説明

身体用ウエットシート化粧料

【課題】経時しても含有されている粉体の含有量を略均一にすることのできる身体用ウエットシート化粧料の積層体を提供すること。また、清拭時の肌感触が良好で、使用時の粉体や油剤を肌へ移行させる性能に優れた身体用ウエットシート化粧料を提供すること。
【解決手段】本発明に係るシート状基材1は、パルプ繊維を含む湿式不織布2の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層3が積層され、湿式不織布2と該繊維層3とを一体化して形成されている。本発明の身体用ウエットシート化粧料10の積層体は、シート状基材1に、(a)粉体及び(b)水溶性溶剤を含有する化粧料を含浸して形成される身体用ウエットシート化粧料10を積み重ねられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体用ウェットシート化粧料、その積層体又は身体用ウェットシート化粧料に用いられるシート状基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体の清拭に用いる粉体を含有したウェットシートタイプの化粧料がある。これらの製品には粉体や油剤が配合され、さらさらした感触やしっとりした感触を肌に付与することができる。例えば、特許文献1には、化粧水が含浸しているシートに、粉体が付加されてなる化粧シートが開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1など従来の化粧シート用の織布又は不織布は単層であり、清拭した際のシートの肌触りと粉体や油剤などを肌に移行させる性能を両立することは困難であった。また1枚の化粧シートの中で経時により粉体及び化粧水が移動することがあり、更に製品形態として複数枚積み重ねた積層体の状態にすると、各化粧シート中に含有されている粉体の含有量が均一にならない問題があった。
【0004】
粉体を含有したコットン繊維の単層で出来ているウェットシート製品は清拭時に良好な肌感触を発現するが、粉体を肌に移行させる性能に問題があった。また、パルプ繊維を含む湿式抄紙の紙で出来たウェットシート製品は比較的粉体を肌へ移行させ易いが、柔らかさに問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−278736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、製品形態で保存しても含有されている粉体の含有量を略均一にすることのできる身体用ウエットシート化粧料の積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、清拭時の肌感触が良好で、使用時の粉体や油剤を肌へ移行させる性能に優れた身体用ウエットシート化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パルプ繊維を含む湿式不織布の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層が積層されたシート状基材に、以下の成分(a)粉体及び(b)水溶性溶剤を含有する化粧料を含浸して形成された身体用ウエットシート化粧料を複数枚積み重ねられてなる身体用ウエットシート化粧料の積層体を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
本発明は、パルプ繊維を含む湿式不織布の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層が積層されたシート状基材に、(a)粉体及び(b)水溶性溶剤を含有する化粧料を含浸した身体用ウエットシート化粧料を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
本発明は、パルプ繊維を含む湿式不織布の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層が積層され、粉体及び水溶性溶剤を含有する化粧料が含浸されて身体の清拭に用いられるシート状基材を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の身体用ウェットシート化粧料の積層体によれば、身体用ウェットシート化粧料の製品の状態で保存しても、1枚の清拭用ウェットシートの中で経時変化とともに粉体及び液体の移動がし難く、複数枚からなる清拭用ウェットシートの状態でも経時変化とともに粉体及び化粧水が移動し難く、各身体用ウェットシート中に含有されている粉体の含有量を略均一にすることが可能となる。
また、本発明の身体用ウェットシート化粧料は、清拭時のシートの肌感触が良好で、粉体や油剤などを肌へ移行させる性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態であるシート状基材の断面図である。
【図2】図2は、屈曲部の説明図である。
【図3】図3は、図1に示すシート状基材を複数枚重ねて形成したウエットシートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシート状基材について説明する。
本発明のシート状基材は、液体が含浸されて身体の清拭に用いられる。即ち、本発明のシート状基材は、予め液体が含浸されて湿潤状態とされているものではなく、液体の含浸前は乾燥状態とされているものである。
【0013】
本発明のシート状基材1は、図1に示すように、パルプ繊維を含む湿式不織布2の両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層3が積層され、湿式不織布2と該繊維層3とを一体化して形成されている。
【0014】
パルプ繊維を含む湿式不織布2としては、例えば、パルプ繊維を紙状に抄いてシート状にしたものが用いられ、パルプ繊維100質量%で構成されていてもよく、バインダー又はパルプ間の水素結合等によりパルプ繊維同士が接着されたものであってもよい。バインダーを含む場合は、液体、粉体の移動を抑制し、かつ液体の保持の観点から、パルプ繊維の含有量が50質量%以上が好ましい。パルプ繊維としては、例えば、機械パルプ、セミケミカルパルプ、化学パルプ等が挙げられる。化学パルプとしては、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)等が挙げられる。これらのパルプ繊維は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。パルプ繊維の平均繊維幅は、肌に対する良好な感触を得る観点から、好ましくは5〜50μm、更に好ましくは13〜35μmである。また、パルプ繊維の平均繊維長については特に制限はされないが、生産性の点から0.5〜6.0mmが好ましい。
