説明

超音波診断装置、血流可視化装置及び制御プログラム

【課題】血流のずり応力とずり応力以外の血流情報とを同時に観察することができる超音波診断装置、血流可視化装置及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】エコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出部83と、前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報として血流速度を算出する血流速度・圧力算出部82と、エコー信号に基づいて作成されたBモード画像を表示する表示部7と、表示部7に表示されたBモード画像における血管部分に前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理部6と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流の動態を表示する超音波診断装置、血流可視化装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血流の動態を知るための超音波画像としてドプラ画像がある。このドプラ画像は、生体組織に対する超音波の送受信により得られたエコー信号のドプラシフトを求め、例えば超音波の音線方向に沿った血流の速度成分をカラーで表示するものである。
【0003】
しかし、ドプラ画像においては、超音波の音線方向に沿った血流の速度成分しか表示できない。このため、音線方向と直交する方向の血流の速度については表示することができない。
【0004】
そこで、血流の流れ方向に沿った速度を算出するための手法が特許文献1や非特許文献1に開示されている。また、これら特許文献1及び非特許文献1では、血流の圧力を算出することもできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4269623号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】船本健一、早瀬敏幸、「医療計測と数値シミュレーションを融合した血管内血流の解析」、可視化情報、Vol.29、No.114(2009年7月)、p.20−26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、診断に有用な情報として、血流のずり応力が注目されている。この血流のずり応力は、赤血球の変形に影響し、血液組成に関する重要な情報を提供すると考えられている。このため、超音波診断装置において、血流のずり応力を観察できることが望まれている。しかも、血流の速度や圧力といった血流情報とともに、血流のずり応力を観察できるようになっていることが診断に非常に有用である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、血流のずり応力とずり応力以外の血流情報とを同時に観察することができる超音波診断装置、血流可視化装置及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信を行なってエコー信号を取得するエコー信号取得部と、前記エコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出部と、前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報を算出する血流情報算出部と、前記エコー信号に基づいて作成された生体組織画像を表示する表示部と、該表示部に表示された生体組織画像における血管部分に、前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記表示処理部は、前記血管部分における一の部分に前記血流情報表示を表示させ、前記一の部分とは異なる他の部分に前記ずり応力表示を表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第3の観点の発明は、第2の観点の発明において、前記一の部分及び前記他の部分の範囲が予め設定されていることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第4の観点の発明は、第2の観点の発明において、前記表示処理部は、前記ずり応力算出部によって算出されたずり応力が所定の閾値以下である部分を前記一の部分として前記血流情報表示を表示させ、一方で前記閾値以上である部分を前記他の部分として前記ずり応力表示を表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第5の観点の発明は、第2〜4のいずれか一の観点の発明において、前記血流情報表示が表示される一の部分は前記血管部分における中央側であり、また前記ずり応力表示が表示される他の部分は前記血管部分における血管壁側であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第6の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記