説明

超音波診断装置

【課題】 超音波振動子が大型化するロータリ・エンコードなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出する。
【解決手段】 超音波信号により2次元の断層面を電気的又は機械的に走査する超音波素子11をウインドウ内12で2次元の断面と直交する方向に機械的に揺動する場合に、ウインドウ12の金型成型時に形成されるゲート部12aを原点位置に形成し、感度比較回路26は受信信号とスレシュホールドレベルとを比較してゲート部により感度が劣化する位置で超音波素子の揺動方向の原点検出信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波信号により2次元の断層面を電気的又は機械的に走査する超音波素子をウインドウ内で2次元の断層面と直交する方向に機械的に揺動させることで3次元の超音波画像を取得する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波信号により2次元の断層面を電気的又は機械的に走査する超音波素子をウインドウ内で2次元の断層面と直交する方向に機械的に揺動させることで3次元の超音波画像を得る超音波探触子では、超音波素子の揺動方向の中心である原点のデータが必要であるので、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段が設けられている(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
図5(a)、(b)、(c)は従来の超音波探触子10の正面図、側面図、底面図をそれぞれ示し、図6は図5の超音波探触子10及び従来の超音波診断装置本体(以下、装置本体とも言う)20を示す。図5に示す超音波探触子10において、超音波素子である音響素子11は、複数の圧電素子がコンベックス状に配列されて構成されて2次元の断層面を電気的に走査するとともに、ウインドウ12内において矢印で示すように断層面と直交する方向に機械的に揺動するように揺動伝達機構13を介してモータ14に連結されている。モータ14の回転軸にはロータリ・エンコーダなどの原点検出器15が設けられている。
【0004】
図6において、音響素子ユニット11aは音響素子11を構成する複数の圧電素子と、個々の圧電素子に設けられた駆動電極などにより構成され、装置本体20内の送受信回路21からの駆動信号により超音波信号を不図示の被検体に送信し、被検体から反射信号を受信して送受信回路21に印加する。画像処理回路22は送受信回路21により受信された信号を画像処理して超音波断層画像を生成してモニタ23に出力し、表示する。また、装置本体20内の原点検出信号処理回路24は原点検出器15からの検出信号から原点検出信号を生成して揺動駆動制御部25と送受信回路21に出力する。揺動駆動制御部25は音響素子ユニット11aが原点を中心に揺動するように原点検出信号に基づいてモータ14を制御し、また、送受信回路21は画像処理回路22が原点を中心に超音波断層画像を生成するように受信信号のタイミングを制御して画像処理回路22に出力する。
【特許文献1】特開平3−184532号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子10内に必要とするので、超音波探触子10が大型化するという問題点があり、また、揺動伝達機構13に外的な衝撃により変形やずれが生じた場合に原点を正確に検出することできないという問題点がある。
【0006】
本発明は上記従来例の問題点に鑑み、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波診断装置は上記目的を達成するために、
超音波信号により2次元の断層面を走査する超音波素子をウインドウ内で前記2次元の断層面と直交する方向に機械的に揺動させる超音波探触子と、
前記ウインドウにより反射された信号の前記超音波素子の揺動方向の感度変化に基づいて前記超音波素子の揺動方向の原点を検出する原点検出手段とを備え、
前記原点検出手段により検出された原点に基づいて3次元の超音波画像を生成する構成とした。
この構成により、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出することができる。
【0008】
また、前記原点検出手段は、前記ウインドウの金型成型時に形成されたゲート部による受信信号の感度劣化を検出して前記超音波素子の揺動方向の原点を検出する構成とした。
この構成により、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出することができる。
【0009】
また、前記原点検出手段は、前記ウインドウの原点位置に形成された突起による受信信号の感度劣化を検出して前記超音波素子の揺動方向の原点を検出する構成とした。
この構成により、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る超音波探触子の一実施の形態を示す図、図2は本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【0012】
図1(a)、(b)、(c)はそれぞれ超音波探触子10aを示す正面図、側面図、底面図であり、超音波素子である音響素子11は、複数の圧電素子がコンベックス状に配列されて構成されて2次元の断層面を電気的に走査するとともに、ウインドウ12内において矢印で示すように断層面と直交する方向に機械的に揺動するように揺動伝達機構13を介してモータ14に連結されている。
【0013】
