説明

超音波診断装置

【課題】深度に応じた方位分解能の高い超音波画像データを、簡素な回路構成にて、簡便で、電源効率よく生成することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】送信部12は、制御部によって設定された超音波画像データの取得深度に応じて、複数の振動子21aのうちの隣接するn個の振動子21aを1組として、当該組内における送信超音波の位相のずれ量が、すくなくとも送信超音波に含まれる基本波成分を低減させて基本波成分のn倍の周波数成分を強調するための第1の位相量と、基本波成分を強調するための第2の位相量とに切り替わるように、複数の振動子21aの送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波パルス反射法により、体表から被検体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線等の被爆がなく安全性が高い、ドップラー効果を応用して血流イメージングが可能等の多くの特長を有する。そのため、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿器科系(腎臓、膀胱)、および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
さらに、近年、超音波画像を用いた診断の精度向上のために、従来のような超音波の基本波ではなく、高調波信号を用いたハーモニックイメージング(HI)診断が行われている。高調波は、送信する基本波が生体内部において歪むことによって含まれるようになる周波数成分であって、基本波の整数倍の周波数のものが支配的である。HI診断は、従来のBモード診断では得られない鮮明な診断像が得られることから、標準的な診断モダリティとなりつつある。
【0004】
HI診断は、基本波と比較して、サイドローブレベルが小さいことでS/Nが良くコントラスト分解能が良くなること、周波数が高くなることでビーム幅が細くなり方位分解能がよくなること等の利点を有する。さらに、近距離では音圧が小さく、さらに音圧の変動が少ないので多重反射が起こらないこと、焦点以遠の減衰は基本波並みであり、高調波の超音波は、同一周波数の基本波の超音波に比べ深達度を大きく取れること、等の多くの利点を有している。
【0005】
現在実用化されているHI診断は、2次高調波や3次高調波などの高次高調波を用いたものである。高次高調波は基本波に比べて信号強度が弱いために(例えば、2次高調波は、基本波の−6dB以下であるとされている)、高次高調波を効率よく取り出す方法が考案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−017406号公報
【特許文献2】特開2010−063493号公報
【特許文献3】特開2009−279033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した高次高調波は、音圧のべき乗に比例して増加するとともに、超音波が音響伝達媒体としての生体内を伝播するにつれて徐々に含まれるようになるという性質を有している。そのため、上記特許文献1〜3に記載された発明では、ある程度の深度から受信した反射超音波からでないと、上述した高次高調波成分を抽出するのは困難である。すなわち、浅い部分においては、送信された超音波に含まれる高次高調波成分は少ないため、高次高調波を抽出して超音波画像データを生成するのは困難である。
【0008】
一方、浅い部分において、方位分解能のよい超音波画像データを得る場合には、送信する超音波の周波数を高くすればよいが、周波数が高いほど減衰は大きくなるため、超音波が深部まで届きにくくなる。
【0009】
そこで、深度に応じて送信する超音波の周波数を変更することが考えられる。すなわち、例えば、浅い部分における超音波画像データを得る場合には、送信する超音波の周波数を高くして基本波成分による超音波画像データを生成する。そして、深部における超音波画像データを得る場合には、送信する超音波の周波数を低くし、上述したようにして高次高調波を抽出して超音波画像データを生成する。このようにすれば、何れの深度においても高周波数の受信信号を得ることができるので、方位分解能のよい超音波画像データを生成することができる。
【0010】
しかしながら、上述した方法では、深度に応じて送信する周波数を変更することから、周波数を変更するための特別な回路構成が必要となり、回路構成が複雑となる。また、送信する超音波が高周波であるほど消費電力が大きくなるので、電源効率がよくないという問題がある。また、超音波の送受信を行うための超音波探触子を、深度に応じて変更することも考えられるが、複数の超音波探触子を用意する必要があり、コストがかかるばかりか、超音波探触子を交換する手間もかかる。
【0011】
本発明の課題は、深度に応じた方位分解能の高い超音波画像データを、簡素な回路構成にて、簡便で、電源効率よく生成することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波診断装置において、
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する複数の振動子を有する超音波探触子と、
前記複数の振動子にそれぞれ前記送信超音波を出力させる送信部と、
前記複数の振動子から出力された受信信号に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部と、
前記超音波画像データの取得深度を設定する制御部と、
を備え、
前記送信部は、前記制御部によって設定された前記超音波画像データの取得深度に応じて、前記複数の振動子のうちの隣接するn個の振動子を1組として、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量が、少なくとも前記送信超音波に含まれる基本波成分を低減させて該基本波成分のn倍の周波数成分を強調するための第1の位相量と、前記基本波成分を強調するための第2の位相量とに切り替わるように、前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、前記複数の振動子のうちの隣接する2個の振動子を1組とし、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量を前記第1の位相量とするときに前記位相のずれ量がπとなるように前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定して、前記基本波成分を低減させて該基本波成分の2倍の周波数成分を強調するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、前記複数の振動子のうちの隣接する3個の振動子を1組とし、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量を前記第1の位相量とするときに、当該組内のうちの一の振動子から出力される送信超音波の位相に対する当該組内における他の振動子から出力される送信超音波の位相のずれ量がそれぞれ2π/3、4π/3となるように前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定して、前記基本波成分を低減させて該基本波成分の3倍の周波数成分を強調するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波診断装置において、
