説明

超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法、その製造方法及び検査装置

【課題】超音波顕微鏡に使用される超音波トランスデューサの品質を確実に検査することができる超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法を提供すること。
【解決手段】本発明の検査装置1は、顕微鏡本体3、対物レボルバ4、X−Yステージ5、パソコン6を備える。対物レボルバ4には、対物レンズ12及び超音波プローブ13が螺着される。対物レンズ12を用いて参照板7の光学像データが取得され、超音波プローブ13の超音波トランスデューサ14を用いて参照板7の超音波像データが取得される。光学像データと超音波像データとに基づいて、超音波トランスデューサ14から照射された超音波Sの焦点域におけるビームスポット形状が求められ、ビームスポット形状の歪曲度に基づいて、超音波トランスデューサ14の先端部形状の良否が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物に超音波を照射し、得られた反射波に基づいて被検査物を可視化する超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法、その製造方法及び検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、生体組織の診断を行う装置として、超音波顕微鏡を応用した製品の開発が進められており、高解像度で生体組織の観察が可能なものが実用化されている。光学顕微鏡では生体組織における化学的性質の違いを例えば染色によって区別するのに対し、超音波顕微鏡では物理的性質の違いを無染色で区別することができる。つまり、超音波顕微鏡を用いる場合には、染色を行わなくても生体組織診断を行うことができるといった利点がある。
【0003】
超音波顕微鏡を用いる場合、生体組織などの試料に超音波を照射しその反射波を検出することにより、音響パラメータ(音速、音響インピーダンス、減衰などのパラメータ)を算出して、その算出値に応じた超音波像(音速像、音響インピーダンス像、減衰像など)を表示する。例えば、特許文献1や非特許文献1では、パルス励起型超音波顕微鏡を利用して生体組織の音速像を表示させる装置が開示されている。また、特許文献2では、パルス励起型超音波顕微鏡を利用して生体組織の音響インピーダンス像を表示させる装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−291827号公報
【特許文献2】特開2006−78408号公報
【非特許文献1】「医用超音波:パルス励起型超音波音速顕微鏡」(「超音波TECHNO」VOL.15 No.6(2003.11〜12)(101〜105頁)日本工業出版社発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記パルス励起型超音波顕微鏡において、生体組織診断を的確に行うためには、分解能が高い超音波トランスデューサを使用する必要がある。具体的には、超音波の周波数を上げることで分解能を向上させることができるため、帯域幅50〜105MHzの超音波を照射する超音波トランスデューサが用いられている。このような高周波用の超音波トランスデューサ91としては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)といった高分子系材料からなるフィルムセンサ92を使用したものが実用化されている(図10参照)。この超音波トランスデューサ91において、凹面状に形成された先端面93には、フィルムセンサ92が貼り付けられている。そして、そのフィルムセンサ92から出力される超音波Sが円錐状に収束し、被検査物95の表面で焦点を結ぶようになっている。この焦点域における超音波Sのビーム幅が狭いほど、分解能を高めることができる。このため、例えば、生体組織診断を行うための超音波顕微鏡では、焦点域において超音波Sを10μm程度のビーム幅に収束させている。
【0005】
ところが、超音波トランスデューサ91を製造する際に、凹面状の先端面93の加工精度やフィルムセンサ92の接着ずれ(例えば、未接着部などのシワ)が原因で凸凹が生じると、超音波Sを適切に収束させることができなくなる。この場合、超音波Sのビームスポット形状(指向特性)が理想的形状である円形から歪んでしまい、観察される超音波像がぼけてしまうといった問題が生じる。
【0006】
従来、超音波の指向特性は、ハイドロフォンを用いた測定により把握することが可能である。しかし、市販されているハイドロフォンは、小型の製品でも0.6mm程度であり、超音波顕微鏡における超音波Sの指向特性、すなわち10μm程度のビームスポット形状を正確に測定することは不可能である。従って、製造された超音波トランスデューサ91について、その指向特性の良否を判定し、不良品を排除するといった検査工程は、設けることができなかった。そのため、従来においては結果的に不良品の超音波トランスデューサ91が超音波顕微鏡に装着されてしまうことがあり、この場合には鮮明な超音波像を取得できなくなる。