【0015】
湿式不織布2は、パルプ繊維以外に別の親水性繊維であるレーヨン繊維、アクリル繊維等混綿して構成されていてもよく、パルプ繊維以外に疎水性繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)/PET繊維等混綿して構成されていてもよく、バインダー繊維等を混綿して構成されていてもよい。尚、親水性繊維以外に、疎水性繊維を混綿して構成する場合には、疎水性繊維が多いと液体の保持性が低下し、液の移動が抑制できないため、液の移動を考慮して混綿率を決めるのが好ましい。湿式不織布2の代わりにスパンボンド不織布やメルトブロー不織布を使用するのでは、不織布が疎水性で液の保持性が劣るため好ましくない。
【0016】
湿式不織布2の坪量は、繊維層と水流交絡した後の柔軟性の観点から、好ましくは、5〜70g/m2、更に好ましくは10〜60g/m2である。坪量は、湿式不織布2を100mm×100mmの寸法に切り出してその重量を測定し、これを1m2の重量に換算して求められる。同様の観点から、湿式不織布2の厚み〔乾燥状態の不織布の厚み(DRY厚み)〕は、好ましくは0.05〜0.40mm、更に好ましくは0.10〜0.30mmである。厚みは、湿式不織布2を100mm×100mmの寸法に切り出して、20gf/cm2の荷重下で測定する。
湿式不織布2は、粉体の移動を抑制するために叩解してもよい。叩解は、リファイナーなどで行われ、フリーネス(カナダ標準ろ水度試験方法、JISP8121−1995)としては、50〜700mlの範囲の中で生産性等から決めればよい。
湿式不織布2は、必要に応じて2PLY以上としても良い。
【0017】
図1に示すように、湿式不織布2の両面に配される繊維層3について説明する。
繊維層3に含まれるセルロース系繊維としては、本来親水性を有するものが用いられ、本来は親水性でないが親水化処理によって親水性になされた繊維は用いられない。セルロース系繊維としては、例えばコットン(綿)等の天然繊維や、パルプ、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等が挙げられる。これらのセルロース系繊維は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。上記のセルロース系繊維の中でも、コットン繊維、レーヨン、リヨセル、テンセルが好ましく、特に、コットン繊維が好ましく、とりわけ、脱脂綿繊維が好ましい。脱脂綿繊維は、コットン繊維の一種であり、原綿が漂白された繊維である。脱脂綿繊維は、原綿に付着していた天然油脂が除去されているため、親水性が高く、水の保持性に優れている。従って、脱脂綿繊維を用いることで、液体の保持性を一層高めることができる。
【0018】
繊維層3のセルロース系繊維の繊維径は、肌に対する良好な感触を得る観点から、好ましくは0.11〜11dtex、更に好ましくは0.22〜5.5dtexである。コットン繊維(脱脂綿繊維)を用いた場合は、断面形状が真円でないので、断面の縦横比を3として計算した場合に、上記の繊維径範囲に入ることが好ましい。ここで、「断面の縦横が3」とは、長い方を横にした時に断面の縦の長さと横の長さの比が1:3であることを示す。
さらに、セルロース系繊維として前記コットン繊維を用いた場合、肌に対する良好な感触を得る観点から、コットン繊維のJIS L1019で規定されるマイクロネア繊度(μg/in)は、2.5〜6.0μg/inが好ましく、3.1〜4.4μg/inがより好ましい。
また、セルロース系繊維の繊維長については特に制限はされないが、使用時の感触及び生産性の観点から5〜70mmが好ましい。
【0019】
繊維層3に含まれる疎水性繊維としては、下記疎水性評価試験において水性インクで染色されない繊維が挙げられる。後述するセルロース系繊維は、通常、白色であり、下記疎水性評価試験において試験液で染色されて青色になる。
<疎水性評価試験>
試験液として染料メチレンブルー0.01重量%を溶解した青色の水溶液をシャーレに準備する。評価対象である繊維0.1g(不織布にする前の状態)をピンセットでシャーレ内の試験液に5秒間浸漬させる。試験液から取り出した時に繊維に試験液が浸透せず、染色されていないものを疎水性繊維とする。
【0020】
繊維層3の疎水性繊維の具体例としては、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等の疎水性樹脂からなる合成繊維が挙げられる。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリスチレン、ナイロン、アセテート等の樹脂からなる合成繊維が挙げられる。該合成繊維は、上記の1種類の樹脂若しくは2種類以上の樹脂がブレンドされたブレンドポリマーからなる単一繊維でも良く、2種類以上の樹脂を含有する複合繊維でも良い。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる繊維で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、並列型(サイドバイサイド型)や芯鞘型等があるが、本発明においては複合繊維の形態は特に制限されない。但し、分割型複合繊維(高圧水流などの物理的な力で繊維の一部が剥離分割する複合繊維)は、分割するために高水圧が必要で、このため本発明のシート状基材が硬くなるため、好ましくない。
【0021】
好ましい疎水性繊維としては、ポリエステル系繊維が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の単一繊維;PETを芯、PEを鞘とする芯鞘型複合繊維;PETを芯、低融点PET(芯のPETよりも融点の低いPET)を鞘とする芯鞘型複合繊維;PETを芯、PPを鞘とする芯鞘型複合繊維等が挙げられる。
上記の疎水性繊維の中でも、繊維の柔らかさ、繊維の入手のしやすさの観点より、PET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維やPETの単一繊維が特に好ましい。
【0022】