前記送信部は、前記複数の振動子のそれぞれに、波形が矩形波である送信超音波を出力させることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波診断装置において、
前記画像処理部は、前記送信部によって、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量が前記第2の位相量となるように前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングが設定されたときは、前記受信信号から、前記反射超音波の高調波成分を抽出し、該抽出した高調波成分に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、深度に応じた方位分解能の高い超音波画像データを、簡素な回路構成にて、簡便で、電源効率よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】受信部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】送信信号設定処理について説明するフローチャートである。
【図6】ビームフォーカス用タイミングテーブルについて説明する図である。
【図7】3倍波抽出用遅延時間設定テーブルについて説明する図である。
【図8】加算処理後の遅延時間について説明する図である。
【図9】送信チャンネル毎の遅延時間について比較説明する図である。
【図10】送信超音波に含まれる周波数成分の一部と、これらの周波数成分の合成結果を示すグラフである。
【図11】基準送波と、−2π/3遅延送波と、2π/3遅延送波との関係を示すグラフである。
【図12】基準送波、−2π/3遅延送波及び2π/3遅延送波が合成された結果を示すグラフである。
【図13】基準送波と、−2π/3遅延送波と、2π/3遅延送波との関係を示すグラフである。
【図14】基準送波、−2π/3遅延送波及び2π/3遅延送波が合成された結果を示すグラフである。
【図15】受信信号抽出処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る超音波診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号12aを送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号21bに基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0021】
超音波探触子2は、圧電素子からなる複数の振動子21aが方位方向(走査方向)に一次元アレイ状に配列された振動子アレイ21を備えている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子21aからなる振動子アレイ21を備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子アレイ21は、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子21aの個数は、任意に設定することができる。本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、セクタ走査方式及びコンベックス走査方式の何れの方式のものを採用することもできる。また、本実施の形態では、広帯域特性を有する振動子を適用するのが効果が高く、より良質な超音波画像とすることができる。すなわち、本実施の形態では、周波数領域が4〜30MHzの範囲内にあって、比帯域が67〜200%である振動子を適用するのが好ましく、さらには、100〜150%の比帯域であるものがより好ましい。本実施の形態では、例えば、4MHzの周波数特性を有し、比帯域が100%である振動子を用いている。
【0022】
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、表示部15と、制御部16と、記憶部17とを備えて構成されている。
【0023】
操作部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部16に出力する。
【0024】
送信部12は、制御部16の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号12aを供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。
【0025】
送信部12は、図3に示すように、送信ビームフォーマ121と、複数のアンプ122とを備えている。
【0026】
送信ビームフォーマ121は、遅延時間設定テーブル記憶部121aと、遅延時間加算処理部121bと、遅延時間設定部121cと、パルス発生部121dと、遅延パルス発生部121eとを備え、送信超音波によって構成される送信ビームの収束を行う。
【0027】
遅延時間設定テーブル記憶部121aは、後述する複数の送信チャンネルのそれぞれについての遅延時間が設定されたテーブルが記憶されている。遅延時間設定テーブル記憶部121aには、通常の送信ビームフォーカスを行う場合に設定されるフォーカス点(深度)毎のビームフォーカス用タイミングテーブルと、隣接する振動子21aから出力される送信超音波にそれぞれ含まれる基本波成分を低減し、基本波成分の3倍の周波数である3倍波成分を強調するための3倍波抽出用遅延時間設定テーブルと、基本波成分を低減し、基本波成分の2倍の周波数である2倍波成分を強調するための2倍波抽出用遅延時間設定テーブルとが記憶されている。ビームフォーカス用タイミングテーブル、3倍波抽出用遅延時間設定テーブル及び2倍波抽出用遅延時間設定テーブルの詳細については後述する。遅延時間設定テーブル記憶部121aは、制御部16からの指示に応じて読み出されたテーブルのデータを遅延時間加算処理部121b又は遅延時間設定部121cに出力する。
【0028】
遅延時間加算処理部121bは、遅延時間設定テーブル記憶部121aからビームフォーカス用タイミングテーブル及び3倍波抽出用遅延時間設定テーブル又は2倍波抽出用遅延時間設定の各テーブルのデータが入力されたときに、これらのテーブルのデータを送信チャンネル毎に加算して送信チャンネル毎の加算後の遅延時間を算出する。遅延時間加算処理部121bは、加算後の送信チャンネル毎の遅延時間を示すデータを遅延時間設定部121cに出力する。具体的な遅延時間の算出要領については後述する。
【0029】
遅延時間設定部121cは、遅延時間設定テーブル記憶部121a又は遅延時間加算処理部121bから出力されたデータに基づいて、送信チャンネル毎の遅延時間を設定する。具体的には、遅延時間設定部121cは、送信ビームを構成するために駆動される複数の振動子21aを設定し、振動子21a毎に送信チャンネルを割り当てる。次に、遅延時間設定部121cは、上述したようにして送信チャンネル毎の遅延時間を設定する。そして、遅延時間設定部121cは、送信チャンネル毎に設定された遅延時間が経過したときに、パルス発生部121dにて生成された駆動信号12aが出力されるように遅延パルス発生部121eに制御信号を出力する。なお、本実施の形態では、192個の振動子21aのうちの、64個の振動子21aを駆動して送信ビームを形成するように構成されているが、送信ビームを形成するために駆動する振動子の数は任意である。