よって、超音波顕微鏡の品質・性能が不安定になるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波顕微鏡に使用される超音波トランスデューサの品質を確実に検査することができる超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法、その製造方法、及び検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波顕微鏡に用いられる超音波トランスデューサの検査方法であって、基準構造物を光学顕微鏡で観察して得た光学像データと、当該基準構造物を超音波顕微鏡で観察して得た超音波像データとに基づいて、前記超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状を求めるステップと、求められたビームスポット形状の歪曲度に基づいて、前記超音波トランスデューサの先端部形状の良否を判定するステップとを含むことを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法をその要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、光学像データと超音波像データとに基づいて、超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状が求められる。このように、解像度が高い光学像データを用いることにより、光学像と同等レベルの解像度でビームスポット形状を正確に求めることができる。このビームスポット形状の理想的な形状は円形であり、超音波トランスデューサの先端部にキズなどの凸凹が生じると、ビームスポット形状が歪む。従って、ビームスポット形状の歪曲度に基づいて、超音波トランスデューサの先端部形状の良否が判定される。この場合、ビームスポット形状の判定結果に基づいて、超音波トランスデューサの不良品を的確に排除することができる。そして、品質がよい超音波トランスデューサを超音波顕微鏡に装着すれば、画像ボケがない鮮明な超音波像を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ビームスポット形状を表示装置に表示するステップを含むことをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ビームスポット形状が表示装置に表示されるので、超音波トランスデューサの品質を視覚を通じて容易に確認することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記基準構造物は、前記超音波顕微鏡における被検査物よりも硬質の材料からなり、微細な透孔を有する部材であることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、基準構造物は、被検査物よりも硬質の材料からなり、微細な透孔を有する部材であるので、光学的及び音響的に可視化が可能である。すなわち、光は基準構造物における透孔を通過しそれ以外の部分では遮断される。また、超音波は基準構造物における透孔を通過しそれ以外の部分では反射される。従って、光学顕微鏡を用いて基準構造物の光学像を取得することができ、超音波顕微鏡を用いて基準構造物の超音波像を取得することができる。そして、その基準構造物の光学像データと超音波像データとを比較することにより、光学像に対する超音波像のボケ度合に応じたビームスポット形状を確実に求めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記超音波トランスデューサの先端部には直径1mm以下の凹面が形成されているとともに、前記凹面上には圧電素子薄膜が設けられていることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明の特徴を有する超音波トランスデューサは、構造的にみて、超音波発生面である先端部の凹面に凹凸が生じやすく、不良品発生率が高くなりやすいが、上記検査方法を適用してビームスポット形状を求めるようにすれば、不良品を排除して良品の超音波トランスデューサのみを選別することができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、超音波顕微鏡に用いられる超音波トランスデューサの製造方法であって、基準構造物を光学顕微鏡で観察して得た光学像データと、当該基準構造物を超音波顕微鏡で観察して得た超音波像データとに基づいて、前記超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状を求めるステップと、求められたビームスポット形状の歪曲度が、あらかじめ定められた許容値を超えない場合に、前記超音波トランスデューサの先端部形状が良好であると判定するステップと、先端部形状が良好であると判定された前記超音波トランスデューサのみを選別するステップとを含むことを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの製造方法をその要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、光学像データと超音波像データとに基づいて、超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状が求められる。このように、解像度が高い光学像データを用いることにより、光学像と同等レベルの解像度でビームスポット形状を正確に求めることができる。このビームスポット形状の理想的な形状は円形であり、そのビームスポット形状の歪曲度に基づいて、超音波トランスデューサの先端部形状の良否が判定される。そして、先端部形状が良好であると判定された超音波トランスデューサのみが選別される。