説明

車両のエンジン制御装置

【課題】車両の安全性を確保しながら、運転者の加速意図に対応できるようにする。
【解決手段】アクセルペダル32の踏み込み時(アクセルペダル32が踏み込まれるのと同時か又は踏み込まれた後)にブレーキペダル34が踏み込まれたと判定した場合には、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御を実行して、アクセルペダル32とブレーキペダル34が両方とも踏み込まれたときの安全性を確保する。一方、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれたと判定した場合には、アクセル開度制限制御を禁止して、運転者の加速意図に対応できるようにする。また、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキペダル34の踏み込みが解除されたと判定した場合には、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行して、運転者の加速意図に対応した通常走行に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルセンサで検出したアクセル開度に基づいてエンジンを制御する車両のエンジン制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年の電子制御化されたエンジン(内燃機関)を搭載した車両では、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサを設け、このアクセルセンサで検出したアクセル開度に基づいてスロットル開度(吸入空気量)等を制御してエンジンの出力を制御するようにしたものがある。
【0003】
このような車両の安全性向上を目的として、例えば、特許文献1(特開2005−291930号公報)に記載されているように、ブレーキペダルの踏み込み量が所定値(意図的なアクセルペダル及びブレーキペダルの同時踏み込みに対応した値)以上であるときに、エンジンを強制的にアイドル状態にするようにしたものがある。
【0004】
また、特許文献2(米国特許第6881174号公報)に記載されているように、アクセルペダルとブレーキペダルが両方とも操作されたときに、それぞれの操作量に基づいてアクセル要求よりもブレーキ要求の方が大きいと判断した場合に、エンジン出力を抑制するようにしたものもある。
【0005】
更に、特許文献3(特表平2−502558号公報)に記載されているように、アクセルペダルとブレーキペダルが両方とも踏み込まれた状態でアクセル操作速度=0のときに、エンジン出力を抑制するようにしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−291930号公報
【特許文献2】米国特許第6881174号公報
【特許文献3】特表平2−502558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2の技術は、いずれもアクセルペダルとブレーキペダルが両方とも踏み込まれたときに、エンジン出力を抑制することで安全性を確保するものであるが、例えば、牽引車等の坂道発進時に車両がずり下がらないようにブレーキペダルを強く踏み込んだ状態からアクセルペダルを踏み込んだ場合に、上記特許文献1の技術では、ブレーキペダルの踏み込み量が所定値以上になって、エンジン出力を抑制する可能性があり、上記特許文献2の技術では、アクセル要求よりもブレーキ要求の方が大きいと判断して、エンジン出力を抑制する可能性があるため、運転者の加速意図があるにも拘らずエンジン出力が抑制されて車両を発進させることができない可能性がある。
【0008】
また、上記特許文献3の技術では、アクセルペダルとブレーキペダルが両方とも踏み込まれてもアクセル操作速度=0にならないとエンジン出力を抑制できないため、アクセルペダルとブレーキペダルが両方とも踏み込まれたときの安全性を十分に確保できない可能性がある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両の安全性を確保しながら、運転者の加速意図に対応することができる車両のエンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、アクセル操作部の操作量(以下「アクセル開度」という)を検出するアクセルセンサと、ブレーキ操作部の操作を検出するブレーキセンサと、アクセルセンサで検出したアクセル開度に基づいてエンジンを制御するエンジン制御手段とを備えた車両のエンジン制御装置において、エンジン制御手段は、アクセルセンサの出力信号に基づいてアクセル操作部のオン操作(例えばアクセルペダルの踏み込み)を判定すると共に、ブレーキセンサの出力信号に基づいてブレーキ操作部のオン操作(例えばブレーキペダルの踏み込み)を判定し、アクセル操作部のオン操作時(アクセル操作部がオン操作されるのと同時か又はオン操作された後)にブレーキ操作部がオン操作されたと判定した場合に、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御を実行するようにしたものである。
【0011】
この構成では、アクセル操作部のオン操作時(アクセル操作部がオン操作されるのと同時か又はオン操作された後)にブレーキ操作部がオン操作されたと判定した場合に、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御を実行することで、車速に応じてエンジン出力を抑制することができるため、アクセル操作部とブレーキ操作部が両方ともオン操作されたときの安全性を確保することができる。一方、ブレーキ操作部がオン操作された後にアクセル操作部がオン操作されたと判定した場合には、アクセル開度制限制御を実行しないようにすることで、例えば、坂道発進時に車両がずり下がらないようにブレーキ操作部をオン操作した状態からアクセル操作部をオン操作した場合に、エンジン出力が抑制されることを回避して車両を発進させることができ、運転者の加速意図に対応することができる。
【0012】
この場合、請求項2のように、アクセル操作部のオン操作時にブレーキ操作部がオン操作されたと判定した時点でアクセル開度制限制御を開始するようにしても良い。このようにすれば、アクセル操作部のオン操作時にブレーキ操作部がオン操作されたと判定した時点で、速やかにアクセル開度制限制御を開始することができる。
【0013】
或は、請求項3のように、アクセル操作部のオン操作時にブレーキ操作部がオン操作されたと判定してから車速に応じたディレイ時間が経過した時点でアクセル開度制限制御を開始するようにしても良い。このようにすれば、アクセル操作部のオン操作時にブレーキ操作部がオン操作されたと判定してからアクセル開度制限制御を開始するまでに、車速に応じた適度なディレイ時間を持たせることができる。
