超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器
【課題】広い範囲で液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図るようにした超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器を提供する。
【解決手段】超音波霧化装置100は、圧電素子11が設けられているランジュバン式の超音波振動子10と、超音波振動子10より広い面積を有し、超音波振動子10の一端部にとりつけられ、超音波振動子10の共振振動数と一致した振動数で振動し、超音波を発生する振動板13と、を備え、振動板13に液体を供給することで、液体を霧化させて放射する。
【解決手段】超音波霧化装置100は、圧電素子11が設けられているランジュバン式の超音波振動子10と、超音波振動子10より広い面積を有し、超音波振動子10の一端部にとりつけられ、超音波振動子10の共振振動数と一致した振動数で振動し、超音波を発生する振動板13と、を備え、振動板13に液体を供給することで、液体を霧化させて放射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を空気中に霧化放射する超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子を利用した超音波発生装置が存在する。このような超音波発生装置は、一般的に、圧電素子に電圧を印加することで圧電素子を発振させ、一定方向の振動の共振周波数を利用することで、特定の周波数を音響発振するようになっている。こういった超音波の振動を利用して液体を霧化させる、ホーン構造を有する超音波霧化装置は報告されている。
【0003】
そのようなものとして、「高周波電圧を印加することによって振動を発生する振動子と、前記振動子に一端部が接続され、前記振動子の振動振幅を拡大し、振動出力部から液体霧化用の振動を出力するホーンと、前記ホーンに供給された液体をホーン先端部に留める液溜ホルダとを備えた、超音波霧化装置」がある(たとえば、特許文献1参照)。この超音波霧化装置では、液溜ホルダに分配されてくる液体が、定められた液体分配手段により均等に液溜ホルダ内に導入されるようになっている。結果として、アルコールといった比較的浸透性の高い液体だけでなく、水といった液体も均一な霧化が可能となっている。
【0004】
また、上記と同様の霧化構成で、さらに振動子に印加する電圧を調整することができる回路を導入した超音波霧化装置がある(たとえば、特許文献2参照)。この超音波霧化装置では、振動子に印加する電圧を調整することで、ホーンの振動振幅の調整を可能とし、それにより霧化範囲の調節を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−95673号公報(第1図)
【特許文献2】特開平8−215621号公報(第3、4頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の超音波霧化装置では、以下のような課題が存在している。
(1)霧化面積が小さいという課題
ホーンを備えた超音波振動子構造の場合、先端部のみの振動が大きな振幅を得る構造となっており、適切な霧化状態による霧化量を得る場所がホーン先端部のみに限られていた。結果的に霧化範囲が狭くなり、供給できる霧化量は少ないものになってしまっていた。
【0007】
(2)不純物が安定的な振動に及ぼしてしまう課題
ホーンの先端部は、常に液体に接触している。そのために、霧化させる対象が一般水道水の場合は、水に含まれるカルシウム成分が前記ホーンの先端部分に付着し、ホーンの先端部分の重量が増すといった現象を引き起こす。それによって、ホーンの先端部分が振動しなくなり、結果的に液体を霧化しなくなってしまう。また、一般水道水以外の場合では、水分に含まれる塩素や水中の不純物がホーンの先端部分に付着して、同様に振動出力を低下させ、液体の霧化が出来なくなってしまう。加えて、振動出力が低下すると、液体を安定的に霧化できなくなり、無駄な液体の供給となってしまう。
【0008】
以上のように、従来の超音波霧化装置の構成では、広い霧化範囲での安定的な霧化量の供給が困難であった。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、広い範囲で液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図るようにした超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超音波霧化装置は、圧電素子が設けられているランジュバン式の超音波振動子と、前記超音波振動子より広い面積を有し、前記超音波振動子の一端部にとりつけられ、前記超音波振動子の共振振動数と一致した振動数で振動し、超音波を発生する振動板と、前記振動板の前記超音波振動子が取り付けられていない面側と対向位置に配置され、前記振動板に供給される液体を保持し、保持している液体によって前記振動板との間に表面張力が発生する液体保持用フィルタと、を備え、液体保持フィルタに液体を供給することで、前記液体を霧化させて放射するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る超音波霧化装置によれば、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る超音波霧化装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】振動板の振動モードを説明するための説明図である。
【図3】振動板を平面視したとき長方形となるときの振動モードを説明するための説明図である。
【図4】振動板を平面視したとき円形となるときの、振動モードを説明するための説明図である。
【図5】超音波霧化装置に液体保持用フィルタを用いないで液体を霧化放射するための説明図である。
【図6】霧化範囲を広範囲にするために、振動板と液体保持用フィルタを扇形円弧形状に曲げたときの霧化の説明図である。
【図7】超音波振動子及び振動板の共振を説明するためのグラフである。
