説明

距離センサ及び距離画像センサ

【課題】高感度化を図りつつ、電荷の高速転送を実現することが可能な距離センサ及び距離画像センサを提供すること。
【解決手段】フォトゲート電極PGは、平面形状が第1方向で互いに対向する第1及び第2長辺LS1,LS2と第2方向で互いに対向する第1及び第2短辺SS1,SS2とを有する長方形状である。複数の半導体領域FD1,FD2は、第1方向でフォトゲート電極PGを挟んで対向し且つ第2方向に沿って互いに空間的に離間して配置されている。フォトゲート電極PGの直下の領域は、第1方向で対向する半導体領域FD1,FD2の間に位置する第1領域CG1と、第1領域CG1に第2方向で挟まれる第2領域CG2と、を含む。第3半導体領域SR1は、第2領域CG2に配置されている。第3半導体領域SR1は、第2領域CG2側でのポテンシャルを第1領域CG1でのポテンシャルよりも高めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離センサ及び距離画像センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクティブ型の光測距センサは、LED(Light Emitting Diode)などの投光用の光源から対象物に光を照射し、対象物における反射光を光検出素子で検出することで、対象物までの距離に応じた信号を出力するものとして知られている。PSD(Position Sensitive Detector)などは、対象物までの距離を簡易に測定することができる光三角測量型の光測距センサとして知られているが、近年、より精密な距離測定を行うため、光TOF(Time-Of-Flight)型の光測距センサの開発が期待されている。
【0003】
距離情報と画像情報を同時に、同一チップで取得できるイメージセンサが車載用、工場の自動製造システム用などにおいて求められている。車両前方にイメージセンサを設置すれば、先方車両の検知・認識、歩行者などの検知・認識に使用することが期待される。画像情報とは別に、単一の距離情報又は複数の距離情報からなる距離画像を取得するイメージセンサも期待されている。このような測距センサにはTOF法を用いることが好ましい。
【0004】
TOF法は、投光用の光源から、対象物に向けてパルス光を出射し、対象物で反射されたパルス光を光検出素子で検出することで、パルス光の出射タイミングと検出タイミングの時間差を測定している。この時間差(Δt)は、対象物までの距離dの2倍の距離(2×d)をパルス光が光速(=c)で飛行するのに要する時間であるため、d=(c×Δt)/2が成立する。時間差(Δt)は、光源からの出射パルスと検出パルスの位相差と言い換えることもできる。この位相差を検出すれば、対象物までの距離dを求めることができる。
【0005】
電荷振り分け方式のイメージセンサは、TOF法によって測距を行うための光検出素子として着目されている。すなわち、電荷振り分け方式のイメージセンサでは、例えば、検出パルスの入射に応じてイメージセンサ内において発生するパルス的に発生する電荷を、出射パルスのON期間の間に一方のポテンシャル井戸内に振り分け、OFF期間の間に他方のポテンシャル井戸に振り分ける。この場合、左右に振り分けられた電荷量の比率が、検出パルスと出射パルスの位相差、すなわち、対象物までの距離の2倍の距離をパルス光が光速で飛行するのに要する時間に比例することになる。なお、電荷の振り分け方法としては種々のものが考えられる。
【0006】
特許文献1には、入射光に応じて電荷が発生する電荷発生領域と、空間的に離間して配置され、電荷発生領域からの信号電荷を収集する一対の信号電荷収集領域と、信号電荷収集領域のそれぞれに設けられ、異なる位相の電荷転送信号が与えられる転送電極と、を備えているTOF型の距離センサ(距離画像センサ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/119626号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電荷発生領域の平面形状として、電荷発生領域の面積を増加させて高感度化を図る、及び、信号電荷収集領域の対向方向での電荷の転送速度を高める、などの観点から、互いに対向する第1及び第2長辺と互いに対向する第1及び第2短辺とを有する長方形状が採用されることがある。この場合、信号電荷収集領域は、第1及び第2長辺の対向方向で電荷発生領域を挟んで対向するように配置される。
【0009】
しかしながら、電荷発生領域の平面形状が上記長方形状とされ、信号電荷収集領域が、第1及び第2長辺の対向方向で電荷発生領域を挟んで対向するように配置された場合、以下のような問題点が生じる懼れがあることが新たに判明した。
【0010】
第1及び第2長辺の対向方向では、転送電極及び信号電荷収集領域による電界が作用することから、電荷発生領域に発生した電荷を高速に転送することが可能であるものの、第1及び第2短辺の対向方向では、転送電極及び信号電荷収集領域による電界が十分に作用し難く、特に、電荷発生領域の第1及び第2短辺近くで発生した電荷を高速で転送することは困難となる。
【0011】
信号電荷収集領域及び転送電極を、それぞれ第1及び第2短辺の対向方向に伸ばすことにより、電荷発生領域の第1及び第2短辺近くで発生した電荷を高速で転送することは可能となる。しかしながら、信号電荷収集領域を第1及び第2短辺の対向方向に伸ばすことにより、信号電荷収集領域の面積が大きくなると、下記の理由により、距離センサの感度が低下してしまう。信号電荷収集領域に転送された電荷(Q)は、信号電荷収集領域の静電容量(Cfd)により、下記関係式で示される電圧変化(ΔV)を発生させる。
ΔV=Q/Cfd
信号電荷収集領域の面積が増加すると、信号電荷収集領域の静電容量も増加し、発生する電圧変化が小さくなる。すなわち、電荷電圧変換ゲインが低くなる。このため、距離センサの感度が低下することとなる。
【0012】
上述したように、距離センサの高感度化を図るためには、信号電荷収集領域の面積は小さくせざるを得ず、信号電荷収集領域の第1及び第2短辺の対向方向での長さは、電荷発生領域の第1及び第2短辺の対向方向での長さよりも短く設定することが求められる。このため、転送電極を第1及び第2短辺の対向方向で伸ばしたとしても、転送電極直下の領域を第1及び第2短辺の対向方向に電荷を転送することは困難であり、依然として、電荷の転送速度が低いという問題点は解決できない。
【0013】
