説明

路面状況判定方法およびその装置

【課題】既存の路面状況センサにより得られる路面状態の判定よりも精度を向上させる。
【解決手段】道路Rの近傍におけるある一定の高さに設置した音センサー7、路面温度センサー13で道路Rを走行する車両Cのタイヤと路面の接触音、路面温度を検出し、この検出された接触音をデジタル信号に変換して分析部15に入力し、この分析部15においてデジタルデータより実際の周波数値、音圧値、音の継続時間をスペクトル解析により求め、あらかじめ分析部に登録されている周波数値、音圧値、音の継続時間と検出された路面温度の設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、音の継続時間、路面温度と比較判定し、この比較判定結果を、出力部21を介して出力して路面状況を判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車、バイクなどの車両が走行する道路の路面状況を判定する路面状況判定方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、バイクなどの車両が走行する道路の路面状況を検出する路面状況センサーの情報は、道路パトロール等の目視による情報に代わり除雪ステーションのオペレータ−、ドライバ−及び道路管理者へいち早く情報を提供することからも、今後最も期待される道路気象センサーのひとつである。しかしながら、前記路面状況センサーは、精度の安定性が低い機器が多いことから、除雪出動の判断の情報としては充分に活用されておらず、出動判断はITV画像、道路パトロール等の目視情報に頼っているのが現状である。
【0003】
冬季道路の路面情報は、雪国の地域住民にとって最も身近な情報であることから、冬季道路情報に対する「きめ細やかな情報の提供(路面状況を含む)」の要望割合が大変高くなってきている。特に、高い精度の道路気象情報の提供は、除雪等の道路管理への利用だけでなく、地域住民にとっても、今後有益な情報であるから、積極的な開発が期待されている状況にある。
【0004】
従来、路面状況センサーとしては、光センサーや画像センサーなどが知られている。この光センサーや画像センサーなどでは、路面状況(路面状態)を判定する的中率が低く、すなわち、判定の精度が悪いと共に高価である。最近になって、自動車、バイクなどの車両が走行する道路の路面状況を検出する路面状況センサーとして、音センサーが開発されてきて、例えば特許文献1、2が知られている。
【特許文献1】特開202−256521号公報
【特許文献2】特許3393500号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1による音センサーで道路の路面状況を検出する方法では、音センサーを道路の内部に設置するため、設置自体が大変であるという問題がある。また、上述した特許文献2による音センサーで道路の路面状況を検出する方法では、車速検出手段も使用し、しかもニュートラルネットワークを用いて行っており、判別が厄介であり、また、完全なものでないのが現状である。また、最近の音センサーでは、車両走行音の音圧および周波数の分布によって路面状況を判別するが、音の継続時間を考慮していないため、路面状態の違いによる音の性質を分析する際に十分でない。したがって、音センサーを用いて従来から知られている光センサーや画像センサーなどよりも精度を向上せしめるようにするのが、以前として課題としてあげられる。
【0006】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためにこの発明の路面状況判定方法は、道路の近傍におけるある一定の高さに設置した音センサー、路面温度センサーで道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音、路面温度を検出し、この検出された接触音をデジタル信号に変換して分析部に入力し、この分析部においてデジタルデータより実際の周波数値、音圧値、音の継続時間をスペクトル解析により求め、あらかじめ分析部に登録されている周波数値、音圧値、音の継続時間と路面温度の設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、音の継続時間、路面温度と比較判定し、この比較判定結果を、出力部を介して出力して路面状況を判定することを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明の路面状況判定方法は、車両後方内部に設置した音センサー、振動センサーで、道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音および振動を検出すると共に、前記車両に設置した路面温度センサーで路面温度を検出し、この検出された接触音をデジタル信号に変換して分析部に入力し、この分析部においてデジタルデータより実際の周波数値、音圧値をスペクトル解析により求め、あらかじめ分析部に登録されている周波数値、音圧値、振動値および路面温度の設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、振動値および路面温度と比較判定し、この比較判定結果を、出力部を介して出力して路面状況を判定することを特徴とするものである。
