説明

車両およびその車両の製造方法

【課題】操作レバーの操作性を向上させることが可能な車両を提供する。
【解決手段】この自動二輪車1(車両)は、ハンドル17と、ハンドル17に取り付けられるブレーキレバー20およびクラッチレバー23とを備えている。ブレーキレバー20の握り部20bおよびクラッチレバー23の握り部23aの表面には、滑り止め機能を有する梨地形状(凹凸形状)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両およびその車両の製造方法に関し、特に、操作レバーを備えた車両およびその車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車などの車両に備えられるブレーキレバーやクラッチレバーなどの操作レバーが知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には具体的に記載されていないが、このような従来のブレーキレバーやクラッチレバーなどの操作レバーは、通常、アルミニウムなどの金属を用いて、鋳造法により形成されている。このように鋳造法により形成された操作レバーは、鋳型から取り出した状態では、型割り部にバリ(加工残り)が形成されている。このため、操作レバーの型割り部のバリを除去するため、および、表面の見栄え(外観)を向上させるために、人の手によって操作レバーの表面全体にバフ研磨を行った後、バレル研磨が行われていた。
【0003】
【特許文献1】特開平5−39078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のブレーキレバーやクラッチレバーなどの操作レバーでは、操作レバーの表面全体にバフ研磨およびバレル研磨が行われるので、操作レバーの表面は、滑らかに形成される。このため、操作レバーが雨や汗などで濡れた場合に、操作レバーを操作する(握る)際に、操作レバーの表面に対して運転者の手などが滑りやすくなるという不都合があった。その結果、操作レバーの操作性を向上させることが困難であるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、操作レバーの操作性を向上させることが可能な車両およびその車両の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この発明の第1の局面による車両は、ハンドルと、ハンドルに取り付けられる操作レバーとを備え、操作レバーの少なくとも握り部の表面には、滑り止め機能を有する凹凸形状が形成されている。
【0007】
この第1の局面による車両では、上記のように、操作レバーの少なくとも握り部の表面に、滑り止め機能を有する凹凸形状を形成することによって、操作レバーの握り部と、運転者の手または手袋などとの間の摩擦係数を大きくすることができるので、操作レバーを操作する(握る)際に、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを抑制することができる。これにより、操作レバーの操作性を向上させることができる。また、操作レバーが雨や汗などで濡れた場合にも、雨や汗を凹凸形状の凹部に入り込みやすくすることができるので、凹凸形状の凸部と運転者の手または手袋などとの間に雨や汗が入り込むのを抑制することができる。これにより、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのをより抑制することができるので、操作レバーの操作性をより向上させることができる。
【0008】
上記第1の局面による車両において、好ましくは、握り部の表面の凹凸形状は、梨地形状を有する。このように構成すれば、握り部の表面の凹凸形状を、容易に、滑り止め機能を有するように形成することができる。
【0009】
上記第1の局面による車両において、好ましくは、握り部の凹凸形状の表面粗さは、5μm以上30μm以下である。このように握り部の凹凸形状の表面粗さを5μm以上に形成することによって、操作レバーの握り部と、運転者の手または手袋などとの間の摩擦係数を十分に大きくすることができるので、操作レバーを操作する際に、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを十分に抑制することができる。また、握り部の凹凸形状の表面粗さを30μm以下に形成することによって、運転者の手に対する握り部の凹凸形状の面圧が大きくなり過ぎるのを抑制することができるので、運転者の手が痛くなるのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による車両において、好ましくは、操作レバーは、ブレーキレバーおよびクラッチレバーの少なくともいずれか一方を含む。このように構成すれば、ブレーキレバーまたはクラッチレバーを操作する際に、ブレーキレバーまたはクラッチレバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを抑制することができる。これにより、ブレーキレバーまたはクラッチレバーの操作性を向上させることができる。
【0011】