本発明は、高感度化を図りつつ、電荷の高速転送を実現することが可能な距離センサ及び距離画像センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る距離センサは、入射光に応じて電荷を発生し、且つその平面形状が互いに対向する第1及び第2長辺と互いに対向する第1及び第2短辺とを有する長方形状である電荷発生領域と、第1長辺と第2長辺とが対向する第1方向で電荷発生領域を挟んで対向し且つ第1短辺と第2短辺とが対向する第2方向に沿って互いに空間的に離間して配置され、電荷発生領域からの信号電荷を収集する複数の信号電荷収集領域と、信号電荷収集領域と電荷発生領域との間にそれぞれ配置され、異なる位相の電荷転送信号が与えられる転送電極と、電荷発生領域における第1方向で対向する電荷収集領域の間に位置する第1領域同士に第2方向で挟まれる第2領域に配置され、電荷発生領域の第2領域でのポテンシャルを第1領域でのポテンシャルよりも高めるポテンシャル調整手段と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る距離センサでは、ポテンシャル調整手段により、電荷発生領域の第2領域でのポテンシャルが、第1領域でのポテンシャルよりも高められている。このため、電荷発生領域の第2領域近くで発生した電荷は、ポテンシャルの高低差により、第1領域に向かって第2方向に移動し易くなる。電荷発生領域の第1領域に向かって第2方向に移動してきた電荷は、転送電極及び信号電荷収集領域による電界により、高速に転送される。したがって、信号電荷収集領域の対向方向(第1方向)での長さよりも当該対向方向に直交する方向(第2方向)での長さを長く設定することにより電荷発生領域の大面積化を図る、すなわち、電荷発生領域の平面形状を上記長方形状とすること、及び、信号電荷収集領域の面積を小さく設定することにより、高感度化を図った場合であっても、電荷発生領域にて生じた電荷を高速に転送することができる。
【0016】
ポテンシャル調整手段は、電荷発生領域と同じ導電型であり、電荷発生領域よりも不純物濃度が高い半導体領域であってもよい。この場合、第2方向で電荷発生領域を挟んで対向して配置される半導体領域の不純物濃度が電荷発生領域よりも高いので、ポテンシャルの高低差を大きくすることができる。不純物濃度を調整することにより上記半導体領域を形成することができるため、ポテンシャル調整手段を簡易に実現することができる。
【0017】
電荷発生領域上に配置されるフォトゲート電極を更に備えており、ポテンシャル調整手段は、フォトゲート電極に与えられる電位よりも低い電位が与えられる電極であってもよい。この場合、第2方向で電荷発生領域を挟んで対向して配置される電極に与えられる電位がフォトゲート電極に与えられる電位よりも低いので、ポテンシャルの高低差を大きくすることができる。電極といった簡易な構成により、ポテンシャル調整手段を容易に実現することができる。
【0018】
本発明に係る距離画像センサは、一次元状又は二次元状に配置された複数のユニットからなる撮像領域を半導体基板上に備え、ユニットから出力される電荷量に基づいて、距離画像を得る距離画像センサにおいて、1つのユニットは、上記距離センサであることを特徴とする。本発明では、上述したように、電荷発生領域の平面形状を上記長方形状とすること、及び、信号電荷収集領域の面積を小さく設定することにより、高感度化を図った場合であっても、電荷発生領域にて生じた電荷を高速に転送することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高感度化を図りつつ、電荷の高速転送を実現することが可能な距離センサ及び距離画像センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る測距装置の構成を示す説明図である。
【図2】距離画像センサの断面構成を説明するための図である。
【図3】距離画像センサの概略平面図である。
【図4】距離画像センサの画素の構成を説明するための模式図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿った断面構成を示す図である。
【図6】図4におけるVI−VI線に沿った断面構成を示す図である。
【図7】信号電荷の蓄積動作を説明するための、ポテンシャル分布を示す図である。
【図8】信号電荷の蓄積動作を説明するための、ポテンシャル分布を示す図である。
【図9】画素の構成を説明するための模式図である。
【図10】各種信号のタイミングチャートである。
【図11】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【図12】図11におけるXII−XII線に沿った断面構成を示す図である。
【図13】画素の構成を説明するための模式図である。
【図14】各種信号のタイミングチャートである。
【図15】信号電荷の蓄積動作を説明するための、ポテンシャル分布を示す図である。
【図16】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【図17】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【図18】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【図19】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【図20】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【図21】距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、測距装置の構成を示す説明図である。
【0023】
この測距装置は、距離画像センサ1と、近赤外光を出射する光源3と、光源3にパルス駆動信号Sを与える駆動回路4と、距離画像センサ1の各画素に含まれる第1及び第2ゲート電極(TX1,TX2:図4参照)に、パルス駆動信号Sに同期した検出用ゲート信号S、Sを与える制御回路2と、距離画像センサ1の第1〜第2半導体領域(FD1〜FD2:図4参照)から読み出された距離情報を示す信号d’(m,n)から、歩行者などの対象物Hまでの距離を演算する演算回路5を備えている。距離画像センサ1から対象物Hまでの水平方向Dの距離をdとする。
【0024】
制御回路2は、パルス駆動信号Sを駆動回路4のスイッチ4bに入力している。LED又はレーザダイオードからなる投光用の光源3は、スイッチ4bを介して電源4aに接続されている。したがって、スイッチ4bにパルス駆動信号Sが入力されると、パルス駆動信号Sと同じ波形の駆動電流が光源3に供給され、光源3からは測距用のプローブ光としてのパルス光Lが出力される。
【0025】
パルス光Lが対象物Hに照射されると、対象物Hによってパルス光が反射され、パルス光Lとして、距離画像センサ1に入射して、パルス検出信号Sを出力する。
【0026】
距離画像センサ1は、配線基板10上に固定されており、配線基板10上の配線を介して、距離情報を有する信号d’(m,n)が各画素から出力される。
【0027】