繊維層3の疎水性繊維の繊維径は、肌に対する良好な感触を得る観点から、好ましくは0.11〜11dtex、更に好ましくは0.22〜5.5dtexである。繊維層3の疎水性繊維の繊維長は、使用時の感触及び生産性の観点から、好ましくは20mm〜70mm、更に好ましくは30mm〜60mmである。また、疎水性繊維の断面形状は特に制限されないが、良好な感触の点で円形が好ましい。
【0023】
DRY状態でセルロース系繊維の直径に対する疎水性繊維の直径の比率(DRY状態の疎水性繊維の直径/DRY状態のセルロース系繊維の直径)としては、良好な感触の点で0.2〜3倍であることが好ましく、0.5〜2倍であることが更に好ましい。
また、WET状態でセルロース系繊維の直径に対する疎水性繊維の直径の比率(WET状態の疎水性繊維の直径/WET状態のセルロース系繊維の直径)としては、良好な感触の点で0.15〜2.75倍であることが好ましく、0.45〜1.75倍であることが更に好ましい。
尚、セルロース系繊維がコットン繊維(脱脂綿繊維)の場合は、前述のようにコットン繊維の断面形状を真円と仮定して計算すれば良い。ここで、「真円と仮定して計算する」とは、コットン繊維の断面を縦横比3の矩形として面積Sを算出し、その面積Sを真円に換算し、S=π×(D/2)2の式より直径Dを計算することを意味する。また直径に分布がある場合、平均値を用いて計算する。
【0024】
繊維層3に含まれる疎水性繊維としては、繊維の長さ方向において屈曲部を有していることが好ましい。ここで、屈曲部とは、疎水性繊維の倍率100倍の顕微鏡写真において、図2に示すように、該繊維が湾曲あるいは屈曲し始める2箇所の点(カーブ開始点)それぞれから接線を引き、これら接線の交点での角度をαとした時に、この角度αが135°以下となる部位である。
疎水性繊維が斯かる屈曲部を有していることにより、繊維層3に含まれるセルロース系繊維、湿式不織布に含まれるパルプ繊維等の脱落が一層効果的に防止され、また、不織布のクッション性が一層向上する。
【0025】
また、疎水性繊維が有する屈曲部の数が多いほど、繊維層3に含まれるセルロース系繊維、湿式不織布に含まれるパルプ繊維等の他の繊維との接触点が増えるため、該他の繊維の脱落防止及びクッション性の向上効果の点で有利になる。斯かる観点から、不織布の表面部分における屈曲部の数は、好ましくは1個以上、更に好ましくは2〜30個である。ここで、不織布の表面部分における屈曲部の数は、該表面部分の倍率100倍の顕微鏡写真において、タテ2.16mm×ヨコ2.88mmの四角形形状の領域中に存在する疎水性繊維の屈曲部の数を数えることによって得られる。
【0026】
繊維層3に含まれる前記セルロース系繊維と前記疎水性繊維との含有重量比は、液体の含浸性と肌触りとのバランスの観点から、セルロース系繊維:疎水性繊維=50:50〜90:10が好ましく、セルロース系繊維:疎水性繊維=60:40〜80:20が更に好ましい。
【0027】
シート状基材1を構成する湿式不織布2と繊維層3との含有重量比は、液体の含浸性、肌触り、液体の移動抑制の観点から、湿式不織布2:繊維層3(湿式不織布2の両面に配された繊維層3,3の総量)=15:85〜65:35が好ましく、湿式不織布2:繊維層3(湿式不織布2の両面に配された繊維層3,3の総量)=25:75〜55:45が更に好ましい。
【0028】
シート状基材1の構成繊維は、上述したパルプ繊維、セルロース系繊維及び疎水性繊維のみであっても良く、あるいはこれらの繊維に加えて更に他の繊維を含んでいても良い。本発明のシート状基材に含有可能な他の繊維としては、例えば、バインダー繊維等が挙げられる。
【0029】
本実施形態のシート状基材1は、図1に示すように、湿式不織布2の両面に、繊維層3が積層され、湿式不織布2と該繊維層3とを水流交絡させることによって一体化して形成されている。ここで、「一体化して形成されている」とは、シート状基材1が、構成繊維間を結合するためのバインダー等の接着剤を含まないか、又はシート状基材1における該接着剤の含有量が好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下で、繊維交絡によってシート形態が保たれていること意味する。このような不織布は、柔軟性が高く、ふんわり感が良好で、顔面等にパッティングしたときに心地良い。
尚、本実施形態のシート状基材1は、上述したように、湿式不織布2の両面に、繊維層3が積層され、湿式不織布2と該繊維層3とを水流交絡させることによって一体化して形成されているが、熱エンボスや超音波エンボス等のエンボス加工により、一体化して形成されていてもよい。エンボス加工により一体化してシート状基材1を形成する場合には、感触や拭き取り性等の観点で、上下層の坪量を変えたり、上下層の繊維組成をそれぞれ変えてもよい。
【0030】
水流交絡により一体化して本実施形態のシート状基材1を製造する場合について具体的に説明する。
本実施形態のシート状基材1は、パルプ繊維からなる湿式不織布2の両面(一面及び他面)それぞれに、セルロース系繊維及び疎水性繊維からなる繊維層3を配し、繊維層3のウエブを配した多層繊維ウエブの一面側及び他面側それぞれに対して順次高圧水流を当て、湿式不織布2に繊維層3のセルロース系繊維及び疎水性繊維を水流交絡させて、含水状態のスパンレース不織布を得、該スパンレース不織布を乾燥させることにより得られる。乾燥して得られたシート状基材1は、必要に応じて、表面平滑化のためにプレスロールに通してプレスしてもよい。また、用途によってはネットなどの上で高圧水流を加え表面をメッシュ状にしても良い。乾燥温度としては、熱融着繊維を完全に溶解させてしまうと感触が悪くなるので、融着温度の下限値、例えばPET/PE芯鞘繊維(適正融着温度125〜135℃)を使用する場合には、100〜124℃が好ましい。
【0031】
繊維層3は、例えば、カード機を用いてウエブ形成する公知のカード法により得られる。繊維層3であるウエブを湿式不織布2の両面に配した後、水流交絡させるときの水圧は、ウエブの坪量等に応じて適宜調整すれば良く、通常のスパンレース不織布の製造時における水圧と同等(1〜35MPa程度)とすることもできるが、該水圧よりも低水圧にすることが好ましい。また、プレスロールによるプレス圧も、ウエブの坪量等に応じて適宜調整すれば良く、線圧で1〜60kg/cm、特に3〜30kg/cmとすることが好ましい。
【0032】
シート状基材1を構成する全繊維の平均繊維間距離は、5μm〜29.9μmであることが好ましく、7μm〜29μmであることが更に好ましい。平均繊維間距離が5μm未満では繊維が密になって風合いが劣り、使用感を損ね、平均繊維間距離が29.9μmより広いと、粉体の移動が生じやすくなり好ましくない。ここで、全繊維とは、湿式不織布2のパルプ繊維、繊維層3のセルロース系繊維及び疎水性繊維をはじめ、これらの繊維に加えて更に他の繊維を含んでいる場合には、その他の繊維も含むことを意味する。