【0030】
パルス発生部121dは、スイッチング回路を備えており、所定の周期で駆動信号12aを発生させる。パルス発生部121dによって発生される駆動信号12aは、所定の振幅を有する矩形パルス信号である。パルス発生部121dは、発生した駆動信号12aを遅延パルス発生部121eに出力する。なお、本実施の形態では、駆動信号12aの周波数を4MHzに設定しているが、駆動信号の周波数は適宜設定することができる。
【0031】
遅延パルス発生部121eは、振動子21a毎に対応した個別経路毎に駆動信号12aの出力が可能に構成されている。遅延パルス発生部121eは、遅延時間設定部121cから出力された制御信号に応じて、送信チャンネル毎に設定された遅延時間で各振動子21aが駆動されるように駆動信号12aの出力を制御する。出力された駆動信号12aは、アンプ122に入力される。なお、送信チャンネルが割り当てられていない振動子21aには駆動信号12aは出力されない。
【0032】
アンプ122は、送信ビームフォーマ121から出力された駆動信号12aを増幅して超音波探触子2に出力する。
【0033】
このように構成された送信部12は、制御部16の制御に従って、駆動信号12aを供給する複数の振動子21aを、1回以上の超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子21aに対して駆動信号12aを供給することにより走査を行う。
【0034】
受信部13は、制御部16の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して、反射波から得られた電気信号の受信信号21bを受信し、音線データ13aを画像生成部14に供給する。
【0035】
受信部13は、図4に示すように、高調波抽出回路131と、ADC(Analog-Digital Converter)132と、整相加算回路133とを備えて構成されている。高調波抽出回路131及びADC132は、それぞれ、振動子21a毎に対応した個別経路毎に設けられている。受信部13は、受信した受信信号21bを、後述するフォーカス点の設定に応じて、高調波抽出回路131を経由してADC132に入力するか、高調波抽出回路131を経由せずにADC132に入力するかを切り替える。
【0036】
高調波抽出回路131は、アナログ遅延回路131a及び加算回路131bを備えている。高調波抽出回路131に入力された受信信号21bは、基本信号として加算回路131bに入力されるとともに、遅延信号を生成するためにアナログ遅延回路131aにも入力される。
アナログ遅延回路131aは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やLC複合回路等のアナログ素子を備えて構成され、入力した受信信号21bの位相を所定時間遅延させて加算回路131bに出力する。例えば、アナログ遅延回路131aは、入力した受信信号21bの位相を2π/3だけ遅らせた2π/3遅延信号と、4π/3だけ遅らせた4π/3遅延信号とを加算回路131bに出力する。
加算回路131bは、アナログ遅延回路131aから出力された遅延信号と、基本信号とを入力し、これらを加算処理する。その結果、基本波成分が除去され、基本波成分の整数倍の周波数である高調波成分が抽出される。実際には、基本波成分は残存することがあるが、公知のフィルタリング処理によって無視できるレベルにまで除去することができる。加算回路131bは、加算処理によって生成された加算信号FをADC132に出力する。
以上のような構成により、例えば、加算回路131bは、基本信号とともに、上述した2π/3遅延信号及び4π/3遅延信号を入力した場合には、基本波成分が除去され、基本波成分の3倍の周波数である3次高調波が抽出される。なお、受信信号21bには、基本波成分の2倍の周波数成分である2次高調波が含まれるが、この場合には、基本波成分とともに除去される。
【0037】
ここで、上述した高調波抽出回路131の構成で、3次高調波だけが抽出される理由について説明する。
【0038】
まず、反射波の4次以上の高調波は、振幅が基本波の−18dB以下と非常に小さくなることが理論的および実験的に確認されているので、反射波として3次高調波までを考えることとする。この場合、上述した受信信号21bである基本信号f(0)は、
f(0)=Asinωt+Bsin2ωt+Csin3ωt
で表される。ここに、
ω:基本波の角周波数
A:基本波成分の振幅
B:2次高調波成分の振幅
C:3次高調波成分の振幅
である。
【0039】
次に、2π/3遅延信号f(2π/3)および4π/3遅延信号f(4π/3)は、それぞれ、
f(2π/3)=Asin(ωt+2π/3)+Bsin2(ωt+2π/3)+Csin3(ωt+2π/3)
f(4π/3)=Asin(ωt+4π/3)+Bsin2(ωt+4π/3)+Csin3(ωt+4π/3)
と表される。
【0040】
加算信号Fは、これらが加算されて、
F=f(0)+f(2π/3)+f(4π/3)
=Asinωt+Bsin2ωt+Csin3ωt+Asin(ωt+2π/3)+Bsin2(ωt+2π/3)+Csin3(ωt+2π/3)+Asin(ωt+4π/3)+Bsin2(ωt+4π/3)+Csin3(ωt+4π/3)
=A{sinωt+sin(ωt+2π/3)+sin(ωt+4π/3)}+B{sin2ωt+sin2(ωt+2π/3)+sin2(ωt+4π/3)}+C{sin3ωt+sin3(ωt+2π/3)+sin3(ωt+4π/3)}
と表される。
【0041】
加算信号Fを、基本波成分、2次高調波成分および3次高調波成分に分けて考えると、
基本波成分は、
sinωt+sin(ωt+2π/3)+sin(ωt+4π/3)
=sinωt+(sinωt・cos2π/3+cosωt・sin2π/3)+(sinωt・cos4π/3+cosωt・sin4π/3)
=sinωt(1+cos2π/3+cos4π/3)+cosωt(sin2π/3+sin4π/3)
=sinωt(1−0.5−0.5)+cosωt(0.87−0.87)
=0
となる。
【0042】
同様に、2次高調波成分は、
sin2ωt+sin2(ωt+2π/3)+sin2(ωt+4π/3)
=sin2ωt+(sin2ωt・cos4π/3+cos2ωt・sin4π/3)+(sin2ωt・cos8π/3+cos2ωt・sin8π/3)
=sin2ωt(1+cos4π/3+cos8π/3)+cos2ωt(sin4π/3+sin8π/3)
=sinωt(1−0.5−0.5)+cosωt(−0.87+0.87)
=0
となる。
【0043】
また、3次高調波成分は、
sin3ωt+sin3(ωt+2π/3)+sin3(ωt+4π/3)
=sin3ωt+sin3ωt・sin2π+sin3ωt・sin4π
=3・sin3ωt
となる。
【0044】
よって、加算信号Fは、
F=3C・sin3ωt
となり、基本波成分と2次高調波成分とが除去され、3次高調波成分が3倍に増幅されて出力されることが分かる。
【0045】
