超音波診断装置
【課題】超音波の連続波において目標位置の深さに適応した制御を実現する。
【解決手段】正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。可変クロック生成部23は、正弦パターンや余弦パターンを構成する各符号の時間長である1符号長を決定するためのクロックを出力する。目標位置の深さに応じて、システム制御部60が可変クロック生成部23を制御することにより、各符号の時間長が設定される。また、目標位置の深さに応じて、システム制御部60により、正弦パターンや余弦パターンの全符号数Nが決定される。
【解決手段】正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。可変クロック生成部23は、正弦パターンや余弦パターンを構成する各符号の時間長である1符号長を決定するためのクロックを出力する。目標位置の深さに応じて、システム制御部60が可変クロック生成部23を制御することにより、各符号の時間長が設定される。また、目標位置の深さに応じて、システム制御部60により、正弦パターンや余弦パターンの全符号数Nが決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波の連続波において目標位置の深さに適応した制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、周期的な符号系列に基づいて符号化された連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、前記目標位置の深さに応じて前記符号系列の周期を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、目標位置の深さに応じて符号系列の周期を制御することにより、例えば、目標位置における検出感度や目標位置における距離分解能を向上させることが可能になる。
【0010】
望ましい具体例において、前記符号系列は、各符号の時間長が1符号長Tbであり、1周期に亘る符号の総数が全符号数Nである複数の符号で構成され、前記制御部は、前記目標位置の深さに応じて、1符号長Tbと全符号数Nの少なくとも一方を増減させて前記符号系列の周期を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記制御部は、全符号数Nを固定して1符号長Tbを増減させて前記符号系列の周期を制御する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記制御部は、1符号長Tbを固定して全符号数Nを増減させて前記符号系列の周期を制御する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記制御部は、1符号長Tbの大きさに応じて、前記受信信号が入力されるバンドパスフィルタの通過帯域を制御する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記2列の数値パターンは、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンであり、前記送信信号処理部は、正弦パターンと余弦パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、超音波の連続波において目標位置の深さに適応した制御が実現される。例えば、本発明の好適な態様によれば、目標位置における検出感度や目標位置における距離分解能を向上させることなどが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。
【図3】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。
【図4】参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。
【図5】乗算器出力の具体例を示す図である。
【図6】位相シフト連続波を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図7】位相パターンの1周期に亘る加算処理を説明するための図である。
【図8】全符号数の増減による周期の制御を説明するための図である。
【図9】全符号数と受信信号の周波数スペクトラムとの関係を示す図である。
【図10】各符号の時間長の増減による周期の制御を説明するための図である。
【図11】各符号の時間長と受信信号の周波数スペクトラムの関係を示す図である。
【図12】各符号の時間長に応じた通過帯域の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内からの超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0019】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、合成処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして超音波の送信ビームが形成され、二次元平面内で又は三次元空間内で送信ビームが走査される。
【0020】
送信ビームフォーマ14に供給される連続波の送信信号は、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される。
【0021】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(搬送波信号)に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。一方、余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波(搬送波信号)に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。
【0022】
そして、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0023】
また、可変クロック生成部23は、RF波発振器20から得られるRF波に基づいて、正弦パターンや余弦パターンを構成する各符号の時間長である1符号長Tbを決定するためのクロックを出力する。可変クロック生成部23は、例えばPLLシンセサイザを備えており、システム制御部60からの指示に応じた周波数のクロックを出力する。そして、可変クロック生成部23から得られるクロックに基づいて、正弦パターン処理部22Bや余弦パターン処理部22Aにおける1符号長Tbが決定される。さらに、システム制御部60により、正弦パターンや余弦パターンの全符号数Nが決定される。本実施形態における1符号長Tbと全符号数Nの制御については後にさらに詳述する。
【0024】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして二次元平面内で又は三次元空間内で走査される送信ビームに対応した受信ビームが形成され、受信ビームに沿って受信RF信号が収集される。
【0025】
そして、受信ビームフォーマ16の後段に設けられたBPF(バンドパスフィルタ)17により、受信RF信号に含まれる不用な帯域成分がカットされて通過帯域成分が抽出される。なお、BPF17における通過帯域の設定については後に詳述する。
【0026】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0027】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、合成処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、合成処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0028】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力されて他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0029】
加算部46,48は、LPF36,38から得られる復調信号を所定期間に亘って加算する。これにより、位相シフト連続波の位相パターンに関する加算処理が実行され、参照信号の位相パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後にさらに詳述する。
【0030】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)50は、加算部46,48から得られる復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部50において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部50から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0031】
ドプラ情報解析部52は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部52において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部52は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0032】
表示部54は、ドプラ情報解析部52において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0033】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、位相シフト連続波に対応した超音波を送受して受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで図1の超音波診断装置における位相シフト処理と、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0034】
<位相シフト処理について>
図1の超音波診断装置では、互いに相補的な関係にある2列の数値パターンを用いて位相シフト処理が行われる。つまり、正弦パターン処理部22Bにおいて正弦パターンが利用され、余弦パターン処理部22Aにおいて余弦パターンが利用される。
【0035】
2列の数値パターンである正弦パターンと余弦パターンは次式により定義される。次式において、aiが余弦パターンであり余弦関数から得られる。一方、biが正弦パターンであり正弦関数から得られる。また、Nはパターン長を示す自然数であり、iはパターンを構成している各数値(各符号)の番号である。ちなみに、Nは任意の自然数かつ偶数であり2の累乗に限定されない。
【0036】
【数1】
【0037】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(正弦波)の振幅を正弦パターンに従って変化させる。一方、余弦パターン処理部22Aは、π/2シフト回路21を介して得られるRF波(余弦波)の振幅を余弦パターンに従って変化させる。そして、正弦パターン処理部22Bから出力される連続波と、余弦パターン処理部22Aから出力される連続波が合成処理部24において合成され、次式に示す連続波の送信信号が形成される。
【0038】
【数2】
【0039】
送信信号に対応した受信信号は、その送信信号が送信された時刻から、次式に示す遅延時間τだけ遅れて受信系に到達する。なお、次式において、Tbは数値パターンの1ビット(各数値)の時間長つまりビット長であり、l(エル)は任意の自然数である。そしてξは1/2ビット長以下の時間である。