ずり応力表示及び前記血流情報表示は、前記血管部分における同一の範囲に表示されることを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、前記生体組織画像は、生体組織の断面画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記血流情報は、血流方向に沿った血流の速度、血流の圧力又はドプラ情報であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第9の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信を行なって取得されたエコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出部と、前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報を算出する血流情報算出部と、前記エコー信号に基づいて作成された生体組織画像を表示する表示部と、該表示部に表示された生体組織画像における血管部分に、前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理部と、を備えることを特徴とする血流可視化装置である。
【0018】
第10の観点の発明は、コンピュータに、生体組織に対する超音波の送受信を行なってエコー信号を取得するエコー信号取得機能と、前記エコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出機能と、前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報を算出する血流情報算出機能と、前記エコー信号に基づいて作成され表示部に表示された生体組織画像における血管部分に、前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理機能と、を実行させることを特徴とする制御プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、血流のずり応力の大きさを表すずり応力表示が表示されるとともに、ずり応力以外の血流情報を表す血流情報表示が表示されるので、ずり応力とこのずり応力以外の血流情報とを、生体組織画像上において同時に観察することができる。また、前記ずり応力表示は血管部分に表示されるので、どの位置のずり応力を表しているかが一目で分かり、診断が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態の超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】Bモード画像上に血流速度表示、血流の圧力表示及びずり応力表示が表示された表示部の一例を示す図である。
【図3】Bモード画像上にドプラ画像及びずり応力表示が表示された表示部の一例を示す図である。
【図4】Bモード画像上に血流速度表示及びずり応力表示が表示された表示部の他例を示す図である。
【図5】Bモード画像上に血流の圧力表示及びずり応力表示が表示された表示部の他例を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態の血流可視化装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1〜図3に基づいて詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bモード処理部4、ドプラ処理部5、表示処理部6、表示部7、表示情報算出部8を備え、さらに制御部9及び操作部10を備える。
【0022】
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波の送受信を行なう。また、 前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定のスキャンパラメータで駆動させてスキャン面を走査させる。そして、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記超音波プローブ2及び前記送受信部3は、エコー信号を取得するエコー信号取得機能を実行するものであり、本発明におけるエコー信号取得部の実施の形態の一例である。
【0023】
前記Bモード処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ない、Bモード画像データを作成する。このBモード画像データに基づいて前記表示部7に表示されるBモード画像BGは、本発明における生体組織画像の実施の形態の一例である。
【0024】
前記ドプラ処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に基づいてドプラ画像データを作成する(ドプラ画像データ作成機能)。ドプラ画像データには、流速データ、分散データ及びパワーデータが含まれる。ドプラ画像データは本発明における血流情報の実施の形態の一例であり、前記ドプラ処理部5は本発明における血流情報算出部の実施の形態の一例である。また、ドプラ画像データ作成機能は本発明における血流情報算出機能の実施の形態の一例であり、ドプラ画像データに基づいて前記表示部7に表示されるドプラ画像DGは、本発明における血流情報表示の実施の形態の一例である。