従って、原理的には、加算回路131bにより、基本波成分と2次高調波成分とが除去され、3次高調波成分が3倍に増幅された加算信号Fが出力されることになる。しかし、実際には、送信超音波の長さが有限であることと、2π/3遅延信号f(2π/3)および4π/3遅延信号f(4π/3)が、受信信号21bを遅延して生成されることから、加算信号Fの先頭及び最後尾は、計算通りにはならない。この部分については、例えば、加算信号FをADC132によってA/D変換した後、A/D変換後の加算信号Fに対して3次高調波成分の周波数3ωを中心周波数とするBPF(Band Pass Filter)によるフィルタリング処理を行うことにより、基本波成分及び2次高調波成分を除去することができる。ここで、BPFは、急峻なフィルタ特性を有する必要はなく、例えば、3次高調波の周波数3ωを中心周波数として、帯域ωで−6dB/オクターブ程度の緩やかな特性であってもよい。
【0046】
また、2次高調波を抽出する場合には、アナログ遅延回路131aにおいて、入力した受信信号21bの位相をπずらしたπ遅延信号を加算回路131bに出力する。そして、加算回路131bによって、基本信号とπ遅延信号とが加算される。この場合、π遅延信号は、基本信号に対して位相が180°遅れた信号であり、基本信号とπ遅延信号とを加算するのは、所謂パルスインバージョン法の演算そのものである。従って、2次高調波成分が抽出される。
【0047】
ADC132は、高調波抽出回路131からの加算信号F及び高調波抽出回路131を経由しない受信信号21bをA/D変換して整相加算回路133に出力する。
【0048】
整相加算回路133は、A/D変換された受信信号に対して、振動子21a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データ13aを生成する。ここで、上述したようにして高調波成分が抽出された場合には、高調波成分に基づく音線データが生成される。なお、アナログ処理により整相加算を行った後にA/D変換して音線データを得るようにしてもよい。
【0049】
画像生成部14は、受信部13からの音線データ13aに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモードによる超音波画像データを生成する。すなわち、Bモードによる超音波画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。
【0050】
表示部15は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部15は、操作部11で入力された各種情報や、画像生成部14で生成された超音波画像データに基づいて被検体内の超音波診断画像を表示する。なお、表示装置に代えてプリンタ等の印刷装置等を適用してもよい。
【0051】
制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリ等により構成され、超音波診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0052】
記憶部17は、上述した操作部11で入力された各種情報や、画像生成部14で生成された被検体内の超音波画像データを記憶する。
【0053】
次に、以上のようにして構成された超音波診断装置Sにおいて実行される送信信号設定処理について図5を参照しながら説明する。この送信信号設定処理は、送信超音波を被検体に送信するタイミングで実行される処理である。
【0054】
先ず、制御部16は、今回の送信超音波を送信するために駆動する振動子21aを設定する(ステップS101)。具体的には、制御部16は、送信部12の遅延時間設定部121cにて、上述したようにして駆動する振動子21aを設定し、送信チャンネルを割り当てる。
【0055】
次に、制御部16は、フォーカス点F(x)の設定を行う(ステップS102)。具体的には、制御部16は、予め定められた複数段階の送信フォーカス点の深度から何れかを選択する。例えば、制御部16は、第1段階〜第p段階から何れかの送信フォーカス点の深度を選択する。本実施の形態では、例えば、第1段階〜第5段階の送信フォーカス点の深度が予め定められている。なお、送信フォーカス点の深度の段階数は任意である。このように、本実施の形態では、走査を行いながら、方位方向上同一の位置において、深度を変えつつ複数回の超音波の送受信を行う多段フォーカスが可能である。
【0056】
制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)に対応するビームフォーカス用タイミングテーブルの読み出しを行う(ステップS103)。具体的には、制御部16は、送信部12に、ステップS102において設定されたフォーカス点F(x)に対応するビームフォーカス用タイミングテーブルを、遅延時間設定テーブル記憶部121aから読み出すように指示する。
【0057】
ビームフォーカス用タイミングテーブルは、例えば、図6に示すように、0〜63chの各送信チャンネルのそれぞれについての遅延時間を定めるものである。図6に示されたビームフォーカス用タイミングテーブルは、第1段階の送信フォーカス点の深度に対応するものであって、振動子アレイ21から35mmの位置(深度35mm)を送信フォーカス点とするものである。すなわち、このビームフォーカス用タイミングテーブルに示された遅延時間に従って各振動子21aから送信超音波を出力すると、各振動子21aから出力された送信超音波によって形成される送信ビームが、深度35mmの位置に向けて収束される。ビームフォーカス用タイミングテーブルは、上述したように、第1段階〜第p段階の各段階に応じて複数設けられており、送信チャンネル毎に設定された遅延時間は、テーブル毎にそれぞれ異なっている。なお、図6に示されたビームフォーカス用タイミングテーブルは一例であって、例えば、同一の深度であっても、送信超音波が伝播する媒体の音響インピーダンス等に応じて各送信チャンネルに設定される遅延時間は適宜変更される。
【0058】
次に、制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、所定のフォーカス点F(a)の深度よりも大きいか否かを判定する(ステップS104)。本実施の形態では、フォーカス点F(a)の深度は、例えば、第3段階目の送信フォーカス点の深度としているが、任意の位置に設定することができる。なお、フォーカス点F(a)の深度は、第p段階の送信フォーカス点の深度よりも小さい位置に設定される。
【0059】
制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、所定のフォーカス点F(a)の深度よりも大きいと判定したときは(ステップS104:Y)、送信チャンネル毎の遅延時間を設定する(ステップS105)。より具体的には、制御部16は、フォーカス点F(x)が、第4段階であることを示すフォーカス点F(4)及び第5段階であることを示すフォーカス点F(5)である場合には、ステップS103において読み出されたビームフォーカス用タイミングテーブルのデータを遅延時間設定テーブル記憶部121aから遅延時間設定部121cに出力するように送信部12を制御する。すなわち、通常の送信ビームフォーカスが行われるように各送信チャンネルの遅延時間が設定される。
【0060】
制御部16は、ステップS105において設定された送信チャンネル毎の遅延時間に従って振動子21aから超音波が出力されるように駆動信号12aを出力し(ステップS106)、この処理を終了する。すなわち、制御部16は、送信部12を制御して、遅延パルス発生部121eから駆動信号12aが出力されるように制御する。その結果、送信超音波が合成加算されて振幅が大きくなる。
【0061】
また、制御部16は、ステップS104において、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、所定のフォーカス点F(a)の深度よりも大きいと判定しないときは(ステップS104:N)、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、所定のフォーカス点F(b)の深度以下であるか否かを判定する(ステップS107)。本実施の形態では、フォーカス点F(b)の深度は、例えば、第2段階目の送信フォーカス点の深度としているが、任意の位置に設定することができる。なお、フォーカス点F(b)の深度は、フォーカス点F(a)の深度よりも小さい位置に設定される。
【0062】
制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、所定のフォーカス点F(b)の深度以下であると判定したときは(ステップS107:Y)、3倍波抽出用遅延時間設定テーブルの読み出しを行う(ステップS108)。より具体的には、制御部16は、フォーカス点F(x)が、第1段階であることを示すフォーカス点F(1)及び第2段階であることを示すフォーカス点F(2)である場合には、送信部12に、3倍波抽出用遅延時間設定テーブルを、遅延時間設定テーブル記憶部121aから読み出すように指示する。
【0063】
3倍波抽出用遅延時間設定テーブルは、例えば、図7に示すように、0〜63chの各送信チャンネルのそれぞれについてのそれぞれについての付加遅延時間を定めるものである。この3倍波抽出用遅延時間設定テーブルは、隣接する3つの送信チャンネルを1組とし、基準となる送信チャンネル(遅延時間が0である送信チャンネル)から出力される送信超音波に対して、他の送信チャンネルから出力される送信超音波の位相がそれぞれ2π/3、4π/3だけずれるように、各送信チャンネルの遅延時間が設定されている。例えば、送信超音波の位相を2π/3ずらす場合には、送信超音波が1/3λだけ進む時間を遅延時間として設定する。具体的には、音速が1540m/sである媒体内における、周波数が4MHzである送信超音波の波長(λ)は
λ=1540/(4.0×106
=0.385(mm)
となる。
そして、送信超音波が1/3λだけ進む時間(t)は
t=(0.385×103)/1540/3
=0.083msec
=83nsec
となる。
したがって、隣接する3つの送信チャンネルを1組とし、基準となる送信チャンネルに対して、他の送信チャンネルから出力される送信超音波の出力タイミングが83nsec、167nsecだけ遅延するように、各送信チャンネルの遅延時間が設定されることにより、送信超音波の位相を2π/3、4π/3だけずらすことができるようになる。
本実施の形態における3倍波抽出用遅延時間設定テーブルは、遅延パルス発生部121eから出力される駆動信号12aの出力タイミングが、0nsec、83nsec、167nsec、83nsecの周期で遅延するように送信チャンネル毎の遅延時間が設定されている。
なお、3倍波抽出用遅延時間設定テーブルにおいて設定される送信チャンネル毎の遅延時間については、基準となる一の送信チャンネルから出力される送信超音波に対して、他の送信チャンネルから出力される送信超音波の位相が相対的に2π/3ずつずれるように設定されていれば、任意に設定することができる。本実施の形態では、図7に示すように、遅延時間を0nsec、83nsec、167nsec、83nsecの周期で設定したが、例えば、0nsec、83nsec、0nsec、−83nsecといったような周期に設定し、出力される送信超音波が0、2π/3、0、−2π/3の周期でずれるようにしてもよい。
【0064】
以上のようにして、3倍波抽出用遅延時間設定テーブルが読み出されると、制御部16は、ステップS103において読み出されたビームフォーカス用タイミングテーブルの遅延時間と3倍波抽出用遅延時間設定テーブルの遅延時間とを送信チャンネル毎に加算する(ステップS109)。具体的には、制御部16は、ステップS103において読み出されたビームフォーカス用タイミングテーブルのデータと、ステップS108において読み出された3倍波抽出用遅延時間設定テーブルのデータとを、それぞれ遅延時間設定テーブル記憶部121aから遅延時間加算処理部121bに出力するように送信部12を制御する。制御部16は、遅延時間加算処理部121bに入力された各テーブルの遅延時間を送信チャンネル毎に加算するように送信部12を制御する。その結果、遅延時間加算処理部121bにおいて、図8に示すような、送信チャンネル毎の加算処理後の遅延時間が設定されたデータが生成される。
【0065】
送信チャンネル毎の遅延時間を設定するためのデータ構成について図9を参照して比較をすると、通常の送信ビームフォーカスによる送信超音波の出力を行う場合は、送信チャンネル毎の駆動信号12aの遅延時間が円弧を成すように推移したものとなっている。これに対し、上述のようにして遅延時間が加算された場合には、送信チャンネル毎の駆動信号12aの遅延時間が、通常の送信ビームフォーカスによって設定される遅延時間を起点として、ノコギリ状となるように推移する。
【0066】
その後、制御部16は、ステップS105において、上述したようにして送信チャンネル毎の遅延時間を設定する。この場合、制御部16は、ステップS109において生成された加算処理後の遅延時間を示すデータを遅延時間加算処理部121bから遅延時間設定部121cに出力するように送信部12を制御する。そして、制御部16は、ステップS106において、上述したようにして駆動信号12aを出力し、この処理を終了する。
【0067】
以上のように、加算処理後の遅延時間に従って送信超音波が送信チャンネル毎に出力されると、送信超音波に含まれる基本波成分が低減され、基本波成分の3倍の周波数である3倍波成分が強調された送信ビームを形成することができる。
【0068】
ここで、上述した構成により、基本波成分が低減されて3倍波成分が強調される理由について説明する。
なお、本実施の形態では、基準となる送信超音波に対して、2π/3及び4π/3だけ位相量を異ならせた送信超音波を出力するようにしたが、同様の理論が適用できるため、以下、理解を容易にするため、基準となる送信超音波に対して、正負方向に2π/3だけ位相量を異ならせた送信超音波をそれぞれ出力した場合について説明する。
【0069】
上述したように、駆動信号12aは矩形パルス信号であるので、送信超音波も矩形波を成す。
矩形波である送信超音波(Y)は、フーリエ級数にて展開して表すと
Y=sin(ωt)+1/3sin(3ωt)+1/5sin(5ωt)+1/7sin(7ωt)+1/9sin(9ωt)+・・・
となる。ここで、
ω:基本波の角周波数
である。
すなわち、矩形波である送信超音波を展開すると、送信超音波には、送信超音波と同じ周波数のサイン波からなる基本波成分と、基本波成分の奇数倍の周波数成分とが含まれていることがわかる。なお、以下の説明において、基本波成分と、基本波成分の奇数倍の周波数成分を総称して奇数倍成分ということがある。
以下、送信超音波(Y)を、基準送波Y(n)として説明する。
【0070】
次に、基準送波Y(n)に対して−2π/3だけ位相量を遅らせた遅延送波Y(n−1)も同様に展開して表すと
Y(n−1)=sin(ωt−2π/3)+1/3sin{3(ωt−2π/3)}+1/5sin{5(ωt−2π/3)}+1/7sin{7(ωt−2π/3)}+1/9sin{9(ωt−2π/3)}+・・・
となる。
また、基準送波Y(n)に対して2π/3だけ位相量を遅らせた遅延送波Y(n+1)も同様に展開して表すと
