説明

超音波診断装置

【課題】撮像中の部位に応じた最適な動作パラメータを容易且つ確実に設定可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体に対して超音波の送受を行う超音波プローブ11と、プローブ11で取得されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成して表示装置15に表示させる信号処理手段12〜14と、プローブ11の位置を検出するプローブ位置検出手段16と、プローブ位置検出手段16で検出された現在のプローブ11の位置、並びに予め生成された被検体の三次元データ及び該三次元データ中の各部分領域が被検体のいずれの身体部位に相当するかを表した部位情報に基づいて、現在撮像している身体部位を特定する撮像部位特定手段17と、プローブ11及び/又は信号処理手段12〜14の現在の動作パラメータが、撮像部位特定手段17で特定された身体部位の撮像に適しているか否かを判定する判定手段19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、体表に当接させた超音波プローブから生体内に向けて超音波を送波すると共に、生体内の各組織からの反射波を受波し、その受信信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。生成された超音波画像は順次モニタに送出され、動画としてリアルタイムに表示される。
【0003】
病院等の医療機関では、上記のような超音波診断装置の他に、X線CT(Computed Tomography, コンピュータ断層撮影)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging, 磁気共鳴撮影)装置といった種々の医用画像診断装置が用いられており、診断の目的に応じて適当な撮影技法(モダリティ)が選択される。また、各モダリティによって撮影される画像はそれぞれ異なる特徴を有しており、同一患者について異なるモダリティで撮影した画像を比較することによって診断に有用な情報が得られる場合がある。
【0004】
そこで、このような画像比較を容易に行うことのできる装置として、超音波画像の撮像を行いながら、現在撮像している断面に対応したX線CT画像やMRI画像を参照画像としてリアルタイムに表示する機能を備えた超音波診断装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このような超音波診断装置では、まず、超音波プローブに取り付けた位置センサを利用して現在撮像している断面の位置を特定し、続いて、予めX線CT装置等を用いて取得した同一患者の三次元データから、前記現在の断面位置に相当する断面の画像を抽出して超音波画像と共に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2004/098414号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような超音波診断装置によれば、プローブの動きに合わせてリアルタイムで変化する超音波画像とX線CT画像等を見比べながら超音波撮像を行うことができる。しかしながら、プローブを大きく動かして広範囲の観察を行った場合、撮像開始時に設定した動作パラメータ(音響パワーや中心周波数等の超音波送受条件、又はゲインやダイナミックレンジ等の信号処理条件等)が、途中から撮像部位に適したものではなくなる可能性がある。
【0008】
例えば、音響パワー(送信超音波の強度)は、人体への影響を考慮して診断部位毎に規制が設けられており、例えば、心臓を撮像する際には音響パワーは比較的高くてもよいが、眼科での使用時には比較的低い値に設定する必要がある。
【0009】
従来の超音波診断装置には、プローブの種類に応じて音響パワーが一定値に設定されるものや、オペレータが操作卓を操作することにより各診断部位で許容される上限値を超えない範囲で音響パワーを変更できるものがある。前者のようなプローブ毎に一定の音響パワーを定める装置の場合、該プローブによって診断される部位の内、最も低い音響パワーを要求する部位に合わせて音響パワーを設定する必要がある。そのため、音響パワーの値が低めに制限されてしまい、高い音響パワーの設定が認められている診断部位では、深部領域において音響パワーが不十分となり良好な画像が得られない場合がある。一方、後者のような診断部位毎にオペレータが音響パワーを設定可能な装置は、一般的に、オペレータが所定部位の診断に用いる音響パワーとして指定した値が、該部位における規制値を上回っていた場合、その旨をオペレータに通知する機構を備えている。