説明

身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器

【技術課題】安全で使い易いマラソンランナーが給水ポイントに置いて使用する冷却水とスペシャルドリンクを入れておくための保冷容器を提供する。
【解決手段】真空断熱容器1内に冷却水ボトル5とスペシャルドリンクボトル10をそれぞれ組みつけておく。
ランナーは把手紐15を持って真空断熱容器1内から冷却水ボトル5とスペシャルドリンクボトル10を引き上げ、走りながらワンタッチ式のキャップ13を外ずしてスペシャルドリンクボトル10を冷却水ボトル5からその上半を露出させる。その上で、スペシャルドリンクボトル10を冷却水ボトル5から取り出し、冷却水を使用し、次にスペシャルドリンクをストロー12で吸飲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マラソンランナーあるいは長距離ランナー等が走行中に熱くなった身体を冷やすために使用する冷却水と、体内に水分を補給するために吸飲する所謂スペシャルドリンクを保冷状態を保ちながら保持するための容器に関し、更に詳しくは、走行中に使用するためにランナーの負担にならずに冷却水の使用とスペシャルドリンクの吸飲を行うことができる保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マラソンを例にとると、コースの要所には給水ポイントが置かれていて、ランナーは自分用のスペシャルドリンクを用意しておく例が多い。また、熱くなった体を冷やすために、ペットボトルに入った水を身体にかけたり、吸水させたスポンジを絞って水を身体にかけたりしている。
【0003】
このような給水ポイントでは、時間のロスをできるだけ短縮することが必要であるため、ランナーは自分のボトルが走行中でも直ぐに判るように、ボトルにリボンを結んだり、色をつけたりして他人のものと区別している。
【0004】
しかし、選手の場合、冷却水及びスペシャルドリンクの温度には個人差があることから、給水ポイントに置かれた容器は、選手が実際に使用するまで、個人用の適温を保持するように工夫されたものが望ましい。
【0005】
斯る観点から、特開2006−21818号公報には、真空断熱容器内に直接冷却水を充填し、この冷却水を充填した真空断熱容器内にスペシャルドリンクを充填した容器を組み込んで保冷を行い、前記スペシャルドリンク容器は真空断熱容器のキャップを外すと中からスプリングの力で突出するように構成することで、冷却水とスペシャルドリンクを保冷し、かつ走行中における冷却水とスペシャルドリンクを吸飲しやすくした内容のものが紹介されている。
しかし、この公知例においては、次のような欠点がある。
1.ステンレス製のため、使用後に路上に捨てると、他のランナーにとっては危険であり 、迷惑である。
2.真空断熱容器の外径はどうしても太くなるため、特に手の小さい女子の場合にはこれ を持って走りながら身体にかけるには不便であり、落としてしまったりすることがあ る。
3.真空断熱容器はステンレス製であるため、特に疲労が限界に近いランナーにはその重 さが負担となる。
4.公知例の容器は、テーブルに置くだけのため、他のランナーにより転倒されたりする 心配がある。
5.給水ポイントでは、容器をとり易いように自立の把手紐を断熱容器に取り付けている ため、この把手紐が冷却水をかけるときに邪魔したり、スペシャルドリンクの容器を とり出すときにも邪魔したりして、ランナーには不評である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、安全性を高め、給水ポイントにおいてテーブルから取り易く、冷却水及びスペシャルドリンクを保冷状態で保持することができると共に取り扱い易く、記録アップにつながる身体冷却用冷却水及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、マラソンあるいは長距離
ランナーが主として使用する身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器において
、真空断熱容器内に取り出し自在に組み込まれた冷却水ボトルと、この冷却水ボトル内に
取り出し自在に組み込まれたスペシャルドリンクボトルから成る保冷容器であって、前記
冷却水ボトルは、前記真空断熱容器に形成した上口から内部に挿入して取り出し自在に組
み付けられていること、前記スペシャルドリンクボトルは、前記冷却水ボトルの上口から
内部に垂下したボトルホルダー内に取り出し自在に組み付けられていると共に無負荷時に
はスプリングの力で冷却水ボトルの上口から上半が露出すること、前記冷却水ボトル及び
スペシャルドリンクボトルの上口は、それぞれのキャップにより閉塞されていて、冷却水
ボトルのキャップを取り外すと冷却水ボトル内からスペシャルドリンクボトルが露出する
ため、このスペシャルドリンクボトルを冷却水ボトル内から取り出して片手に持ち、もう
