説明

蹴上方法及び装置

【課題】NDI被探傷材の供給を連続的になるようにし、被探傷材同士の供給間隔のあきによる探傷しない時間を少なくする。
【解決手段】傾斜台上に並列させた円形断面長尺体31a,31b,31cを1本ごとに蹴上げる揺動キッカアーム10を備え、蹴上げた長尺体を斜面上を転動させ次工程に供給する蹴上装置において、長尺体が転動斜面から次工程に落下する直前位置に、前記長尺体を一時停止させる突起14をキッカアーム10の上面に突設すると共に該長尺体を一時支持する固定支持傾斜台を設け、前記キッカアームは、次工程に落下した長尺体と干渉することなく次の蹴上げを行う形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形断面長尺体の間欠供給方法及び装置に関し、さらに詳しくは管材、棒材等を検査ラインなどの次工程に間欠的に転動させて送る場合に用いる蹴上方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、管材、棒材等を非破壊検査(NDI)探傷ラインに送る工程では、入側のチャージングテーブル上に並べられた被探傷材が、NDI探傷ライン搬送ローラからの電気的な蹴り込み指令により、1本ずつ蹴上装置のキッカアーム上を転動しながら搬送ローラ上へ蹴り込まれる。この蹴り込みによって連続回転している次工程の搬送ローラ上に乗った被探傷材(円形断面長尺体)は、その後NDI探傷機へ搬送され、探傷検査後ディスチャージテーブルヘ払出される。
【0003】
このような場合に、例えばスキッドテーブル上に停滞している円形断面長尺体を1本づつ次の工程に送る装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
NDI探傷機は、被探傷材が連続的に供給される限り探傷を続けることが可能である。しかし、被探傷材の長さには制限があるため、NDI探傷ラインを搬送される被探傷材同士の間が空いて間隔があると、その間隔が通過する時間は、探傷しない時間となる。つまり、NDI検査ライン入側において、被探傷材としての管材、棒材等の長尺体の先行材の尾端が蹴り込み基準端を通過した後、次の長尺体の蹴り込み開始指令が出ると、それから実際に次の長尺体が蹴り込まれて搬送開始するまでに時間間隔が生じ、その時間間隔については、NDI探傷機が検査をしていない時間となる。
【0005】
これに対して従来は、検査処理能力を向上させるため可能な限りNDI探傷機の能力上限に近いところまで搬送ローラの移送速度を速めて処理量を増やすようにしていた。
【特許文献1】特開平9−110120号公報(第2−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、NDI探傷機等では、被探傷材(円形断面長尺体)の供給が非連続になると、長尺体同士の時間間隔は、探傷しない時間となる。従来は、検査処理能力を向上させるため可能な限りNDI探傷機の能力上限に近いところまで搬送ローラ速度を速めて処理量を増やしている。しかし、長尺体同士の間隔を小さくすることはできなかった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、円形断面長尺体の相互間隔を空けないように材料を供給する方法及びその装置を提供することを目的とするものである。本発明は、円形断面長尺体を蹴上げて、キッカアーム上を転動させ、次工程に供給する方法及び装置に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、円形断面長尺体の1本を蹴上げて斜面上を転動させ次工程に供給する方法において、蹴上げた1本の長尺体を次工程直近位置に待機させ、前記待機させた1本の長尺体を次工程に供給した後、直ちに次の長尺体を蹴上げて前記次工程直近位置に待機させることを特徴とする蹴上方法である。
【0009】
本発明の最も特徴とする点は、次の長尺体を次工程に供給する直前の位置に待機させ、先行材が進行したら、その後、瞬時に後行材を供給するようにした点にある。このためには、先行長尺体を供給した後、この先行長尺体が移動してしまう前に、次の長尺体を待機位置に待機させることである。
【0010】
上記本発明方法を好適に実施することができる本発明の装置は傾斜台上に並列させた円形断面長尺体を1本ごとに蹴上げる揺動キッカアームを備え蹴上げた長尺体をキッカアーム上面上を転動させ次工程に供給する蹴上装置において、長尺体が次工程に落下する直前位置に、前記長尺体を一時停止させる突起をキッカアーム上面に突設すると共に該長尺体をその位置に一時支持する固定支持傾斜台を設け、前記キッカアームは、次工程に送られた長尺体と干渉しない形状を備えたことを特徴とする蹴上装置である。
【0011】