シート状基材1を構成する全繊維の平均繊維間距離は、次式によって算出することができる。
【0033】
【数1】

【0034】
シート状基材1の坪量は、液体の保持性能の向上、徐放性の観点から、好ましくは20〜130g/m2、更に好ましくは40〜100g/m2である。
同様の観点から、シート状基材1の厚み〔乾燥状態の不織布の厚み(DRY厚み)〕は、0.22〜0.85mm、好ましくは0.24〜0.75mm、更に好ましくは0.26〜0.65mmである。
上記坪量は、シート状基材1を100mm×100mmの寸法に切り出してその重量を測定し、これを1m2の重量に換算して求める。上記厚みは、シート状基材1を100mm×100mmの寸法に切り出して、20gf/cm2の荷重下で測定する。
【0035】
シート状基材1の比容積〔乾燥状態の不織布の比容積(DRY比容積)〕は、基材にふっくら感を付与すると共に、液体の保持性及び柔軟性を高める観点から、好ましくは4〜14cm3/g、更に好ましくは6〜12cm3/gである。上記比容積は、上記の坪量及び厚みから算出される。
【0036】
シート状基材1は、その飽和保水量が単位重量当たり200〜1300%、特に250〜1000%であることが好ましい。これによって十分な量の液体を保持することができる。飽和保水量は、シート状基材1(不織布)の構成繊維によって形成される空間と、繊維自身の材質とに依存するものであり、これらを適宜調節することで、飽和保水量を前記範囲にすることができる。
飽和保水量は次のようにして測定される。シート状基材1を100mm×100mmの寸法に切り出してその重量を測定する。イオン交換水に不織布を15分以上浸漬し、取り出し後に1分以上液をしたたり落とし、重量を測定し、浸漬前後の重量の差を計算することにより求めることができる。
【0037】
清拭時の拭き取り性には繊維の交絡が重要であり、硬さや繊維の脱落が関係し毛羽抜け量(繊維の抜け具合)が指標として挙げられる。
本発明のシート状基材1の毛羽抜け量としては、0.0005〜0.02gが好ましい。0.0005g未満では繊維の交絡が強くシートが硬く、0.02gを超えると繊維の交絡が弱く清拭した場合に毛羽立ち繊維が抜けやすく不都合である。
毛羽抜け量の測定方法としては以下の通りである。
ウレタンフォーム(イノアックコーポレーション(株)製ウレタンフォーム モルトフィルター、MF−30、厚み5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を回転軸に取り付ける。取り付け位置は、円盤中心から20mmずれた位置とする。シート状基材1の上面側を表面にして、台上に固定する。シート状基材1の上に前記円盤を載せる。この時、シート状基材1に加わる荷重は円盤の自重のみとする。この状態下、回転軸を回転させて、円盤をシート状基材1上で周動させる。周動は時計周りに2回転、反時計周りに2回転を1セットとして、7セット行う。この時の周動速度は1周動あたり約3秒である。7セットの周動後、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した毛羽抜けした繊維を集める。この操作をn=2枚のシート状基材1について行い、平均値を毛羽抜け量とする。
【0038】
本発明のシート状基材1には、(a)粉体及び(b)水溶性溶剤を含有する化粧料が含浸され、身体用ウエットシート化粧料10となる。
化粧料に含有される(a)粉体としては、例えば、合成高分子からなる粉体や天然鉱物からなる粉体が挙げられる。合成高分子としては、例えば、片末端にラジカル重量性基を有するポリシロキサン化合物を分散剤として溶媒中でビニルモノマーの分散重合を行うことにより得られたポリマー微粒子(以下、ポリマービーズSという)、メチルシロキサン網状重合体、シリコーンゴムパウダー、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、有機シリコーン基含有ポリマー、合成シリカビーズ、疎水性シリカパウダー、ナイロン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。中でも化粧シートに用いられる粉体としては、感触(さらさら感)という観点から、合成シリカビーズ、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、ポリマービーズS、メチルシロキサン網状重合体及びポリスチレン樹脂からなる粉体、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる粉体などが好ましく、特に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体は肌のなめらかさの点で好ましい。
【0039】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体としては、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体(以下(メタ)アクリル酸エステル単量体という)とカルボキシル基を有する単量体とを含む単量体成分を共重合してなる架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体が好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を含む概念である。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルが特に好ましい。これらは複数種組み合わせて用いてもよい。全単量体成分中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合は、30〜98質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