【図8】液体保持用フィルタの開孔の径と、霧化されて放射される水径及び超音波振動子の振動数と、の関係を示すグラフである。
【図9】超音波霧化装置で霧化する液体を殺菌液とした場合に、手指を殺菌する時間と殺菌力の関係を示すグラフである。
【図10】液体保持用フィルタの開孔の径(フィルタ径)と殺菌力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波霧化装置100の概略構成を示す構成図である。図1に基づいて、この超音波霧化装置100の構成を説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際とは異なる場合がある。
【0014】
図1に示すように超音波霧化装置100は、超音波振動子10と、圧電素子11と、振動板13と、を少なくとも有している。なお、点線12は超音波振動子10の内部で発生する縦振動の振動モードを視覚化して表したものである。そして、振動モードの腹が超音波振動子10の端部にあたるように設定されている。また、図1では、超音波振動子10、圧電素子11、及び、振動板13が、筐体1内に搭載されている場合を例に示している。さらに、点線55は、振動板13で発生する振動の「腹」と「節」を視覚化して表したものである。
【0015】
超音波振動子10はランジュバン式の振動子である。圧電素子11はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で構成されている。この圧電素子11は超音波振動子10に設けられている。振動板13は、超音波振動子10の端部(図1では下端部)に固着された任意形状の板材で構成されている。図1にあるように振動板13は、超音波振動子10との固定点以外には接触することはないように配置されている。また、振動板13は、超音波振動子10の端部の面積よりも広い面積を有しているものとする。
【0016】
超音波霧化装置100は、更に液体保持用フィルタ14を有している。この液体保持用フィルタ14は、振動板13の超音波振動子10が固着していない方の面側(図1では下側面)に、振動板13に対向するように配置されている。また液体保持用フィルタ14には、任意数の開孔16が均一配列して成型されている。この開孔16は、任意の径で液体保持用フィルタ14に成型されている。液体保持用フィルタ14は、不織布系材料又は発泡材料から成型されており、たとえば1mm以下の厚みを有している。液体保持用フィルタ14の外周端部30は、筐体1の内面壁と接触固定される位置に配置されている。
【0017】
図1では、液体保持用フィルタ14に液体を供給する液供給装置15が筐体1内に搭載されている状態を例に示している。この液供給装置15は、液体保持用フィルタ14に液体を供給できる位置に設置してあればよく、筐体1内への搭載に限定するものではない。また、液供給装置15の設置数は1つに限定するものではなく、任意数でよい。
【0018】
次に、超音波霧化装置100の動作について説明する。圧電素子11に電圧が印加されることで超音波霧化装置100は動作を開始する。圧電素子11は電圧が印加されると振動する。その振動が超音波振動子10に伝わり、超音波振動子10が振動する(点線12)。この超音波振動子10の振動が振動板13に伝播して振動板13が振動する(点線55)。振動板13の振動を受けて、液体保持用フィルタ14に保持されている液体が霧化されて、液体保持用フィルタ14の開孔16から外部へと放射される。
【0019】
超音波振動子10及び振動板13の共振振動と霧化の関係について説明する。超音波振動子10及び振動板13は、各々が形状、材質に依存した固有振動数を有している。超音波振動子10及び振動板13の固有振動数は、一致するように材質、形状を定めることができる。そして、その一致した固有振動数で振動させることによって超音波振動子10及び振動板13が共振振動を起こす。この共振振動により、振動板13には「腹」と「節」をともなう粗密波が発生する。それにより、振動板13の全面から強力な超音波が一様に放射される。この超音波を受けて液体保持用フィルタ14に保持されている液体が霧化される。
【0020】
液体の供給と保持に関して説明する。液体は、液供給装置15から一定量供給されるように設定されている。また液供給装置15は、電磁ポンプ(図示せず)を設けており、液体を液供給装置15に自動的に供給可能となっている。液供給装置15から供給された液体を保持している液体保持用フィルタ14と振動板13は、液体の表面張力により、自然に張り付いた状態となっている。また、液体保持用フィルタ14に形成されている開孔16も、表面張力により液体の保持が可能となっている。開孔16に保持されている液体は、振動板13の振動を受けて発生する超音波によって、開孔16の外部に放射される。
【0021】
図2は、振動板13の振動モードについて説明したものである。超音波霧化装置100で適用することができる振動モードは、振動板13の中心に固着した超音波振動子10を境にして、振動板13を平面視した面において左右上下方向均等に振動(波)が発生し、位相条件も左右上下方向均等である。それにより、振動板13の振動面に、疎の部分(節)と密の部分(腹)からなる疎密波が生じる。
【0022】
図2では、任意形状に成型できる振動板13が、正方形(振動板13を平面視した状態において正方形)の場合の例を示したものである。このように振動板13を成型した場合、振動板13の振動は図2に示すような格子状のモードとなって現れる。格子状のモードには、(A)と(B)の2種類があり、どちらの振動モードも超音波霧化装置100に適用することができる。(A)は振動板13を平面視したときに各辺L1とL2に対して斜め方向の格子状の振動モードを、(B)は振動板13を平面視したときに各辺L1とL2に対して平行に発生する格子状の振動モードを示している。
【0023】
格子状の振動モードは、振動板13を平面視した面に粗密波を形成する。疎の部分(節)と密の部分(腹)が非常に多く、且つ振動板13を平面視した面の全体に均一に発生する格子状の振動モードは、高い振動数帯で発生する。
【0024】
その他に、格子状の振動モードの発生条件は、以下にあげる要因で決定される。
(1)振動板形状を決める一辺の寸法と振動板の厚み。
(2)振動板の材料である、アルミやSUSなどの金属板の仕様から決定される弾性係数とヤング率。
