説明

身体情報検出装置及び身体情報検出方法

【課題】身体におけるコリ具合などの情報の検出が可能となり、多くの情報を得ることができる身体情報検出装置を提供する。
【解決手段】使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段を備えている。このセンサ手段により、主軌道に沿って身体情報を検出させると共に当該主軌道の周辺部についても二次元的に身体情報を検出させるように、当該センサ手段を動作させる。センサ手段による検出結果を処理手段において処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、身体のハリやコリなどの身体情報を検出することのできる身体情報検出装置及び身体情報検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚、筋肉、ツボなどにおけるハリやコリといった身体における症状は、専門医による触診によって診断されているが、これら身体の症状についてセンサなどを用いて検出し、その症状を定量化(数値化)して判断することのできる装置が提案されている。
例えば、生体表面の力学特性の測定を可能とし、その特性を定量化して客観的に評価することができる装置として特許文献1に示すものがある。この装置は、化粧品の開発などのために肌の張りや潤いの程度について評価することができる。この装置は、肌などの生体表面に振動子を接触させて、振動子における駆動力と加速度とをセンサが検知することによって、肌の力学的特性を測定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平4−71533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている装置は、測定器の振動子を肌に対してピンポイントで接触させ、その部分における力学的特性を検出するものであり、1カ所の測定点のみを単独で評価するものである。つまり、この装置は、測定器を一連の動作で移動させながら多数の部位に対して測定を行うことができるものではなく、多数の部位においての身体情報を連続的に取得するための構成ではない。従って、身体に沿った方向における身体情報の微妙な変化の検出には不向きであるという問題点を有している。
【0005】
そこでこの発明は、一連の動作で多くの身体情報の検出が可能となり、身体に沿った方向における身体情報の変化を検出することのできる身体情報検出装置及び身体情報検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明の身体情報検出装置は、使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段と、主軌道に沿って前記センサ手段により身体情報を検出させると共に当該主軌道の周辺部についても二次元的に身体情報を検出させるように当該センサ手段を動作させる駆動手段と、前記センサ手段による検出結果を処理する処理手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
この構成を備えている検出装置により行われる身体情報検出方法は、使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段を、主軌道に沿って移動させると共に当該主軌道の周辺部についても二次元的に移動させ、前記センサ手段によって、前記主軌道及びその周辺部について二次元的に身体情報を複数箇所において検出することにより行われる。
【0008】
このような身体情報検出装置及び方法によれば、センサ手段により、主軌道に沿った部分及びその周辺部にわたる広い範囲での身体情報の検出が可能となり、多くの情報を得ることができる。主軌道とその周辺部における身体情報を検出するため、ある測定点とその周辺とにおける情報の取得が可能となる。これにより相対的な情報の比較が可能となり、主軌道に沿った方向における情報の変化を知ることができる。
【0009】
また、この身体情報検出装置において、前記駆動手段は、前記センサ手段を、前記主軌道に沿って移動させるとともに当該主軌道の方向と異なる方向にも動作させることによって当該センサ手段を二次元軌道で動かすものであるのが好ましい。この場合、センサ手段を二次元軌道上に動かすことで広い範囲での検出が可能となり、多くの身体情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主軌道部とその周辺部の広い範囲での検出が可能となり、多くの身体情報を得ることができる。これにより、検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実施の一形態に係る身体情報検出装置の構成を示すブロック図であり、図2はこの装置の使用例を示した図である。
この身体情報検出装置(以下、検出装置ともいう)の概略についてまず説明すると、この検出装置は、例えば、人体の皮膚、筋肉、ツボなどのハリやコリといった身体における症状を検出することができる。例えば図2に示しているように、使用者の上半身背面側を対象とすると肩部から腰部にかけてのコリ具合を検出することができる。さらに、この範囲に存在するツボの状態(硬さ)を検出することができ、この検出情報を、後に行われるマッサージ治療に活用することが可能となる。
【0012】
次に検出手段の具体的な構成について説明すると、この検出装置は、使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段1と、このセンサ手段1を身体に沿って移動させる駆動手段2と、センサ手段1による検出結果(身体情報)を処理する処理手段3とを備えている。
センサ手段1は、身体に対応させるセンサ部5と、このセンサ部5を保持している本体部6とを有している。
【0013】
