説明

超音波診断装置及び制御プログラム

【課題】生体組織及び穿刺針双方の視認性を向上させること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、スキャン制御部と、画像生成部と、画像生成制御部と、画像合成部と、表示制御部とを備える。スキャン制御部は、第1の方向に超音波送信を行なう第1のスキャンと、複数の方向それぞれで超音波送信を行なう第2のスキャンとを実行させる。画像生成部は、第1のスキャンにより第1の超音波画像を生成し、第2のスキャンにより第2の超音波画像群を生成する。画像生成制御部は、第1の超音波画像および第2の超音波画像群に基づく画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果、または、第2の超音波画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づいて、針画像を生成させる。画像合成部は、第1の超音波画像と針画像との合成画像を生成する。表示制御部は、合成画像を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、超音波プローブ直下の超音波画像をリアルタイムで表示できることから、生体組織検査やラジオ波焼灼治療(RFA:Radio Frequency Ablation)などの穿刺針を用いた穿刺が行なわれる場合に頻繁に使用されている。しかし、病変の位置や穿刺針の侵入角度の影響で、穿刺針が見えにくくなることがあり、そのような場合は、穿刺針を動かした際の組織の動きなどを見ながら穿刺を行っていた。
【0003】
そこで、近年、穿刺中に穿刺針の視認性を向上させるために、オブリークスキャンを行なって穿刺針に垂直になるように超音波ビームを照射して、穿刺針が高輝度で描出された超音波画像(針画像)を生成する技術が知られている。また、針画像の生成とともに、オブリークスキャンを行なわずに通常の超音波スキャンを行なって生体組織が描出された超音波画像(生体画像)を生成し、針画像と生体画像との合成画像を生成して表示させる技術も知られている。かかる技術では、合成画像を生成する際に、針画像と生体画像とを加算する処理や、画素ごとに画素値を平均化して重ねる処理や、画素ごとに輝度の最大値をホールドする処理(最大値輝度保持処理、MaxHold処理)などが行なわれる。
【0004】
ただし、オブリークスキャンにより生成された超音波画像に描出される生体組織は、サイドローブなどの影響により、オブリークしないスキャンに比べて画質が劣化する。このため、合成画像における穿刺針の視認性は多少向上しても、組織病変の本質的な観察が最適ではなくなるため、合成画像を用いた診断能は、低下する。すなわち、超音波ビームが穿刺針に垂直に当たることで穿刺針は見えやすくなるが、一方でビーム形状などの問題からグレーティングサイドローブなどが発生し、生体組織の情報が劣化するという現象が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−320378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、生体組織及び穿刺針双方の視認性を向上させることが可能となる超音波診断装置及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の超音波診断装置は、スキャン制御部と、画像生成部と、画像生成制御部と、画像合成部と、表示制御部とを備える。スキャン制御部は、穿刺針が挿入された被検体を超音波スキャンする際に、前記被検体の組織の撮像を目的として、振動子面に対して第1の方向に超音波送信を行なう第1のスキャンと、振動子面に対して複数の方向それぞれで超音波送信を行なう第2のスキャンとを超音波プローブに実行させる。画像生成部は、前記第1のスキャンにより前記超音波プローブが受信した反射波を用いて第1の超音波画像を生成し、前記第2のスキャンにより前記超音波プローブが受信した反射波を用いて前記複数の方向ごとの超音波画像である第2の超音波画像群を生成する。画像生成制御部は、前記第1の超音波画像および前記第2の超音波画像群に基づく画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果、または、前記第2の超音波画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づいて、前記穿刺針が高輝度で描出された針画像を生成するように前記画像生成部を制御する。画像合成部は、前記画像生成部により生成された前記第1の超音波画像と前記針画像との合成画像を生成する。表示制御部は、前記画像合成部により生成された前記合成画像を所定の表示部に表示するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るスキャン制御部を説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る画像生成部を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る抽出部を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る画像合成部を説明するための図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施形態に係る制御部の構成を説明するための図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る調整部を説明するための図である。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る選択部を説明するための図(1)である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る選択部を説明するための図(2)である。
【図11】図11は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12A】図12Aは、第4の実施形態に係る制御部の処理を説明するための図(1)である。
【図12B】図12Bは、第4の実施形態に係る制御部の処理を説明するための図(2)である。
【図13】図13は、画像合成部の変形例を説明するための図である。
【図14A】図14Aは、スキャン制御部の変形例を説明するための図(1)である。
【図14B】図14Bは、スキャン制御部の変形例を説明するための図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0011】
超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層や、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0012】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
なお、第1の実施形態は、図1に示す超音波プローブ1が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
【0014】
そして、第1の実施形態に係る超音波プローブ1には、医師が超音波画像を参照しながら生体組織検査やラジオ波焼灼治療などの穿刺を行なうために、穿刺アダプタ1aが取り付けられる。そして、穿刺アダプタ1aには、穿刺針1bが取り付けられている。医師は、超音波画像を参照しながら、穿刺アダプタ1aに取り付けられた穿刺針1bを被検体Pのターゲット部位まで挿入する。
【0015】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置3が有する終了ボタンやFREEZEボタンを操作者が押下すると、超音波の送受信が終了し、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、一時停止状態となる。また、操作者は、入力装置3を介して後述する第2のスキャン(オブリークスキャン)を行なうための超音波送信のオブリークの角度の設定や変更を行なうことも出来る。
【0016】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像を表示したりする。
【0017】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、画像合成部16と、内部記憶部17と、制御部18とを有する。
【0018】
送受信部11は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0019】
