。また、操作者による自動画質調整の指示の代わりに、予め設定されたタイミングで、制御部9は、送受信部3に走査領域Sの全体を走査させても良い。このとき、制御部9は、画質調整に関するパラメータを初期値に設定する。例えば、制御部9は、ゲイン補正値を予め決定された初期値に設定する。例えば、制御部9は、深さ方向におけるゲイン補正値、方位方向におけるゲイン補正値、及び奥行き方向におけるゲイン補正値を初期値にし、その初期値を送受信部3の第1のゲイン補正部31に設定する。そして、送受信部3は、この状態で走査領域Sの全体を超音波プローブ2によって走査する。信号処理部4は、その走査で取得された受信信号に基づいて、走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。信号処理部4は、走査領域Sの全体のベクタデータを制御部9の演算部91に出力する。
【0057】
第1のゲイン補正値算出部92は、走査領域Sの全体のベクタデータを信号処理部4から受けて、輝度値の分布を作成する。図3には、断層像の例を示しているため、深さ方向と方位方向で規定される2次元平面の各位置における輝度値の分布が示されている。なお、図3において、縦軸は輝度(階調)を示している。この実施形態では、3次元の走査領域Sを走査して、その走査領域Sのベクタデータが生成されるため、第1のゲイン補正値算出部92は、深さ方向、方位方向、及び奥行き方向によって規定される3次元空間の各位置における輝度値の分布を作成する。
【0058】
さらに、第1のゲイン補正値算出部92は、3次元空間の各位置における輝度値の分布に基づいて、送受信部3の第1のゲイン調整部31に設定されるゲイン補正値を求める。第1のゲイン補正値算出部92は、3次元空間の各位置における輝度値の分布に基づいて、深さ方向、方位方向、及び奥行き方向で規定される3次元空間の各位置におけるゲイン補正値(第1のゲイン補正値)を求める。第1のゲイン補正値算出部92は、3次元空間における各位置の輝度値が均一になるように、3次元空間の各位置におけるゲイン補正値を求める。例えば、輝度値が高い位置については、ゲイン補正値を比較的小さくし、輝度値が低い位置については、ゲイン補正値を比較的大きくする。図4には、断層像の例を示しているため、深さ方向と方位方向で規定される2次元平面の各位置に対するゲイン補正値(dB)が示されている。なお、図4において、縦軸はゲイン(dB)を示している。この実施形態では、第1のゲイン補正値算出部92は、深さ方向、方位方向、及び奥行き方向によって規定される3次元空間の各位置におけるゲイン補正値(第1のゲイン補正値)を求める。そして、第1のゲイン補正値算出部92は、3次元空間の各位置におけるゲイン補正値を表す3次元データテーブルを作成する。第1のゲイン補正値が、この発明の「第1の画質調整条件」の1例に相当する。
【0059】
制御部9は、第1のゲイン補正値を送受信部3に出力する。第1のゲイン補正値は、ハードウェアである第1のゲイン調整部31(プリアンプ回路)に設定される。
【0060】
第2のゲイン補正値算出部93は、第1のゲイン補正値算出部92によって求められた第1のゲイン補正値に基づいて、画像処理部6の第2のゲイン調整部63に設定される第2のゲイン補正値を求める。第2のゲイン補正値算出部93は、第1のゲイン補正値に基づいて、深さ方向、方位方向、及び奥行方向で規定される3次元空間の各位置におけるゲイン補正値(第2のゲイン補正値)を求める。上述したように、第2のゲイン調整部63は、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータに対してゲイン調整を行う。従って、第2のゲイン調整部63によるゲイン調整の対象となるベクタデータには、第1のゲイン補正値算出部92によって求められた第1のゲイン補正値に基づくゲイン調整は施されていない。そこで、第2のゲイン調整値算出部93は、予め設定されたバイアスを第1のゲイン補正値に加え、その値を第2のゲイン補正値とする。そして、第2のゲイン補正値算出部93は、3次元空間の各位置におけるゲイン補正値を表す3次元データテーブルを作成する。第2のゲイン補正値が、この発明の「第2の画質調整条件」の1例に相当する。
【0061】
制御部9は、第2のゲイン補正値を画像処理部6に出力する。第2のゲイン補正値は、画像処理部6にて実行されるソフトウェアに設定される。
【0062】