パルス駆動信号Sの波形は、周期Tの方形波であり、ハイレベルを「1」、ローレベルを「0」とすると、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・パルス駆動信号S
V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
V(t+T)=V(t)
【0028】
検出用ゲート信号S、Sの波形は、周期Tの方形波であり、その電圧V(t)は以下の式で与えられる。
・検出用ゲート信号S
V(t)=1(但し、0<t<(T/2)の場合)
V(t)=0(但し、(T/2)<t<Tの場合)
V(t+T)=V(t)
・検出用ゲート信号S(=Sの反転):
V(t)=0(但し、0<t<(T/2)の場合)
V(t)=1(但し、(T/2)<t<Tの場合)
V(t+T)=V(t)
【0029】
上記パルス信号S,S,S,Sは、全てパルス周期2×Tを有していることとする。検出用ゲート信号S及びパルス検出信号Sが共に「1」のときに距離画像センサ1内で発生する電荷量をQ1、検出用ゲート信号S及びパルス検出信号Sが共に「1」のときに距離画像センサ1内で発生する電荷量をQ2とする。
【0030】
距離画像センサ1における一方の検出用ゲート信号Sとパルス検出信号Sの位相差は、他方の検出用ゲート信号Sとパルス検出信号Sが「1」の時の重複期間において、距離画像センサ1において発生した電荷量Q2に比例する。すなわち、電荷量Q2は、検出用ゲート信号Sとパルス検出信号Sの論理積が「1」である期間において発生した電荷量である。1画素内において発生する全電荷量をQ1+Q2とし、駆動信号Sの半周期のパルス幅をTとすると、Δt=T×Q2/(Q1+Q2)の期間だけ、駆動信号Sに対してパルス検出信号Sが遅れていることになる。1つのパルス光の飛行時間Δtは、対象物までの距離をd、光速をcとすると、Δt=2d/cで与えられるため、特定の画素からの距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力されると、演算回路5は、入力された電荷量Q1,Q2と、予め判明している半周期パルス幅Tに基づいて、対象物Hまでの距離d=(c×Δt)/2=c×T×Q2/(2×(Q1+Q2))を演算する。
【0031】
上述のように、電荷量Q1、Q2を分離して読み出せば、演算回路5は、距離dを演算することができる。なお、上述のパルスは繰り返して出射され、その積分値を各電荷量Q1,Q2として出力することができる。
【0032】
電荷量Q1,Q2の全体電荷量に対する比率は、上述の位相差、すなわち、対象物Hまでの距離に対応している。演算回路5は、この位相差に応じて対象物Hまでの距離を演算している。上述のように、位相差に対応する時間差をΔtとすると、距離dは、好適にはd=(c×Δt)/2で与えられるが、適当な補正演算をこれに加えて行ってもよい。例えば、実際の距離と、演算された距離dとが異なる場合、後者を補正する係数βを予め求めておき、出荷後の製品では演算された距離dに係数βを乗じたものを最終的な演算距離dとしてもよい。外気温度を測定しておき、外気温度に応じて光速cが異なる場合には、光速cを補正する演算を行ってから、距離演算を行うこともできる。演算回路に入力された信号と、実際の距離との関係を予めメモリに記憶しておき、ルックアップテーブル方式によって、距離を演算してもよい。センサ構造によっても演算方法は変更することができ、これには従来から知られている演算方法を用いることができる。
【0033】
図2は、距離画像センサの断面構成を説明するための図である。
【0034】
距離画像センサ1は、表面入射型の距離画像センサであって、半導体基板1Aを備えている。距離画像センサ1には、半導体基板1Aの光入射面1FTからパルス光Lが入射する。距離画像センサ1の光入射面1FTとは逆側の裏面1BKは、接着領域ADを介して配線基板10に接続されている。接着領域ADは、絶縁性の接着剤やフィラーを有している。距離画像センサ1は、所定の位置に開口が形成された遮光層LIを備えている。遮光層LIは、光入射面1FTの前方に配置されている。
【0035】
図3は、距離画像センサの概略平面図である。
【0036】
距離画像センサ1では、半導体基板1Aが、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1Bを有している。各画素P(m,n)からは、上述の距離情報を有する信号d’(m,n)として2つの電荷量(Q1,Q2)が出力される。各画素P(m,n)は微小測距センサとして対象物Hまでの距離に応じた信号d’(m,n)を出力する。したがって、対象物Hからの反射光を、撮像領域1Bに結像すれば、対象物H上の各点までの距離情報の集合体としての対象物の距離画像を得ることができる。一つの画素P(m,n)は、一つの距離センサとして機能する。
【0037】
図4は、距離画像センサの画素の構成を説明するための模式図である。図5は、図4におけるV−V線に沿った断面構成を示す図である。図6は、図4におけるVI−VI線に沿った断面構成を示す図である。図4では、導体11の図示を省略している。
【0038】
距離画像センサ1は、互いに対向する光入射面1FTと裏面1BKとを有する半導体基板1Aを備えている。半導体基板1Aは、裏面1BK側に位置するp型の第1基板領域1Aaと、第1基板領域1Aaよりも不純物濃度が低く且つ光入射面1FT側に位置するp型の第2基板領域1Abと、からなる。半導体基板1Aは、例えば、p型の半導体基板上に、当該半導体基板よりも不純物濃度が低いp型のエピタキシャル層を成長させることにより得ることができる。
【0039】
距離画像センサ1は、各画素P(m,n)において、フォトゲート電極PGと、それぞれ複数(本実施形態では、3つ)の第1及び第2ゲート電極TX1,TX2と、それぞれ複数(本実施形態では、3つ)の第1及び第2半導体領域FD1,FD2と、複数(本実施形態では、2つ)の第3半導体領域SR1と、を備えている。フォトゲート電極PGは、光入射面1FT上に絶縁層1Eを介して設けられている。各第1及び第2ゲート電極TX1,TX2は、光入射面1FT上において絶縁層1Eを介してフォトゲート電極PGに隣接して設けられている。各第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、対応するゲート電極TX1,TX2の直下の領域に流れ込む電荷を蓄積する。第3半導体領域SR1は、第1及び第2半導体領域FD1,FD2と逆の導電型である。本例の半導体基板1AはSiからなり、絶縁層1EはSiOからなる。
【0040】
フォトゲート電極PGは、平面形状が互いに対向する第1及び第2長辺LS1,LS2と互いに対向する第1及び第2短辺SS1,SS2とを有する長方形状を呈している。本実施形態では、第1及び第2長辺LS1,LS2の長さと、第1及び第2短辺SS1,SS2の長さとの比は、例えば1:2〜1:15程度に設定される。フォトゲート電極PGはポリシリコンからなるが、他の材料を用いてもよい。