このように選別された品質が良い超音波トランスデューサを超音波顕微鏡に装着することで、安定した品質・性能の超音波顕微鏡を確実に製造することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、光学像データを取得する光学顕微鏡と、超音波トランスデューサからの超音波を二次元走査しながら被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の超音波像データを取得する超音波顕微鏡と、基準構造物を前記光学顕微鏡で観察して得た光学像データと、当該基準構造物を超音波顕微鏡で観察して得た超音波像データとに基づいて処理を行うことで、前記超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状を求める形状算出手段と、求められたビームスポット形状の歪曲度に基づいて、前記超音波トランスデューサの先端部形状の良否を判定する形状良否判定手段とを備えたことを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査装置をその要旨とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、光学顕微鏡を用いて基準構造物の光学像データが取得される。また、超音波顕微鏡を用いて超音波トランスデューサからの超音波を二次元走査しながら被検査物に照射することにより、基準構造物の超音波像データが取得される。そして、形状算出手段により、光学像データと超音波像データとに基づいて、超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状が求められる。このように、解像度が高い光学像データを用いることにより、光学像と同等レベルの解像度でビームスポット形状を正確に求めることができる。さらに、形状良否判定手段により、ビームスポット形状の歪曲度に基づいて、超音波トランスデューサの先端部形状の良否が判定される。この場合、ビームスポット形状の判定結果に基づいて、超音波トランスデューサの不良品を的確に排除することができる。そして、品質がよい超音波トランスデューサを超音波顕微鏡に装着すれば、画像ボケがない鮮明な超音波像を得ることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記形状良否判定手段による良否判定結果と、求められたビームスポット形状とを表示する表示装置をさらに備えたことをその要旨とする。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、形状良否判定手段による良否判定結果と、求められたビームスポット形状とが表示装置に表示されるので、超音波トランスデューサの品質を視覚を通じて容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜4,6,7に記載の発明によると、超音波顕微鏡に使用される超音波トランスデューサの品質を確実に検査することができる超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法、検査装置を提供することにある。また、請求項5に記載の発明によると、超音波顕微鏡に使用される超音波トランスデューサの品質を確実に検査できる結果、選別された良品の超音波トランスデューサを装着できることとなり、安定した品質・性能の超音波顕微鏡を確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態における超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査装置を示す概略構成図であり、図2はその検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示されるように、検査装置1は、顕微鏡本体3と、その顕微鏡本体3に回転可能に支持される対物レボルバ4と、対物レボルバ4の下方に設けられたX−Yステージ5と、パーソナルコンピュータ(パソコン)6とを備える。
【0025】
X−Yステージ5には基準構造物としての参照板7が載置されている。図3に示されるように、参照板7の中央部には、円形の貫通孔(例えば、直径が50μm程度である透孔)8が形成されている。X−Yステージ5は二次元走査手段として機能し、該ステージ5が駆動することにより、参照板7がX方向及びY方向に二次元的に移動される。参照板7は、超音波を反射する材料、例えば銅板からなり、超音波の反射係数は貫通孔8の部分で0、それ以外の反射面では1となる。
【0026】
図4に示されように、対物レボルバ4には、複数の雌ねじ穴(本実施の形態では、第1の雌ねじ穴10及び第2の雌ねじ穴11)が設けられ、第1の雌ねじ穴10に対して対物レンズ12が螺着され、第2の雌ねじ穴11に対して超音波プローブ13が螺着される。本実施の形態の検査装置1では、例えば、ユーザが手動で対物レボルバ4を回転させることで、対物レンズ12と超音波プローブ13との切り替えが行われ、対物レンズ12の光軸A1と超音波プローブ13の音軸A2とが一致するようになっている。この検査装置1の顕微鏡本体3は、対物レボルバ4の位置を対物レンズ12に切り替えた場合に光学顕微鏡として機能し、超音波プローブ13に切り替えた場合には超音波顕微鏡として機能するよう構成されている。
【0027】
具体的には、超音波プローブ13は、超音波トランスデューサ14と、その超音波トランスデューサ14の基端に形成された雄ねじ部15とを備える。超音波トランスデューサ14において、その本体部16の中央となる位置に円柱状の真鍮17が固定され、その先端部に直径1mm以下の凹面18が形成される。そして、その凹面18上を覆うように圧電素子薄膜としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムからなるフィルムセンサ19が設けられている。
【0028】