【0009】
この発明の路面状況判定方法は、前記路面状況判定方法において、前記出力部は入力された判定結果を電気信号に変換して既存の路面状況判別装置に出力することが好ましい。
【0010】
この発明の路面状況判別装置は、道路の近傍におけるある一定の高さに設置して、道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音を検出する音センサー、路面の温度を検出する路面温度センサーと
この音センサーにより検出された接触音がデジタル信号に変換されたデジタルデータより実際の周波数値、音圧値、音の継続時間をスペクトル解析により求める分析部と、
あらかじめ複数種類の設定された周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度からなる設定路面状況値が登録されている条件設定部と、前記分析部において求められた周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度からなる設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度と比較判定する比較判定部と、この比較判定部で判定された判定結果が取り込まれた後、出力される出力部と、備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の路面状況判別装置は、車両後方内部、および車両前部に設置して、道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音、振動音および路面温度を検出する音センサー、振動センサーおよび路面温度センサーと、この音センサー、振動センサーおよび路面温度センサーにより検出された接触音、振動音および路面温度がデジタル信号より実際の周波数値、音圧値をスペクトル解析により求める分析部と、あらかじめ複数種類の設定された周波数値、音圧値、振動値および路面温度からなる設定路面状況値が登録されている条件設定部と、前記分析部において求められた周波数値、音圧値、振動値および路面温度からなる設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、振動値および路面温度と比較判定する比較判定部と、この比較判定部で判定された判定結果が取り込まれた後、出力される出力部と、備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明の路面状況判別装置は、前記路面状況判別装置において、前記出力部は入力された判定結果を送信部より、監視局に転送、出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、従来の路面状況センサーを用いて路面状況を判定する手段よりも、路面状況の判定を精度よく向上せしめることができる。
【0014】
また、音センサーを用いた路面状況の判定結果を既存の路面状況判別装置に出力することで、従来の判定結果と合わせて補完せしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1を参照するに、例えばアスフアルトやコンクリートからなる道路Rには車両としての例えば一般乗用車あるいは大型車種などの自動車Cが図1において例えば紙面に対して直交した方向の手前側へ走行されている。そして、道路Rの近傍例えば図1において左側にはポール1が立設されている。このポール1のある一定の高さ例えば1mの高さ位置にはブラケット3が取り付けられており、このブラケット3の先端部には路面状況判定装置5における入力部としての音センサーである例えばマイクロフォン7が走行する前記自動車Cへ向けて右下斜め方向へ傾斜して設けられている。しかも、前記ポール1に設けられたマイクロフォン7と同高さ位置には路面状況判定装置5における路面状況判定装置本体9が設けられている。
【0017】
前記ポール1に設けられた路面状況判定装置本体9の高さ位置より低い場所にブラケット11が取り付けられていて、このブラケット11の先端部には路面温度センサー13が右下斜め方向へ傾斜して設けられている。
【0018】
前記路面状況判定装置5の構成ブロック図が図2に示されている。図2において、前記入力部としての音センサーである例えばマイクロフォン7および路面温度センサー13には路面状況判定装置本体9に設けられた分析部15が接続されている。この分析部15には判定部17が接続されている。そして、この判定部17には条件設定部19と出力部21が接続されている。
【0019】