【0014】
また、請求項4のように、アクセル開度制限制御の開始後にエンジン制御用のアクセル開度を制限値に減少させるまではアクセル開度制限制御を継続するようにしても良い。このようにすれば、エンジン制御用のアクセル開度を確実に制限値まで減少させることができる。
【0015】
或は、請求項5のように、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキ操作部のオン操作が解除されたと判定した場合にアクセル開度制限制御を中止するようにしても良い。このようにすれば、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキ操作部のオン操作が解除されたと判定した場合には、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、アクセル開度制限制御を中止することができる。
【0016】
更に、請求項6のように、アクセル開度制限制御の実行中に車速が0になってもアクセル開度制限制御を継続するようにしても良い。このようにすれば、アクセル開度制限制御の実行中に車速が0になっても、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、アクセル開度制限制御を継続することができ、アクセル操作部とブレーキ操作部が両方ともオン操作されたときの安全性を更に向上させることができる。
【0017】
また、請求項7のように、ブレーキ操作部がオン操作された後にアクセル操作部がオン操作されたと判定した場合には、アクセル開度制限制御を禁止するようにすると良い。つまり、ブレーキ操作部がオン操作された後にアクセル操作部がオン操作されたと判定した場合には、運転者の加速意図があると判断して、アクセル開度制限制御を禁止する。このようにすれば、例えば、坂道発進時に車両がずり下がらないようにブレーキ操作部をオン操作した状態からアクセル操作部をオン操作した場合に、アクセル開度制限制御を実行しないようにできる。
【0018】
ところで、運転者がアクセル操作部とブレーキ操作部をほぼ同時にオン操作した場合でも、アクセル系とブレーキ系との間で、機械的なガタやセンサの応答性の違い等によってオン操作の検出タイミング(センサの出力信号がオン操作を検出した状態に切り換わるタイミング)に差が生じることがある。このため、運転者がアクセル操作部とブレーキ操作部をほぼ同時にオン操作したにも拘らず、ブレーキ操作部がオン操作された後にアクセル操作部がオン操作されたと誤判定されて、アクセル開度制限制御が実行されない可能性がある。
【0019】
この対策として、請求項8のように、ブレーキセンサの出力信号がブレーキ操作部のオン操作を検出した状態に切り換わってから所定のディレイ時間が経過した時点でブレーキ操作部がオン操作されたと判定するようにすると良い。このようにすれば、運転者がアクセル操作部とブレーキ操作部をほぼ同時にオン操作した場合に、アクセル系とブレーキ系との間でオン操作の検出タイミング(センサの出力信号がオン操作を検出した状態に切り換わるタイミング)に多少の差が生じても、ブレーキ操作部がオン操作された後にアクセル操作部がオン操作されたと誤判定することを未然に防止することができ、アクセル開度制限制御を確実に実行することができる。
【0020】
本発明は、アクセル開度制限制御を実行する際に、エンジン制御用のアクセル開度をステップ的に制限値に切り換えるようにしても良いが、そうすると、エンジン出力が急変してギクシャク感が発生して、ドライバビリティが悪化する可能性がある。
【0021】
そこで、請求項9のように、アクセル開度制限制御を実行する際に、該アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるようにしても良い。このようにすれば、エンジン制御用のアクセル開度を適度な変化速度で制限値まで減少させることができるため、エンジン出力の急変を回避して、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0022】
また、請求項10のように、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキ操作部のオン操作が解除されたと判定した場合に、エンジン制御用のアクセル開度をアクセルセンサで検出したアクセル開度(以下「実アクセル開度」という)に戻すアクセル開度復帰制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキ操作部のオン操作が解除されたと判定した場合には、運転者が意図的にブレーキ操作部のオン操作を解除(オフ操作)したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行することができ、運転者の加速意図に対応した走行(通常走行)へ移行することができる。
【0023】
或は、請求項11のように、アクセル開度制限制御の実行中にアクセルセンサで検出したアクセル開度(以下「実アクセル開度」という)の所定時間当りの増加量が所定値よりも大きい場合に、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、アクセル開度制限制御の実行中に実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値よりも大きい場合には、運転者が意図的にアクセル開度を増加させた(アクセルペダルを踏み込んだ)ため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行することができ、運転者の加速意図に対応した走行(通常走行)へ移行することができる。
【0024】
また、請求項12のように、アクセル開度復帰制御の開始後にエンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上になったときにアクセル開度復帰制御を終了するようにすると良い。このようにすれば、エンジン制御用のアクセル開度を確実に実アクセル開度まで増加させることができる。
【0025】
本発明は、アクセル開度復帰制御を実行する際に、エンジン制御用のアクセル開度をステップ的に実アクセル開度に切り換えるようにしても良いが、そうすると、エンジン出力が急変してギクシャク感が発生して、ドライバビリティが悪化する可能性がある。
【0026】
そこで、請求項13のように、アクセル開度復帰制御を実行する際に、該アクセル開度復帰制御開始時又はアクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるようにしても良い。このようにすれば、エンジン制御用のアクセル開度を適度な変化速度で実スロットル開度まで増加させることができるため、エンジン出力の急変を回避して、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0027】
