説明

足継具

【課題】 足との密着性ないしは一体性が高くその構造が簡素な、背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることが可能な足継具を提供する。
【解決手段】 人が足の下に装着して背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることができるようになっている容器状の足継具1は、踏み台2と、前後2組の束縛ストラップ6、9(固定具)とを備えている。踏み台2は、プラスチック又は合成樹脂で一体形成された筒状の胴体部3と、該胴体部3の上端部を閉止するとともに足を載せることが可能なフィールドトラック形の平坦な足載せ部4とを有している。足載せ部4の後端部近傍には、足の踵と係合する踵係合部5が取り外し可能に取り付けられている。両束縛ストラップ6、9は、足載せ部4の上面に足を固定する。左右1対の足継部1は、歩幅程度の長さのロープで互いに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が足の下に装着して背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることができるようになっている足継具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人の背丈より高い位置で物に対して何らかの作業を行う場合、例えば車高の高い乗用車のルーフ上面の清掃を行う場合、地面や床などに置かれた脚立や踏み台などに乗って作業を行うことが多い。しかし、この場合、作業者は、作業箇所が変わるたびに、一旦地面ないしは床に下りて、脚立や踏み台などを移動させなければならないので、該作業を迅速かつ能率的に行うことはできない。
【0003】
そこで、上面に緒を取り付ける一方、下面に折り畳み式の支柱を取り付け、人が履いて歩けるようにした2個セットの踏み台、すなわち、背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることが可能な足継具が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−184255号公報(段落[0004]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の踏み台は、足と係合する部分が下駄ないしはスリッパと同様の係合構造であるので、足との密着性ないしは合体性が悪く、足から離脱するおそれがあるといった問題がある。また、折り畳み式の支柱は、2つの支柱を支点でピボット回転可能に連結したものであるので、踏み台の構造が比較的複雑であるといった問題がある。さらには、地面ないしは床面の上でがたついて、安定が悪いといった問題もある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、足との密着性ないしは合体性が良くその構造が簡素な、背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることが可能な、安定の良い足継具を提供することを目的ないしは解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る、人が足の下に装着して背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることができるようになっている足継具は、踏み台と固定具とを備えている。ここで、踏み台は、筒状の胴体部と、該胴体部の一方の端部を閉止するとともに足を載せることが可能な形状をもつ足載せ部と、該足載せ部の外面に設けられ足の踵と係合する踵係合部とを有する容器形ないしはバケット形のものである。また、固定具は、足載せ部の外面に足を固定するためのものである。
【0007】
本発明に係る足継具においては、胴体部の、足載せ部とは反対側の端部に、周方向に互いに離間した3つの接地部が設けられているのが好ましい。各接地部の下面には、それぞれ、滑り止めが設けられているのが、より好ましい。
【0008】
本発明に係る足継具において、踵係合部材は足載せ部から取り外すことができるようになっているのが好ましい。また、固定具は、それぞれ足の前部及び後部に対応する位置に配置された、足を足載せ部に締め付ける(束縛する)、面ファスナを用いた2組の束縛ストラップであるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る足継具においては、同一構成の左右1対(2個)の足継具をそれぞれ左右の足の下に1つずつ装着して用いることになるが、かかる1対の足継具は、互いに、一定の長さ、例えば人の通常の歩幅程度の長さの紐又は鎖で連結されているのが好ましい。また、踏み台は、プラスチック又は合成樹脂で形成されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、足との密着性ないしは合体性が良くその構造が簡素な、背丈が高くなった状態で歩行及び立ち止まりが可能な、安定の良い足継具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図1、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(b)に示すように、本発明の実施の形態に係る足継具1(高足具)は、その本体部をなす容器形ないしはバケット形(バケツ形)の踏み台2を備えている。この踏み台2は、プラスチック又は合成樹脂で一体形成され、筒状の胴体部3と、該胴体部3の一方の端部を閉止する平坦な足載せ部4とを有している。なお、以下では便宜上、胴体部3の中心軸方向(図2(a)、(c)では、紙面と垂直な方向)にみて、足載せ部4が設けられた方を、使用状態では上側となるので「上」といい、これと反対側を「下」ということにする。