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、与えられた遅延時間に基づき、反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0021】
このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部11は、後述する制御部18の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。また、送受信部11は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0022】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、受信した反射波データに対して対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0023】
ドプラ処理部13は、送受信部11から反射波データを受信し、受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。なお、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータは、生データとも呼ばれる。
【0024】
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。
【0025】
また、画像生成部14は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマークなどを合成した合成画像を生成することもできる。
【0026】
ここで、画像生成部14は、超音波走査の走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像としての超音波画像を生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)などを行なう。
【0027】
また、画像生成部14は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、3次元画像の再構成処理などを行うことが可能である。また、画像生成部14が搭載する記憶メモリから、例えば、診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。
【0028】
画像合成部16は、画像生成部14が生成した超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマークなどと合成し、ビデオ信号としてモニタ2に出力する。第1の実施形態では、画像合成部16は、生体画像と針画像とを合成した合成画像を生成する。なお、第1の実施形態に係る画像合成部16が生成する合成画像については、後に詳述する。
【0029】
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した超音波画像や、画像合成部16が合成した合成画像を記憶するメモリである。例えば、画像メモリ15は、FREEZEボタンが押下された直前の複数フレームに対応する超音波画像を保存する。超音波診断装置は、この画像メモリ15に記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像を表示することも可能である。
【0030】
内部記憶部17は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや各種ボディマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部17は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像の保管などにも使用される。なお、内部記憶部17が記憶するデータは、図示しないインターフェース回路を経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0031】
そして、第1の実施形態に係る内部記憶部17は、穿刺アダプタ1aに対して穿刺針1bが取り付けられる角度を、穿刺針1bの穿刺角度として記憶している。例えば、内部記憶部17は、穿刺アダプタ1aが装着される場合は、穿刺アダプタ1aの取り付け角度「A」を、穿刺針1bの挿入角度「A」として記憶する。
【0032】
制御部18は、超音波診断装置における処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部17から読込んだ各種制御プログラムおよび各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及び画像合成部16の処理を制御する。例えば、図1に示すスキャン制御部18aは、送受信部11を介して超音波プローブ1による超音波スキャンを制御する。また、図1に示す表示制御部18dは、画像メモリ15が記憶する超音波画像や合成画像をモニタ2にて表示するように制御する。
【0033】
また、第1の実施形態に係る制御部18は、スキャン制御部18a及び表示制御部18dの他に、図1に示すように、画像生成制御部181を有する。画像生成制御部181は、図1に示すように、選択部18bと、抽出部18cとを有する。なお、第1の実施形態において、スキャン制御部18a、選択部18b、抽出部18c及び表示制御部18dが実行する処理については、後に詳述する。
【0034】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、実施例1に係る超音波診断装置は、穿刺針1bが挿入された被検体Pの生体組織を撮像した超音波画像(Bモード画像)を生成する。そして、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、以下、詳細に説明する制御部18の制御処理により、生体組織及び穿刺針双方の視認性が向上した超音波画像を生成する。例えば、入力装置3が有する穿刺モード開始ボタンを操作者が押下すると、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、以下に説明する処理を開始する。また、例えば、入力装置3が有する穿刺モード終了ボタンを操作者が押下すると、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、以下に説明する処理を終了する。
【0035】
まず、スキャン制御部18aは、穿刺針1bが挿入された被検体Pを超音波スキャンする際に、被検体Pの組織の撮像を目的として、振動子面に対して第1の方向に超音波送信を行なう第1のスキャンと、振動子面に対して複数の方向それぞれで超音波送信を行なう第2のスキャンとを超音波プローブ1に実行させる。第1のスキャンは、被検体Pの組織を撮像するために最適となる第1の方向の超音波送信を、振動子の配列方向に沿って行なう超音波スキャンである。具体的には、第1の方向は、超音波プローブ1の振動子面に対して垂直な方向である。例えば、第1の方向は、方位方向に対して垂直な方向である。なお、第1の方向は、被検体Pの組織を撮像するために最適となる超音波送信方向であるならば、振動子面に対して垂直な方向以外の方向であっても良い。
【0036】
また、第2のスキャンは、被検体Pに挿入された穿刺針1bを撮像するために最適となる超音波送信方向を探索することを目的として、複数の方向それぞれで超音波送信を行なう超音波スキャンである。第2のスキャンでは、複数の方向それぞれで、超音波送信が振動子の配列方向に沿って行なわれる。具体的には、複数の方向の各方向は、超音波プローブ1の振動子面に対して垂直以外の方向である。例えば、複数の方向の各方向は、方位方向に対して垂直以外の方向である。なお、第2のスキャンは、超音波送信方向として第1の方向を含む場合であっても良い。図2は、第1の実施形態に係るスキャン制御部を説明するための図である。
【0037】
図2に示す一例では、ターゲット部位(T)に対して、穿刺針1bが挿入されている。かかる状態で、スキャン制御部18aは、通常、Bモード画像を生成するために行なわれる通常スキャンと同様に、第1のスキャンとして、図2に示すように、方位方向に対して垂直方向に超音波送信を実行させる。更に、スキャン制御部18aは、図2に示すように、第2のスキャンとして、複数の角度「α1、α2、α3、α4、α5、・・・・・」にてオブリークスキャンを実行させる。
【0038】