この場合、請求項14のように、アクセル開度復帰制御を実行する際に、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるときの変化速度を所定の上限値で制限するようにしても良い。このようにすれば、エンジン出力の急変を確実に防止することができる。
【0028】
また、請求項15のように、ブレーキ操作部は、常用ブレーキ装置又はパーキングブレーキ装置のブレーキ操作部としても良い。つまり、本発明は、常用ブレーキ装置(車両の運転中に車両を減速や停止させるためのブレーキ装置)のブレーキ操作部のオン操作やオフ操作に基づいてアクセル開度制限制御やアクセル開度復帰制御を実行するようにしても良いが、これに限定されず、パーキングブレーキ装置(車両の駐車時に車両を止めておくためのブレーキ装置)のブレーキ操作部のオン操作やオフ操作に基づいてアクセル開度制限制御やアクセル開度復帰制御を実行するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は実施例1のアクセル開度出力制御を説明する図である。
【図3】図3は実施例1のアクセル開度出力制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図4】図4は実施例2のアクセル開度出力制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】図5は実施例2のアクセル開度制限制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】図6は実施例2のアクセル開度復帰制御ルーチンの処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明の実施例1を図1乃至図3に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0032】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0033】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0034】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。また、クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0035】
更に、アクセルセンサ31によってアクセルペダル32(アクセル操作部)の操作量が検出され、ブレーキスイッチ33(ブレーキセンサ)によってブレーキペダル34(ブレーキ操作部)の操作が検出されると共に、車速センサ35によって車速が検出される。ここで、ブレーキペダル34は、車両の運転中に車両を減速又は停止させるための常用ブレーキ装置のブレーキ操作部である。また、アクセルペダル32やブレーキペダル34は、吊り下げ式(ペンダントタイプ)のペダルでも良いし、或は、立ち上がり式(オルガンタイプ)のペダルでも良い。
【0036】
これら各種センサやスイッチの出力は、電子制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することでエンジン制御手段としての役割を果たし、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。その際、ECU30は、アクセルセンサ31で検出したアクセル開度(アクセルペダル32の操作量)に基づいてスロットル開度(吸入空気量)等を制御してエンジン11の出力を制御する。
【0037】
また、ECU30は、アクセルセンサ31の出力信号に基づいてアクセルペダル32の踏み込み(オン操作)を判定すると共に、ブレーキスイッチ33の出力信号に基づいてブレーキペダル34の踏み込み(オン操作)を判定し、その判定結果に基づいてエンジン制御用のアクセル開度(エンジン11の制御に使用するアクセル開度)を制御するアクセル開度出力制御を次のようにして実行する。
【0038】
アクセルペダル32の踏み込み時(アクセルペダル32が踏み込まれるのと同時か又は踏み込まれた後)にブレーキペダル34が踏み込まれたと判定した場合には、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御を実行する。一方、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれたと判定した場合には、運転者の加速意図があると判断して、アクセル開度制限制御を禁止する。
【0039】
また、アクセル開度制限制御の実行中に、ブレーキペダル34の踏み込みが解除されたと判定した場合、又は、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)の所定時間当りの増加量が所定値よりも大きい場合には、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行する。
【0040】
以下、図2及び図3を用いて、アクセル開度出力制御(アクセル開度制限制御及びアクセル開度復帰制御)について具体的に説明する。尚、本実施例では、ブレーキスイッチ33の出力信号がブレーキペダル34の踏み込みを検出した状態に切り換わってから所定のディレイ時間が経過した時点でブレーキペダル34が踏み込まれたと判定する。以下の説明で「ブレーキON」はブレーキスイッチ33の出力信号に基づいてブレーキペダル34が踏み込まれたと判定した状態を意味し、「ブレーキOFF」はブレーキスイッチ33の出力信号に基づいてブレーキペダル34の踏み込みが解除されたと判定した状態を意味する。
【0041】
図2及び図3に示すように、ECU30の起動直後は、まず、通常モード(Mode1)に設定される。
(1)通常モード(Mode1)では、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのままエンジン制御用のアクセル開度として採用し、このエンジン制御用のアクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0042】
この通常モード(Mode1)の場合には、次の(a) 〜(c) の条件が成立しているか否かを判定する。
(a) 車速が所定値V1 以上であること
(b) 実アクセル開度が所定値A1 よりも大きいこと
(c) ブレーキOFFであるか又はブレーキONの継続時間が所定時間T1 以下であること
【0043】
ここで、上記(b) の条件の所定値A1 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
