説明

車両および作業機械

【課題】旋回フレーム上に余裕スペースがない場合でも、燃料ホースの格納スペースを確保できる車両および作業機械を提供する。
【解決手段】走行体13に設けた旋回フレーム14上に、燃料タンク16を搭載する。この燃料タンク16に燃料補給する際に使用する燃料ホース31およびノズル32を収納するホース収納部28を、旋回フレーム14内に設ける。また、ノズル32を収容するノズル収容体47をホース収納部28内に設置する。そして、ホース収納部28の開口に開閉自在の蓋体29を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ホースなどが、旋回フレーム内に収納された車両および作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業機械は、走行体と、それに対し、旋回軸受け部を介して旋回フレームが旋回可能に設けられ、旋回フレーム上に、キャブ、作業装置、燃料タンクおよび作業油タンクなどが搭載されている。
【0003】
この作業機械において、燃料を補給する際には、給油車から燃料を補給するか、燃料が入ったドラム缶などから汲み上げて、作業機械の燃料タンクに補給している。
【0004】
燃料補給に関して、給油車からの補給の際には、燃料補給用のホースなどが給油車に備えられているが、ドラム缶などから汲み上げる場合は、燃料ホースなどが必要となる。そして、このような作業機械は、様々な建設現場や工事現場で使用されるので、燃料補給の際に、その都度、燃料ホースなどを運び込むのは、非常に不便である。
【0005】
そこで、どのような場所でもスムーズに燃料の補給をできるように、旋回フレーム上に設置される燃料タンクの前方位置に、燃料ホースなどを納めた格納ケースを設置したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−266377号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、旋回フレーム上に格納ケースなどを設けられるスペースのある作業機械であれば、燃料ホースなどを格納できるが、小型の作業機械などのように、旋回フレーム上のスペースに格納ケースなどを設置する余裕がない場合、燃料ホースなどを格納できない問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、旋回フレーム上に余裕スペースがない場合でも、燃料ホースの格納スペースを確保できる車両および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、走行体と、この走行体上に旋回可能に設けられた旋回フレームと、この旋回フレーム上に設置された燃料タンクと、この燃料タンクに燃料を補給する燃料ホースと、旋回フレーム内に設けられ、この燃料ホースを出し入れする開口を有するとともに、燃料ホースを収納するホース収納部と、このホース収納部の開口に開閉自在に設けられた蓋体とを具備した車両である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の車両において、燃料ホースの先端に接続されたノズルと、ホース収納部の一部にこのノズルを収容する筒状のノズル収容体が設けられたものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の車両において、ノズル収容体はノズル出入口を開口した後端より先端が下方に位置し、少なくとも先端の一部が開放されたものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の車両において、ホース収納部とは区画された旋回フレーム内にポンプ室が設けられ、このポンプ室内に電動ポンプが収納されたものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の車両において、蓋体の上面にステップ面部が備えられたものである。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか記載の車両において、蓋体の下面に電動ポンプを操作するスイッチが備えられたものである。