しかし、上述のように、超音波画像とX線CT画像等の同時表示を行う装置等によって広範囲の観察を行う場合には、当初の診断部位に合わせて高い音響パワーを設定したまま、低い音響パワーが要求される診断部位に対して超音波送受を行ってしまうことが考えられる。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、現在撮像している部位に応じた最適な動作パラメータを容易且つ確実に設定可能な超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る超音波診断装置は、
a)被検体に対して超音波の送受を行うための超音波プローブと、
b)前記超音波プローブで取得されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成して所定の表示装置に表示させる信号処理手段と、
c)前記超音波プローブの位置を検出するプローブ位置検出手段と、
d)前記プローブ位置検出手段で検出された現在のプローブの位置、並びに予め生成された被検体の三次元データ及び該三次元データ中の各部分領域が被検体のいずれの身体部位に相当するかを表した部位情報に基づいて、現在撮像している身体部位を特定する撮像部位特定手段と、
e)前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の現在の動作パラメータが、前記撮像部位特定手段で特定された身体部位の撮像に適したものであるか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明において、超音波プローブの動作パラメータとは、超音波プローブの動作制御に関するパラメータを意味し、例えば、送信超音波の音響パワー、中心周波数、フォーカスの深度と点数、パルス繰り返し周波数(PRF)、ビーム間隔、視野深度等のパラメータを含んでいる。また、信号処理部の動作パラメータとは、受信超音波信号(エコー信号)から超音波画像を生成するための処理に関するパラメータ、及び該超音波画像の表示に関するパラメータを意味し、例えば、ゲイン、ダイナミックレンジ、エンハンス処理の設定値、走査深度に応じた増幅利得の調整を行うSTC(センシティビティ・タイム・コントロール)処理の設定値、及び特定の階調に対する階調補正を行うポストプロセス処理の設定値などのパラメータを含んでいる。
【0013】
また、上記本発明に係る超音波診断装置は、更に、
f)前記判定手段による判定結果をオペレータに通知する通知手段、
を備えたものとすることが望ましい。
【0014】
ここで前記通知手段は、所定の表示装置に所定事項を表示させることによって判定結果を通知するものとしてもよく、所定の音声や警告ランプ等によって前記通知を行うものとしてもよい。また、上記のような撮像部位の特定及び動作パラメータの判定は、典型的には超音波撮像を行っている間、所定の時間間隔で繰り返し実行されるが、オペレータの指示に応じて適宜実行するようにしてもよい。前者の場合は、前記動作パラメータが現在の撮像部位に適していないと判定された場合にのみ、判定結果の通知を行うものとすることが望ましい。また、後者の場合は、判定結果の如何に関わらず通知を行うようにすることが望ましい。
【0015】
上記構成から成る本発明の超音波診断装置では、超音波画像の撮像中において、プローブ位置検出手段によって超音波プローブの現在位置が検出され、その位置情報と予め取得しておいた被検体の三次元データ及び部位情報に基づいて、撮像部位特定手段により、前記プローブが現在被検体のどの身体部位に位置しているかが特定される。そして、超音波プローブ及び/又は信号処理手段の現在の動作パラメータが前記撮像部位特定手段で特定された身体部位に適したものであるか否かが判定手段によって判定され、その結果が通知手段によってオペレータに通知される。このように、本発明に係る超音波診断装置によれば、所定の動作パラメータと撮像部位(超音波プローブで撮像している身体部位)とが適合しているか否かを装置側が自動的に判断するため、前記動作パラメータや超音波プローブの位置についてオペレータが注意しておく必要がなく、超音波撮像に係るオペレータの負担を軽減することができる。
【0016】
また、上記本発明に係る超音波診断装置は、前記通知手段に加えて又は代えて、