Y(n+1)=sin(ωt+2π/3)+1/3sin{3(ωt+2π/3)}+1/5sin{5(ωt+2π/3)}+1/7sin{7(ωt+2π/3)}+1/9sin{9(ωt+2π/3)}+・・・
となる。
【0071】
遅延送波Y(n−1)、基準送波Y(n)及び遅延送波Y(n+1)は、媒体内において下記式によって表されるように加算合成される。
Y(n−1)+Y(n)+Y(n+1)
=sin(ωt−2π/3)+sin(ωt)+sin(ωt+2π/3)
+1/3[sin{3(ωt−2π/3)}+sin(3ωt)+sin{3(ωt+2π/3)}]
+1/5[sin{5(ωt−2π/3)}+sin(5ωt)+sin{5(ωt+2π/3)}]
+1/7[sin{7(ωt−2π/3)}+sin(7ωt)+sin{7(ωt+2π/3)}]
+1/9[sin{9(ωt−2π/3)}+sin(9ωt)+sin{9(ωt+2π/3)}]
+・・・
=sin(3ωt)+1/3sin(9ωt)+・・・
しかしながら、振動子の帯域や媒体内における減衰等の影響により、送信超音波に含まれる基本波成分の5倍以上の周波数成分は発生しないか、無視できるレベルとなる。
したがって、合成後の送信超音波においては、基本波成分は消失され、基本波の3倍の周波数成分である3倍波のみが残存する。そして、上述の式に示された通り、3倍波は強調されて3倍の振幅となる。すなわち、4MHzの送信超音波を出力した場合は、4MHzの基本波成分は消失され、振幅が3倍となった12MHzの3倍波のみが残存する。
【0072】
以上の理論について、グラフを用いて説明すると以下のようになる。
図10は、送信超音波に含まれる周波数成分の一部と、これらの周波数成分の合成結果を示している。なお、説明の便宜上、7倍波成分よりも大きい周波数成分については図示及び説明を省略する。
【0073】
図10に示すように、送信超音波には、基本波成分Aと、3倍波成分Bと、5倍波成分Cと、7倍波成分Dとが含まれている。ここで、これらの各周波数成分は以下のようにして表される。
A=sinω
B=1/3sin(3ω)
C=1/5sin(5ω)
D=1/7sin(7ω)
【0074】
そして、上記各周波数成分を合成すると、合成波Eが生成される。合成波Eは以下のようにして表される。
E=sinω+1/3sin(3ω)+1/5sin(5ω)+1/7sin(7ω)
以下、合成波Eを、基準送波E1として説明する。
【0075】
次に、基準送波E1に対して−2π/3だけ位相量を遅らせた−2π/3遅延送波E2及び2π/3だけ位相量を遅らせた2π/3遅延送波E3を、基準送波E1とともにグラフにて表すと、図11に示すようになる。
ここで、−2π/3遅延送波E2及び2π/3遅延送波E3は、以下の式にて表される。
2=sinω+1/3sin(3ω)+1/5sin(5ω)+1/7sin(7ω)−2π/3
3=sinω+1/3sin(3ω)+1/5sin(5ω)+1/7sin(7ω)+2π/3
【0076】
基準送波E1、−2π/3遅延送波E2及び2π/3遅延送波E3は、媒体内において合成されると、基準送波E1、−2π/3遅延送波E2及び2π/3遅延送波E3にそれぞれ含まれる3倍波成分のみが累積加算され、その他の周波数成分は相殺される。従って、原理的には、図12に示すように、3倍波成分のみが3倍の振幅となって表れる一方、基本波成分を含め、その他の周波数成分については消失される。しかしながら、実際には、送信超音波の長さが有限であることと、2π/3遅延送波及び−2π/3遅延送波が、基準送波を遅延して生成されることから、合成後の送信超音波の先頭及び最後尾は、計算通りにはならない。
【0077】
これについて、図13及び図14を用いて説明する。図13は、上述した基準送波と、基準送波よりも−2π/3だけ位相量を遅らせた−2π/3遅延送波と、基準送波よりも2π/3だけ位相量を遅らせた2π/3遅延送波との関係を示すグラフである。ここでは、隣接する3つの振動子21aからそれぞれ、基準送波と、−2π/3遅延送波と、2π/3遅延送波とを出力した場合を例示し、図13中、基準送波G1、−2π/3遅延送波G2、2π/3遅延送波G3として図示する。
【0078】
図14は、基準送波G1、−2π/3遅延送波G2及び2π/3遅延送波G3を加算して得られた合成波Hを示すグラフである。図14に示すように、上述したようにして各振動子21aから、それぞれ位相量を遅らせて送信超音波を出力すると、位相が2πから14π/3の間で、3倍波成分以外の周波数成分が除去され、3倍波成分のみが3倍に増幅されていることが分かる。従って、より方位分解能に優れた基本波成分の3倍の周波数成分である3倍波を効率よく強調することができる。
【0079】
一方、合成波Hの先端部分のうちの位相が0から4π/3までの間は、基準送波G1と同様の波形そのまま表れ、位相が4π/3から2πまでの間は、基準送波G1と−2π/3遅延送波G2とが合成された結果が表れている。
【0080】
同様に、合成波Hの最後尾部分のうちの位相が14π/3から16π/3までの間は、基準送波G1と2π/3遅延送波G3とが合成された結果が表れ、位相が16π/3以降は、2π/3遅延送波G3と同様の波形がそのまま表れている。
【0081】
このような先端部分及び最後尾部分については、実際には、反射波の受信時において、立ち上がり及び立ち下りのレスポンス等の特性により応答され難いため、影響は少ない。また、このような先端部分及び最後尾部分については、例えば、公知の受信フィルタを用いて除去することもできる。
【0082】
このように、本実施の形態では、深度の小さい位置においては、送信超音波に含まれる基本波成分が低減され、基本波成分の3倍の周波数成分である3倍波が強調されるので、方位分解能に優れた反射波を得ることができるようになる。
【0083】
図5に戻って、説明を続けると、制御部16は、ステップS107において、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、所定のフォーカス点F(b)の深度以下であると判定しないときは(ステップS107:N)、2倍波抽出用遅延時間設定テーブルの読み出しを行う(ステップS110)。より具体的には、制御部16は、フォーカス点F(x)が、第3段階であることを示すフォーカス点F(3)である場合には、送信部12に、2倍波抽出用遅延時間設定テーブルを、遅延時間設定テーブル記憶部121aから読み出すように指示する。
【0084】
2倍波抽出用遅延時間設定テーブルは、例えば、隣接する2つの送信チャンネルを1組とし、基準となる送信チャンネルから出力される送信超音波に対して、他の送信チャンネルから出力される送信超音波の位相がπだけずれるように、各送信チャンネルの遅延時間が設定されている。例えば、送信超音波の位相をπだけずらす場合には、送信超音波が1/2λだけ進む時間を遅延時間として設定すればよい。したがって、音速が1540m/sである媒体内における、周波数が4MHzである送信超音波の場合には、遅延時間を125nsecに設定すればよい。
本実施の形態における2倍波抽出用遅延時間設定テーブルは、遅延パルス発生部121eから出力される駆動信号12aの出力タイミングが、0nsec、125nsecの周期で遅延するように送信チャンネル毎の遅延時間が設定されている。
【0085】
なお、2倍波抽出用遅延時間設定テーブルにおいて設定される送信チャンネル毎の遅延時間については、基準となる一の送信チャンネルから出力される送信超音波に対して、他の送信チャンネルから出力される送信超音波の位相が相対的にπずつずれるように設定されていれば、任意に設定することができる。