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれか記載の車両と、この車両の旋回フレームに設けられた作業装置とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、走行体の旋回フレーム上に設置された燃料タンクへ燃料を補給する際に使用する燃料ホースを、旋回フレーム内に設けられたホース収納部に収納し、蓋体によりこのホース収納部を閉じることができるので、旋回フレーム上に余裕スペースがない場合でも、燃料ホースの格納スペースを確保できる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、燃料ホースの先端にノズルが接続され、ホース収納部の一部にこのノズルを収容する筒状のノズル収容体を具備することで、ノズルをホース収納部内に直置きした場合に、ホース収納部内の汚れがノズルに付着し、燃料補給時にその汚れが燃料タンクに混入するおそれを防止できる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、ノズル収容体は、後端の出入口より先端が下方に位置することで、収容されたノズルがノズル収容体のノズル出入口側から外れにくくでき、少なくとも先端の一部が開放されることで、ホースやノズル内に残ってしまった燃料を、ノズル収容体内に溜まらないように外部へ排出でき、さらに、先端が全て開放されてはいないので、ノズル先端をノズル収容体の先端側から抜け落ちないように係止できる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、ホース収納部とは区画された旋回フレーム内に、ポンプ室が設けられ、このポンプ室の中に電動ポンプを収納することで、燃料ホースやノズルと電動ポンプとが隔壁板を介して区画されるので、燃料ホースやノズルなどに付着した燃料が電動ポンプに付着し、電動ポンプが故障するのを防ぐことができる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、蓋体の上面にステップ面部を備えることで、メンテナンス作業が容易にできるとともに、ホース収納部の蓋体をステップとしても使用することで、旋回フレームに新たなステップを設置する手間が省ける。
【0020】
請求項6に記載された発明によれば、蓋体の下面に電動ポンプを操作するスイッチが設けられることで、燃料補給時に蓋体を開けると、スイッチが作業者に対向するので、容易に操作ができるとともに、スイッチを特別に格納するスイッチボックスも設ける必要がない。
【0021】
請求項7に記載された発明によれば、旋回フレームに作業装置が設けられた作業機械において、燃料タンクに燃料を補給する際に使用する燃料ホースが収納されたホース収納部を、旋回フレーム内に備えることで、旋回フレーム上に余裕スペースがない作業機械でも、燃料ホースなどを収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図1乃至図8に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図4に示されるように、作業機械10は、車両11に作業装置12を設けた油圧ショベルであり、車両11は、履体式の走行体13と、この走行体13上に旋回可能に設けられた旋回フレーム14とを具備している。
【0024】
旋回フレーム14上には、一側にキャブ15、他側に燃料タンク16および作動油タンク17が設けられ、これらの後方部には、図示しないが、エンジンやこのエンジンにより駆動される油圧ポンプなどが搭載されている。
【0025】
また、燃料タンク16の前方の凸部には、前照灯18が設けられており、その側部の燃料タンク16の前面下部から燃料タンク16の上部にかけて、メンテナンス時に使用する手摺19が設けられている。
【0026】
旋回フレーム14の前部には、作業装置12を取付けるための取付ブラケット21が一体に突設されている。作業装置12はこの取付ブラケット21にブーム22、アーム23、バケット24が順次回動自在に軸連結され、ブームシリンダ25、アームシリンダ26およびバケットシリンダ27によりそれぞれ回動可能となっている。
【0027】
そして、この取付ブラケット21の側部から前照灯18の下側にわたる領域の旋回フレーム14内には、ホース収納部28が設けられ、その開口に、蓋体29が開閉自在に取付けられている。
【0028】
図1乃至図3に示されるように、旋回フレーム14内部のホース収納部28には、燃料補給の際に使用する燃料吸込み用の燃料ホース31と、その先端に接続されたノズル32とが収納さている。
【0029】
燃料タンク16の下側には、このホース収納部28とは隔壁板33を介して区画されたポンプ室34が設けられ、このポンプ室34内に燃料補給の際に使用する電動ポンプ35が取付けられている。
【0030】
隔壁板33には、電動ポンプ35に接続された燃料吐出用ホース36を通す図示しない穴が設けられ、さらに燃料吐出用ホース36を上方へ導く小部屋を区画形成するための仕切り板37が設けられ、隔壁板33と仕切り板37とで、ホース収納部28と電動ポンプ35とが隔てられている。燃料吐出用ホース36は、燃料タンク16の側面に沿って上方へ配設し、燃料タンク16上部内に挿入されている。
【0031】
図5に示されるように、蓋体29の上面は、複数の突起が形成され、滑り止めが設けられたステップ面部38となっている。