【0041】
半導体基板1Aにおけるフォトゲート電極PGに対応する領域(フォトゲート電極PGの直下の領域)は、入射光に応じて電荷が発生する電荷発生領域として機能する。したがって、電荷発生領域はフォトゲート電極PGに対応した平面形状、すなわち互いに対向する第1及び第2長辺と互いに対向する第1及び第2短辺とを有する長方形状を呈することとなる。
【0042】
各第1半導体領域FD1は、フォトゲート電極PGの第1長辺LS1側において当該第1長辺LS1に沿って互いに空間的に離間して配置されている。各第2半導体領域FD2は、フォトゲート電極PGの第2長辺LS2側において当該第2長辺LS2に沿って互いに空間的に離間して配置されている。第1半導体領域FD1と第2半導体領域FD2とは、第1及び第2長辺LS1,LS2の対向方向で、フォトゲート電極PGを挟んで対向している。第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、平面視で矩形状を呈している。第1及び第2半導体領域FD1,FD2の、第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向での長さと、第1及び第2短辺SS1,SS2の長さとの比は、例えば1:0.5〜1:2程度に設定される。本実施形態では、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、正方形状を呈している。第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、信号電荷収集領域として機能する。
【0043】
フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)は、複数(本実施形態では、3つ)の第1領域CG1と、複数(本実施形態では、2つ)の第2領域CG2と、を含んでいる。第1領域CG1は、第1及び第2長辺LS1,LS2の対向方向で対向する第1及び第2半導体領域FD1,FD2の間に位置している。第2領域CG2は、第1領域CG1同士に第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向で挟まれている。
【0044】
第1ゲート電極TX1は、フォトゲート電極PGと第1半導体領域FD1との間にそれぞれ設けられている。第2ゲート電極TX2は、フォトゲート電極PGと第2半導体領域FD2との間にそれぞれ設けられている。第1及び第2ゲート電極TX1,TX2は、平面視で矩形状を呈している。本実施形態では、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2は、第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向をその長辺方向とする長方形状を呈している。第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の長辺方向、すなわち、フォトゲート電極PGの第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向での長さと、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の短辺方向での長さとの比は、例えば1:2〜1:15程度に設定される。第1及び第2ゲート電極TX1,TX2はポリシリコンからなるが、これらは他の材料を用いてもよい。第1及び第2ゲート電極TX1,TX2は、転送電極として機能する。
【0045】
第3半導体領域SR1は、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)の第2領域CG2に配置されている。第3半導体領域SR1は、第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向で第1領域CG1を挟んで対向して配置されている。第3半導体領域SR1は、平面視で矩形状を呈している。第3半導体領域SR1は、第1短辺SS1と第2短辺SS2との間にわたって設けられている。本実施形態では、第3半導体領域SR1は、第1及び第2長辺LS1,LS2の対向方向をその長辺方向とする長方形状を呈している。
【0046】
第1及び第2半導体領域FD1,FD2は高不純物濃度のn型半導体からなる領域であり、フローティング・ディフュージョン領域である。第3半導体領域SR1は、半導体基板1Aと同じ導電型であり且つ半導体基板1Aよりも不純物濃度が高い、すなわち高不純物濃度のp型半導体からなる領域である。第3半導体領域SR1は、p型ウエル領域であってもよく、また、p型拡散領域であってもよい。
【0047】
各領域の厚さ/不純物濃度は以下の通りである。
・半導体基板1Aの第1基板領域1Aa:厚さ5〜700μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
・半導体基板1Aの第2基板領域1Ab:厚さ3〜30μm/不純物濃度1×1013〜1016cm−3
・第1及び第2半導体領域FD1,FD2:厚さ0.1〜0.4μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
・第3半導体領域SR1:厚さ1〜5μm/不純物濃度1×1016〜1018cm−3
【0048】
絶縁層1Eには、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の表面を露出させるためのコンタクトホールが設けられている。コンタクトホール内には、第1及び第2半導体領域FD1,FD2を外部に接続するための導体11が配置される。
【0049】
遮光層LIには、フォトゲート電極PGに対応する位置に開口LIaが形成されている。したがって、遮光層LIの開口LIaを通して、半導体基板1A(フォトゲート電極PGの直下の領域)に光が入射する。半導体基板1Aにおける第1及び第2半導体領域FD1,FD2が配置された領域は、遮光層LIに覆われており、第1及び第2半導体領域FD1,FD2に光が入射するのを防止している。これにより、第1及び第2半導体領域FD1,FD2に入射した光による不要電荷の発生を防止することができる。遮光層LIは、例えば、アルミニウムなどのメタル(金属)等からなる。
【0050】