【0086】
以上のようにして、2倍波抽出用遅延時間設定テーブルが読み出されると、制御部16は、ステップS103において読み出されたビームフォーカス用タイミングテーブルの遅延時間と2倍波抽出用遅延時間設定テーブルの遅延時間とを送信チャンネル毎に加算する(ステップS109)。具体的には、制御部16は、ステップS103において読み出されたビームフォーカス用タイミングテーブルのデータと、ステップS110において読み出された2倍波抽出用遅延時間設定テーブルのデータとを、それぞれ遅延時間設定テーブル記憶部121aから遅延時間加算処理部121bに出力するように送信部12を制御する。制御部16は、遅延時間加算処理部121bに入力された各テーブルの遅延時間を送信チャンネル毎に加算するように送信部12を制御する。その結果、遅延時間加算処理部121bにおいて、送信チャンネル毎の加算処理後の遅延時間が設定されたデータが生成される。
【0087】
その後、制御部16は、ステップS105において、上述したようにして送信チャンネル毎の遅延時間を設定する。そして、制御部16は、ステップS106において、上述したようにして駆動信号12aを出力し、この処理を終了する。
【0088】
以上のように、加算処理後の遅延時間に従って送信超音波が送信チャンネル毎に出力されると、送信超音波に含まれる奇数倍成分が低減され、基本波成分の2倍の周波数である2倍波成分が強調された送信ビームを形成することができる。
【0089】
ここで、上述した構成により、基本波成分が低減されて2倍波成分が強調される理由について説明する。
【0090】
上述したように、矩形波である送信超音波には、理論的には、奇数倍成分のみが含まれ、2倍波成分は含まれない。ところが、実際には、出力される送信超音波は、振動子21aの特性等、物理的要因により、きれいな矩形波とはならず、歪みが生じたものとなる。この波形を分析すると、基本波成分の偶数倍の周波数成分が含まれていることが分かる。なお、以下の説明において、基本波成分の偶数倍の周波数成分を偶数倍成分ということがある。
【0091】
本実施の形態では、以上の特性を利用して2倍波成分の抽出を行うようにしている。
すなわち、基準送波と、基準送波に対してπだけ位相量を遅らせたπ遅延送波とを合成すると、奇数倍成分はすべて除去され、偶数倍成分のみが2倍に増幅される。ここで、基本波成分の4倍以上の周波数成分は、振動子の帯域や媒体内における減衰等の影響により発生しないか、無視できるレベルとなる。
したがって、合成後の送信超音波においては、基本波成分を含む奇数倍成分は消失され、基本波の2倍の周波数成分である2倍波のみが残存する。そして、上述した通り、2倍波は強調されて2倍の振幅となる。すなわち、4MHzの送信超音波を出力した場合は、4MHzの基本波成分は消失され、振幅が2倍となった8MHzの2倍波のみが残存する。
【0092】
次に、受信信号抽出処理について図15を参照しながら説明する。この受信信号抽出処理は、反射波を受信するタイミングで実行される処理である。
【0093】
まず、制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、フォーカス点F(a)の深度よりも大きいか否かを判定する(ステップS201)。
【0094】
制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、フォーカス点F(a)の深度よりも大きいと判定したときは(ステップS201:Y)、受信部13にて、上述したようにして受信信号21bから3次高調波を抽出する高調波抽出処理を行い(ステップS202)、この処理を終了する。なお、高調波抽出処理において2次高調波を抽出するようにしてもよい。
【0095】
このように、本実施の形態では、深度の大きい位置においては、送信超音波から基本波成分を除去せず、この送信超音波から得られた反射波に含まれる高調波成分を抽出するので、深度の大きい位置においても、方位分解能に優れた超音波画像データを生成することができるようになる。
【0096】
一方、制御部16は、設定されたフォーカス点F(x)の深度が、フォーカス点F(a)の深度よりも大きいと判定しないときは(ステップS201:N)、受信部13にて、上述したようにして受信信号21bを、高調波抽出回路131を経由せずにADC132に入力する基本波抽出処理を行い(ステップS203)、この処理を終了する。なお、このとき、高調波成分を除去するためにフィルタリング処理を行うようにしてもよい。
【0097】
このように、本実施の形態では、深度の小さい位置においては、基本波成分が除去され、2倍波成分及び3倍波成分が強調された送信超音波の反射波によって受信信号を取得することができるので、高調波成分の抽出し難いような深度の小さい位置においても、方位分解能に優れた超音波画像データを生成することができるようになる。
【0098】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、超音波探触子2は、駆動信号12aによって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号21bを出力する複数の振動子21aを有する。送信部12は、複数の振動子21aにそれぞれ送信超音波を出力させる。画像生成部14は、複数の振動子21aから出力された受信信号21bに基づいて被検体内の超音波画像データを生成する。制御部16は、超音波画像データの取得深度を設定する。送信部12は、制御部16によって設定された超音波画像データの取得深度に応じて、複数の振動子21aのうちの隣接するn個の振動子21aを1組として、当該組内における送信超音波の位相のずれ量が、すくなくとも送信超音波に含まれる基本波成分を低減させて基本波成分のn倍の周波数成分を強調するための第1の位相量と、基本波成分を強調するための第2の位相量とに切り替わるように、複数の振動子21aの送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定する。その結果、深度に応じた周波数成分の超音波を出力することができる。例えば、深度の大きい位置については、基本波成分を強調することで超音波を深部まで到達させ、高調波成分を抽出することで方位分解能に優れた受信信号を得ることができる。また、高調波成分の得られないような深度の小さい位置においても、送信超音波に含まれる基本波成分を低減させて高次周波数成分を強調することで、高い周波数成分の反射波を得ることができる。そのため、深度の小さい位置においても同様に、方位分解能に優れた受信信号を得ることができる。そして、これらの受信信号によれば、深度に応じた方位分解能の高い超音波画像データを生成することができる。また、送信超音波自体の周波数を変更しないで実現することができるので、特別な回路構成を必要とせず、簡素な構成とすることができる。また、送信超音波の周波数を変更するために超音波探触子を交換する必要もないため、コストにも優れ、交換作業も不要である。また、送信超音波の周波数を大きくすることもないため、周波数の増大に伴う電力消費が抑制され、電源効率に優れる。