【0032】
図6に示されるように、ホース収納部28の開口縁には、開口フレーム39が設けられ、この開口フレーム39に蓋体29がヒンジ41により開閉自在に取付けられている。また、開口フレーム39には、折り畳み式の支え棒42が取付けられ、蓋体を開けた状態で保持でき、さらに、開口フレーム39には鍵により回動される係合部材43が取付けられ、蓋体29を閉じた際に、この係合部材43と蓋体29側の被係合部材とを係合させることで、蓋体29をロックする。
【0033】
蓋体29の下面には、スイッチ台44が設けられ、これに電動ポンプ35をオン、オフ操作するボタン形のスイッチ45とヒューズ46とが取付けられており、燃料補給時に蓋体29を開けると、スイッチ45が作業者に対向するようになっている。
【0034】
ホース収納部28の内部には、燃料ホース31が、巻き回されて収納されており、また、ホース収納部28の一部には、ノズル32を収容する筒状のノズル収容体47が設けられ、ホース収納部28からノズル収容体47へ差し込むようにノズル32を収容する。
【0035】
図7または図8に示されるように、ノズル収容体47は、ホース収納部28の床面に設置されるノズル収容体設置台48に取付け板49を介して固着され、ノズル32が容易に出し入れできるように、後端にノズル出入口51が斜めに開口され、このノズル出入口51より先端52が下方に位置し、傾斜するように取付けられている。
【0036】
また、ノズル収容体47の先端52には、ノズル32が抜け落ちないように、ノズル係止体53が設けられ、さらにノズル係止体53によりノズル収容体47を密閉しないように、ノズル収容体47の下方の少なくとも一部が開放され、燃料排出用の排出口54が設けられている。なお、前記仕切り板37は、上記ノズル収容体設置台48上に固着されている。
【0037】
次に実施の形態の作用効果を説明する。
【0038】
旋回フレーム14上の燃料タンク16に燃料を補給する際は、ホース収納部28の蓋体29の係合部材43を解除し、蓋体29を開け、その開口から燃料ホース31とホース収納部28内のノズル収容体47に収容されたノズル32を取り出す。
【0039】
そして、ノズル32を燃料の入ったドラム缶などの容器に差し込み、蓋体29の下面に設けられた電動ポンプ35を操作するスイッチ45をオンにし、燃料ホース31でドラム缶などの燃料を吸込み、電動ポンプ35から吐出された燃料を、燃料吐出用ホース36により燃料タンク16へ補給する。
【0040】
燃料が一定のレベルまで達したら、液面センサにより燃料補給が自動停止されるので、電動ポンプ35のスイッチ45をオフにし、ドラム缶からノズル32を抜き出し、燃料ホース31をホース収納部28に収納し、ノズル32をノズル収容体47に収容し、蓋体29を閉め、係合部材43により蓋体29をロックする。
【0041】
旋回フレーム14上のキャブ15や作動油タンク17の後方に備えられているエンジンなどをメンテナンスする際には、ステップ面部38を具備する蓋体29と手摺19を利用して、エンジンカバーなどの上に登り、メンテナンスを行なう。そして、メンテナンスが完了したら、再び蓋体29と手摺19を利用して作業機械10から下りる。
【0042】
走行体13の旋回フレーム14に作業装置12が設けられた作業機械10において、旋回フレーム14上に設置された燃料タンク16へ、燃料を補給する際に使用する燃料ホース31が収納されるホース収納部28を、旋回フレーム14内に設け、そして、ホース収納部28に開閉自在に取付けられた蓋体29により開口を閉じることで、旋回フレーム14上に余裕スペースがない作業機械10の場合でも、燃料ホース31を収納するスペースが確保できる。
【0043】
燃料ホースの先端にノズル32を接続し、ホース収納部28の一部にノズル32を収容する筒状のノズル収容体47を設けることで、ノズル32をホース収納部28内に直置きした場合に、ホース収納部28内の汚れがノズル32に付着し、燃料補給時にその汚れが燃料タンク16に混入するおそれを防止でき、また、ノズル32を定位置に固定でき、ホース収納部28内でのノズル32のホース収納部28との衝突などによる損傷を防止できる。
【0044】
ノズル収容体47は、後端のノズル出入口51より先端52が下方に位置し、傾斜していることで、収容されたノズル32がノズル収容体47のノズル出入口51側から外れにくくでき、さらに、ノズル収容体47の先端52に設けられたノズル係止体53によって、ノズル収容体47の先端52からノズル32が抜け落ちないようできる。
【0045】
また、ノズル32をノズル収容体47に収容した際に、ノズル収容体47の先端52が後端のノズル出入口51より下方へ傾斜しているので、燃料ホース31やノズル32内に残ってしまった燃料が、ノズル収容体47内に垂れ落ちるおそれがある。これに対して、ノズル係止体53によりノズル収容体47の開口を密閉しないように、ノズル収容体47の先端52の少なくとも下方の一部を排出口54として開放することで、ノズル収容体47内に垂れ落ちた燃料が先端52に溜まらないように外部へ排出できる。