【0012】
プラスチック製又は合成樹脂製の踏み台2は、例えば、プラスチック材料又は合成樹脂を射出成形するなどして、容易かつ安価に製造することができる。このように、踏み台2は、金属などに比べて軟らかいプラスチック又は合成樹脂でつくられているので、例えば乗用車に対して清掃作業を行う場合、踏み台2が車体に接触しても、車体に傷がつくおそれはない。なお、踏み台2の円筒部3及び足載せ部4の厚さないしは強度は、足載せ部4の上に人が乗っても破損しないように設定されている。
【0013】
筒状の胴体部3は、その横断面(胴体部3の中心軸と垂直な面で切断した断面)がフィールドトラック形(ないしは、長円形、略楕円形)であり、安定を良くするために上側から下側に向かってやや広がる緩やかなテーパ状に形成されている。なお、胴体部3(踏み台2)の高さは、足継具1の使用目的に応じて任意に設定すればよい(例えば、車高の高い乗用車の洗車を目的とする場合は、40〜70cm)。胴体部3の上端部に位置する足載せ部4は、平面視では、人の足の裏よりやや大きいフィールドトラック形(ないしは、長円形、略楕円形)の形状を有し、ほぼ平坦(平面状)に形成されている。なお、足載せ部4を、平坦にせず、足の裏面の形状に係合ないしは適合する曲面形状に形成してもよい。また、平面視における足載せ部4の形状は、フィールドトラック形に限定される訳ではなく、足を載せることができればどのような形状でもよい(例えば、足の裏形、多角形、円形、楕円形等)。そして、足載せ部4の長軸方向(図2(a)〜(c)では左右方向)にみて、足載せ部4の一方の端部(図2(a)〜(c)では、右端部)付近には、足の踵と係合ないしは適合する踵係合部5(踵ストッパ)が取り外し可能に取り付けられている。以下では、便宜上、足載せ部4の長軸方向にみて、踵係合部5が取り付けられている方(図2(a)〜(c)では右側)を「後」といい、これと反対側を「前」ということにする。なお、踵係合部5を、着脱可能とせず、踏み台2(足載せ部4)と一体形成してもよい。
【0014】
また、足載せ部4の後端部近傍の右側部分(踵係合部5の右側)には、後側の束縛ストラップ6の末端部を取り付ける(固定する)ためのストラップ取付部7が設けられる一方、左側部分(踵係合部5の左側)には、束縛ストラップ6が通り抜けるストラップ通抜部8が設けられている。さらに、足載せ部4の前端部近傍の右側部分には、前側の束縛ストラップ9の末端部を取り付けるためのストラップ取付部10が設けられる一方、左側部分には、束縛ストラップ9が通り抜けるストラップ通抜部11が設けられている。ここで、後側の束縛ストラップ6は比較的幅が狭く(例えば、1〜2cm)、前側の束縛ストラップ9は比較的幅が広くなっている(例えば、4〜5cm)。そして、各束縛ストラップ6、9の先端部及び中間部には、それぞれ、面ファスナ12、13(マジックテープ:商標登録)が取り付けられている。なお、面ファスナ同士は、ファスナ面を互いに当接させれば(とくにファスナ面と平行な方向に)強固に結合するが、適度な力で破損することなく引き離すことができる。
【0015】
胴体部3の下端部の前部には、下方に突出する(張り出す)前側接地部14が設けられ、後部にはそれぞれ下方に突出する(張り出す)左右2つの後側接地部15、16が設けられている。そして、各接地部14〜16の下面には、それぞれ、地面ないしは床との摩擦を大きくして、踏み台2が滑るのを防止する滑り止め材17〜19が取り付けられている。なお、滑り止め材17〜19を取り付けるのではなく、各接地部14〜16の下面を摩擦が大きくなるような形態、例えばのこぎり状に加工してもよい。
【0016】
このように、胴体部3の下端部に、胴体部周方向に互いに離間した3つの接地部14〜16が設けられているので、踏み台2は、地面あるいは床に置かれたときには、胴体部3の3つの接地部14〜16を地面ないしは床に当接させ、いわゆる三点支持状態となる。このため、踏み台2は、凹凸のある地面ないしは床の上に置かれたときでも、がたつかず、姿勢が安定する。
【0017】
図4に示すように、本発明に係る足継具1は、同一構成の1対の足継具1を左右の足の下に1つずつ装着して用いることになるが、1対の足継具1は、互いに、人の通常の歩幅程度の長さの着脱可能なロープ20(紐)で、適宜、連結することができるようになっている。なお、ロープ20に代えて、プラスチック製あるいは金属製の鎖を用いてもよい。
【0018】
図5に示すように、足継具1は、下向きに広がる緩やかなテーパを伴った容器形のものであるので、非使用時には、踵係合部5を取り外した上で、1対の足継具1を上下逆さにして重ね合わせれば(一部は重ならない)、上側が開口した踏み台2内の空間部に、踵係合部5や作業用の道具(例えば、洗車に用いる場合は、スポンジ21、洗剤22、缶入りワックス23等)を収容することができる。つまり、踏み台2は道具入れとして利用することができる。なお、1対の足継具1を上下逆さにせずに重ね合わせてもよい。いずれの場合も、1対の足継具1は、重ね合せによりコンパクトな形態となり、その収納に要するスペースを小さくすることができる。
【0019】