g)前記判定手段により、前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の現在の動作パラメータが撮像中の身体部位に適したものでないと判定された場合に、前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の動作パラメータを、前記撮像中の身体部位に適したものに変更するパラメータ変更手段、
を備えたものとしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、超音波プローブ及び/又は信号処理手段の現在の動作パラメータが撮像中の部位に適していないと判定された場合に、該パラメータが現在の撮像部位に適した値に自動的に変更される。そのため、オペレータが操作卓等を用いて動作パラメータの変更を指示する必要がなく、オペレータの作業負担を一層軽減することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するためになされた本発明に係る超音波診断装置は、
a)被検体に対して超音波の送受を行うための超音波プローブと、
b)前記超音波プローブで取得されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成して所定の表示装置に表示させる信号処理手段と、
c)前記超音波プローブの位置を検出するプローブ位置検出手段と、
d)前記プローブ位置検出手段で検出された現在のプローブの位置、並びに予め生成された被検体の三次元データ及び該三次元データ中の各部分領域が被検体のいずれの身体部位に相当するかを表した部位情報に基づいて、現在撮像している身体部位を特定する撮像部位特定手段と、
e)前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の動作パラメータを、前記撮像部位特定手段で特定された身体部位の撮像に適したものに変更するパラメータ変更手段と、
を有するものとしてもよい。
【0019】
このような装置としては、例えば、各身体部位の撮像に適した動作パラメータの値をプリセット値として予め身体部位毎に記憶しておき、撮像部位特定手段によって撮像中の身体部位が特定された際に、該身体部位に応じた前記プリセット値を呼び出して以降の撮像に適用する構成などとすることができる。これにより、現在撮像している身体部位に適した動作パラメータを容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上で説明したように、上記構成から成る本発明の超音波診断装置によれば、現在撮像している部位に応じた最適な動作パラメータを容易且つ確実に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例に係る超音波診断装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】同実施例に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施例に係る超音波診断装置の要部構成を示すブロック図。
【図4】同実施例に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本実施例に係る超音波診断装置の要部構成を示すブロック図である。プローブ11は、被検者の体表に当接され、該被検者の体内に超音波を送波すると共に、体内組織で反射された超音波を受波して電気信号(エコー信号)に変換する。ビームフォーマ12は、プローブ11による超音波の送受を制御すると共に、該プローブ11内の各超音波振動子から出力されるエコー信号をA/D変換し、整相加算して音線データを生成する。画像生成部13は前記音線データに所定の処理を施して超音波画像データを生成すると共に、モニタ15で表示可能な形式に変換する。画像生成部13から出力された超音波画像データは、表示処理部14に設けられた表示用のメモリ(図示略)に格納され、順次モニタ15に出力される。以上の工程を繰り返し実行することにより、モニタ15上に表示された画像が所定の時間間隔で更新され、動画として視認される。
【0024】
プローブ11には磁気式の位置センサ16が取り付けられており、図示しない被検者の近傍にはソース30と呼ばれる磁気発生源が設置される。ソース30は、直交する3つの磁気発生コイルを備えており、これらのコイルが発生する磁気信号を位置センサ16が検知することによってプローブ11の三次元的な位置が検出される。
【0025】