上記(a) 〜(c) の3つの条件が全て成立していると判定された場合、つまり、車速が所定値V1 以上であると判定され、且つ、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルペダル32が踏み込まれている)と判定され、且つ、ブレーキOFFであるか又はブレーキONの継続時間が所定時間T1 以下であると判定された場合には、その時点t1 (図3参照)で、スタンバイモード(Mode2)に移行する。
【0044】
(2)スタンバイモード(Mode2)では、通常モード(Mode1)と同じように、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのままエンジン制御用のアクセル開度として採用し、このエンジン制御用のアクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
このスタンバイモード(Mode2)の場合には、次の(d) の条件が成立しているか否かを判定する。
(d) ブレーキONであること
【0045】
上記(d) の条件が成立していると判定された場合、つまり、ブレーキON(ブレーキペダル33が踏み込まれた状態)であると判定された場合には、その時点で、制限制御モード(Mode3)に移行して、アクセル開度制限制御を実行する。これにより、アクセルペダル32の踏み込み時にブレーキペダル33が踏み込まれたと判定した時点で、速やかにアクセル開度制限制御を開始することができる。
【0046】
尚、上記(d) の条件を「ブレーキONの継続時間が所定のディレイ時間T2 以上であること」に変更しても良い。ここで、ディレイ時間T2 は、車速に応じて設定される。この(d) の条件が成立していると判定された場合、つまり、ブレーキONの継続時間が所定のディレイ時間T2 以上である(ブレーキペダル33が踏み込まれたと判定してから所定のディレイ時間T2 以上が経過した)と判定された場合には、その時点t2 (図3参照)で、制限制御モード(Mode3)に移行して、アクセル開度制限制御を実行する。これにより、アクセルペダル32の踏み込み時にブレーキペダル33が踏み込まれたと判定してからアクセル開度制限制御を開始するまでに、車速に応じた適度なディレイ時間T2 を持たせることができる。
【0047】
一方、上記(d) の条件が不成立であると判定された場合には、次の(e) 又は(f) の条件が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(d) の条件よりも次の(e) と(f) の条件の方が優先度が低い。
(e) 実アクセル開度が所定値A2 以下であること
(f) 車速が所定値V2 よりも低いこと
【0048】
ここで、上記(e) の条件の所定値A2 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。また、上記(f) の条件の所定値V2 は、上記(a) の条件の所定値V1 よりも小さい値に設定されている。
【0049】
上記(e) 又は(f) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A2 以下であると判定された場合、又は、車速が所定値V2 よりも低いと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0050】
(3)制限制御モード(Mode3)では、エンジン制御用のアクセル開度を制限値(例えばアイドル運転時よりも少し大きいアクセル開度)まで減少させるアクセル開度制限制御を実行し、このエンジン制御用のアクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御する。ここで、制限値は、アクセル開度制限制御開始時の車速(又は現在の車速)に応じてマップ等により算出する。制限値のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速(又は現在の車速)が低くなるほど制限値が小さくなるように設定されている。
【0051】
更に、このアクセル開度制限制御を実行する際には、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速が低くなるほど減算量が小さくなってエンジン制御用のアクセル開度の変化速度(減少速度)が遅くなるように設定されている。そして、エンジン制御用のアクセル開度が制限値に減少するまで、所定の演算周期毎に前回のエンジン制御用のアクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める処理を繰り返すことで、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させる。
【0052】
この制限制御モード(Mode3)の場合には、次の(g) 又は(h) の条件が成立しているか否かを判定する。
(g) 実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値ΔA3 よりも大きいこと
(h) ブレーキOFFであること
【0053】
上記(g) の条件が成立していると判定された場合、つまり、アクセル開度制限制御の実行中に実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値ΔA3 よりも大きいと判定された場合には、その時点で、運転者が意図的にアクセル開度を増加させた(アクセルペダル32を踏み込んだ)ため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、復帰制御モード(Mode4)に移行して、アクセル開度復帰制御を実行する。
【0054】
また、上記(h) の条件が成立していると判定された場合、つまり、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキOFF(ブレーキペダル33の踏み込みが解除された状態)であると判定された場合には、その時点で、運転者が意図的にブレーキペダル33の踏み込みを解除したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、復帰制御モード(Mode4)に移行して、アクセル開度復帰制御を実行する。
【0055】
尚、上記(h) の条件を「ブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上であること」に変更して、この(h) の条件が成立していると判定された場合、つまり、ブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上である(ブレーキペダル33の踏み込みが解除されたと判定してから所定時間T3 以上が経過した)と判定された場合には、その時点t3 (図3参照)で、復帰制御モード(Mode4)に移行して、アクセル開度復帰制御を実行するようにしても良い。