第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に、ハイレベルの信号(正電位)を与えると、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の下のポテンシャルが半導体基板1Aにおけるフォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルに対して低くなる。これにより、負の電荷(電子)は、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の方向に引き込まれ、第1及び第2半導体領域FD1,FD2によって形成されるポテンシャル井戸内に蓄積される。n型の半導体は、正にイオン化したドナーを含んでおり、正のポテンシャルを有し、電子を引き付ける。第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に、ローレベルの信号(グランド電位)を与えると、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2によるポテンシャル障壁が生じる。したがって、半導体基板1Aで発生した電荷は、第1及び第2半導体領域FD1,FD2内には引き込まれない。
【0051】
距離画像センサ1では、投光用の光の入射に応答して半導体深部で発生した電荷を、光入射面1FT側に設けられたポテンシャル井戸に引き込み、高速で正確な測距が可能としている。
【0052】
半導体基板1Aの光入射面1FTから入射した対象物からのパルス光Lは、半導体基板1Aの表面側に設けられたフォトゲート電極PGの直下の領域に至る。パルス光の入射に伴って半導体基板1A内で発生した電荷は、フォトゲート電極PGの直下の領域から、これに隣接する第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の直下の領域に振り分けられる。すなわち、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に光源の駆動信号Sに同期した検出用ゲート信号S,Sを、配線基板10を介して、交互に与えると、フォトゲート電極PGの直下の領域で発生した電荷が、それぞれ第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の直下の領域に流れ、これらから第1及び第2半導体領域FD1,FD2に流れ込む。
【0053】
第1半導体領域FD1又は第2半導体領域FD2内に蓄積された電荷量Q1,Q2の全体電荷量(Q1+Q2)に対する比率は、駆動信号Sを光源に与えることによって出射された出射パルス光と、対象物Hによって出射パルス光が反射されることによって戻ってきた検出パルス光の位相差に対応する。
【0054】
距離画像センサ1は、図示は省略するが、半導体基板1Aの電位を基準電位に固定するためのバックゲート半導体領域を備えている。
【0055】
図7及び図8は、信号電荷の蓄積動作を説明するための、半導体基板1Aの光入射面1FT近傍におけるポテンシャル分布を示す図である。図7及び図8では、下向きがポテンシャルの正方向である。
【0056】
光入射時において、フォトゲート電極PGに与えられる電位(第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に与えられる高い方の電位と低い方の電位の中間の電位)により、フォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGは、基板電位よりも若干高く設定されている。図には、第1ゲート電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1、第2ゲート電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2、第1半導体領域FD1のポテンシャルφFD1、及び、第2半導体領域FD2のポテンシャルφFD2が示されている。
【0057】
検出用ゲート信号Sの高電位が、第1ゲート電極TX1に入力されると、図7(a)に示されるように、フォトゲート電極PGの直下で発生した電荷は、ポテンシャル勾配にしたがって、第1ゲート電極TX1の直下の領域を介して、第1半導体領域FD1のポテンシャル井戸内に蓄積される。第1半導体領域FD1のポテンシャル井戸内には電荷量Q1が蓄積されることとなる。
【0058】
このとき、図8に示されるように、第3半導体領域SR1が配置されていることにより、フォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGは、第2領域CG2側で高められている。したがって、フォトゲート電極PGの直下の領域には、第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向において、第2領域CG2側から第1領域CG1側に向かって低くなるポテンシャルの勾配が形成されている。
【0059】
フォトゲート電極PGの直下の領域における第2領域CG2近くで発生した電荷は、第3半導体領域SR1により形成される上記ポテンシャルの勾配にしたがって加速され、第1領域CG1に向かって速やかに移動する。そして、移動してきた電荷は、上述したように、第1ゲート電極TX1及び第1半導体領域FD1の電界により形成されるポテンシャルの勾配にしたがって、第1ゲート電極TX1の直下の領域を介して、第1半導体領域FD1のポテンシャル井戸内に蓄積される。
【0060】
検出用ゲート信号Sに続いて、検出用ゲート信号Sの高電位が、第2ゲート電極TX2に入力されると、図7(b)に示されるように、フォトゲート電極PGの直下で発生した電荷は、ポテンシャル勾配にしたがって、第2ゲート電極TX2の直下の領域を介して、第2半導体領域FD2のポテンシャル井戸内に蓄積される。第2半導体領域FD2のポテンシャル井戸内には電荷量Q2が蓄積されることとなる。
【0061】
このときも、図8に示されるように、第3半導体領域SR1が配置されていることにより、フォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGは、第2領域CG2側で高められている。したがって、フォトゲート電極PGの直下の領域には、第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向において、第2領域CG2側から第1領域CG1に向かって低くなるポテンシャルの勾配が形成されている。
【0062】
フォトゲート電極PGの直下の領域における第2領域CG2近くで発生した電荷は、第3半導体領域SR1により形成される上記ポテンシャルの勾配にしたがって加速され、第1領域CG1に向かって速やかに移動する。そして、移動してきた電荷は、上述したように、第2ゲート電極TX2及び第2半導体領域FD2の電界により形成されるポテンシャルの勾配にしたがって、第2ゲート電極TX2の直下の領域を介して、第2半導体領域FD2のポテンシャル井戸内に蓄積される。
【0063】
図9は、画素の構成を説明するための模式図である。