ここで、スキャン制御部18aは、内部記憶部17から穿刺針1bの挿入角度「A」を取得し、挿入角度「A」により設定される穿刺ラインに対して垂直方向となる近辺にて、オブリークスキャンの角度を複数個設定することで、第2のスキャンを実行させる。例えば、スキャン制御部18aは、穿刺ラインに対して垂直方向となる角度「B」を算出する。そして、スキャン制御部18aは、角度「B−B」から角度「B−B」の範囲で角度「β」の間隔で第2のスキャンを実行すると決定する。なお、角度「B、B、β」は、操作者や超音波診断装置の管理者により設定される。また、角度「B、B、β」は、操作者により任意に変更可能である。また、オブリークスキャンの間隔は、等間隔である場合であっても、角度「B」に近い領域では「β1」とし、角度「B」から遠い領域では「β2(β2>β1)」とするように変更される場合であっても良い。
【0039】
なお、穿刺角度の取得は、上記の場合に限定されるものではない。例えば、穿刺角度の取得は、位置センサーの検出結果に基づいて行なわれる場合であっても良い。位置センサーの一例としては、磁気センサーが挙げられる。例えば、穿刺針1bに磁気センサーを取り付け、所定の位置に磁場発生コイルを設置する。そして、磁気センサーは、磁場発生コイルが発生した磁気信号を検出する。スキャン制御部18aは、磁気センサーの検出結果に基づいて、磁場発生コイルに対する磁気センサーの座標位置を算出する。そして、スキャン制御部18aは、磁気センサーの座標位置から、超音波プローブ1表面と穿刺針1bとの角度を算出することで、穿刺角度を取得する。
【0040】
なお、アダプタやセンサー機能を使用せずにフリーハンドで穿刺を行なう場合などのように、穿刺アダプタ1aの取り付け角度や位置センサーを用いて穿刺角度が取得できない場合、スキャン制御部18aは、予め設定された角度間隔で第2のスキャンを実行させる。
【0041】
そして、図1に示す画像生成部14は、第1のスキャンにより超音波プローブ1が受信した反射波を用いて第1の超音波画像を生成する。また、画像生成部14は、第2のスキャンにより超音波プローブが受信した反射波を用いて複数の方向ごとの超音波画像である第2の超音波画像群を生成する。図3は、第1の実施形態に係る画像生成部を説明するための図である。
【0042】
すなわち、画像生成部14は、図3に示すように、第1のスキャン(通常スキャン)により生成されたBモードデータを用いて、アーチファクトにより生体組織の視認性が低減されていない生体画像として、第1の超音波画像を生成する。
【0043】
また、画像生成部14は、図3に示すように、第2のスキャン(オブリークスキャン)により生成された角度「α1、α2、α3、α4、α5、・・・・・」のBモードデータ群を用いて、角度「α1、α2、α3、α4、α5、・・・・・」それぞれの超音波画像である第2の超音波画像群を生成する。第2の超音波画像群は、穿刺針の視認性が向上している針画像を生成するための候補画像群となる。
【0044】
図1に戻って、画像生成制御部181は、第2の超音波画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づいて、穿刺針1bが高輝度で描出された針画像を生成するように画像生成部14を制御する。画像生成制御部181が有する選択部18bは、画像内の輝度分布を解析する機能を有する。選択部18bは、解析を行なった画像群から、解析結果が所定の条件を満たす画像を穿刺針1bが高輝度で描出された第3の超音波画像として選択する。第1の実施形態では、選択部18bは、画像生成部14により生成された第2の超音波画像群から、各超音波画像の輝度分布に基づいて、穿刺針1bが高輝度で描出された第3の超音波画像を選択する。換言すれば、選択部18bは、穿刺針1bが高輝度で描出されるオブリークの角度を決定する。以下、第1の実施形態において、第3の超音波画像の選択に用いられる所定の条件について説明する。
【0045】
例えば、選択部18bは、第2の超音波画像群として生成された各画像にて、各画素の輝度を抽出し、輝度分布を示すヒストグラム(輝度曲線)を生成する。ここで、穿刺針1bは、強反射体であることから、超音波送信が穿刺針1bに対して略垂直方向に行なわれることで生成されたBモード画像には、高輝度となる画素の出現頻度が高くなる。そこで、選択部18bは、各画素のヒストグラムから、所定の閾値以上の輝度の出現頻度が最大となる画像を決定する。
【0046】
しかし、穿刺針1bに対して略垂直となる角度で超音波スキャンが行なわれると、Bモード画像には、多重反射アーチファクトが生じてしまう。
【0047】
そこで、選択部18bは、第2の超音波画像群の中から、所定の閾値以上の輝度となる画素の出現頻度が最高となる画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向に最も近い角度で実行された超音波送信により受信された反射波を生成元とする画像を第3の超音波画像として選択する。すなわち、選択部18bは、高輝度の画素が高頻度で発生する直前又は直後のフレームを第3の超音波画像として選択する。
【0048】
例えば、選択部18bは、図3に示す角度「α4」の超音波画像を所定の閾値以上の輝度となる画素の出現頻度が最高となる画像として決定する。そして、選択部18bは、図3に示す角度「α3」の超音波画像を第3の超音波画像として選択する。換言すれば、選択部18bは、角度「α3」を穿刺針1bが高輝度で描出されるオブリークの角度として決定する。
【0049】
図1に戻って、画像生成制御部181が有する抽出部18cは、選択部18bが選択した第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出する。そして、抽出部18cは、抽出した穿刺針領域を用いて針画像を生成するように画像生成部14を制御する。図4は、第1の実施形態に係る抽出部を説明するための図である。
【0050】
例えば、操作者は、高輝度領域抽出用の抽出用閾値を予め設定する。そして、抽出部18cは、図4に示すように、第3の超音波画像(角度「α3」)において、抽出用閾値以上の輝度を有する高輝度領域Nを穿刺針領域として抽出する。そして、抽出部18cは、第3の超音波画像における高輝度領域Nの座標を画像生成部14に通知し、画像生成部14は、通知された座標を用いて、第3の超音波画像から高輝度領域N以外の領域の輝度を、例えば、「0」に置換することで、図4に示す針画像を生成する。
【0051】
或いは、抽出部18cは、第3の超音波画像から高輝度領域が略直線となる直線領域を穿刺針領域として抽出する。例えば、抽出部18cは、第3の超音波画像(角度「α3」)に対して、ハフ(Hough)変換などの直線抽出手法を用いることで、直線を抽出する。そして、抽出部18cは、抽出された直線の座標を画像生成部14に通知し、画像生成部14は、通知された座標を用いて、針画像を生成する。なお、抽出部18cが、抽出用閾値を用いた抽出処理を実行するか、直線抽出手法を用いた抽出処理を実行するかは、操作者により設定される。
【0052】
図1に戻って、画像合成部16は、図5に示すように、画像生成部14により生成された第1の超音波画像(生体画像)と針画像との合成画像を生成する。図5は、第1の実施形態に係る画像合成部を説明するための図である。図5に示す合成画像では、ターゲット部位T及び穿刺針1bが共に明瞭に描出される。
【0053】
図1に戻って、表示制御部18dは、画像合成部16により生成された合成画像をモニタ2に表示するように制御する。
【0054】
次に、図6を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0055】
図6に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、穿刺モードが開始されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、穿刺モードが開始されていない場合(ステップS101否定)、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、穿刺モードが開始されるまで待機状態となる。
【0056】
一方、穿刺モードが開始された場合(ステップS101肯定)、スキャン制御部18aは、第1のスキャン及び第2のスキャンを実行するように超音波プローブ1を制御する(ステップS102)。
【0057】
そして、画像生成部14は、第1の超音波画像(生体画像)及び第2の超音波画像群(候補画像群)を生成し(ステップS103)、選択部18bは、第2の超音波画像群から第3の超音波画像を選択する(ステップS104)。具体的には、選択部18bは、第2の超音波画像群の中から、所定の閾値以上の輝度となる画素の出現頻度が最高となる画像を決定する。そして、選択部18bは、決定した画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向に最も近い角度で実行された超音波送信により受信された反射波を生成元とする画像を第3の超音波画像として選択する。
【0058】
その後、抽出部18cは、第3の超音波画像から穿刺針領域を抽出し、画像生成部14は、抽出部18cにより抽出された穿刺針領域に基づいて、針画像を生成する(ステップS105)。続いて、画像合成部16は、第1の超音波画像と針画像との合成画像を生成する(ステップS106)。これにより、1フレーム分の合成画像が生成される。
【0059】
そして、表示制御部18dは、合成画像をモニタ2に表示させるように制御し(ステップS107)、穿刺モードが終了したか否かを判定する(ステップS108)。ここで、穿刺モードが終了していない場合(ステップS108否定)、超音波診断装置は、ステップS102に戻って、次のフレーム分の合成画像を生成するためのスキャンが実行されるように制御する。
【0060】
一方、穿刺モードが終了した場合(ステップS108肯定)、超音波診断装置は、処理を終了する。なお、表示制御部18dは、合成画像とともに、第1の超音波画像や第3の超音波画像、第2の超音波画像群などを並列表示させても良い。また、上記では、穿刺モードの終了判定がステップS107の合成画像表示後に実行される場合について説明した。しかし、第1の実施形態は、穿刺モードの終了判定がステップS102の第1のスキャン及び第2のスキャンが行なわれた後に実行される場合であっても良い。すなわち、第1のスキャン及び第2のスキャンは、ステップS103からステップS107の処理と並行して、順次実行される場合であっても良い。
【0061】
上述してきたように、第1の実施形態では、スキャン制御部18aは、穿刺針1bが挿入された被検体Pを超音波スキャンする際に、例えば方位方向に対して垂直方向に超音波送信を行なう第1のスキャンと、例えば方位方向に対して垂直方向以外の複数の方向それぞれで超音波送信を行なう第2のスキャンとを超音波プローブ1に実行させる。そして、画像生成部14は、第1のスキャンにより超音波プローブ1が受信した反射波を用いて第1の超音波画像を生成し、第2のスキャンにより超音波プローブ1が受信した反射波を用いて複数の方向ごとの超音波画像である第2の超音波画像群を生成する。
【0062】
そして、選択部18bは、画像生成部14により生成された第2の超音波画像群から、各超音波画像の輝度分布に基づいて、穿刺針1bが高輝度で描出された第3の超音波画像を選択する。そして、抽出部18cは、選択部18bが選択した第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出し、当該抽出した穿刺針領域を用いて針画像を生成するように画像生成部14を制御する。そして、画像合成部16は、画像生成部14により生成された第1の超音波画像と針画像との合成画像を生成し、表示制御部18dは、画像合成部16により生成された合成画像をモニタ2に表示するように制御する。
【0063】
このように、第1の実施形態では、生体組織を観察するために最適となる第1のスキャンにより生体画像である第1の超音波画像が生成される。また、第1の実施形態では、穿刺針1bを観察するために最適となるオブリークの角度を選択する。そして、第1の実施形態では、選択した角度でのオブリークスキャンにより生成された第3の超音波画像から穿刺針1bに該当する領域を抽出した上で、針画像が生成される。すなわち、第1の実施形態で生成される針画像には、従来のように、サイドローブの影響で不明瞭となった生体組織が含まれない。従って、第1の実施形態では、生体組織及び穿刺針双方の視認性を向上させることが可能となる。また、第1の実施形態では、生体組織及び穿刺針双方の視認性が向上した合成画像が表示されるので、穿刺処理の安全性及び精度を向上させることが出来、穿刺を行なう操作者を支援することが可能となる。
【0064】
また、第1の実施形態では、選択部18bは、第2の超音波画像群の中から、所定の閾値以上の輝度となる画素の出現頻度が最高となる画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向を決定する。そして、選択部18bは、決定した超音波送信方向に最も近い角度で実行された超音波送信により受信された反射波を生成元とする画像を第3の超音波画像として選択する。
【0065】
すなわち、穿刺針1bの挿入方向に対して完全に垂直となるオブリークスキャンにより生成された超音波画像には、多重反射アーチファクトが含まれる可能性が高く、かかる超音波画像から高輝度領域を抽出しても、針画像にも穿刺針1bに起因するアーチファクトが含まれる場合がある。一方、上記の処理により選択された第3の超音波画像内には、多重反射アーチファクトが含まれる可能性が低くなる。従って、第1の実施形態では、アーチファクトが低減された針画像を提供することが可能となる。
【0066】
また、第1の実施形態では、例えば、操作者の設定により、抽出部18cは、第3の超音波画像から高輝度領域が略直線となる直線領域を穿刺針領域として抽出する。すなわち、第1の実施形態では、穿刺針1bの形状に該当する直線部分のみを針画像として生成する。従って、第1の実施形態では、穿刺針1bの部分のみが描出された針画像を提供することが可能となる。
【0067】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第2の超音波画像群に対して輝度調整が行なわれた後に、第3の超音波画像の選択処理が実行される場合について、図7などを用いて説明する。図7は、第2の実施形態に係る制御部の構成を説明するための図である。
【0068】
図7に示すように、第2の実施形態に係る制御部18は、図1に示す第1の実施形態に係る制御部18と比較して、調整部18eを更に有する点が異なる。以下、これを中心に説明する。なお、第1の実施形態と同様に第2の実施形態でも、第1のスキャン及び第2のスキャンが行なわれた後に、第1の超音波画像及び第2の超音波画像群が生成される。
【0069】
ここで、超音波ビームをオブリークさせると、サイドローブの影響で画像全体の輝度が上がったり、画質が劣化したりする。このため、第3の超音波画像の選択対象となる画像群は、画像全体の輝度がオブリークスキャンの角度に依存しないように、画質全体の輝度を均一にする処理を施すことが望ましい。
【0070】
そこで、第2の実施形態では、調整部18eは、画像生成部14により生成された第2の超音波画像群の輝度調整を行なうことで、各超音波画像の全体の輝度が略均一となる第3の超音波画像群を生成する。
【0071】
一例を挙げると、調整部18eは、第2の超音波画像群の生データ群(Bモードデータ群)それぞれを複数の区画に分割する。そして、調整部18eは、各区画の信号が生体信号であるのかノイズ信号であるのかを識別する。そして、調整部18eは、ノイズ信号である場合は、輝度を抑え、生体信号である場合は、輝度を空間的に均一になるようにゲインカーブを計算する。そして、調整部18eは、計算したゲインカーブを用いて第2の超音波画像群の生データ群から第3の超音波画像群を生成する。図8は、第2の実施形態に係る調整部を説明するための図である。
【0072】
上記の処理により、調整部18eは、図8に示すように、ノイズが抑制され、かつ、生体信号の輝度が調整された超音波画像(第3の超音波画像群)を生成する。なお、調整部18eは、計算したゲインカーブを画像生成部14に通知することで、第3の超音波画像群を画像生成部14が生成するように制御しても良い。
【0073】
そして、第2の実施形態に係る画像制御部181が有する選択部18bは、第3の超音波画像群を候補画像群とし、第3の超音波画像群から第3の超音波画像を選択する。すなわち、選択部18bは、第2の超音波画像群ではなく、第2の超音波画像から生成された第3の超音波画像群の各超音波画像の輝度分布を示すヒストグラム(輝度曲線)を用いて、第3の超音波画像群から第3の超音波画像を選択する。以下、第2の実施形態において、第3の超音波画像の選択に用いられる所定の条件について説明する。
【0074】
具体的には、選択部18bは、第3の超音波画像群それぞれのヒストグラムを参照して、所定の閾値以上の輝度の出現頻度が最大となる画像を決定し、当該決定した画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向に最も近い角度で実行された超音波送信により受信された反射波を生成元とする画像を第3の超音波画像として選択する。例えば、選択部18bは、図3に示す角度「α4」の超音波画像に対して調整部18eが輝度調整を行なった画像を第3の超音波画像として選択する。
【0075】