上記第1の局面による車両において、好ましくは、操作レバーは、アルミニウム製であり、凹凸形状が形成された操作レバーの少なくとも握り部の表面には、陽極酸化被膜が形成されている。このように構成すれば、凹凸形状が形成された操作レバーの少なくとも握り部の耐食性および耐磨耗性などを向上させることができるので、凹凸形状を長期間維持することができる。これにより、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを長期にわたり抑制することができる。
【0012】
この発明の第2の局面による車両の製造方法は、ハンドルに取り付けられる操作レバーを準備する工程と、操作レバーの少なくとも握り部の表面に、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程とを備える。
【0013】
この第2の局面による車両の製造方法では、上記のように、操作レバーの少なくとも握り部の表面に、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程を備えることによって、操作レバーの握り部と、運転者の手または手袋などとの間の摩擦係数を大きくすることができるので、操作レバーを操作する(握る)際に、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを抑制することができる。これにより、操作レバーの操作性を向上させることができる。また、操作レバーが雨や汗などで濡れた場合にも、雨や汗を凹凸形状の凹部に入り込みやすくすることができるので、凹凸形状の凸部と運転者の手または手袋などとの間に雨や汗が入り込むのを抑制することができる。これにより、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのをより抑制することができるので、操作レバーの操作性をより向上させることができる。また、操作レバーの少なくとも握り部の表面に、ショットブラスト法により凹凸形状を形成する工程を備えることによって、操作レバーの少なくとも握り部の表面に残留圧縮応力を付与することができるので、操作レバーの少なくとも握り部の疲労強度を向上させることができる。
【0014】
上記第2の局面による車両の製造方法において、好ましくは、操作レバーを準備する工程は、アルミニウム鋳造法により操作レバーを形成する工程を含み、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程は、ショットブラスト法により凹凸形状を形成する際に、操作レバーの表面に鋳造時に形成されたバリを除去する工程を含む。このように構成すれば、操作レバーの表面に鋳造時に形成されたバリを、ショットブラスト加工時に除去することができるので、操作レバーのバリを除去するために、人の手によって操作レバーの表面にバフ研磨およびバレル研磨を行う必要がない。これにより、操作レバーの加工時間を短縮することができる。なお、この場合、ショットブラスト法により凹凸形状が形成された操作レバーの表面は、一様な凹凸形状が形成されるので、見栄え(外観)を向上させるためのバフ研磨およびバレル研磨も行う必要がない。
【0015】
上記第2の局面による車両の製造方法において、好ましくは、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程の後に、操作レバーに、ネジ穴を形成する工程をさらに備える。このように構成すれば、操作レバーにネジ穴を形成した後に、ショットブラスト法により凹凸形状を形成する場合と異なり、ショットブラスト加工時にネジ穴が潰れるのを防止することができる。これにより、操作レバーに容易にネジ穴を形成することができる。
【0016】
上記第2の局面による車両の製造方法において、好ましくは、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程は、握り部に、5μm以上30μm以下の表面粗さを有する凹凸形状を形成する工程を含む。このように握り部の凹凸形状の表面粗さを5μm以上に形成することによって、操作レバーの握り部と、運転者の手または手袋などとの間の摩擦係数を十分に大きくすることができるので、操作レバーを操作する際に、操作レバーの表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを十分に抑制することができる。また、握り部の凹凸形状の表面粗さを30μm以下に形成することによって、運転者の手に対する握り部の凹凸形状の面圧が大きくなり過ぎるのを抑制することができるので、運転者の手が痛くなるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2〜図7は、図1に示した一実施形態による自動二輪車のブレーキレバーおよびクラッチレバーの構造を詳細に説明するための図である。なお、本実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の構造について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。また、メインフレーム3は、上方から後方に延びる上側フレーム部3aと、下側から後方に延びる下側フレーム部3bとを有している。また、メインフレーム3の上側フレーム部3aの中央部および後部には、リアフレーム4の上側フレーム部4aおよび下側フレーム部4bがそれぞれ接続されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3およびリアフレーム4によって、車体フレームが構成されている。