【0041】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは複数種組み合わせて用いてもよい。全単量体成分中のカルボキシル基を有する単量体の割合は、粉体の合着を抑制し、良好な粉体の感触(なめらかさ、さらさら感)を得る観点から、0.1〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0042】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粉体は、十分なさらさら感及びなめらかさを得る観点から、圧縮強度が0.7〜10kgf/mm2であり、特に2〜8kgf/mm2が好ましい。ここで、圧縮強度とは、樹脂粒子を(株)島津製作所製微小圧縮試験機MCT−M200にて圧縮試験を行った場合に、粒子径の10%変形時の荷重と粒子径とから下記式によって算出される値である。なお、圧縮強度は25℃で測定する。
圧縮強度(kgf/mm2)=2.8×荷重(kgf)/{π×粒子径(mm)×粒子径(mm)}
【0043】
天然鉱物からなる粉体としては、例えば、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、雲母、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、特にタルクは肌の上での滑りが良いので好ましい。
【0044】
粉体の形状は、球状、板状等が挙げられ、粉体の真球度が増すにつれて動摩擦係数が下がり肌の滑り感が高まる観点から、球状であることが好ましい。真球度が70以上のものが使用感上好ましく、90以上のものが特に好ましい。ここで、真球度とは、走査型電子顕微鏡にて固体粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、粒子同士が重なり合っていないもの100個を無作為に選び出し、粒子の投影像が真円のもの、もしくは投影像の外接円を描かせ、外接円の半径の90%の半径を有する同心円と外接円との間に投影像の輪郭が全て含まれる形状を有しているものの数をもって粒子の真球度とする。
【0045】
粉体が板状である場合には、その平均粒径が0.5〜50μmであることが好ましく、さらに1〜30μmであることが更に好ましい。
粉体が球状である場合には、その粒径が、感触の点から、0.1〜30μmであることが好ましく、さらに粒径0.5〜10μmであることが更に好ましい。粒径が0.1μm未満の粉体は肌の感触に対してきしむような不快感を与え、粒径が30μm以上の粉体は、ざらざらとした感触を与える。
【0046】
化粧料における(a)粉体は、肌に感触と肌への白残りの点から、化粧料中に0.1〜20質量%含有されていることが好ましく、0.5〜10質量%含有されていることが更に好ましい。
【0047】
化粧料に含有される(b)水溶性溶剤としては、例えば、1気圧20℃の水100gに5g以上、好ましくは15g以上溶解する有機化合物が挙げられる。有機化合物としては、アルコール及び多価アルコール類、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、ポリグリセリン類、ポリエステル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。感触と白残りのなさの観点から、多価アルコール、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類が好ましい。
【0048】
化粧料における(b)水溶性溶剤は、肌に感触と肌への白残りを抑える点から、化粧料中に0.1〜10質量%含有されていることが好ましく、0.3〜5質量%含有されていることが更に好ましい。
【0049】
化粧料には、更に(c)高分子分散剤が含有されていることが好ましい。(c)高分子分散剤は、水溶性であって、水性媒体中での(a)粉体の分散性向上に寄与する高分子化合物である。高分子分散剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、(メタ)アクリル酸又はその塩・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸又はその塩・(メタ)アクリル酸アルキル・(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル共重合体、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム・メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等が挙げられる。アクリル酸系の高分子化合物は、カルボン酸基を適当な塩基で部分的に中和することにより、好適な増粘性や分散性を発揮する。中和に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。
【0050】
化粧料における(c)高分子分散剤の含有量は、良好な分散性及び感触を得る観点から、化粧料中に0.01〜3質量%含有されていることが好ましく、0.03〜2質量%含有されていることが更に好ましく、0.05〜1質量%含有されていることが特に好ましい。
【0051】
化粧料には、更に(d)油剤が含有されていることが好ましい。(d)油剤としては、シリコーン油、炭化水素類、エステル油、脂肪族アルコール類、エーテル油、分岐脂肪酸類等が挙げられる。
【0052】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、環状ポリジメチルシロキサン、環状ポリメチルフェニルシロキサン、環状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、高級アルコール変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体等のポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、長鎖アルキル変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0053】
炭化水素類としては、スクワラン、ワセリン、流動パラフィン等が挙げられる。
エステル油としては、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ラノリン、酢酸ラノリン、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ホホバ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、小麦胚芽油、落花生油、タートル油、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、卵黄油、ポリプロピレングリコールモノオレート、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサノエート、イソステアリン酸トリグリセライド、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセライド等が挙げられる。