【0064】
第1ゲート電極TX1には、検出用ゲート信号Sが与えられる。第2ゲート電極TX2には、検出用ゲート信号Sが与えられる。すなわち、第1ゲート電極TX1と、第2ゲート電極TX2とには、異なる位相の電荷転送信号が与えられる。
【0065】
フォトゲート電極PGの直下の領域において発生した電荷は、第1ゲート電極TX1にハイレベルの検出用ゲート信号Sが与えられている場合には、第1半導体領域FD1によって構成されるポテンシャル井戸に信号電荷として流れ込む。第1半導体領域FD1に蓄積された信号電荷は、蓄積された電荷量Qに対応した出力(Vout1)として第1半導体領域FD1から読み出される。フォトゲート電極PGの直下の領域において発生した電荷は、第2ゲート電極TX2にハイレベルの検出用ゲート信号Sが与えられている場合には、第2半導体領域FD2によって構成されるポテンシャル井戸に信号電荷として流れ込む。第2半導体領域FD2に蓄積された信号電荷は、蓄積された電荷量Qに対応した出力(Vout2)として第2半導体領域FD2から読み出される。これらの出力(Vout1,Vout2)は、上述した信号d’(m,n)に相当する。
【0066】
図10は、実際の各種信号のタイミングチャートである。
【0067】
1フレームの期間Tは、信号電荷を蓄積する期間(蓄積期間)Taccと、信号電荷を読み出す期間(読み出し期間)Troと、からなる。1つの画素に着目すると、蓄積期間Taccにおいて、複数のパルスを有するパルス駆動信号Sに基づいた信号が光源に印加され、これに同期して、検出用ゲート信号S,Sが互いに逆位相で第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に印加される。なお、距離測定に先立って、リセット信号resetが第1及び第2半導体領域FD1,FD2に印加され、内部に蓄積された電荷が外部に排出される。本例では、リセット信号resetが一瞬ONし、続いてOFFした後、複数の駆動振動パルスが逐次印加され、更に、これに同期して電荷転送が逐次的に行われ、第1及び第2半導体領域FD1,FD2内に信号電荷が積算して蓄積される。その後、読み出し期間Troにおいて、第1及び第2半導体領域FD1,FD2内に蓄積された信号電荷が読み出される。
【0068】
電荷を振分ける際には、第1ゲート電極TX1と第2ゲート電極TX2のうち、通常は、一方のゲート電極(例えば、第1ゲート電極TX1)に正のハイレベルの検出用信号が与えられると共に、他方のゲート電極(例えば、第2ゲート電極TX2)には180度位相が異なった検出用信号が与えられる。このとき、他方のゲート電極(例えば、第2ゲート電極TX2)に印加する検出用信号をよりローレベル(例えば、グランド電位)を印加すると、第2ゲート電極TX2の直下のポテンシャルが上がり、ポテンシャルの山が形成される。これにより、電荷がフォトゲート電極PG側から第2半導体領域FD2へ流れ難くなり、不要なノイズ成分の発生を抑制することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、フォトゲート電極PGの平面形状が長方形状に設定されている。これにより、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)の面積を増加させて距離画像センサ1の高感度化を図りつつ、第1及び第2半導体領域FD1,FD2での電荷の転送速度を高めることができる。
【0070】
そして、本実施形態では、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向での長さがフォトゲート電極PGの第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向での長さよりも極めて小さく設定され、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の面積もフォトゲート電極PGの面積に比して小さく設定されている。このため、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)における第1及び第2半導体領域FD1,FD2に電荷を転送可能な領域の面積に対し、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の面積が相対的に大きく低減されることとなる。第1及び第2半導体領域FD1,FD2に転送されて、蓄積された電荷(電荷量Q1,Q2)は、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の静電容量(Cfd)により、下記関係式で示される電圧変化(ΔV)をそれぞれ発生させる。
ΔV=Q1/Cfd
ΔV=Q2/Cfd
したがって、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の面積が低減されると、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の静電容量(Cfd)も低減され、発生する電圧変化(ΔV)が大きくなる。すなわち、電荷電圧変換ゲインが高くなる。このことからも、距離画像センサ1の高感度化を図ることができる。
【0071】
ところで、本実施形態では、第3半導体領域SR1により、フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)の第2領域CG2側でのポテンシャルが、第1領域CG1でのポテンシャルよりも高められており、第1領域CG1に向かって低くされたポテンシャルの勾配が形成されている。このため、フォトゲート電極PGの直下の領域における第2領域CG2近くで発生した電荷は、上記ポテンシャルの勾配により、第1領域CG1に向かって第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向に移動し易くなる。第2領域CG2側から第1領域CG1に向かって第1及び第2短辺SS1,SS2の対向方向に移動してきた電荷は、第1ゲート電極TX1及び第1半導体領域FD1による電界、又は、第2ゲート電極TX2及び第2半導体領域FD2による電界により、高速に転送される。したがって、フォトゲート電極PG(電荷発生領域)の平面形状が長方形状に設定することにより大面積化を図る、及び、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の面積を極めて小さく設定することにより、高感度化を図った場合であってもフォトゲート電極PGの直下の領域にて生じた電荷を高速に転送することができる。
【0072】
本実施形態では、半導体基板1Aの不純物濃度を調整することにより第3半導体領域SR1を形成している。このため、フォトゲート電極PGの直下の領域における第2領域CG2側でのポテンシャルを第1領域CG1でのポテンシャルよりも高めるための構成を簡易に実現することができる。