超音波プローブ13の雄ねじ部15は、対物レンズ12の雄ねじ部20と同じ形状(同一寸法)であり対物レボルバ4の各雌ねじ穴10,11に螺着可能である。この超音波プローブ13の雄ねじ部15が対物レボルバ4の第2の雌ねじ穴11に螺着されることで、参照板7と対向する位置に超音波トランスデューサ14が位置決めされる。
【0029】
超音波トランスデューサ14は、パルス励起されることでフィルムセンサ19が振動して所定周波数帯域の超音波(具体的には、例えば中心周波数80MHz、帯域幅50〜105MHz(−6dB)の超音波)Sを出力する。この超音波Sは、水などの超音波伝達媒体Wを介して円錐状に収束されて参照板7の表面で焦点を結ぶようになっている(図1参照)。
【0030】
図1に示されるように、顕微鏡本体3には、超音波プローブ13及びX−Yステージ5を駆動するための駆動装置21が設けられている。また、顕微鏡本体3においてX−Yステージ5の下部にはコンデンサ(集光器)22が設けられている。このコンデンサ22は、X−Yステージ5の中央に形成された中空部23を介して参照板7の下方から光を照射する。
【0031】
顕微鏡本体3には、操作ハンドル30を有する焦準調節機構(図示略)が設けられている。対物レボルバ4の位置を対物レンズ12に切替えた状態で、この操作ハンドル30を操作すると、対物レボルバ4が光軸A1の方向(図1の上下方向)に移動して、参照板7に対して対物レンズ12の焦点が調節される。また、対物レボルバ4の位置を超音波プローブ13に切替えた状態で操作ハンドル30を操作すると、超音波トランスデューサ14から照射される超音波Sの焦点を調節することができる。
【0032】
さらに、顕微鏡本体3の上部には鏡筒31が設けられ、その鏡筒31内には光路を切り替えるプリズム(図示略)が設けられている。この鏡筒31内で光軸A1が2系統に分割され、一方の光軸A1上に接眼レンズ32が設けられ、他方の光軸A1上にCCDカメラ33が設けられている。
【0033】
対物レンズ12の焦点を調節してその焦点が参照板7の表面に一致すると、その画像が対物レンズ12を通って接眼レンズ32に導かれ、参照板7の光学像が観察可能となる。また、CCDカメラ33は、接眼レンズ32で観察される参照板7の光学像と同じ画像を撮影し、その画像に対応する画像信号をパソコン6に出力する。
【0034】
図2に示されるように、駆動装置21は、I/F回路35と、パルス発生回路36と、受信回路37と、送受波分離回路38と、検波回路39と、A/D変換回路40と、コントローラ41とを備える。
【0035】
また、X−Yステージ5は、超音波Sの照射点を二次元的に走査させるためのXステージ5X及びYステージ5Yを備えるとともに、それぞれのステージ5X,5Yを駆動するモータ42X,42Yを備えている。これらのモータ42X,42Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0036】
各モータ42X,42Yにはコントローラ41が接続されており、該コントローラ41の駆動信号に応答してモータ42X,42Yが駆動される。これらモータ42X,42Yの駆動により、Xステージ5Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ5Yを間欠送りとなるよう制御することで、X−Yステージ5の高速走査が可能となっている。
【0037】
また、本実施の形態においては、Xステージ5Xに対応してエンコーダ43が設けられ、エンコーダ43によりXステージ5Xの走査位置が検出される。具体的に、走査範囲を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ43によって検出され、I/F回路35を介してパソコン6に取り込まれる。パソコン6はそのエンコーダ43の出力に同期して駆動制御信号を生成して、その駆動制御信号をI/F回路35を介してコントローラ41に供給する。コントローラ41は、この駆動制御信号に基づいてモータ42Xを駆動する。また、コントローラ41は、エンコーダ43の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ42Yを駆動して、Yステージ5YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0038】
さらに、コントローラ41は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路36に供給する。これにより、パルス発生回路36において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路38を介して超音波トランスデューサ14に供給される結果、超音波トランスデューサ14から超音波Sが照射される。
【0039】
超音波トランスデューサ14のフィルムセンサ19は、送受波兼用の超音波振動子であり、参照板7で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その反射波の信号は、送受波分離回路38を介して受信回路37に供給される。受信回路37は、信号増幅回路を含んで構成されていて、反射波の信号を増幅して検波回路39に出力する。
【0040】
検波回路39は、ゲート回路やBPF(バンドパスフィルタ)などを含んで構成されている。超音波Sは、超音波トランスデューサ14と参照板7との間で繰り返し反射されるものであるため、検波回路39は、最初に得られる反射波信号を抽出するよう構成されている。この検波回路39の出力信号は、A/D変換回路40に供給されてA/D変換された後、I/F回路35を介してパソコン6に転送される。
【0041】