図2に示されているように、既存路面状況判定装置23が別に備えられており、この既存路面状況判定装置23には既存装置の判定結果の補完部25が接続されていると共にこの補完部25には前記出力部17からの音センサーである例えばマイクロフォン7および路面温度センサー13による判定結果が入力されるようになっている。
【0020】
前記音センサーとしてのマイクロフォン7は道路Rの近傍におけるある一定の高さに設けられ、道路Rを走行する自動車Cのタイヤと路面の接触音を検出するものであり、前記分析部15にはマイクロフォン7により検出された接触音がデジタル信号に変換して入力されてスペクトル解析により実際の周波数値、音圧レベル値および音の継続時間の分布が求められる。前記判定部17には分析部15において求められた実際の周波数値と音圧レベル値、音の継続時間の分布および路面温度が入力されると共に前記条件設定部15に予め登録されている複数種類の路面状況値が取り込まれて、実際の周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度と、複数種類の路面状況値とが比較判定される。
【0021】
より詳しく説明すると、前記条件設定部19には図3に示されているような予め設定された設定湿潤・シャーベッドデータ、図4に示されているような予め設定された設定圧雪データ、図5に示されているような予め設定された設定凍結データおよび、図6に示されているような予め設定された設定乾燥データが登録されている。
【0022】
図3、図4、図5および図6において、横軸に周波数値(Hz)を、縦軸に音圧レベル値(dB)を示している。図3において予め設定された設定湿潤データとしては、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−60dB以上および路面温度が1℃越えのときを湿潤値として登録されている。図3において予め設定された設定シャーベットデータとしては、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−60dB以上および路面温度が1℃以下のときをシャーベット値として登録されている。
【0023】
図4において予め設定された設定圧雪データとしては、周波数が4kHzで、音圧レベル値が−50dB以下、また、周波数値が0〜3kHzで、音圧レベル値が−50dB以上、かつ周波数値が0〜2kHzで、音圧レベル値が−65dB以上の継続時間7sec未満のときを圧雪値として登録されている。
【0024】
図5において予め設定された設定凍結データとしては、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、周波数値が0〜2kHz以上で、音圧レベル値が−65dB以下の継続時間が7sec未満、かつ路面温度が0℃以下のときを凍結値として登録されている。図6において予め設定された設定乾燥データとしては、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、かつ周波数値が0〜5kHzで、音圧レベル値が−50dB以上、かつの周波数値が0〜1kHzで、音圧レベル値が−65dB以上の継続時間4sec以上、路面温度が0℃以上のときを乾燥値として登録されている。
【0025】
上記構成により、路面状況の判定を行う方法を図7に示したフローにより説明すると、計測が開始され、ステップS1でマイクロフォン7により道路Rを走行する自動車Cのタイヤと路面の接触音が検出されると共に路面温度センサー13で路面温度が検出される。そして、ステップS2で例えば設定時間を0.1秒と設定し、この設定時間を経過すると、ステップS3に進むが、設定時間を経過していないとステップS1の手前に戻される。ステップS3において、騒音レベルが予め決められた設定値以上のとき車両通過と判断してステップS4に進むが、騒音レベルが設定値未満のときには車両通過とみなされないでステップS1の手前に戻される。
【0026】
ステップS4において、マイクロフォン7により検出された接触音がデジタル信号に変換して分析部15に入力される。そして、分析部15においてデジタルデータより周波数値、音圧レベル値および継続時間がスペクトル解析により実測値として求められる。そして、分析部15で得られた周波数、音圧レベル値および継続時間並びに路面温度の実測値が、判定部17に入力される。前記条件設定部19に図3〜図6による予め複数種類の路面状況値条件が登録されているので、この路面状況値条件が判定部17に取り込まれることで、周波数、音圧レベル値、および継続時間並びに路面温度の実測値と予め設定された路面状況値条件とが比較判定される。
【0027】