3Dデータ記憶部18には、予め他のモダリティ(例えば、X線CTやMRI)によって取得された被検者の三次元データが記憶されている。また、3Dデータ記憶部18には、前記三次元データと共に、該三次元データ中の各部分領域が被検者のどの身体部位(頸部、胸部、腹部等)に相当するかを表す情報(以下、部位情報と呼ぶ)が記憶されている。
【0026】
前記部位情報は、例えば、モニタ15上に前記三次元データから生成した二次元画像(断層像)や三次元画像(投影像)を表示させ、該画像上でオペレータが適当な範囲を指定し、その範囲内の領域を所定の身体部位(例えば、腹部)として登録するなどの方法により生成される。あるいは、オペレータが被検者の体格に関連する情報(身長、体重、性別等)を入力すると共に、前記のような二次元画像や三次元画像上で所定の点(へそ等)を指定することにより、自動的に前記部位情報が生成されるようにしてもよい。この場合、例えば、前記所定の点から上下所定の距離に含まれる領域が腹部、それより上の所定の距離までの領域が胸部といったように、指定された点からの距離等に応じて前記三次元データが部分領域に区分される。
【0027】
なお、このような部位情報は、超音波診断装置上で生成するようにしてもよく、他の装置で生成してから3Dデータ記憶部18に記憶させるようにしてもよい。また、前記部位情報は、前記三次元データと共に単一のファイルを構成するようにしてもよく、あるいは別ファイルを構成するようにしてもよい。
【0028】
撮像部位特定部17は、前記の位置センサ16から出力されるプローブ11の位置情報と、前記3Dデータ記憶部18に記憶されている三次元データ及び部位情報から、現在プローブ11が被検者のいずれの身体部位を撮像しているのかを特定する。
【0029】
判定テーブル記憶部20は、被検者の各身体部位(頸部、胸部、腹部等)と該身体部位の撮像に適した音響パワーの数値範囲との対応関係を示した判定テーブルが記憶されている。なお、撮像に適した音響パワーの数値範囲は、撮像対象とする身体部位だけでなく、パルス繰り返し周波数や撮影モード(Bモード、Mモード、ドプラモード等)、フォーカスの位置及び数といった超音波送受に関する他のパラメータによっても変化する。そのため、前記判定テーブルは、被検者の身体部位と1つ以上の動作パラメータ(音響パワー以外のもの)とから考えられる組合せの各々について撮像に適した音響パワーの数値範囲を記載した多次元のテーブルとすることが望ましい。
【0030】
判定部19は、撮像部位特定部17で特定された身体部位の情報と判定テーブル記憶部20に記憶された判定テーブルに基づいて現在の音響パワーの設定値が撮像中の部位に適したものであるか否かを判定する。なお、判定テーブルを上記のような多次元のものとした場合には、音響パワーが撮像部位に適したものであるか否かが、前記1つ以上の動作パラメータ(音響パワー以外のもの)を加味して判定される。
【0031】
上記各部の動作はCPUやメモリ等から成る制御部21によって制御されており、該制御部21にはトラックボールやキーボードを備えた操作部22を介してオペレータの指示が入力される。なお、制御部21は上記各部を制御するためのパラメータ(動作パラメータ)を記憶するための記憶部(図示略)を有しており、該記憶部に記憶された動作パラメータに基づいて、ビームフォーマ12、画像生成部13、及び表示処理部14等の動作が制御される。上記の撮像部位特定部17及び判定部19等の機能は、CPUで所定のプログラムを実行させることにより、いわゆるソフトウェア的に実現することが望ましいが、回路などによってハードウェア的に構成してもよい。なお、本実施例では、ビームフォーマ12、画像生成部13、及び表示処理部14が本発明における信号処理手段に相当し、位置センサ16が本発明におけるプローブ位置検出手段に、制御部21が本発明におけるパラメータ変更手段に相当する。また、モニタ15、表示処理部14、及び制御部21が協働して本発明における通知手段として機能する。
【0032】
以下、本実施例に係る超音波診断装置の動作について図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0033】
まず、超音波診断装置による撮像に先立って、ソース30を基準とする実空間の座標系(以下、「ソース座標系」と呼ぶ)と3Dデータ記憶部18内の三次元データの座標系(以下、「3Dデータ座標系」と呼ぶ)の対応付けを行う必要がある。
【0034】
はじめに、3Dデータ記憶部18に記憶されている三次元データ上で前記対応付けの基準となる点を設定する(ステップS11)。具体的には、前記被検者の三次元データを基に生成した三次元画像(投影画像)又は二次元画像(断層画像)をモニタ15に表示させ、オペレータが操作部22を用いて該画像上の所定の位置(例えば、剣状突起に相当する位置)を指定し、これを前記3Dデータ座標系の基準点0aとして登録する。