I/F回路35としては、パソコン等の標準インターフェースであるUSBインターフェースが用いられる。なお、I/F回路35としては、USBインターフェースの他にIEEE1394インターフェースを採用してもよく、また、データ転送速度は遅くなるが、シリアルインターフェースやパラレルインターフェースを採用することもできる。
【0042】
パソコン6は、CPU51、I/F回路52,53、メモリ54、記憶装置55、入力装置56、及び表示装置57を備え、それらはバス58を介して相互に接続されている。
【0043】
CPU51は、メモリ54を利用して制御プログラムを実行し、システム全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X−Yステージ5による二次元走査を制御するためのプログラム、超音波Sのビームスポット形状を算出するためのプログラム、そのビームスポット形状を表示するためのプログラムなどを含む。
【0044】
I/F回路52は、駆動装置21との間で信号の授受を行うためのインターフェース(具体的には、USBインターフェース)である。I/F回路52は、駆動装置21に制御信号(コントローラ41への駆動制御信号)を出力したり、駆動装置21からの転送データ(A/D変換回路40からI/F回路35を介して転送されるデータ)を入力したりする。I/F回路53は、CCDカメラ33との間で信号の授受を行うためのインターフェース(具体的には、USBインターフェース)であり、CCDカメラ33に制御信号を出力したり、該カメラ33からの画像信号を入力したりする。
【0045】
表示装置57は、例えば、LCDやCRTなどのカラーディスプレイであり、画像(超音波像及び光学像)や各種設定の入力画面を表示するために用いられる。入力装置56は、キーボードやマウス装置などであり、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0046】
記憶装置55は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記憶している。CPU51は、入力装置56による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置55からメモリ54へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU51が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置55にインストールして利用する。
【0047】
本実施の形態の検査装置1は、超音波トランスデューサ14の製造工程において、超音波トランスデューサ14の先端部形状が良好であるか否かを検査するために用いられる。具体的には、図5に示されるように、対物レンズ12を用いて取得した参照板7の光学像データ60と、超音波トランスデューサ14を用いて取得した参照板7の超音波像データ61とを用い、それらデータをデジタル画像処理することにより、ビームスポット62の形状を求める。そして、そのビームスポット62の形状に基づいて、超音波トランスデューサ14の先端部形状が判定される。
【0048】
以下、ビームスポット形状を求めるための算出方法について詳述する。
【0049】
ここで、ビームスポット62の強度分布をk(x,y)とし、参照板7の反射係数をg(x,y)とする。
【0050】
反射係数g(x,y)は、対物レンズ12を用いて取得した参照板7の光学像データに基づいて、貫通孔8の部分では0、それ以外の部分(反射面がある部分)では1として測定可能である。
【0051】
強度分布k(x,y)は、図6に示されるように、ビームスポット62の中心部が最も強く、中心部から離れるに従い徐々に弱くなる。この強度分布k(x,y)は、超音波トランスデューサ14の特性、使用する周波数、作動距離に依存するため、未知の値である。
【0052】
参照板7に超音波Sを照射し、その反射波の強度に基づいて反射像を得る場合、ビームスポット62の強度分布k(x,y)が理想的な分布からずれ、ビームスポット形状が歪んでいると、反射像にボケが生じる。
【0053】
この参照板7のボケた反射像は、反射係数g(x,y)と強度分布k(x,y)との各関数のコンボリューション演算(二次元の畳み込み積分)を行うことにより、次式(1)のようになる。
【数1】

【0054】
なお式(1)において、「*」は、コンボリューションの演算子である。
【0055】
式(1)のコンボリューション演算は次式(2)で表される。
【数2】

【0056】
また、この演算は、フーリエ変換により次式(3)のように表現できる。
【数3】

【0057】
従って、ボケた反射像は、式(3)の演算結果を逆フーリエ変換し、その実数部をとることで次式(4)のようになる。
【数4】

【0058】
ここで、ボケた反射像をh(x,y)とすると、次式(5)の関係が成り立つ。
【数5】

【0059】
ボケた反射像h(x,y)は、超音波トランスデューサ14を用いて測定可能であり、参照板7の反射係数g(x,y)は、対物レンズ12を用いて測定可能である。従って、上式(5)は、h(x,y)とg(x,y)とをそれぞれ二次元フーリエ変換し、h(x,y)の変換結果をg(x,y)の変換結果で割ることで求めることができる。
【0060】
そして、ビームスポット形状を表す関数、すなわちビームスポット62の強度分布k(x,y)は、上式(5)の演算結果を逆フーリエ変換し、その実数成分を取ることで、次式(6)のように求めることができる。
【数6】

【0061】