なお、輝度調整済みの第3の超音波画像群から第3の超音波画像を選択する第2の実施形態では、多重反射アーチファクトが低減されている可能性が高いので、選択部18bは、所定の閾値以上の輝度の出現頻度が最大となる画像を第3の超音波画像として選択しても良い。かかる場合、例えば、選択部18bは、図3に示す角度「α3」の超音波画像に対して調整部18eが輝度調整を行なった画像を第3の超音波画像として選択する。
【0076】
そして、第2の実施形態に係る画像制御部181が有する抽出部18cは、第1の実施形態で説明した方法、すなわち、抽出用閾値を用いた抽出方法や、直線抽出手法により第3の超音波画像から穿刺針領域を抽出する。
【0077】
そして、画像生成部14は、針画像を生成し、画像合成部16は、合成画像を生成する。そして、合成画像は、表示制御部18dにより、モニタ2に表示される。このように、第2の実施形態に係る画像生成制御部181は、第2の超音波画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づく第3の超音波画像群を対象として、輝度分布を解析することで、針画像を生成させる。
【0078】
なお、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理は、図6を用いて説明した第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の中で、ステップS103の後、調整部18eが第2の超音波画像群を輝度調整することで第3の超音波画像群を生成し、ステップS104にて、第3の超音波画像の選択対象が第3の超音波画像群である以外は、同様であるので、説明を省略する。なお、表示制御部18dは、合成画像とともに、第1の超音波画像や第3の超音波画像、第3の超音波画像群などを並列表示させても良い。また、第2の実施形態でも、第1のスキャン及び第2のスキャンは、ステップS103からステップS107の処理と並行して、順次実行される場合であっても良い。
【0079】
上述してきたように、第2の実施形態では、調整部18eは、画像生成部14により生成された第2の超音波画像群の輝度調整を行なうことで、各超音波画像の全体の輝度が略均一となる第3の超音波画像群を生成する。そして、選択部18bは、第3の超音波画像群から、第3の超音波画像を選択する。
【0080】
すなわち、第2の実施形態では、輝度調整が行なわれた超音波画像から針画像を生成することが出来る。
【0081】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第2の超音波画像群に対して第1の超音波画像を用いた画像処理が行なわれた後に、第3の超音波画像の選択処理が実行される場合について説明する。
【0082】
第3の実施形態に係る制御部18は、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る制御部18と同様に構成される。しかし、第3の実施形態においては、画像制御部181が有する選択部18bの処理が第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる。以下、これを中心にして説明する。なお、第3の実施形態でも、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、第1のスキャン及び第2のスキャンが行なわれた後に、第1の超音波画像及び第2の超音波画像群が生成される。
【0083】
第3の実施形態に係る画像生成制御部181は、第1の超音波画像および第2の超音波画像群に基づく画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づいて、穿刺針1bが高輝度で描出された針画像を生成するように画像生成部14を制御する。すなわち、第3の実施形態に係る画像生成制御部181が有する選択部18bは、第1の超音波画像および第2の超音波画像群に基づく画像群から第3の超音波画像を選択する。具体的には、第3の実施形態に係る選択部18bは、第2の超音波画像群それぞれの超音波画像から第1の超音波画像を差分することで差分画像群を生成するように画像生成部14を制御し、当該差分画像群から第3の超音波画像を選択する。図9及び図10は、第3の実施形態に係る選択部を説明するための図である。
【0084】
第3の実施形態に係る画像生成部14は、選択部18bの制御により、図9に示すように、角度「α1、α2、α3、α4、α5、・・・・・」それぞれの超音波画像からなる第2の超音波画像群から第1の超音波画像(生体画像)を差分する。すなわち、画像生成部14は、角度「α1、α2、α3、α4、α5、・・・・・」それぞれの差分画像を生成する。これにより、画像生成部14は、候補画像群としての差分画像群を生成する。そして、第3の実施形態に係る選択部18bは、差分画像群を輝度解析することで、第3の超音波画像を選択する。以下、第3の実施形態において、第3の超音波画像の選択に用いられる所定の条件について説明する。
【0085】
まず、選択部18bは、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、各差分画像の輝度分布を示すヒストグラム(輝度曲線)を生成する。ここで、差分画像には、穿刺針1bのみが抽出される可能性が高い。すなわち、穿刺針1bが明瞭に描出されている差分画像では、高輝度の領域が一部のみに出現するため、輝度曲線は、図10の曲線aに示すように、低輝度の分布が多く、高輝度の分布が少なくなる。一方、穿刺針1bが不明瞭に描出されている差分画像の輝度曲線は、中輝度の領域が一部のみに出現するため、輝度曲線は、図10の曲線bに示すように、低輝度や中輝度の分布が多くなる。
【0086】
そこで、選択部18bは、図10の曲線aに示すような輝度曲線が生成された差分画像を第3の超音波画像として選択する。例えば、選択部18bは、図9に示す角度「α3」の超音波画像から第1の超音波画像を差分することで生成された差分画像を第3の超音波画像として選択する。
【0087】
そして、第3の実施形態に係る画像生成制御部181が有する抽出部18cは、選択部18bが選択した第3の超音波画像全体を穿刺針領域として抽出する。すなわち、第3の実施形態では、第3の超音波画像そのものを針画像とする。
【0088】
或いは、第3の実施形態に係る抽出部18cは、選択部18bが選択した第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出する。すなわち、第3の実施形態に係る抽出部18cは、抽出用閾値を用いた抽出方法や、直線抽出手法により第3の超音波画像から穿刺針領域を抽出する。かかる場合は、画像生成部14は、第1の実施形態と同様に、抽出部18cの制御により、穿刺針領域を用いて針画像を生成する。
【0089】
なお、第3の超音波画像全体を穿刺針領域として抽出するか、第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出するかは、操作者により選択可能である。
【0090】
次に、図11を用いて、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図11は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0091】
図11に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、穿刺モードが開始されたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、穿刺モードが開始されていない場合(ステップS201否定)、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、穿刺モードが開始されるまで待機状態となる。
【0092】
一方、穿刺モードが開始された場合(ステップS201肯定)、スキャン制御部18aは、第1のスキャン及び第2のスキャンを実行するように超音波プローブ1を制御する(ステップS202)。
【0093】
そして、画像生成部14は、第1の超音波画像(生体画像)及び第2の超音波画像群(候補画像群)を生成し(ステップS203)、選択部18bの制御により、画像生成部14は、第2の超音波画像群それぞれの超音波画像から第1の超音波画像を差分することで差分画像群を生成する(ステップS204)。
【0094】
そして、選択部18bは、差分画像群から第3の超音波画像を選択する(ステップS205)。具体的には、選択部18bは、低輝度の出現頻度が多く、高輝度の出現頻度が低い輝度曲線を有する差分画像を第3の超音波画像として選択する。
【0095】
