説明

躯体の構築工法及び型枠ユニット

【課題】工期を短縮することができる躯体の構築工法及び型枠ユニットを提供する。
【解決手段】躯体の構築箇所1を挟んで対向配置されるとともに、上下方向に移動可能な第1固定部材11及び第2固定部材14と、第1固定部材11の第2固定部材14との対向面に設けられる第1型枠15と、第2固定部材14の第1固定部材11との対向面に設けられる第2型枠16と、第1固定部材11の第2固定部材14との対向面と反対側の面、又は第2固定部材14の第1固定部材11との対向面と反対側の面の少なくとも何れか一方に設けられる足場20とを備えた型枠ユニット10を用い、型枠ユニット10を上方へ順次移動させながら、第1型枠15と第2型枠16との間にコンクリート3を打設することを繰り返すことにより、躯体を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体の構築工法及び型枠ユニットに関し、特に、鉄骨鉄筋コンクリート構造又は鉄筋コンクリート構造の躯体の構築に有効な躯体の構築工法及び型枠ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)又は鉄筋コンクリート構造(RC造)の躯体工事において壁を構築する場合、例えば、建て方ヤードに仮設足場を設置し、この仮設足場を利用して、壁の構築箇所に壁鉄筋を組み立てて、この壁鉄筋の外側に壁鉄筋を内外から挟むように型枠を建て込み、この型枠の内側にコンクリートを打設することにより壁を構築し、このような作業を各階毎に繰り返し行うことにより、躯体の各階の壁を構築している。
【0003】
ところで、上記のような方法によって躯体の壁を構築する場合、仮設足場を各階毎に設置し、撤去することを繰り返し行う必要があるため、その作業に時間と手間がかかり、全体としての工期が長くなってしまう。
【0004】
また、下階の柱、壁、床を構築した後に、足場、型枠等の部材を吊り上げて下階から上階へ移動させる必要があり、その作業に手間がかかる。さらに、大型パネル化した型枠を用いる場合には、小さいユニットに分割して吊り上げなければならず、その作業に手間がかかる。
【0005】
一方、特許文献1には、揚重設備付きの伸縮マストを用いて、鉄筋工事、型枠工事等の資材、及びユニット化足場を揚重し、壁施工の揚重作業が他の資材の揚重作業に制約されることがなく、壁の施工の工期の短縮と省力化を図るようにした例が記載されている。
【特許文献1】特開平7−324489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような方法によって壁を構築する場合に、足場を各階毎に設置し、撤去することを繰り返し行う必要がなく、また、足場や型枠等の部材を吊り上げて下階から上階へ移動させるのも容易に短時間で行うことができる。しかし、構造が複雑であるために設備費が高く付き、コスト高になってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、工期を短縮することができるとともに、コストを安く抑えることができる躯体の構築工法及び型枠ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、躯体の構築工法であって、前記躯体の構築箇所を挟んで対向配置されるとともに、上下方向に移動可能な第1固定部材及び第2固定部材と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面に設けられる第1型枠と、前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面に設けられる第2型枠と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面と反対側の面、又は前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面と反対側の面の少なくとも何れか一方に設けられる足場とを備えた型枠ユニットを用い、前記型枠ユニットを上方へ順次移動させながら、前記第1型枠と前記第2型枠との間にコンクリートを打設することを繰り返すことにより、前記躯体を構築することを特徴とする。
【0009】
本発明による躯体の構築工法によれば、型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材を躯体の構築箇所を挟んで対向配置させることにより、躯体の構築箇所に予め設けられている鉄筋又は鉄骨鉄筋の両側に第1型枠及び第2型枠が対向配置される。そして、この状態で第1型枠と第2型枠との間にコンクリートを打設することにより、鉄筋又は鉄骨鉄筋とコンクリートとが一体化された躯体が構築される。そして、このような型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材の配置、コンクリートの打設を躯体の各階に対して繰り返し行うことにより、躯体の各階を構築することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の躯体の構築工法であって、前記第1固定部材及び前記第2固定部材の下端は、前記躯体の立上り部の側面又は前記躯体の側面に固定金具を介して固定されるとともに、前記第1固定部材の上端部と前記第2固定部材の上端部との間は第1連結部材を介して互いに連結され、さらに、前記第1固定部材の上端部は前記躯体の鉄骨に第2連結部材を介して連結されることを特徴とする。