【0054】
脂肪族アルコール類としては、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
エーテル油としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル等が挙げられる。
分岐脂肪酸類としては、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0055】
化粧料における(d)油剤の含有量は、適度な油性感を与える観点から、化粧料中に0.01〜30質量%含有されていることが好ましく、0.1〜20質量%含有されていることが更に好ましく、0.1〜10質量%含有されていることが特に好ましい。
【0056】
化粧料には、更に、粘度調整剤、pH調整剤、活性剤、エキス類、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、キレート剤、抗炎症剤、殺菌剤、紫外線防止剤、上記(d)油剤の条件にあたらない油剤等を配合することができる。
【0057】
本発明のシート状基材1に含浸させる化粧料の粘度は、シート状基材1への均一な含浸性や肌へ転写した時のさっぱり感を得るといった観点から、30℃において1〜5000mPa・sの範囲にあることが好ましく、10〜2000mPa・sの範囲にあることが更に好ましい。
本発明のシート状基材1に化粧料を含浸させて身体用ウエットシート化粧料10とする場合、シート状基材1への化粧料の含浸率は、使用感を高め、塗布時の感触を良好にする観点から、シート状基材1の単位重量当たり、100〜1200%含浸させることが好ましく、200〜1000%の重量を含浸させることが更に好ましい。シート状基材1への化粧料の含浸方法は、スプレー、ダイコーター、グラビアコーターなど特に制限されない。手動でも良く、工業的な方法で行っても良い。
【0058】
このようにして得られた身体用ウエットシート化粧料10を複数枚積み重ねられて身体用ウエットシート化粧料10の積層体が形成される。具体的には、身体用ウエットシート化粧料10の積層体は、図3に示すように、シート状基材1が、複数枚積み重ねられており、各シート状基材1それぞれに、(a)粉体及び(b)水溶性溶媒を含有する化粧料を該粉体とともに含浸して形成してもよい。この場合の複数枚とは、2〜50枚であることが好ましい。また、例えば2枚又は3枚など複数枚のシート状基材1を一体として複合基材を形成し、その複合基材に、(a)粉体及び(b)水溶性溶媒を含有する化粧料を該粉体とともに含浸して身体用ウエットシート化粧料10を形成してもよい。このような複合基材を複数枚積み重ね、各複合基材それぞれに、(a)粉体及び(b)水溶性溶媒を含有する化粧料を該粉体とともに含浸して身体用ウエットシート化粧料10の積層体を形成してもよい。複合基材を形成する際に、シート状基材1の構成繊維に、PET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維の疎水性繊維を使用していた場合には、熱エンボス又は超音波エンボス等することにより、各シート状基材1のPE(鞘)どうしが熱融着し、複合基材を一体化することができる。この場合には、感触やヒートシール性の観点で上下層の坪量を変えたり、上下層の繊維組成をそれぞれ変えても良い。
【0059】
上述したようにして得られた身体用ウエットシート化粧料10は、シート状基材1が中間層に親水性繊維を含んでいて、シート状基材1の平均繊維間距離が所定の範囲であるため、化粧料(特に、(a)粉体)を中間層に維持できる。このように(a)粉体を含有する化粧料の移動が起こり難いため、1枚の身体用ウエットシート化粧料10を保存しても、経時とともに(a)粉体を含有する化粧料が中間層から移動し難い。このような身体用ウエットシート化粧料10を複数枚重ねて形成された身体用ウエットシート化粧料10の積層体は、長期間保存されても、隣接する身体用ウエットシート化粧料10どうしの間で、(a)粉体を含有する化粧料が移動し難く、各身体用ウエットシート化粧料10中に含有されている(a)粉体の含有量を略均一にすることが可能となる。2枚又は3枚など複数枚のシート状基材1を一体として複合基材を形成し、それを身体用ウエットシート化粧料10とした場合も同様である。
【0060】
上述したようにして得られた身体用ウエットシート化粧料10は、両面が、疎水性繊維を含む繊維層を配して形成されたので、清拭時のシートの肌感覚が良好で、使用時の粉体や油剤を肌へ移行させる性能に優れている。
【0061】
本発明の身体用ウエットシート化粧料10は、上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0062】
例えば、上述の身体用ウエットシート化粧料10を構成するシート状基材1は、図1に示すように、湿式不織布2の両面に、繊維層3が積層され、湿式不織布2と該繊維層3とを一体化して形成されているが、湿式不織布2の片方の面にのみ、繊維層3を積層し、湿式不織布2と該繊維層3とを一体化して形成されていてもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。尚、例中の%は、特記しない限り質量%である。
【0064】
[(a)粉体である樹脂粉体Aの作成]
ビーカーにラウリルメタクリレート82g、メタクリル酸3g、エチレングリコールジメタクリレート15g、ラウロイルパーオキサイド2gを仕込み混合攪拌して溶解させた。ここにN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム(SMT)を0.75g溶解させたイオン交換水400gを加え、ホモミキサーで粒径が2.2μmになるまで分散させた。次に、4つ口フラスコにこの分散液を注ぎ込み、攪拌しながら窒素置換を30分行った。オイルバスによりフラスコ内部の温度を80℃まで加温し、80℃に達してか ら5時間重合を行った後、室温まで冷却した。重合した粒子の分散液を凍結乾燥し、粒子を回収することにより樹脂粉体Aを得た。得られた樹脂粉体の平均粒径は、2.2μmであった。平均粒径は、下記方法で測定した。
【0065】
<平均粒径測定法>
樹脂粉体を(株)堀場製作所レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(型番:LA920)にて、相対屈折率が1.10(樹脂粉体の屈折率を1.46、水の屈折率を1.33とする)の条件にて、粒径を測定した際のメジアン径を平均粒径とした。
【0066】
[シート状基材として用いるサンプルA(積層構造)の作成]
平均繊維幅31μmのパルプ繊維100%の湿式不織布17.0g/m2の両面それぞれに、繊維径1.7dtex相当の漂白したコットン繊維(セルロース系繊維)70重量%と、繊維径2.4dtexのPET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維(疎水性繊維)30重量%のシート状の未結合繊維ウエブ16.5g/m2をカード法により積層し、このウエブの一面側及び他面側それぞれに対して、順次高圧水流を当てることにより該ウエブを水流交絡させて一体化し、含水状態のスパンレース不織布を得、該スパンレース不織布を乾燥させ2枚をヒートシールすることにより一体の複合基材を形成し、目的とするシート状基材(サンプルA)を得た。このシート状基材(サンプルA)は、PET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維以外に、構成繊維間を結合するためのバインダー等の接着剤を一切含んでいない。
【0067】
[シート状基材として用いるサンプルB(単層構造)の作成]
繊維径1.7dtex相当の漂白したコットン繊維(セルロース系繊維)70重量%と、繊維径2.4dtexのPET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維(疎水性繊維)30重量%とのシート状の未結合繊維ウエブ50.0g/m2をカード法により製造し、このウエブの一面側及び他面側それぞれに対して、順次高圧水流を当てることにより該ウエブを水流交絡させて一体化し、含水状態のスパンレース不織布を得、該スパンレース不織布を乾燥させ2枚をヒートシールすることにより一体の複合基材を形成し、目的とするシート状基材(サンプルB)を得た。
【0068】
実施例1,2,3及び比較例
表1に示す成分からなる化粧料を、表1に示すように、シート状基材として用いるサンプルA又はサンプルB上に、スプレーを用いて塗布することで身体用ウエットシート化粧料(以下、化粧シートともいう)を調整した。含浸率は350%とした。このように製造した化粧シートを36枚積み重ねて化粧シートの積層体を形成し、それをアルミ蒸着シートで密封した。
【0069】
【表1】

【0070】
〔化粧シートの評価〕
実施例1,2,3及び比較例のサンプルそれぞれを作成後、アルミ蒸着シートを開封し、上から1枚目の化粧シートと下から1枚目の化粧シートを取り出し、各化粧シートについて、10人の専門パネルの前腕部に使用してもらい、以下の使用感の評価項目について、下記の通り採点をつけた。10人の平均スコアを、下記基準でランクづけした。尚、下記評価項目の内、さらさら感の持続性については、前腕部に使用した後、8時間経過後の使用感を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0071】
<評価項目>
・さらさら感
スコア4・・・さらさらする
スコア3・・・ややさらさらする
スコア2・・・あまりさらさらしない
スコア1・・・さらさらしない
・白残りのなさ
スコア4・・・白残りしない
スコア3・・・あまり白残りしない
スコア2・・・やや白残りする
スコア1・・・白残りする
・化粧シートの肌触り
スコア4・・・柔らかい
スコア3・・・やや柔らかい
スコア2・・・あまり柔らかくない
スコア1・・・柔らかくない
・さらさら感の持続性
スコア4・・・さらさら感が持続する
スコア3・・・さらさら感がやや持続する
スコア2・・・さらさら感があまり持続しない
スコア1・・・さらさら感が持続しない
<判定基準>
平均スコア 3.5〜4.0・・・◎
平均スコア 2.5〜3.4・・・○
平均スコア 1.5〜2.4・・・△
平均スコア 1.0〜1.4・・・×
【0072】
次に、5℃、50℃の雰囲気下で、それぞれ、1ヶ月静置した後の実施例1,2,3及び比較例のサンプルそれぞれについて、上から1枚目の化粧シートと下から1枚目の化粧シートを取り出し、各化粧シートを絞って、その絞り液の平均重量を測定した。またその絞り液を洗浄・乾燥し、絞り液に含有されていた粉体の平均重量を測定した。これらの結果を下記表2に示す。平均値はn=2の値である。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1,実施例2及び実施例3のサンプルでは、比較例のサンプルに比べ、上から1枚目の化粧シート及び下から1枚目の化粧シートの官能評価に差が少ないことがわかった。また、実施例1,実施例2及び実施例3のサンプルでは、比較例のサンプルに比べ、上から1枚目の化粧シート及び下から1枚目の化粧シートの絞り液の重量及び絞り液に含有されていた粉体の重量の差も少ないため、化粧シート間での粉体及び液体の移動がし難いことがわかった。化粧シート間での粉体及び液体の移動は、保存温度50℃(高温下)においても移動し難いことがわかった。
本発明の適用として、上述したサンプルA又は以下に示すサンプルCをシート状基材として用い、以下に示す処方例A〜Eの化粧料を塗布することにより化粧シート及びその積層体を作る事が出来る。
【0075】
[シート状基材として用いるサンプルC(積層構造)の作成]
平均繊維幅31μmのパルプ繊維100%の湿式不織布26.0g/m2の両面それぞれに、繊維径1.7dtex相当の漂白したコットン繊維(セルロース系繊維)70重量%と、繊維径2.4dtexのPET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維(疎水性繊維)30重量%のシート状の未結合繊維ウエブ12.0g/m2をカード法により積層し、このウエブの一面側及び他面側それぞれに対して、順次高圧水流を当てることにより該ウエブを水流交絡させて一体化し、含水状態のスパンレース不織布を得、該スパンレース不織布を乾燥させ2枚をヒートシールすることにより一体の複合基材を形成し、目的とするシート状基材(サンプルC)を得た。このシート状基材(サンプルC)は、PET(芯)/PE(鞘)の芯鞘型複合繊維以外に、構成繊維間を結合するためのバインダー等の接着剤を一切含んでいない。
【0076】
サンプルAに以下の成分からなる処方例Aの化粧料を300%含浸させて化粧シートを作成した。