【0046】
旋回フレーム14内において、ホース収納部28と区画されてポンプ室34が設けられ、その中に電動ポンプ35を収納することで、燃料ホース31やノズル32と電動ポンプ35とが隔壁板33と仕切り板37を介して区画されるので、燃料ホース31やノズル32などに付着した燃料が電動ポンプ35に付着し、電動ポンプ35が故障するのを防ぐことができる。
【0047】
蓋体29の上面に滑り止めが備えられたステップ面部38が設けられることで、この蓋体29のステップ面部38と手摺19を利用し、エンジンや油圧ポンプのメンテナンス作業が容易にできるとともに、ホース収納部28の蓋体29をステップとしても使用することで、旋回フレーム14に新たなステップを設置する必要がなくなる。
【0048】
蓋体29の下面に電動ポンプ35を操作するスイッチ45が設けられることで、燃料補給時に蓋体29を開けると、スイッチ45が作業者に対向し、高さも旋回フレーム14と同じくらいなので、容易に操作ができるとともに、スイッチ45を特別に格納するスイッチボックスも設ける必要がない。
【0049】
本発明は、油圧ショベルなどの旋回フレームを有する車両および作業機械に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る作業機械および車両における旋回フレームの一実施の形態を示す平面図である。
【図2】同上旋回フレームの側面図である。
【図3】同上旋回フレームの斜視図である。
【図4】本発明に係る作業機械の一実施の形態を示す斜視図である。
【図5】同上作業機械におけるホース収納部の蓋体を閉じた状態の斜視図である。
【図6】同上ホース収納部の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図7】同上ホース収納部内に設置されたノズル収容体の側面図である。
【図8】同上ノズル収容体の平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 作業機械
11 車両
12 作業装置
13 走行体
14 旋回フレーム
16 燃料タンク
28 ホース収納部
29 蓋体
31 燃料ホース
32 ノズル
34 ポンプ室
35 電動ポンプ
38 ステップ面部
45 スイッチ
47 ノズル収容体
51 ノズル出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
この走行体上に旋回可能に設けられた旋回フレームと、
この旋回フレーム上に設置された燃料タンクと、
この燃料タンクに燃料を補給する燃料ホースと、
旋回フレーム内に設けられ、この燃料ホースを出し入れする開口を有するとともに、燃料ホースを収納するホース収納部と、
このホース収納部の開口に開閉自在に設けられた蓋体と
を具備したことを特徴とする車両。
【請求項2】
燃料ホースの先端に接続されたノズルと、
ホース収納部の一部にこのノズルを収容する筒状のノズル収容体
を具備したことを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
ノズル収容体は、ノズル出入口を開口した後端より先端が下方に位置し、少なくとも先端の一部が開放されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両。
【請求項4】
ホース収納部とは区画された旋回フレーム内に設けられたポンプ室と、
このポンプ室内に収納された電動ポンプと
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車両。
【請求項5】
蓋体は、上面にステップ面部
を具備したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の車両。
【請求項6】
蓋体は、下面に電動ポンプを操作するスイッチ
を具備したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の車両。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか記載の車両と、
この車両の旋回フレームに設けられた作業装置と
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−195345(P2008−195345A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35287(P2007−35287)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】