【0025】
図7は、超音波振動子10及び振動板13の共振を説明したものである。図7では、縦軸が尖鋭度Qを、横軸が周波数を表している。この尖鋭度Qは、音圧レベルを表す指標であり、大きな値であるほど音圧レベルが高いことを示している。また、図7では、曲線(ア)が振動板13の固有振動特性を、曲線(イ)が超音波振動子10の固有振動特性を、曲線(ウ)が振動板13及び超音波振動子10の共振周波数の特性を示している。
【0026】
図7に示すように、超音波振動子10と振動板13の固有振動数を一致するように設定し、その固有振動数で振動させると超音波振動子10と振動板13が共振し、尖鋭度Qが鋭くなることがわかる。これは、超音波振動子10と振動板13を共振させることで、より強い音圧が振動板から放射されることを示している。つまり、振動板13と超音波振動子10を共振させることにより、強力に液体の霧化することが可能となることを示している。
【0027】
図8は、液体保持用フィルタ14の開孔16の径と、霧化されて放射される水径及び超音波振動子10の振動数と、の関係を示すグラフである。図8では、縦軸が液体保持用フィルタ14に成型した開孔16の径(mm)を、横軸上段が霧化放射される水径(mm)を、横軸下段が超音波振動子10の振動数(kHz)をそれぞれ表している。
【0028】
図8から、開孔16の径と霧化時の水径は一次の相関があることがわかる。また霧化時の水径と超音波振動子10の振動数も、相関関係をもっている。たとえば、超音波振動子10を20kHzで振動させると霧化時の水径は約0.1mm、50kHzで振動させると霧化時の水径は約0.001mmとなる。従って開孔16の直径は、霧化時の水径に合わせて0.001mm〜0.1mmに設定して成形する。このように霧化される水径と開孔16の径を略一致させることで、液体を均一に霧化して放射することが可能となる。
【0029】
図9は、霧化する液体が殺菌機能を有する場合、殺菌時間(sec)と殺菌力の関係を示している。ここでは、超音波霧化装置100が霧化放射する液体をたとえばメチルアルコール70%程度の水溶液とし、供給する量を1cc〜3ccとした場合を想定している。また図9では、横軸は手指を殺菌する時間(sec)を、縦軸は手指の殺菌がどの程度されているかを示す指標となる殺菌力(%)をそれぞれ表している。振動板13から発せられる超音波の出力が充分であれば、殺菌液は瞬間的に霧化放射することが出来ると考えてもよい。振動板13の全面から手指に霧化放射すると、2秒以内にほぼ100%の殺菌が可能となることがわかる。
【0030】
殺菌すべき対象物が人間の手や指であるとき、振動板13の寸法を、両手指を並べた寸法と同等以上の寸法(一辺がたとえば20cm〜25cm以内の正方形)とすることで、両手指を一度に殺菌することができる。
【0031】
図10は、液体保持用フィルタの開孔16の径と殺菌力の関係を示すものである。図10では、横軸は液体保持用フィルタの開孔16の径(mm)を、縦軸は殺菌がどの程度されているかを示す指標となる殺菌力(%)をそれぞれ表している。開孔16の径が大きすぎると、霧化された液体の径も大きくなり、手指のシワへの侵入が困難となる。それにより殺菌力が減少する。またフィルタ径が小さすぎても殺菌力が減少する。このグラフから、手指を殺菌するためには、液体保持用フィルタ14の開孔16の径は0.1mmが最適であるということがわかる。
【0032】
その他に、以下のようなことが可能となる。
(1)殺菌液量の最適化と無駄な殺菌液の削減。
(2)超音波振動子駆動時間の削減による消費電力の削減。
【0033】
以上のように、実施の形態1に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化する事ができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器(たとえば殺菌器、加湿器、掃除機等)に備えれば、同様に広い霧化範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能となる。なお、実施の形態1では、霧化する液体として水、殺菌水を例に挙げたが、それに限定するものではなく、超音波霧化装置100の用途に応じて決定すればよい。
【0034】
実施の形態2.
図3は、振動板13を平面視したときの形状が長方形のときの振動モードの様子を示したものである。図4は、振動板13を平面視したときの形状が円形の振動板の振動モードの様子を示したものである。図3及び図4に基づいて、実施の形態2に係る超音波霧化装置の特徴事項について説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同一部分には同一符号とし、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0035】
図3に示すように、長方形の振動板13の対角線の交わる位置に超音波振動子10を固着する。たとえば、短辺と長辺の長さの関係は1対1.5〜3となる場合、図3に示すように振動モードは、梯子状の分割振動モードとなる。
【0036】
この振動板構造を超音波霧化装置100に適用し、殺菌液を用いた殺菌器の殺菌液として使うと、長い振動板構造を有効利用して、キッチンの「まな板」や「野菜」などの殺菌への応用が考えられる。また、霧化器として利用する場合は、大きな部屋への加湿空気供給に応用可能である。
【0037】
図4に示すように、円形の振動板13の中心位置に超音波霧化装置100を固着する。そうすると、振動板13の中心に固着した超音波振動子10を中心とした振動モードが、円形の振動板13全面に発生する。図4において点線は、振動モードの「腹」の部分を示している。
【0038】
円形の振動板13の場合も殺菌器に適用することができる。たとえば、「果物」に殺菌することに利用することが考えられる。勿論、一般的な殺菌装置への応用も考えられる。
【0039】
以上のように、実施の形態2に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器に備えれば、同様に広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【0040】
実施の形態3.