【0025】
具体的には、前記ドプラ処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、直交検波処理を行ない、MTIフィルタ(Moving Target Indication Filter)でMTI処理してエコーのドプラ信号を求め、さらにMTI処理後の信号に対し、自己相関演算を行なう。そして、自己相関演算結果から平均流速と、流速の分散と、パワーとを求める。
【0026】
前記表示処理部6は、後述するように前記表示情報算出部8からの情報に基づいて血流速度表示VI、血流の圧力表示PI及びずり応力表示SIを作成し、これらの表示を図2に示すようにBモード画像BG上に重畳した表示画像G1を作成するようになっている(表示処理機能)。また、前記表示処理部6は、図3に示すようにBモード画像BGとドプラ画像DGとを重畳した画像上に前記ずり応力表示SIを重畳した表示画像G2を作成するようになっている(表示処理機能)。前記表示処理部6は、前記操作部10における操作者による指示入力に基づいて、前記各表示画像G1,G2のうちいずれかを作成し、作成された画像が前記表示部7に表示される。前記表示処理部6は、本発明における表示処理部の実施の形態の一例である。
【0027】
なお、表示画像G1,G2において、横方向に延びる帯状の部分を指す符号blは血管部分であり、また符合wは血管壁である。
【0028】
前記血流速度表示VIは、血流の速度と方向を表す表示であり、図2に示すように血流の速度及び方向に応じた長さと方向の矢印VIaからなる。この矢印VIaの長さが長いほど血流の速度が大きいことを表す。前記血流速度表示VIは、本発明における血流情報表示の実施の形態の一例である。
【0029】
また、前記圧力表示PIは血流の圧力に応じた色相からなる(図2では、ドット(dot)で表されている)。前記表示部7には、前記圧力表示PIにおいて表示されうる全色相を表すカラーバーCBP(圧力零から最大圧力までの色相のグラデーションからなる)が表示される。前記血流速度表示VI及び前記圧力表示PIは、本発明における血流情報表示の実施の形態の一例である。
【0030】
ちなみに、前記表示画像G2においては、ドプラ画像が本発明における血流情報表示の実施の形態の一例となる。前記表示画像G2が表示された前記表示部7には、ドプラ画像に応じたカラーバーCBDが表示される。
【0031】
前記ずり応力表示SIは、血流のずり応力に応じた色相からなる(図2では、ドット(dot)で表されている)。前記表示部7には、前記ずり応力表示SIにおいて表示されうる全色相を表すカラーバーCBS(ずり応力零から最大刷り応力までの色相のグラデーションからなる)が表示される。前記ずり応力表示SIは、本発明におけるずり応力表示の実施の形態の一例である。
【0032】
ここで、前記血流速度表示VI、前記圧力表示PI、ドプラ画像DG、前記ずり応力表示SIの表示位置について説明する。前記血流速度表示VI、前記圧力表示PI及びドプラ画像DGは、前記血管部分blにおける中央側の部分Ceに表示される。また、前記ずり応力表示SIは、前記血管部分blにおいて前記中央側の部分Ceとは異なる血管壁側の部分Wa(図2,3において斜線で示す部分)に表示される。前記中央側の部分Ceは本発明における一の部分の実施の形態の一例であり、また前記血管壁側の部分Waは本発明における他の部分の実施の形態の一例である。
【0033】
ちなみに、前記ずり応力表示SIを前記血管壁側の部分Waに表示させるようにした理由は、診断の目的によっては、血管壁w付近のみのずり応力について知ることができれば十分である場合があるためである。
【0034】
前記中央側の部分Ce及び前記血管壁側の部分Waの範囲は予め設定されていてもよい。具体的な設定手法の一例について説明すると、例えば前記血管部分blにおいて血管壁側の部分Waの範囲として、血管壁wからの距離を前記操作部10において入力することにより、前記表示処理部6によって前記血管壁側の部分Waの範囲が予め設定され、また血管部分blにおける血管壁側の部分Wa以外の部分が前記中央側の部分Ceの範囲として予め設定されるようになっていてもよい。
【0035】
また、血管部分blの幅(太さ)に対して所定の割合rの幅を有するように、前記表示処理部6によって前記血管壁側の部分Wa及び中央側の部分Ceが設定されるようになっていてもよい。前記所定の割合rは前記操作部10で入力され設定される。
【0036】
前記表示情報算出部8は、血管抽出部81、血流速度・圧力算出部82及びずり応力算出部83を有している。前記血管抽出部81は、前記ドプラ処理部5からのドプラ画像データに基づいて、血管部分blを抽出する。例えば、前記血管抽出部81は、流速データが得られた部分を血管部分blとする。
【0037】