【0040】
【数3】
【0041】
図1の超音波診断装置では、送信信号を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。送信信号を基準とした受信信号の遅延時間をτ、遅延回路25における遅延量(時間シフト量)をkTb、ドプラシフトによる位相の変化量をωdとすると、受信ミキサ30のミキサ32において乗算される受信信号(数4式)と参照信号(数5式)は、それぞれ次のように表現される。
【0042】
【数4】
【0043】
【数5】
【0044】
そして、受信ミキサ30において、次式に示すように受信信号と参照信号が乗算され、乗算結果としてベースバンド成分が得られる。
【0045】
【数6】
【0046】
受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)のうち、第1項は、互いに同じ数値パターンであるai同士およびbi同士の積に関する相関電力であり、第2項は、互いに異なる数値パターンであるaiとbiの積に関する相互干渉電力である。目標位置の選択性を高めるためには、第1項に示される相関はシャープであることが必要とされ、第2項に示される相互干渉は小さいことが望ましい。なお、数6式の計算過程において2ω0tの項は、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36により除去される。
【0047】
ここで、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項である余弦波の位相について検討する。この余弦波の位相は、数3式に示した遅延時間τを用いると、次式のように表現できる。
【0048】
【数7】
【0049】
数7式に示す余弦波の位相にはξが含まれており、1/2ビット長以下の時間であるξに応じて余弦波の位相が変化する。この位相の変化は、目標位置の選択性(相関性)に重要な影響を及ぼす要因ではないため、以下においては位相の表現からξを省略して目標位置の選択性について説明する。
【0050】
まず、相関電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項に含まれる相関値は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0051】
【数8】
【0052】
数8式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。実際に目標位置から得られる受信信号には、N個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれており、また、参照信号にもN個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれている。受信ミキサ30において次々に得られる数8式の乗算結果は、LPF36を経て加算部46に出力される。そして、加算部46とFFT処理部50において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は数9式のように表現できる。さらに、数10式に示す公式を利用すると、数9式は数11式のように簡潔に表現できる。
【0053】
【数9】
【0054】
【数10】
【0055】
【数11】
【0056】
数11式におけるδklは、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。また、kとlが互いに等しい場合にcosθklが1となるため、数11式はさらに簡潔に次式のように変換される。
【0057】
【数12】
【0058】
数12式は、kで特定される目標位置に対応した参照信号と、l(エル)で特定される深さからの受信信号と、を乗算して得られる自己相関値を示しており、kとlが互いに等しい場合にNとなり、kとlが互いに異なる場合に0となる。つまり、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみがNとなる。
【0059】
次に、相互干渉電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第2項に含まれる相互干渉は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0060】
【数13】
【0061】
数13式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。受信ミキサ30において次々に得られる数13式の乗算結果は、LPF36を経て加算部46に出力され、加算部46とFFT処理部50において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は次式のように表現できる。
【0062】
【数14】
【0063】
数14式の第2項は、数10式により0となる。数14式の第1項におけるΣの項は、数10式に示すとおりであり、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。一方、数14式の第1項のsinθklは、kとlが互いに等しい場合に0となる。つまり、次式に示すとおり、相互干渉電力については、kとlが互いに等しい場合でもkとlが互いに異なる場合でも常に0となる。
【0064】
【数15】
【0065】
以上の解析から、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って全てのiについて加算すると、その加算結果は次のようになる。
【0066】
【数16】
【0067】
数16式によれば、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。そして、k=lの場合には、数16式は次式のようになる。
【0068】
【数17】
【0069】
数17式で表現される信号は、ドプラシフトによる位相の変化量ωdを含んでいる。つまり、ドプラ周波数の成分を含んだベースバンド帯域のドプラ信号である。加算部46において数16式の加算処理が実行され、加算部46から数17式の信号(復調信号)が出力される。そして、FFT処理部50における周波数解析処理により、数17式の信号が周波数スペクトラムとして測定され、例えばωdの大きさ(ドプラ周波数の大きさ)から移動目標の速さなどが算出される。
【0070】
なお、目標位置に移動目標が存在しない場合には、数17式におけるωdが0(ゼロ)となる。したがって、FFT処理部50における周波数解析処理の結果がωd=0であれば、固定目標からの信号であることが分かる。
【0071】
さらに、図1の超音波診断装置では、ドプラ周波数の極性を識別するために、受信ミキサ30において直交検波が行われている。受信ミキサ30のミキサ34には、遅延回路25により遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。したがって、その参照信号は、次式のように表現できる。なお、数5式に示す参照信号から位相を−π/2だけずらした信号が数18式の参照信号となるが、数5式に示す参照信号から位相を+π/2だけずらした信号を利用してもよい。
【0072】
【数18】
【0073】
ミキサ34では、数18式の参照信号と数4式の受信信号が次式のように乗算処理される。なお、次式の計算過程において2ω0tの項は、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)38により除去される。
【0074】
【数19】
【0075】
数12式と数15式を適用して、受信信号と参照信号の乗算結果(数19式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って全てのiについて加算すると、その加算結果は次のようになる。
【0076】
【数20】
【0077】
数20式によれば、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。そして、k=lの場合には、数20式は次式のようになる。
【0078】
【数21】
【0079】
数21式で表現される信号は、ドプラシフトによる位相の変化量ωdを含んでいる。つまり、ドプラ周波数の成分を含んだベースバンド帯域のドプラ信号である。加算部48において数20式の加算処理が実行され、加算部48から数21式の信号(復調信号)が出力される。数21式と数17式は、直交検波により得られた互いに直交関係にある復調信号であり、FFT処理部50における周波数解析処理により、数21式と数17式から、ドプラ周波数の大きさに加えて極性、つまり、移動目標が受信用振動子12に近づいているのか、又は、移動目標が受信用振動子12から遠ざかっているのかを識別することが可能になる。
【0080】
次に、正弦パターンと余弦パターンの具体例について説明する。パターン長を8(N=8)とすると、数1式から、余弦パターンA(数22式)と正弦パターンB(数23式)が得られる。
【0081】
【数22】
【0082】
【数23】
【0083】
余弦パターンAと正弦パターンBを構成する各数値(各符号)は、単純な2値符号とは異なり、−1と+1との間で離散的な値をとる。また、余弦パターンAと正弦パターンBを利用して形成される送信信号(数2式)の振幅は次式のように算出されるため、常に1となり、送信信号の振幅が時間的に変動しないことがわかる。
【0084】
【数24】
【0085】
余弦パターンAと正弦パターンBを数2式に適用して得られる送信信号は次式のようになる。
【0086】
【数25】
【0087】
図2は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。つまり、図2に示す送信信号は、数25式で表現される信号である。また、図3は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。図2と図3に示す送信信号は、余弦パターンAと正弦パターンBを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させ、その位相パターンを繰り返すことにより得られる連続波(位相シフト連続波)となっている。
【0088】
<位置選択性について>
図4は、参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。図4には、数25式の送信信号を利用した場合に、ある深さから得られる受信信号の位相(受信波の位相)が示されている。また、図4には、数25式の送信信号を遅延処理して得られる参照信号の位相(参照波の位相φ0〜φ7)も示されている。そして、受信信号と各参照信号を乗算して得られる出力と、1パターン(パターン長8)に亘る出力の合計も図示されている。図4に示すように、参照波の位相がφ0の場合に、受信波の位相と参照波の位相が互いに一致して合計が8となり、参照波の位相がφ0以外では合計が0となる。
【0089】
図5は、乗算器出力の具体例を示す図である。図5には、数25式の送信信号を利用した場合に、距離軸方向のφ0からφ8までの各深さにおいて、時間軸方向の1ビット長ごとに得られる乗算器出力(受信ミキサ30の出力)が示されている。また、位相パターンの1周期(8ビット長)に亘って得られる乗算器出力の加算値も図示されている。図5に示す深さφ0からφ7の各々は、図4に示す参照波の位相φ0からφ7に対応した深さである。また、図5に示す深さφ8は、位相パターンを繰り返した際に、1周期後の参照波の位相φ0に対応する深さである。
【0090】