一方の手で冷却水ボトルから冷却水を身体にかけて冷やしたのち放棄し、スペシャルドリ
ンクボトル内のスペシャルドリンクは、付設されたストローから吸飲するように構成され
ていること、を特徴とするものである。
【0008】
更に、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の身体冷却用及びスペシャル
ドリンク吸飲用保冷容器において、前記真空断熱容器は、台座の上に姿勢制御手段を介し
て取り付けられていることを特徴とするものである。
この発明によると、保冷容器の向きを任意に設定して、真空断熱容器内から冷却水ボト
ル及びスペシャルドリンクボトルを取り出し易くすることができる。
【0009】
更に、請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の身体冷却用及びスペシャル
ドリンク吸飲用保冷容器において、前記台座の底面には、テーブルに対する固定手段が取
り付けられていることを特徴とするものである。
この発明によると、保冷容器が転倒するのを防止することができる。
【0010】
更に、請求項4に記載の発明においては、請求項3に記載の身体冷却用及びスペシャル
ドリンク吸飲用保冷容器において、前記固定手段には、すべり止めシート又は吸盤又は粘着テープ又は接着剤が用いられていることを特徴とするものである。
この発明によると、台座を簡単にテーブル等に固定し、不用となったときは取り除くことができる。
【0011】
更に、請求項5に記載の発明においては、請求項1に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器において、前記スペシャルドリンクボトルを露出させるためのスプリングは、樹脂又は金属製のコイルスプリングで構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
更に、請求項6に記載の発明においては、請求項1に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器において、前記冷却水ボトルのキャップには、自立性を有する把手紐が取り付けられていることを特徴とするものである。
この発明によると、真空断熱容器内から冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルを簡単に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、真空断熱容器内に冷却水ボトルを組み込み、この冷却水ボトル内にスペシャルドリンクボトルを組み込み、真空断熱容器内と冷却水ボトル及びスペシャルドリンクボトルを独立させ、真空断熱容器はテーブル上に残し、冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルのみを真空断熱容器内から取り出して冷却水を使用し、スペシャルドリンクを吸飲するようにした。
【0014】
この結果、引用文献1の容器のように、真空断熱容器内に直接冷却水を充填していないので、ステンレス製の重い真空断熱容器を片手に持ち、頭から冷却水をかけたりする必要がないので、ランナーの負荷が軽減されて記録の向上に寄与することができる。
【0015】
また、冷却水をかけた後、引用文献1の場合、真空断熱容器がステンレス製のため、路上に捨てたときに他のランナーに危険を及ぼす心配があるが、本発明の容器は、真空断熱容器はそのままテーブル上に残し、中の冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルのみを取り上げてそれぞれを使用するため、これは従来のペットボトル入りのものの使用と変らないことから、路上に捨てても安全である。
【0016】
また、冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルは、自立の把手紐をつかんで真空断熱容器からそのまま取り出すことができるため、取りそこなう心配がないと共に他のランナーのボトル等を転倒させたりする心配がない。また、台座は固定手段でテーブルに固定できるため、転倒の心配がない。また、真空断熱容器は再使用ができる。また、冷却水ボトルのキャップに把手紐がついているため、この冷却水ボトルのキャップを取り外すと把手紐も冷却水ボトルから排除され、冷却水をかける際、あるいはスペシャルドリンクボトルを取り出す際に邪魔にならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る保冷容器は、主としてマラソンランナー用に開発されたものであるが、1万メートルとか駅伝等の競技においても使用できる。その他、トライアスロンとか、野球、サッカー等の競技においても冷却水を頭からかぶったり、スペシャルドリンクを吸飲する場合に使用することができ、この使用法は任意である。
【0018】