ステップS5において、周波数、音圧レベル値、および継続時間並びに路面温度の実測値が、図3に示した周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−60dB以上、および路面温度が1℃越えのときの湿潤条件に該当すれば、ステップS6に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の湿潤判定割合を満足していれば、ステップS7において湿潤に満足として判定される。ステップS6において満足していないと判定されるとステップS1の手前に戻される。
【0028】
ステップS5において、湿潤として判定されなかった場合には、ステップS8に進み、ステップS8において、周波数、音圧レベル値、および継続時間並びに路面温度の実測値が、図3に示した周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−60dB以上、路面温度が1℃以下のときのシャーベット条件に該当すれば、ステップS9に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上のシャーベット判定割合を満足していれば、ステップS10においてシャーベットに満足として判定される。ステップS9において満足していないと判定されるとステップS1の手前に戻される。
【0029】
ステップS11において、周波数値、音圧レベル値および継続時間の実測値が、図4に示した周波数値が4kHzで、音圧レベル値が−50dB以下、また、周波数値が0〜3kHzで、音圧レベル値が−50dB以上、かつ周波数値が0〜2kHzで、音圧レベル値が−65dB以上の継続時間7sec未満のときの圧雪条件に該当すれば、ステップS12に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の圧雪判定割合を満足していれば、ステップS13において圧雪に満足として判定される。ステップS13において満足していないと判定されるとステップS1の手前に戻される。
【0030】
ステップS11において、圧雪として判定されなかった場合には、ステップS14に進み、ステップS14において、周波数値、音圧レベル値および継続時間の実測値が、図5に示した周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、周波数値が0〜2kHz以上で、音圧レベル値が−65dB以上の継続時間7sec未満、かつ路面温度が0℃以下のときの凍結条件に該当すれば、ステップS15に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の凍結判定割合を満足していれば、ステップS16において凍結に満足として判定される。ステップS15において満足していないと判定されるとステップS1の手前に戻される。
【0031】
ステップS14において、凍結として判定されなかった場合には、ステップS17に進み、ステップS17において、周波数値、音圧レベル値および継続時間の実測値が、図6に示した周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、かつ周波数値が0〜5kHzで、音圧レベル値が−50dB以上、かつ周波数値が0〜1kHzで、音圧レベル値が−65以上の継続時間4sec以上のときを乾燥値に該当すれば、ステップS18に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の乾燥判定割合を満足していれば、ステップS19において乾燥に満足として判定される。ステップS19において満足していないと判定されるとステップS1の手前に戻される。
【0032】
前記ステップS7、ステップS10、ステップS13、ステップS16およびステップS19でそれぞれ湿潤、シャーベット、圧雪、凍結および乾燥と判定された結果は、出力部17に出力される。また、ステップS20において既存路面状況判別装置23の補完部25へ出力されて、既存の路面センサとしての例えば光センサにより得られたデータと併用されて活用される。
【0033】
前記複数種類の路面状況値を乾燥値、湿潤値、シャーベット値、圧雪値および凍結値とすることで、路面状態を乾燥、湿潤、シャーベット、圧雪および凍結の5つに精度良く判定せしめることができる。また、前記条件設定部19において登録されている複数種類の路面状況値が変更可能であることから、測定の場所、道路の舗装種類や車種による特性を設定値の調整に応じて任意に変更することができる。
【0034】
図8には図1に代わる別の路面状況判別装置が示されている。図8は車両としての例えば自動車Cが示されている。この自動車Cの後方内部には音センサーとしての例えばマイクロフォン27が設けられていると共に路面状況判定装置本体29が自動車C内に設けられている。また、自動車Cの後輪31のホイールハウス33は図9に示されているように、道路Rの路面RAから巻き上げた水、雪粒、氷粒が衝突して振動するから、前記ホイールハウス33には図10に示されているように、振動センサー35が設けられている。さらに、図8に示されているように、前記自動車Cの前部におけるバンパー37には路面温度センサー39が取り付けられている。
