説明

超音波診断装置

【課題】生体内の非線形性に基づく高調波成分を画像化する超音波診断装置において、画像の感度を高められるようにする。
【解決手段】送信部12により、位相反転関係にある第1送信信号と第2送信信号とが生成される。各送信信号は定倍関係にある第1変調信号及び第2変調信号を合成した信号として構成される。第1送信信号に対応する第1受信信号と第2送信信号に対応する第2受信信号の加算処理により和信号が得られ、それらの減算処理により差信号が得られる。和信号及び差信号に対してパルス圧縮処理が施され、そのパルス圧縮後の和信号及び差信号から画像形成用の信号が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に生体組織の非線形性により生じた高調波成分を観測する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波が生体内を伝搬すると、生体組織の非線形性から超音波に歪みが生じる。それによって生じた高調波成分(特に二次高調波成分)を受信信号中から抽出し、それを用いて生体組織の非線形を評価したり生体組織を画像化することが行われている。二次高調波成分を利用すれば分解能が良好な断層画像を形成できることが知られている。受信信号のスペクトルを見ると、基本波成分と二次高調波成分にオーバーラップが認められる。HPFを利用して二次高調波成分を抽出する方式では、上記のオーバーラップにより、急峻なフィルタ特性をもったものを利用しても基本波成分を十分に除外することは難しい。
【0003】
PI法(パルスインバージョン法、フェイズインバージョン法)においては、特許文献1及び2に記載されるように、第1送信信号とその極性を反転した第2送信信号とが順次送信され、各送信信号に対応して得られた第1受信信号と第2受信信号が加算される。その加算によって、基本波成分はキャンセルされ、二次高調波成分が2倍に加算される。これは、送信時の極性にかかわらず二次高調波成分が同じ極性で現れることを利用したものである。PI法の発展形あるいはその問題を解消した方法として、特許文献3に記載された手法がある。この手法では、周波数f0の信号と周波数2f0の信号とを合成した第1送信信号と、それの極性を反転させた第2送信信号とが順次送信され、それにより得られた第1受信信号及び第2受信信号から和信号と差信号を生成し、それらの除算演算によって、生体組織の非線形性を表す信号が生成される。なお、特許文献4には、高調波成分の検出に当たってパルス圧縮技術を利用することが記載されている。特許文献5には、パルス圧縮フィルタの利用について記載されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5706819号明細書
【特許文献2】特開2004−113818号公報
【特許文献3】特開2001−299764号公報
【特許文献4】特表2002−539881号公報
【特許文献5】特開2003−190157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受信信号スペクトラムにおいて、基本波成分に対して二次高調波成分は微弱である。よって、二次高調波成分による画像化、計測に当たって感度不足が問題となる。特に上記の特許文献3に記載された方法を適用する場合において感度を向上することが求められている。
【0006】
本発明の目的は、高調波成分による画像化に当たって十分な感度を得られる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、逓倍関係にある第1変調信号及び第2変調信号が合成された第1送信信号と、前記第1送信信号の極性を反転させた第2送信信号と、を出力する送信手段と、前記第1送信信号に対応する第1受信信号と、前記第2送信信号に対応する第2受信信号と、を出力する受信手段と、前記第1受信信号と前記第2受信信号の加算処理により和信号を生成する和信号生成手段と、前記第1受信信号と前記第2受信信号の減算処理により差信号を生成する差信号生成手段と、前記和信号及び前記差信号に対し、それぞれパルス圧縮処理を実行するパルス圧縮手段と、前記パルス圧縮処理後の和信号及び差信号から画像形成用の信号を生成する手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1送信信号に基づく超音波の送波によって第1受信信号が得られ、第2送信信号に基づく超音波の送波によって第2受信信号が得られる。望ましくは、第1送信信号に基づく超音波と第2送信信号に基づく超音波は各ビーム方向において順次送波される。第1受信信号と第2受信信号の加算処理により和信号が得られ、第1受信信号と第2受信信号の減算処理により差信号が得られる。それらの比率等から画像形成用の信号が生成される。本発明では、第1送信信号と第2送信信号とが逆相(反転)関係にあり、各送信信号は第1変調信号と第2変調信号とを合成したものとして構成され、それらの変調信号は逓倍関係(あるいは整数倍関係)にある。送信時に変調処理を施した上で受信時にパルス圧縮処理を施すことができるので、送信時に時間軸上に展開されたエネルギーを受信時に畳み込んで信号レベルを引き上げることができる。特に、高調波成分は基本波に比べて微弱であるため、画像形成時に感度が問題となるが、その感度を増加させて画質を改善できる。