搬送速度を幾ら早くしても被探傷材としての管材、棒材等の円形断面長尺体の先行材尾端が蹴り込み基準端を通過後、蹴り込み開始指令が出てから実際に次材が蹴り込まれて搬送開始するまでの時間が、NDI探傷機で検査していない時間間隔として存在する。
【0012】
そのため、次材への蹴り込み開始指令が出てから実際に次材が蹴り込まれて搬送開始するまでの時間を極力短くするため、チャージングテーブル上から1本ずつ蹴り込まれた円形断面長尺体が搬送ローラヘ転動する直前の位置で円形断面長尺体を一度待機させるキッカアーム形状と固定支持傾斜台を有する蹴上装置を開発した。つまり、次の円形断面長尺体はこの位置で次々材への蹴り込み開始指令が出た時に搬送ローラ上に瞬時転動されることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チャージングテーブル上から1本ずつ蹴り込まれた円形断面長尺体が搬送ローラヘ転動する直前の位置で被探傷材を一度待機するキッカアーム形状と待機位置を有する蹴り込み装置により、チャージングテーブルから搬送ローラまでの被探傷材の転動時間を大幅に短縮することができた。
【0014】
実際には、探傷検査後の被探傷材を搬送ローラからディスチャージテーブルヘ払出すタイミングを制御することも合わせて実施した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
まず図2を用いて従来技術を説明する。
【0017】
図2(a)は従来の蹴上装置10の作動を示す側面図である。チャージングスキッド30上に円形断面長尺体として鋼管31a,31b,31c,…が多数並んでいる。チャージングスキッド30の下端にはサイジングストッパ40が設けられ、鋼管(円形断面長尺体)のサイズに応じてチャージングスキッド30に対して前後移動し、蹴上装置に一本ずつ、キッカアームによって蹴上げるように調節可能になっている。また材料検出センサ50が材料を検出している。
【0018】
このチャージングスキッド30上の鋼管31a,31b,31c,…を一本づつ蹴上げて次工程へ送るキッカアーム10が備えられている。キッカアーム10は次工程の搬送ローラへの鋼管31a,31b,31c,…を送るもので鋼管を一本宛蹴り上げる。
【0019】
図2(b)は1本の鋼管31aを蹴上げて次工程の搬送ローラ60の直上のV字溝18まで転動させた状態を示している。キッカアーム10は支点11を中心としてシリンダ12により矢印16で示すように上方に押上げられる。反支点側先端13はチャージングスキッド30上の一番下の鋼管31aを蹴上げるような形状となっている。キッカアーム10は鋼管を蹴上げたとき、その上面が転動斜面となる。蹴上げられた鋼管31aは蹴上げに伴って形成されるキッカアーム10上面の転動斜面上を転動し、保持位置まで転動する。保持位置はキッカアーム10上に形成されたV字溝18であって、次工程の搬送ローラ60の直上に位置している。
【0020】
次いで図2(c)に示すようにシリンダ12がキッカアーム10を矢印17で示すように下降させる。鋼管31aは次工程の搬送ローラ60上に載り、搬送ローラ60が鋼管31aを図の紙面に直角な方向に搬送し、鋼管31aは探傷検査等に供される。
【0021】
図2(d)は鋼管31aが搬送された後の状態を示している。つまり図2(d)は図2(a)と同じ状態となっている。
【0022】
搬送ローラ60上に鋼管がない状態で次の図2(e)の動作にはいる。すなわち、シリンダ12がキッカアーム10を矢印16で示すように上昇させ、キッカアーム10は鋼管31bを蹴上げて転動させ鋼管を保持位置に停止させる。図2(e)は図2(b)と同様の状態である。
【0023】
この従来の装置では、図2(a)の状態から図2(d)の状態になるまでの間に、次の鋼管の蹴上げを行うことができない。
【0024】
従って、次の鋼管が搬送ローラ60に供給されるまでには搬送ローラ60上の鋼管が搬送されて空になっている状態の確認から、次の鋼管の蹴上げ、転動、保持位置保持、さらにキッカアームの下降までの時間がかかる。
【0025】
本発明はこれを改善したものである。
【0026】
図1(a)は本発明の実施例の作動を説明する側面図である。
【0027】
チャージングスキッド30、サイジングストッパ40、材料検出センサ50、次工程の搬送ローラ60は図2(a)と同様である。異なるのは、キッカアーム10の形状及び固定スキッド20を設けた点である。すなわち、キッカアーム10は、搬送ローラ60直上の手前の直近に凸起14を備え、搬送ローラ60の搬送ラインを横切る部分15が、搬送ローラ60上の鋼管31a,31b,31c,…と全く干渉しないように形成されている点である。
【0028】
本発明のキッカアーム10の作動は、次の通りである。
【0029】