図5は、振動板13自体で液体を霧化する様子を示している。図5に基づいて、実施の形態3に係る超音波霧化装置の特徴事項について説明する。なお、実施の形態3では、実施の形態1及び実施の形態2と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1及び実施の形態2との相違点を中心に説明するものとする。
【0041】
振動板13に、液体の行き来が可能な大きさの細孔50を形成する。振動板13に発生する振動(点線55)の腹の部分に一致するように、細孔50を成型する。細孔50には、液供給装置15の液供給口56が振動板厚みの略半分の厚みの位置に設置されており、細孔50に任意量の液体の供給を行なうようになっている。
【0042】
細孔50に供給された液体は、表面張力により細孔50内または細孔50近傍で保持される。超音波振動子10の振動が振動板13に伝播し、振動板13は振動する。細孔50を含む振動板全体が均一位相条件で振動して超音波が発生する。それに伴い、細孔50に保持されていた水分が一挙に放出される。この構造では、細孔の寸法と霧化水径は比例関係があり、たとえば、細孔50の径が0.1mmでは、0.1mm前後の水径を有する霧が放射される。
【0043】
液体は振動板13の振動時に全量が霧化放出されるので、細孔50から一度放出した液体を再度、液供給装置15から細孔50に供給するまでは、細孔50内部の水分は空の状態となる。これにより、液体に含まれるカルシウム又はカルキの影響で、細孔50が塞がれる問題は発生しない。よって、常に安定した霧化供給が可能となる。なお、図5では液体保持用フィルタ14を図示していないが、液体保持用フィルタ14を使用すれば、液体を更に効率よく保持できることは言うまでもない。
【0044】
以上のように、実施の形態3に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器に備えれば、同様に広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【0045】
実施の形態4.
図6は、振動板13を霧化方向に対して任意角度を有する扇形円弧状に成型した振動板を有している場合に、超音波霧化装置で霧化放射した時の様子を示したものである。図6に基づいて、実施の形態4に係る超音波霧化装置の特徴事項について説明する。なお、実施の形態4では、実施の形態1〜実施の形態3と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1〜実施の形態3との相違点を中心に説明するものとする。
【0046】
振動板13の形状は正方形又は長方形(振動板13を平面視した状態における形状が正方形又は長方形)とする。また、振動板13の振動モードを分割させないために、振動板13は扇形に成型するものとし、その扇型の内角度は120度〜170度の範囲で設定する。液体の供給は、液体保持用フィルタ14で水分を保持してから放射する手段でも、振動板13に直接、液供給口56を形成する手段でも応用が可能である。この円弧形状により、広範囲に液体を霧化して放射することが可能となる。
【0047】
以上のように、実施の形態4に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器に備えれば、同様に広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【0048】
以上、各実施の形態で説明した超音波霧化装置100は、安定した霧化供給が出来ることから、殺菌器に用いるだけに限らず、たとえば掃除機に搭載して埃を凝集させるための補助機能への適用や、塗料噴霧器やさらには洗浄効果といったことへの適用も含んでいる。
【符号の説明】
【0049】
1 筐体、10 超音波振動子、11 圧電素子、12 超音波振動子の振動モード、13 任意形状の振動板、14 液体保持用フィルタ、15 液供給装置、16 開孔、50 細孔、55 振動板の振動モード、56 液供給口、100 超音波霧化装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を空気中に霧化放射する超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子を利用した超音波発生装置が存在する。このような超音波発生装置は、一般的に、圧電素子に電圧を印加することで圧電素子を発振させ、一定方向の振動の共振周波数を利用することで、特定の周波数を音響発振するようになっている。こういった超音波の振動を利用して液体を霧化させる、ホーン構造を有する超音波霧化装置は報告されている。
【0003】
そのようなものとして、「高周波電圧を印加することによって振動を発生する振動子と、前記振動子に一端部が接続され、前記振動子の振動振幅を拡大し、振動出力部から液体霧化用の振動を出力するホーンと、前記ホーンに供給された液体をホーン先端部に留める液溜ホルダとを備えた、超音波霧化装置」がある(たとえば、特許文献1参照)。この超音波霧化装置では、液溜ホルダに分配されてくる液体が、定められた液体分配手段により均等に液溜ホルダ内に導入されるようになっている。結果として、アルコールといった比較的浸透性の高い液体だけでなく、水といった液体も均一な霧化が可能となっている。
【0004】
また、上記と同様の霧化構成で、さらに振動子に印加する電圧を調整することができる回路を導入した超音波霧化装置がある(たとえば、特許文献2参照)。この超音波霧化装置では、振動子に印加する電圧を調整することで、ホーンの振動振幅の調整を可能とし、それにより霧化範囲の調節を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−95673号公報(第1図)
【特許文献2】特開平8−215621号公報(第3、4頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されているような従来の超音波霧化装置では、以下のような課題が存在している。
(1)霧化面積が小さいという課題
ホーンを備えた超音波振動子構造の場合、先端部のみの振動が大きな振幅を得る構造となっており、適切な霧化状態による霧化量を得る場所がホーン先端部のみに限られていた。結果的に霧化範囲が狭くなり、供給できる霧化量は少ないものになってしまっていた。
【0007】
(2)不純物が安定的な振動に及ぼしてしまう課題