【0035】
前記路面状況判定装置本体29内の構成ブロック図が図11に示されている。図11において、前記入力部としての音センサーである例えばマイクロフォン27、振動センサー35および路面温度センサー39には路面状況判定装置本体9に設けられた分析部41が接続されている。この分析部41には判定部43が接続されている。そして、この判定部43には条件設定部45が接続されている。前記判定部43で得られた判定結果は送信部47に送信されると共にこの送信部47には監視局49が接続されている。
【0036】
前記音センサーとしてのマイクロフォン27は自動車Cの後方内部に設けられ、道路Rを走行する自動車Cのタイヤと路面の接触音を検出するものであり、前記分析部15にはマイクロフォン27により検出された接触音がデジタル信号に変換して入力されてスペクトル解析により実際の周波数値、音圧レベル値が求められる。
【0037】
ホイールハウス33に設けられた振動センサー35によってホイールハウス33の水滴の振動値を検出し、デジタル信号に変換して分析部41に入力される。さらに、自動車Cの前部におけるバンパー37に設けられた路面温度センサー39によって路面温度を検出し、デジタル信号に変換して分析部41に入力される。
【0038】
前記判定部43には分析部41において求められた実際の周波数値と音圧レベル値、振動音の分布および路面温度が入力されると共に前記条件設定部45に予め登録されている複数種類の路面状況値が取り込まれて、実際の周波数値、音圧値、振動値および路面温度と、複数種類の路面状況値とが比較判定される。
【0039】
自動車Cの走行音データと振動音(振動加速度)、路面温度との関係が図12に示されている。図12において、振動値(振動加速度の最大値)が210〜220m/secの間に分布し、自動車Cの走行音の周波数が4kHz以上で音圧が−50dB以下、かつ、周波数が2kHz以上に音圧が−65dB以上を含まない、かつ、路面温度が0℃以下の条件である場合は凍結路面として登録されている。
【0040】
振動値が215m/sec以上に分布し、周波数が4kHz以上で音圧が−50dB以下、かつ、周波数が0〜3kHzで音圧が−50dB以上を含む条件である場合は圧雪路面として登録されている。
【0041】
振動値が210m/sec以下に分布し、周波数が4kHz以上で音圧が−60dB以上を含む、かつ、路面温度が1℃以上の条件である場合は湿潤路面として登録されている。
【0042】
振動値が210〜220m/secの間に分布し、自動車Cの走行音の周波数が4kHz以上に音圧が−60dB以上を含む、かつ、路面温度が1℃以下の条件である場合はシャーベット路面として登録されている。
【0043】
振動値が210m/sec以下に分布し、周波数が4kHz以上で音圧が−50dB以下、かつ、周波数が0〜5kHzで音圧が−50dB以上を含む、かつ、路面温度が1℃以上の条件である場合は乾燥路面として登録されている。
【0044】
上記構成により、路面状況の判定を行う方法を図13に示したフローチャートにより説明すると、計測が開始され、ステップS21でマイクロフォン27により道路Rを走行する自動車Cのタイヤと路面の接触音が検出されると共に路面温度センサー39で路面温度が検出される。そして、ステップS22で例えば設定時間を0.1秒と設定し、この設定時間を経過すると、ステップS23に進むが、設定時間を経過していないとステップS21の手前に戻される。ステップS23において、騒音レベルが予め決められた設定値以上のとき車両通過と判断してステップS24に進むが、騒音レベルが設定値未満のときには車両通過とみなされないでステップS21の手前に戻される。
【0045】
ステップS24において、マイクロフォン27により検出された接触音がデジタル信号に変換して分析部41に入力される。そして、分析部41においてデジタルデータよりスペクトル解析により周波数値、音圧レベル値が求められ、並びに振動音、路面温度が実測値として求められる。そして、分析部41で得られた周波数、音圧レベル値並びに振動音、路面温度の実測値が、判定部43に入力される。前記条件設定部45に図12による予め複数種類の路面状況値条件が登録されているので、この路面状況値条件が判定部17に取り込まれることで、周波数、音圧レベル値並びに振動音、路面温度の実測値と予め設定された路面状況値条件とが比較判定される。
【0046】
ステップS25において、周波数、音圧レベル値並びに振動音、路面温度の実測値が、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−60dB以上、振動値が210m/sec以下、路面温度が1℃越えのときの湿潤条件に該当すれば、ステップS26に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の湿潤判定割合を満足していれば、ステップS27において湿潤に満足として判定される。ステップS26において満足していないと判定されるとステップS21の手前に戻される。