以下、本発明に係る足継具1の使用方法を、具体的に説明する。作業者は、その背丈より高い位置にある物に対して作業を行うとき、例えば、車高の高い乗用車(例えば、車高が2m程度のワンボックスカー)のルーフ上面の清掃を行うときには、まず、1対の足継具1を、足載せ部4が上側となる(接地部14〜16が下側となる)ようにして、地面あるいは床面上に左右に揃えて置く。次に、作業者は、左右の足がそれぞれ左右の足継具1の足載せ部4の上に位置するように、両踏み台2の上に乗る(跨る)。なお、作業者は、靴ないしは履物を履いた状態であっても、また脱いだ状態であってもよい。
【0020】
そして、作業者は、左右の足の踵が、それぞれ、対応する足継具1の踵係合部5と係合するように、両足の位置を調節する。続いて、作業者は、左右の足継具1について、それぞれ、前側及び後側の束縛ストラップ12、13で、各足を足載せ部4に固定する。具体的には、末端部がストラップ取付部7、10に固定された束縛ストラップ6、9を、足の上側を経て、ストラップ通抜部8、11の穴を右から左に通り抜けさせる。次に、束縛ストラップ6、9を強く引き締めながら、先端部の面ファスナ12、13を、中間部の面ファスナ12、13に当接させて固定する。
【0021】
これにより、足継具1の装着が終了する。かくして、足の下に足継具1を装着した作業者の背丈は、踏み台2の高さ分だけ高くなる。この状態で、作業者は、自在に歩行し、又は立ち止まることができる。したがって、作業者は、高い位置で作業を行うべき物、例えば車高の高い乗用車の近傍まで歩行し、自在に移動しつつ、所望の箇所に所望の作業、例えば乗用車のルーフの清掃などを行うことができる。
【0022】
作業者が、かかる作業を行う場合、踵係合部5と両束縛ストラップ6、9とにより、足継具1が足に強固に固定されるので、歩行時に足継具1が足から離脱することはない。そして、前記のとおり、足継具1は、下方に向かってやや広がるテーパ状であるので、地面ないしは床面上での安定性が良い。さらに、3つの接地部14〜16により三点支持状態となるので、地面あるいは床面などに凹凸がある場合でも、足継具1の姿勢が安定し、作業者は安全に歩行することができる。また、左右の足継具1が歩幅程度の長さのロープ20によって連結されているので、歩行時に歩幅が広がりすぎるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態にかかる足継具の斜視図である。
【図2】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、図1に示す足継具の、束縛ストラップを取り外した状態における上面図、側面図及び下面図である。
【図3】(a)及び(b)は、それぞれ、図1に示す足継具の、束縛ストラップを取り外した状態における背面図及び正面図である
【図4】ロープで連結された1対の足継具の正面図である。
【図5】上下を逆にして重ねられた1対の踏み台の背面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 足継具、2 踏み台、3 胴体部、4 足載せ部、5 踵係合部、6 後側の束縛ストラップ、7 ストラップ取付部、8 ストラップ通抜部、9 前側の束縛ストラップ、10 ストラップ取付部、11 ストラップ通抜部、12 面ファスナ、13 面ファスナ、14 前側接地部、15 後側接地部、16 後側接地部、17 滑り止め、18 滑り止め、19 滑り止め、20 ロープ、21 スポンジ、22 洗剤、23 缶入りワックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が足の下に装着して背丈が高くなった状態で歩行し及び立ち止まることができるようになっている足継具であって、
筒状の胴体部と、該胴体部の一方の端部を閉止するとともに足を載せることが可能な形状をもつ足載せ部と、該足載せ部の外面に設けられ足の踵と係合する踵係合部とを有する容器形の踏み台と、
上記足載せ部の外面に足を固定する固定具とを備えていることを特徴とする足継具。
【請求項2】
上記胴体部の、上記足載せ部とは反対側の端部に、周方向に互いに離間した3つの接地部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の足継具。
【請求項3】
上記各接地部の下面に、それぞれ、滑り止めが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の足継具。
【請求項4】
上記踵係合部材が、上記足載せ部から取り外すことができるようになっていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の足継具。
【請求項5】
上記固定具が、それぞれ足の前部及び後部に対応する位置に配置された、足を上記足載せ部に締め付ける、面ファスナを用いた2組の束縛ストラップであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の足継具。
【請求項6】
1対の足継具が、互いに、一定の長さの紐又は鎖で連結されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の足継具。
【請求項7】
上記踏み台が、プラスチック又は合成樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の足継具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−218026(P2006−218026A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33253(P2005−33253)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(505050979)
【Fターム(参考)】