【0009】
望ましくは、前記第1変調信号は、第1周波数帯域で周波数が変化する第1チャープ信号であり、前記第2変調信号は、前記第1周波数帯域に対する高調波帯域としての第2周波数帯域で周波数が変化する第2チャープ信号である。
【0010】
上記構成においては、例えば、第1チャープ信号は、周波数f0から周波数f1まで周波数が線形に変化する信号であり(中心周波数f01)、第2チャープ信号は、周波数2f0から周波数2f1まで周波数が線形に変化する信号である(中心周波数2f01)。なお、第1周波数帯域から見て第2周波数帯域が2倍の関係にあるのが望ましい。周波数変調が行われる両帯域は分離されあるいは部分的に重複する。
【0011】
本発明の望ましい態様では、受信信号の「加算処理」においては、第1送信信号における第1変調信号に由来する基本波成分(周波数:f0−f1)と、第2送信信号における第1変調信号に由来する基本波成分(周波数:f0−f1)とが相殺されると共に、第1送信信号における第2変調信号に由来する基本波成分(周波数:2f0−2f1)と、第2送信信号における第2変調信号に由来する基本波成分(周波数:2f0−2f1)とが相殺され、そして、第1送信信号における第1変調信号に由来する高調波成分(周波数:2f0−2f1)と、第2送信信号における第1変調信号に由来する高調波成分(周波数:2f0−2f1)とが加算された和信号を得られる。一方、受信信号の「減算処理」においては、第1送信信号における第1変調信号に由来する基本波成分(周波数:f0−f1)と、第2送信信号における第1変調信号に由来する基本波成分(周波数:f0−f1)とが加算されると共に、第1送信信号における第2変調信号に由来する基本波成分(周波数:2f0−2f1)と、第2送信信号における第2変調信号に由来する基本波成分(周波数:2f0−2f1)とが加算され、一方、第1送信信号における第1変調信号に由来する高調波成分(周波数:2f0−2f1)と、第2送信信号における第1変調信号に由来する高調波成分(周波数:2f0−2f1)が相殺されて、差信号が得られる。和信号に対してBPF処理を適用すれば残留基本波成分を除去できる。差信号に対してBPF処理を適用すれば、第1周波数帯域内の基本波成分を除去して、第2周波数帯域内の基本波成分を抽出できる。
【0012】
望ましくは、前記パルス圧縮手段は、前記和信号及び前記和信号に含まれる前記第2周波数帯域内の信号成分に対してパルス圧縮を実行する。望ましくは、前記パルス圧縮手段は、パルス圧縮処理と、前記第2周波数帯域内の信号成分を抽出するフィルタ処理と、を同時に実行する。この構成によれば、2つの処理を一度に実現できるので有利である。
【0013】
望ましくは、前記パルス圧縮手段は、入力される時間軸上の信号を周波数軸上の信号に変換する手段と、前記周波数軸上の信号に対してパルス圧縮処理を実行する手段と、前記パルス圧縮後の周波数軸上の信号を時間軸上の信号に逆変換する手段と、を含む。この構成によれば、時間軸(時間領域)上でのパルス圧縮に比べて構成を簡略化できる。
【0014】
望ましくは、前記パルス圧縮手段の後段にパルス圧縮後の和信号及び差信号を検波する検波手段が設けられ、前記パルス圧縮手段には検波前の和信号及び差信号が入力される。望ましくは、前記和信号生成手段及び前記差信号生成手段と前記パルス圧縮手段との間に前記和信号及び前記差信号を検波する検波手段が設けられ、前記パルス圧縮手段には検波後の和信号及び差信号が入力される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、高調波成分による画像化に当たって感度不足を補える超音波診断装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその構成を示すブロック図である。
【0018】
アレイ振動子10は図示されていない超音波探触子内に配置される。アレイ振動子10は複数の振動素子からなるものであり、そのアレイ振動子10によって超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。アレイ振動子10としていわゆる2Dアレイ振動子を用いることも可能である。本実施形態においては、各ビーム方向ごとに2回ずつ送受信が繰り返し実行される。
【0019】
送信部12は、送信ビームフォーマーとして機能するものである。本実施形態において、送信部12は第1送信信号と第2送信信号を順次出力する。それらの送信信号は互いに位相が反転した関係にあり、それぞれの送信信号は後に図3を用いて説明するように2つの変調信号を合成した合成変調信号である。送信部12について具体的に説明すると、信号発生部22は図1に示す例において2つの信号発生器24、26を有している。第1信号発生器24は第1変調信号100を生成し、第2信号発生器26は第2変調信号102を生成する。それらの変調信号100,102が加算器30で加算されて合成変調信号が生成される。その合成変調信号は遅延処理器32によって遅延処理される。その際の位相調整により、合成変調信号から第1送信信号及び第2送信信号を生成することができる。もちろん、第1信号発生器24及び第2信号発生器26がそれぞれ第1送信信号及び第2送信信号用の各変調信号並びに第1送信信号及び第2送信信号用の各第2変調信号を生成するようにしてもよい。遅延処理後の送信信号(第1送信信号又は第2送信信号)はD/A変換器34においてデジタル信号からアナログ信号へ変換される。アナログ信号としての送信信号はアンプ36において線形増幅され、その増幅後の送信信号がアレイ振動子10へ出力される。なお、図1においては送信部12内に1つの送信チャンネルのみが示されているが、実際には複数の振動素子に対応して複数の送信チャンネル(送信器)が並列的に設けられる。各送信信号間に所定の遅延関係を設定することにより送信ビームが形成される。上述したように、1つのビーム方向当たり第1送信及び第2送信が順次実行されることになる。
【0020】
アレイ振動子10においては、第1送信信号の供給により第1超音波パルスが生成され、その第1超音波パルスに対応する第1反射波がアレイ振動子10にて受波される。これによって第1受信信号が得られる。これと同様に、アレイ振動子10に対して第2送信信号が供給されると、アレイ振動子10から第2超音波パルスが生体内へ送波される。そして第2超音波パルスに対応する反射波がアレイ振動子10にて受波され、これによりアレイ振動子10から第2受信信号が出力される。
【0021】
受信部14は受信ビームフォーマーとして機能するものである。具体的には、複数のアレイ振動子10から出力される受信信号(第1受信信号,第2受信信号)に対して整相加算処理を実行することにより、電子的に受信ビームを形成する。これにより得られた整相加算後の受信信号(第1受信信号,第2受信信号)は高調波成分処理部16へ出力される。図1に示す高調波成分処理部16において、ラインメモリ38にはあるビーム方位上において最初に得られた受信信号が格納される。ラインメモリ38は例えば1つの受信ビームに相当するエコーデータ列を格納するメモリである。後続する受信信号が得られると、ラインメモリから先に格納された受信信号が読み出される。具体的には、受信信号108は加算器40及び減算器42へ出力され、一方、ラインメモリ38から読み出された受信信号110は加算器40及び減算器42へ出力される。加算器40は、受信信号108と受信信号110を加算処理し、これによって和信号112を出力する。一方、減算器42は、受信信号108と受信信号110に対して減算処理を実行し、これによって差信号114を出力する。
【0022】
このような加算処理及び減算処理については上記の特許文献3にも詳述されているが、加算処理によって生体内の非線形性に起因する高調波成分が抽出され、減算処理によって、そのような高調波成分ではない基本波成分が抽出されることになる。
【0023】
パルス圧縮部44は、図1に示す構成例においてパルス圧縮フィルタ46,48によって構成される。上述したように、各送信信号は変調信号として構成されており、パルス圧縮フィルタ46,48は変調信号を復調するためのパルス圧縮処理を実行する。パルス圧縮フィルタ46,48の具体的な構成例については図4を用いて説明するが、本実施形態においては、パルス圧縮フィルタ46,48がパルス圧縮処理とバンドパスフィルタ処理とを同時に実行している。これにより、パルス圧縮を行いつつ基本周波数の2倍の周波数帯域に存在する信号成分の抽出を行うことが可能となる。パルス圧縮フィルタ46のフィルタ処理により残留する基本波成分を除去し、精度良く非線形成分を抽出でき、また、パルス圧縮フィルタ48のフィルタ処理により2倍の周波数帯域に存在する基本波のみを抽出することが可能となる。
【0024】
パルス圧縮フィルタ46,48から出力される信号116,118はそれぞれ検波回路50,52に入力される。検波回路50,52によって検波処理された後の信号は除算回路54へ出力される。除算回路54においては入力される2つの信号に基づいて除算演算を実行することにより生体内の非線形性を表す信号を生成する。その信号はハイパスフィルタ(HPF)56を介して表示処理部18へ出力される。HPF56は除算回路54から出力される信号の時間的な変化率を取得するための微分回路である。
【0025】
表示処理部18はデジタルスキャンコンバータ(DSC)としての機能を有し、すなわち、画像形成機能、補間演算機能などを有している。これにより形成された画像のデータは表示部20へ出力され、表示部20上には例えば生体内の断層画像が白黒画像として表示される。
【0026】
パルス圧縮フィルタ46,48はDSP(デジタルシグナルプロセッサ)などの汎用のプログラマブルデバイスなどを用いて浮動小数点精度で処理するように構成するのが望ましい。ただし、処理速度やコスト面を考慮した場合には、固定小数点精度での処理やFFTチップなどの専用のハードウエアを用いてパルス圧縮を実現することも可能である。
【0027】
図2には、上述した第1変調信号100及び第2変調信号102が示されている。それらはチャープパルスであり、第1変調信号100に対して第2変調信号102は2倍の周波数関係を有する。
【0028】
図3には、第1変調波信号100と第2変調波信号102とを合成することにより生成される第1送信信号104と第2送信信号106とが示されている。第1送信信号104と第2送信信号106とは互いに位相が反転した関係にある。この図3に示されるような2つの送信波形をもった超音波が生体内に順次送波されることになる。なお、各送信信号については時間軸上における重み付けなどを適用してもよく、その場合においてはガウス関数などを利用することができる。
【0029】
図4には、図1に示したパルス圧縮フィルタ46,48の具体的な構成例が示されている。この構成例では時間軸上の信号が周波数軸上の信号に変換され、その周波数軸上において圧縮演算が実行されている。
【0030】
FFTモジュール70は実数部及び虚数部の2つの入力端子を有し、図4に示す例では実数部の入力端子に和信号112又は差信号114が入力される。虚数部の入力端子には0が入力される。FFTモジュール70により時間軸上の信号が周波数軸上の信号に変換される。メモリ74上には伝達関数H’(ω)を表す係数列が格納されている。この伝達関数H’(ω)は、バンドパスフィルタ(BPF)の伝達関数をBPF(ω)とし、2倍周波数帯域におけるパルス圧縮フィルタの伝達関数をH(ω)とした場合、両者の積として表される。メモリ74から出力される係数列は複素乗算器72に与えられる。複素乗算器72には上記の和信号112又は差信号114が入力されており、入力される係数列を用いて複素乗算演算が実行される。これによって、一度の処理でBPF処理とパルス圧縮処理とを同時に実現できるという利点があり、処理効率を極めて高めることが可能となる。
【0031】
複素乗算器72から出力される信号はIFFTモジュール(逆FFTモジュール)76に入力され、そのモジュールにおいて周波数軸上の信号が時間軸上の信号へ戻される。IFFTモジュール76の2つの出力端子の内で実数部の出力端子にはパルス圧縮後の和信号116又は差信号118が現れ、虚数部の出力端子はここでは使用されていない。
【0032】
したがって、図1乃至図4に示した構成によれば、2つの送信信号が合成変調信号として構成され、受信信号処理の段階で和信号及び差信号に対するパルス圧縮処理を施すことが可能であるので、上述したような感度不足という問題に対処して超音波画像の画質、特に感度を改善できるという利点がある。
【0033】
図5には図1に示した高調波成分処理部16の他の構成例が示されている。なお、図1に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
【0034】
図5に示す構成例では、加算器40と検波回路50との間にBPF62が挿入されており、これと同様に、減算器42と検波回路52との間にBPF64が挿入されている。パルス圧縮部44は検波回路50,52の後段に設けられている。ここで、BPF62,64はRF信号としての受信信号中における2倍周波数帯域内における成分を抽出するための回路であり、和信号112に対しては残留基本波成分の除去を行い、差信号114に対しては2倍周波数帯域における信号の抽出を行っている。図1に示す構成例ではパルス圧縮部44がRF信号に対するパルス圧縮を行うものであったが、図5に示す構成例では検波後のベースバンド領域における信号に対してパルス圧縮が行われている。
【0035】
図6には、図1に示した高調波成分処理部16の更に他の構成例が示されている。なお、図1に示した構成と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図6に示す構成例では、パルス圧縮部44において1つのパルス圧縮フィルタ47のみが用いられている。その具体的な構成例が図7に示されており、図7に示す構成例は図4に示した構成例と対比されるものである。図4に示す構成例ではFFT70における虚数部の入力端子が実質的に使用されておらず、またIFFT76における虚数部の出力端子も未使用であった。これに対し図7に示す構成例では、使用されていないチャンネルを有効利用するため、FFT70における実数部の入力端子には和信号112が入力され、虚数部の入力端子に差信号114が入力されている。そして、複素乗算器72においては両信号について複素乗算演算が同時に実行され、またIFFT76の2つの出力端子にはそれぞれパルス圧縮後の和信号116及びパルス圧縮後の差信号118が現れている。このように、複素信号における実部と虚部とか相互干渉することなく別々にフィルタリングできることに着目して単一のパルス圧縮フィルタを用いて2つの信号についてのパルス圧縮を行うものであり、このような構成によればパルス圧縮部の構成を半分に節約できるという利点がある。なお、図1に示した構成例において、パルス圧縮フィルタ46,48が有していたバンドパスフィルタの機能を検波回路50,52に移行するようにしてもよい。検波回路50,52における検波方式としては例えば直交検波方式などを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1変調信号と第2変調信号を示す図である。
【図3】位相反転関係にある2つの合成された変調信号を示す図である。
【図4】パルス圧縮フィルタの構成例を示す図である。
【図5】高調波成分処理部の他の構成例を示すブロック図である。
【図6】高調波成分処理部の更に他の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示すパルス圧縮フィルタの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
10 アレイ振動子、12 送信部、14 受信部、16 高調波成分処理部、22 信号発生部、24,26 信号発生器、44 パルス圧縮部、46,48 パルス圧縮フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逓倍関係にある第1変調信号及び第2変調信号が合成された第1送信信号と、前記第1送信信号の極性を反転させた第2送信信号と、を出力する送信手段と、
前記第1送信信号に対応する第1受信信号と、前記第2送信信号に対応する第2受信信号と、を出力する受信手段と、
前記第1受信信号と前記第2受信信号の加算処理により和信号を生成する和信号生成手段と、
前記第1受信信号と前記第2受信信号の減算処理により差信号を生成する差信号生成手段と、
前記和信号及び前記差信号に対し、それぞれパルス圧縮処理を実行するパルス圧縮手段と、
前記パルス圧縮処理後の和信号及び差信号から画像形成用の信号を生成する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記第1変調信号は、第1周波数帯域で周波数が変化する第1チャープ信号であり、
前記第2変調信号は、前記第1周波数帯域に対する高調波帯域としての第2周波数帯域で周波数が変化する第2チャープ信号であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記パルス圧縮手段は、前記和信号及び前記和信号に含まれる前記第2周波数帯域内の信号成分に対してパルス圧縮を実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記パルス圧縮手段は、パルス圧縮処理と、前記第2周波数帯域内の信号成分を抽出するフィルタ処理と、を同時に実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記パルス圧縮手段は、
入力される時間軸上の信号を周波数軸上の信号に変換する手段と、
前記周波数軸上の信号に対してパルス圧縮処理を実行する手段と、
前記パルス圧縮後の周波数軸上の信号を時間軸上の信号に逆変換する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記パルス圧縮手段の後段にパルス圧縮後の和信号及び差信号を検波する検波手段が設けられ、
前記パルス圧縮手段には検波前の和信号及び差信号が入力されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置において、
前記和信号生成手段及び前記差信号生成手段と前記パルス圧縮手段との間に前記和信号及び前記差信号を検波する検波手段が設けられ、
前記パルス圧縮手段には検波後の和信号及び差信号が入力されることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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