【0047】
ステップS25において、湿潤として判定されなかった場合には、ステップS28に進み、ステップS28において、周波数、音圧レベル値、並びに振動音、路面温度の実測値が、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−60dB以上、振動値が210〜220m/secの間に分布し、路面温度が1℃以下のときのシャーベット条件に該当すれば、ステップS29に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上のシャーベット判定割合を満足していれば、ステップS30においてシャーベットに満足として判定される。ステップS29において満足していないと判定されるとステップS21の手前に戻される。
【0048】
ステップS31において、周波数値、音圧レベル値並びに振動音の実測値が、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、かつ周波数値が0〜3kHzで、音圧レベル値が−50dB以上を含む、振動値が215m/sec以上のとき圧雪条件に該当すれば、ステップS32に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の圧雪判定割合を満足していれば、ステップS33において圧雪に満足として判定される。ステップS13において満足していないと判定されるとステップS21の手前に戻される。
【0049】
ステップS31において、圧雪として判定されなかった場合には、ステップS34に進み、ステップS34において、周波数値、音圧レベル値並びに振動音の実測値が、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、振動値が210〜220m/secの間に分布し、また、周波数が0〜3kHzで音圧が−50dB以上を含まない、かつ路面温度が0℃以下のとき凍結条件に該当すれば、ステップS15に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の凍結判定割合を満足していれば、ステップS36において凍結に満足として判定される。ステップS35において満足していないと判定されるとステップS21の手前に戻される。
【0050】
ステップS34において、凍結として判定されなかった場合には、ステップS37に進み、ステップS37において、周波数値、音圧レベル値および継続時間の実測値が、周波数値が4kHz以上で、音圧レベル値が−50dB以下、かつ周波数値が0〜5kHzで、音圧レベル値が−50dB以上を含み、振動値が210m/sec以下で、路面温度が0℃以上のときを乾燥値に該当すれば、ステップS38に進み、例えば10回の計測で例えば5回以上の乾燥判定割合を満足していれば、ステップS39において乾燥に満足として判定される。ステップS39において満足していないと判定されるとステップS21の手前に戻される。
【0051】
前記ステップS27、ステップS30、ステップS33、ステップS36およびステップS39でそれぞれ湿潤、シャーベット、圧雪、凍結および乾燥と判定された結果は、ステップS40で出力された後、送信部47へ送られる。送信部47に送られたデータは、監視局へ送られて、活用される。
【0052】
前記複数種類の路面状況値を乾燥値、湿潤値、シャーベット値、圧雪値および凍結値とすることで、路面状態を乾燥、湿潤、シャーベット、圧雪および凍結の5つに精度良く判定せしめることができる。また、前記条件設定部45において登録されている複数種類の路面状況値を変更可能であることから、測定の場所、道路の舗装種類や車種による特性を設定値の調整に応じて任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の路面状況判定装置を道路の近傍に設けた正面図である。
【図2】この発明の路面状況判定装置の構成ブロック図である。
【図3】条件設定部における予め設定された湿潤状態の条件設定を示した図である。
【図4】条件設定部における予め設定された圧雪状態の条件設定を示した図である。
【図5】条件設定部における予め設定された凍結状態の条件設定を示した図である。
【図6】条件設定部における予め設定された乾燥状態の条件設定を示した図である。
【図7】音センサー、路面温度センサーによる道路の路面状態を判定するフローを示した図である。
【図8】この発明の路面状況判定装置を搭載した車両としての自動車を示した斜視図である。
【図9】図8におけるIX矢視部の拡大図である。
【図10】図8におけるホイールハウスに振動センサーを設けた拡大図である。
【図11】この発明の別の路面状況判定装置の構成ブロック図である。
【図12】周波数、音パワーと振動音と路面温度の関係を示した図である。