断熱容器は、真空断熱のため、ステンレス等が耐圧性からみて好適であるが、樹脂を用い、アルミ箔を表面にライニングしたり、断熱塗料等を塗布して気密性と非熱伝導性を確保するようにして構成しても良い。
【0019】
冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルは、PET等を用いた樹脂とすることで、軽量化を図ることができる。
【0020】
冷却水ボトル内には、スペシャルドリンクボトルホルダーを組み込み、このボトルホルダー内にスペシャルドリンクボトルを組み込むことでボトルを保持し、かつスプリングをボトルホルダーの底部に組み込むことでスペシャルドリンクボトルを露出する方向に賦勢している。ここで用いるスプリングは、軽量化から樹脂製のものが望ましいが、用途によっては金属製のものを用いても良い。
【0021】
自立性の把手紐を取り付けた冷却水ボトルのキャップは、冷却水ボトルの口に着脱自在に取り付けられていて、この把手紐を引くとキャップごと冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルを真空断熱容器内から取り出すことができる。
【0022】
そして、このキャップを冷却水ボトルから取り外ずすと、冷却水ボトルの上口が開き、スペシャルドリンクボトルの上半がスプリングの力で露出するので、このスペシャルドリンクボトルを冷却水ボトル内から取り出すことにより、冷却水ボトルの上口は全開する。
【0023】
この全開により、冷却水を使用することができる。この時、一方の手にはスペシャルドリンクボトルを握っており、冷却水の使用が終るとこのボトルを路上に捨て、次にスペシャルドリンクボトルのキャップから突出しているストローを用いてスペシャルドリンクを吸飲する。この吸飲が終るとスペシャルドリンクボトルも路上に捨てる。
【0024】
真空断熱容器は、そのまま台座と共にテーブルの上に残るので、再使用が可能である。台座の底面には、すべり止めシート又は吸盤あるいは剥離紙付の粘着テープを取り付けておくことにより、テーブル上に固定して転倒するのを防止しておくことができる。勿論この固定手段として、接着剤を用いることもできる。
【実施例1】
【0025】
図1〜図5に基づいて本発明に係る容器の実施例を詳細に説明する。図1は本発明に係る保冷容器全体の説明図、図2はA―A´線断面図、図3は分解斜視図、図4は真空断熱容器内から把手紐を持って冷却水ボトルとスペシャルドリンクボトルを取り出した状態の説明図、図5は冷却水ボトルから把手紐付のキャップを取り外したことにより、スペシャルドリンクボトルの上半がスプリングの力で露出した状態の説明図、図6は冷却水ボトル内からスペシャルドリンクボトルを取り出した状態の冷却水ボトルの説明図、図7はスペシャルドリンクをランナーが吸飲している状態の説明図である。
【0026】
以上の各図において、1は真空断熱容器であって、この真空断熱容器1は、ステンレス板を用いて底部と胴部に真空空間2が形成されていて、粘着テープ17を底面に取り付けた台座3の上に姿勢制御用のスプリング4を介して取り付けられている。
【0027】
5は前記真空断熱容器1内にその上口1aから取り出し自在に組み込まれた冷却水ボトルであって、この冷却水ボトル5の上口5aからは、内部に向けて円筒状のボトルホルダー6が吊設されており、このボトルホルダー6の底部6bにはスプリング7が組み込まれ、このスプリング7上にはスプリング受け盤8が取り付けられている。図5において、6cはボトルホルダー6に形成されたガイド穴であって、前記スプリング受け盤8の係合片8aがこのガイド穴6c内に係合していて、その上下動の範囲が規制されている。
【0028】
9はボトルホルダー6に形成されたボトルホルダー6内と冷却水ボトル5内を連通している流水口であって、冷却水ボトル5内の冷却水は、この流水口9からボトルホルダー6内を経由して上口5aからボトル外にとり出すことができる。
【0029】
10は前記ボトルホルダー6の上口6aから内部に出入り自在に組み込まれたスペシャルドリンクボトルであって、このボトル10の上口10aにはボトルキャップ11が取り付けられていると共にこのキャップ11の中央から上方にボトル10内に挿し込んだストロー12が突出していて、このストロー12でスペシャルドリンクを吸飲することができる。
【0030】
13は前記冷却水ボトル5の上口5aに取り付けられたワンタッチ開閉式のキャップであって、このキャップ13内には、前記スペシャルドリンクボトル10側のストロー12を押える当て板14が設けられていると共にキャップ13には自立式の把手紐15が取り付けられている。16は冷却水ボトル5の上口5aに取り付けられたボトルホルダー6及びキャップ13の取付環であって、この取付環16の下縁には係合リブ16aが形成され、上部外周にはキャップ13をワンタッチで止める止め具16bが設けられていて、キャップ13側の止め具13aとでワンタッチで係合している。17は台座3の底面に取り付けられた粘着テープ、18は真空断熱容器1の上口1aに取り付けられた受けリングであって、このリング18により冷却水ボトル5に取り付けられた取付環16のリブ16aを乗せるようにして受け止めている。