【0020】
また、メインフレーム3の上側フレーム部3aの後部には、図示しないピボット軸が設けられている。このピボット軸により、リヤアーム5の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム5の後端部には、後輪6が回転可能に取り付けられている。また、メインフレーム3の上側フレーム部3aの上部には、燃料タンク7が配置されている。また、燃料タンク7の後方には、シート8が配置されている。
【0021】
また、ヘッドパイプ2の下方には、上下方向の衝撃を吸収するためのサスペンションを有する一対のフロントフォーク9が配置されている。この一対のフロントフォーク9の下端には、前輪10が回転可能に取り付けられている。また、前輪10の上方には、フロントフェンダ11が配置されている。また、ヘッドパイプ2の前方には、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル12が設けられている。また、メインフレーム3の上側フレーム部3aの下方には、エンジン13が取り付けられている。このエンジン13には、排気管14が取り付けられている。この排気管14は、後方へ向かうとともに、マフラー15に連結されている。また、マフラー15の中央部の上側には、支持部材16が設けられている。この支持部材16は、ボルト50により、リアフレーム4の後端部に固定されている。
【0022】
また、ヘッドパイプ2の上部には、ハンドル17が回動可能に取り付けられている。ここで、本実施形態では、図2に示すように、ハンドル17の走行方向(FWD方向)に向かって右側の前側の部分には、レバー支持部18が設けられている。このレバー支持部18の内部には、図示しない油圧式ブレーキ用シリンダが配置されている。また、レバー支持部18には、支持軸P1を中心として回動可能にボルト51により回動部材19が取り付けられている。また、レバー支持部18には、回動部材19がハンドル17に対して図2に示した状態よりも前方向(矢印A方向)に回動して開くのを抑制するための図示しないストッパーが形成されている。また、回動部材19には、レバー支持部18の図示しない油圧式ブレーキ用シリンダの内部に配置されたピストンを押圧するための押圧部19aが設けられている。これにより、回動部材19が支持軸P1を中心として矢印B方向に回動された場合に、油圧式ブレーキ用シリンダの内部に配置されたピストンを押圧するので、運転者はブレーキ操作を行うことが可能となる。また、回動部材19には、回動軸P2を中心として回動可能にボルト52によりブレーキレバー20が取り付けられている。なお、ブレーキレバー20は、本発明の「操作レバー」の一例である。このブレーキレバー20には、ボルト52が挿入されるネジ穴20a(図3参照)が形成されている。
【0023】
また、ブレーキレバー20は、図示しないバネにより、回動部材19に対して前方向(矢印A方向)に回動して開かないように後ろ方向(矢印B方向)に付勢されている。また、ブレーキレバー20の前側には、運転者がブレーキレバー20を操作する際に握るための握り部20bが形成されている。この握り部20bは、図4に示すように、断面が曲線形状を有するように形成されている。また、ブレーキレバー20には、図2に示すように、所定の領域にネジ穴20cが形成されている。そして、ネジ穴20cには、図2に示すように、調節用ボルト53が取り付けられている。この調節用ボルト53の先端部53aは、回動部材19の側面に当接するように構成されている。また、調節用ボルト53は、ネジ穴20cに挿入する量を調節することにより、ハンドル17に対するブレーキレバー20の開き角度(θ1)を調節することが可能である。
【0024】
具体的には、図2に示した状態よりもネジ穴20cに対する調節用ボルト53の挿入量を小さくした場合には、図5に示すように、ハンドル17に対するブレーキレバー20の開き角度(θ1)を大きくすることが可能である。また、図2に示した状態よりもネジ穴20cに対する調節用ボルト53の挿入量を大きくした場合には、図6に示すように、ハンドル17に対するブレーキレバー20の開き角度(θ1)を小さくすることが可能である。
【0025】
また、本実施形態では、ブレーキレバー20の表面全体には、約5μm〜約30μmの表面粗さを有するとともに、滑り止め機能を有する一様な梨地形状(凹凸形状)が形成されている。また、ブレーキレバー20は、アルミニウム製であるとともに、表面全体には、アルマイト処理による陽極酸化被膜が形成されている。
【0026】
また、本実施形態では、図7に示すように、ハンドル17の走行方向(FWD方向)に向かって左側の前側の部分には、レバー支持部21が設けられている。このレバー支持部21の内部には、図示しない油圧式クラッチ用シリンダが配置されている。また、レバー支持部21には、支持軸P3を中心として回動可能にボルト51により回動部材22が取り付けられている。また、レバー支持部21には、回動部材22がハンドル17に対して図7に示した状態よりも前方向(矢印C方向)に回動して開くのを抑制するための図示しないストッパーが形成されている。また、回動部材22には、レバー支持部21の図示しない油圧式クラッチ用シリンダの内部に配置されたピストンを押圧するための押圧部22aが設けられている。これにより、回動部材22が支持軸P3を中心として矢印D方向に回動された場合に、油圧式クラッチ用シリンダの内部に配置されたピストンを押圧するので、運転者はクラッチ操作を行うことが可能となる。また、回動部材22には、回動軸P4を中心として回動可能にボルト52によりクラッチレバー23が取り付けられている。なお、クラッチレバー23は、本発明の「操作レバー」の一例である。このクラッチレバー23には、図3に示したブレーキレバーと同様、ボルト52が挿入されるネジ穴(図示せず)が形成されている。また、クラッチレバー23は、図示しないバネにより、回動部材22に対して前方向(矢印C方向)に回動して開かないように後ろ方向(矢印D方向)に付勢されている。また、クラッチレバー23の前側には、運転者がクラッチレバー23を操作する際に握るための握り部23aが形成されている。この握り部23aは、図4に示したブレーキレバー20と同様、断面が曲線形状を有するように形成されている。また、クラッチレバー23には、図7に示すように、所定の領域にネジ穴23bが形成されている。そして、ネジ穴23bには、調節用ボルト53が取り付けられている。この調節用ボルト53の先端部53aは、回動部材22の側面に当接するように構成されている。また、調節用ボルト53は、ネジ穴23bに挿入する量を調節することにより、ハンドル17に対するクラッチレバー23の開き角度(θ2)を調節することが可能である。
【0027】
具体的には、図7に示した状態よりもネジ穴23bに対する調節用ボルト53の挿入量を小さくした場合には、ハンドル17に対するクラッチレバー23の開き角度(θ2)を大きくすることが可能である。また、図7に示した状態よりもネジ穴23bに対する調節用ボルト53の挿入量を大きくした場合には、ハンドル17に対するクラッチレバー23の開き角度(θ2)を小さくすることが可能である。
【0028】
また、本実施形態では、クラッチレバー23の表面全体には、ブレーキレバー20と同様、約5μm〜約30μmの表面粗さを有するとともに、滑り止め機能を有する一様な梨地形状(凹凸形状)が形成されている。また、クラッチレバー23は、アルミニウム製であるとともに、表面全体には、陽極酸化被膜が形成されている。
【0029】
図8〜図10は、本実施形態による自動二輪車のブレーキレバーおよびクラッチレバーの製造工程を説明するための図である。次に、図3および図8〜図10を参照して、本実施形態による自動二輪車1のブレーキレバー20およびクラッチレバー23の製造工程について説明する。まず、ブレーキレバー20の製造工程としては、図8に示したステップS1において、アルミニウム鋳造法によりブレーキレバー20を形成する。そして、ステップS2において、ブレーキレバー20を、鋳型(図示せず)から取り出す。このとき、ブレーキレバー20には、図9に示すように、型割り部の表面にバリ20dが形成されている。次に、ステップS3において、ショットブラスト法を用いて、図10に示すように、ブレーキレバー20の表面全体に、約5μm〜約30μmの表面粗さを有するとともに、滑り止め機能を有する梨地形状(凹凸形状)を形成する。具体的には、約0.4mm〜約0.6mmの直径を有するステンレス球を、ブレーキレバー20の上下斜め約45度の方向から約30秒間投射する。このとき、ブレーキレバー20の型割り部の表面に形成されたバリ20d(図9参照)が除去されるとともに、ブレーキレバー20の表面全体は、約5μm〜約30μmの表面粗さを有し、かつ、滑り止め機能を有する一様な梨地形状(凹凸形状)が形成される。また、このとき、ブレーキレバー20の表面全体に残留圧縮応力が付与されるので、ブレーキレバー20の疲労強度を向上させることが可能となる。そして、ステップS4において、図3に示すように、ブレーキレバー20の所定の領域にネジ穴20aおよび20cを形成する。その後、ステップS5において、ブレーキレバー20の表面全体に、アルマイト処理により陽極酸化被膜を形成する。
【0030】
なお、クラッチレバー23の製造工程は、ブレーキレバー20の製造工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0031】
本実施形態では、上記のように、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面全体に、滑り止め機能を有する梨地形状(凹凸形状)を形成することによって、ブレーキレバー20の握り部20bおよびクラッチレバー23の握り部23aと、運転者の手または手袋などとの間の摩擦係数を大きくすることができるので、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23を操作する際に、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを抑制することができる。これにより、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の操作性を向上させることができる。また、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23が雨や汗などで濡れた場合にも、雨や汗を梨地形状(凹凸形状)の凹部に入り込みやすくすることができるので、梨地形状(凹凸形状)の凸部と運転者の手または手袋などとの間に雨や汗が入り込むのを抑制することができる。