【0099】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、複数の振動子21aのうちの隣接する2個の振動子21aを1組とし、当該組内における送信超音波の位相のずれ量を第1の位相量とするときに位相のずれ量がπとなるように複数の振動子21aの送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定して、基本波成分を低減させて基本波成分の2倍の周波数成分を強調する。その結果、例えば、高調波成分の得られないような位置においても、基本波成分の2倍の周波数成分の反射波を得ることができ、方位分解能に優れた受信信号を得ることができる。
【0100】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、複数の振動子21aのうちの隣接する3個の振動子21aを1組とし、当該組内における送信超音波の位相のずれ量を第1の位相量とするときに、当該組内のうちの一の振動子21aから出力される送信超音波の位相に対する当該組内における他の振動子21aから出力される送信超音波の位相のずれ量がそれぞれ2π/3、4π/3となるように複数の振動子21aの送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定して、基本波成分を低減させて基本波成分の3倍の周波数成分を強調する。その結果、例えば、高調波成分の得られないような位置においても、基本波成分の3倍の周波数成分の反射波を得ることができ、方位分解能に優れた受信信号を得ることができる。
【0101】
また、本発明の実施の形態によれば、送信部12は、複数の振動子21aのそれぞれに、波形が矩形波である送信超音波を出力させる。その結果、簡素な回路構成できれいな波形を含む送信超音波を出力することができる。
【0102】
また、本発明の実施の形態によれば、受信部13は、送信部12によって、当該組内における送信超音波の位相のずれ量が第2の位相量となるように複数の振動子21aの送信超音波の出力タイミングが設定されたときは、受信信号21bから、反射超音波の高調波成分を抽出する。画像生成部14は、抽出した高調波成分に基づいて被検体内の超音波画像データを生成する。その結果、ある程度の深度である位置においては、高い周波数成分である高調波成分を適切に抽出することができ、方位分解能に優れた受信信号を得ることができる。
【0103】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0104】
また、本実施の形態では、所定の深度よりも大きい場合には、送信超音波に含まれる基本波成分を増幅し、この基本波成分の反射波から得られた受信信号より高次高調波を得るようにしたが、高次高調波を取得しない構成としてもよい。
【0105】
また、本実施の形態では、受信信号より2次高調波又は3次高調波を抽出する構成としたが、2次高調波と3次高調波とを、深度に応じて切り替えて抽出する構成としてもよい。
【0106】
また、本実施の形態では、深度に応じて送信超音波に含まれる3倍波成分及び2倍波成分を強調する構成としたが、何れか一方のみ強調する構成であってもよい。
【0107】
また、本実施の形態では、一の振動子に対して一の送信チャンネルを割り当て、方位方向に隣接するn個の振動子を1組とし、当該組内において送信超音波の位相をずらすようにしたが、例えば、n個の振動子毎に送信チャンネルを割り当て、一の送信チャンネル内において送信超音波の位相をずらすように構成してもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、複数の振動子が一次元アレイ状に配列された超音波探触子を適用し、方位方向に隣接するn個の振動子を1組とし、当該組内において送信超音波の位相をずらすように構成したが、例えば、複数の振動子が二次元アレイ状に配列された超音波探触子を適用した場合、方位方向とは垂直であるエレベーション方向に隣接するn個の振動子を1組とし、当該組内において送信超音波の位相をずらすように構成してもよい。
【0109】
また、高次高調波の取得は、フィルタ法やインバージョン法等、公知の取得方法が採用できる。
【0110】
また、本実施の形態では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0111】
S 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
2 超音波探触子
21a 振動子
12 送信部
13 受信部
14 画像生成部
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する複数の振動子を有する超音波探触子と、
前記複数の振動子にそれぞれ前記送信超音波を出力させる送信部と、
前記複数の振動子から出力された受信信号に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成する画像処理部と、
前記超音波画像データの取得深度を設定する制御部と、
を備え、
前記送信部は、前記制御部によって設定された前記超音波画像データの取得深度に応じて、前記複数の振動子のうちの隣接するn個の振動子を1組として、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量が、少なくとも前記送信超音波に含まれる基本波成分を低減させて該基本波成分のn倍の周波数成分を強調するための第1の位相量と、前記基本波成分を強調するための第2の位相量とに切り替わるように、前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記複数の振動子のうちの隣接する2個の振動子を1組とし、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量を前記第1の位相量とするときに前記位相のずれ量がπとなるように前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定して、前記基本波成分を低減させて該基本波成分の2倍の周波数成分を強調するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記複数の振動子のうちの隣接する3個の振動子を1組とし、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量を前記第1の位相量とするときに、当該組内のうちの一の振動子から出力される送信超音波の位相に対する当該組内における他の振動子から出力される送信超音波の位相のずれ量がそれぞれ2π/3、4π/3となるように前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングをそれぞれ設定して、前記基本波成分を低減させて該基本波成分の3倍の周波数成分を強調するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記複数の振動子のそれぞれに、波形が矩形波である送信超音波を出力させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記送信部によって、当該組内における前記送信超音波の位相のずれ量が前記第2の位相量となるように前記複数の振動子の前記送信超音波の出力タイミングが設定されたときは、前記受信信号から、前記反射超音波の高調波成分を抽出し、該抽出した高調波成分に基づいて前記被検体内の超音波画像データを生成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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