ホーンの先端部は、常に液体に接触している。そのために、霧化させる対象が一般水道水の場合は、水に含まれるカルシウム成分が前記ホーンの先端部分に付着し、ホーンの先端部分の重量が増すといった現象を引き起こす。それによって、ホーンの先端部分が振動しなくなり、結果的に液体を霧化しなくなってしまう。また、一般水道水以外の場合では、水分に含まれる塩素や水中の不純物がホーンの先端部分に付着して、同様に振動出力を低下させ、液体の霧化が出来なくなってしまう。加えて、振動出力が低下すると、液体を安定的に霧化できなくなり、無駄な液体の供給となってしまう。
【0008】
以上のように、従来の超音波霧化装置の構成では、広い霧化範囲での安定的な霧化量の供給が困難であった。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、広い範囲で液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図るようにした超音波霧化装置及びそれを備えた設備機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超音波霧化装置は、圧電素子が設けられているランジュバン式の超音波振動子と、前記超音波振動子より広い面積を有し、前記超音波振動子の一端部にとりつけられ、前記超音波振動子の共振振動数と一致した振動数で振動し、超音波を発生する振動板と、前記振動板の前記超音波振動子が取り付けられていない面側と対向位置に配置され、前記振動板に供給される液体を保持し、保持している液体によって前記振動板との間に表面張力が発生する液体保持用フィルタと、を備え、液体保持フィルタに液体を供給することで、前記液体を霧化させて放射するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る超音波霧化装置によれば、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る超音波霧化装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】振動板の振動モードを説明するための説明図である。
【図3】振動板を平面視したとき長方形となるときの振動モードを説明するための説明図である。
【図4】振動板を平面視したとき円形となるときの、振動モードを説明するための説明図である。
【図5】超音波霧化装置に液体保持用フィルタを用いないで液体を霧化放射するための説明図である。
【図6】霧化範囲を広範囲にするために、振動板と液体保持用フィルタを扇形円弧形状に曲げたときの霧化の説明図である。
【図7】超音波振動子及び振動板の共振を説明するためのグラフである。
【図8】液体保持用フィルタの開孔の径と、霧化されて放射される水径及び超音波振動子の振動数と、の関係を示すグラフである。
【図9】超音波霧化装置で霧化する液体を殺菌液とした場合に、手指を殺菌する時間と殺菌力の関係を示すグラフである。
【図10】液体保持用フィルタの開孔の径(フィルタ径)と殺菌力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波霧化装置100の概略構成を示す構成図である。図1に基づいて、この超音波霧化装置100の構成を説明する。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際とは異なる場合がある。
【0014】
図1に示すように超音波霧化装置100は、超音波振動子10と、圧電素子11と、振動板13と、を少なくとも有している。なお、点線12は超音波振動子10の内部で発生する縦振動の振動モードを視覚化して表したものである。そして、振動モードの腹が超音波振動子10の端部にあたるように設定されている。また、図1では、超音波振動子10、圧電素子11、及び、振動板13が、筐体1内に搭載されている場合を例に示している。さらに、点線55は、振動板13で発生する振動の「腹」と「節」を視覚化して表したものである。
【0015】
超音波振動子10はランジュバン式の振動子である。圧電素子11はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で構成されている。この圧電素子11は超音波振動子10に設けられている。振動板13は、超音波振動子10の端部(図1では下端部)に固着された任意形状の板材で構成されている。図1にあるように振動板13は、超音波振動子10との固定点以外には接触することはないように配置されている。また、振動板13は、超音波振動子10の端部の面積よりも広い面積を有しているものとする。
【0016】
超音波霧化装置100は、更に液体保持用フィルタ14を有している。この液体保持用フィルタ14は、振動板13の超音波振動子10が固着していない方の面側(図1では下側面)に、振動板13に対向するように配置されている。また液体保持用フィルタ14には、任意数の開孔16が均一配列して成型されている。この開孔16は、任意の径で液体保持用フィルタ14に成型されている。液体保持用フィルタ14は、不織布系材料又は発泡材料から成型されており、たとえば1mm以下の厚みを有している。液体保持用フィルタ14の外周端部30は、筐体1の内面壁と接触固定される位置に配置されている。
【0017】
図1では、液体保持用フィルタ14に液体を供給する液供給装置15が筐体1内に搭載されている状態を例に示している。この液供給装置15は、液体保持用フィルタ14に液体を供給できる位置に設置してあればよく、筐体1内への搭載に限定するものではない。また、液供給装置15の設置数は1つに限定するものではなく、任意数でよい。
【0018】
次に、超音波霧化装置100の動作について説明する。圧電素子11に電圧が印加されることで超音波霧化装置100は動作を開始する。圧電素子11は電圧が印加されると振動する。その振動が超音波振動子10に伝わり、超音波振動子10が振動する(点線12)。この超音波振動子10の振動が振動板13に伝播して振動板13が振動する(点線55)。振動板13の振動を受けて、液体保持用フィルタ14に保持されている液体が霧化されて、液体保持用フィルタ14の開孔16から外部へと放射される。
【0019】
超音波振動子10及び振動板13の共振振動と霧化の関係について説明する。超音波振動子10及び振動板13は、各々が形状、材質に依存した固有振動数を有している。超音波振動子10及び振動板13の固有振動数は、一致するように材質、形状を定めることができる。そして、その一致した固有振動数で振動させることによって超音波振動子10及び振動板13が共振振動を起こす。この共振振動により、振動板13には「腹」と「節」をともなう粗密波が発生する。それにより、振動板13の全面から強力な超音波が一様に放射される。この超音波を受けて液体保持用フィルタ14に保持されている液体が霧化される。