第1のゲイン調整部31(プリンアンプ回路)は、第1のゲイン補正値算出部92によって求められた第1のゲイン補正値に従って、以後、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する(第1のゲイン調整)。
【0063】
また、第2のゲイン調整部63は、第2のゲイン補正値算出部93によって求められた第2のゲイン補正値に従って、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータに対してゲイン調整を行う(第2のゲイン調整)。すなわち、第2のゲイン調整部63は、自動画質調整の指示が与えられた後に取得されたベクタデータに対してはゲイン調整を行わず、その指示が与えられる前に取得されたベクタデータに対してのみゲイン調整を行う。自動画質調整の指示が与えられた後においては、第1のゲイン調整部31によって、第1のゲイン補正値算出部92によって求められた第1のゲイン補正値に基づくゲイン調整が行われているため、第2のゲイン調整を行わない。一方、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータは、第1のゲイン補正値算出部92によって求められた第1のゲイン補正値に基づくゲイン調整が行われていないため、第2のゲイン調整部63によってゲイン調整を行う。例えば、第2のゲイン調整部63は、第2のゲイン補正値に従って、自動画質調整の指示が与えられた後に取得されたベクタデータの輝度値を変える。
【0064】
第2のゲイン調整部63によるゲイン調整と、データ結合部61による結合処理について図5を参照して説明する。図5は、ECGトリガ信号に応じて各時相において取得されたデータと、そのデータの結合を説明するための模式図である。
【0065】
例えば、第3心拍の途中で自動画質調整の指示が与えられた場合について説明する。ベクタデータA1〜A4、ベクタデータB1〜B4、ベクタデータC1及びC2は、指示が与えられる前に取得されたベクタデータであるため、第2のゲイン調整部63はそれらに対してゲイン調整を行う。一方、ベクタデータC3以降のベクタデータは、自動画質調整の指示が与えられた後に取得されたベクタデータであるため、第2のゲイン調整部63はそれらに対してはゲイン調整を行わない。
【0066】
例えば、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する場合、データ結合部61は、ベクタデータA1、B1、C1及びD1を記憶部5から読み出す。第2のゲイン調整部63は、第2のゲイン補正値に従って、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータA1、B1及びC1に対してゲイン調整を行う(第2のゲイン調整)。なお、ベクタデータD1は、第1のゲイン調整部31において、第1のゲイン補正値に従ったゲイン調整が施されている(第1のゲイン調整)。そして、データ結合部61は、第2のゲイン調整が施されたベクタデータA1、B1及びC1と、第1のゲイン調整が施されているベクタデータD1を結合し、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。
【0067】
同様に、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する場合、データ結合部61は、ベクタデータA2、B2、C2及びD2を記憶部5から読み出す。第2のゲイン調整部63は、第2のゲイン補正値に従って、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータA2、B2及びC2に対してゲイン調整を行う(第2のゲイン調整)。なお、ベクタデータD2は、第1のゲイン調整部31において、第1のゲイン補正値に従ったゲイン調整が施されている(第1のゲイン調整)。そして、データ結合部61は、第2のゲイン調整が施されたベクタデータA2、B2及びC2と、第1のゲイン調整が施されているベクタデータD2を結合し、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。
【0068】
以降の時相においても、第2のゲイン調整部63は、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータに対してゲイン調整を施し、データ結合部61は、各サブボリュームのベクタデータを結合する。
【0069】
そして、画像データ生成部62は、結合されたベクタデータに基づいてボクセルデータを生成し、そのボクセルデータにボリュームレンダリングなどの画像処理を施すことにより、3次元画像データなどの超音波画像データを生成する。
【0070】
以上のように、自動画質調整の指示が与えられた後に取得された受信信号に対しては、第1のゲイン補正値に従った第1のゲイン調整を施す。さらに、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータに対しては、第1のゲイン補正値が反映された第2のゲイン補正値に従った第2のゲイン調整を施す。そのことにより、自動画質調整の前後に取得されたベクタデータを結合した場合であっても、画質が均一な超音波画像データを生成することが可能となる。その結果、サブボリュームに対する走査を最初からやり直す必要がない。また、全てのサブボリュームのデータが更新されるまで待たなくても、画質が均一な超音波画像データを生成することができる。
【0071】
制御部9は、図示しないCPUと、ROM、RAMなどの記憶部を備えて構成されている。記憶部には、超音波診断装置1の各部を制御するための制御プログラムと、演算部91の機能を実行するための演算プログラムが記憶されている。この制御プログラムには、送受信部3による超音波の送受信を制御して受信信号を取得するためのプログラムが含まれる。そして、CPUがその制御プログラムを実行することにより、送受信部3を制御して受信信号を取得させる。すなわち、CPUがその制御プログラムを実行することにより、走査領域Sを複数のサブボリュームに分け、ECG信号に応じて各サブボリュームを送受信部3に走査させる。また、CPUが演算プログラムを実行することで、演算部91の機能を実行して、第1のゲイン補正値と第2のゲイン補正値を求める。
【0072】
なお、画像処理部6の機能を実行するための画像処理プログラムと、制御部9の機能を実行するための制御プログラムが、この発明の「超音波画像取得プログラム」の1例に相当する。
【0073】
なお、この実施形態においては、座標変換前のベクタデータを用いて第1のゲイン補正値と第2のゲイン補正値を求めている。他の例として、座標変換後の画像データを用いて第1のゲイン補正値と第2のゲイン補正値を求めても良い。例えば、画像処理部6は、画像データ生成部62によって生成された3次元画像データに基づいて、3次元空間における輝度値の分布を求める。そして、画像処理部6は、その輝度値の分布に基づいて各位置に対する第1のゲイン補正値を求め、その第1のゲイン補正値に基づいて第2のゲイン補正値を求める。このように、座標変換後の画像データに基づいて第1のゲイン補正値と第2のゲイン補正値を求め、第1のゲイン補正値と第2のゲイン補正値に従ってゲイン調整を行っても、画質が均一な超音波画像データを生成することが可能となる。
【0074】
また、画像データ生成部62が、ボクセルデータにボリュームレンダリングを施す際に、第2のゲイン補正値に従った第2のゲイン調整をボクセルデータに施し、その後、ボリュームレンダリングを行っても良い。この場合、画像データ生成部62は、上述した処理と同様に、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたデータに対して第2のゲイン調整を行う。このように、画像データ生成時に第2のゲイン調整を行っても、画質が均一な超音波画像データを生成することが可能となる。
【0075】
また、この実施形態においては、送受信部3におけるゲイン調整の値を変えている。この他の例として、送受信部3における受信時の遅延パターンを変えたり、画像処理部6における画像処理のフィルタ係数を変えたりして、超音波画像データの画質調整を行っても良い。
【0076】
(動作)
次に、この実施形態に係る超音波診断装置1による一連の動作について図6を参照して説明する。図6は、この発明の実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【0077】
(ステップS01)
送受信部3は、制御部9の制御の下、ECG信号に応じて走査領域Sの各サブボリュームを超音波によって走査する。例えば図2に示すように、送受信部3は、第1のECGトリガ信号Iに応じてサブボリュームAを4回走査し、サブボリュームAについて受信信号A1、A2、A3及びA4を順次取得していく。以降、送受信部3は、ECGトリガ信号に応じてサブボリュームB、C及びDを走査し、各サブボリュームについて受信信号を順次取得していく。
【0078】
(ステップS02)