その後、抽出部18cは、第3の超音波画像全体を穿刺針領域として抽出し、画像生成部14は、第3の超音波画像を針画像として生成する(ステップS206)。なお、抽出部18cは、第3の超音波画像から、抽出用閾値、又は、直線抽出手法を用いて穿刺針領域を抽出し、画像生成部14は、穿刺針領域を用いて針画像を生成しても良い。
【0096】
続いて、画像合成部16は、第1の超音波画像と針画像との合成画像を生成する(ステップS207)。これにより、1フレーム分の合成画像が生成される。
【0097】
そして、表示制御部18dは、合成画像をモニタ2に表示させるように制御し(ステップS208)、穿刺モードが終了したか否かを判定する(ステップS209)。ここで、穿刺モードが終了していない場合(ステップS209否定)、超音波診断装置は、ステップS202に戻って、次のフレーム分の合成画像を生成するためのスキャンが実行されるように制御する。
【0098】
一方、穿刺モードが終了した場合(ステップS209肯定)、超音波診断装置は、処理を終了する。なお、表示制御部18dは、合成画像とともに、第1の超音波画像や第3の超音波画像、差分画像群などを並列表示させても良い。また、上記では、穿刺モードの終了判定がステップS208の合成画像表示後に実行される場合について説明した。しかし、第3の実施形態は、穿刺モードの終了判定がステップS202において第1のスキャン及び第2のスキャンが行なわれた後に実行される場合であっても良い。すなわち、第1のスキャン及び第2のスキャンは、ステップS203からステップS208の処理と並行して、順次実行される場合であっても良い。
【0099】
上述してきたように、第3の実施形態では、選択部18bは、第2の超音波画像群それぞれの超音波画像から第1の超音波画像を差分することで差分画像群を生成するように画像生成部14を制御し、当該差分画像群から第3の超音波画像を選択する。そして、抽出部18cは、選択部18bが選択した第3の超音波画像全体、又は、当該第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出する。
【0100】
すなわち、第3の実施形態では、第3の超音波画像の選択対象を、生体組織の情報が低減された差分画像群とする。その結果、第3の実施形態では、オブリークスキャンにより生成された画像群を第3の超音波画像の選択対象とする場合と比較して、穿刺針1bの視認性をより向上させることが可能となる。なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態においても、第3の超音波画像に描出される生体組織にアーチファクトの影響が少ない場合には、第3の超音波画像全体を穿刺針領域として抽出しても良い。
【0101】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第3の実施形態において、第2の実施形態で説明した輝度調整が実行される場合について説明する。
【0102】
第4の実施形態に係る制御部18は、第3の実施形態に係る制御部18に、第2の実施形態にて説明した調整部18eが追加された構成となる。すなわち、第4の実施形態に係る制御部18の構成は、図7に示す制御部18と同様となる。
【0103】
すなわち、第4の実施形態においても、第1の実施形態〜第3の実施形態と同様に、第1のスキャン及び第2のスキャンが行なわれた後に、第1の超音波画像及び第2の超音波画像群が生成される。図12A及びBは、第4の実施形態に係る制御部の処理を説明するための図である。
【0104】
そして、第4の実施形態では、第2の実施形態と同様に、調整部18eは、第2の超音波画像群の輝度調整を行なうことで、各超音波画像の全体の輝度が略均一となる第3の超音波画像群を生成する(図12Aに示すステップSA1)。
【0105】
そして、第4の実施形態では、第3の実施形態とは異なり、選択部18bの制御により、画像生成部14は、第3の超音波画像群から差分画像群を生成する(図12Aに示すステップSA2)。すなわち、画像生成部14は、第3の超音波画像群それぞれを、第1の超音波画像から差分することで、差分画像群を生成する。
【0106】
そして、第4の実施形態では、第3の超音波画像群を用いて生成された差分画像群から第3の超音波画像を選択する(図12Aに示すステップSA3)。すなわち、図12Aに示す場合、選択部18bは、第3の超音波画像群から差分画像群を生成するように画像生成部14を制御し、当該差分画像群から第3の超音波画像を選択する。なお、図12Aに示す場合に第3の超音波画像の選択に用いられる所定の条件は、第3の実施形態で説明した選択条件が用いられる。
【0107】
このように、第4の実施形態では、図11のフローチャートで説明したステップS204及びステップS205の処理に変わって、図12Aに示すステップSA1〜ステップSA3の処理が行なわれる。
【0108】
これにより、第4の実施形態では、第3の超音波画像の選択対象となる差分画像群の画質が向上されるので、第3の実施形態と比較して、穿刺針1bの視認性をより向上させることが可能となる。
【0109】
ただし、実際の超音波画像では、上述したように、画像収集時に画像全体の輝度調整を行ってもオブリークスキャンにより同一部位が同一輝度で描出されることは、まれである。従って、輝度調整が行なわれた第3の超音波画像を用いて生成された差分画像にも、生体組織の消え残りが描出された領域も含まれる可能性がある。そこで、第4の実施形態は、変形例として、以下の処理を更に行なっても良い。
【0110】
まず、調整部18eは、更に、差分画像群を輝度調整する(図12Bに示すステップSA4)。具体的には、調整部18eは、更に、画像生成部14により生成された差分画像群に対して、各差分画像の全体の輝度が略均一となる輝度調整を行なう。すなわち、調整部18eは、第2の超音波画像群に対して行なった輝度調整を差分画像群に対しても実行する。これにより、差分画像に含まれる生体組織の残渣領域を排除することが出来る。
【0111】
又は、調整部18eは、差分画像群に対して、第2の閾値以下の輝度を所定の値に置換する輝度調整を行なう。例えば、第2の閾値は、生体組織の残渣に対応する輝度を参照することで設定される。そして、例えば、調整部18eは、第2の閾値以下の輝度を「0」に置換する。これによっても、差分画像に含まれる生体組織の残渣領域を排除することが出来る。
【0112】
そして、選択部18bは、調整部18eにより輝度調整が行なわれた差分画像群から第3の超音波画像を選択する(図12Bに示すステップSA5)。なお、図12Bに示す場合に第3の超音波画像の選択に用いられる所定の条件は、第3の実施形態で説明した選択条件が用いられる。
【0113】
このように、第4の実施形態の変形例では、図11のフローチャートで説明したステップS204及びステップS205の処理に変わって、図12Aに示すステップSA1及びSA2と、図12Bに示すステップSA4及びSA5が順次実行される。
【0114】
これにより、第4の実施形態の変形例では、第3の超音波画像の選択対象となる差分画像群には、生体組織の残渣が描出される可能性が低減されるので、上記の場合と比較して、穿刺針1bの視認性をより向上させることが可能となる。なお、第4の実施形態及び第4の実施形態の変形例では、第3の実施形態と同様に、第3の超音波画像全体を穿刺針領域として抽出する場合であっても、第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出する場合であっても良い。
【0115】
ここで、上記した第1〜第4の実施形態に係る画像合成部16は、第1の超音波画像(生体画像)と針画像とを単純に1対1で重畳することで合成画像を生成する場合であっても良いが、以下に説明する合成処理を行なっても良い。図13は、画像合成部の変形例を説明するための図である。
【0116】
すなわち、画像合成部16は、第1の超音波画像と針画像とを合成する際の重み付けを変更することで合成画像を生成する。例えば、画像合成部16は、図13に示すように、生体画像の重みを「1」とし、針画像の重みを「2」とすることで、穿刺針1bが強調された合成画像を生成する。ここで、各画像に対する重み付けは、操作者により任意に変更可能であり、例えば、施術中であっても変更可能である。すなわち、穿刺針1bを強調した合成画像を参照したい場合、操作者は、針画像の重みを大きくし、生体組織を強調した合成画像を参照したい場合、操作者は、生体画像の重みを大きくする。例えば、各画像に対する重み付けは、入力装置3を介して設定される。
【0117】