【0020】
液体の供給と保持に関して説明する。液体は、液供給装置15から一定量供給されるように設定されている。また液供給装置15は、電磁ポンプ(図示せず)を設けており、液体を液供給装置15に自動的に供給可能となっている。液供給装置15から供給された液体を保持している液体保持用フィルタ14と振動板13は、液体の表面張力により、自然に張り付いた状態となっている。また、液体保持用フィルタ14に形成されている開孔16も、表面張力により液体の保持が可能となっている。開孔16に保持されている液体は、振動板13の振動を受けて発生する超音波によって、開孔16の外部に放射される。
【0021】
図2は、振動板13の振動モードについて説明したものである。超音波霧化装置100で適用することができる振動モードは、振動板13の中心に固着した超音波振動子10を境にして、振動板13を平面視した面において左右上下方向均等に振動(波)が発生し、位相条件も左右上下方向均等である。それにより、振動板13の振動面に、疎の部分(節)と密の部分(腹)からなる疎密波が生じる。
【0022】
図2では、任意形状に成型できる振動板13が、正方形(振動板13を平面視した状態において正方形)の場合の例を示したものである。このように振動板13を成型した場合、振動板13の振動は図2に示すような格子状のモードとなって現れる。格子状のモードには、(A)と(B)の2種類があり、どちらの振動モードも超音波霧化装置100に適用することができる。(A)は振動板13を平面視したときに各辺L1とL2に対して斜め方向の格子状の振動モードを、(B)は振動板13を平面視したときに各辺L1とL2に対して平行に発生する格子状の振動モードを示している。
【0023】
格子状の振動モードは、振動板13を平面視した面に粗密波を形成する。疎の部分(節)と密の部分(腹)が非常に多く、且つ振動板13を平面視した面の全体に均一に発生する格子状の振動モードは、高い振動数帯で発生する。
【0024】
その他に、格子状の振動モードの発生条件は、以下にあげる要因で決定される。
(1)振動板形状を決める一辺の寸法と振動板の厚み。
(2)振動板の材料である、アルミやSUSなどの金属板の仕様から決定される弾性係数とヤング率。
【0025】
図7は、超音波振動子10及び振動板13の共振を説明したものである。図7では、縦軸が尖鋭度Qを、横軸が周波数を表している。この尖鋭度Qは、音圧レベルを表す指標であり、大きな値であるほど音圧レベルが高いことを示している。また、図7では、曲線(ア)が振動板13の固有振動特性を、曲線(イ)が超音波振動子10の固有振動特性を、曲線(ウ)が振動板13及び超音波振動子10の共振周波数の特性を示している。
【0026】
図7に示すように、超音波振動子10と振動板13の固有振動数を一致するように設定し、その固有振動数で振動させると超音波振動子10と振動板13が共振し、尖鋭度Qが鋭くなることがわかる。これは、超音波振動子10と振動板13を共振させることで、より強い音圧が振動板から放射されることを示している。つまり、振動板13と超音波振動子10を共振させることにより、強力に液体の霧化することが可能となることを示している。
【0027】
図8は、液体保持用フィルタ14の開孔16の径と、霧化されて放射される水径及び超音波振動子10の振動数と、の関係を示すグラフである。図8では、縦軸が液体保持用フィルタ14に成型した開孔16の径(mm)を、横軸上段が霧化放射される水径(mm)を、横軸下段が超音波振動子10の振動数(kHz)をそれぞれ表している。
【0028】
図8から、開孔16の径と霧化時の水径は一次の相関があることがわかる。また霧化時の水径と超音波振動子10の振動数も、相関関係をもっている。たとえば、超音波振動子10を20kHzで振動させると霧化時の水径は約0.1mm、50kHzで振動させると霧化時の水径は約0.001mmとなる。従って開孔16の直径は、霧化時の水径に合わせて0.001mm〜0.1mmに設定して成形する。このように霧化される水径と開孔16の径を略一致させることで、液体を均一に霧化して放射することが可能となる。
【0029】
図9は、霧化する液体が殺菌機能を有する場合、殺菌時間(sec)と殺菌力の関係を示している。ここでは、超音波霧化装置100が霧化放射する液体をたとえばメチルアルコール70%程度の水溶液とし、供給する量を1cc〜3ccとした場合を想定している。また図9では、横軸は手指を殺菌する時間(sec)を、縦軸は手指の殺菌がどの程度されているかを示す指標となる殺菌力(%)をそれぞれ表している。振動板13から発せられる超音波の出力が充分であれば、殺菌液は瞬間的に霧化放射することが出来ると考えてもよい。振動板13の全面から手指に霧化放射すると、2秒以内にほぼ100%の殺菌が可能となることがわかる。
【0030】
殺菌すべき対象物が人間の手や指であるとき、振動板13の寸法を、両手指を並べた寸法と同等以上の寸法(一辺がたとえば20cm〜25cm以内の正方形)とすることで、両手指を一度に殺菌することができる。
【0031】
図10は、液体保持用フィルタの開孔16の径と殺菌力の関係を示すものである。図10では、横軸は液体保持用フィルタの開孔16の径(mm)を、縦軸は殺菌がどの程度されているかを示す指標となる殺菌力(%)をそれぞれ表している。開孔16の径が大きすぎると、霧化された液体の径も大きくなり、手指のシワへの侵入が困難となる。それにより殺菌力が減少する。またフィルタ径が小さすぎても殺菌力が減少する。このグラフから、手指を殺菌するためには、液体保持用フィルタ14の開孔16の径は0.1mmが最適であるということがわかる。
【0032】
その他に、以下のようなことが可能となる。
(1)殺菌液量の最適化と無駄な殺菌液の削減。
(2)超音波振動子駆動時間の削減による消費電力の削減。
【0033】
以上のように、実施の形態1に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化する事ができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器(たとえば殺菌器、加湿器、掃除機等)に備えれば、同様に広い霧化範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能となる。なお、実施の形態1では、霧化する液体として水、殺菌水を例に挙げたが、それに限定するものではなく、超音波霧化装置100の用途に応じて決定すればよい。
【0034】
実施の形態2.