図5に示す深さφ0と深さφ8では、位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って、参照信号と受信信号との間で位相が全て一致するため(図4参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さφ1からφ7では、参照信号と受信信号との間で位相がずれているため(図4参照)、乗算器出力がランダムに変化している。なお、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる(図4参照)。
【0091】
そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さφ0と深さφ8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。乗算器出力を平均化する場合には、例えば、加算部46,48に代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0092】
図5に示すように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7の受信信号に関する乗算器出力は、加算または平均化することによりゼロになるものの、1ビット長ごとにランダムに変動している。この変動のために、位相パターンを繰り返す位相シフト連続波を利用して得られる乗算器出力の周波数スペクトラムには、位相パターンの1周期(NTb)の逆数fpの整数倍に対応した線スペクトラムが現れる。
【0093】
図6は、位相シフト連続波(位相変調された連続波)を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。図6(A)は、受信信号の周波数スペクトラムを示している。受信信号は、生体内における減衰を無視すると送信信号と同じ波形となる。送信信号は、位相シフト連続波であり、したがって、受信信号の周波数スペクトラムも、位相シフト連続波の周波数スペクトラムとなる。周波数f0は、RF信号の周波数である。RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。また周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔Tbの逆数となる。
【0094】
図6(B)は、受信ミキサ30における乗算により得られるベースバンド信号の周波数スペクトラムを示している。図6(B)に示す周波数スペクトラムには、直流付近の信号成分と、RF信号の周波数f0の2倍の高調波成分が含まれている。ドプラ信号は、これらの成分に付着した形で出現する。なお、LPF36,38において、周波数f0の2倍の高調波成分が遮断されて直流付近の信号成分のみが抽出される。つまり、図6(B)に示す周波数スペクトラムの周波数0の近傍の信号が抽出される。
【0095】
直流信号成分には、ドプラ信号の他に、固定組織からの反射波に起因するクラッタ信号が含まれている。特に、体表や骨からの反射波は、ドプラ信号よりも数10dBも大きい場合があり、ドプラ信号を測定する際の妨害となる。クラッタ信号は、図6(B)に示すように、位相パターンの繰り返し周波数fpとその高調波成分を含んでおり、ドプラ信号に重畳される。
【0096】
クラッタ信号は、目標位置を対象とした選択的な復調処理を施した場合においても、受信ミキサ30から出力されるベースバンド信号内に現れる。選択的な復調処理は、測定対象となる例えば血流などからの受信信号の位相パターンと参照信号の位相パターンとを互いに一致させる処理である。測定対象とは異なる位置に存在する組織などについては、位相パターンに関する一致は成立していない。したがって、図5に示したように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7に組織がある場合に、乗算器出力が1ビット長ごとにランダムに変動し、図6(B)に示すようにクラッタ信号が発生する。
【0097】
図5を利用して説明したように、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力、つまり部分的な復調信号を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる。そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を加算または平均化することにより、図6(B)に示すクラッタ信号を低減または除去することができる。但し、単純に位相パターンの1周期に亘って復調信号を加算すると、ドプラ周波数成分が消滅してしまうため、必要とされるドプラ周波数が残るような加算処理を実現することが望ましい。
【0098】
そこで、図1の超音波診断装置では、以下に説明する処理により位相パターンの1周期に亘って復調信号の加算処理を実現し、クラッタ信号を低減し望ましくは完全に除去しつつ、必要なドプラ周波数を検出できるようにしている。
【0099】
<位相パターンの1周期に亘る加算処理について>
図1の超音波診断装置において、合成処理部24は、パターン長Nの位相パターン(図2,3参照)を繰り返すように連続波の送信信号を出力する。そして、受信ミキサ30からFFT処理部50までの受信処理において、パターン長Nをn個(nは自然数)ごとにmブロック(mは自然数)に分割して、各ブロックごとに部分的な復調信号を得ることにより、パターン長Nに対応したmブロックに亘る部分的な復調信号が抽出される。こうして抽出されたmブロックに亘る部分的な復調信号が周波数解析処理される。
【0100】
図7は、位相パターンの1周期に亘る加算処理を説明するための図である。この加算処理は、ミキサ32から加算部46において処理される同相信号成分とミキサ34から加算部48において処理される直交信号成分の各々について実行される。
【0101】
図7の最上段におけるa0,a1,a2,・・・は、パターン長N(全符号数N)の位相パターンを繰り返す連続波の送信信号を利用した場合に得られる復調信号(ベースバンド信号)を示している。このベースバンド信号は、1符合長Tbごとに相関値が変化するアナログ信号であり、このアナログ信号が各ブロックごとにnサンプルずつ加算される。
【0102】
図7に示すA0,A1,A2,・・・は、nビット長ごとに部分的に加算処理された復調信号を示している。例えばA0は、0番目のブロックに対応した部分的な復調信号の加算結果であり、A1は、1番目のブロックに対応した部分的な復調信号の加算結果である。このように、各ブロックごとに復調信号が加算処理される。この加算処理は、例えば加算部46,48において実行される。パターン長Nがm個のブロックで構成されるため、パターン長Nの期間内にm個の加算結果が得られる。図7には、m=16の例が示されており、nTbの時間長ごとにA0,A1,A2,・・・,A15まで加算結果が次々に得られ、さらにA15に続いて、次の周期のA0〜A15までの加算結果が次々に得られる。
【0103】
そして、本実施形態においては、A0〜A15までを繰り返す復調信号列内で、mブロックの範囲を1ブロックずつシフトさせつつ、段階的に、パターン長Nに対応したmブロックに亘る部分的な復調信号が抽出される。つまり、図7に示す信号列Y0,Y1,Y2,・・・が次々に抽出されてメモリ等に記憶される。
【0104】
信号列Y0は、A0を先頭としてA0からA15までの16個の各加算結果で構成されている。そして信号列Y0の次に抽出される信号列Y1は、A1を先頭としてA1からA15までの各加算結果の後にA0を加えた16個の各加算結果で構成されている。さらに、信号列Y1の次に抽出される信号列Y2は、A2を先頭としてA2からA15までの各加算結果の後にA0とA1を加えた16個の各加算結果で構成されている。このように、先頭ブロックが段階的にシフトされつつ信号列Y0,Y1,Y2,・・・が次々に抽出される。
【0105】
なお、A0,A1,A2,・・・の時間間隔はnTbであるため、次々に抽出される信号列Y0,Y1,Y2,・・・の時間間隔もnTbとなる。抽出された信号列Y0,Y1,Y2,・・・は、メモリ等に記憶され、FFT処理部50(図1)において周波数解析処理される。
【0106】
信号列Y0,Y1,Y2,・・・は、FFT処理部50(図1)において、各信号列ごとにFFT演算される。その結果、各信号列ごとに復調信号が周波数スペクトラムに変換され、信号列Y0に対応した周波数スペクトラムSP0、信号列Y1に対応した周波数スペクトラムSP1、・・・が例えば時間間隔nTbで次々に形成される。そして、周波数スペクトラムSP0〜SP15までの結果が得られると、これらの周波数スペクトラムがFFT処理部50において加算処理される。
【0107】
複数の信号列Y0〜Y15に対応した複数の周波数スペクトラムSP0〜SP15を加算することは、これら複数の信号列に含まれる同時刻(互いに対応する時刻)における信号同士を加算することに相当する。例えば、複数の信号列Y0〜Y15の先頭ブロック同士が加算されることに相当する。つまり、位相パターンの1周期に亘って得られるA0〜A15までの復調信号が全て加算処理されることに等しい。なお、先頭ブロック以外においても、信号列Y0〜Y15までの複数の加算結果が加算され、A0〜A15までの復調信号が全て加算処理されることに等しい。これにより、先に詳述したとおり、図6(B)に示すクラッタ信号が低減され、望ましくは完全に除去される。
【0108】
周波数スペクトラムSP0〜SP15が得られると、時間間隔nTb後に、次の周波数スペクトラムSP0を得ることができる。したがって、例えば、周波数スペクトラムSP0〜SP15までの加算結果が得られてから、時間間隔nTb後に、周波数スペクトラムSP1〜SP15,SP0までの加算結果を得ることができる。つまり、時間間隔nTbで次々に周波数スペクトラムの加算結果を得ることができる。
【0109】
こうして、図1のFFT処理部50において、複数の信号列Y0〜Y15から得られる周波数スペクトラムSP0〜SP15の加算結果が得られると、ドプラ情報解析部52において、その加算結果の周波数スペクトラムからドプラ信号が抽出され、ドプラシフト量などに基づいて、目標位置に存在する血流の流速などが算出される。受信ミキサ30において直交検波をしているため、流速等の極性を判断することもできる。
【0110】
以上に説明したように、図1の超音波診断装置では、位相パターンの1周期に亘って得られる復調信号が全て加算処理されることにより、目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。つまり、位相パターンの1周期に対応した範囲内において目標位置が選択される。したがって、目標位置が深い位置にあるほど、位相パターンの1周期が長くなければならない。その逆に、目標位置が浅い位置にある場合には、位相パターンの1周期を短くすることもできる。そこで、図1の超音波診断装置は、目標位置の深さに応じて、位相パターンの1周期の長さを制御している。
【0111】
<目標位置の深さに応じた周期の制御について>
図7に示した例では、位相パターンのパターン長Nをn個の符号ごとに16ブロックに分割しているため、各符号の時間長をTbとすると、位相パターンの1周期は、NTb=m×n×Tbとなっている。そして、図7に示した例においては、目標位置がτ1にあり位相パターンの1周期に対応した範囲内にあるため、その範囲内において目標位置からの復調信号を選択的に抽出することができる。
【0112】
これに対し、目標位置がτ1よりも浅い場合には、例えば、目標位置がτ1/2=τ2にある場合には、図7の例における位相パターンにより復調信号を選択的に抽出することができるが、位相パターンの1周期を短くしても、復調信号を選択的に抽出することができる。例えば、各符号の時間長をTbとしたまま、パターン長(全符号数)を少なくすることにより、位相パターンの1周期を短くすることができる。
