説明

車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置

【課題】車室上面を形成するルーフライニングの外側縁部の上側に設けたエアバッグが、車両の衝突時に車室内部に向かって円滑に膨張するようにし、また、このようにした場合でも、車室の見栄えが良好に保持されるようにする。
【解決手段】樹脂製のルーフライニング30と、ルーフ4の外側縁部とルーフライニング30の外側縁部32との間に介設されるエアバッグ37とを備える。車両1の衝突により膨張するエアバッグ37がルーフライニング30の外側縁部32を下方に向かって押動し、かつ、押動により下方に向かって移動したルーフライニング30の外側縁部32とルーフ4の外側縁部との間に生じる隙間43を通し、エアバッグ37がその下方の車室5内部に向かって更に膨張するようにする。ルーフライニング30の車体2幅方向における中央部側31と外側縁部32との間に上方に向かって凸となる屈曲部34を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室上面を形成するルーフライニングの上側に設けられたエアバッグが、車両の衝突時に、車室内部に向かって円滑に膨張するようにした車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置は、車体内部の車室上面を形成するよう車体のルーフの下面に沿って設けられる樹脂製のルーフライニングと、上記ルーフの外側縁部とルーフライニングの外側縁部との間に介設されるエアバッグとを備えている。
【0003】
そして、車両の衝突により膨張する上記エアバッグが上記ルーフライニングの外側縁部を下方に向かって押動し、かつ、この押動により下方に向かって移動した上記ルーフライニングの外側縁部とルーフの外側縁部との間に生じる隙間を通し、上記エアバッグがその下方の車室内部に向かって更に膨張することとされている。この場合、このように膨張したエアバッグは車体の側壁の車室がわ面をカーテンシールドし、これにより、上記側壁への乗員の二次衝突が防止され、この乗員が保護されるようになっている。
【0004】
また、上記の場合、ルーフライニングの車体幅方向における中央部側と外側縁部との間の上面に、車体前後方向に延びる溝が形成され、これにより、上記ルーフライニングの中央部側と外側縁部との間が薄肉部とされている。
【0005】
このため、前記したようにルーフライニングの外側縁部が膨張するエアバッグに押動されて下方に向かって移動しようとするとき、上記ルーフライニングの薄肉部に応力集中が生じてこの薄肉部が容易に屈曲させられる。よって、このように屈曲する薄肉部をほぼ中心として上記ルーフライニングの外側縁部が円滑に下方回動させられ、つまり、円滑に下方移動させられることから、上記隙間を通しての車室内部へのエアバッグの膨張も円滑になされて、このエアバッグによる乗員の保護がより確実に達成可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−224328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記ルーフライニングは樹脂製であって、通常、射出成形により形成されるが、このようにルーフライニングを射出成形する場合、上記した薄肉部の下面、つまり、ルーフライニングの車室側の面には“ひけ”が生じがちとなる。そして、この“ひけ”が生じた場合には、車室における乗員から見た車室の見栄えが低下するおそれが生じて、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車室上面を形成するルーフライニングの外側縁部の上側に設けたエアバッグが、車両の衝突時に車室内部に向かって円滑に膨張するようにし、また、このようにした場合でも、車室の見栄えが良好に保持されるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、車体2内部の車室5上面を形成するよう車体2のルーフ4の下面に沿って設けられる樹脂製のルーフライニング30と、上記ルーフ4の外側縁部とルーフライニング30の外側縁部32との間に介設されるエアバッグ37とを備え、車両1の衝突により膨張する上記エアバッグ37が上記ルーフライニング30の外側縁部32を下方に向かって押動し、かつ、この押動により下方に向かって移動した上記ルーフライニング30の外側縁部32とルーフ4の外側縁部との間に生じる隙間43を通し、上記エアバッグ37がその下方の車室5内部に向かって更に膨張するようにした車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置において、
上記ルーフライニング30の車体2幅方向における中央部側31と外側縁部32との間に上方に向かって凸となる屈曲部34を形成したとことを特徴とする車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、車体内部の車室上面を形成するよう車体のルーフの下面に沿って設けられる樹脂製のルーフライニングと、上記ルーフの外側縁部とルーフライニングの外側縁部との間に介設されるエアバッグとを備え、車両の衝突により膨張する上記エアバッグが上記ルーフライニングの外側縁部を下方に向かって押動し、かつ、この押動により下方に向かって移動した上記ルーフライニングの外側縁部とルーフの外側縁部との間に生じる隙間を通し、上記エアバッグがその下方の車室内部に向かって更に膨張するようにした車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置において、
上記ルーフライニングの車体幅方向における中央部側と外側縁部との間に上方に向かって凸となる屈曲部を形成している。
【0013】
このため、車両の衝突時、膨張するエアバッグに押動されてルーフライニングの外側縁部が下方に向かって移動しようとするとき、上記屈曲部には応力集中が生じてこの屈曲部が容易に屈曲させられる。よって、このように屈曲する屈曲部をほぼ中心として上記ルーフライニングの外側縁部が円滑に下方回動させられ、つまり、円滑に下方移動させられることから、上記隙間を通しての車室内部へのエアバッグへの膨張も円滑になされて、このエアバッグによる乗員の保護がより確実に達成される。
【0014】
また、上記の場合、ルーフライニングは樹脂製であって、通常、射出成形により形成されるが、このルーフライニングの中央部側と外側縁部との間は、従来の技術のような薄肉部とすることなく、板厚変化の少ない屈曲部としたため、上記ルーフライニングを射出成形した場合に、上記ルーフライニングにおける中央部側と外側縁部との間の下面に“ひけ”など欠陥が生じることは防止される。よって、前記したように、車両の衝突時にエアバッグが車室内部に向かって円滑に膨張するようにした場合でも、車室の見栄えは良好に保持される。
【0015】
しかも、上記屈曲部は、上方に向かって凸となるよう屈曲形成したものであるため、上記屈曲部の下面側の凹部空間が車室を広く見せることとなる。よって、この車室の見栄えの向上も達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図2のI−I線矢視断面図である。
【図2】車両の全体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置に関し、車室上面を形成するルーフライニングの外側縁部の上側に設けたエアバッグが、車両の衝突時に車室内部に向かって円滑に膨張するようにし、また、このようにした場合でも、車室の見栄えが良好に保持されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0018】
即ち、車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置は、車体内部の車室上面を形成するよう車体のルーフの下面に沿って設けられる樹脂製のルーフライニングと、上記ルーフの外側縁部とルーフライニングの外側縁部との間に介設されるエアバッグとを備える。車両の衝突により膨張する上記エアバッグが上記ルーフライニングの外側縁部を下方に向かって押動し、かつ、この押動により下方に向かって移動した上記ルーフライニングの外側縁部とルーフの外側縁部との間に生じる隙間を通し、上記エアバッグがその下方の車室内部に向かって更に膨張する。上記ルーフライニングの車体幅方向における中央部側と外側縁部との間に上方に向かって凸となる屈曲部が形成される。
【実施例】
【0019】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0020】
図において、符号1は自動車で例示される車両である。また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示し、下記する左右とは車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0021】
上記車体2は、その左右各側部を構成する側壁3,3と、車体2の上部を構成し、上記左右側壁3,3の各上端縁部に架設されるルーフ4とを備え、これら側壁3,3とルーフ4とで囲まれた車体2の内部が車室5とされている。この車室5の前部には前部シートとして運転シート8と助手シート9とが左右に並設され、車室5の後部には後部シート10が設けられている。
【0022】
上記側壁3には車室5の内外を連通させるドア開口13が形成され、このドア開口13を車体2の外側方から開閉可能に閉じ、上記側壁3の一部を構成するサイドドア14が設けられている。また、上記ドア開口13の開口縁部にはウェザストリップ15が固着され、このウェザストリップ15によって、上記ドア開口13の開口縁部とドア14の外縁部との間がシールされている。
【0023】
上記ルーフ4は、車体2の前後方向に延びて上記ルーフ4の左右各外側縁部を構成し、上記側壁3の上端縁部に支持されるルーフサイドレール18,18と、ほぼ水平に延び、これら左右ルーフサイドレール18,18に架設されて上記ルーフ4の車体2幅方向における中央部側を構成するルーフパネル19とを備えている。また、上記ルーフサイドレール18は、中空閉断面を形成するレールアウタパネル21およびレールインナパネル22と、これら両パネル21,22に挟み付けられて、これら両パネル21,22を補強するレール補強パネル23とを備えている。
【0024】
上記ルーフサイドレール18は、上記ドア開口13の上部開口縁部を構成し、上記ルーフサイドレール18の下端縁部に上記ウェザストリップ15の上部が固着されている。このウェザストリップ15の上部は、上記ルーフサイドレール18の下端縁部に外嵌されて固着される基部26と、この基部26からほぼ水平方向で車室5内部に向かって一体的に突出するリップ27とを備えている。
【0025】
上記車両1はカーテンシールドエアバッグ装置29を備えている。以下、このエアバッグ装置29につき説明する。
【0026】
上記車室5の上面を形成するよう上記ルーフ4の下面に沿ってルーフライニング30が設けられている。このルーフライニング30の車体2幅方向における中央部側31は上記ルーフパネル19とほぼ平行かつ水平方向に延びている。また、上記ルーフライニング30の左右各外側縁部32は、上記中央部側31の左右各外側端縁からそれぞれ車体2の側壁3に向かうに従い下傾するよう一体的に延出している。つまり、上記中央部側31から各外側縁部32への遷移部は山折れ形状となっている。上記ルーフライニング30は樹脂製で、射出成形によって上記中央部側31と各外側縁部32とが一体的に形成される。
【0027】
上記ルーフライニング30の各外側縁部32は、それぞれ車体2の前後方向で複数(4つ)の連結具33により上記ルーフサイドレール18のレールインナパネル22に弾性的に連結されている。また、上記ルーフライニング30の各外側縁部32の延出端縁の下面に上記ウェザストリップ15の上部のリップ27が軽く圧接している。
【0028】
上記ルーフライニング30の中央部側31と左右各外側縁部32との間に、それぞれ上方に向かって凸の円弧形状となるよう屈曲部34が形成されている。具体的には、この屈曲部34は、上記中央部側31から各外側縁部32への遷移部であって、ルーフライニング30の左右各山折れ形状部に形成されている。また、上記屈曲部34は、ほぼ一定の横断面形状で、車体2の前後方向における上記ルーフライニング30のほぼ全長にわたり直線的に延びるよう連続的なビード状に形成されている。また、上記ルーフライニング30は、上記屈曲部34を含み、各部厚さが互いにほぼ同じとされている。
【0029】
上記ルーフ4における各ルーフサイドレール18と上記ルーフライニング30の各外側縁部32との間の空間36に、折り畳まれたエアバッグ37と、爆発により瞬間的に多量のガスを発生してこのガスを上記エアバッグ37内に供給するインフレータ38と、上記ルーフサイドレール18のレールインナパネル22に締結具39により取り付けられて上記エアバッグ37とインフレータ38とを支持する支持具40とが設けられている。
【0030】
車両1の衝突時、この衝突を検出した不図示のセンサーの検出信号により上記インフレータ38が爆発させられて瞬間的に多量のガスを発生し、このガスが上記エアバッグ37内に供給される。すると、このエアバッグ37は展開かつ膨張させられて、上記ルーフライニング30の外側縁部32を下方に向かって押動する。
【0031】
すると、上記エアバッグ37の押動により、上記レールインナパネル22に対するルーフライニング30の外側縁部32の上記各連結具33による連結が弾性的に弛緩されると共に、図1中、一点鎖線で示すように、上記ウェザストリップ15のリップ27が弾性的に下方に屈曲させられて、上記ルーフライニング30の外側縁部32が下方移動させられる。
【0032】
そして、上記のように下方に向かって移動した上記ルーフライニング30の外側縁部32とルーフ4の外側縁部であるルーフサイドレール18との間に生じる隙間43を通し、上記エアバッグ37がその下方の車室5内部に向かって更に膨張する。すると、このように膨張したエアバッグ37が車体2の側壁3の車室5がわ面をカーテンシールドし、これにより、上記側壁3への乗員の二次衝突が防止され、この乗員が保護される。
【0033】
ここで、前記したように、ルーフライニング30の車体2幅方向における中央部側31と外側縁部32との間に上方に向かって凸となる屈曲部34を形成している。
【0034】
このため、車両1の衝突時、膨張するエアバッグ37に押動されてルーフライニング30の外側縁部32が下方に向かって移動しようとするとき、上記屈曲部34には応力集中が生じてこの屈曲部34が容易に屈曲させられる。よって、図1中一点鎖線で示すように、このように屈曲する屈曲部34をほぼ中心として上記ルーフライニング30の外側縁部32が円滑に下方回動Aさせられ、つまり、円滑に下方移動させられることから、上記隙間43を通しての車室5内部へのエアバッグ37への膨張も円滑になされて、このエアバッグ37による乗員の保護がより確実に達成される。
【0035】
また、上記の場合、ルーフライニング30は樹脂製であって、射出成形により形成されるが、このルーフライニング30の中央部側31と外側縁部32との間は、従来の技術のような薄肉部とすることなく、板厚変化の少ない屈曲部34としたため、上記ルーフライニング30を射出成形した場合に、上記ルーフライニング30における中央部側31と外側縁部32との間の下面に“ひけ”など欠陥が生じることは防止される。よって、前記したように、車両1の衝突時にエアバッグ37が車室5内部に向かって円滑に膨張するようにした場合でも、車室5の見栄えは良好に保持される。
【0036】
しかも、上記屈曲部34は、上方に向かって凸となるよう屈曲形成したものであるため、上記屈曲部34の下面側の凹部空間45が車室5を広く見せることとなる。よって、この車室5の見栄えの向上も達成される。
【0037】
また、前記したように、ルーフライニング30は、上記屈曲部34を含み、各部厚さを互いにほぼ同じとしたため、このルーフライニング30を射出成形した場合に、上記屈曲部34などに“ひけ”など欠陥が生じることは、より確実に防止される。よって、車室5の見栄えは更に良好に保持される。
【0038】
更に、前記したように、屈曲部34は、上記ルーフライニング30においてほぼ水平に延びる中央部側31から下傾するよう延出する外側縁部32への遷移部であって、このルーフライニング30の左右各山折れ形状部に形成されている。
【0039】
ここで、仮に、上記屈曲部34を上記ルーフライニング30の中央部側31や外側縁部32における車体2幅方向の中途部に形成したとすると、上記屈曲部34は外観上目立ち易くなるが、上記のようにルーフライニング30の山折れ形状部に形成したため、上記屈曲部34が車室5の見栄えに違和感を与えることは抑制される。よって、この点でも、車室5の見栄えは良好に保持される。
【0040】
なお、以上は図示の例によるが、上記屈曲部34の横断面は三角形の頂部形状であってもよく、倒立U字形状であってもよい。また、上記屈曲部34は、車体2の前後方向で、上記ルーフライニング30の一部のみに形成してもよく、不連続に複数形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2 車体
3 側壁
4 ルーフ
5 車室
13 ドア開口
14 ドア
15 ウェザストリップ
18 ルーフサイドレール
19 ルーフパネル
29 エアバッグ装置
30 ルーフライニング
31 中央部側
32 外側縁部
34 屈曲部
36 空間
37 エアバッグ
38 インフレータ
43 隙間
45 凹部空間
A 下方回動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体内部の車室上面を形成するよう車体のルーフの下面に沿って設けられる樹脂製のルーフライニングと、上記ルーフの外側縁部とルーフライニングの外側縁部との間に介設されるエアバッグとを備え、車両の衝突により膨張する上記エアバッグが上記ルーフライニングの外側縁部を下方に向かって押動し、かつ、この押動により下方に向かって移動した上記ルーフライニングの外側縁部とルーフの外側縁部との間に生じる隙間を通し、上記エアバッグがその下方の車室内部に向かって更に膨張するようにした車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置において、
上記ルーフライニングの車体幅方向における中央部側と外側縁部との間に上方に向かって凸となる屈曲部を形成したとことを特徴とする車両におけるカーテンシールドエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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