センサ部5は、例えば、使用者の身体に接触させて身体の表面部における硬さを検出することのできる圧力センサとすることができる。つまり、圧力センサを一定の押圧力で身体に接触させ、その反力を検出することにより身体の硬さ(コリ具合)を身体情報として検出することができる。この場合、本体部6からセンサ部5を身体側へ移動させて、当該センサ部5を身体へ押圧するように構成する。なお、センサ部5を圧力センサとする以外に、身体内部において伝播する振動を検出することによって内部における(ツボにおける)硬さ(コリ具合)を検出することのできるセンサであってもよい。例えば、振動源と、その振動源によって身体内部を伝播した振動を検知する受信部とを有しているセンサであってもよい。この場合ピアゾ素子を有するセンサとすることができる。これにより、微細な信号(振動)を検出することができるため、身体内部の情報を検出することができ、また、センサ部5を衣服を介して身体に接触させての検出が可能となる。身体内部の情報としては、骨格の形、位置などの骨格情報や、ツボ部における硬さなどのツボ情報がある。
さらには、電気抵抗の変化によってコリ具合などの身体情報を検出するセンサであってもよく、身体情報を検出するためのセンサとして従来知られているものを適用できる。
【0014】
駆動手段2は、センサ手段1が有している本体部6を移動させることによって、センサ部5を身体に対して所定の軌道に沿って移動させることができる。具体的には、図2において、駆動手段2は、センサ手段1を身体の長手方向(身長方向)にまっすぐ移動させる第一駆動部7と、この第一駆動部7による移動方向と直交する方向にセンサ手段1をまっすぐ移動させる第二駆動手段8と、これらの動作を制御する動作制御部(図示せず)とを有している。これらの構成について説明すると、図示しないが、例えば第二駆動部8は、直線状のレール部材と、このレール部材に沿って移動することができるモータドライブ機構を有するユニットとを備えている。レール部材がラック部を有し、これに噛み合うピニオンをモータドライブ機構が有している。そして、前記ユニットにセンサ手段1の本体部6を取り付けることで、センサ手段1はレール部材に沿って移動することができる。第一駆動部7についても同様に、直線状のレール部材と、このレール部材に沿って移動することができるモータドライブ機構を有する別のユニットとを備えている。そして、このユニットに前記第二駆動部8のレール部材を取り付けることで、センサ手段1を第二駆動部8と共に第一駆動部7のレール部材に沿って移動させることができる。
そして、第一駆動部7のレール部材と第二駆動部8とのレール部材とを相互直交させて配設し、動作制御部からの動作信号によって、センサ手段1は二次元移動が可能となる。つまり、センサ手段1のセンサ部5は面に沿って二次元的に移動することとなり、この面が身体の検出対象面とされる。具体的には、使用者の上半身の背面に沿ってセンサ部5を動作させることができ、上半身の背面上を脊柱部に沿って移動させることができる。
【0015】
駆動手段2によって移動するセンサ手段1の具体的な動作について説明すると、駆動手段2はセンサ手段1を二次元軌道で動かしながら、センサ手段1は当該二次元軌道上の複数箇所において身体情報を検出する。つまり、センサ手段1を全体として一方向に向かって移動させるとともに当該一方向と異なる方向にも部分的に移動させることによって、当該センサ手段1を二次元軌道で動かしている。例えば、図3は移動するセンサ手段1の軌道を示している図であり、この場合、駆動手段2は、センサ手段1を、検出対象面上を部分的に周回動作させながら(矢印A方向の動作)、当該検出対象面に沿って全体として一方向(矢印Bの方向)に向かって移動させている。つまり、矢印B方向がセンサ手段1の主移動方向であり、図3の一点鎖線がセンサ手段1の主軌道と言える。従って、この駆動手段2によれば、前記主軌道に沿ってセンサ手段1により身体情報を検出させると共に、当該主軌道の周辺部についても二次元的に身体情報を検出させることができる。
【0016】
この動作についてさらに説明すると、センサ手段1は、主軌道の方向(進行方向:矢印Bの方向)に向かって前部(点a)、左部(点b)、後部(点c)、右部(点d)の順で周回移動しながら身体情報の検出が可能となる。さらに、この検出は主軌道の方向に向かって連続して行われる。
さらに、図3に示しているように、駆動手段2は、後の周回軌道R2が前の周回軌道R1の進行方向前部(一部)を通過する(跨ぐ)ようにセンサ手段1を動作させている。つまり、後の周回軌道R2における後部(点c2)は、前の周回軌道R1における前部(点a1)よりも、進行方向後ろ側となるようにセンサ手段1は動作し、かつセンサ手段1は進行方向を前進する。
そして、センサ手段1は、周回軌道に沿った複数箇所において身体情報を連続的に検出し、検出した情報を前記処理手段3が有している記憶部9が記憶する。さらに、この記憶部9には、検出した身体情報と、この身体情報をセンサ手段1が検出した位置の座標(二次元座標)とが対応付けられて記憶される。
【0017】
処理手段3は、二次元軌道上においてセンサ手段1が検出した身体情報を処理するものであり、身体情報を定量的に評価することができる。処理手段3はマイクロコンピュータにより構成することができる。
処理手段3において行われる処理について説明すると、処理手段3はセンサ手段1による身体情報を数値化することができ、さらに、処理手段3は、センサ手段1によって検出した身体情報を二次元マップとして作成する二次元マップ作成部4を有している。図4は二次元マップ作成部4によって作成された二次元マップのイメージ図である。処理手段3の記憶部9には、上述のとおり、検出した身体情報と、この身体情報をセンサ手段1が検出した位置の座標(二次元座標)とが対応付けられて記憶されているため、センサ手段1による検出結果を図4に示しているように表すことができる。なお、図4において、破線はセンサ手段1の二次元軌跡を示しており、各マスにおけるハッチ部分はセンサ手段1が通過して身体情報を検出した部分を示している。このようにセンサ手段1が駆動手段2によって動作するため、広い範囲について、多くの身体情報を得ることができる。