ウインドウ12は超音波を伝達する樹脂材料を金型内にゲートを介して封入して固化することにより形成され、このため、樹脂材料を固化した場合に金型のゲートに対応するウインドウ12の表面部分には、他の領域と音響インピーダンスが異なる部分(以下、ゲート部)12aが形成されることになる。そこで、本発明の一実施の形態では、他の領域と音響インピーダンスが異なるゲート部12aを揺動方向の原点に形成する。
【0014】
図2において、超音波探触子10aは音響素子ユニット11aと、揺動伝達機構13とモータ14などを有し、超音波診断装置本体(以下、装置本体とも言う)20aは送受信回路21と、画像処理回路22と、モニタ23と、揺動駆動制御部25と感度比較回路26などを有する。音響素子ユニット11aは音響素子11を構成する複数の圧電素子と、個々の圧電素子に設けられた駆動電極などにより構成され、装置本体20a内の送受信回路21からの駆動信号により超音波信号を不図示の被検体に送信し、被検体からの反射信号を受信して送受信回路21に印加する。画像処理回路22は送受信回路21により受信された信号を画像処理して超音波断層画像を生成してモニタ23に出力し、表示する。
【0015】
また、装置本体20a内の感度比較回路26は、受信信号を監視して、図3、図4に示すように感度劣化を検出したときの揺動方向の角度位置を揺動方向の原点として検出し、原点検出信号を生成して揺動駆動制御部25と送受信回路21に出力する。揺動駆動制御部25は音響素子ユニット11aが原点を中心に揺動するように原点検出信号に基づいてモータ14を制御し、また、送受信回路21は画像処理回路22が原点を中心に超音波断層画像を生成するように受信信号のタイミングを制御して画像処理回路22に出力する。
【0016】
図3は音響素子11がウインドウ12のゲート部12aが存在する揺動方向の原点(正面方向)に位置しないときの受信信号を示し、このときの受信信号にはゲート部12aによる感度劣化がない。これに対し、図4は音響素子11がウインドウ12のゲート部12aが存在する揺動方向の原点(正面方向)に位置するときの受信信号を示し、このときの受信信号にはゲート部12aの位置のチャネルで感度劣化が発生する。そこで、感度比較回路26は受信信号とスレショルドレベルとを比較して原点検出信号を出力する。なお、厳密には原点位置は揺動方向で受信信号がスレショルドレベルをわる往路側の位置(A)、又は復路側の位置(B)、又は往路側と復路側との中間の位置と任意に決めることができる。
【0017】
また、感度変化を起こす突起をウインドウに設けてもよい。突起により受信信号の感度が変化することで原点を検出することが可能となる。また、ゲート部12aはウインドウ12の原点位置に形成しなくても、受信信号上のゲート部12aと原点の位置関係をあらかじめ測定して記憶し、揺動時の感度変化を検出して記憶データと比較して原点を検出するようにしてもよい。また、ゲート部12aを用いる代わりに、ウインドウ12から反射される信号の揺動方向の感度変化と原点位置をあらかじめ測定して記憶し、揺動時にウインドウ12から反射される信号の感度が原点位置の感度になった位置を原点として検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、ロータリ・エンコーダなどの原点検出手段を超音波探触子内に設けることなく超音波素子の揺動方向の原点を正確に検出することができるという効果を有し、超音波診断装置などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る超音波探触子の一実施の形態を示す図(a)正面図 (b)側面図 (c)底面図
【図2】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態を示すブロック図
【図3】音響素子がゲート部に位置しないときの受信信号を示す波形図
【図4】音響素子がゲート部に位置するときの受信信号を示す波形図
【図5】従来の超音波探触子を示す図(a)正面図 (b)側面図 (c)底面図
【図6】従来の超音波診断装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0020】
10a 超音波探触子
11 音響素子
11a 音響素子ユニット
12 ウインドウ
12a ゲート部
13 揺動伝達機構
14 モータ
20a 超音波診断装置本体
21 送受信回路
22 画像処理回路
23 モニタ
25 揺動駆動制御部
26 感度比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号により2次元の断層面を走査する超音波素子をウインドウ内で前記2次元の断層面と直交する方向に機械的に揺動させる超音波探触子と、
前記ウインドウにより反射された信号の前記超音波素子の揺動方向の感度変化に基づいて前記超音波素子の揺動方向の原点を検出する原点検出手段とを備え、
前記原点検出手段により検出された原点に基づいて3次元の超音波画像を生成する超音波診断装置。
【請求項2】
前記原点検出手段は、前記ウインドウの金型成型時に形成されたゲート部による受信信号の感度劣化を検出して前記超音波素子の揺動方向の原点を検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記原点検出手段は、前記ウインドウの原点位置に形成された突起による受信信号の感度劣化を検出して前記超音波素子の揺動方向の原点を検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−21037(P2007−21037A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210625(P2005−210625)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】