図1(a)は蹴上開始前の状態を示している。図2(a)で説明したと同様にチャージングスキッド30上に円形断面長尺体として鋼管31a,31b,31c,…が多数並んでいる。チャージングスキッド30の下端にはサイジングストッパ40が設けられ、鋼管のサイズに応じてチャージングスキッド30に対して前後移動し、蹴上装置に一本ずつ、キッカアームによって蹴上げるように調節可能になっている。また材料検出センサ50が材料を検出している。
【0030】
図1(b)は、シリンダ12が矢印16で示すようにキッカアーム10を上昇させ、1本の鋼管31aを蹴上げて次工程の搬送ローラ60の直近の位置まで転動させて待機させた状態を示している。キッカアーム10は支点11を中心としてシリンダ12により上方に押上げられる。反支点側先端13はチャージングスキッド30上の一番下の鋼管31aを蹴上げる。蹴上げられた鋼管31aは蹴上げに伴って形成されるキッカアーム10上面の転動斜面上を待機位置まで転動する。この待機位置はキッカアーム10上に形成された凸起14と固定スキッド20によって形成され、次工程の搬送ローラ60の直近に位置している。
【0031】
図1(c)に示すように、シリンダ12が矢印17で示すようにキッカアーム10を下降させたとき、鋼管31aが次工程の搬送ローラ60上に載る。次いで直ちに、搬送ローラ60上の鋼管の有無に係わらず、図1(d)に示す矢印16のように蹴上げ動作を連続して行うようにした。
【0032】
このとき、搬送ローラ60上に鋼管31aがまだ残っていても、キッカアーム10は鋼管31となんら干渉しない形状に形成されている。
【0033】
従って、図1(e)に示すように、次工程への供給が直ちに行える直近位置に次の鋼管31bが待機し、次工程の搬送ローラ60上にあった鋼管31aが移動して次の鋼管31bを供給することが可能になったら、直ちに指令によりキッカアーム10が降下して鋼管31bを供給し、すぐにキッカアーム10が上昇して次の鋼管31cを待機位置に待機させる。
【実施例】
【0034】
4インチの小径電縫管ミル工場のオフライン4”RUT(回転超音波探傷)ラインに鋼管を供給する蹴上げ装置において、図2に示す従来の蹴上装置を図1に示す実施例の蹴上装置に改善した。従来、図2(a)から図2(d)に至るまで1サイクルの動作に5秒を要していたが、実施例では図1(a)から図1(d)に至るまで1サイクルの動作時間が2秒に短縮された。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1(a)】実施例の作動説明図である。
【図1(b)】実施例の作動説明図である。
【図1(c)】実施例の作動説明図である。
【図1(d)】実施例の作動説明図である。
【図1(e)】実施例の作動説明図である。
【図2(a)】実施例の作動説明図である。
【図2(b)】実施例の作動説明図である。
【図2(c)】実施例の作動説明図である。
【図2(d)】実施例の作動説明図である。
【図2(e)】実施例の作動説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10 キッカアーム
11 支点
12 シリンダ
13 反支点側先端
14 凸起
15 横切る部分
16、17 矢印
18 V字溝
20 固定スキッド
30 チャージングスキッド
31,31a,31b,31c 鋼管
40 サイジングストッパ
50 材料検出センサ
60 搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面長尺体の1本を蹴上げて斜面上を転動させ次工程に供給する方法において、蹴上げた1本の長尺体を次工程直近位置に待機させ、前記待機させた1本の長尺体を次工程に供給した後、直ちに次の長尺体を蹴上げて前記次工程直近位置に待機させることを特徴とする蹴上方法。
【請求項2】
傾斜台上に並列させた円形断面長尺体を1本ごとに蹴上げる揺動キッカアームを備え蹴上げた長尺体をキッカアーム上面上を転動させ次工程に供給する蹴上装置において、長尺体が次工程に落下する直前位置に、前記長尺体を一時停止させる突起をキッカアーム上面に突設すると共に該長尺体をその位置に一時支持する固定支持傾斜台を設け、前記キッカアームは、次工程に送られた長尺体と干渉しない形状を備えたことを特徴とする蹴上装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図1(d)】
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【図1(e)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【公開番号】特開2006−44812(P2006−44812A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224053(P2004−224053)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】