【0031】
次に図4〜図7に基づいて使用例を説明する。図4は、テーブル100に置かれた真空断熱容器1から把手紐15をつかんで冷却水ボトル5とスペシャルドリンクボトル10を取り出した状態である。
【0032】
図5は冷却水ボトル5のキャップ13をワンタッチで取り外すことにより、無負荷となったスペシャルドリンクボトル10がスプリング7の力でボトルホルダー6内を上昇し、冷却水ボトル5の上口5aから上半が露出した状態である。
【0033】
図6は冷却水ボトル5内からスペシャルドリンクボトル10を取り出した状態を示し、ランナーは、この状態の冷却水ボトル5を逆さにして中の冷却水を頭や身体にかけて熱くなった身体を冷やす。
【0034】
図7は冷却水ボトル5から取り出したスペシャルドリンクボトル10の使用例を示し、ランナーは、このスペシャルドリンクボトル10を片手に持ってストロー12からスペシャルドリンクを吸飲する。冷却水を使用し、スペシャルドリンクの吸飲を終ったボトル5及び10はそのまま路上に投げ捨てる。
以上の使用例はマラソンランナーの一例であって、その使い方は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る保冷容器の全体を示す説明図
【図2】A―A´線断面図
【図3】保冷容器の分解説明図
【図4】冷却水ボトルを引き上げた状態の説明図
【図5】スペシャルドリンクボトルが冷却水ボトル内から露出した状態の説明図
【図6】冷却水ボトル内からスペシャルドリンクボトルを取り出した状態の説明図
【図7】スペシャルドリンクを吸飲している状態の説明図
【符号の説明】
【0036】
1.真空断熱容器
5.冷却水ボトル
6.ボトルホルダー
7.スプリング
10.スペシャルドリンクボトル
11.キャップ
12.ストロー
15.把手紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 真空断熱容器内に取り出し自在に組み込まれた冷却水ボトルと、この冷却水ボトル 内に取り出し自在に組み込まれたスペシャルドリンクボトルから成る保冷容器であっ
て、
b.前記冷却水ボトルは、前記真空断熱容器に形成した上口から内部に挿入して取り出 し自在に組み付けられていること、
c. 前記スペシャルドリンクボトルは、前記冷却水ボトルの上口から内部に垂下したボ トルホルダー内に取り出し自在に組み付けられていると共に無負荷時にはスプリング の力で冷却水ボトルの上口から上半が露出すること、
d. 前記冷却水ボトル及びスペシャルドリンクボトルの上口は、それぞれのキャップに より閉塞されていて、冷却水ボトルのキャップを取り外すと冷却水ボトル内からスペ シャルドリンクボトルが露出するため、このスペシャルドリンクボトルを冷却水ボト ル内から取り出して片手に持ち、もう一方の手で冷却水ボトルから冷却水を身体にか けて冷やしたのち放棄し、スペシャルドリンクボトル内のスペシャルドリンクは、付 設されたストローから吸飲するように構成されていること、
e. を特徴とするマラソンあるいは長距離ランナーが主として使用する身体冷却用及び スペシャルドリンク吸飲用保冷容器。
【請求項2】
前記真空断熱容器は、台座の上に姿勢制御手段を介して取り付けられていること、を特徴とする請求項1に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器。
【請求項3】
前記台座の底面には、テーブルに対する固定手段が取り付けられていること、を特徴とする請求項2に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器。
【請求項4】
前記固定手段には、すべり止めシート又は吸盤又は粘着テープ又は接着剤が用いられていること、を特徴とする請求項3に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器。
【請求項5】
前記スペシャルドリンクボトルを露出させるためのスプリングは、樹脂又は金属製のコイルスプリングで構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器。
【請求項6】
前記冷却水ボトルのキャップには、自立性を有する把手紐が取り付けられていること、を特徴とする請求項1に記載の身体冷却用及びスペシャルドリンク吸飲用保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36964(P2010−36964A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202892(P2008−202892)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(390031901)アルテック株式会社 (13)
【Fターム(参考)】