【0056】
一方、上記(g) と(h) の条件が両方とも不成立であると判定された場合には、次の条件(i) が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(g) と(h) の条件よりも次の(i) の条件の方が優先度が低い。
(i) 実アクセル開度が所定値A3 よりも小さいこと
【0057】
ここで、上記(i) の条件の所定値A3 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。上記(i) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A3 よりも小さいと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0058】
(4)復帰制御モード(Mode4)では、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行し、このエンジン制御用のアクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0059】
更に、このアクセル開度復帰制御を実行する際には、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなってエンジン制御用のアクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。そして、エンジン制御用のアクセル開度が実スロットル開度に増加するまで、所定の演算周期毎に前回のエンジン制御用のアクセル開度に加算量だけ加算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める処理を繰り返すことで、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させる。その際、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるときの変化速度を所定の上限値で制限する。
【0060】
この復帰制御モード(Mode4)の場合には、次の(j) の条件が成立しているか否かを判定する。
(j) ブレーキONであること
【0061】
上記(j) の条件が成立していると判定された場合、つまり、アクセル開度復帰制御の実行中にブレーキON(ブレーキペダル33が踏み込まれた状態)であると判定された場合には、その時点で、制限制御モード(Mode3)に戻って、アクセル開度制限制御を実行する。
【0062】
尚、上記(j) の条件を「ブレーキONの継続時間が所定時間T4 以上であること」に変更して、この(j) の条件が成立していると判定された場合、つまり、ブレーキONの継続時間が所定時間T4 以上である(ブレーキペダル33が踏み込まれたと判定してから所定時間T4 以上が経過した)と判定された場合には、その時点で、制限制御モード(Mode3)に戻って、アクセル開度制限制御を実行するようにしても良い。
【0063】
一方、上記(j) の条件が不成立であると判定された場合には、次の条件(k) が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(j) の条件よりも次の(k) の条件の方が優先度が低い。
(k) エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上であること
【0064】
上記(k) の条件が成立していると判定された場合、つまり、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上であると判定された場合には、その時点t4 (図3参照)で、アクセル開度復帰制御を終了して、スタンバイモード(Mode2)に戻る。これにより、エンジン制御用のアクセル開度を確実に実アクセル開度まで増加させることができる。
【0065】
更に、上記(k) の条件が不成立であると判定された場合には、次の(l) の条件が成立しているか否かを判定する。つまり上記(k) の条件よりも次の(l) の条件の方が優先度が低い。
(l) 実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいこと
【0066】
ここで、上記(l) の条件の所定値A4 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。上記(l) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0067】
以上説明した本実施例1では、アクセルペダル32の踏み込み時(アクセルペダル32が踏み込まれるのと同時か又は踏み込まれた後)にブレーキペダル34が踏み込まれたと判定した場合に、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御を実行することで、車速に応じてエンジン出力を抑制することができるため、アクセルペダル32とブレーキペダル34が両方とも踏み込まれたときの安全性を確保することができる。
【0068】
一方、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれたと判定した場合には、運転者の加速意図があると判断して、アクセル開度制限制御を禁止するようにしたので、例えば、坂道発進時に車両がずり下がらないようにブレーキペダル34を踏み込んだ状態からアクセルペダル32を踏み込んだ場合に、アクセル開度制限制御を実行しないようにして、エンジン出力が抑制されることを回避して、車両を発進させることができ、運転者の加速意図に対応することができる。
【0069】
ところで、運転者がアクセルペダル32とブレーキペダル34をほぼ同時に踏み込んだ場合でも、アクセル系とブレーキ系との間で、機械的なガタやセンサの応答性の違い等によって踏み込みの検出タイミング(センサの出力信号が踏み込みを検出した状態に切り換わるタイミング)に差が生じることがある。このため、運転者がアクセルペダル32とブレーキペダル34をほぼ同時に踏み込んだにも拘らず、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれたと誤判定されて、アクセル開度制限制御が実行されない可能性がある。
【0070】
この対策として、本実施例1では、ブレーキスイッチ33の出力信号がブレーキペダル34の踏み込みを検出した状態に切り換わってから所定のディレイ時間が経過した時点でブレーキペダル34が踏み込まれたと判定するようにしたので、運転者がアクセルペダル32とブレーキペダル34をほぼ同時に踏み込んだ場合に、アクセル系とブレーキ系との間で踏み込みの検出タイミング(センサの出力信号が踏み込みを検出した状態に切り換わるタイミング)に多少の差が生じても、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれたと誤判定することを未然に防止することができ、アクセル開度制限制御を確実に実行することができる。
【0071】
更に、本実施例1では、アクセル開度制限制御を実行する際に、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるようにしたので、エンジン制御用のアクセル開度を適度な変化速度で制限値まで減少させることができ、エンジン出力の急変を回避して、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0072】
また、本実施例1では、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキペダル34の踏み込みが解除されたと判定した場合には、運転者が意図的にブレーキペダル34の踏み込みを解除(オフ操作)したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、アクセル開度復帰制御を実行し、アクセル開度制限制御の実行中に実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値よりも大きい場合には、運転者が意図的にアクセル開度を増加させた(アクセルペダル32を踏み込んだ)ため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、アクセル開度復帰制御を実行するようにしたので、運転者の加速意図に対応した走行(通常走行)へ移行することができる。
【0073】
更に、本実施例1では、アクセル開度復帰制御を実行する際に、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるようにしたので、エンジン制御用のアクセル開度を適度な変化速度で実スロットル開度まで増加させることができ、エンジン出力の急変を回避して、ドライバビリティの悪化を防止することができる。しかも、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるときの変化速度を所定の上限値で制限するようにしたので、エンジン出力の急変を確実に防止することができる。
【実施例2】
【0074】
次に、図4乃至図6を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0075】
本実施例2では、ECU30により後述する図4乃至図6のアクセル開度出力制御用の各ルーチンを実行することで、前記実施例1のアクセル開度出力制御を簡素化したアクセル開度出力制御を実行する。
以下、図4乃至図6のアクセル開度出力制御用の各ルーチンの処理内容を説明する。
【0076】
[アクセル開度出力制御ルーチン]
図4に示すアクセル開度出力制御ルーチンは、ECU30の電源オン中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、車速が所定値V1 以上であるか否かを判定する。
【0077】
このステップ101で、車速が所定値V1 以上であると判定された場合には、ステップ102に進み、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きいか否かを判定する。ここで、所定値A1 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0078】
このステップ102で、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルペダル32が踏み込まれている)と判定された場合には、ステップ103に進み、ブレーキOFF(ブレーキペダル33の踏み込みが解除された状態)からブレーキON(ブレーキペダル33が踏み込まれた状態)になったか否かを判定する。
【0079】
アクセルペダル32が踏み込まれる前にブレーキペダル34が踏み込まれた場合には、上記ステップ103で「No」と判定されて、上記ステップ101に戻る。これにより、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれた場合には、アクセル開度制限制御を禁止する。
【0080】
一方、アクセルペダル32の踏み込み時(アクセルペダル32が踏み込まれるのと同時か又は踏み込まれた後)にブレーキペダル33が踏み込まれた場合には、上記ステップ103で「Yes」と判定されて、ステップ104に進み、後述する図5のアクセル開度制限制御ルーチンを実行する。これにより、アクセルペダル32の踏み込み時(アクセルペダル32が踏み込まれるのと同時か又は踏み込まれた後)にブレーキペダル33が踏み込まれた場合には、エンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるアクセル開度制限制御を実行する。
【0081】
この後、ステップ105に進み、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキONからブレーキOFFになったか否かを判定する。このステップ105で、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキONからブレーキOFFになったと判定された場合には、ステップ106に進み、後述する図6のアクセル開度復帰制御ルーチンを実行する。これにより、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキONからブレーキOFFになったと判定された場合には、運転者が意図的にブレーキペダル33の踏み込みを解除したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、エンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行する。
【0082】
この後、ステップ107に進み、実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいか否かを判定する。ここで、所定値A4 は、上記ステップ102の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。このステップ107で、実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいと判定された場合には、アクセル開度復帰制御を終了する。
【0083】
[アクセル開度制限制御ルーチン]
図5に示すアクセル開度制限制御ルーチンは、前記図4のアクセル開度出力制御ルーチンのステップ104で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速が低くなるほど減算量が小さくなってエンジン制御用のアクセル開度の変化速度(減少速度)が遅くなるように設定されている。
【0084】
この後、ステップ202に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回のエンジン制御用のアクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める。
【0085】
今回のエンジン制御用アクセル開度=前回のエンジン制御用アクセル開度−減算量
この後、ステップ203に進み、アクセル開度制限制御開始時の車速(又は現在の車速)に応じた制限値をマップ等により算出する。ここで、制限値のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速(又は現在の車速)が低くなるほど制限値が小さくなるように設定されている。
【0086】
この後、ステップ204に進み、エンジン制御用のアクセル開度が制限値以下であるか否かを判定し、エンジン制御用のアクセル開度が制限値よりも大きいと判定されれば、上記ステップ202に戻り、前回のエンジン制御用のアクセル開度から減算量だけ減算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める処理を繰り返す。
【0087】
その後、上記ステップ204で、エンジン制御用のアクセル開度が制限値以下であると判定されたときに、本ルーチンを終了する。以上の処理により、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるアクセル開度制限制御を実行する。
【0088】
[アクセル開度復帰制御ルーチン]
図6に示すアクセル開度復帰制御ルーチンは、前記図4のアクセル開度出力制御ルーチンのステップ106で実行されるサブルーチンである。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなってエンジン制御用のアクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。
【0089】
この後、ステップ302に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回のエンジン制御用のアクセル開度に加算量だけ加算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める。
今回のエンジン制御用アクセル開度=前回のエンジン制御用アクセル開度+加算量
この後、ステップ303に進み、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上であるか否かを判定し、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度よりも小さいと判定されれば、上記ステップ302に戻り、前回のエンジン制御用のアクセル開度に加算量だけ加算して今回のエンジン制御用のアクセル開度を求める処理を繰り返す。
【0090】
その後、上記ステップ303で、エンジン制御用のアクセル開度が実アクセル開度以上であると判定されたときに、本ルーチンを終了する。以上の処理により、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるアクセル開度復帰制御を実行する。
【0091】
以上説明した本実施例2においても、アクセルペダル32の踏み込み時(アクセルペダル32が踏み込まれるのと同時か又は踏み込まれた後)にブレーキペダル34が踏み込まれた場合に、アクセル開度制限制御を実行するようにしたので、アクセルペダル32とブレーキペダル34が両方とも踏み込まれたときの安全性を確保することができる。一方、ブレーキペダル34が踏み込まれた後にアクセルペダル32が踏み込まれた場合には、アクセル開度制限制御を禁止するようにしたので、運転者の加速意図に対応することができる。更に、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキペダル34の踏み込みが解除された場合に、アクセル開度復帰制御を実行するようにしたので、運転者の加速意図に対応した走行(通常走行)へ移行することができる。
【0092】
尚、上記各実施例1,2では、アクセル開度制限制御の実行中にブレーキペダル34の踏み込みが解除されたと判定した場合にアクセル開度制限制御を中止するようにしたが、これに限定されず、例えば、アクセル開度制限制御の開始後にエンジン制御用のアクセル開度を制限値に減少させるまではアクセル開度制限制御を継続するようにしても良い。このようにすれば、エンジン制御用のアクセル開度を確実に制限値まで減少させることができる。
【0093】
更に、アクセル開度制限制御の実行中に車速が0になってもアクセル開度制限制御を継続するようにしても良い。このようにすれば、アクセル開度制限制御の実行中に車速が0になっても、エンジン出力を抑制する必要があると判断して、アクセル開度制限制御を継続することができ、アクセルペダル32とブレーキペダル34が両方とも踏み込まれたときの安全性を更に向上させることができる。
【0094】
また、上記各実施例1,2では、アクセル開度制限制御を実行する際に、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を制限値まで減少させるようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン制御用のアクセル開度を速やかに制限値まで減少させたい場合には、エンジン制御用のアクセル開度をステップ的に制限値に切り換えるようにしても良い。
【0095】
更に、上記各実施例1,2では、アクセル開度復帰制御を実行する際に、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度でエンジン制御用のアクセル開度を実アクセル開度まで増加させるようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン制御用のアクセル開度を速やかに実アクセル開度まで増加させたい場合には、エンジン制御用のアクセル開度をステップ的に実アクセル開度に切り換えるようにしても良い。
【0096】
また、上記各実施例1,2では、常用ブレーキ装置(車両の運転中に車両を減速や停止させるためのブレーキ装置)のブレーキペダルのオン操作やオフ操作に基づいてアクセル開度制限制御やアクセル開度復帰制御を実行するようにしたが、これに限定されず、例えば、パーキングブレーキ装置(車両の駐車時に車両を止めておくためのブレーキ装置)のブレーキペダルのオン操作やオフ操作に基づいてアクセル開度制限制御やアクセル開度復帰制御を実行するようにしても良い。
【0097】
また、本発明は、ブレーキ操作部としてブレーキペダルを備えた車両に限定されず、例えば、ブレーキ操作部としてブレーキレバー等を備えた車両に適用しても良い。更に、本発明は、アクセル操作部としてアクセルペダルを備えた車両に限定されず、例えば、アクセル操作部としてアクセルレバー等を備えた車両に適用しても良い。
【0098】
また、本発明は、ブレーキ操作部の操作を検出するブレーキスイッチに代えて、ブレーキ操作部の操作量を検出するブレーキセンサを備えた車両に適用しても良い。
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0099】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管、30…ECU(エンジン制御手段)、31…アクセルセンサ、32…アクセルペダル(アクセル操作部)、33…ブレーキスイッチ(ブレーキセンサ)、34…ブレーキペダル(ブレーキ操作部)、35…車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作部の操作量(以下「アクセル開度」という)を検出するアクセルセンサと、ブレーキ操作部の操作を検出するブレーキセンサと、前記アクセルセンサで検出したアクセル開度に基づいてエンジンを制御するエンジン制御手段とを備えた車両のエンジン制御装置において、
前記エンジン制御手段は、前記アクセルセンサの出力信号に基づいて前記アクセル操作部のオン操作を判定すると共に、前記ブレーキセンサの出力信号に基づいて前記ブレーキ操作部のオン操作を判定し、前記アクセル操作部のオン操作時に前記ブレーキ操作部がオン操作されたと判定した場合に、エンジン制御用のアクセル開度を車速に応じた制限値にするアクセル開度制限制御を実行することを特徴とする車両のエンジン制御装置。
【請求項2】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル操作部のオン操作時に前記ブレーキ操作部がオン操作されたと判定した時点で前記アクセル開度制限制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル操作部のオン操作時に前記ブレーキ操作部がオン操作されたと判定してから車速に応じたディレイ時間が経過した時点で前記アクセル開度制限制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度制限制御の開始後に前記エンジン制御用のアクセル開度を前記制限値に減少させるまでは前記アクセル開度制限制御を継続することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度制限制御の実行中に前記ブレーキ操作部のオン操作が解除されたと判定した場合に前記アクセル開度制限制御を中止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度制限制御の実行中に車速が0になっても前記アクセル開度制限制御を継続することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記エンジン制御手段は、前記ブレーキ操作部がオン操作された後に前記アクセル操作部がオン操作されたと判定した場合には、前記アクセル開度制限制御を禁止することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記エンジン制御手段は、前記ブレーキセンサの出力信号が前記ブレーキ操作部のオン操作を検出した状態に切り換わってから所定のディレイ時間が経過した時点で前記ブレーキ操作部がオン操作されたと判定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度制限制御を実行する際に、該アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度で前記エンジン制御用のアクセル開度を前記制限値まで減少させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度制限制御の実行中に前記ブレーキ操作部のオン操作が解除されたと判定した場合に、前記エンジン制御用のアクセル開度を前記アクセルセンサで検出したアクセル開度(以下「実アクセル開度」という)に戻すアクセル開度復帰制御を実行することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度制限制御の実行中に前記アクセルセンサで検出したアクセル開度(以下「実アクセル開度」という)の所定時間当りの増加量が所定値よりも大きい場合に、前記エンジン制御用のアクセル開度を前記実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度復帰制御の開始後に前記エンジン制御用のアクセル開度が前記実アクセル開度以上になったときに前記アクセル開度復帰制御を終了することを特徴とする請求項10又は11に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項13】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度復帰制御を実行する際に、該アクセル開度復帰制御開始時又は前記アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度で前記エンジン制御用のアクセル開度を前記実アクセル開度まで増加させることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項14】
前記エンジン制御手段は、前記アクセル開度復帰制御を実行する際に、前記エンジン制御用のアクセル開度を前記実アクセル開度まで増加させるときの変化速度を所定の上限値で制限することを特徴とする請求項13に記載の車両のエンジン制御装置。
【請求項15】
前記ブレーキ操作部は、常用ブレーキ装置又はパーキングブレーキ装置のブレーキ操作部とすることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の車両のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247198(P2011−247198A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122147(P2010−122147)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】