【0113】
図8は、全符号数の増減による周期の制御を説明するための図である。図8には、図7と同様な位相パターンの1周期に亘る加算処理の過程が図示されている。但し、図8の例においては、目標位置がτ2=τ1/2にあり、図7との比較において深さが1/2となっている。そこで、図8の例では、図7との比較において位相パターンの1周期も1/2とされている。つまり、各符号の時間長Tbは固定して、位相パターンの1周期に亘る符号の総数である全符号数がN/2とされている。
【0114】
図8の例において、位相パターンの1周期は、NTb/2=m/2×n×Tbとなっている。図8の例において、目標位置はτ2にあり、位相パターンの1周期に対応した範囲内にあるため、その範囲内において目標位置からの復調信号を選択的に抽出することができる。
【0115】
図9は、全符号数と受信信号の周波数スペクトラムとの関係を示す図である。受信信号の周波数スペクトラムについては、図6(A)を利用して説明したとおりであり、RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。
【0116】
図9(A)には、位相パターンの全符号数がNの場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数はfp1=1/NTbとなる。つまり帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp1である。
【0117】
これに対し、図9(B)には、位相パターンの全符号数がN/2の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数は、fp2=2/NTbとなる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp2であり、図9(A)との比較においてその間隔は2倍となる。
【0118】
また、図9(B)の場合には、位相パターンの全符号数がN/2であるため、全符号数がNである図9(A)の場合に比べて、単位時間当たりの位相パターンの繰り返し数が2倍となるため、特定した目標からの受信電力は、単位時間当たり2倍となる。つまり、図9(A)との比較において図9(B)の周波数スペクトラムは縦軸方向に2倍に増加し、これにより受信信号の感度も増加して目標位置の検出感度が向上する。
【0119】
なお、図9(C)には、位相パターンの全符号数がN/3の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合において、位相パターンの繰り返し周波数はfp3=3/NTbとなる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp3であり、図9(A)との比較においてその間隔は3倍となる。さらに、図9(A)との比較において図9(C)の周波数スペクトラムは縦軸方向に3倍に増加する。目標位置が図8に示すτ2よりもさらに浅い場合には、図9(C)に示すように、全符号数をN/3として、受信信号の感度をさらに増加させ、目標位置の検出感度をさらに向上させてもよい。
【0120】
このように、目標位置の深さに応じて、位相パターンの全符号数を増減させて位相パターンの周期を制御することにより、目標位置の検出感度を向上させることができる。例えば、検査者により設定された目標位置の深さに応じて、図1のシステム制御部60が位相パターンの全符号数Nを設定する。これに対し、位相パターンの全符号数をNに固定したまま、各符号の時間長Tbを増減させて位相パターンの周期を制御することもできる。
【0121】
図10は、各符号の時間長の増減による周期の制御を説明するための図である。図10には、図7と同様な位相パターンの1周期に亘る加算処理の過程が図示されている。但し図10の例においては目標位置がτ2であり、図7のτ1よりも浅い位置にある。そこで図10の例では、図7との比較において位相パターンの1周期が小さくされている。つまり、位相パターンの1周期に亘る符号の総数である全符号数は固定して、各符号の時間長であるTb2が小さくされている。
【0122】
図10の例において、位相パターンの1周期はNTb2=m×n×Tb2となっている。この例において、目標位置はτ2にあり、位相パターンの1周期に対応した範囲内にあるため、その範囲内において目標位置からの復調信号を選択的に抽出することができる。さらに、目標位置を選択的する場合における距離分解能は、各符号の時間長に相当する距離となるため、図7との比較において、図10の例では、各符号の時間長Tb2が小さいため、距離分解能を向上させることができる。
【0123】
このように、目標位置の深さに応じて、位相パターンを構成する各符号の時間長Tbを増減させて位相パターンの周期を制御することにより、目標位置の距離分解能を向上させることができる。例えば、検査者により設定された目標位置の深さに応じて、図1のシステム制御部60が可変クロック生成部23を制御することにより、各符号の時間長Tbが設定される。
【0124】
図11は、各符号の時間長と受信信号の周波数スペクトラムの関係を示す図である。受信信号の周波数スペクトラムについては、図6(A)を利用して説明したとおりでありRF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。また、周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔の逆数となる。
【0125】
図11(A)には、各符号の時間長が比較的大きいTb1の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数はfp1=1/NTb1となる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp1である。また、周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔の逆数1/Tb1となる。
【0126】
これに対し、図11(B)には、各符号の時間長が中程度であるTb2の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数はfp2=1/NTb2となる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp2であり、図11(A)との比較においてその間隔は広くなる。また、図11(B)の場合には、図11(A)に比べて、各符号の時間長がTb2と小さいため周波数f0からヌル点までの周波数間隔は1/Tb2と広くなる。
【0127】
さらに、図11(C)には、各符号の時間長が比較的小さいTb3の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合において、位相パターンの繰り返し周波数はfp3=1/NTb3となる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp3であり、図11(B)の場合よりもさらにその間隔が広くなる。また、図11(C)の場合には、周波数f0からヌル点までの周波数間隔が1/Tb3となり、図11(B)の場合よりもさらに広くなる。目標位置が図10に示すτ2よりもさらに浅い場合には、図11(C)に示すように、各符号の時間長をTb3として、目標位置の距離分解能をさらに向上させてもよい。
【0128】
なお、図11に示したように、各符号の時間長の増減に応じて、受信信号の周波数帯域が変化している。例えば、周波数f0からヌル点までの周波数間隔が変化する。そこで、BPF17(図1)において、受信信号(受信RF信号)に含まれる不用な帯域成分をカットして通過帯域成分を抽出するにあたり、その通過帯域を各符号の時間長に応じて制御するようにしてもよい。
【0129】
図12は、各符号の時間長に応じた通過帯域の制御を説明するための図である。図12(A)〜(C)には、図11(A)〜(C)と同じ受信信号の周波数スペクトラムが示されている。
【0130】
図12(A)は、各符号の時間長がTb1の場合の周波数スペクトラムであり、この場合には、主にf0−1/Tb1〜f0+1/Tb1までの周波数成分が抽出されるように、通過帯域がBW1に設定される。また、図12(B)は、各符号の時間長がTb2の場合の周波数スペクトラムであり、この場合には、主にf0−1/Tb2〜f0+1/Tb2までの周波数成分が抽出されるように、通過帯域がBW2に設定される。そして、図12(C)は、各符号の時間長がTb3の場合であり、主にf0−1/Tb1〜f0+1/Tb1までの周波数成分が抽出されるように、通過帯域がBW3に設定される。
【0131】
このように、目標位置の深さに応じて各符号の時間長が設定され、さらにその時間長に応じて、受信信号の通過帯域を設定することにより、その目標位置の深さにおいて受信信号のSNR(信号対雑音比)を常に最適化することができる。例えば、検査者により設定された目標位置の深さに応じて、図1のシステム制御部60がBPF17を制御することにより、受信信号の通過帯域が設定される。
【0132】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【0133】
例えば、図1の超音波診断装置では、正弦パターンと余弦パターンを利用して、周期的に位相を変化させる連続波の送信信号を形成しているが、例えば、PN(Pseudo Noise)系列、M系列、Gorey系列などの符号系列を用いて、位相シフトキーイング(PSK)により、周期的に位相を変化させる連続波の送信信号を形成してもよい。
【符号の説明】
【0134】
22A 余弦パターン処理部、22B 正弦パターン処理部、23 可変クロック生成部、24 合成処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、46,48 加算部、50 FFT処理部、52 ドプラ情報解析部、60 システム制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波の連続波において目標位置の深さに適応した制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、周期的な符号系列に基づいて符号化された連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、前記目標位置の深さに応じて前記符号系列の周期を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、目標位置の深さに応じて符号系列の周期を制御することにより、例えば、目標位置における検出感度や目標位置における距離分解能を向上させることが可能になる。
【0010】
望ましい具体例において、前記符号系列は、各符号の時間長が1符号長Tbであり、1周期に亘る符号の総数が全符号数Nである複数の符号で構成され、前記制御部は、前記目標位置の深さに応じて、1符号長Tbと全符号数Nの少なくとも一方を増減させて前記符号系列の周期を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記制御部は、全符号数Nを固定して1符号長Tbを増減させて前記符号系列の周期を制御する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記制御部は、1符号長Tbを固定して全符号数Nを増減させて前記符号系列の周期を制御する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記制御部は、1符号長Tbの大きさに応じて、前記受信信号が入力されるバンドパスフィルタの通過帯域を制御する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記2列の数値パターンは、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンであり、前記送信信号処理部は、正弦パターンと余弦パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、超音波の連続波において目標位置の深さに適応した制御が実現される。例えば、本発明の好適な態様によれば、目標位置における検出感度や目標位置における距離分解能を向上させることなどが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。
【図3】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。
【図4】参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。
【図5】乗算器出力の具体例を示す図である。
【図6】位相シフト連続波を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図7】位相パターンの1周期に亘る加算処理を説明するための図である。
【図8】全符号数の増減による周期の制御を説明するための図である。
【図9】全符号数と受信信号の周波数スペクトラムとの関係を示す図である。
【図10】各符号の時間長の増減による周期の制御を説明するための図である。
【図11】各符号の時間長と受信信号の周波数スペクトラムの関係を示す図である。
【図12】各符号の時間長に応じた通過帯域の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内からの超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0019】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、合成処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして超音波の送信ビームが形成され、二次元平面内で又は三次元空間内で送信ビームが走査される。
【0020】
送信ビームフォーマ14に供給される連続波の送信信号は、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される。
【0021】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(搬送波信号)に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。一方、余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波(搬送波信号)に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。
【0022】
そして、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0023】
また、可変クロック生成部23は、RF波発振器20から得られるRF波に基づいて、正弦パターンや余弦パターンを構成する各符号の時間長である1符号長Tbを決定するためのクロックを出力する。可変クロック生成部23は、例えばPLLシンセサイザを備えており、システム制御部60からの指示に応じた周波数のクロックを出力する。そして、可変クロック生成部23から得られるクロックに基づいて、正弦パターン処理部22Bや余弦パターン処理部22Aにおける1符号長Tbが決定される。さらに、システム制御部60により、正弦パターンや余弦パターンの全符号数Nが決定される。本実施形態における1符号長Tbと全符号数Nの制御については後にさらに詳述する。
【0024】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして二次元平面内で又は三次元空間内で走査される送信ビームに対応した受信ビームが形成され、受信ビームに沿って受信RF信号が収集される。
【0025】
そして、受信ビームフォーマ16の後段に設けられたBPF(バンドパスフィルタ)17により、受信RF信号に含まれる不用な帯域成分がカットされて通過帯域成分が抽出される。なお、BPF17における通過帯域の設定については後に詳述する。
【0026】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0027】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、合成処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、合成処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0028】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力されて他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0029】
加算部46,48は、LPF36,38から得られる復調信号を所定期間に亘って加算する。これにより、位相シフト連続波の位相パターンに関する加算処理が実行され、参照信号の位相パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後にさらに詳述する。
【0030】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)50は、加算部46,48から得られる復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部50において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部50から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0031】
ドプラ情報解析部52は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部52において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部52は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0032】
表示部54は、ドプラ情報解析部52において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0033】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、位相シフト連続波に対応した超音波を送受して受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで図1の超音波診断装置における位相シフト処理と、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0034】
<位相シフト処理について>
図1の超音波診断装置では、互いに相補的な関係にある2列の数値パターンを用いて位相シフト処理が行われる。つまり、正弦パターン処理部22Bにおいて正弦パターンが利用され、余弦パターン処理部22Aにおいて余弦パターンが利用される。
【0035】
2列の数値パターンである正弦パターンと余弦パターンは次式により定義される。次式において、aiが余弦パターンであり余弦関数から得られる。一方、biが正弦パターンであり正弦関数から得られる。また、Nはパターン長を示す自然数であり、iはパターンを構成している各数値(各符号)の番号である。ちなみに、Nは任意の自然数かつ偶数であり2の累乗に限定されない。
【0036】
【数1】
【0037】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(正弦波)の振幅を正弦パターンに従って変化させる。一方、余弦パターン処理部22Aは、π/2シフト回路21を介して得られるRF波(余弦波)の振幅を余弦パターンに従って変化させる。そして、正弦パターン処理部22Bから出力される連続波と、余弦パターン処理部22Aから出力される連続波が合成処理部24において合成され、次式に示す連続波の送信信号が形成される。
【0038】
【数2】
【0039】
送信信号に対応した受信信号は、その送信信号が送信された時刻から、次式に示す遅延時間τだけ遅れて受信系に到達する。なお、次式において、Tbは数値パターンの1ビット(各数値)の時間長つまりビット長であり、l(エル)は任意の自然数である。そしてξは1/2ビット長以下の時間である。
【0040】
【数3】
【0041】
図1の超音波診断装置では、送信信号を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。送信信号を基準とした受信信号の遅延時間をτ、遅延回路25における遅延量(時間シフト量)をkTb、ドプラシフトによる位相の変化量をωdとすると、受信ミキサ30のミキサ32において乗算される受信信号(数4式)と参照信号(数5式)は、それぞれ次のように表現される。
【0042】
【数4】
【0043】
【数5】
【0044】
そして、受信ミキサ30において、次式に示すように受信信号と参照信号が乗算され、乗算結果としてベースバンド成分が得られる。
【0045】
【数6】
【0046】
受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)のうち、第1項は、互いに同じ数値パターンであるai同士およびbi同士の積に関する相関電力であり、第2項は、互いに異なる数値パターンであるaiとbiの積に関する相互干渉電力である。目標位置の選択性を高めるためには、第1項に示される相関はシャープであることが必要とされ、第2項に示される相互干渉は小さいことが望ましい。なお、数6式の計算過程において2ω0tの項は、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36により除去される。
【0047】
ここで、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項である余弦波の位相について検討する。この余弦波の位相は、数3式に示した遅延時間τを用いると、次式のように表現できる。
【0048】
【数7】
【0049】
数7式に示す余弦波の位相にはξが含まれており、1/2ビット長以下の時間であるξに応じて余弦波の位相が変化する。この位相の変化は、目標位置の選択性(相関性)に重要な影響を及ぼす要因ではないため、以下においては位相の表現からξを省略して目標位置の選択性について説明する。
【0050】
まず、相関電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項に含まれる相関値は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0051】
【数8】
【0052】
数8式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。実際に目標位置から得られる受信信号には、N個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれており、また、参照信号にもN個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれている。受信ミキサ30において次々に得られる数8式の乗算結果は、LPF36を経て加算部46に出力される。そして、加算部46とFFT処理部50において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は数9式のように表現できる。さらに、数10式に示す公式を利用すると、数9式は数11式のように簡潔に表現できる。
【0053】
【数9】
【0054】
【数10】
【0055】
【数11】
【0056】
数11式におけるδklは、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。また、kとlが互いに等しい場合にcosθklが1となるため、数11式はさらに簡潔に次式のように変換される。
【0057】
【数12】
【0058】
数12式は、kで特定される目標位置に対応した参照信号と、l(エル)で特定される深さからの受信信号と、を乗算して得られる自己相関値を示しており、kとlが互いに等しい場合にNとなり、kとlが互いに異なる場合に0となる。つまり、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみがNとなる。
【0059】
次に、相互干渉電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第2項に含まれる相互干渉は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0060】
【数13】
【0061】
数13式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。受信ミキサ30において次々に得られる数13式の乗算結果は、LPF36を経て加算部46に出力され、加算部46とFFT処理部50において、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は次式のように表現できる。
【0062】
【数14】
【0063】
数14式の第2項は、数10式により0となる。数14式の第1項におけるΣの項は、数10式に示すとおりであり、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。一方、数14式の第1項のsinθklは、kとlが互いに等しい場合に0となる。つまり、次式に示すとおり、相互干渉電力については、kとlが互いに等しい場合でもkとlが互いに異なる場合でも常に0となる。
【0064】
【数15】
【0065】
以上の解析から、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って全てのiについて加算すると、その加算結果は次のようになる。
【0066】
【数16】
【0067】
数16式によれば、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。そして、k=lの場合には、数16式は次式のようになる。
【0068】
【数17】
【0069】
数17式で表現される信号は、ドプラシフトによる位相の変化量ωdを含んでいる。つまり、ドプラ周波数の成分を含んだベースバンド帯域のドプラ信号である。加算部46において数16式の加算処理が実行され、加算部46から数17式の信号(復調信号)が出力される。そして、FFT処理部50における周波数解析処理により、数17式の信号が周波数スペクトラムとして測定され、例えばωdの大きさ(ドプラ周波数の大きさ)から移動目標の速さなどが算出される。
【0070】
なお、目標位置に移動目標が存在しない場合には、数17式におけるωdが0(ゼロ)となる。したがって、FFT処理部50における周波数解析処理の結果がωd=0であれば、固定目標からの信号であることが分かる。
【0071】
さらに、図1の超音波診断装置では、ドプラ周波数の極性を識別するために、受信ミキサ30において直交検波が行われている。受信ミキサ30のミキサ34には、遅延回路25により遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。したがって、その参照信号は、次式のように表現できる。なお、数5式に示す参照信号から位相を−π/2だけずらした信号が数18式の参照信号となるが、数5式に示す参照信号から位相を+π/2だけずらした信号を利用してもよい。
【0072】
【数18】
【0073】
ミキサ34では、数18式の参照信号と数4式の受信信号が次式のように乗算処理される。なお、次式の計算過程において2ω0tの項は、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)38により除去される。
【0074】
【数19】
【0075】
数12式と数15式を適用して、受信信号と参照信号の乗算結果(数19式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って全てのiについて加算すると、その加算結果は次のようになる。
【0076】
【数20】
【0077】
数20式によれば、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。そして、k=lの場合には、数20式は次式のようになる。
【0078】
【数21】
【0079】
数21式で表現される信号は、ドプラシフトによる位相の変化量ωdを含んでいる。つまり、ドプラ周波数の成分を含んだベースバンド帯域のドプラ信号である。加算部48において数20式の加算処理が実行され、加算部48から数21式の信号(復調信号)が出力される。数21式と数17式は、直交検波により得られた互いに直交関係にある復調信号であり、FFT処理部50における周波数解析処理により、数21式と数17式から、ドプラ周波数の大きさに加えて極性、つまり、移動目標が受信用振動子12に近づいているのか、又は、移動目標が受信用振動子12から遠ざかっているのかを識別することが可能になる。
【0080】
次に、正弦パターンと余弦パターンの具体例について説明する。パターン長を8(N=8)とすると、数1式から、余弦パターンA(数22式)と正弦パターンB(数23式)が得られる。
【0081】
【数22】
【0082】
【数23】
【0083】
余弦パターンAと正弦パターンBを構成する各数値(各符号)は、単純な2値符号とは異なり、−1と+1との間で離散的な値をとる。また、余弦パターンAと正弦パターンBを利用して形成される送信信号(数2式)の振幅は次式のように算出されるため、常に1となり、送信信号の振幅が時間的に変動しないことがわかる。
【0084】
【数24】
【0085】
余弦パターンAと正弦パターンBを数2式に適用して得られる送信信号は次式のようになる。
【0086】
【数25】
【0087】
図2は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。つまり、図2に示す送信信号は、数25式で表現される信号である。また、図3は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。図2と図3に示す送信信号は、余弦パターンAと正弦パターンBを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させ、その位相パターンを繰り返すことにより得られる連続波(位相シフト連続波)となっている。
【0088】
<位置選択性について>
図4は、参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。図4には、数25式の送信信号を利用した場合に、ある深さから得られる受信信号の位相(受信波の位相)が示されている。また、図4には、数25式の送信信号を遅延処理して得られる参照信号の位相(参照波の位相φ0〜φ7)も示されている。そして、受信信号と各参照信号を乗算して得られる出力と、1パターン(パターン長8)に亘る出力の合計も図示されている。図4に示すように、参照波の位相がφ0の場合に、受信波の位相と参照波の位相が互いに一致して合計が8となり、参照波の位相がφ0以外では合計が0となる。
【0089】
図5は、乗算器出力の具体例を示す図である。図5には、数25式の送信信号を利用した場合に、距離軸方向のφ0からφ8までの各深さにおいて、時間軸方向の1ビット長ごとに得られる乗算器出力(受信ミキサ30の出力)が示されている。また、位相パターンの1周期(8ビット長)に亘って得られる乗算器出力の加算値も図示されている。図5に示す深さφ0からφ7の各々は、図4に示す参照波の位相φ0からφ7に対応した深さである。また、図5に示す深さφ8は、位相パターンを繰り返した際に、1周期後の参照波の位相φ0に対応する深さである。
【0090】
図5に示す深さφ0と深さφ8では、位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って、参照信号と受信信号との間で位相が全て一致するため(図4参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さφ1からφ7では、参照信号と受信信号との間で位相がずれているため(図4参照)、乗算器出力がランダムに変化している。なお、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる(図4参照)。
【0091】
そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さφ0と深さφ8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。乗算器出力を平均化する場合には、例えば、加算部46,48に代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0092】
図5に示すように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7の受信信号に関する乗算器出力は、加算または平均化することによりゼロになるものの、1ビット長ごとにランダムに変動している。この変動のために、位相パターンを繰り返す位相シフト連続波を利用して得られる乗算器出力の周波数スペクトラムには、位相パターンの1周期(NTb)の逆数fpの整数倍に対応した線スペクトラムが現れる。
【0093】
図6は、位相シフト連続波(位相変調された連続波)を利用した場合の各信号の周波数スペクトラムを示す図である。図6(A)は、受信信号の周波数スペクトラムを示している。受信信号は、生体内における減衰を無視すると送信信号と同じ波形となる。送信信号は、位相シフト連続波であり、したがって、受信信号の周波数スペクトラムも、位相シフト連続波の周波数スペクトラムとなる。周波数f0は、RF信号の周波数である。RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。また周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔Tbの逆数となる。
【0094】
図6(B)は、受信ミキサ30における乗算により得られるベースバンド信号の周波数スペクトラムを示している。図6(B)に示す周波数スペクトラムには、直流付近の信号成分と、RF信号の周波数f0の2倍の高調波成分が含まれている。ドプラ信号は、これらの成分に付着した形で出現する。なお、LPF36,38において、周波数f0の2倍の高調波成分が遮断されて直流付近の信号成分のみが抽出される。つまり、図6(B)に示す周波数スペクトラムの周波数0の近傍の信号が抽出される。
【0095】
直流信号成分には、ドプラ信号の他に、固定組織からの反射波に起因するクラッタ信号が含まれている。特に、体表や骨からの反射波は、ドプラ信号よりも数10dBも大きい場合があり、ドプラ信号を測定する際の妨害となる。クラッタ信号は、図6(B)に示すように、位相パターンの繰り返し周波数fpとその高調波成分を含んでおり、ドプラ信号に重畳される。
【0096】
クラッタ信号は、目標位置を対象とした選択的な復調処理を施した場合においても、受信ミキサ30から出力されるベースバンド信号内に現れる。選択的な復調処理は、測定対象となる例えば血流などからの受信信号の位相パターンと参照信号の位相パターンとを互いに一致させる処理である。測定対象とは異なる位置に存在する組織などについては、位相パターンに関する一致は成立していない。したがって、図5に示したように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφ1からφ7に組織がある場合に、乗算器出力が1ビット長ごとにランダムに変動し、図6(B)に示すようにクラッタ信号が発生する。
【0097】
図5を利用して説明したように、深さφ1からφ7においてランダムに変化する乗算器出力、つまり部分的な復調信号を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる。そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を加算または平均化することにより、図6(B)に示すクラッタ信号を低減または除去することができる。但し、単純に位相パターンの1周期に亘って復調信号を加算すると、ドプラ周波数成分が消滅してしまうため、必要とされるドプラ周波数が残るような加算処理を実現することが望ましい。
【0098】
そこで、図1の超音波診断装置では、以下に説明する処理により位相パターンの1周期に亘って復調信号の加算処理を実現し、クラッタ信号を低減し望ましくは完全に除去しつつ、必要なドプラ周波数を検出できるようにしている。
【0099】
<位相パターンの1周期に亘る加算処理について>
図1の超音波診断装置において、合成処理部24は、パターン長Nの位相パターン(図2,3参照)を繰り返すように連続波の送信信号を出力する。そして、受信ミキサ30からFFT処理部50までの受信処理において、パターン長Nをn個(nは自然数)ごとにmブロック(mは自然数)に分割して、各ブロックごとに部分的な復調信号を得ることにより、パターン長Nに対応したmブロックに亘る部分的な復調信号が抽出される。こうして抽出されたmブロックに亘る部分的な復調信号が周波数解析処理される。
【0100】
図7は、位相パターンの1周期に亘る加算処理を説明するための図である。この加算処理は、ミキサ32から加算部46において処理される同相信号成分とミキサ34から加算部48において処理される直交信号成分の各々について実行される。
【0101】
図7の最上段におけるa0,a1,a2,・・・は、パターン長N(全符号数N)の位相パターンを繰り返す連続波の送信信号を利用した場合に得られる復調信号(ベースバンド信号)を示している。このベースバンド信号は、1符合長Tbごとに相関値が変化するアナログ信号であり、このアナログ信号が各ブロックごとにnサンプルずつ加算される。
【0102】
図7に示すA0,A1,A2,・・・は、nビット長ごとに部分的に加算処理された復調信号を示している。例えばA0は、0番目のブロックに対応した部分的な復調信号の加算結果であり、A1は、1番目のブロックに対応した部分的な復調信号の加算結果である。このように、各ブロックごとに復調信号が加算処理される。この加算処理は、例えば加算部46,48において実行される。パターン長Nがm個のブロックで構成されるため、パターン長Nの期間内にm個の加算結果が得られる。図7には、m=16の例が示されており、nTbの時間長ごとにA0,A1,A2,・・・,A15まで加算結果が次々に得られ、さらにA15に続いて、次の周期のA0〜A15までの加算結果が次々に得られる。
【0103】
そして、本実施形態においては、A0〜A15までを繰り返す復調信号列内で、mブロックの範囲を1ブロックずつシフトさせつつ、段階的に、パターン長Nに対応したmブロックに亘る部分的な復調信号が抽出される。つまり、図7に示す信号列Y0,Y1,Y2,・・・が次々に抽出されてメモリ等に記憶される。
【0104】
信号列Y0は、A0を先頭としてA0からA15までの16個の各加算結果で構成されている。そして信号列Y0の次に抽出される信号列Y1は、A1を先頭としてA1からA15までの各加算結果の後にA0を加えた16個の各加算結果で構成されている。さらに、信号列Y1の次に抽出される信号列Y2は、A2を先頭としてA2からA15までの各加算結果の後にA0とA1を加えた16個の各加算結果で構成されている。このように、先頭ブロックが段階的にシフトされつつ信号列Y0,Y1,Y2,・・・が次々に抽出される。
【0105】
なお、A0,A1,A2,・・・の時間間隔はnTbであるため、次々に抽出される信号列Y0,Y1,Y2,・・・の時間間隔もnTbとなる。抽出された信号列Y0,Y1,Y2,・・・は、メモリ等に記憶され、FFT処理部50(図1)において周波数解析処理される。
【0106】
信号列Y0,Y1,Y2,・・・は、FFT処理部50(図1)において、各信号列ごとにFFT演算される。その結果、各信号列ごとに復調信号が周波数スペクトラムに変換され、信号列Y0に対応した周波数スペクトラムSP0、信号列Y1に対応した周波数スペクトラムSP1、・・・が例えば時間間隔nTbで次々に形成される。そして、周波数スペクトラムSP0〜SP15までの結果が得られると、これらの周波数スペクトラムがFFT処理部50において加算処理される。
【0107】
複数の信号列Y0〜Y15に対応した複数の周波数スペクトラムSP0〜SP15を加算することは、これら複数の信号列に含まれる同時刻(互いに対応する時刻)における信号同士を加算することに相当する。例えば、複数の信号列Y0〜Y15の先頭ブロック同士が加算されることに相当する。つまり、位相パターンの1周期に亘って得られるA0〜A15までの復調信号が全て加算処理されることに等しい。なお、先頭ブロック以外においても、信号列Y0〜Y15までの複数の加算結果が加算され、A0〜A15までの復調信号が全て加算処理されることに等しい。これにより、先に詳述したとおり、図6(B)に示すクラッタ信号が低減され、望ましくは完全に除去される。
【0108】
周波数スペクトラムSP0〜SP15が得られると、時間間隔nTb後に、次の周波数スペクトラムSP0を得ることができる。したがって、例えば、周波数スペクトラムSP0〜SP15までの加算結果が得られてから、時間間隔nTb後に、周波数スペクトラムSP1〜SP15,SP0までの加算結果を得ることができる。つまり、時間間隔nTbで次々に周波数スペクトラムの加算結果を得ることができる。
【0109】
こうして、図1のFFT処理部50において、複数の信号列Y0〜Y15から得られる周波数スペクトラムSP0〜SP15の加算結果が得られると、ドプラ情報解析部52において、その加算結果の周波数スペクトラムからドプラ信号が抽出され、ドプラシフト量などに基づいて、目標位置に存在する血流の流速などが算出される。受信ミキサ30において直交検波をしているため、流速等の極性を判断することもできる。
【0110】
以上に説明したように、図1の超音波診断装置では、位相パターンの1周期に亘って得られる復調信号が全て加算処理されることにより、目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。つまり、位相パターンの1周期に対応した範囲内において目標位置が選択される。したがって、目標位置が深い位置にあるほど、位相パターンの1周期が長くなければならない。その逆に、目標位置が浅い位置にある場合には、位相パターンの1周期を短くすることもできる。そこで、図1の超音波診断装置は、目標位置の深さに応じて、位相パターンの1周期の長さを制御している。
【0111】
<目標位置の深さに応じた周期の制御について>
図7に示した例では、位相パターンのパターン長Nをn個の符号ごとに16ブロックに分割しているため、各符号の時間長をTbとすると、位相パターンの1周期は、NTb=m×n×Tbとなっている。そして、図7に示した例においては、目標位置がτ1にあり位相パターンの1周期に対応した範囲内にあるため、その範囲内において目標位置からの復調信号を選択的に抽出することができる。
【0112】
これに対し、目標位置がτ1よりも浅い場合には、例えば、目標位置がτ1/2=τ2にある場合には、図7の例における位相パターンにより復調信号を選択的に抽出することができるが、位相パターンの1周期を短くしても、復調信号を選択的に抽出することができる。例えば、各符号の時間長をTbとしたまま、パターン長(全符号数)を少なくすることにより、位相パターンの1周期を短くすることができる。
【0113】
図8は、全符号数の増減による周期の制御を説明するための図である。図8には、図7と同様な位相パターンの1周期に亘る加算処理の過程が図示されている。但し、図8の例においては、目標位置がτ2=τ1/2にあり、図7との比較において深さが1/2となっている。そこで、図8の例では、図7との比較において位相パターンの1周期も1/2とされている。つまり、各符号の時間長Tbは固定して、位相パターンの1周期に亘る符号の総数である全符号数がN/2とされている。
【0114】
図8の例において、位相パターンの1周期は、NTb/2=m/2×n×Tbとなっている。図8の例において、目標位置はτ2にあり、位相パターンの1周期に対応した範囲内にあるため、その範囲内において目標位置からの復調信号を選択的に抽出することができる。
【0115】
図9は、全符号数と受信信号の周波数スペクトラムとの関係を示す図である。受信信号の周波数スペクトラムについては、図6(A)を利用して説明したとおりであり、RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。
【0116】
図9(A)には、位相パターンの全符号数がNの場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数はfp1=1/NTbとなる。つまり帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp1である。
【0117】
これに対し、図9(B)には、位相パターンの全符号数がN/2の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数は、fp2=2/NTbとなる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp2であり、図9(A)との比較においてその間隔は2倍となる。
【0118】
また、図9(B)の場合には、位相パターンの全符号数がN/2であるため、全符号数がNである図9(A)の場合に比べて、単位時間当たりの位相パターンの繰り返し数が2倍となるため、特定した目標からの受信電力は、単位時間当たり2倍となる。つまり、図9(A)との比較において図9(B)の周波数スペクトラムは縦軸方向に2倍に増加し、これにより受信信号の感度も増加して目標位置の検出感度が向上する。
【0119】
なお、図9(C)には、位相パターンの全符号数がN/3の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合において、位相パターンの繰り返し周波数はfp3=3/NTbとなる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp3であり、図9(A)との比較においてその間隔は3倍となる。さらに、図9(A)との比較において図9(C)の周波数スペクトラムは縦軸方向に3倍に増加する。目標位置が図8に示すτ2よりもさらに浅い場合には、図9(C)に示すように、全符号数をN/3として、受信信号の感度をさらに増加させ、目標位置の検出感度をさらに向上させてもよい。
【0120】
このように、目標位置の深さに応じて、位相パターンの全符号数を増減させて位相パターンの周期を制御することにより、目標位置の検出感度を向上させることができる。例えば、検査者により設定された目標位置の深さに応じて、図1のシステム制御部60が位相パターンの全符号数Nを設定する。これに対し、位相パターンの全符号数をNに固定したまま、各符号の時間長Tbを増減させて位相パターンの周期を制御することもできる。
【0121】
図10は、各符号の時間長の増減による周期の制御を説明するための図である。図10には、図7と同様な位相パターンの1周期に亘る加算処理の過程が図示されている。但し図10の例においては目標位置がτ2であり、図7のτ1よりも浅い位置にある。そこで図10の例では、図7との比較において位相パターンの1周期が小さくされている。つまり、位相パターンの1周期に亘る符号の総数である全符号数は固定して、各符号の時間長であるTb2が小さくされている。
【0122】
図10の例において、位相パターンの1周期はNTb2=m×n×Tb2となっている。この例において、目標位置はτ2にあり、位相パターンの1周期に対応した範囲内にあるため、その範囲内において目標位置からの復調信号を選択的に抽出することができる。さらに、目標位置を選択的する場合における距離分解能は、各符号の時間長に相当する距離となるため、図7との比較において、図10の例では、各符号の時間長Tb2が小さいため、距離分解能を向上させることができる。
【0123】
このように、目標位置の深さに応じて、位相パターンを構成する各符号の時間長Tbを増減させて位相パターンの周期を制御することにより、目標位置の距離分解能を向上させることができる。例えば、検査者により設定された目標位置の深さに応じて、図1のシステム制御部60が可変クロック生成部23を制御することにより、各符号の時間長Tbが設定される。
【0124】
図11は、各符号の時間長と受信信号の周波数スペクトラムの関係を示す図である。受信信号の周波数スペクトラムについては、図6(A)を利用して説明したとおりでありRF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、位相パターンの繰り返し周波数fpである。また、周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔の逆数となる。
【0125】
図11(A)には、各符号の時間長が比較的大きいTb1の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数はfp1=1/NTb1となる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp1である。また、周波数f0からヌル点までの周波数間隔は、1ビットの時間間隔の逆数1/Tb1となる。
【0126】
これに対し、図11(B)には、各符号の時間長が中程度であるTb2の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合、位相パターンの繰り返し周波数はfp2=1/NTb2となる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp2であり、図11(A)との比較においてその間隔は広くなる。また、図11(B)の場合には、図11(A)に比べて、各符号の時間長がTb2と小さいため周波数f0からヌル点までの周波数間隔は1/Tb2と広くなる。
【0127】
さらに、図11(C)には、各符号の時間長が比較的小さいTb3の場合における受信信号の周波数スペクトラムが示されている。この場合において、位相パターンの繰り返し周波数はfp3=1/NTb3となる。つまり、側帯波の周波数間隔(線スペクトルの周波数間隔)は周波数fp3であり、図11(B)の場合よりもさらにその間隔が広くなる。また、図11(C)の場合には、周波数f0からヌル点までの周波数間隔が1/Tb3となり、図11(B)の場合よりもさらに広くなる。目標位置が図10に示すτ2よりもさらに浅い場合には、図11(C)に示すように、各符号の時間長をTb3として、目標位置の距離分解能をさらに向上させてもよい。
【0128】
なお、図11に示したように、各符号の時間長の増減に応じて、受信信号の周波数帯域が変化している。例えば、周波数f0からヌル点までの周波数間隔が変化する。そこで、BPF17(図1)において、受信信号(受信RF信号)に含まれる不用な帯域成分をカットして通過帯域成分を抽出するにあたり、その通過帯域を各符号の時間長に応じて制御するようにしてもよい。
【0129】
図12は、各符号の時間長に応じた通過帯域の制御を説明するための図である。図12(A)〜(C)には、図11(A)〜(C)と同じ受信信号の周波数スペクトラムが示されている。
【0130】
図12(A)は、各符号の時間長がTb1の場合の周波数スペクトラムであり、この場合には、主にf0−1/Tb1〜f0+1/Tb1までの周波数成分が抽出されるように、通過帯域がBW1に設定される。また、図12(B)は、各符号の時間長がTb2の場合の周波数スペクトラムであり、この場合には、主にf0−1/Tb2〜f0+1/Tb2までの周波数成分が抽出されるように、通過帯域がBW2に設定される。そして、図12(C)は、各符号の時間長がTb3の場合であり、主にf0−1/Tb1〜f0+1/Tb1までの周波数成分が抽出されるように、通過帯域がBW3に設定される。
【0131】
このように、目標位置の深さに応じて各符号の時間長が設定され、さらにその時間長に応じて、受信信号の通過帯域を設定することにより、その目標位置の深さにおいて受信信号のSNR(信号対雑音比)を常に最適化することができる。例えば、検査者により設定された目標位置の深さに応じて、図1のシステム制御部60がBPF17を制御することにより、受信信号の通過帯域が設定される。
【0132】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【0133】
例えば、図1の超音波診断装置では、正弦パターンと余弦パターンを利用して、周期的に位相を変化させる連続波の送信信号を形成しているが、例えば、PN(Pseudo Noise)系列、M系列、Gorey系列などの符号系列を用いて、位相シフトキーイング(PSK)により、周期的に位相を変化させる連続波の送信信号を形成してもよい。
【符号の説明】
【0134】
22A 余弦パターン処理部、22B 正弦パターン処理部、23 可変クロック生成部、24 合成処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、46,48 加算部、50 FFT処理部、52 ドプラ情報解析部、60 システム制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な符号系列に基づいて符号化された連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、
前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、
前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、
前記目標位置の深さに応じて前記符号系列の周期を制御する制御部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記符号系列は、各符号の時間長が1符号長Tbであり、1周期に亘る符号の総数が全符号数Nである複数の符号で構成され、
前記制御部は、前記目標位置の深さに応じて、1符号長Tbと全符号数Nの少なくとも一方を増減させて前記符号系列の周期を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、全符号数Nを固定して1符号長Tbを増減させて前記符号系列の周期を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、1符号長Tbを固定して全符号数Nを増減させて前記符号系列の周期を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、1符号長Tbの大きさに応じて、前記受信信号が入力されるバンドパスフィルタの通過帯域を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記2列の数値パターンは、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンであり、
前記送信信号処理部は、正弦パターンと余弦パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
周期的な符号系列に基づいて符号化された連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、
前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る受信信号処理部と、
前記目標位置に対応した復調信号から生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、
前記目標位置の深さに応じて前記符号系列の周期を制御する制御部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記符号系列は、各符号の時間長が1符号長Tbであり、1周期に亘る符号の総数が全符号数Nである複数の符号で構成され、
前記制御部は、前記目標位置の深さに応じて、1符号長Tbと全符号数Nの少なくとも一方を増減させて前記符号系列の周期を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、全符号数Nを固定して1符号長Tbを増減させて前記符号系列の周期を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、1符号長Tbを固定して全符号数Nを増減させて前記符号系列の周期を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、1符号長Tbの大きさに応じて、前記受信信号が入力されるバンドパスフィルタの通過帯域を制御する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記2列の数値パターンは、正弦関数から得られる正弦パターンと余弦関数から得られる余弦パターンであり、
前記送信信号処理部は、正弦パターンと余弦パターンを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させた連続波の送信信号を出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−81052(P2012−81052A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229590(P2010−229590)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]