そして、所望のタイミングで、操作者が操作部82を用いて自動画質調整の指示を与える。例えば、操作部82に設置されたボタンを押下することで自動画質調整の指示を与える。この自動画質調整の指示は、ユーザインターフェース8から制御部9に出力される。また、自動画質調整を行うタイミングを計るためのタイマーを制御部9に予め設定しておき、所定のタイミングで画質調整を行うようにしても良い。
【0079】
(ステップS03)
制御部9は、自動画質調整の指示を受けると、画質調整に関するパラメータを初期値に設定する。例えば、制御部9は、深さ方向におけるゲイン補正値、方位方向におけるゲイン補正値、及び奥行き方向におけるゲイン補正値を初期値にし、その初期値を送受信部3の第1のゲイン補正値31に設定する。
【0080】
(ステップS04)
送受信部3は、制御部9の制御の下、走査領域Sの全体を1回走査する。その後、送受信部3は、制御部9の制御の下、ECG信号に応じて走査領域Sの各サブボリュームを超音波によって走査する。
【0081】
(ステップS05)
第1のゲイン補正値算出部92は、走査領域Sの全体のベクタデータに基づいて、3次元空間の各位置における輝度値の分布を求める。そして、第1のゲイン補正値算出部92は、その輝度値の分布に基づいて、送受信部3の第1のゲイン調整部31に設定するための第1のゲイン補正値を求める。例えば、第1のゲイン補正値算出部92は、輝度値の分布が均一になるように、3次元空間の各位置における第1のゲイン補正値を求める。制御部9は第1のゲイン補正値を送受信部3に出力し、第1のゲイン調整部31に第1のゲイン補正値を設定する。第1のゲイン調整部31は、第1のゲイン補正値算出部92によって求められた第1のゲイン補正値に従って、以後、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する(第1のゲイン調整)。
【0082】
(ステップS06)
第2のゲイン補正値算出部93は、第1のゲイン補正値算出部92によって求められたゲイン補正値に基づいて、画像処理部6の第2のゲイン調整部63に設定するための第2のゲイン補正値を求める。第2のゲイン補正値算出部93は、予め設定されたバイアスを第1のゲイン補正値に加えることで、3次元空間の各位置における第2のゲイン補正値を求める。制御部9は第2のゲイン補正値を画像処理部6に出力し、第2のゲイン調整部63に第2のゲイン補正値を設定する。
【0083】
(ステップS07)
データ結合部61は、異なるサブボリュームにおいて取得されたベクタデータであって、同じ時相に取得されたベクタデータを結合する。例えば、図5に示すように、第3心拍中の途中(矢印で示す時点)で自動画質調整の指示が与えられた場合、ベクタデータA1〜A4、ベクタデータB1〜B4、ベクタデータC1及びC2は、指示が与えられる前に取得されたベクタデータであるため、第2のゲイン調整部63はそれらに対してゲイン調整を行う。そして、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する場合、データ結合部61は、ベクタデータA1、B1、C1及びD1を記憶部5から読み出す。第2のゲイン調整部63は、画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータA1、B1及びC1に対してゲイン調整を行う(第2のゲイン調整)。例えば、第2のゲイン調整部63は、第2のゲイン補正値に従ってデータA1、B1及びC1の輝度値を変える。なお、ベクタデータD1は、第1のゲイン調整部31において、第1のゲイン補正値に従ったゲイン調整が施されている(第1のゲイン調整)。そして、データ結合部61は、第2のゲイン調整が施されたベクタデータA1、B1及びC1と、第1のゲイン調整が施されているベクタデータD1を結合し、時相t〜時相tにおける走査領域Sの全体のベクタデータを生成する。
【0084】
(ステップS08)
画像データ生成部62は、データ結合部61にて結合されたベクタデータに基づいてボクセルデータを生成し、そのボクセルデータにボリュームレンダリングなどの画像処理を施すことにより、3次元画像データを生成する。画像データ生成部62は、その3次元画像データを表示処理部7に出力する。
【0085】
表示処理部7は、画像データ生成部62から3次元画像データを受けると、その3次元画像データに基づく3次元画像を表示部81に表示させる。
【0086】
