説明

足の歪みを正すテーピング機能を備えた靴下

【課題】筋肉や靱帯など軟部組織の衰えから来る人間の足の歪みを正し、歩行時の脚の運びをスムーズにすることによって、血行障害、体の歪み、自律神経のアンバランス、免疫力の低下、ホルモンのアンバランス等から生ずる身体の異常を予防する。
【解決手段】外くるぶし領域からその前方前距腓靱帯領域、甲部及び土踏まず領域を経て足裏へ伸びる第1帯状領域11と、前記足裏から小指6の付け根やや後方領域を経て足の甲部を通り、内くるぶし3領域及び足首背面部を経て外くるぶし領域に至る第2帯状領域12とを備え、前記各帯状領域にテーピング作用を有する締め付け部を形成してなるテーピング機能を備えた靴下。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉や靱帯など軟部組織の衰えから来る人間の足の歪みを正し、歩行時の脚の運びをスムーズにすることによって、血行障害、体の歪み、自律神経のアンバランス、免疫力の低下、ホルモンのアンバランス等から生ずる身体の異常を予防することを目的とするテーピング機能を備えた靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間の足首に関わる異常が全身に与える影響は計り知れないものがあるといわれる。解剖学的、生理学的、運動力学的見地からみて、筋肉、靱帯などの難部組織の衰えから歪みが少し現れただけでも、様々な異常を来し、血行障害、体の歪み、自律神経のアンバランス、免疫力の低下、ホルモンのアンバランス等、少なからずとも全身に悪影響を及ぼし、日常生活に支障をきたす可能性があった。足首の歪みから生ずる不均衡な着地を習慣的に繰り返すと五臓六腑にも悪影響を及ぼし、特に左足の異常は循環器系・呼吸器系臓器に影響を及ぼし、右足の異常は消化器系・泌尿器系臓器に影響を及ぼすと言われている。
【0003】
一方、ハイヒールや足に合わない硬い革靴を長時間履くことによって、足底のアーチが崩れたり消失したりした人のために、アーチを正常な形状に回復させる靴下に関する発明が開示されている(特許文献1および2参照)。しかし、これらの靴下は、足の土踏まずの部分を特に強く締め付けてアーチの形状を取り戻すことに主体があり、足首から足全体の歪みを正すには至らない。また、静脈瘤やリンパ腺浮腫の治療用のいわゆる弾性靴下は、脚のふくらはぎの全体を締め付ける点で本発明とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−312512号公報
【特許文献2】特開2008−111224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の筋肉や靱帯など軟部組織の衰えから来る人間の足の歪みを正し均衡のとれた着地を確保するために、本発明者は、足を捻挫したときに足首を固定するためにテーピングを利用することから発し、鋭意研究した結果、足の歪みを正し歩行時の脚の運びをスムーズにするのに効果的なテーピングの仕方を知見し、更にこのテーピング効果を高めるための靴下を改良して本発明に想到するに至ったものであり、本発明の目的は、近年、交通手段の発達や機械化の進展に伴って運動量が軽減し、或いは高齢者に多く見られる筋肉や靱帯など軟部組織の衰えから来る足の歪みを正し均衡のとれた着地を確保するとともに、歩行時や走行時の脚の運びをスムーズにすることによって、身体に生ずる異常を未然に予防し健康を維持することを目的とするテーピング機能を備えた靴下を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、装着することによって足の歪みを正し血行障害等の身体の異常を予防する靴下において、外くるぶし領域からその前方前距腓靱帯領域、甲部及び土踏まず領域を経て足裏部へ伸びる第1帯状領域と、前記足裏部から小指の付け根部後方領域を経て足の甲部を通り、内くるぶし領域及び足首背面部を経て外くるぶし領域に至る第2帯状領域とを備え、前記各帯状領域にテーピング作用を有する締め付け部を形成してなることを特徴とするテーピング機能を備えた靴下とする(請求項1)。
【0007】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記テーピング機能を備えた靴下において、前記第1帯状領域及び第2帯状領域の他に足の親指の先端部から親指の付け根部を通り足首の前方、上部方向に伸びる第3帯状領域を備え、前記第3帯状領域に親指を背後に反らせる方向にテーピング作用を有する締め付け部を形成してなることを特徴とする請求項1記載のテーピング機能を備えた靴下とすることが好ましい(請求項2)。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記靴下は、少なくとも足の親指を含む指付き靴下であることを特徴とする請求項1または2記載のテーピング機能を備えた靴下とすることが好ましい(請求項3)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記帯状領域を形成する締め付け部は、弾性糸を使用しタック編又は添え糸編により地編み部に連続して編成してなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のテーピング機能を備えた靴下とすることが好ましい(請求項4)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記靴下の足裏部における親指、親指の後方部、中指の付け根後方部から小指の付け根後方部及び踵の外側部から後方部近傍の各領域に滑り止め部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のテーピング機能を備えた靴下とすることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の足の歪みを正すテーピング機能を備えた靴下は、本来人間が正常な状態における足首の状態を保つように足の軟部組織を補強するように作用するので、歩行時や立ち止まっている時、走行しているときも自然な状態に近く、足首に無理な力がかからないので、歩きやすく且つ疲れを感じないばかりでなく、身体に生ずる異常を未然に予防する効果を奏する。また、老人等がつまずいて前のめりに転倒したり捻挫を未然に予防する効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る靴下を履いた状態の左側面視を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る靴下を履いた状態の平面視を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る靴下を履いた状態の右側面視を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る靴下を履いた状態の底面視を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」と称する)について図面を参照して説明する。しかし本願発明は係る実施形態によって何ら限定されるものではない。図1は、実施形態に係る靴下を右足に履いた左側面視の状態を示し、図2は、同じく平面視の状態を示し、図3は、同じく右側面視の状態を示し、図4は、同じく底面視の状態を示す。
【0014】
図1〜図4に示す靴下において、1は本発明の実施形態に係る足の歪みを正すテーピング機能を備えた5本指付きの右足用靴下を示す。以下に右足用靴下について図に基づいて説明する。通常は、左右の靴下は対に形成して使用する。5本指付きの靴下に限らず、親指5のみを独立した指として形成すれば、その他の指はまとめて一体に形成してもよい。靴下が使用中にずれると、靴下に形成した締め付け部が当初想定した足の締め付け部に当接しなくなる恐れがあるので、少なくとも親指5を独立の指に形成し、なるべく5本指付きの靴下とすることが好ましい。実施形態に係る靴下は、地編み部を柔軟性を有する繊維素材で形成し、各帯状領域に弾性糸を使用した伸び率の小さい編織組織、例えば、タック編又は添え糸編で地編み部に連続して編成してなる締め付け部を形成することを特徴とする。
【0015】
前記靴下1は、外くるぶし2とその下方に位置する下伸筋支帯領域Aから外くるぶし2の前方に位置する前距腓靱帯領域Bを通り、甲部領域Fから土踏まずCを経て足裏領域Dに伸びる第1帯状領域と、前記足裏Dから小指6の付け根後方領域の第3腓骨筋領域Eを通り、甲部領域F、内くるぶし3とその下方に位置する三角靱帯領域Gから足首背面部Hを経て外くるぶし2と下伸筋支帯領域Aに至る第2帯状領域と、足の親指5の先端部から親指5の付け根部Iを通り足首の前方、上部方向に伸びる第3帯状領域13を備え、前記各帯状領域にテーピング作用を有する締め付け部が形成してなることを特徴とする。
【0016】
前記第1帯状領域11の締め付け部11により前距腓靱帯及び下伸筋支帯の伸展を防ぐ方向にテーピング作用を受け、第2帯状領域の締め付け部12により第3腓骨筋の腱を引き上げ、三角靱帯をサポートするテーピング作用を受け、また、第3帯状領域の締め付け部13により親指5の先端を反らせる方向にそれぞれテーピング作用を受ける。更に、前記第1帯状領域の締め付け部11と第2帯状領域の締め付け部12との交差点F及び重合点Hにより足首が固定されるテーピング作用を受ける。
【0017】
第1帯状領域11と第2帯状領域12の境界足裏領域Dにおいて締め付け部は連続して設けられ、特に、足裏領域Dから小指の付け根後方の第3腓骨筋領域Eを通り、甲部領域F、内くるぶし3とその下方に位置する三角靱帯領域Gから足首背面部Hに向かう第2帯状領域に最も強力な締め付け力が作用するように構成することが好ましい。即ち、前距腓靱帯及び下伸筋支帯の伸展を防ぐとともに、更にこれを補強するために第3腓骨筋の腱が引き上げられる機序による。係る締め付け部のテーピング作用により、足首の歪みが正常になり、血行障害、体の歪み、自律神経のアンバランス、免疫力の低下、ホルモンのアンバランス等から生ずる身体の異常を予防する。更に、第3帯状領域に締め付け部を設ければ、歩行時や走行時に、足の運びがよりスムーズになり、つまずいて前のめりの転倒を予防することからより好ましい。
【0018】
前記帯状領域に形成する締め付け部は、テーピング作用を有する限りにおいて素材等が特に限定されるものではないが、例えば、スパンデックスなどのポリウレタン弾性糸を芯にして、その糸を延伸したところにウーリーナイロン糸等をそれぞれS方向とZ方向に二重に巻き付けたダブルカバーリングヤーン(DCY)やスパンデックスなどのポリウレタン弾性糸を芯にして、その糸を延伸したところにウーリーナイロン糸等をS方向とZ方向の何れか一方向に一重に巻き付けたシングルカバーリングヤーン(SCY)を用いると、締め付け力が強くテーピング作用が向上することから好ましい。また、最も強力な締め付け力を要する第2帯状領域又は第3帯状領域にDCYを用い、第1帯状領域にSCYを用いる等、使い分けしてもよい。締め付け部の幅は、特に限定するものではないが、第1帯状領域11と第2帯状領域12が40〜80mm、好ましくは45〜55mmであり、第3帯状領域13を20〜30mmに形成することが好ましい。
【0019】
前記帯状領域に形成する締め付け部は、伸び率の小さい編織組織、例えば、タック編、添糸編等で編成することが好ましい。丸編機による靴下編地において、タック編(Tuck stitch)の組織は、あるコースでループを脱出させず、次のコースで複数ループを脱出させて新ループを作るものを言う。この未完成ループを作らせることをタックと言い、タックさせる度数は普通2回までであるが、平編にタックを応用した亀甲柄のように3〜6回の連続したタックを対照的に配列したもの等でもよい。
【0020】
添糸編(Plating)の組織は、平編やゴム編に応用され、地編糸に他の糸を供給して、その内の一方の糸を表面に、他の糸を裏面に表す方法と、ボスネックスと称し、地組織となるものを地糸で普通に編み、これに別に用意した糸を所用部分で針にからませる場織りとする織り方があり、例えば、ボスネックスにより前記帯状領域にDCYやSCYを場織りして締め付け部を形成してもよい。この場合、前述の通り締め付け力に応じて糸の種類を選択して用いることが好ましい。
【0021】
また、前記靴下の足裏部における親指の裏側、親指の後方部、中指の付け根後方部から小指の付け根後方部及び踵の外側から後方部近傍の各領域に滑り止め部を設けることが好ましい。滑り止めとしては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、その他のエラストマーを散点状に前記領域に形成することが好ましい。このように滑り止めを設けることにより、踵の外側部から後方部近傍領域Mで着地して、中指の付け根後方部から小指の付け根後方部領域L及び親指の後方部領域Kに体重移動し、最後に親指の裏側領域Jで地面を蹴る動作が確実になり、脚の運びをスムーズにする補助的作用をなす。更に、散点状の凹凸が足裏を刺激することによって、マッサージ効果が得られる。
【実施例1】
【0022】
次に、DCYを用いたタック編組織で締め付け部を形成した前記の実施形態に係るテーピング機能を備えた左右一対の靴下を複数足作成し、この靴下を65〜80歳の高齢者及び捻挫リハビリ中の成人5人のモニターに1ヶ月間装着してもらい、使用後の感想を聞いたところ、何れも歩行・走行し易く、つまずいて転倒することもなく、足の疲れやだるさを感じなくなった、との結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係るテーピング機能を備えた靴下は、現代人特有の筋肉や靱帯など軟部組織の衰えから来る人間の足の歪みを正し、歩行時の脚の運びをスムーズにして、健康維持に寄与する点で、高齢化社会を迎えるに当たり、必需品の一つとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0024】
1:実施形態に係る靴下、2:外くるぶし、3:内くるぶし、4:足首、5:親指、6:小指、11:第1帯状領域(締め付け部)、12:第2帯状領域(締め付け部)、13:第3帯状領域(締め付け部)、
A:下伸筋支帯領域、B:前距腓靱帯領域、C:土踏まず、D:足裏領域、E:第3腓骨筋領域、F:甲部領域、G:三角靱帯領域、H:足首背面部、I:親指の付け根部、J:親指の裏側領域、K:親指の後方部領域、L:中指の付け根後方部から小指の付け根後方部領域、M:踵の外側から後方部近傍領域、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着することによって足の歪みを正し血行障害等の身体の異常を予防する靴下において、外くるぶし領域からその前方前距腓靱帯領域、甲部及び土踏まず領域を経て足裏部へ伸びる第1帯状領域と、前記足裏部から小指の付け根部後方領域を経て足の甲部を通り、内くるぶし領域及び足首背面部を経て外くるぶし領域に至る第2帯状領域とを備え、前記各帯状領域にテーピング作用を有する締め付け部を形成してなることを特徴とするテーピング機能を備えた靴下。
【請求項2】
前記テーピング機能を備えた靴下において、前記第1帯状領域及び第2帯状領域の他に足の親指の先端部から親指の付け根部を通り足首の前方、上部方向に伸びる第3帯状領域を備え、前記第3帯状領域に親指を背後に反らせる方向にテーピング作用を有する締め付け部を形成してなることを特徴とする請求項1記載のテーピング機能を備えた靴下。
【請求項3】
前記靴下は、少なくとも足の親指を含む指付き靴下であることを特徴とする請求項1または2記載のテーピング機能を備えた靴下。
【請求項4】
前記帯状領域を形成する締め付け部は、弾性糸を使用しタック編又は添え糸編により地編み部に連続して編成してなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のテーピング機能を備えた靴下。
【請求項5】
前記靴下の足裏部における親指、親指の後方部、中指の付け根後方部から小指の付け根後方部及び踵の外側部から後方部近傍の各領域に滑り止め部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のテーピング機能を備えた靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−246601(P2010−246601A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96191(P2009−96191)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(399060322)株式会社桑田 (3)
【Fターム(参考)】