なお、前記血管抽出部81は、Bモード画像データに基づいて血管部分b1を抽出してもよい。具体的には、Bモード画像において血管は他の組織よりも暗く表示されるので、前記血管抽出部81は、隣り合う画素間の輝度の差が所定の閾値よりも大きい部分(血管壁にあたる部分)を検出して血管部分b1を抽出してもよい。
【0038】
血流速度・圧力算出部82は、前記血管抽出部81によって抽出された血管部分blに計算格子を設定し、この計算格子における血流速度及び血流の圧力を算出する(血流速度・圧力算出機能)。この血流速度・圧力算出部82で算出される血流速度は、血流方向に沿った速度である。ちなみに、ドプラ処理部5で算出される流速データは、超音波のビーム方向の速度成分であり、この点で異なる。従って、血流方向に沿った速度である前記血流速度・圧力算出部82で算出される血流速度の方が、より正確な速度となる。
【0039】
具体的には、前記血流速度・圧力算出部82は、前記ドプラ処理部5で算出された流速データを、ナビエ・ストークス方程式と圧力方程式とを基礎方程式とするシミュレーションにフィードバックし、シミュレーションで推定される速度との誤差を補償するように計算結果を実際の血流場に収束させて、血流速度及び血流の圧力を算出する。(具体的な算出方法については特許文献1又は非特許文献1参照)。前記血流速度・圧力算出部82は、前記血管部分blの全体ではなく、前記中央側の部分Ceについてのみ血流速度及び血流の圧力を算出してもよい。血流速度及び血流の圧力は本発明における血流情報の実施の形態の一例であり、また前記血流速度・圧力算出部82は本発明における血流情報算出部の実施の形態の一例である。さらに、血流速度・圧力算出機能は、本発明における血流情報算出機能の実施の形態の一例である。
【0040】
前記ずり応力算出部83は、血流のずり応力を算出する(ずり応力算出機能)。具体的には、前記ずり応力算出部83は、先ず前記血流速度・圧力算出部82で算出された血流速度の速度勾配(ずり速度)を算出する。そして、前記ずり応力算出部83は、この速度勾配と血液の粘性率とを積算することによって、ずり応力を算出する(詳細は、新田尚隆、「超音波による血管内ずり応力分布の推定」、超音波TECHNO、2006年3−4月号、p.45−p48を参照)。前記ずり応力算出部83は、前記血管部分blの全体ではなく、前記血管壁側の部分Waのみについてずり応力を算出してもよい。前記ずり応力算出部83は、本発明におけるずり応力算出部の実施の形態の一例である。
【0041】
ちなみに、前記ずり応力算出部83で算出されるずり応力は、前記血流速度・圧力算出部82で算出された血流方向に沿った血流の速度を用いて算出されているので、より正確な値を得ることができる。
【0042】
前記血流速度・圧力算出部82で算出された血流速度、血流の圧力及び前記ずり応力算出部83で算出されたずり応力は、前記表示処理部6へ入力される。そして、この表示処理部6では、入力された血流速度、血流の圧力及びずり応力の大きさに応じた前記血流速度表示VI、前記圧力表示PI及び前記ずり応力表示SIを作成する。
【0043】
前記制御部9は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、図示しない記憶部に記憶された制御プログラムを読み出し、エコー信号取得機能、ドプラ画像データ作成機能、血流速度・圧力算出機能、ずり応力算出機能、表示処理機能を始めとする前記超音波診断装置1における各部の機能を実行する。
【0044】
前記操作部10は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。前記操作部10で入力された指示や情報は、前記制御部9へ入力される。
【0045】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。前記表示画像G1又はG2を表示させるにあたっては、先ず前記超音波プローブ2において超音波の送受信を行なう。そして、得られたエコー信号に基づいて、前記Bモード処理部4はBモード画像データを作成し、また前記ドプラ処理部5はドプラ画像データを作成する。
【0046】
前記表示情報算出部8においては、前記血管抽出部81がドプラ画像データのうちの流速データに基づいて血管部分blの抽出を行なう。また、前記血流速度・圧力算出部82が血流速度及び血流の圧力を算出する。さらに、前記ずり応力算出部83がずり応力を算出する。
【0047】
前記表示処理部6は、前記表示部7に表示画像G1を表示させるように前記操作部10において指示入力があった場合、前記血流速度表示VI、前記血流の圧力表示PI及び前記ずり応力表示SIを作成する。そして、前記表示処理部6は、図2に示すように、Bモード画像BGにおける血管部分blの中央側の部分Ceに前記血流速度表示VI及び前記圧力表示PIが表示され、また血管壁側の部分Waに前記ずり応力表示SIが表示された表示画像G1を表示させる。
【0048】
また、前記表示処理部6は、前記表示部7に表示画像G2を表示させるように前記操作部10において指示入力があった場合、前記ずり応力表示SIを作成する。そして、前記表示処理部6は、図3に示すように、Bモード画像BGにおける血管部分blの中央側の部分Ceにドプラ画像DGが表示され、また血管壁側の部分Waに前記ずり応力表示SIが表示された表示画像G2を表示させる。