また、画像合成部16は、重み付けが変更された合成画像を複数生成する場合であっても良い。例えば、画像合成部16は、生体画像と針画像との重み付けが「1:2」及び「2:1」の合成画像を2つ生成する場合であっても良い。また、画像合成部16は、重み付けが変更された合成画像を生成する要求があった場合でも、生体画像と針画像とを「1:1」で合成した合成画像も生成しても良い。かかる場合、表示制御部18dは、複数の合成画像を並列表示させる。
【0118】
上記の変形例によれば、操作者(医師)の要望に応じて、生体組織、又は、穿刺針1bのいずれかが強調された合成画像を表示することが出来るので、操作者による穿刺を更に支援することが可能となる。
【0119】
また、上記した第1〜第4の実施形態では、第2のスキャンで実行される複数の超音波送信方向が固定される場合について説明した。しかし、第1〜第4の実施形態に係る第2のスキャンは、以下に説明する変形例により実行される場合であっても良い。
【0120】
すなわち、変形例に係るスキャン制御部18aは、選択部18bが選択した第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向に基づいて、第2のスキャンにおける超音波の送信条件を変更する。図14A及びBは、スキャン制御部の変形例を説明するための図である。
【0121】
一例を挙げると、スキャン制御部18aは、まず、図14Aに示すように10度間隔で所定の角度範囲(角度「B−B」から角度「B−B」の範囲)の第2のスキャンを実行させる。ここで、例えば、図14のAに示すように、角度「α3」のオブリークスキャンにより生成された第3の超音波画像が選択部18bにより選択されたとする。かかる場合、スキャン制御部18aは、例えば、図14Aに示すように、角度「α3」を針画像生成用の候補角度とし、再度、角度「α3」を中心にして「α2からα4を5度間隔」とする第2のスキャンを実行させる。
【0122】
そして、選択部18bは、再度実行された第2のスキャンにより生成された画像群から第3の超音波画像を選択する。なお、第2のスキャンの繰り返し回数は、3回以上であっても良い。例えば、第2のスキャンは、角度間隔及び角度範囲を順次減少させながら、所定回数繰り返される場合であっても良い。
【0123】
上記の変形例では、針画像を生成するための最適なオブリークの角度を高精度に選択することが出来る。
【0124】
なお、第2のスキャンの変更は、上記のように、1フレームの合成画像を生成する際に複数回繰り返される場合に限定されるものではない。例えば、直前のフレームにて選択された第3の超音波画像のオブリーク角度に基づいて、新規のフレームを生成するための第2のスキャンの角度間隔及び角度範囲を減少させる場合であっても良い。かかる場合、合成画像生成処理に要する処理負荷を低減することが出来る。特に、輝度調整が行なわれる場合は、輝度調整を行なう画像数を減少させることが出来る。
【0125】
また、第2のスキャンは、必ずしも複数方向にて実行される場合に限定されるものではない。例えば、スキャン制御部18aは、選択部18bが選択した第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向を、第2のスキャンで実行される超音波送信方向である第2の方向として決定する場合であっても良い。例えば、図14Bに示すように、角度「α3」のオブリークスキャンにより生成された第3の超音波画像が選択部18bにより選択されたとする。かかる場合、スキャン制御部18aは、図14Bに示すように、以降のフレームでは、角度「α3」の超音波送信方向を第2の方向とし、第2のスキャンを第2の方向に固定して行なう場合であっても良い。第2のスキャンの角度が固定された場合、選択部18bの処理はスキップされ、抽出部18cの処理により、針画像は、角度「α3」のオブリークスキャンにより生成された画像を用いて生成される。
【0126】
ここで、複数方向の第2のスキャンから単一方向の第2のスキャンへの移行は、以下に示す様々なパターンに大別される。第1のパターンは、最初の1フレームでオブリークスキャンの角度を決定して、複数方向の第2のスキャンから単一方向の第2のスキャンへ移行する場合である。また、第2のパターンは、複数フレームに渡り複数方向の第2のスキャンを実行し、各フレームで選択されたオブリークスキャンの角度が所定の範囲内にある場合に、複数方向の第2のスキャンから単一方向の第2のスキャンへ移行する場合である。かかる場合、固定されるオブリークスキャンの角度は、平均値や中央値などが用いられる。
【0127】
上記の場合でも、合成画像生成処理に要する処理負荷を低減することが出来る。
【0128】
また、スキャン制御部18aは、複数方向の第2のスキャン及び単一方向の第2のスキャンを以下のように併用する場合であっても良い。すなわち、スキャン制御部18aは、第2の方向を決定した後、所定の時機に、再度、第2のスキャンで実行される超音波送信方向を複数の方向として、選択部18bによる第3の超音波画像の選択処理を実行させる。そして、スキャン制御部18aは、選択部18bが選択した第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向を新規の第2の方向として決定する。ここで、第2の方向を更新する所定の時機は、操作者が指定した時点である場合でも良く、予め設定された時間が経過した時点である場合であっても良い。例えば、スキャン制御部18aは、単一方向(第2の方向)の第2のスキャンに移行した後も、所定の間隔(例えば、5フレームごと)で複数方向の第2のスキャンを1回、又は、複数回実行させる。これにより、スキャン制御部18aは、再度、単一方向の第2のスキャンのオブリークスキャンの角度(新規の第2の方向)を決定する。
【0129】
上記の場合では、針画像を生成するためのオブリークの最適な角度を、順次更新した上で、合成画像生成処理に要する処理負荷を低減することが出来る。
【0130】
なお、上記では、第3の超音波画像が1つ選択される場合について説明した。しかし、第1の実施形態〜第4の実施形態で説明した「所定の条件」を満たす画像は、複数である場合もある。以下では、選択部18bが所定の条件を満たす画像を複数選択した場合に行なわれる処理について説明する。
【0131】
選択部18bは、所定の条件を満たす画像を複数選択した場合、当該選択した複数の画像を加算した加算画像を生成するように画像生成部14を制御する。例えば、画像生成部14は、選択部18bが選択した複数の画像を加算することで加算画像を生成する。或いは、例えば、画像生成部14は、選択部18bが選択した複数の画像を加算平均することで加算画像を生成する。或いは、例えば、選択部18bは、選択した各画像の所定の条件に対する一致度に基づいて、選択した複数の画像それぞれに対して、加算画像を生成する際の重み付けを設定しても良い。
【0132】
そして、抽出部18cは、加算画像を第3の超音波画像として、穿刺針領域の抽出処理を行なう。加算画像を用いることで、穿刺針1bが更に強調された針画像を生成することが出来る。
【0133】
なお、複数の第3の超音波画像が選択された場合、スキャン制御部18aは、複数の第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた複数の超音波送信方向に基づいて、第2のスキャンにおける超音波の送信条件を変更しても良い。例えば、スキャン制御部18aは、選択された3つの画像それぞれに対応するオブリークスキャンの角度が「α3、α4、α5」であった場合、「α3、α4、α5」により定まる3つの超音波送信方向を『3つの「第2の方向」』として第2のスキャンを実行させても良い。また、複数の第2の方向により第2のスキャンを固定して実行する場合、所定の時機に、再度、第2のスキャンにおける超音波送信方向を更新する処理が行なわれる場合であっても良い。かかる場合、更新される第2の方向は、1つの方向であったり、複数の方向であったりする。
【0134】
或いは、選択部18bは、所定の条件を満たす画像を複数選択した場合、当該選択した複数の画像の中から、更に、1つの画像を選択する場合でも良い。例えば、選択部18bは、選択した複数の画像の中から任意に選択した1つの画像を第3の超音波画像として、抽出部18cに通知する。或いは、例えば、選択部18bは、選択した複数の画像の中で、所定の条件と最も一致する画像を第3の超音波画像として、抽出部18cに通知する。
【0135】
或いは、選択部18bが所定の条件を満たす画像を複数選択し、更に、選択した複数の画像から所定の条件と最も一致する画像を選択できなかった場合、スキャン制御部18aは、以下の制御を行なっても良い。すなわち、スキャン制御部18aは、選択部18bにより第3の超音波画像が1つ選択されるまで、図14Aを用いて説明したように、角度間隔及び角度範囲を減少させた第2のスキャンを、再度、1回、または、複数回実行させる。そして、選択部18bは、再度実行された第2のスキャンにより生成された画像群から、所定の条件と最も一致する画像を第3の超音波画像として選択する。