【0035】
次に、被検者を診断用のベッドに寝かせ、該被検者の身体上で対応付けの基準となる点を指定する(ステップS12)。具体的には、オペレータが、前記ステップS11で指定した基準点0aに対応する被検者身体の所定の位置(例えば剣状突起上)にプローブ11を当接させ、操作部22で所定の操作を行うことにより、当該位置を前記ソース座標系の基準点0bとして登録する。
【0036】
以上により、基準点0aと基準点0bが3Dデータ座標系とソース座標系における同一の点として対応付けられる。なお、予めソース30を適当な向きで配置しておくことにより、ソース座標系と3Dデータ座標系の各座標軸の方向を一致させることができ、更に、ソース座標系と3Dデータ座標系の間の縮尺は三次元データ取得時のパラメータ(例えば、X線CT撮影時のピクセルサイズやスライス厚)から求めることができる。従って、以上によりソース座標系と3Dデータ座標系との対応関係が求められ、ソース座標系上の座標を3Dデータ座標系上の座標に変換するための変換用データを得ることができる。なお、上記の座標系の対応付け方法はあくまで一例であり、他の方法によって両座標系の対応付けを行うようにしてもよい。
【0037】
続いて、オペレータが診断対象とする部位にプローブを当接させ、通常の超音波撮像を開始する(ステップS13)。その後、所定の時間が経過した時点で、以下のようなプローブ位置の検出、撮像部位の特定、及び音響パワーの判定等の処理が開始される。
【0038】
まず、位置センサ16により、現在のプローブ11の位置が検出され(ステップS14)、該位置情報が撮像部位特定部17へ出力される。
【0039】
撮像部位特定部17は、位置センサ16から入力されたプローブ11の位置情報、及び3Dデータ記憶部18に記憶された被検者の三次元データ及び部位情報から、現在、プローブ11が被検者身体のどの部位に位置しているかを特定する(ステップS15)。具体的には、まず、ソース座標系上の座標として与えられるプローブ11の位置情報を、上述の変換用データを用いて3Dデータ座標系上の座標に変換する。そして、該3Dデータ座標系上の座標で特定される位置が、被検者身体のどの部位に相当するかを前記部位情報を用いて特定する。これにより特定された身体部位が現在の撮像部位である。
【0040】
続いて、判定部19が、上記撮像部位の情報を撮像部位特定部17から受け取ると共に、制御部21から現在の音響パワーの設定値を取得する。そして、前記撮像部位の情報を用いて判定テーブル記憶部20の判定テーブルを検索することにより該撮像部位に適した音響パワーの数値範囲を求め、前記現在の音響パワーの設定値が該数値範囲内にあるか否かを判定する(ステップS16)。
【0041】
なお、判定テーブルとして上述のような多次元のものを用いる場合には、判定部19は、制御部21から現在の音響パワーの設定値に加えてその他の動作パラメータ(例えば撮影モードやPRF)の現在の設定値を取得し、前記多次元の判定テーブルを参照することにより、前記撮像部位と動作パラメータとの組合せにおける適当な音響パワーの数値範囲を求める。そして、前記現在の音響パワーの設定値が該数値範囲内にあるか否かを判定する。
【0042】
上記のステップS16において、音響パワーが現在の撮像部位に適したものではないと判定された場合(ステップS16でNo)には、制御部21が、前記判定テーブルを用いて特定された数値範囲内の適当な値(例えば中央値や上限値)となるように音響パワーの設定値を変更する(ステップS17)。なお、該変更を実行する前に、モニタ15上に所定のメッセージを表示させ、オペレータに音響パワーの変更を行う旨を通知することが望ましい。また、モニタ15に表示したメッセージに従って、音響パワーの変更を行うか否かをオペレータに決定させたり、上記の数値範囲内で適当な値をオペレータに選択させてその値を以降の撮像に使用する音響パワーとして適用したりするものとしてもよい。
【0043】
一方、ステップS16において、現在の音響パワーの設定値が現在の撮像部位に適していると判定された場合(ステップS16でYes)には、ステップS18に進み、撮像が完了するまで(即ちステップS18でYesになるまで)、所定の時間間隔(例えば1秒おき)でステップS14〜S18を繰り返し実行する。
【0044】