これにより、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのをより抑制することができるので、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の操作性をより向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の梨地形状(凹凸形状)の表面粗さを5μm以上に形成することによって、ブレーキレバー20の握り部20bおよびクラッチレバー23の握り部23aと、運転者の手または手袋などとの間の摩擦係数を十分に大きくすることができるので、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23を操作する際に、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを十分に抑制することができる。また、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の梨地形状(凹凸形状)の表面粗さを30μm以下に形成することによって、運転者の手に対するブレーキレバー20の握り部20bおよびクラッチレバー23の握り部23aの梨地形状(凹凸形状)の面圧が大きくなり過ぎるのを抑制することができるので、運転者の手が痛くなるのを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態では、梨地形状(凹凸形状)が形成されたブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面全体に、陽極酸化被膜を形成することによって、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の耐食性および耐磨耗性などを向上させることができるので、梨地形状(凹凸形状)を長期間維持することができる。これにより、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面に対して運転者の手または手袋などが滑るのを長期にわたり抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面全体に、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する梨地形状(凹凸形状)を形成することによって、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の型割り部の表面に鋳造時に形成されたバリ20dを、ショットブラスト加工時に除去することができるので、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23のバリ20dを除去するために、人の手によってブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面にバフ研磨およびバレル研磨を行う必要がない。これにより、ブレーキレバー20およびクラッチレバー23の加工時間を短縮することができる。なお、この場合、ショットブラスト法により梨地形状(凹凸形状)が形成されたブレーキレバー20およびクラッチレバー23の表面は、一様な梨地形状(凹凸形状)が形成されるので、見栄え(外観)を向上させるためのバフ研磨およびバレル研磨も行う必要がない。
【0035】
また、本実施形態では、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する梨地形状(凹凸形状)を形成した後に、ブレーキレバー20にネジ穴20aおよび20cを形成するとともに、クラッチレバー23にネジ穴23bを形成することによって、ブレーキレバー20にネジ穴20aおよび20cを形成するとともに、クラッチレバー23にネジ穴23bを形成した後に、ショットブラスト法により梨地形状(凹凸形状)を形成する場合と異なり、ショットブラスト加工時にネジ穴20a、20cおよび23bが潰れるのを防止することができる。これにより、ブレーキレバー20に容易にネジ穴20aおよび20cを形成することができるとともに、クラッチレバー23に容易にネジ穴23bを形成することができる。
【0036】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0037】
たとえば、上記実施形態では、操作レバーを備えた車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、操作レバーを備えた車両であれば、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0038】
また、上記実施形態では、ブレーキレバーおよびクラッチレバーの両方に凹凸形状(梨地形状)を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、ブレーキレバーおよびクラッチレバーのいずれか一方のみに凹凸形状(梨地形状)を設けてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ブレーキレバーおよびクラッチレバーをアルミニウムにより形成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、ブレーキレバーおよびクラッチレバーをアルミニウム以外の金属により形成してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、ブレーキレバーおよびクラッチレバーの表面に陽極酸化被膜を形成する例について説明したが、本発明はこれに限らず、ブレーキレバーおよびクラッチレバーの表面に陽極酸化被膜を形成しなくてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ブレーキレバーおよびクラッチレバーに滑り止め機能を有する梨地形状の凹凸形状を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、ブレーキレバーおよびクラッチレバーに滑り止め機能を有する梨地形状以外の凹凸形状を設けてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、ブレーキおよびクラッチに、油圧式ブレーキおよび油圧式クラッチをそれぞれ用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、ブレーキおよびクラッチに、ワイヤー式のブレーキおよびクラッチを用いてもよいし、その他の方式のブレーキおよびクラッチを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による自動二輪車のブレーキレバーの構造を詳細に説明するための平面図である。
【図3】図1に示した一実施形態による自動二輪車のブレーキレバーの構造を詳細に説明するための平面図である。
【図4】図2の100−100線に沿った断面図である。
【図5】図1に示した一実施形態による自動二輪車のブレーキレバーの構造を詳細に説明するための平面図である。
【図6】図1に示した一実施形態による自動二輪車のブレーキレバーの構造を詳細に説明するための平面図である。
【図7】図1に示した一実施形態による自動二輪車のクラッチレバーの構造を詳細に説明するための平面図である。
【図8】本実施形態による自動二輪車のブレーキレバーおよびクラッチレバーの製造工程を説明するための図である。
【図9】本実施形態による自動二輪車のブレーキレバーの製造工程を説明するための平面図である。
【図10】本実施形態による自動二輪車のブレーキレバーの製造工程を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 自動二輪車(車両)
17 ハンドル
20 ブレーキレバー(操作レバー)
20a ネジ穴
20b 握り部
20c ネジ穴
20d バリ
23 クラッチレバー(操作レバー)
23a 握り部
23b ネジ穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、
前記ハンドルに取り付けられる操作レバーとを備え、
前記操作レバーの少なくとも握り部の表面には、滑り止め機能を有する凹凸形状が形成されている、車両。
【請求項2】
前記握り部の表面の凹凸形状は、梨地形状を有する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記握り部の凹凸形状の表面粗さは、5μm以上30μm以下である、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記操作レバーは、ブレーキレバーおよびクラッチレバーの少なくともいずれか一方を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記操作レバーは、アルミニウム製であり、
前記凹凸形状が形成された前記操作レバーの少なくとも前記握り部の表面には、陽極酸化被膜が形成されている、請求項1に記載の車両。
【請求項6】
ハンドルに取り付けられる操作レバーを準備する工程と、
前記操作レバーの少なくとも握り部の表面に、ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程とを備える、車両の製造方法。
【請求項7】
前記操作レバーを準備する工程は、アルミニウム鋳造法により前記操作レバーを形成する工程を含み、
前記ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程は、前記ショットブラスト法により前記凹凸形状を形成する際に、前記操作レバーの表面に鋳造時に形成されたバリを除去する工程を含む、請求項6に記載の車両の製造方法。
【請求項8】
前記ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程の後に、前記操作レバーに、ネジ穴を形成する工程をさらに備える、請求項6に記載の車両の製造方法。
【請求項9】
前記ショットブラスト法により滑り止め機能を有する凹凸形状を形成する工程は、前記握り部に、5μm以上30μm以下の表面粗さを有する凹凸形状を形成する工程を含む、請求項6に記載の車両の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−66032(P2007−66032A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251830(P2005−251830)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】