【0011】
本発明による躯体の構築工法によれば、第1固定部材及び第2固定部材の下端は躯体の立上り部の側面又は躯体の側面に固定金具を介して固定され、第1固定部材の上端部と第2固定部材の上端部との間は第1連結部材を介して互いに連結されるので、コンクリートの打設時の圧力によって第1型枠及び第2型枠が変形するのを防止できる。また、第1固定部材の上端部は第2連結部材を介して躯体の鉄骨に連結されるので、コンクリートの打設時の圧力によって第1型枠が躯体の内方に変形するのを防止できる。従って、躯体を高精度で構築することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の躯体の構築工法であって、前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、縦寸法が前記躯体の1階分に相当する長さ設定され、前記第1型枠及び前記第2型枠は、縦寸法が前記躯体の1階の半分に相当する長さに設定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明による躯体の構築工法によれば、型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材を躯体の構築箇所を挟んで対向配置したときに、第1固定部材及び第2固定部材が躯体の各階の全高に対応して配置され、第1型枠及び第2型枠が躯体の各階の半分の高さに対応して配置される。従って、躯体の各階を下半分と上半分の2層に分けて構築することができるので、階高の異なる各種の躯体の構築に適用することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載の躯体の構築工法であって、前記躯体は、壁であることを特徴とする。
【0015】
本発明による躯体の構築工法によれば、型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材を壁の構築箇所を挟んで対向配置させることにより、壁の構築箇所に予め設けられている鉄筋又は鉄骨鉄筋の両側に第1型枠及び第2型枠が対向配置される。そして、この状態で第1型枠と第2型枠との間にコンクリートを打設することにより、鉄筋又は鉄骨鉄筋とコンクリートとが一体化された壁が構築される。そして、このような型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材の配置、コンクリートの打設を躯体の各階に対して繰り返し行うことにより、躯体の各階の壁を構築することができる。
また、第1連結部材により、壁を構築する際のコンクリートの打設圧力によって第1型枠及び第2型枠が変形するのを防止できるとともに、第2連結部材により、第1型枠が躯体の内方に変形するのを防止できるので、躯体の壁を高精度で構築することができる。
さらに、躯体の各階の壁を下半分と上半分の2層に分けて構築することができるので、階高の異なる各種の躯体の壁の構築に適用することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、躯体を構築するための型枠ユニットであって、前記躯体の構築箇所を挟んで対向配置されるとともに、上下方向に移動可能な第1固定部材及び第2固定部材と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面に設けられる第1型枠と、前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面に設けられる第2型枠と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面と反対側の面、又は前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面と反対側の面の少なくとも何れか一方に設けられる足場とを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の型枠ユニットであって、前記第1固定部材及び前記第2固定部材の下端は、前記躯体の立上り部の側面又は前記躯体の側面に固定金具を介して固定されるとともに、前記第1固定部材の上端部と前記第2固定部材の上端部との間は第1連結部材を介して互いに連結され、さらに、前記第1固定部材の上端部は前記躯体の鉄骨に第2連結部材を介して連結されることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の型枠ユニットであって、前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、縦寸法が前記躯体の1階分に相当する長さに設定され、前記第1型枠及び前記第2型枠は、縦寸法が前記躯体の1階の半分に相当する長さに設定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項5から7の何れかに記載の型枠ユニットであって、前記躯体は、壁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明によれば、型枠ユニットの第1固定部材及び第1固定部材を躯体の構築箇所を挟んで対向配置させることにより、躯体の構築箇所に予め設けられている鉄筋又は鉄骨鉄筋の両側に第1型枠及び第2型枠が対向配置される。そして、この状態で第1型枠と第2型枠との間にコンクリートを打設することにより、鉄筋又は鉄骨鉄筋とコンクリートとを一体化した躯体を構築することができる。そして、このような型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材の配置、コンクリートの打設を躯体の各階に対して繰り返し行うことにより、躯体の各階を構築することができる。
この場合、第1固定部材及び第2固定部材を躯体の下階から上階に順次せり上げることにより、第1固定部材と一体に第1型枠及び足場を、第2固定部材と一体に第2型枠及び足場をそれぞれ躯体の下階から上階に順次せり上げることができるので、躯体の各階毎に第1型枠、第2型枠、及び足場の設置、解体を繰り返し行う必要がなく、躯体の構築に要する時間と手間を削減することができ、工期を大幅に短縮することができる。
【0021】
また、第1固定部材及び第2固定部材の下端は躯体の立上り部の側面又は躯体の側面に固定金具を介して固定され、第1固定部材の上端部と第2固定部材の上端部との間は第1連結部材を介して互いに連結されているので、コンクリートの打設時の圧力によって第1型枠及び第2型枠が変形するのを防止できる。さらに、第1固定部材の上端部は第2連結部材を介して躯体の鉄骨に連結されているので、コンクリートの打設圧力によって第1型枠が躯体の内方へ変形するのを防止できる。従って、躯体の各階を高精度で構築することができる。
【0022】
さらに、型枠ユニットの第1固定部材及び第2固定部材を躯体の構築箇所を挟んで対向配置したときに、第1固定部材及び第2固定部材が躯体の各階の全高に対応し、第1型枠及び第2型枠が躯体の各階の半分の高さに対応することになるので、躯体の各階を下半分と上半分の2層に分けて構築することができる。従って、階高の異なる各種の躯体の構築に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明による躯体の構築工法の一実施の形態が示されていて、図1は型枠ユニットによる躯体の構築手順を示す説明図、図2は型枠ユニットの下端部の概略図、図3及び図4は型枠ユニットの上端部の概略図である。
【0024】
すなわち、本実施の形態の躯体の構築工法は、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)又は鉄筋コンクリート構造(RC造)の躯体工事に有効な工法であって、本実施の形態においては、鉄骨鉄筋コンクリート構造壁(SRC造壁)又は鉄筋コンクリート構造壁(RC造壁)を対象とし、図1に示すような構成の型枠ユニット10を用い、この型枠ユニット10を躯体の各階の壁の構築箇所1に配置し、型枠ユニット10の内側にコンクリート3を打設することを繰り返すことにより、躯体の各階のSRC造又はRC造の壁6を構築するものである。
【0025】
型枠ユニット10は、図1に示すように、躯体の壁の構築箇所1を挟んで対向配置される第1固定部材11及び第2固定部材14と、第1固定部材11の第2固定部材14との対向面に設けられる第1型枠15と、第2固定部材14の第1固定部材11との対向面に設けられる第2型枠16と、第1固定部材11の第2固定部材14との対向面と反対側の面に設けられる足場20と、第2固定部材14の第1固定部材11との対向面と反対側の面に設けられる足場20とを備えている。
なお、足場20は、第1固定部材11の第2固定部材14との対向面と反対側の面、又は第2固定部材14の第1固定部材11との対向面と反対側の面の少なくとも何れか一方に設ければよい。
【0026】
第1固定部材11及び第2固定部材14は、例えば、C型鋼を背中合わせに一体に連結した縦部材12と角パイプからなる横部材13とを格子状に組み合わせて、縦部材12と横部材13とを交差部で溶接、ボルト・ナット等の連結手段によって一体に連結することにより全体を矩形状に形成している。
【0027】
第1固定部材11及び第2固定部材14は、図1及び図3に示すように、壁の構築箇所1を挟んで対向配置され、この状態で躯体の床面4に壁6の構築に先行して打設されている立上り部5の側面に各縦部材12の下端が固定金具19によって一体に連結される。