以上のようにすることで、超音波撮像の実行中にオペレータがプローブを移動させて撮像部位が変化した場合でも、新たな撮像部位と音響パワーとの適合を判定し、適合しないと判定した場合には、音響パワーを前記撮像部位に適した値に自動的に変更することができる。このため、超音波撮像の間、オペレータが音響パワーや撮像部位について注意しておく必要がなくなり、オペレータの負担を軽減することができる。
【0045】
なお、上記の例では、ステップS16で現在の音響パワーが撮像中の部位に適さないと判定された場合に、装置側で音響パワーを変更するものとしたが、これに限らず、判定結果をオペレータに通知してオペレータに音響パワーの変更を行わせる構成としてもよい。この場合、上記のステップS16において、撮像部位に適した音響パワーでないと判定された際(ステップS16でNo)に、制御部21が表示処理部14を制御して前記の判定結果をモニタ15の画面上に表示させる。なお、このときには、前記判定結果の通知に加えて、現在の撮像部位に適した音響パワーの数値範囲をオペレータに提示することが望ましい。また、前記通知に加えて又は代えて、超音波の送受を一時停止させ、オペレータが操作部22を操作して音響パワーを適当な値に変更するか、操作部22を用いて撮像の再開を指示した時点で超音波送受を再開させるようにしてもよい。
【0046】
また、上述の判定テーブルには各身体部位に適した音響パワーの数値範囲を記載する代わりに、各身体部位において許容される音響パワーの上限値を記載するようにしてもよい。この場合、ステップS16において、現在の音響パワーが該判定テーブルから求められる上限値以下であるか否かを判定し、該上限値を超えていた場合には、ステップS17において、音響パワーの設定値を該上限値以下となるように変更する。
【0047】
また、上記の例では、撮像部位と音響パワーとの適合を判定する構成を例に挙げて説明したが、その他の動作パラメータについても同様に本発明を適用可能である。この場合、判定テーブル記憶部20には、各身体部位と該身体部位の撮像に適した所定の動作パラメータ(例えば、送信超音波のPRFや中心周波数、受信超音波のゲインやダイナミックレンジ等)の数値範囲との対応関係を記載した判定テーブルを記憶させておき、判定部19において前記所定の動作パラメータの現在の設定値が撮像中の部位に適したものか否かを判定する。
【実施例2】
【0048】
続いて、本発明に係る超音波診断装置の他の実施例について説明する。図3に本実施例に係る超音波診断装置の概略構成を示す。本実施例に係る装置の構成は、判定部19を有しない点、及び判定テーブル記憶部20に代えてプリセット記憶部23を有している点以外は、図1の装置と同様である。以下、図1の装置と同一又は対応する構成には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
プリセット記憶部23は、各身体部位の撮像に適した各種動作パラメータの値をプリセットデータとして部位毎に記憶している。なお、こうした身体部位別のプリセットデータは、複数種類の動作パラメータを含むものであってもよく、1種類の動作パラメータのみから成るものであってもよい。
【0050】
図4は、本実施例に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。本実施例の超音波診断装置において、座標系の対応付けから撮像部位の特定までの動作(ステップS21〜S25)は、上記の実施例1におけるステップS11〜S15と同様である。しかし、本実施例の装置では、ステップS25において現在の撮像部位が特定されると、制御部21が該身体部位に対応したプリセットデータをプリセット記憶部23から呼び出し、該プリセットデータが規定する各種動作パラメータの値を以降の撮像に適用する(ステップS26)。これにより、ビームフォーマ12、画像生成部13、又は表示処理部14の動作が撮像中の身体部位に応じたパラメータで制御されることとなる。
【0051】
以上のようなプローブ位置の検出及び撮像部位の特定は、超音波画像の撮像が完了するまで(即ちステップS27でYesとなるまで)所定の時間間隔で繰り返し実行される。なお、ステップS26では、ステップS25で特定された身体部位が前回のステップS25で特定された身体部位と同一か否かを制御部21が判断し、同一でなかった場合(即ち撮像部位が変化した場合)にのみ、上記のようなプリセットデータの呼び出しを行うようにすることが望ましい。
【0052】
また、ステップS26においてプリセットデータの呼び出しによるパラメータ変更を行う前に、モニタ15上に所定のメッセージを表示させて、オペレータにパラメータ変更を行う旨を通知することが望ましい。またこのとき、モニタ15に表示したメッセージに従って、動作パラメータを変更するか否かをオペレータに選択させるようにしてもよい。