【0136】
なお、第1の実施形態〜第4の実施形態及び変形例で説明した制御方法は、あらかじめ用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリなどのFlashメモリなどのコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0137】
以上、説明したとおり、第1の実施形態〜第4の実施形態及び変形例によれば、生体組織及び穿刺針双方の視認性を向上させることが可能となる。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1 超音波プローブ
1a 穿刺アダプタ
1b 穿刺針
2 モニタ
3 入力装置
10 装置本体
11 送受信部
12 Bモード処理部
13 ドプラ処理部
14 画像生成部
15 画像メモリ
16 画像合成部
17 内部記憶部
18 制御部
18a スキャン制御部
181 画像生成制御部
18b 選択部
18c 抽出部
18d 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針が挿入された被検体を超音波スキャンする際に、前記被検体の組織の撮像を目的として、振動子面に対して第1の方向に超音波送信を行なう第1のスキャンと、振動子面に対して複数の方向それぞれで超音波送信を行なう第2のスキャンとを超音波プローブに実行させるスキャン制御部と、
前記第1のスキャンにより前記超音波プローブが受信した反射波を用いて第1の超音波画像を生成し、前記第2のスキャンにより前記超音波プローブが受信した反射波を用いて前記複数の方向ごとの超音波画像である第2の超音波画像群を生成する画像生成部と、
前記第1の超音波画像および前記第2の超音波画像群に基づく画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果、または、前記第2の超音波画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づいて、前記穿刺針が高輝度で描出された針画像を生成するように前記画像生成部を制御する画像生成制御部と、
前記画像生成部により生成された前記第1の超音波画像と前記針画像との合成画像を生成する画像合成部と、
前記画像合成部により生成された前記合成画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記画像生成制御部は、
画像内の輝度分布を解析する機能を有し、解析を行なった画像群から、解析結果が所定の条件を満たす画像を前記穿刺針が高輝度で描出された第3の超音波画像として選択する選択部と、
前記第3の超音波画像全体を穿刺針領域として抽出し、または、当該第3の超音波画像の高輝度領域を穿刺針領域として抽出し、当該抽出した穿刺針領域を用いて前記針画像を生成するように前記画像生成部を制御する抽出部と、
を備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記第2の超音波画像群の中から、所定の閾値以上の輝度となる画素の出現頻度が最高となる画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向に最も近い角度で実行された超音波送信により受信された反射波を生成元とする画像を前記第3の超音波画像として選択する、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像生成部により生成された前記第2の超音波画像群の輝度調整を行なうことで、各超音波画像の全体の輝度が略均一となる第3の超音波画像群を生成する調整部を更に備え、
前記選択部は、前記第3の超音波画像群から、前記第3の超音波画像を選択する、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記第2の超音波画像群それぞれの超音波画像から前記第1の超音波画像を差分することで差分画像群を生成するように前記画像生成部を制御し、当該差分画像群から前記第3の超音波画像を選択する、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像生成部により生成された前記第2の超音波画像群の輝度調整を行なうことで、各超音波画像の全体の輝度が略均一となる第3の超音波画像群を生成する調整部を更に備え、
前記選択部は、前記第3の超音波画像群から前記差分画像群を生成するように前記画像生成部を制御し、当該差分画像群から前記第3の超音波画像を選択する、請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記調整部は、更に、前記画像生成部により生成された前記差分画像群に対して、各差分画像の全体の輝度が略均一となる輝度調整、又は、第2の閾値以下の輝度を所定の値に置換する輝度調整を行ない、
前記選択部は、前記調整部により輝度調整が行なわれた差分画像群から前記第3の超音波画像を選択する、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記抽出部は、前記第3の超音波画像から高輝度領域が略直線となる直線領域を前記穿刺針領域として抽出する、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記画像合成部は、前記第1の超音波画像と前記針画像とを合成する際の重み付けを変更することで前記合成画像を生成する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記選択部は、前記所定の条件を満たす画像を複数選択した場合、当該選択した複数の画像を加算した加算画像を生成するように前記画像生成部を制御し、
前記抽出部は、前記加算画像を前記第3の超音波画像として、前記穿刺針領域の抽出処理を行なう、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記スキャン制御部は、前記選択部が選択した前記第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向に基づいて、前記第2のスキャンにおける超音波の送信条件を変更する、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記スキャン制御部は、前記選択部が選択した前記第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向を、前記第2のスキャンで実行される超音波送信方向である第2の方向として決定する、請求項11に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記スキャン制御部は、前記第2の方向を決定した後、所定の時機に、再度、前記第2のスキャンで実行される超音波送信方向を前記複数の方向として、前記選択部による前記第3の超音波画像の選択処理を実行させ、前記選択部が選択した前記第3の超音波画像の生成元となる反射波を受信するために行なわれた超音波送信方向を新規の第2の方向として決定する、請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
穿刺針が挿入された被検体を超音波スキャンする際に、前記被検体の組織の撮像を目的として、振動子面に対して第1の方向に超音波送信を行なう第1のスキャンと、振動子面に対して複数の方向それぞれで超音波送信を行なう第2のスキャンとを超音波プローブに実行させるスキャン制御手順と、
前記第1のスキャンにより前記超音波プローブが受信した反射波を用いて第1の超音波画像を生成し、前記第2のスキャンにより前記超音波プローブが受信した反射波を用いて前記複数の方向ごとの超音波画像である第2の超音波画像群を生成する画像生成手順と、
前記第1の超音波画像および前記第2の超音波画像群に基づく画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果、または、前記第2の超音波画像群それぞれの輝度分布を解析した解析結果に基づいて、前記穿刺針が高輝度で描出された針画像を生成するように前記画像生成手順を制御する画像生成制御手順と、
前記画像生成手順により生成された前記第1の超音波画像と前記針画像との合成画像を生成する画像合成手順と、
前記画像合成手順により生成された前記合成画像を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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