【0028】
本実施の形態においては、各縦部材12にその長手方向に所定の間隔ごとに複数の貫通孔12aを設け、これらの複数の貫通孔のうちの何れかの貫通孔12a内に横部材13を貫通させることにより全体を格子状に組み立てている。
【0029】
なお、本実施の形態においては、第1固定部材11及び第2固定部材14の縦寸法を躯体の1階分の高さに相当する長さに設定しているが、この第1固定部材11及び第2固定部材14の縦寸法は、躯体の大きさに応じて適宜の長さに設定することができる。
【0030】
第1固定部材11の各縦部材12の上端部と第2固定部材14の各縦部材12の上端部との間には角パイプ等からなる第1連結部材17が架設され、この第1連結部材17を介して両縦部材12の上端部間が互いに連結され、この第1連結部材17により第1固定部材11と第2固定部材14との間が所定の間隔に保持される。
【0031】
第1固定部材11の上端部の縦部材12又は横部材13と躯体の梁等の鉄骨との間には、図1及び図4に示すように、ターンバックル等の第2連結部材18が架設され、この第2連結部材18を介して第1固定部材11の上端部が躯体の梁等の鉄骨に一体に連結され、この第2連結部材18によりコンクリートの打設時の圧力によって第1固定部材11が所定の位置から躯体の内方にずれる(変形する)のを防止している。
【0032】
第1固定部材11の第2固定部材14との対向面には第1型枠15が一体に設けられ、第2固定部材14の第1固定部材11との対向面には第2型枠16が一体に設けられている。
【0033】
第1型枠15及び第2型枠16は、鋼製の複数の面材を組み合わせて平板状に形成したものであって、ボルト・ナット等の連結手段によって第1固定部材11の第2固定部材14との対向面及び第2固定部材の第1固定部材11との対向面にそれぞれ着脱可能に取り付けられている。第1型枠15及び第2型枠16は、例えば、縦寸法が躯体の各階の壁の全高の約1/2に相当する長さに設定され、横寸法が各階の壁の全幅に相当する長さに設定される。
【0034】
足場20は、第1固定部材11の第2固定部材14との対向面と反対側の面、及び第2固定部材14の第1固定部材11との対向面と反対側の面にそれぞれ全幅に亘って、かつ上下方向に複数段(本実施の形態では4段)に設けられている。
【0035】
足場20は、第1固定部材11及び第2固定部材14に固定金具によって取り付けられる鉄パイプ等からなる支持脚21と、支持脚21によって水平に支持される平板状の鋼製の作業床22とを備えている。
【0036】
足場20を利用して、壁の構築箇所1への鉄筋の配筋、鉄筋の結束、縦部材12の固定金具19による壁6への取り付け、縦部材12の上端部間への第1連結部材17の取り付け、第1固定部材11の上端部と躯体の梁等の鉄骨との間への第2連結部材18の取り付け、コンクリートの打設、各種の資材の運搬等の各種の作業が行われる。
【0037】
次に、上記のように構成した本実施の形態による躯体の構築工法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、躯体の壁の構築箇所1に型枠ユニット10を配置し、型枠ユニット10の第1固定部材11(第1型枠15)と第2固定部材14(第2型枠16)とを、壁の構築箇所1を挟んで対向配置させ、第1固定部材11の各縦部材12の下端及び第2固定部材14の各縦部材12の下端を躯体の床面4の立上り部5の側面に固定金具19(図2参照)を介して固定する。
なお、壁の構築箇所1には予め壁鉄筋2を配筋しておく。壁鉄筋2は、縦方向の寸法が躯体の各階の壁の全高の約1/2に相当する長さに設定され、横寸法が各階の壁の全幅に相当する長さに設定されている。
【0038】
次に、第1固定部材11の各縦部材12の上端部と第2固定部材14の各縦部材12上端部と間に第1連結部材17(図3参照)を架設し、この第1連結部材17を介して両縦部材12の上端部間を互いに連結する。さらに、第1固定部材11の縦部材12又は横部材13の上端部と躯体の梁等の鉄骨25との間に第2連結部材18(図4参照)を架設し、この第2連結部材18を介して第1固定部材11の上端部を躯体の鉄骨25に一体に連結する。
【0039】
このようにして、第1固定部材11と第2固定部材14とを壁の構築箇所1を挟んで対向配置させることにより、第1型枠15及び第2型枠16が壁の構築箇所1の壁鉄筋2の両側に対向配置される。
【0040】
そして、図1(b)に示すように、第1型枠15と第2型枠16との間にコンクリート3を打設することにより、第1型枠15と第2型枠16との間に壁鉄筋2とコンクリート3とが一体化された1階の下半分(1層目)の壁6が構築される。
なお、壁鉄筋2の各縦筋が構築した壁6の上端から上方に所定の長さ突出するように、壁鉄筋2の各縦筋を配筋しておき、この突出している縦筋にその上方に配筋される壁鉄筋2の縦筋が接合される。
【0041】