【0053】
また更に、以上のようなプローブ位置の検出、撮像部位の特定、及びプリセットデータの呼び出しは、所定の時間間隔で繰り返し実行するほか、オペレータの指示に応じて適宜実行するようにしてもよい。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容されるものである。例えば、上記実施例では、超音波診断装置の内部に3Dデータ記憶部を設け、該3Dデータ記憶部から被検体の三次元データ及び部位情報を取得して撮像部位特定部による撮像部位の特定を行うものとしたが、これらの情報を所定の通信手段を介して外部装置から取得する構成としてもよい。
【0055】
また、本発明で用いられる被検体の三次元データは、必ずしも上記のようなX線CT装置やMRI装置のような医用画像診断装置によって取得されたものでなくてもよく、例えば、レーザ光等を利用した三次元スキャナによって被検体の表面形状を計測し、その結果に基づいて生成したものであってもよい。また、体型の異なる複数の三次元人体モデルのデータを用意しておき、被検者の体型に最も近いものを選択して使用したり、被検者の身長、体重、性別等の情報に基づいて標準的な三次元人体モデルを変形させて使用したりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
11…プローブ
12…ビームフォーマ
13…画像生成部
14…表示処理部
15…モニタ
16…位置センサ
17…撮像部位特定部
18…3Dデータ記憶部
19…判定部
20…判定テーブル記憶部
21…制御部
22…操作部
23…プリセット記憶部
30…ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)被検体に対して超音波の送受を行うための超音波プローブと、
b)前記超音波プローブで取得されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成して所定の表示装置に表示させる信号処理手段と、
c)前記超音波プローブの位置を検出するプローブ位置検出手段と、
d)前記プローブ位置検出手段で検出された現在のプローブの位置、並びに予め生成された被検体の三次元データ及び該三次元データ中の各部分領域が被検体のいずれの身体部位に相当するかを表した部位情報に基づいて、現在撮像している身体部位を特定する撮像部位特定手段と、
e)前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の現在の動作パラメータが、前記撮像部位特定手段で特定された身体部位の撮像に適したものであるか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
更に、
f)前記判定手段による判定結果をオペレータに通知する通知手段、
を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
更に、
g)前記判定手段により、前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の現在の動作パラメータが撮像中の身体部位に適したものでないと判定された場合に、前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の動作パラメータを、前記撮像中の身体部位に適したものに変更するパラメータ変更手段、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
a)被検体に対して超音波の送受を行うための超音波プローブと、
b)前記超音波プローブで取得されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成して所定の表示装置に表示させる信号処理手段と、
c)前記超音波プローブの位置を検出するプローブ位置検出手段と、
d)前記プローブ位置検出手段で検出された現在のプローブの位置、並びに予め生成された被検体の三次元データ及び該三次元データ中の各部分領域が被検体のいずれの身体部位に相当するかを表した部位情報に基づいて、現在撮像している身体部位を特定する撮像部位特定手段と、
e)前記超音波プローブ及び/又は信号処理手段の動作パラメータを、前記撮像部位特定手段で特定された身体部位の撮像に適したものに変更するパラメータ変更手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate