説明

超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器

【課題】周波数帯域の低い圧電素子を用いることで熱による圧電素子の損傷を防止するとともに、霧化した液体の噴霧距離を向上させた超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器を提供する。
【解決手段】超音波霧化装置10は、20kHz〜80kHzの周波数帯域の超音波を発生するPZT振動子13と、PZT振動子13の振動と共振することで共振波を発生する共振体14と、共振体14のPZT振動子13側とは反対側に取り付けられ、共振体14からの共振波が内部を固体伝搬し、この共振波と固有振動数を一致させた突起部15とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して液体を霧化することのできる超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器に関し、特に周波数帯域の低い圧電素子を用いた超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から超音波霧化技術によって液体を霧化する超音波霧化装置が存在する。このような超音波霧化装置は、圧電素子であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)振動子にパルス電圧を印加し、PZT振動子を発振させることによって、超音波を発生させて液体を霧化している。また、このような超音波霧化装置は、薬剤や消毒液を霧化する等の医療用途(たとえば、ネブライザ(吸入器))に用いられたり、室内空気を加湿する等の空調用途に用いられたり、用途が多岐にわたる。
【0003】
そのようなものとして、「圧電振動子に舌片状の振動板を固着してなる超音波励振器により発生させた弾性振動により液体を霧化する超音波霧化装置において、前記液体を収容する貯液室と、該貯液室から前記液体を導き出し前記振動板上に滴下させる手段とが備えてあり、前記振動板には多数の穴が設けてある」ようにした超音波霧化装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、「圧電体からなる超音波振動子、液体を収容する液体容器、及び一端が液体容器に挿入され、他端が超音波振動子の振動端面の全面に接触する吸水帯からなる」ようにした超音波霧化器が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2644621号(第2、3ページ、第1、2図)
【特許文献2】特開2003−181347号公報(第3ページ、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の超音波霧化装置は、霧化粒径を決定するための多数の穴を設けた振動板に直接液体を滴下させて、この液体を霧化するようにしたものである。しかしながら、この超音波霧化装置は、時間の経過とともに振動板に設けた多数の穴に液体中の埃やゴミ、カルキ分等が詰まり、この穴が塞がってしまうという問題があった。この問題は、霧化した液体を安定して供給することができないということに繋がってしまう。また、100kHz以上の高い周波数で液体を霧化させているために、強い振幅が発生し、振動板が熱で損傷してしまうという問題があった。したがって、振動板が熱で損傷するのを防止するためには、常に振動板を液体で濡らしておかなければならなかった。
【0006】
特許文献2に記載の超音波霧化器は、吸水帯で水を吸い上げ、超音波振動子に直接供給して、この液体を霧化するようにしたものである。しかしながら、この超音波霧化器は、液体中に含まれている雑菌やカルキ分によって吸水帯が使用途上で液体の吸収ができなくなってしまうという問題があった。また、特許文献1に記載の超音波霧化装置と同様に、100kHz以上の高い周波数で液体を霧化させている場合には、振動板が熱で損傷してしまうという問題があった。さらに、ファンを設けて噴霧距離を得られるようにできるものの、霧化した液体が広範囲に拡散してしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、周波数帯域の低い圧電素子を用いることで熱による圧電素子の損傷を防止するとともに、霧化した液体の噴霧距離を向上させた超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波霧化装置は、超音波によって液体を霧化する超音波霧化装置であって、圧電素子で構成され、所定の周波数帯域の超音波を発生する振動子と、前記振動子に取り付けられ、前記振動子の振動と共振することで共振波を発生する共振体と、前記共振体の前記振動子側とは反対側に取り付けられ、前記共振体からの共振波が内部を固体伝搬し、この共振波と固有振動数を一致させた突起部とを備えたことを特徴とする。また、本発明に係る設備機器は、上記の超音波霧化装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る超音波霧化装置は、所定の周波数帯域の超音波を発生する振動子と、この振動子の振動と共振することで共振波を発生する共振体と、この共振体からの共振波と固有振動数を一致させた突起部とを備えたので、突起部の先端表面で液体(源水)を効率よく霧化し、噴霧させることができる。また、振動子に入手し易い周波数帯域を発生するものを使用できるので、振動子の発振で発生する熱によって振動子が損傷されてしまうのを防止することができる。さらに、本発明に係る設備機器は、上記の超音波霧化装置を備えているので、超音波霧化装置の効果を全部有することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る超音波霧化装置10の概略構成を示す縦断面図である。図1に基づいて、超音波霧化装置10の構成について説明する。この超音波霧化装置10は、超音波を発生することによって水や薬剤等の液体(以下、単に源水23と称する)を霧化させ、霧化した液体(以下、単に霧化液体24と称する)を所望の場所に噴霧供給することができるものである。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、超音波霧化装置10は、支持部11と、台座12と、PZT振動子13と、共振体14と、突起部15と、共振板16とが順に積層されており、台座12、PZT振動子13、共振体14、突起部15及び共振板16が霧化用ダクト20の内部に配置されるように構成されている。そして、支持部11が霧化用ダクト20の底部を構成している。この超音波霧化装置10は、超音波によって源水23を霧化し、霧化液体24を突起部15の先端表面に設けた共振板16から噴霧させ、霧化液体24を超音波振動波に乗せることで噴霧距離を向上させることを特徴としている。また、超音波霧化装置10は、霧化させるための源水23を所定時間に所定量供給(たとえば、点滴供給)することで源水23を霧化し、この霧化液体24を噴霧するようになっている。
【0012】
支持部11は、霧化用ダクト20の底面を構成するとともに、超音波霧化装置10が設置される設備機器の筐体等に取り付けられるためのものである。この支持部11の平面形状は、たとえば円形状や多角形状として構成するとよい。つまり、支持部11の平面形状は、超音波霧化装置10が取り付けられる設備機器に応じて決定すればよいのである。台座12は、霧化用ダクト20内において支持部11に取り付けられており、PZT振動子13を固定するためのものである。この台座12の平面形状は、たとえば円形状や多角形状として構成するとよい。つまり、台座12の平面形状は、支持部11の平面形状と同様に超音波霧化装置10が取り付けられる設備機器に応じて決定すればよいのである。
【0013】
PZT振動子13は、チタン酸ジルコン酸鉛からなる圧電素子であり、正電極端子部17及び負電極端子部18を介してパルス電圧が印加され、発振するようになっている。つまり、PZT振動子13は、パルス電圧が印加されることによって、所定の周波数帯域(一般的な周波数帯域である20kHz〜80kHz)の音波(超音波)を発生する機能を有しているのである。つまり、PZT振動子13の周波数帯域を一般的な周波数帯域とすることによって、この帯域以上の周波数帯域での熱処理等の問題の発生を防止することができる。
【0014】
このPZT振動子13の平面形状は、たとえば円形状や多角形状として構成するとよい。つまり、PZT振動子13の平面形状は、支持部11及び台座12の平面形状と同様に超音波霧化装置10が取り付けられる設備機器に応じて決定すればよいのである。なお、図1では、正電極端子部17及び負電極端子部18が、支持部11及び台座12を貫通し、PZT振動子13に接続されるようになっている場合を例に示しているが、これに限定するものではなく、支持部11及び台座12を貫通しなくてもPZT振動子13に接続されていればよい。
【0015】
共振体14は、PZT振動子13の台座12側とは反対側に取り付けられており、PZT振動子13を保護するとともに、PZT振動子13の発振によって共振するようになっている。つまり、共振体14は、PZT振動子13の発振によって発生する超音波の周波数の一次振動モード(図1で示す破線A)で、共振現象を起こし、PZT振動子13の発振を増幅させるようになっているのである。また、共振体14は、内部空間を有し、この内部空間にPZT振動子13及び台座12を配置するように側面の下端部が支持部11に取り付けられるようになっている。この共振体14の平面形状は、たとえば円形状や多角形状として構成するとよい。つまり、共振体14の平面形状は、PZT振動子13の平面形状に応じて決定すればよいのである。
【0016】
なお、共振体14は、金属で構成されていればよく、材質を特に限定するものではない。つまり、共振体14の材質は、超音波霧化装置10の用途、特に源水23に応じて決定するとよい。源水23に薬剤(たとえば、H22(過酸化水素水)等)を用いることで、超音波霧化装置10を殺菌用として使用するのであれば、共振体14をその薬剤による腐食を防止できるような金属材料(たとえば、ニッケル(Ni)と銅(Cu)の合金等)で構成するとよい。そうすれば、薬剤による腐食の進行を防止することができる。
【0017】
突起部15は、図1に示すように縦断面形状が台形状として構成されており、共振体14の上側表面(PZT振動子13が取り付けられている側の反対側の表面)に設けられている。また、図1では、突起部15の先端表面には、共振板16が設けられている。突起部15は、共振体14と同様に金属製であればよく、材質を特に限定するものではない。なお、突起部15と共振体14とを別体として形成し、突起部15を共振体14に取り付けるようにしてもよく、突起部15と共振体14とを一体的に形成してもよい。また、突起部15を共振体14と別体として構成する場合には、共振体14からの共振波を通過させるような粘性材で突起部15を共振体14に取り付けるとよい。
【0018】
突起部15は、共振体14で発生した共振波が内部を固体伝搬する過程で、この共振波の一次共振モード(破線B)により複数回の「腹」と「節」が出現するようになっている。つまり、突起部15の固有振動数を共振体14で増幅された超音波(共振波)の一次振動モード(破線A)に一致させることによって、突起部15内部を固体伝搬する過程で超音波加振力を更に増幅させるようになっているのである。また、突起部15の高さを、この突起部15の固有振動数の一次共振モード(破線B)の「腹」と一致するように決定しているので、突起部15の先端表面に設けた共振板16で源水23を効率よく霧化し、噴霧することが可能になる。
【0019】
さらに、図1に示すように、突起部15の先端表面に共振板16を設けている場合にあっては、突起部15の内部を固体伝搬した超音波の一次共振モード(破線B)で共振現象を起こし、突起部15の内部を固体伝搬してきた超音波を更に増幅させることができる。したがって、共振板16の表面で効率よく源水23を霧化させることができるのである。なお、共振板16も、超音波を通過させるような粘性材を使用して突起部15の先端表面に取り付けるとよい。また、共振板16を設けずに、突起部15の先端表面から霧化液体24を直接噴霧させるようにしてもよい。
【0020】
図1に示すように、突起部15の縦断面形状が台形状となるように突起部15の全体形状を構成するとよい。つまり、突起部15の先端表面に共振波の一次共振モード(破線B)が固体伝搬するような形状で突起部15を構成するとよいのである。このように、突起部15の縦断面形状を台形状とするには、たとえば突起部15の全体を円錐台形状や、角錐台形状(三角錐台や四角錐台、六角錐台等)として構成すればよい。また、突起部15の底面の形状は、共振体14の平面形状(特に、突起部15を取り付ける表面の平面形状)に応じて決定するとよい。
【0021】
共振板16は、上述したように突起部15の先端表面に取り付けられており、突起部15の内部を固体伝搬してきた超音波によって共振するようになっている。つまり、共振板16は、突起部15から伝搬した超音波の一次共振モード(破線B)で、共振現象を起こすようになっているのである。この共振板16の平面形状は、たとえば円形状や多角形状として構成するとよい。つまり、共振板16の平面形状は、突起部15の先端表面の平面形状に応じて決定するとよい。なお、共振板16は、金属で構成されていればよく、材質を特に限定するものではない。つまり、共振板16の材質は、共振体14と同様に超音波霧化装置10の用途、特に源水23に応じて決定するとよい。
【0022】
霧化用ダクト20は、筒状に構成されており、超音波導波管として機能するようになっている。そして、内側に、台座12、共振体14、PZT振動子13、突起部15及び共振板16が配置されている。PZT振動子13で発生する超音波によって、共振体14及び突起部15の全体も加振しており、この超音波による振動波(以下、単に超音波振動波と称する)が共振体14及び突起部15の全体からも放射されている(図3で示す破線D)。したがって、霧化用ダクト20内には、超音波振動波が伝搬していることになり、霧化用ダクト20の内径及び霧化用ダクトの高さ(深さ)で決定する共鳴現象により、霧化用ダクト20内に伝搬した超音波振動波が更に増幅される。
【0023】
このように、霧化用ダクト20を装着することによって、霧化用ダクト20の外部からの空気の伝搬がなくなり、超音波振動波の減衰を低減することができる。したがって、霧化用ダクト20を設けることによって、共振板16の表面(共振板16を設けていない場合にあっては突起部15の先端表面)から発生する超音波振動波の減衰を低減することができ、霧化液体24の噴霧距離を長くすることが可能となる。なお、霧化用ダクト20の内径及び霧化用ダクト20の高さは、超音波振動波による共鳴現象を考慮して決定するとよい。
【0024】
また、この超音波霧化装置10には、霧化用タンク21と、送風ファン25とが設けられている。この霧化用タンク21及び送風ファン25は、霧化用ダクト20に取り付けられている。霧化用タンク21には、源水23を共振板16の表面に供給するための流水口22が設けられている。この流水口22の液体出口は、共振板16の表面の近傍に配置されている。また、霧化用タンク21には、源水23を共振板16の表面に所定量供給できるように弁装置が備えられている(図3で詳細に説明する)。
【0025】
送風ファン25は、共振板16の表面の近傍に配置されており、霧化液体24を遠くに飛ばすための機能を有している。つまり、送風ファン25から吹き出される流体(空気)の流れに霧化液体24を乗せて、霧化用ダクト20内を浮遊させることができるのである。この超音波霧化装置10では、霧化液体24の噴霧距離を長くすることが可能であるが、霧化用ダクト20及び送風ファン25を設けることで、更に噴霧距離を長くすることが可能になっている。なお、送風ファン25は、霧化液体24を飛ばすことができるものであればよく、種類を特に限定するものではない。つまり、送風ファン25は、取り付けられる霧化用ダクト20の形状に応じて種類(たとえば、軸流ファンや遠心ファン等)を決定するとよい。
【0026】
ここで、霧化液体24の噴霧について簡単に説明する。上述したように、PZT振動子13から発生する超音波の一次振動モード(破線A)によって、共振体14が共振現象を起こす。共振体14の共振現象により、一次共振モード(破線B)の共振周波数を有する共振波が共振体14から発生する。そして、この共振波が突起部15の内部を固体伝搬し、共振板16に伝搬する。このとき、共振板16の表面には、霧化用タンク21から源水23が流水口22を介して所定量供給されている。この源水23は、共振板16に伝搬した共振波によって霧化され、噴霧される。
【0027】
この噴霧された霧化液体24は、霧化用ダクト20が設けられていなくても、噴霧されることになるが、霧化用ダクト20を設けることで、霧化用ダクト20内に伝搬している超音波振動波によって噴霧距離を向上させることができる。また、共振板16の表面の近傍には、送風ファン25が設けられているので、この送風ファン25から供給される空気によって霧化液体24の噴霧距離を更に向上させることが可能になっている。このような原理に基づいて霧化液体24を噴霧しているのである。
【0028】
この超音波霧化装置10では、突起部15の高さを突起部15の固有振動数の一次共振モード(破線B)の「腹」と一致するようにしているので、共振体14で発生した共振波が突起部15に伝搬し、この突起部15の内部を共振波が固体伝搬することによって、突起部15の先端表面からは増幅された共振波が発生することになる。また、突起部15の先端表面に共振板16を設けているので、この共振板16の共振現象によって、突起部15を固体伝搬してきた共振波を更に増幅させることができる。
【0029】
すなわち、この実施の形態に係る超音波霧化装置10では、PZT振動子13から発生した超音波が共振体14で増幅され、この共振波の一次共振モード(破線B)により複数回の「腹」と「節」が出現し、このうちの「腹」と一致する位置で突起部15の高さを決定するために共振体14で発生した共振波が突起部15の内部を固体伝搬する過程で更に増幅され、突起部15の先端表面には、突起部15の内部を固体伝搬してきた共振波と共振する共振板16を設けているために、共振波が更に増幅されるようになっているので、源水23を効率よく霧化することが可能になっている。
【0030】
また、この実施の形態に係る超音波霧化装置10は、圧電素子を構成するPZT振動子13が入手し易い20kHz〜80kHz程度の周波数帯域を発生するものでよく、共振体14、突起部15及び共振板16の共振現象を利用することで振幅も大きくなり、発生する超音波の音圧レベルも高いというメリットがある。さらに、PZT振動子13の発生周波数が20〜80kHzと比較的低いために、この帯域以上の周波数帯域で発生するPZT振動子13の熱処理等の問題も生じないために、PZT振動子13を常に源水23で濡らしておく必要がない。したがって、源水23を供給できない等の場合が発生しているときであっても、PZT振動子13の熱による損傷を防止することができる。
【0031】
図2は、PZT振動子13をバイモルフ(複合板)構造とした状態を示す主要部の縦断面図である。図2に基づいて、バイモルフ構造としたPZT振動子13から発生する超音波の周波数の一次振動モード(図2で示す破線C)について説明する。この超音波霧化装置10では、PZT振動子13をバイモルフ型の圧電素子として機能させている。つまり、厚み方向に分極されたPZT振動子13a及びPZT振動子13bを積層させ、貼り合わせて、パルス電圧を印加するようになっているのである。
【0032】
PZT振動子13をバイモルフ構造としてパルス電圧を印加すると、一方の圧電素子(PZT振動子13a)は縮み、他方の圧電素子(PZT振動子13b)は伸び、全体としては変位が大きくなる。つまり、PZT振動子13a及びPZT振動子13bのそれぞれにパルス電圧を印加すると、伸縮方向を逆にすることができ、全体として大きな変位が発生するのである。その結果、PZT振動子13全体から発生する超音波の周波数の一次振動モード(破線C)が大きくなるである。
【0033】
図3は、超音波霧化装置10の制御例を示す説明図である。図3に基づいて、超音波霧化装置10の制御の一例について説明する。制御コントロール部30は、周波数発信回路部31からパルス電圧を周期的に繰り返し発信させ、正電極端子部17及び負電極端子部18を介してPZT振動子13に印加する。そうすると、PZT振動子13は、発振し、所定の周波数帯域の超音波を発生する。このPZT振動子13の発振で共振体14の全体が共振現象を起こし、共振体14の全体から共振波が発生する。この共振波は、突起部15の内部を固体伝搬する過程で超音波加振力を更に増幅されて突起部15の先端表面に到達する。
【0034】
一方、制御コントロール部30は、設定されている所定の時間や利用者から要求された所定の時間に基づいて、霧化用タンク21から所定量の源水23を共振板16の表面に供給するために弁制御部33に霧化用タンク21に設けられている弁装置の開閉を指示する。弁制御部33は、制御コントロール部30からの指示に基づいて、弁装置の開閉を制御し、源水23を共振板16の表面に所定量供給する。そして、突起部15の先端表面に到達した共振波は、共振板16で更に増幅されることで、この共振板16の表面に供給された源水23を霧化する。
【0035】
さらに、超音波霧化装置10には、超音波導波管として機能する霧化用ダクト20が設けられているために、霧化用ダクト20内には、共振体14、突起部15及び共振板16の共振現象、霧化用ダクト20の共鳴現象により超音波振動波(図3で示す破線D)が繰り返し強力に発生していることになる。また、霧化用ダクト20は、外部からの空気の伝搬をなくし、超音波振動波(破線D)の減衰を低減している。すなわち、共振体14、突起部15及び共振板16の全体から発生した超音波振動波(破線D)が粗密を繰り返しながら、霧化用ダクト20内を伝搬することになるのである。
【0036】
この超音波振動波(破線D)に、霧化液体24が乗ることで、霧化液体24の噴霧距離を長くすることができる。霧化用ダクト20に設けることによって、共振体14、突起部15及び共振板16の全体から発生する超音波振動波(破線D)の減衰を低減することができ、霧化用ダクト20のダクト長を長くしても、超音波振動波(破線D)が長い距離でも伝搬することになる。また、制御コントロール部30は、霧化液体24の噴霧距離を長くするために、送風ファン制御部32に送風ファン25の駆動を指示する。したがって、霧化液体24は、この送風ファン25の駆動によって、霧化用ダクト20の外部まで噴霧されることになる。
【0037】
したがって、超音波霧化装置10が設置される設備機器に応じて、霧化用ダクト20の形状を変形させれば、送風ファン25との併用によって、霧化液体24を供給させたい位置に関わらず所定量の霧化液体24を供給させることができる。すなわち、超音波霧化装置10が設置される設備機器の用途に応じて、霧化用ダクト20及び送風ファン25の着脱を決定するとよいのである。なお、PZT振動子13を単板構造ではなく、図2で示したようなバイモルフ構造とすれば、更に強力な超音波を発生することができる。
【0038】
この実施の形態に係る超音波霧化装置10を設置可能な設備機器としては、たとえばエアコンや冷凍装置等の空気調和装置の室内ユニットや、ネブライザ(吸入器)、脱臭器、噴霧器、加湿器、冷蔵庫等がある。すなわち、源水23を霧化して噴霧させる必要性のある設備機器であれば、超音波霧化装置10を設置することができるのである。また、室内ユニットに超音波霧化装置10を備える場合には、室内ユニット内の殺菌用途に使用することができ、冷蔵庫に超音波霧化装置10を備える場合には、庫内の食品を乾燥させないように使用することもできる。なお、超音波霧化装置10を設置する設備機器に応じて、霧化用ダクト20を設置すればよい。
【0039】
また、実施の形態では、圧電素子としてPZT振動子13を一例として説明したが、これに限定するものではない。たとえば、セラミック型の圧電素子や高分子型の圧電素子等の圧電素子であってもよい。また、霧化用ダクト20は、超音波導波管として機能させればよく、円筒状や角柱状に構成し、内部を円柱状にくり抜くようにしてもよい。また、超音波霧化装置10が設置される設備機器に応じて、霧化用ダクト20の形状を変形させたり、内径を小さくしたりするとよい。
【0040】
図3では、制御コントロール部30と、周波数発信回路部31と、送風ファン制御部32と、弁制御部33とがそれぞれ別に設けられている場合を例に説明したが、これに限定するものではない。たとえば、制御コントロール部30と、周波数発信回路部31と、送風ファン制御部32と、弁制御部33とを1つの制御部として機能させてもよい。また、制御コントロール部30、送風ファン制御部32及び弁制御部33は、マイクロコンピュータ等で構成するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態に係る超音波霧化装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】PZT振動子をバイモルフ構造とした状態を示す主要部の縦断面図である。
【図3】超音波霧化装置の制御例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10 超音波霧化装置、11 支持部、12 台座、13 PZT振動子、13a PZT振動子、13b PZT振動子、14 共振体、15 突起部、16 共振板、17 正電極端子部、18 負電極端子部、20 霧化用ダクト、21 霧化用タンク、22 流水口、23 源水、24 霧化液体、25 送風ファン、30 制御コントロール部、31 周波数発信回路部、32 送風ファン制御部、33 弁制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波によって液体を霧化する超音波霧化装置であって、
圧電素子で構成され、所定の周波数帯域の超音波を発生する振動子と、
前記振動子に取り付けられ、前記振動子の振動と共振することで共振波を発生する共振体と、
前記共振体の前記振動子側とは反対側に取り付けられ、前記共振体からの共振波が内部を固体伝搬し、この共振波と固有振動数を一致させた突起部とを備えた
ことを特徴とする超音波霧化装置。
【請求項2】
霧化させる液体である源水を前記突起部の先端表面に所定量供給するための弁装置を備えた霧化用タンクと、
前記弁装置の開閉を制御する制御コントロール部とを設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波霧化装置。
【請求項3】
前記突起部の先端表面を前記突起部の固有振動数の一次共振モードの腹と一致させるように突起部の高さを決定した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波霧化装置。
【請求項4】
前記振動子、前記共振体及び前記突起部を内側に配置する霧化用ダクトを設けた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項5】
前記突起部の先端表面の近傍に送風ファンを設けた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項6】
前記突起部の先端表面に、前記突起部を固体伝搬した共振波と共振する共振板を設けた ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項7】
前記振動子、前記共振体、前記突起部及び前記共振板を超音波を通過させる粘性材により取り付けている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項8】
前記振動子を複合板構造とした
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれかに記載の超音波霧化装置を備えた
ことを特徴とする設備機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−207054(P2008−207054A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43545(P2007−43545)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】