【図13】音センサ、路面温度センサーおよび振動センサーによる道路の路面状態を判定するフローチャートを示した図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ポール
3 ブラケット
5 路面状況判定装置
7 マイクロフォン(音センサー)(入力部)
9 路面状況判定装置本体
11 ブラケット
13 路面温度センサー(入力部)
15 分析部
17 判定部
19 条件設定部
21 出力部
23 既存路面状況判定装置
25 既存装置の判定結果の補完部
27 マイクロフォン(音センサー)(入力部)
29 路面状況判定装置本体
31 後輪
33 ホイールハウス
35 振動センサー(入力部)
37 バンパー
39 路面温度センサー(入力部)
41 分析部
43 判定部
45 条件設定部
47 送信部
49 監視局
R 道路
C 自動車(車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の近傍におけるある一定の高さに設置した音センサー、路面温度センサーで道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音、路面温度を検出し、この検出された接触音をデジタル信号に変換して分析部に入力し、この分析部においてデジタルデータより実際の周波数値、音圧値、音の継続時間をスペクトル解析により求め、あらかじめ分析部に登録されている周波数値、音圧値、音の継続時間と路面温度の設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、音の継続時間、路面温度と比較判定し、この比較判定結果を、出力部を介して出力して路面状況を判定することを特徴とする路面状況判別方法。
【請求項2】
車両後方内部に設置した音センサー、振動センサーで、道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音および振動を検出すると共に、前記車両に設置した路面温度センサーで路面温度を検出し、この検出された接触音をデジタル信号に変換して分析部に入力し、この分析部においてデジタルデータより実際の周波数値、音圧値をスペクトル解析により求め、あらかじめ分析部に登録されている周波数値、音圧値、振動値および路面温度の設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、振動値および路面温度と比較判定し、この比較判定結果を、出力部を介して出力して路面状況を判定することを特徴とする路面状況判別方法。
【請求項3】
前記出力部は入力された判定結果を電気信号に変換して既存の路面状況判別装置に出力することを特徴とする請求項1または2記載の路面状況判別方法。
【請求項4】
道路の近傍におけるある一定の高さに設置して、道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音を検出する音センサー、路面の温度を検出する路面温度センサーと
この音センサーにより検出された接触音がデジタル信号に変換されたデジタルデータより実際の周波数値、音圧値、音の継続時間をスペクトル解析により求める分析部と、
あらかじめ複数種類の設定された周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度からなる設定路面状況値が登録されている条件設定部と、
前記分析部において求められた周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度からなる設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、音の継続時間および路面温度と比較判定する比較判定部と、
この比較判定部で判定された判定結果が取り込まれた後、出力される出力部と、
備えていることを特徴とする路面状況判別装置。
【請求項5】
車両後方内部、および車両前部に設置して、道路を走行する車両のタイヤと路面の接触音、振動音および路面温度を検出する音センサー、振動センサーおよび路面温度センサーと、
この音センサー、振動センサーおよび路面温度センサーにより検出された接触音、振動音および路面温度がデジタル信号より実際の周波数値、音圧値をスペクトル解析により求める分析部と、
あらかじめ複数種類の設定された周波数値、音圧値、振動値および路面温度からなる設定路面状況値が登録されている条件設定部と、
前記分析部において求められた周波数値、音圧値、振動値および路面温度からなる設定路面状況値を実際の周波数値、音圧値、振動値および路面温度と比較判定する比較判定部と、
この比較判定部で判定された判定結果が取り込まれた後、出力される出力部と、
備えていることを特徴とする路面状況判別装置。
【請求項6】
前記出力部は入力された判定結果を送信部より、監視局に転送、出力することを特徴とする請求項4または5記載の路面状況判別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate