説明

車両のためのブレーキ装置

【課題】繊維強化されたセラミック材料から製作されるブレーキディスクのための、改善され、正しく機能するように形成された摩耗表示器を備える、車両のためのブレーキ装置を提供する。
【解決手段】制動行程中、少なくとも1つのブレーキライニング(3)と、支持体(1)の一部とが接触するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキディスクおよびアクチュエータ装置を備える車両のためのブレーキ装置であって、前記ブレーキディスクが、支持体および少なくとも1つの摩擦層を有しており、支持体および少なくとも1つの摩擦層が、繊維強化されたセラミック材料から製作されており、かつ前記アクチュエータ装置が、少なくとも1つのブレーキライニングを有している、車両のためのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DE2749772C2において、ブレーキ装置の摩耗を示すために、凹部をブレーキ部品の摩擦面に設けることが公知となっている。上記DE2749772C2に記載の機能原理にしたがって形成された摩耗表示器は、セラミック材料から製作されるブレーキディスクの場合、摩耗現象が摩耗よりも構造的な変化として強く表れるので、使用時に正しく機能しない。
【0003】
DE10116661A1によれば、ブレーキディスクに、ブレーキディスクの摩擦面を起点として、摩耗表示のためのインジケータエレメントを設けることが提案される。このようにインジケータエレメントを設けることは、製作時に、またはブレーキディスクへのインジケータエレメントの組み込みの観点で、コストおよび手間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE2749772C2
【特許文献2】DE10116661A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、繊維強化されたセラミック材料から製作されるブレーキディスクのための、改善され、正しく機能するように形成された摩耗表示器を備える、車両のためのブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る車両のためのブレーキ装置では、制動行程中、少なくとも1つのブレーキライニングと、支持体の一部とが接触することを特徴とする。
【0007】
本発明の有利な形態は、従属請求項に係る発明である。
【0008】
本発明の有利な形態では、少なくとも1つのブレーキライニングの半径方向の延在長さが、少なくとも1つの摩擦層の半径方向の延在長さに比べて大きい。
【0009】
本発明の有利な形態では、支持体が、リング状の表面領域を有しており、該リング状の表面領域は、リング状の表面領域とブレーキライニングとが制動行程中に接触するように、ブレーキライニングに対して配置されている。
【0010】
本発明の有利な形態では、支持体の材料が、摩擦負荷時に、少なくとも1つの摩擦層の材料に比べて低い耐久性を有する。
【0011】
本発明の有利な形態では、支持体の材料が、少なくとも1つの摩擦層の材料に比べて長い繊維長さを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るブレーキディスクおよびアクチュエータ装置を備える車両のためのブレーキ装置は、前記ブレーキディスクが、支持体および少なくとも1つの摩擦層を有しており、支持体および少なくとも1つの摩擦層が、繊維強化されたセラミック材料から製作されており、かつ前記アクチュエータ装置が、少なくとも1つのブレーキライニングを有している形式のものにおいて、制動行程中、少なくとも1つのブレーキライニングと、支持体の一部とが接触することを特徴とする。
【0013】
本発明により、セラミックブレーキディスクのための、構造的に簡単に組み込み可能で、しかも信頼性の高い摩耗表示器が提供される。
【0014】
本発明の詳細および利点について、以下に例示的に図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ブレーキディスクおよびブレーキライニングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、支持体1と、リング状に形成される2つの摩擦層4,4′とを備えるブレーキディスクを示す。さらにブレーキディスクはポット2を有する。ブレーキディスクは、図示の例のように両面に摩擦層4,4′を有していてもよいし、図面には示さないが、片面にのみ摩擦層4または4′を有していてもよい。
【0017】
摩擦層4,4′にはそれぞれ、ブレーキ装置のアクチュエータ装置の少なくとも1つのブレーキライニング3が設けられている。この種のアクチュエータ装置は、一般に、有利には2つのブレーキライニング3が配置されているブレーキキャリパを有する。図示の例では、視認性をよくするために、摩擦層4に対向する1つのブレーキライニング3だけが示されている。制動のために、ブレーキライニング3と摩擦層4とは接触させられる、または互いに圧着される。このような制動行程に際し、ブレーキライニング3は、摩擦層4だけでなく、支持体1の表面の一部にも接触する。支持体1および摩擦層4がそれぞれ異なる材料特性を有することに基づいて、支持体1の、制動行程中ブレーキライニング3に接触する領域は、インジケータ領域5の機能を請け負うことができる。
【0018】
図示の例では、ブレーキライニング3の半径方向の延在長さbは、少なくとも1つの摩擦層4,4′の半径方向の延在長さbに比べて大きい。こうして、少なくとも1つのインジケータ領域5,5′が形成される。インジケータ領域5,5′は、支持体1のリング状の部分領域として、半径方向の延在長さbを有して形成されている。その材料特性に関して、インジケータ領域5,5′は、有利には支持体1の残りの部分と同質に形成されている。支持体1、特にインジケータ領域5,5′は、有利には摩擦層4,4′に比べて著しく多い繊維成分を有する。これに対して摩擦層4,4′は、有利にはより多いセラミック成分を有する。平均的な繊維長さは、支持体1、特にインジケータ領域5,5′において、有利には摩擦層4,4′に比べて明らかに長い。支持体1の領域における繊維長さは、例えば約9mmである。摩擦層4,4′における繊維長さは、例えば約1mmより短い。
【0019】
ブレーキライニング3との接触時、支持体1、すなわちインジケータ領域5,5′は、摩擦層4,4′に比べて急速に発熱する。こうして、インジケータ領域5,5′により、セラミックブレーキディスクの摩耗についての、視覚的に簡単に判定可能な表示が提供される。セラミックブレーキディスクの大きな摩耗は、インジケータ領域5,5′の判定を基に、摩擦層4,4′の安全上危険な状態が生じる前に、またはブレーキディスクが起こり得る損傷を被る前に、適当な対策、例えば交換を講じることができるように適時に認識され得る。インジケータ領域5,5′は、ブレーキディスクの耐久性損失に関する視覚的な表示を提供する。
【符号の説明】
【0020】
1 支持体
2 ポット
3 ブレーキライニング
4,4′ 摩擦層
5,5′ インジケータ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスクおよびアクチュエータ装置を備える車両のためのブレーキ装置であって、前記ブレーキディスクが、支持体(1)および少なくとも1つの摩擦層(4,4′)を有しており、支持体(1)および少なくとも1つの摩擦層(4,4′)が、繊維強化されたセラミック材料から製作されており、かつ前記アクチュエータ装置が、少なくとも1つのブレーキライニング(3)を有している、車両のためのブレーキ装置において、制動行程中、少なくとも1つのブレーキライニング(3)と、支持体(1)の一部とが接触することを特徴とする、車両のためのブレーキ装置。
【請求項2】
少なくとも1つのブレーキライニング(3)の半径方向の延在長さbが、少なくとも1つの摩擦層(4,4′)の半径方向の延在長さbに比べて大きい、請求項1記載のブレーキ装置。
【請求項3】
支持体(1)が、リング状の表面領域を有しており、該リング状の表面領域は、リング状の表面領域とブレーキライニングとが制動行程中に接触するように、ブレーキライニング(3)に対して配置されている、請求項1または2記載のブレーキ装置。
【請求項4】
支持体(1)の材料が、摩擦負荷時に、少なくとも1つの摩擦層(4,4′)の材料に比べて低い耐久性を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のブレーキ装置。
【請求項5】
支持体(1)の材料が、少なくとも1つの摩擦層(4,4′)の材料に比べて長い繊維長さを有する、請求項4記載のブレーキ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−287774(P2009−287774A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127625(P2009−127625)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】