【0049】
本例の超音波診断装置1によれば、血流のずり応力の大きさを表すずり応力表示SIが表示されるとともに、ずり応力以外の血流情報を表す血流情報表示として、前記血流速度表示VI及び前記圧力表示PIやドプラ画像DGが表示されるので、ずり応力とこのずり応力以外の血流情報とを、Bモード画像BG上において同時に観察することができる。また、前記ずり応力表示SIは血管部分blに表示されるので、どの位置のずり応力を表しているかが一目で分かり、診断が容易である。
【0050】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず第一変形例について説明する。上記実施形態では、前記中央側の部分Ce及び前記血管壁側の部分Waの範囲が予め設定されて、前記血流速度表示VI、前記圧力表示PI及び前記ずり応力表示SIが表示されるようになっているが、これに限られるものではない。例えば、前記表示処理部6は、前記ずり応力算出部83によって算出されたずり応力が所定の閾値以下である部分に、前記血流速度表示VI及び前記圧力表示PIを表示させ、一方で前記閾値以上である部分に前記ずり応力表示SIを表示させてもよい。
【0051】
ここで、血流のずり応力は、一般的に血管の中央では小さく、血管壁付近で大きくなる。従って、一般的には、血管壁w側に前記ずり応力表示SIが表示され、また血管部分blの中央側に前記血流速度表示VI及び前記圧力表示PIが表示される。
【0052】
次に、第二変形例について図4に基づいて説明する。図4に示す本例の表示画像G1′においては、前記血流速度表示VI及び前記ずり応力表示SIが、中央側の部分Ceと血管壁側の部分Waとに分かれて表示されておらず、血管部分blにおける同一の範囲に表示されている。本例では、前記血流速度・圧力算出部82及び前記ずり応力算出部83は、前記血管部分blの全体について血流速度及びずり応力を算出する。なお、本例では圧力表示PIは表示されていない。
【0053】
次に、第三変形例について図5に基づいて説明する。図5に示す本例の表示画像G1′′においては、ずり応力に応じて色相が異なり、また血流の圧力に応じて輝度が異なる表示が血管部分blに表示されている。すなわち、本例では、ずり応力表示SI′は色相からなり、また血流の圧力表示PI′は輝度からなる。本例では、前記血流速度・圧力算出部82及び前記ずり応力算出部83は、前記血管部分blの全体について血流の圧力及びずり応力を算出する。
【0054】
ちなみに、前記表示部7には、表示されうる色相と輝度の組み合わせからなるカラーバーCBが表示される。
【0055】
なお、特に図示しないが、この第三変形例において、前記表示画像G1′′における血管部分blに、矢印VIaからなる血流速度表示VIを表示してもよい。
【0056】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図6に基づいて説明する。図6に示す血流可視化装置20においては、超音波診断装置とは別に表示情報算出部8が設けられる。具体的に説明すると、前記血流可視化装置20は、超音波診断装置1′及び表示情報処理装置21からなる。前記超音波診断装置1′は、前記表示情報算出部8を備えていない以外は、第一実施形態の超音波診断装置1と同一の構成になっている。また、前記表示情報処理装置21は、前記表示情報算出部8、表示処理部22、表示部23、制御部24及び入力部25を備えている。前記表示情報処理装置21は、例えば計算サーバ及びワークステーションからなり、後述するように前記表示画像G1又はG2が前記表示部23に表示される。
【0057】
前記表示処理部22には、前記超音波診断装置1′のBモード処理部4からBモード画像データが入力される。そして、前記表示処理部22は、前記前記表示情報算出部8からの情報に基づいて血流速度表示VI、血流の圧力表示PI及びずり応力表示SIを作成し、これらの表示をBモード画像BG上に重畳した表示画像G1を作成する(表示処理機能)。また、前記表示処理部22は、Bモード画像BGとドプラ画像DGとを重畳した画像上に前記ずり応力表示SIを重畳した表示画像G2を作成する(表示処理機能)。前記表示処理部22は、本発明における表示処理部22の実施の形態の一例である。
【0058】
前記表示処理部22は、前記入力部25における指示入力に基づいて、前記各表示画像G1,G2のうちいずれかを作成し、作成された画像が前記表示部23に表示される。前記表示部23は、本発明における表示部の実施の形態の一例である。前記表示部23に表示される前記表示画像G1,G2は、第一実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0059】
なお、本例では、血流速度算出機能、ずり応力算出機能、表示処理機能は、前記制御部24により実行される。
【0060】
以上説明した本例の血流可視化装置20によっても、第一実施形態の超音波診断装置1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、この第二実施形態において、前記表示情報処理装置21の構成を有する装置をもって、本発明に係る血流可視化装置としてもよい。すなわち、前記超音波診断装置1′からドプラ画像データやBモード画像データの供給を受けて、ずり応力、血流速度、血流の圧力等を算出し、前記表示画像G1や前記表示画像G2を表示させる装置をもって、本発明に係る血流可視化装置としてもよい。