このように求めた強度分布k(x,y)のデータを画像処理することにより、ビームスポット62の形状が可視化される(図5参照)。そして、このビームスポット62の形状に基づいて、超音波トランスデューサ14の先端部形状が判定される。
【0062】
次に、本実施の形態において、超音波トランスデューサ14を検査するためにCPU51が実行する処理について図7を用いて説明する。なお、図7の処理は、作業者によって顕微鏡本体3の対物レボルバ4の位置が対物レンズ12に切替えられた後に開始される。
【0063】
先ず、CPU51は、CCDカメラ33を駆動することにより該カメラ33で撮影した参照板7の光学像の画像信号をI/F回路53を介して取り込み、周知の画像処理を行う。CPU51は、この画像処理を行うことにより、参照板7の光学像データを生成しそのデータをメモリ54に記憶する(ステップ100)。
【0064】
その後、作業者によって、検査すべき超音波プローブ13が対物レボルバ4の第2の雌ねじ穴11に螺着された後、対物レボルバ4の位置が超音波プローブ13に切替えられる。その状態で、CPU51は、駆動装置21を制御して超音波プローブ13及びX−Yステージ5を駆動するとともに、その超音波プローブ13で取得した反射波信号をI/F回路52を介して取り込み、参照板7の超音波像データを取得する(ステップ110)。
【0065】
具体的には、CPU51からの指示に基づいてコントローラ41によりモータ42X,42Yが駆動され、X−Yステージ5による二次元走査が開始される。このとき、CPU51は、エンコーダ43の出力に基づいて測定点の座標データを取得する。そして、励起パルスが超音波トランスデューサ14に供給されると、参照板7に超音波Sが照射され、その反射波が検波回路39で検出される。CPU51は、検出された反射波信号をA/D変換回路40及びI/F回路35,52を介して取り込み、超音波像データとして測定点の座標データに関連付けてメモリ54に記憶する。ここでは、超音波Sの走査範囲における全ての測定点での反射波信号を検出して1画面分の超音波像データを取得する。なお、超音波Sの走査範囲としては、参照板7における貫通孔8の全体を含むように設定されている。また、この走査範囲は、光学像の撮影範囲と超音波像の撮影範囲が同じとなるように設定される。
【0066】
形状算出手段としてのCPU51は、光学像データと超音波像データとをメモリ54から読み出し、該各データに基づいて、上記の式(5)及び式(6)に対応した演算を行い、ビームスポット形状を求める(ステップ120)。具体的には、CPU51は、参照板7の光学像データを二次元フーリエ変換するとともに、参照板7の超音波像データを二次元フーリエ変換する。そして、CPU51は、超音波像データの変換結果を光学像データの変換結果で割り、さらにその演算結果を逆フーリエ変換することにより、所定周波数(例えば、80MHz)におけるビームスポット形状のデータを求め、そのデータをメモリ54に記憶する。
【0067】
その後、形状良否判定手段としてのCPU51は、ビームスポット形状のデータに基づいて、超音波トランスデューサ14の良否を判定する。ここで、例えば、ビームスポット形状の歪曲度が、予め決められた許容値(例えば、2%)を超えていない場合に、超音波トランスデューサ14の先端部形状が良好であると判定し、許容値を超えている場合には、その先端部形状が不良であると判定する(ステップ130)。
【0068】
さらに、CPU51は、ビームスポット形状及びその良否判定結果に関するデータを表示装置57に転送し、ビームスポット形状及び良否判定結果を表示させる(ステップ140)。そして、表示装置57に表示されたビームスポット形状及び良否判定結果に基づいて、先端部形状が良好であると判定された超音波トランスデューサ14のみが選別される。
【0069】
その後、次の超音波トランスデューサ14の検査を行うか否かのメッセージ及び選択ボタン(例えば、再検査ボタンと検査終了ボタン)を表示装置57に表示させる(ステップ150)。ここで、検査が完了した超音波プローブ13が対物レボルバ4から取り外され、検査前の超音波プローブ13が対物レボルバ4に装着される。その後、ユーザによって再検査ボタンが選択された場合、CPU51は、ステップ110の処理に戻り、ステップ110〜ステップ150の処理を再度実行することで、超音波プローブ13の検査を行う。一方、ステップ150において、検査終了ボタンが選択された場合、CPU51は、図7の処理を終了する。
【0070】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0071】
(1)本実施の形態の検査装置1では、基準構造物としての参照板7の光学像データと超音波像データとが取得され、それらデータに基づいて、超音波トランスデューサ14から照射された超音波Sの焦点域におけるビームスポット形状が求められる。このように、解像度が高い光学像データを用いることにより、光学像と同等レベルの解像度でビームスポット形状を正確に求めることができる。このビームスポット形状の理想的な形状は円形であり、超音波トランスデューサ14の先端部において凹面18のキズやフィルムセンサ19の接着ズレなどによる凸凹が生じると、ビームスポット形状が歪む。従って、そのビームスポット形状の歪曲度に基づいて、超音波トランスデューサ14の先端部形状(凹面18の形状)の良否が判定される。この場合、ビームスポット形状の判定結果に基づいて、凹面18のキズやフィルムセンサ19の接着ズレなどを有する超音波トランスデューサ14を的確に排除することができる。そのため、品質のよい超音波トランスデューサ14のみを確実に製品出荷することができる。また、品質の良い超音波トランスデューサ14を超音波顕微鏡に装着することにより、画像ボケがない鮮明な超音波像を得ることができる。