図3は、振動板13を平面視したときの形状が長方形のときの振動モードの様子を示したものである。図4は、振動板13を平面視したときの形状が円形の振動板の振動モードの様子を示したものである。図3及び図4に基づいて、実施の形態2に係る超音波霧化装置の特徴事項について説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同一部分には同一符号とし、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
【0035】
図3に示すように、長方形の振動板13の対角線の交わる位置に超音波振動子10を固着する。たとえば、短辺と長辺の長さの関係は1対1.5〜3となる場合、図3に示すように振動モードは、梯子状の分割振動モードとなる。
【0036】
この振動板構造を超音波霧化装置100に適用し、殺菌液を用いた殺菌器の殺菌液として使うと、長い振動板構造を有効利用して、キッチンの「まな板」や「野菜」などの殺菌への応用が考えられる。また、霧化器として利用する場合は、大きな部屋への加湿空気供給に応用可能である。
【0037】
図4に示すように、円形の振動板13の中心位置に超音波霧化装置100を固着する。そうすると、振動板13の中心に固着した超音波振動子10を中心とした振動モードが、円形の振動板13全面に発生する。図4において点線は、振動モードの「腹」の部分を示している。
【0038】
円形の振動板13の場合も殺菌器に適用することができる。たとえば、「果物」に殺菌することに利用することが考えられる。勿論、一般的な殺菌装置への応用も考えられる。
【0039】
以上のように、実施の形態2に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器に備えれば、同様に広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【0040】
実施の形態3.
図5は、振動板13自体で液体を霧化する様子を示している。図5に基づいて、実施の形態3に係る超音波霧化装置の特徴事項について説明する。なお、実施の形態3では、実施の形態1及び実施の形態2と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1及び実施の形態2との相違点を中心に説明するものとする。
【0041】
振動板13に、液体の行き来が可能な大きさの細孔50を形成する。振動板13に発生する振動(点線55)の腹の部分に一致するように、細孔50を成型する。細孔50には、液供給装置15の液供給口56が振動板厚みの略半分の厚みの位置に設置されており、細孔50に任意量の液体の供給を行なうようになっている。
【0042】
細孔50に供給された液体は、表面張力により細孔50内または細孔50近傍で保持される。超音波振動子10の振動が振動板13に伝播し、振動板13は振動する。細孔50を含む振動板全体が均一位相条件で振動して超音波が発生する。それに伴い、細孔50に保持されていた水分が一挙に放出される。この構造では、細孔の寸法と霧化水径は比例関係があり、たとえば、細孔50の径が0.1mmでは、0.1mm前後の水径を有する霧が放射される。
【0043】
液体は振動板13の振動時に全量が霧化放出されるので、細孔50から一度放出した液体を再度、液供給装置15から細孔50に供給するまでは、細孔50内部の水分は空の状態となる。これにより、液体に含まれるカルシウム又はカルキの影響で、細孔50が塞がれる問題は発生しない。よって、常に安定した霧化供給が可能となる。なお、図5では液体保持用フィルタ14を図示していないが、液体保持用フィルタ14を使用すれば、液体を更に効率よく保持できることは言うまでもない。
【0044】
以上のように、実施の形態3に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器に備えれば、同様に広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【0045】
実施の形態4.