【0062】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記ずり応力表示SI、前記血流速度表示VI及び前記圧力表示PIの表示形態は一例であり、上記実施形態の表示形態に限られるものではない。
【0063】
また、第一実施形態の第二変形例で説明した前記表示画像G1′と第三変形例で説明した前記表示画像G1′′とを切り替えて表示するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ(エコー信号取得部)
3 送受信部(エコー信号取得部)
5 ドプラ処理部(血流情報算出部)
6,22 表示処理部
7,23 表示部
20 血流可視化装置
82 血流速度・圧力算出部(血流情報算出部)
83 ずり応力算出部
VI 血流速度表示(血流情報表示)
PI 圧力表示(血流情報表示)
SI ずり応力表示
BG Bモード画像
DG ドプラ画像(血流情報表示)
bl 血管部分
Ce 中央側の部分(一の部分)
Wa 血管壁側の部分(他の部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に対する超音波の送受信を行なってエコー信号を取得するエコー信号取得部と、
前記エコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出部と、
前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報を算出する血流情報算出部と、
前記エコー信号に基づいて作成された生体組織画像を表示する表示部と、
該表示部に表示された生体組織画像における血管部分に、前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記血管部分における一の部分に前記血流情報表示を表示させ、前記一の部分とは異なる他の部分に前記ずり応力表示を表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記一の部分及び前記他の部分の範囲が予め設定されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記表示処理部は、前記ずり応力算出部によって算出されたずり応力が所定の閾値以下である部分を前記一の部分として前記血流情報表示を表示させ、一方で前記閾値以上である部分を前記他の部分として前記ずり応力表示を表示させることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記血流情報表示が表示される一の部分は前記血管部分における中央側であり、また前記ずり応力表示が表示される他の部分は前記血管部分における血管壁側であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記ずり応力表示及び前記血流情報表示は、前記血管部分における同一の範囲に表示されることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記生体組織画像は、生体組織の断面画像であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記血流情報は、血流方向に沿った血流の速度、血流の圧力又はドプラ情報であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
生体組織に対する超音波の送受信を行なって取得されたエコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出部と、
前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報を算出する血流情報算出部と、
前記エコー信号に基づいて作成された生体組織画像を表示する表示部と、
該表示部に表示された生体組織画像における血管部分に、前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理部と、
を備えることを特徴とする血流可視化装置。
【請求項10】
コンピュータに、
生体組織に対する超音波の送受信を行なってエコー信号を取得するエコー信号取得機能と、
前記エコー信号に基づいて、血流のずり応力を算出するずり応力算出機能と、
前記エコー信号に基づいて、前記ずり応力以外の血流情報を算出する血流情報算出機能と、
前記エコー信号に基づいて作成され表示部に表示された生体組織画像における血管部分に、前記血流情報を表す血流情報表示と、前記ずり応力の大きさを表すずり応力表示とを表示させる表示処理機能と、
を実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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