成分 配合料(%)
タルク 4.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体*1) 0.3
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ジメチコン(2cs) 10.0
86%グリセリン 8.0
ポリプロピレングリコール*2) 2.0
水酸化カリウム 0.1
香料 0.05
精製水 残余
合計 100.00
*1)ペミュレンTR−1(Lubrizol Advanced Materials社製)
*2)アデカカーポール DL−30(株式会社ADEKA製)
【0077】
サンプルCに以下の成分からなる処方例Bの化粧料を400%含浸させて化粧シートを作成した。
成分 配合料(%)
メチルシロキサン網状重合体 *3) 3.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体*1) 0.15
カルボキシビニルポリマー*4) 0.05
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 1.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
ポリエチレングリコール400 3.0
水酸化カリウム 0.15
メチルパラベン 0.3
エタノール 5.0
香料 0.1
精製水 残余
合計 100.00
*3)KMP−590(信越化学工業株式会社製)
*4)カーボポール980(Lubrizol Advanced Materials社製)
【0078】
サンプルAに以下の成分からなる処方例Cの化粧料を250%含浸させて化粧シートを作成した。
成分 配合料(%)
架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体*5) 5.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体*6) 0.3
アスナロ抽出液*7) 0.1
カミツレリキッド*8) 0.1
1,3−ブチレングリコール 3.0
水酸化カリウム 0.1
エタノール 15.0
香料 0.08
精製水 残余
合計 100.00
*5)KSP−105(信越化学工業株式会社製)
*6)カーボポールETD2020(Lubrizol Advanced Materials社製)
*7)アスナロリキッドK(一丸ファルコス株式会社)
*8)カミツレリキッドKS(一丸ファルコス株式会社製)
【0079】
サンプルCに以下の成分からなる処方例Dの化粧料を350%含浸させて化粧シートを作成した。
成分 配合料(%)
シリカ 3.0
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体*9) 0.3
ポリエチレングリコール600 1.0
プロピレングリコール 0.5
水酸化カリウム 0.1
エタノール 5.0
L−メントール 0.1
香料 0.1
精製水 残余
合計 100.00
*9)ペミュレンTR−2(Lubrizol Advanced Materials社製)
【0080】
サンプルCに以下の成分からなる処方例Eの化粧料を500%含浸させて化粧シートを作成した。
成分 配合料(%)
ポリメタクリル酸メチル*10) 2.0
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー*11) 0.3
ジプロピレングリコール 1.0
ミリスチン酸イソプロピル 1.0
水酸化カリウム 0.1
エタノール 15.0
香料 0.08
精製水 残余
合計 100.00
*10)マツモトマイクロスフェアーM−100
*11)Aristoflex AVC(クラリアントジャパン社製)
【符号の説明】
【0081】
1 シート状基材
2 湿式不織布
3 繊維層
10 身体用ウエットシート化粧料(化粧シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維を含む湿式不織布の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層が積層されたシート状基材に、以下の成分(a)及び(b)を含有する化粧料を含浸して形成された身体用ウエットシート化粧料を複数枚積み重ねられてなる身体用ウエットシート化粧料の積層体。
(a)粉体
(b)水溶性溶剤
【請求項2】
前記シート状基材は、その平均繊維間距離が5μm〜29.9μmである請求項1に記載の身体用ウエットシート化粧料の積層体。
【請求項3】
前記シート状基材は、坪量が20〜130g/m2であり、20gf/cm2荷重下での厚みが0.22〜0.85mmである請求項1又は2に記載の身体用ウエットシート化粧料の積層体。
【請求項4】
前記化粧料は、更に成分(c)として、高分子分散剤を含有する請求項1〜3の何れかに記載の身体用ウエットシート化粧料の積層体。
【請求項5】
前記化粧料は、更に成分(d)として、25℃で液状の油剤を含有する請求項1〜4の何れかに記載の身体用ウエットシート化粧料の積層体。
【請求項6】
成分(a)の前記粉体は、球状である請求項1〜5の何れかに記載の身体用ウエットシート化粧料の積層体。
【請求項7】
成分(a)の前記粉体は、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂である請求項1〜6の何れかに記載の身体用ウエットシート化粧料の積層体。
【請求項8】
パルプ繊維を含む湿式不織布の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層が積層されたシート状基材に、以下の成分(a)及び(b)を含有する化粧料を含浸した身体用ウエットシート化粧料。
(a)粉体
(b)水溶性溶剤
【請求項9】
パルプ繊維を含む湿式不織布の一面又は両面に、セルロース系繊維及び疎水性繊維を含む繊維層が積層され、粉体及び水溶性溶剤を含有する化粧料が含浸されて身体の清拭に用いられるシート状基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241758(P2010−241758A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94227(P2009−94227)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】