【0072】
(2)本実施の形態の検査装置1では、表示装置57に超音波Sのビームスポット形状と超音波トランスデューサ14の先端部形状の良否判定結果とが表示される。このため、超音波トランスデューサ14の品質を視覚を通じて容易に確認することができる。
【0073】
(3)本実施の形態の検査装置1では、超音波トランスデューサ14がパルス励起され、所定周波数帯域の超音波Sが参照板7に照射される。そして、その応答として得られる反射波のデータが二次元のフーリエ空間で解析される。具体的には、参照板7の超音波像データが二次元フーリエ変換されるとともに、参照板7の光学像データが二次元フーリエ変換され、それら変換結果が比較される。そして、その比較結果を逆フーリエ変換することにより、周波数に依存したビームスポット形状のデータを求めることができる。この場合、複数の周波数におけるビームスポット形状を求めることができ、それらビームスポット形状に基づいて、例えばビーム幅を求めることができる。このように、周波数に応じたビームスポット形状やビーム幅を求めることにより、超音波トランスデューサ14をより厳密に検査することができる。
【0074】
(4)本実施の形態の検査装置1では、対物レンズ12を用いて取得した光学像データがメモリ54に記憶されるので、その光学像データを用いて複数の超音波トランスデューサ14のビームスポット形状を求めることができる。このようにすれば、超音波トランスデューサ14の検査毎に光学像データを取得する必要がなく、検査を効率よく行うことができる。
【0075】
(5)本実施の形態の検査装置1は、光学顕微鏡用の対物レボルバ4に超音波プローブ13を装着した構成であるので、光学顕微鏡と超音波顕微鏡とを個別に設ける場合と比較して設置スペースを削減できるとともに、設備コストを抑えることができる。また、対物レンズ12の光軸A1に対して超音波トランスデューサ14の音軸A2を確実に合わせることができ、光学像に対応した超音波像を容易に得ることができる。
【0076】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0077】
・上記実施の形態において、検査対象となる超音波トランスデューサ14は、その先端部に高分子系のフィルムセンサ19を備えるものであったが、これに限定されるものではない。例えば、図8のように、PZTなどの圧電セラミックからなる円板状の超音波振動子71と円柱状の音響レンズ72とを備える超音波トランスデューサ73を検査対象としてもよい。この超音波トランスデューサ73においては、音響レンズ72の後端面に超音波振動子71が配置され、音響レンズ72の先端部に凹面74が形成されている。また、超音波トランスデューサ73を収納するプローブ本体75の基端側に雄ねじ部76が形成されている。この雄ねじ部76が対物レボルバ4の第2の雌ねじ穴11(図4参照)に螺着されることで、上記実施の形態と同様の手法で超音波トランスデューサ73の検査を行うことができる。
【0078】
・上記実施の形態では、基準構造物として参照板7を用いたが、その参照板7の代わりに、例えば電子顕微鏡用の金属メッシュ80(図9参照)を用いることができる。図9の金属メッシュ80は、例えば、直径3mm、厚さ25μm、ピッチ100μm、残し(骨部分)30μmのサイズを有し、その残し(骨部分)の間に複数の微細な透孔81が形成されている。金属メッシュ80を用いる場合、少なくとも1つの透孔81を含むように超音波Sの走査範囲が設定される。なお、基準構造物としては、光学的及び音響的に可視化が可能な構造物であればよく、参照板7や金属メッシュ80のように透孔8,81が形成されるもの以外に、凹部や凸部が形成される構造物を用いてもよい。
【0079】
・上記実施の形態において、式(5)の演算をする際に、G(ω,ω)の高周波成分が小さいと、いわゆる「ゼロ割り」によって演算結果が不安定となる場合がある。この場合、式(5)の演算結果に所定のフィルタ関数(例えば、ガウシアン関数)を乗算することにより、高周波成分を除去したビームスポット形状を求めるように構成してもよい。
【0080】
・上記実施の形態では、光学像データ及び超音波像データを二次元フーリエ変換して、ビームスポット形状を求めるようにしたが、それ以外の演算方法(例えば、ラプラス変換など)でビームスポット形状を求めてもよい。
【0081】
・上記実施の形態の検査装置1は、光学像を取得するためにCCDカメラ33を備えるものであったが、それ以外の撮像装置を備えてもよい。
【0082】
・上記実施の形態の検査装置1は、光学顕微鏡と超音波顕微鏡の両方の機能を兼ね備える装置であるが、対物レボルバ4、対物レンズ12、CCDカメラ33などの光学顕微鏡の機能を省略してもよい。この場合、検査装置1とは別に設けた光学顕微鏡を用いて参照板7の光学像データを取得し、その光学像データをメモリ54に記憶する。そして、検査装置1において、超音波Sを二次元走査して参照板7の超音波像データを取得した後、光学像データをメモリ54から読み出してそれらデータに基づいて、ビームスポット形状を求める。このようにしても、上記実施の形態と同様に、超音波トランスデューサ14の品質を検査することができる。
【0083】
・上記実施の形態では、パソコン6を用いて検査装置1を構成したが、それ以外にワークステーションなどのコンピュータを用いてもよい。また、表示装置57としては、パソコン6に一体的に設けられるものであったが、パソコン6と別体で設けてもよい。
【0084】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0085】