この場合、第1固定部材11の各縦部材12の下端部、及び第2固定部材14の各縦部材12の下端部は、躯体の床面4の立上り部5の側面に固定金具19によって固定され、第1固定部材11の各縦部材12の上端部と第2固定部材14の各縦部材12の上端部との間は第1連結部材17を介して互いに連結されているので、コンクリート3の打設時の圧力によって第1型枠15及び第2型枠16が変形するようなことはない。また、第1固定部材11の上端部は第2連結部材18を介して躯体の鉄骨25に連結されているので、コンクリート3の打設時の圧力によって第1型枠15が躯体の内方にずれる(変形する)こともない。従って、1層目の壁6を高精度で構築することができる。
【0042】
次に、1層目の壁6のコンクリート3が所定の強度を発現した後に、図1(b)に示すように、1層目の壁6の上部に1階の上半分(2層目)の壁鉄筋2を組み立てるとともに、各固定金具19、第1連結部材17、及び第2連結部材18を取り外し、図1(c)に示すように、第1固定部材11(第1型枠15)を上方にせり上げ、第1固定部材11の下端を1層目の壁6の上端部に位置決めする。
【0043】
次に、第1固定部材11の各縦部材12の下端を1層目の壁6の上端部側面に固定金具19により固定するとともに、図1(d)に示すように、第2固定部材14を上方にせり上げ、第2固定部材14の下端を1層目の壁6の上端部に位置決めし、第2固定部材14の各縦部材12の下端を1層目の壁6の上端部側面に固定金具19により固定する。
【0044】
次に、第1固定部材11の各縦部材12の上端部と第2固定部材14の各縦部材12の上端部との間に第1連結部材17を架設し、この第1連結部材17を介して両縦部材12の上端部間を互いに連結する。さらに、第1固定部材11の上端部の縦部材12又は横部材13と躯体の梁等の鉄骨25との間に第2連結部材18を架設し、この第2連結部材18を介して第1固定部材11の上端部を躯体の梁等の鉄骨25に連結する。
【0045】
このようにして、第1固定部材11及び第2固定部材14を2層目の壁の構築箇所1を挟んで対向配置させることにより、第1型枠15及び第2型枠16が2層目の壁鉄筋2の両側に対向配置され、第1型枠11と第2型枠16との間が所定の間隔に保持される。
【0046】
そして、この状態で第1型枠15と第2型枠16との間にコンクリート3を打設することにより、第1型枠15と第2型枠16との間に壁鉄筋2とコンクリート3とが一体化された2層目の壁6が構築される。
【0047】
このようにして、壁型枠ユニット10を躯体の各階の1層、2層に対応させて配置し、コンクリート3を打設することを繰り返すことにより、躯体の各階の1層、2層の壁6を順次構築することができる。
【0048】
上記のように構成した本実施の形態による躯体の構築工法にあっては、第1型枠15及び足場20を取り付けた第1固定部材11と、第2型枠16及び足場20を取り付けた第2固定部材14とを備えた型枠ユニット10を用い、この型枠ユニット10を躯体の各階に設置し、コンクリート3を打設することを繰り返すことにより、躯体の各階の壁6を下階から上階に順次構築するように構成したので、各階毎に第1型枠15及び第2型枠16の設置、解体、足場20の設置、解体を行う必要はなく、各階の壁6の構築に要する時間と手間を削減することができ、工期を短縮することができる。
【0049】
また、第1固定部材11の各縦部材12の下端、及び第2固定部材14の各縦部材12の下端を固定金具19によって躯体の床面の立上り部5の側面又は壁6の側面にそれぞれ固定し、第1固定部材11の各縦部材12の上端部と第2固定部材14の各縦部材12の上端部との間を第1連結部材17によって互いに連結しているので、コンクリートの打設時の圧力によって第1型枠15及び第2型枠16が変形するのを防止できる。さらに、第1固定部材11の上端部を第2連結部材18を介して躯体の梁等の鉄骨25に連結しているので、コンクリート3の打設時の圧力によって第1型枠15が躯体の内方にずれる(変形する)こともない。従って、壁6を高精度で構築することができる。
【0050】
なお、前記の説明においては、各階を2層に分けて壁6を構築したが、各階を1層又は3層として壁6を構築してもよい。
また、前記の説明においては、本発明による躯体の構築工法及び型枠ユニットをRC造の壁6に適用したが、SRC造の壁に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
さらに、前記の説明においては、本発明による躯体の構築工法及び型枠ユニットを躯体の壁6の構築に適用したが、躯体の壁と柱とが一体化されている箇所の構築、壁と梁とが一体化されている箇所の構築、壁と柱と梁とが一体化されている箇所の構築に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による躯体の構築工法の一実施の形態を示した説明図であって、型枠ユニットによる壁の構築手順を示した説明図である。
【図2】型枠ユニットの下端部の概略図である。
【図3】型枠ユニットの上端部の概略図である。
【図4】型枠ユニットの上端部の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1 壁の構築箇所
2 壁鉄筋
3 コンクリート
4 床面
5 立上り部
6 壁
10 型枠ユニット
11 第1固定部材
12 縦部材
12a 貫通孔
13 横部材
14 第2固定部材
15 第1型枠
16 第2型枠
17 第1連結部材
18 第2連結部材
19 固定金具
20 足場
21 支持脚
22 作業床
25 鉄骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の構築工法であって、
前記躯体の構築箇所を挟んで対向配置されるとともに、上下方向に移動可能な第1固定部材及び第2固定部材と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面に設けられる第1型枠と、前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面に設けられる第2型枠と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面と反対側の面、又は前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面と反対側の面の少なくとも何れか一方に設けられる足場とを備えた型枠ユニットを用い、
前記型枠ユニットを上方へ順次移動させながら、前記第1型枠と前記第2型枠との間にコンクリートを打設することを繰り返すことにより、前記躯体を構築することを特徴とする躯体の構築工法。
【請求項2】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材の下端は、前記躯体の立上り部の側面又は前記躯体の側面に固定金具を介して固定されるとともに、前記第1固定部材の上端部と前記第2固定部材の上端部との間は第1連結部材を介して互いに連結され、さらに、前記第1固定部材の上端部は前記躯体の鉄骨に第2連結部材を介して連結されることを特徴とする請求項1に記載の躯体の構築工法。
【請求項3】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、縦寸法が前記躯体の1階分に相当する長さ設定され、前記第1型枠及び前記第2型枠は、縦寸法が前記躯体の1階の半分に相当する長さに設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の躯体の構築工法。
【請求項4】
前記躯体は、壁であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の躯体の構築工法。
【請求項5】
躯体を構築するための型枠ユニットであって、
前記躯体の構築箇所を挟んで対向配置されるとともに、上下方向に移動可能な第1固定部材及び第2固定部材と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面に設けられる第1型枠と、前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面に設けられる第2型枠と、前記第1固定部材の前記第2固定部材との対向面と反対側の面、又は前記第2固定部材の前記第1固定部材との対向面と反対側の面の少なくとも何れか一方に設けられる足場とを備えていることを特徴とする型枠ユニット。
【請求項6】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材の下端は、前記躯体の立上り部の側面又は前記躯体の側面に固定金具を介して固定されるとともに、前記第1固定部材の上端部と前記第2固定部材の上端部との間は第1連結部材を介して互いに連結され、さらに、前記第1固定部材の上端部は前記躯体の鉄骨に第2連結部材を介して連結されることを特徴とする請求項5に記載の型枠ユニット。
【請求項7】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材は、縦寸法が前記躯体の1階分に相当する長さに設定され、前記第1型枠及び前記第2型枠は、縦寸法が前記躯体の1階の半分に相当する長さに設定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の型枠ユニット。
【請求項8】
前記躯体は、壁であることを特徴とする請求項5から7の何れかに記載の型枠ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−97275(P2009−97275A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271555(P2007−271555)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】