【0073】
次に、図11及び図12を参照して、距離画像センサ1の変形例について説明する。図11は、距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。図12は、図11におけるXII−XII線に沿った断面構成を示す図である。本変形例は、第3半導体領域SR1の代わりに、ポテンシャル調整電極ELを備える点で上記実施形態と相違する。図11では、導体11の図示を省略している。
【0074】
距離画像センサ1は、各画素P(m,n)において、フォトゲート電極PGと、それぞれ複数(本変形例では、3つ)の第1及び第2ゲート電極TX1,TX2と、それぞれ複数(本変形例では、3つ)の第1及び第2半導体領域FD1,FD2と、複数(本変形例では、2つ)のポテンシャル調整電極ELと、を備えている。ポテンシャル調整電極ELは、光入射面1FT上において絶縁層1Eを介してフォトゲート電極PGに隣接して設けられている。
【0075】
本変形例では、上述した実施形態と同じく、電荷発生領域は、その平面形状が互いに対向する第1及び第2長辺と互いに対向する第1及び第2短辺とを有する長方形状を呈している。電荷発生領域は、複数(本実施形態では、3つ)の第1領域CG1と、複数(本実施形態では、2つ)の第2領域CG2と、を含んでいる。
【0076】
ポテンシャル調整電極ELは、電荷発生領域の第2領域CG2上に配置されている。ポテンシャル調整電極ELは、電荷発生領域の第1及び第2短辺の対向方向で第1領域CG1を挟んで対向して配置されている。ポテンシャル調整電極ELは、平面視で矩形状を呈している。本実施形態では、ポテンシャル調整電極ELは、電荷発生領域の第1及び第2長辺の対向方向をその長辺方向とする長方形状を呈している。電荷発生領域の第1及び第2長辺の対向方向でのポテンシャル調整電極ELの長さと、電荷発生領域の第1及び第2短辺の対向方向でのポテンシャル調整電極ELの長さとの比は、例えば1:2〜1:15程度に設定される。ポテンシャル調整電極ELはポリシリコンからなるが、これらは他の材料を用いてもよい。
【0077】
ポテンシャル調整電極ELは、電荷発生領域の第1短辺と第2短辺との間にわたって設けられている。このため、本変形例では、フォトゲート電極PGは、フォトゲート電極PGの直下の領域の第1領域CG1毎に、複数分割されて設けられている。ポテンシャル調整電極ELがポリシリコンからなるため、光はポテンシャル調整電極ELを透過して半導体基板1Aに入射する。したがって、半導体基板1Aにおけるポテンシャル調整電極ELの直下の領域も電荷発生領域として機能する。
【0078】
ポテンシャル調整電極ELには、図13及び図14に示されるように、ポテンシャル調整信号Sにより、フォトゲート電極PGに与えられる電位(PPG)よりも低い電位(第1及び第2ゲート電極TX1,TX2に与えられる高い方の電位と低い方の電位の中間の電位)が与えられている。図13は、画素の構成を説明するための模式図である。図14は、実際の各種信号のタイミングチャートであり、ポテンシャル調整信号Sを除く他の信号は図10に示された信号と同じである。ポテンシャル調整信号Sは、制御回路2から与えられる。
【0079】
本変形例では、ポテンシャル調整電極ELに、フォトゲート電極PGに与えられる電位よりも低い電位が与えられているので、図15に示されるように、フォトゲート電極PGの直下の領域のポテンシャルφPGは、第2領域CG2側で高められている。したがって、フォトゲート電極PGの直下の領域には、第2領域CG2側から第1領域CG1に向かって低くなるポテンシャルの勾配が形成されている。
【0080】
電荷発生領域の第2領域CG2近くで発生した電荷は、ポテンシャル調整電極ELにより形成される上記ポテンシャルの勾配にしたがって加速され、第1領域CG1に向かって速やかに移動する。そして、移動してきた電荷は、上記実施形態と同じく、第1ゲート電極TX1及び第1半導体領域FD1の電界により形成されるポテンシャルの勾配、又は、第2ゲート電極TX2及び第2半導体領域FD2の電界により形成されるポテンシャルの勾配にしたがって、第1半導体領域FD1のポテンシャル井戸内又は第2半導体領域FD2のポテンシャル井戸内に蓄積される。
【0081】
以上のように、本変形例においても、上記実施形態と同様に、電荷発生領域の平面形状が長方形状に設定することにより大面積化を図る、及び、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の面積を極めて小さく設定することにより、高感度化を図った場合であっても電荷発生領域にて生じた電荷を高速に転送することができる。
【0082】
本変形例では、ポテンシャル調整電極ELにより、電荷発生領域における第2領域CG2側でのポテンシャルを第1領域CG1でのポテンシャルよりも高めている。このため、電荷発生領域における第2領域CG2側でのポテンシャルを第1領域CG1でのポテンシャルよりも高めるための構成を簡易に実現することができる。
【0083】
次に、図16及び図17を参照して、距離画像センサ1の変形例について説明する。図16及び図17は、距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。本変形例では、第3半導体領域SR1又はポテンシャル調整電極ELの形状が、上記実施形態と相違する。図16及び図17でも、上述した導体11の図示を省略している。
【0084】
第3半導体領域SR1は、図16に示されるように、平面視で円形状を呈している。ポテンシャル調整電極ELも、図16に示されるように、平面視で円形状を呈している。本変形例においても、電荷発生領域における第2領域CG2側でのポテンシャルが第1領域CG1でのポテンシャルよりも高められる。
【0085】
次に、図18及び図19を参照して、距離画像センサ1の変形例について説明する。図18及び図19は、距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。本変形例では、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2の形状が、上記実施形態と相違する。図18及び図19でも、上述した導体11の図示を省略している。
【0086】
図18及び図19に示されるように、第1ゲート電極TX1は、複数の第1半導体領域FD1にわたるように、第1長辺LS1に沿って伸びていてもよい。同様に、第2ゲート電極TX2も、複数の第2半導体領域FD2にわたるように、第2長辺LS2に沿って伸びていてもよい。このように、第1及び第2ゲート電極TX1,TX2は、半導体領域FD1,FD2毎に分割して設けられていてもよく、また、複数の半導体領域FD1,FD2にわたって一体的に設けられていてもよい。