(1)請求項1において、前記基準構造物の光学像データを二次元フーリエ変換するとともに、前記基準構造物の超音波像データを二次元フーリエ変換し、それら変換結果を比較することで前記ビームスポット形状を求めることを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法。
【0086】
(2)技術的思想(1)において、前記超音波トランスデューサは、パルス励起されることで所定周波数帯域の超音波を照射することを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の超音波トランスデューサの検査装置を示す概略構成図。
【図2】超音波トランスデューサの検査装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】基準構造物としての参照板を示す平面図。
【図4】超音波プローブを示す要部断面図。
【図5】ビームスポット形状を求めるための説明図。
【図6】ビームスポットの強度分布を示す説明図であって、(a)は歪みのない状態を示し、(b)は歪みのある状態を示す。
【図7】超音波トランスデューサを検査するための処理を示すフローチャート。
【図8】別の実施の形態の超音波トランスデューサを示す断面図。
【図9】基準構造物としての金属メッシュを示す平面図。
【図10】従来の超音波トランスデューサを示す断面図。
【符号の説明】
【0088】
1…検査装置
3…光学顕微鏡及び超音波顕微鏡として機能する顕微鏡本体
7…基準構造物としての参照板
8…透孔としての貫通孔
14,73…超音波トランスデューサ
18…凹面
19…圧電素子薄膜としてのフィルムセンサ
51…形状算出手段及び形状良否判定手段としてのCPU
60…光学像データ
61…超音波像データ
80…基準構造物としての金属メッシュ
81…透孔
…超音波


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波顕微鏡に用いられる超音波トランスデューサの検査方法であって、
基準構造物を光学顕微鏡で観察して得た光学像データと、当該基準構造物を超音波顕微鏡で観察して得た超音波像データとに基づいて、前記超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状を求めるステップと、
求められたビームスポット形状の歪曲度に基づいて、前記超音波トランスデューサの先端部形状の良否を判定するステップと
を含むことを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法。
【請求項2】
前記ビームスポット形状を表示装置に表示するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法。
【請求項3】
前記基準構造物は、前記超音波顕微鏡における被検査物よりも硬質の材料からなり、微細な透孔を有する部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法。
【請求項4】
前記超音波トランスデューサの先端部には直径1mm以下の凹面が形成されているとともに、前記凹面上には圧電素子薄膜が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査方法。
【請求項5】
超音波顕微鏡に用いられる超音波トランスデューサの製造方法であって、
基準構造物を光学顕微鏡で観察して得た光学像データと、当該基準構造物を超音波顕微鏡で観察して得た超音波像データとに基づいて、前記超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状を求めるステップと、
求められたビームスポット形状の歪曲度が、あらかじめ定められた許容値を超えない場合に、前記超音波トランスデューサの先端部形状が良好であると判定するステップと、
先端部形状が良好であると判定された前記超音波トランスデューサのみを選別するステップと
を含むことを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項6】
光学像データを取得する光学顕微鏡と、
超音波トランスデューサからの超音波を二次元走査しながら被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の超音波像データを取得する超音波顕微鏡と、
基準構造物を前記光学顕微鏡で観察して得た光学像データと、当該基準構造物を超音波顕微鏡で観察して得た超音波像データとに基づいて処理を行うことで、前記超音波トランスデューサから照射された超音波の焦点域におけるビームスポット形状を求める形状算出手段と、
求められたビームスポット形状の歪曲度に基づいて、前記超音波トランスデューサの先端部形状の良否を判定する形状良否判定手段と
を備えたことを特徴とする超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査装置。
【請求項7】
前記形状良否判定手段による良否判定結果と、求められたビームスポット形状とを表示する表示装置をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の超音波顕微鏡用超音波トランスデューサの検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−14845(P2008−14845A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187285(P2006−187285)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】