以上のように、自動画質調整の指示が与えられた後に取得された受信信号に対しては、第1のゲイン補正値に従った第1のゲイン調整を施す。さらに、自動画質調整の指示が与えられる前に取得されたベクタデータに対しては、第1のゲイン補正値が反映された第2のゲイン補正値に従った第2のゲイン調整を施す。そのことにより、自動画質調整の前後に取得されたデータを結合する場合であっても、画質が均一な超音波画像データを生成することが可能となる。すなわち、自動画質調整の指示が与えられる前に取得された過去のベクタデータにも、送受信部3によって行われるゲイン調整が反映されたゲイン調整を施すことで、超音波画像の画質を均一にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ECGトリガ信号に応じて各時相において取得されたデータと、そのデータの結合を説明するための模式図である。
【図3】超音波画像の輝度値の分布を示す図である。
【図4】ゲイン補正値の分布を示す図である。
【図5】ECGトリガ信号に応じて各時相において取得されたデータと、そのデータの結合を説明するための模式図である。
【図6】この発明の実施形態に係る超音波診断装置による一連の動作を示すフローチャートである。
【図7】分割された3次元の走査領域を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0088】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部
4 信号処理部
5 記憶部
6 画像処理部
7 表示処理部
8 ユーザインターフェース(UI)
9 制御部
31 第1のゲイン調整部
61 データ結合部
62 画像データ生成部
63 第2のゲイン調整部
81 表示部
82 操作部
91 演算部
92 第1のゲイン補正値算出部
93 第2のゲイン補正値算出部
94 設定条件記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電波形に基づいたトリガ信号を受けるたびに異なる3次元領域を超音波で走査し、次のトリガ信号を受けるまで同じ3次元領域を走査して各3次元領域のデータを取得し、画質調整の指示を受けた場合、その画質調整の指示を受けた後においては、予め設定された第1の画質調整条件に従って画質調整が行われた各3次元領域のデータを取得するスキャン手段と、
前記画質調整の指示を受ける前に取得された各3次元領域のデータに対して、前記第1の画質調整条件に基づく第2の画質調整条件に従った画質調整を行い、互いに異なる3次元領域のデータであって、同じ時相に取得された各3次元領域のデータを結合して超音波画像データを生成する画像処理手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記スキャン手段は、前記画質調整の指示を受けた後においては、予め設定された第1のゲイン補正値に従ってゲイン調整が行われた各3次元領域のデータを取得し、
前記画像処理手段は、前記画質調整の指示を受ける前に取得された前記各3次元領域のデータに、前記第1のゲイン補正値に基づく第2のゲイン補正値に従ったゲイン調整を行い、異なる3次元領域のデータであって、同じ時相に取得されたデータを結合して超音波画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
コンピュータに、
心電波形に基づいたトリガ信号を受けるたびに異なる3次元領域をスキャン手段に超音波で走査させ、次のトリガ信号を受けるまで同じ3次元領域を前記スキャン手段に走査させて各3次元領域のデータを取得させ、画質調整の指示を受けた場合、その画質調整の指示を受けた後においては、予め設定された第1の画質調整条件に従って画質調整が行われた各3次元領域のデータを前記スキャン手段に取得させる制御機能と、
前記画質調整の指示を受ける前に取得された各3次元領域のデータに対して、前記第1の画質調整条件に基づく第2の画質調整条件に従った画質調整を行い、互いに異なる3次元領域のデータであって、同じ時相に取得された各3次元領域のデータを結合して超音波画像データを生成する画像処理機能と、
を実行させることを特徴とする超音波画像取得プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−284211(P2008−284211A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132961(P2007−132961)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】