【0018】
このように、使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段1を、主軌道に沿って移動させると共に当該主軌道の周辺部についても二次元的に移動させ、このセンサ手段1によって、前記主軌道及びその周辺部について二次元的に身体情報を複数箇所において検出する。これにより、身体に沿った身体情報、例えばコリ具合を検出することができる。そして、二次元マップにより分布図が得られるため、身体に沿ったコリ具合の変化を知ることができる。
【0019】
処理手段3において行われる処理について説明すると、センサ手段1は、2次元軌道上において前に検出した検出部分と一部重なる範囲を次の検出部分に含ませて身体情報を検出し、処理手段3においてこれら情報を積算演算する。この場合、重なって検出した部分について処理手段3が積算演算することにより、検出した情報のノイズ成分の低減が可能となり、必要な成分を浮き上がらせることができ検出精度を高めることができる。
【0020】
処理手段3において行われる他の処理について説明すると、二次元軌道上に沿ってセンサ手段1が検出した複数箇所の情報(信号)を、所定数ごとに処理手段3が積算演算する処理を行うことにより、センサ手段1の主軌道の方向(図3の矢印B方向)に沿った所定ピッチでの身体情報分布を求めることができる。例えば、一回の周回軌道上においてセンサ手段1が検出した複数箇所の情報を、当該一回の周回軌道ごとに処理手段3が演算処理すれば、前記主軌道の方向に沿った所定ピッチの身体情報分布を求めることができる。これにより、前記主軌道の方向に沿った身体情報の変化を知ることができる。
【0021】
さらに処理手段3によって行われる別の処理としては、一つの周回軌道の一部におけるセンサ手段1による検出部分と、それより後の周回軌道の一部におけるセンサ手段1による検出部分とが同一または接近している場合(図4のダブルハッチ部分)、両者の検出値を積算演算させることにより、その部分において得られた情報のうちのノイズ成分の低減が可能となり、必要な成分を浮き上がらせることができ検出精度を高めることができる。
【0022】
そして、センサ手段1は、図3に示しているように主軌道の方向(進行方向)に向かって前部(点a)、左部(点b)、後部(点c)、右部(点d)の順で周回しながら主軌道の方向へ移動して身体情報の検出を行い、その検出は軌道に沿って複数箇所について連続的に行われるため、センサ手段1の進行方向を例えば使用者の背中の身長方向とすることにより、背中に沿っての身体情報(コリ具合)の変化を知ることができる。
【0023】
そして、この身体情報検出装置を揉み玉などの施療具を備えているマッサージ機に設けて、この検出装置からの処理結果に基づいて施療具を動作させるように構成することで、マッサージ効果の高いマッサージ機とすることができる。例えば、図2に示しているように、マッサージ機を椅子型としてその背もたれ部10に身体情報検出装置を設ければよい。これにより、身体情報検出装置がコリ具合の高い部位を検出することができ、その部位に対して自動的に揉み玉がマッサージを施すことができる。
【0024】
また、本発明の身体情報処理装置は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、例えば、センサ手段1のセンサ部5を他の型式としたり、駆動手段2の構成をベルトドライブ式にしたりすることができる。さらに、センサ手段1の周回軌道は、図3に示している円形以外に楕円(長円)であってもよく、または直線移動部分を含んだ矩形状の周回軌道であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の一形態に係る身体情報検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】身体情報検出装置の使用例を示している図である。
【図3】センサ手段の軌道を示している図である。
【図4】処理手段によって作成された身体情報についての二次元マップのイメージ図である。
【符号の説明】
【0026】
1 センサ手段
2 駆動手段
3 処理手段
4 二次元マップ作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段と、主軌道に沿って前記センサ手段により身体情報を検出させると共に当該主軌道の周辺部についても二次元的に身体情報を検出させるように当該センサ手段を動作させる駆動手段と、前記センサ手段による検出結果を処理する処理手段と、を備えていることを特徴とする身体情報検出装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記センサ手段を、前記主軌道に沿って移動させるとともに当該主軌道の方向と異なる方向にも動作させることによって当該センサ手段を二次元軌道で動かすものである請求項1に記載の身体情報検出装置。
【請求項3】
使用者の身体情報を検出するためのセンサ手段を、主軌道に沿って移動させると共に当該主軌道の周辺部についても二次元的に移動させ、前記センサ手段によって、前記主軌道及びその周辺部について二次元的に身体情報を複数箇所において検出することを特徴とする身体情報検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−14414(P2007−14414A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196545(P2005−196545)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】