【0087】
次に、図20及び図21を参照して、距離画像センサ1の変形例について説明する。図20及び図21は、距離画像センサの変形例における画素の構成を説明するための模式図である。本変形例では、第1及び第2半導体領域FD1,FD2の配置が、上記実施形態と相違する。図20及び図21でも、上述した導体11の図示を省略している。
【0088】
図20に示された変形例では、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、フォトゲート電極PGの第1長辺LS1側において当該第1長辺LS1に沿って互いに空間的に離間し且つ交互に配置されている。フォトゲート電極PGの第2長辺LS2側においても、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、フォトゲート電極PGの第2長辺LS2に沿って互いに空間的に離間し且つ交互に配置されている。
【0089】
図21に示された変形例では、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、電荷発生領域の一方の長辺側において当該長辺に沿って互いに空間的に離間し且つ交互に配置されている。電荷発生領域の他方の長辺側においても、第1及び第2半導体領域FD1,FD2は、電荷発生領域の他方の長辺に沿って互いに空間的に離間し且つ交互に配置されている。
【0090】
図20と及び図21に示された変形例では、対向する2つの長辺に第1及び第2半導体領域FD1,FD2がそれぞれ配置されている。製造工程において、例えば、フォトマスクが一方の長辺側に位置ずれした場合、一方の長辺側に配置された第1及び第2半導体領域FD1,FD2への電荷の転送に支障が生じ、一方の長辺側に配置された第1及び第2半導体領域FD1,FD2に蓄積される電荷量が減少する。これに対して、他方の長辺側に配置された第1及び第2半導体領域FD1,FD2へは電荷が転送され易くなることから、他方の長辺側に配置された第1及び第2半導体領域FD1,FD2に蓄積される電荷量が増加する。この結果、一方の長辺側に配置された第1及び第2半導体領域FD1,FD2にて蓄積される電荷量の減少分が、他方の長辺側に配置された第1及び第2半導体領域FD1,FD2に蓄積される電荷量の増加分で補われることとなり、電荷量のアンバランスが相殺される。このように、図20と及び図21に示された変形例では、フォトマスクの位置ずれに対して、特性が変化するのを抑制できるという有利な効果を奏する。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0092】
入射光に応じて電荷が発生する電荷発生領域をフォトダイオード(例えば、埋め込み型のフォトダイオード等)により構成してもよい。距離画像センサ1は、裏面照射型の距離画像センサであってもよい。距離画像センサ1は、画素P(m,n)が2次元に配列されたものに限られることなく、画素P(m,n)が1次元に配列されたものであってもよい。
【0093】
第1及び第2半導体領域FD1,FD2の数は、3つに限られることなく、図20及び図21にも示されるように2つでもよく、また4つ以上であってもよい。
【0094】
第3半導体領域SR1及びポテンシャル調整電極ELの平面視での形状は、上述した矩形状や円形状に限られることなく、他の形状でもよい。また、第3半導体領域SR1及びポテンシャル調整電極ELの、第1及び第2長辺LS1,LS2の対向方向での長さは、上述した値に限られない。電荷発生領域における第2領域CG2側でのポテンシャルを第1領域CG1でのポテンシャルよりも高めることができるのであれば、例えば、第2短辺SS1,SS2の長さよりも短く設定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、工場の製造ラインにおける製品モニタや車両等に搭載される距離センサ及び距離画像センサに利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1…距離画像センサ、1A…半導体基板、1Aa…第1基板領域、1Ab…第2基板領域、CG1…第1領域、CG2…第2領域、EL…ポテンシャル調整電極、FD1…第1半導体領域、FD2…第2半導体領域、LS1…第1長辺、LS2…第2長辺、P…画素、PG…フォトゲート電極、SR1…第3半導体領域、SS1…第1短辺、SS2…第2短辺、TX1…第1ゲート電極、TX2…第2ゲート電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に応じて電荷を発生し、且つその平面形状が互いに対向する第1及び第2長辺と互いに対向する第1及び第2短辺とを有する長方形状である電荷発生領域と、
前記第1長辺と前記第2長辺とが対向する第1方向で前記電荷発生領域を挟んで対向し且つ前記第1短辺と前記第2短辺とが対向する第2方向に沿って互いに空間的に離間して配置され、前記電荷発生領域からの信号電荷を収集する複数の信号電荷収集領域と、
前記信号電荷収集領域と前記電荷発生領域との間にそれぞれ配置され、異なる位相の電荷転送信号が与えられる転送電極と、
前記電荷発生領域における前記第1方向で対向する前記電荷収集領域の間に位置する第1領域同士に前記第2方向で挟まれる第2領域に配置され、前記電荷発生領域の前記第2領域でのポテンシャルを前記第1領域でのポテンシャルよりも高めるポテンシャル調整手段と、を備えていることを特徴とする距離センサ。
【請求項2】
前記ポテンシャル調整手段は、前記電荷発生領域と同じ導電型であり、前記電荷発生領域よりも不純物濃度が高い半導体領域であることを特徴とする請求項1に記載の距離センサ。
【請求項3】
前記電荷発生領域上に配置されるフォトゲート電極を更に備えており、
前記ポテンシャル調整手段は、前記フォトゲート電極に与えられる電位よりも低い電位が与えられる電極であることを特徴とする請求項1に記載の距離センサ。
【請求項4】
一次元状又は二次元状に配置された複数のユニットからなる撮像領域を半導体基板上に備え、前記ユニットから出力される電荷量に基づいて、距離画像を得る距離画像センサにおいて、
1つの前記ユニットは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の距離センサであることを特徴とする距離画像センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−83219(P2012−83219A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229904(P2010−229904)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】