図6は、振動板13を霧化方向に対して任意角度を有する扇形円弧状に成型した振動板を有している場合に、超音波霧化装置で霧化放射した時の様子を示したものである。図6に基づいて、実施の形態4に係る超音波霧化装置の特徴事項について説明する。なお、実施の形態4では、実施の形態1〜実施の形態3と同一部分には同一符号を付し、実施の形態1〜実施の形態3との相違点を中心に説明するものとする。
【0046】
振動板13の形状は正方形又は長方形(振動板13を平面視した状態における形状が正方形又は長方形)とする。また、振動板13の振動モードを分割させないために、振動板13は扇形に成型するものとし、その扇型の内角度は120度〜170度の範囲で設定する。液体の供給は、液体保持用フィルタ14で水分を保持してから放射する手段でも、振動板13に直接、液供給口56を形成する手段でも応用が可能である。この円弧形状により、広範囲に液体を霧化して放射することが可能となる。
【0047】
以上のように、実施の形態4に係る超音波霧化装置100では、広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。また、このような超音波霧化装置100を設備機器に備えれば、同様に広い範囲に液体を霧化することができ、霧化量の安定供給を図ることが可能になる。
【0048】
以上、各実施の形態で説明した超音波霧化装置100は、安定した霧化供給が出来ることから、殺菌器に用いるだけに限らず、たとえば掃除機に搭載して埃を凝集させるための補助機能への適用や、塗料噴霧器やさらには洗浄効果といったことへの適用も含んでいる。
【符号の説明】
【0049】
1 筐体、10 超音波振動子、11 圧電素子、12 超音波振動子の振動モード、13 任意形状の振動板、14 液体保持用フィルタ、15 液供給装置、16 開孔、50 細孔、55 振動板の振動モード、56 液供給口、100 超音波霧化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が設けられているランジュバン式の超音波振動子と、
前記超音波振動子より広い面積を有し、前記超音波振動子の一端部に取り付けられ、前記超音波振動子の固有振動数と一致した振動数で振動して共振し、超音波を発生する振動板と、
前記振動板の前記超音波振動子が取り付けられていない面側と対向位置に配置され、液体を保持し、保持している液体が前記振動板と接触する液体保持用フィルタと、を備え、
前記液体保持用フィルタが保持している液体を前記振動板によって発生する超音波によって霧化させて放射する
ことを特徴とする超音波霧化装置。
【請求項2】
前記液体保持用フィルタは、
不織布系材料または発泡材料が成型され、複数個の開孔が均一配置され、1mm以下の厚みを有する
ことを特徴とする請求項1記載の超音波霧化装置。
【請求項3】
前記液体保持用フィルタに液体を供給する複数個の液供給装置を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波霧化装置。
【請求項4】
前記液体保持用フィルタの開孔の直径は、0.001mm〜0.1mmの範囲のいずれか一つの開孔径に設定されている
ことを特徴とする請求項3記載の超音波霧化装置。
【請求項5】
圧電素子が設けられているランジュバン式の超音波振動子と、
前記超音波振動子より広い面積を有し、前記超音波振動子の一端部にとりつけられ、前記超音波振動子の固有振動数と一致した振動数で振動して共振し、超音波を発生する振動板と、を備え、
前記振動板には、その形状に応じた振動モードの波長間隔に合わせて液体を保持可能な複数個の細孔が形成されて、前記細孔が液体を保持し、前記液体を振動板によって発生する超音波によって霧化させて放射する
ことを特徴とする超音波霧化装置。
【請求項6】
前記振動板は、
正方形、長方形、又は円形からなり、その形状に応じた振動モードを有し、高次の振動モードの固有振動数で、振動板全面が位相特性が一致した振動モードでピストン駆動する
ことを特徴とする請求項1又は5記載の超音波霧化装置。
【請求項7】
前記振動板は内角度を120度〜170度の範囲とした扇形円弧形態からなる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の霧化装置を備えている
ことを特徴とする設備機器。
【請求項1】
圧電素子が設けられているランジュバン式の超音波振動子と、
前記超音波振動子より広い面積を有し、前記超音波振動子の一端部に取り付けられ、前記超音波振動子の固有振動数と一致した振動数で振動して共振し、超音波を発生する振動板と、
前記振動板の前記超音波振動子が取り付けられていない面側と対向位置に配置され、液体を保持し、保持している液体が前記振動板と接触する液体保持用フィルタと、を備え、
前記液体保持用フィルタが保持している液体を前記振動板によって発生する超音波によって霧化させて放射する
ことを特徴とする超音波霧化装置。
【請求項2】
前記液体保持用フィルタは、
不織布系材料または発泡材料が成型され、複数個の開孔が均一配置され、1mm以下の厚みを有する
ことを特徴とする請求項1記載の超音波霧化装置。
【請求項3】
前記液体保持用フィルタに液体を供給する複数個の液供給装置を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波霧化装置。
【請求項4】
前記液体保持用フィルタの開孔の直径は、0.001mm〜0.1mmの範囲のいずれか一つの開孔径に設定されている
ことを特徴とする請求項3記載の超音波霧化装置。
【請求項5】
圧電素子が設けられているランジュバン式の超音波振動子と、
前記超音波振動子より広い面積を有し、前記超音波振動子の一端部にとりつけられ、前記超音波振動子の固有振動数と一致した振動数で振動して共振し、超音波を発生する振動板と、を備え、
前記振動板には、その形状に応じた振動モードの波長間隔に合わせて液体を保持可能な複数個の細孔が形成されて、前記細孔が液体を保持し、前記液体を振動板によって発生する超音波によって霧化させて放射する
ことを特徴とする超音波霧化装置。
【請求項6】
前記振動板は、
正方形、長方形、又は円形からなり、その形状に応じた振動モードを有し、高次の振動モードの固有振動数で、振動板全面が位相特性が一致した振動モードでピストン駆動する
ことを特徴とする請求項1又は5記載の超音波霧化装置。
【請求項7】
前記振動板は内角度を120度〜170度の範囲とした扇形円弧形態からなる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超音波霧化装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の霧化装置を備えている
ことを特徴とする設備機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−156481(P2011−156481A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20377(P2010−20377)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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